(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 G
H01F37/00 J
H01F37/00 C
(21)【出願番号】P 2020555656
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2019044005
(87)【国際公開番号】W WO2020100773
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2018215466
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】舌間 誠二
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-12272(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037544(WO,A1)
【文献】特開2011-29485(JP,A)
【文献】中国実用新案第207038290(CN,U)
【文献】特開2010-177439(JP,A)
【文献】実開平1-133712(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記巻回部の並び方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む、
リアクトル。
【請求項2】
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記各巻回部の軸方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む、
リアクトル。
【請求項3】
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、前記巻回部の内側に配置される内側脚部と、前記巻回部の外周面の一部を挟む二つの外側脚部と、前記巻回部の各端面を挟む二つの連結部とを備え、
前記巻回部は、前記外周面が前記ケースの内壁面に対向するように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む、
リアクトル。
【請求項4】
前記板バネ金具の両端部はそれぞれ傾斜面を含み、
前記傾斜面は、前記内底面側から前記ケースの開口部側に向って前記板バネ金具の厚さが薄くなるように傾斜する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記板バネ金具は、前記内底面側に向って局所的に突出するU字状の突起部を備え、
前記板バネ金具の前記押圧箇所は、前記突起部を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記板バネ金具の前記押圧箇所は、前記磁性コアにおける前記巻回部の外側に配置される箇所を直接又は間接的に押圧する箇所を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記内壁面は、前記板バネ金具の少なくとも一方の端部を収納する凹部を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記組合体と前記内底面との間に介在される接着層を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記磁性コアの少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
本出願は、2018年11月16日付の日本国出願の特願2018-215466に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイルと、磁性コアと、ケースと、封止樹脂部と、帯状の平板金具である支持部とを備えるリアクトルを開示する。コイルは、並列される一対の巻回部を備える。磁性コアは、巻回部の内側及び外側に配置される環状のコアである。ケースは、コイルと磁性コアとの組合体を収納する。ケース内部に封止樹脂部が充填される。磁性コアのうち、巻回部の外側に配置される箇所であってケースの開口側に位置する上面を跨ぐように平板金具が配置される。平板金具は、ボルトによってケースに固定される。この平板金具は、組合体が封止樹脂部と共にケースから脱落することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記巻回部の並び方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【0005】
別形態の本開示のリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記各巻回部の軸方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【0006】
更に、別形態の本開示のリアクトルは、
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、前記巻回部の内側に配置される内側脚部と、前記巻回部の外周面の一部を挟む二つの外側脚部と、前記巻回部の各端面を挟む二つの連結部とを備え、
前記巻回部は、前記外周面が前記ケースの内壁面に対向するように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、実施形態1のリアクトルについて、ケースの一部を切断して示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のリアクトルをケースの開口部側からケースの深さ方向に見た概略平面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態1のリアクトルを製造する工程説明図であり、組合体をケースに収納する工程を示す。
【
図3B】
図3Bは、実施形態1のリアクトルを製造する工程説明図であり、組合体を収納したケースを加熱する工程を示す。
【
図3C】
図3Cは、実施形態1のリアクトルを製造する工程説明図であり、所定の温度のケースに板バネ金具を配置する工程を示す。
【
図3D】
図3Dは、実施形態1のリアクトルを製造する工程説明図であり、ケースに封止樹脂部の原料樹脂を充填する途中を示す。
【
図4】
図4は、実施形態2のリアクトルについて、ケースの一部を切断して示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す破線円V内を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態3のリアクトルについて、ケースの一部を切断して示す概略構成図である。
【
図7】
図7は、実施形態4のリアクトルについて、ケースの一部を切断して示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
小型で、放熱性により優れるリアクトルが望まれている。
【0009】
特許文献1に記載されるリアクトルでは、直方体状のケースにおける内側の各角部に取付台が設けられている。取付台には、平板金具がボルトによって固定される。ケースに取付台があると、取付台が無い場合に比較して、組合体の外周面とケースの内周面との間隔が大きくなる。この点で、リアクトルは小型になり難い。また、上記間隔が大きいことで、組合体の熱、特にコイルの熱がケースに伝わり難い。そのため、上記間隔が大きいリアクトルは、ケースを放熱経路として十分に利用し難い。
【0010】
そこで、本開示は、小型で、放熱性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示のリアクトルは、小型で、放熱性に優れる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の第一の態様に係るリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記巻回部の並び方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【0013】
本開示のリアクトルでは、両巻回部の並び方向がケースの深さ方向に平行するように組合体がケースに収納される。いわば、ケース内において、巻回部の並び方向がケースの内底面に直交するように両巻回部が配置される。以下、この配置形態を縦積み型と呼ぶ。なお、特許文献1に記載されるリアクトルでは、巻回部の並び方向及び巻回部の軸方向の双方がケースの内底面に平行するように両巻回部が配置される。以下、この配置形態を平置き型と呼ぶ。
【0014】
本開示のリアクトルは、以下の理由により、小型であり、放熱性により優れる。
(小型)
(a)ケースが板バネ金具をボルト止めする取付台等を有さない。そのため、組合体の外周面とケースの内周面との間隔が小さくなり易い。
(b)縦積み型であるため、平置き型に比較して、設置面積を小さくできる場合がある。詳細は後述する。
(c)縦積み型であるため、後述する第二の本開示のリアクトルに比較して、ケースの高さを小さくできる場合がある。
【0015】
(放熱性)
(A)上述のように組合体の外周面とケースの内周面との間隔が小さい。そのため、組合体の熱がケースに伝わり易い。
(B)縦積み型であるため、平置き型に比較して、両巻回部におけるケースの内面に対向する面積が大きく確保され易い。従って、ケースは、放熱経路として効率よく利用される。
(C)縦積み型であるため、一方の巻回部の一面がケースの内底面に近接される。従って、組合体の熱、特にコイルの熱がケースの底部に伝わり易い。
(D)板バネ金具が組合体をケースの内底面側に押し付ける。そのため、組合体の熱がケースの底部により確実に伝わる。
【0016】
更に、本開示のリアクトルは、上述のように板バネ金具が組合体をケースの内底面側に押圧するため、組合体がケースから脱落することを防止できる。封止樹脂部が組合体及び板バネ金具を埋設すれば、組合体におけるケースからの脱落がより防止され易い。
【0017】
(2)本開示の第二の態様に係るリアクトルは、
並列される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記巻回部のそれぞれは、前記各巻回部の軸方向が前記ケースの深さ方向になるように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記ケースの内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【0018】
第二の本開示のリアクトルでは、両巻回部の軸方向がケースの深さ方向に平行するように組合体がケースに収納される。いわば、ケース内において、巻回部の軸方向がケースの内底面に直交するように両巻回部が配置される。以下、この配置形態を直立型と呼ぶ。
【0019】
第二の本開示のリアクトルは、上述の理由(a),(b)により、小型である。特に、直立型は、上述の縦積み型に比較して、設置面積をより小さくできる場合がある。詳細は後述する。なお、理由(b)において「縦積み型」は「直立型」に読み替える。
【0020】
また、第二の本開示のリアクトルは、上述の理由(A),(B),(D)により、放熱性により優れる。特に、直立型では、上述の縦積み型に比較して、両巻回部におけるケースの内面に対向する面積が更に大きく確保され易い。従って、ケースは、放熱経路としてより一層効率よく利用される。なお、理由(B)において「縦積み型」は「直立型」に読み替える。
【0021】
更に、第二の本開示のリアクトルは、上述の縦積み型と同様に、板バネ金具の押圧によって、組合体がケースから脱落することを防止できる。
【0022】
加えて、第二の本開示のリアクトルでは、板バネ金具の押圧箇所は、コイルではなく、磁性コアにおいて巻回部の外側に配置される箇所である後述の外側コア部になる。この点で、第二の本開示のリアクトルは、コイルと板バネ金具との間の電気絶縁性を高め易い。
【0023】
(3)本開示の第三の態様に係るリアクトルは、
一つの巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとを含む組合体を収納するケースと、
前記組合体を前記ケースの内底面側に押し付ける板バネ金具と、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記磁性コアは、前記巻回部の内側に配置される内側脚部と、前記巻回部の外周面の一部を挟む二つの外側脚部と、前記巻回部の各端面を挟む二つの連結部とを備え、
前記巻回部は、前記外周面が前記ケースの内壁面に対向するように配置され、
前記ケースは、平面形状が長方形状の開口部を有し、
前記板バネ金具は、前記板バネ金具の両端部が前記内壁面のうち、長辺方向に対向する箇所に直接押圧されることで前記内底面側に向かって湾曲された状態で配置され、
前記板バネ金具における前記組合体の押圧箇所は、前記板バネ金具の湾曲箇所における前記ケースの深さ方向の最下点を含む。
【0024】
第三の本開示のリアクトルは、以下の〈1〉、〈2〉を満たす。
〈1〉巻回部の軸方向がケースの深さ方向に直交すると共に、内側脚部及び両外側脚部の並び方向がケースの深さ方向に平行するように、組合体がケースに収納される。以下、この配置形態を脚縦積み型と呼ぶ。
〈2〉巻回部の軸方向と、内側脚部の軸方向及び両外側脚部の軸方向とがケースの深さ方向に平行するように、組合体がケースに収納される。以下、この配置形態を直立型と呼ぶ。
なお、巻回部の軸方向と、内側脚部及び両外側脚部の並び方向とがケースの深さ方向に直交するように、組合体がケースに収納される形態を平置き型と呼ぶ。
【0025】
第三の本開示のリアクトルは、上述の理由(a),(b)により、小型である。なお、理由(b)において「縦積み型」は「脚縦積み型又は直立型」に読み替える。
【0026】
また、第三の本開示のリアクトルは、上述の理由(A),(B),(D)により、放熱性に優れる。なお、理由(B)において「縦積み型」は「脚縦積み型又は直立型」に読み替える。
【0027】
更に、第三の本開示のリアクトルは、上述の第一,第二の本開示のリアクトルと同様に、板バネ金具が組合体をケースの内底面側に押圧することによって、組合体がケースから脱落することを防止できる。
【0028】
加えて、第三の本開示のリアクトルでは、板バネ金具の押圧箇所がコイルではなく、後述するように磁性コアである。この点で、第三の本開示のリアクトルは、コイルと板バネ金具との間の電気絶縁性を高め易い。
【0029】
(4)本開示のリアクトルの一例として、
前記板バネ金具の両端部はそれぞれ傾斜面を含み、
前記傾斜面は、前記内底面側から前記ケースの開口部側に向って前記板バネ金具の厚さが薄くなるように傾斜する形態が挙げられる。
【0030】
上記形態における板バネ金具では、傾斜面を除く表裏面の長さが異なる。そのため、この板バネ金具はケースの内底面側に配置される面が凸になるように湾曲し易い。また、上記形態における板バネ金具は、傾斜面を含む先端をケースの内周面に食い込ませられる。このような板バネ金具は、組合体をケースの内底面側により確実に押し付けられる上に、押し付けた状態を長期にわたって維持できる。従って、上記形態は、放熱性に優れる上に、組合体におけるケースからの脱落を防止できる。
【0031】
(5)本開示のリアクトルの一例として、
前記板バネ金具は、前記内底面側に向って局所的に突出するU字状の突起部を備え、
前記板バネ金具の前記押圧箇所は、前記突起部を含む形態が挙げられる。
【0032】
上記形態における板バネ金具は、突起部によって、組合体をケースの内底面側により確実に押し付けられる。従って、上記形態は、放熱性に優れる上に、組合体におけるケースからの脱落を防止できる。
【0033】
(6)本開示のリアクトルの一例として、
前記板バネ金具の前記押圧箇所は、前記磁性コアにおける前記巻回部の外側に配置される箇所を直接又は間接的に押圧する箇所を含む形態が挙げられる。
【0034】
上記形態は、板バネ金具が巻回部を押圧する場合に比較して、板バネ金具と巻回部との間の電気絶縁性を高め易い。板バネ金具と、磁性コアにおいて板バネ金具に押圧される箇所との間に電気絶縁部材が介在された間接的な押圧であれば、板バネ金具と磁性コアとの間の電気絶縁性が高められる。上記電気絶縁部材は、例えば後述の実施形態で説明する保持部材、樹脂モールド部等が挙げられる。
【0035】
(7)本開示のリアクトルの一例として、
前記内壁面は、前記板バネ金具の少なくとも一方の端部を収納する凹部を備える形態が挙げられる。
【0036】
上記形態における板バネ金具は、一端部又は両端部がケースの凹部に嵌め込まれることで、上述の傾斜面の有無によらず、ケースの内周面に確実に支持され、位置ずれし難い。そのため、板バネ金具は、組合体をケースの内底面側に押し付けた状態を長期にわたって維持できる。従って、上記形態は、放熱性に優れる上に、組合体におけるケースからの脱落を防止できる。
【0037】
(8)本開示のリアクトルの一例として、
前記組合体と前記内底面との間に介在される接着層を備える形態が挙げられる。
【0038】
上記形態は、接着層によって組合体とケースの内底面とを強固に接合できる。そのため、上記形態は、リアクトルの使用時に振動や熱衝撃等が生じても、組合体におけるケースからの脱落を防止し易い。
【0039】
(9)本開示のリアクトルの一例として、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備える形態が挙げられる。
【0040】
上記形態は、樹脂モールド部によって磁性コアを一体に保持できる。ひいては組合体が一体化される。そのため、製造過程では組合体をケースに収納し易く、上記形態は、製造性にも優れる。
【0041】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0042】
実施形態1,2では、二つの巻回部を有するコイルを備える形態を説明する。実施形態3,4では、一つの巻回部を有するコイルを備える形態を説明する。
【0043】
[実施形態1]
図1から
図3を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。
図1Aは、実施形態1のリアクトル1Aにおいてケース5の側壁部52の一部をケース5の深さ方向に平行な平面で切断して、ケース5の収納物を露出させて示す部分断面図である。ここでは、
図2に示すA-A切断線によって、ケース5、封止樹脂部6、接着層9の一部を切断し、組合体10及び板バネ金具7は切断していない。組合体10及び板バネ金具7は、封止樹脂部6から露出させている。なお、A-A切断線は、ケース5の開口部55の長辺方向に沿った平面上の線である。
図1Bは、
図1Aの破線円1B内を拡大して示す部分拡大図である。
図1Bは、端部72と内壁面522との接触状態が分かり易いように、ケース5の側壁部52のうち、板バネ金具7の端部72の近くを拡大して示す。
【0044】
(リアクトル)
〈概要〉
実施形態1のリアクトル1Aは、
図1Aに示すように、コイル2と、磁性コア3と、ケース5と、板バネ金具7と、封止樹脂部6とを備える。
コイル2は、並列される一対の巻回部21,22を有する。並列される巻回部21,22とは、各巻回部21,22の軸が平行するように並んで配置されるものをいう。
磁性コア3は、巻回部21,22の内側及び外側に配置され、環状の閉磁路を形成する。本例の磁性コア3は、各巻回部21,22の内側に配置される内側コア部31,32と、両巻回部21,22の外側に配置される二つの外側コア部33とを備える(
図3Aも参照)。
ケース5は、コイル2と磁性コア3とを含む組合体10を収納する。本例の組合体10は、コイル2及び磁性コア3に加えて、保持部材4と、樹脂モールド部8とを備える。
板バネ金具7は、組合体10をケース5の内底面510側に押し付ける。
封止樹脂部6は、ケース5内に充填される。本例の封止樹脂部6は、ケース5内に収納される組合体10及び板バネ金具7を埋設する。
【0045】
このようなリアクトル1Aは、代表的には、図示しないコンバータケース等の設置対象にケース5が取り付けられて使用される。リアクトル1Aの設置状態の一例として、ケース5の底部51が設置対象側に位置し、ケース5の開口部55が設置対象とは反対側に位置することが挙げられる。上記設置対象側は、
図1Aでは紙面下側である。上記設置対象とは反対側は、
図1Aでは紙面上側である。設置状態は適宜変更できる。
【0046】
実施形態1のリアクトル1Aは、縦積み型である。縦積み型では、巻回部21,22の並び方向がケース5の深さ方向になるように、両巻回部21,22がケース5内に配置される。そのため、リアクトル1Aに備えられる両巻回部21,22は、ケース5内において上記並び方向がケース5の内底面510に直交し、各巻回部21,22の軸方向が内底面510に平行するように配置される。上記並び方向は、
図1Aでは紙面上下方向である。縦積み型は、平置き型に比較して、設置面積を小さくし易い上に、コイル2におけるケース5への放熱面積を大きく確保し易い。
【0047】
また、実施形態1のリアクトル1Aでは、
図2に示すように、ケース5は、平面形状が長方形状の開口部55を有する。板バネ金具7は、この長方形状の開口部55に対して、長辺方向の全長にわたって配置される。上記長辺方向は、
図2では紙面左右方向である。
【0048】
更に、板バネ金具7は、ボルト等でケース5に固定されず、ケース5に直接支持される。詳しくは、板バネ金具7は、両端部71,72がケース5の内壁面のうち、開口部55の長辺方向に対向する箇所、即ち短辺側の内壁面に直接押圧される。この押圧によって、板バネ金具7は、ケース5の内底面510側に向って湾曲された状態に維持される(
図1A)。ここでは、両端部71,72は、上記長辺方向の両端に位置する内壁面521及び内壁面522に支持される。リアクトル1Aは、内底面510側に向かって凸となるように湾曲した板バネ金具7によって(
図1A)、組合体10を内底面510側に押圧することで、ケース5から組合体10が脱落することを防止する。
【0049】
ケース5は、ボルトを固定する取付台が省略されることによって小さくできる。そのため、リアクトル1Aは、組合体10の外周面とケース5の内面とを近接させ易く、組合体10の熱、特にコイル2の熱をケース5に伝え易い。板バネ金具7が組合体10をケース5の内底面510側に押圧することからも、リアクトル1Aは、組合体10の熱をケース5、特に底部51に伝え易い。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0050】
〈コイル〉
本例のコイル2は、二つの筒状の巻回部21,22を備える。また、本例のコイル2は、1本の連続する巻線から形成される巻回部21,22と、接続部23(
図3A)とを備える。巻回部21,22はそれぞれ、巻線が螺旋状に巻回されてなる。接続部23は、巻回部21,22を電気的に接続する箇所である。本例の接続部23は、巻回部21,22間に渡される巻線の一部から構成される。
図3Aは、二点鎖線で仮想的に接続部23を示す。コイル2における各巻回部21,22から引き出される巻線の端部は、電源等の外部装置が接続される箇所として利用される。巻線の詳細な図示は省略する。
【0051】
巻線は、導体線と、導体線の外周を覆う絶縁被覆とを備える被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅等が挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミド等の樹脂が挙げられる。被覆線の具体例として、断面形状が長方形である被覆平角線、断面形状が円形である被覆丸線が挙げられる。平角線からなる巻回部21,22の具体例として、エッジワイズコイルが挙げられる。
【0052】
本例の巻回部21,22は、被覆平角線からなり、直方体といった四角筒状のエッジワイズコイルである。そのため、各巻回部21,22の外周面は四つの長方形状の平面を含む。また、本例では、巻回部21,22の形状・巻回方向・ターン数等の仕様が等しい。このような巻回部21,22が並列されたコイル2の外観は、直方体状である。直方体状のコイル2は、外周面として、両巻回部21,22の外周面であって並び方向に平行な面と、並び方向の両側に位置する巻回部21の外周面の一面及び巻回部22の外周面の一面とを備える。上記並び方向に平行な二つの面、及び各巻回部21,22の一面はいずれも、実質的に平坦な平面である。即ち、コイル2の外周面は、平坦な平面を多く含むといえる。上記並び方向に平行な二つの面は、
図1Aでは紙面手前側の面及び紙面奥側の面である。上記巻回部21の一面は、
図1Aでは下面である。上記巻回部22の一面は、
図1Aでは上面である。
【0053】
一方、後述するケース5の内底面510及びケース5の内周面である内壁面521~524も、実質的に平坦な平面である(
図3Aも参照)。そのため、コイル2の外周面は、ケース5の内底面510、内壁面523,524に近接して配置され易い。この点は、
図2の間隔C5も参照されたい。また、コイル2の外周面が平坦な面を多く含むことで、組合体10がケース5に収納された状態において、巻回部21,22におけるケース5の深さ方向の位置の調整が行い易い。結果として、後述する板バネ金具7の配置位置の調整が行い易い。
【0054】
なお、巻回部21,22の形状、大きさ等といったコイル2の仕様は適宜変更できる。この点は、後述の変形例2を参照するとよい。
【0055】
〈磁性コア〉
本例の磁性コア3は、4つの柱状のコア片を備える(
図3Aも参照)。二つのコア片はそれぞれ、主として内側コア部31,32を構成する。残り二つのコア片はそれぞれ、外側コア部33を構成する。内側コア部31,32と、外側コア部33とが独立したコア片であることで、コア片の構成材料の自由度や形状の自由度、製造方法の自由度が高められる。また、本例では、各内側コア部31,32が一つのコア片で構成されるため、コア片の個数が少ない。この点で、組付部品点数が少なく、リアクトル1Aは組立作業性に優れる。
【0056】
《コア片の形状、大きさ》
本例では、各内側コア部31,32を構成するコア片は、同一形状、同一の大きさである。各コア片は、巻回部21,22の内周形状に概ね相似な外周形状を有する細長い直方体状である。各内側コア部31,32は、各コア片の軸方向が各巻回部21,22の軸方向に平行するように配置される。内側コア部31,32を構成するコア片の両端部は、外側コア部33と接続されるため、巻回部21,22から露出される。
【0057】
本例では、各外側コア部33を構成するコア片は、同一形状、同一の大きさであり、直方体状である。外側コア部33の内端面3eと、内側コア部31,32の端面とが接続される(
図3A)。そのため、内端面3eは、内側コア部31の一つの端面と、内側コア部32の一つの端面との合計面積より大きな面積を有する。また、外側コア部33が直方体状であることで、外側コア部33の外周面は、実質的に平坦な平面である。そのため、組合体10がケース5に収納された状態において、外側コア部33におけるケース5の深さ方向に沿った位置を調整し易い。結果として、後述する板バネ金具7の配置位置の調整が行い易い。
【0058】
なお、コア片の形状、大きさ、個数等といった磁性コア3の仕様は適宜変更できる。この点は、後述の変形例3を参照するとよい。
【0059】
《構成材料》
磁性コア3を構成する各コア片は、軟磁性材料を主体とする成形体等が挙げられる。軟磁性材料は、鉄や鉄基合金といった金属、フェライト等の非金属等が挙げられる。鉄基合金は、例えばFe-Si合金、Fe-Ni合金等が挙げられる。上記成形体は、複合材料の成形体、圧粉成形体、電磁鋼板といった軟磁性材料からなる板材の積層体、フェライトコア等の焼結体等が挙げられる。
【0060】
複合材料の成形体は、磁性粉末と樹脂とを含む。磁性粉末は、樹脂中に分散される。複合材料中の磁性粉末の含有量は、例えば、30体積%以上80体積%以下が挙げられる。磁性粉末が多いほど、複合材料の成形体の飽和磁束密度が高くなったり、放熱性が高くなったりし易い。複合材料中の樹脂の含有量は、例えば10体積%以上70体積%以下が挙げられる。樹脂を上記範囲で含む複合材料の成形体は、電気絶縁性に優れる。そのため、渦電流損等が低減されて、磁性コア3が低損失になり易い。また、樹脂を上記範囲で含む複合材料の成形体は、磁気飽和し難い。このような複合材料の成形体を含む磁性コア3は磁気ギャップを省略したり、磁気ギャップを薄くしたりし易い。上記樹脂は、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。より具体的な樹脂は保持部材の項を参照するとよい。
【0061】
圧粉成形体は、磁性粉末の集合体である。代表的には、圧粉成形体は、磁性粉末とバインダーとを含む混合粉末を所定の形状に圧縮成形した後、熱処理を施したものが挙げられる。熱処理によって、通常、バインダーは熱変性されたり、消失したりする。圧粉成形体は、代表的には複合材料の成形体に比較して磁性粉末の含有割合が高い。例えば、圧粉成形体における磁性粉末の割合は85体積%以上である。このような圧粉成形体では、飽和磁束密度や比透磁率が高い。
【0062】
磁性コア3を構成する全てのコア片の構成材料が等しくてもよいし、全て異なってもよい。また、磁性コア3は、構成材料が異なるコア片を含んでもよい。本例では、主として内側コア部31,32を構成するコア片は複合材料の成形体である。外側コア部33を構成するコア片は圧粉成形体である。また、本例の磁性コア3は、ギャップ材を有していない。この点で磁性コア3は小型である。
【0063】
《その他の部材》
磁性コア3は、必要に応じて、図示しない磁気ギャップを備えてもよい。磁気ギャップは、エアギャップでも、アルミナ等の非磁性材料からなる板材等でもよい。
【0064】
〈保持部材〉
本例のリアクトル1Aは、コイル2と磁性コア3との間に介在される保持部材4を備える。保持部材4は代表的には電気絶縁材から構成されて、コイル2と磁性コア3との間の電気絶縁性の向上に寄与する。本例の保持部材4は、巻回部21,22、内側コア部31,32及び外側コア部33を支持して、巻回部21,22に対する内側コア部31,32,外側コア部33の位置決めに利用される。
【0065】
本例の保持部材4は、コイル2の巻回部21,22の各端部に設けられる枠状の部材である。詳しくは、各保持部材4は、
図3Aに示すように一対の貫通孔43が設けられた枠板部41と、枠板部41の周縁に沿って設けられる周壁部42とを備える。各保持部材4の基本的構成は同じである。
【0066】
枠板部41は、コイル2の巻回部21,22の端面と外側コア部33の内端面3eとの間に介在される。枠板部41の一面が巻回部21,22の端面に対向する。枠板部41の他面が外側コア部33の内端面3eに対向する。枠板部41に設けられる一対の貫通孔43にそれぞれ、内側コア部31,32の端部が挿通される。枠板部41は、巻回部21,22側の面に、貫通孔43の内周縁から内側コア部31,32側に突出する直方体状の突片を有する。突片の図示は省略する。類似の形状として、特許文献1の内側介在部82を参照するとよい。上記突片は、巻回部21,22の内周面と内側コア部31,32の外周面との間に差し込まれる。その結果、巻回部21,22と内側コア部31,32との両者間に上記突片の厚さに応じた隙間が設けられる。この隙間によって、上記の両者間の電気的絶縁性が高められる。また、上記突片によって、上記の両者間の位置決めがなされる。
【0067】
周壁部42は、外側コア部33の外周面の少なくとも一部を囲み、保持部材4に対する外側コア部33の位置決めを行う。ここでは、外側コア部33の外周面は、内端面3eと外端面3oとをつなぐ四つの面である。本例の周壁部42は、外側コア部33の外周面のうち、連続する三面を覆う門型又は連続する四面を覆う矩形枠状である。このような保持部材4を介してコイル2、内側コア部31,32、外側コア部33は、相互に位置決めされる。
【0068】
本例では、周壁部42の内周面と外側コア部33の外周面との間に隙間が設けられるように、周壁部42の大きさが調整されている。この隙間には、外側コア部33の外周面の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部8の構成樹脂が充填される。この隙間と、貫通孔43と、上述の巻回部21,22と内側コア部31,32との隙間とが連通するように、保持部材4が形成される。リアクトル1Aの製造過程では、これらの連通空間を樹脂モールド部8をなす原料樹脂の流路に利用することができる。樹脂モールド部8の詳細は後述する。
【0069】
保持部材4は、上述の機能を有すれば、形状や大きさ等を適宜変更できる。また、保持部材4は、公知の構成を利用できる。例えば、保持部材4は、上述の枠板部41及び周壁部42を備える枠状の部材とは独立して、巻回部21,22と内側コア部31,32との間に配置される部材を含んでもよい。保持部材4は省略してもよい。この点は、後述の変形例1を参照するとよい。
【0070】
保持部材4の構成材料は、樹脂といった電気絶縁材料が挙げられる。具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の一例として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。保持部材4は、射出成形等の公知の成形方法によって製造できる。
【0071】
〈樹脂モールド部〉
本例のリアクトル1Aは、磁性コア3の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部8を備える。樹脂モールド部8は、磁性コア3の少なくとも一部を覆うことで、磁性コア3を外部環境から保護したり、機械的に保護したり、磁性コア3とコイル2や周囲部品との間の電気絶縁性を高めたりする機能を有する。樹脂モールド部8は、
図1Aに例示するように磁性コア3を覆い、巻回部21,22の外周面を覆わず露出させると、放熱性に優れる。この理由は、巻回部21,22の外周面をケース5の内面に近接できるからである。
【0072】
本例の樹脂モールド部8は、内側コア部31,32の少なくとも一部を覆う内側樹脂部と、外側コア部33の少なくとも一部を覆う外側樹脂部83とを備える。内側樹脂部の図示は省略する。本例の樹脂モールド部8は、内側樹脂部と外側樹脂部83とが連続する一体成形物である。このような樹脂モールド部8は、内側コア部31,32と外側コア部33とを一体に保持できる。そのため、磁性コア3の一体物としての剛性、強度が高められる。内側樹脂部と外側樹脂部83とが連続する樹脂モールド部8は、上述の保持部材4と外側コア部33との隙間と、保持部材4の貫通孔43と、巻回部21,22と内側コア部31,32との隙間とでつくられる連通する空間に樹脂モールド部8の構成樹脂を充填することで製造できる。本例の内側樹脂部は、上述の巻回部21,22と内側コア部31,32との隙間の少なくとも一部に介在する。外側樹脂部83は、外側コア部33の内端面3eを除く箇所、即ち主として外端面3o及び外周面を覆うと共に、上述の保持部材4と外側コア部33との隙間に介在する。
【0073】
樹脂モールド部8の被覆範囲、厚さ等は適宜選択できる。例えば、樹脂モールド部8は、内側樹脂部を備えておらず、実質的に外側コア部33のみを覆うものでもよい。この理由は、内側樹脂部が無くても、又は内側樹脂部の形成範囲が小さくても、外側コア部33と保持部材4とが樹脂モールド部8によって一体化されることで、保持部材4を介して、内側コア部31,32も一体化できるからである。
【0074】
樹脂モールド部8の構成材料は、各種の樹脂が挙げられる。例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の一例として、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂等が挙げられる。上記構成材料は、樹脂に加えて、熱伝導性に優れる粉末を含有してもよい。上記粉末は、各種のセラミックス、炭素系材料等といった非金属無機材料からなるものが挙げられる。セラミックスは、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム等の酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ほう素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物等が挙げられる。炭素系材料は、カーボンナノチューブ等が挙げられる。上記粉末を含む樹脂モールド部8は、放熱性により優れる。樹脂モールド部8の成形には、射出成形等が利用できる。
【0075】
〈ケース〉
ケース5は、組合体10の全体を収納可能な形状及び大きさを有する内部空間を備えて、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護を行う。外部環境からの保護は、防食性の向上等を目的とする。本例のケース5は、金属から構成されており、組合体10の放熱経路としても機能する。一般に金属は樹脂に比較して熱伝導性に優れる。そのため、金属製のケース5は、放熱経路に利用できる。
【0076】
ケース5は、底部51と、底部51から立設される側壁部52とを備え、底部51に対向する側が開口した有底筒状体が挙げられる。底部51に対向する側は、
図1Aでは紙面上側である。底部51は、組合体10が載置される内底面510を有する。本例では、組合体10は、後述する接着層9を介して、内底面510に載置される。側壁部52は、内底面510に連続する内壁面を備える。内壁面は、組合体10の外周面を囲む。ケース5の開口部55の平面形状は、長方形状である。
【0077】
本例では、底部51は、長方形状の板材から構成される。側壁部52は、直方体状の筒部から構成される。開口部55の平面形状は長方形である。そのため、ケース5は、直方体状の内部空間を有し、外観も直方体状である。ケース5の内面は、内周面を構成する四つの内壁面521~524と、内底面510とを備える。内壁面521,522は、開口部55の長辺方向の両側に位置し、互いに対向する。内壁面523,524は、開口部55の短辺方向の両側に位置し、互いに対向する。上記短辺方向は、
図2では紙面上下方向である。内底面510の平面形状は、開口部55と実質的に同一の長方形である。なお、
図1Aでは、側壁部52において内壁面524を有する箇所が切断されて、図示されていない。
【0078】
本例の内壁面521~524及び内底面510はいずれも実質的に平面である。組合体10がケース5に収納された状態において、コイル2の外周面のうち、上述の並び方向に平行な面は、内壁面523,524に対向するように配置される。また、コイル2の外周面のうち、一方の巻回部21の一面、
図1Aでは下面は、内底面510に対向すると共に、平行するように配置される。即ち、コイル2の外周面とケース5の内壁面521~524及び内底面510とは、平面同士で対向する。平面同士で対向する箇所では、コイル2の外周面とケース5の内面との間隔が小さくなり易い。また、コイル2の外周面とケース5の内面とが実質的に平行する箇所では、コイル2の外周面とケース5の内面との間隔が実質的に一様な距離になる。
【0079】
実施形態1のリアクトル1Aではコイル2の外周面とケース5の内面との間の距離が非常に小さい。
例えば、巻回部21の一面、
図1Aでは下面とケース5の内底面510との間隔C8は後述の接着層9の厚さ程度である。例えば、間隔C8は、0.5mm以下、更に0.3mm以下が挙げられる。
巻回部22の外周面において並び方向に平行な各面、
図2では上面及び下面と、各内壁面523,524との間隔C5は例えば0.3mm以上0.5mm以下程度が挙げられる。間隔C5が0.3mm以上であれば、リアクトル1Aの製造過程で、封止樹脂部6の原料樹脂60(
図3D)が巻回部22とケース5の内周面との隙間に充填され易い。間隔C5が0.5mm以下であれば、巻回部21,22の熱がケース5に伝わり易く、リアクトル1Aは放熱性に優れる。また、設置面積が小さくなり易く、リアクトル1Aは小型になり易い。
【0080】
本例のケース5は、底部51と側壁部52とが一体に成形された金属製の箱である。そのため、ケース5は、連続した放熱経路として良好に利用できる。特に、ケース5の構成材料が純アルミニウム又はアルミニウム基合金といったアルミニウム系材料である場合、ケース5は、熱伝導率が高く、放熱性に優れる上に、軽量である。また、この場合、アルミニウム系材料は非磁性材であるため、ケース5がコイル2に磁気的影響を与え難い。特に、純アルミニウムはアルミニウム基合金より熱伝導率が高い。そのため、上記構成材料が純アルミニウムであるケース5は放熱性により優れる。また、純アルミニウムは、クロム鋼等の鉄系材料より柔らかい。そのため、リアクトル1Aの製造過程で、板バネ金具7の端部71,72がケース5の内壁面521,522に食い込み易い。詳細は後述する。本例のケース5は、アルミニウム系材料からなる。
【0081】
ケース5の具体的な大きさとして、容量は、例えば250cm3以上1450cm3以下が挙げられる。開口部55の長辺長さは、例えば80mm以上120mm以下が挙げられる。開口部55の短辺長さは、例えば40mm以上80mm以下が挙げられる。ケース5の深さは、例えば80mm以上150mm以下が挙げられる。
【0082】
〈板バネ金具〉
板バネ金具7は、ケース5に収納された組合体10をケース5の内底面510側に押圧する部材である。特に、実施形態1のリアクトル1Aでは、板バネ金具7は、ケース5の内壁面の対向箇所にわたって配置されると共に、上記対向箇所に直接押圧されることで湾曲された状態で配置される。ここでは内壁面521,522間にわたって、板バネ金具7が配置される。板バネ金具7は、ケース5によって、内底面510側に向かって凸になるように湾曲された状態に支持されることで、組合体10を押圧する付勢力を発現する。板バネ金具7における組合体10の押圧箇所は、板バネ金具7の湾曲箇所におけるケース5の深さ方向の最下点を含む。また、実施形態1のリアクトル1Aでは、ケース5における板バネ金具7を押圧する箇所は、長方形状の開口部55の長辺方向に対向する箇所であり、ここでは内壁面521,522である。
【0083】
本例の板バネ金具7は、
図2に示すように、一様な幅W7を有する帯板である。板バネ金具7は、本体部70と、端部71,72とを備える。本体部70は、組合体10の押圧箇所を含む。端部71,72は、ケース5に支持される。
【0084】
本例の本体部70は、
図1Aに示すように、一様な厚さを有する。また、本例の本体部70は、帯板の厚さ方向に局所的に突出するU字状の突起部73を備える。詳しくは、本体部70における端部71,72側の領域がそれぞれ、帯板の長手方向に交差するようにU字状に屈曲されている。板バネ金具7がケース5に収納された状態において、突起部73は、ケース5の内底面510側に向かって突出するように配置され、板バネ金具7におけるケース5の深さ方向の最下点をなす。本例の板バネ金具7は、組合体10の押圧箇所として、突起部73を含む。本例では、各突起部73の形成位置は、板バネ金具7がケース5に湾曲状に支持された状態において、各外側コア部33に直接又は間接的に接触する箇所である。
【0085】
ここで、ケース5に収納されて湾曲状態にある板バネ金具7において、ケース5の深さ方向の最下点とは、板バネ金具7の両端部71,72をつなぐ最短の直線から最も離れた点である。板バネ金具7の上記最下点は、板バネ金具7の付勢力が最も発現する箇所である。そのため、板バネ金具7の上記最下点及びその近傍の箇所は、組合体10の押圧箇所に適する。従って、板バネ金具7の形状、大きさ等は、上記最下点及びその近傍の箇所が組合体10の押圧箇所に含まれるように調整することが好ましい。突起部73を有する場合、突起部73が上記最下点及びその近傍の箇所をなす。なお、突起部73は省略できる。この点は、後述する実施形態2を参照するとよい。
【0086】
本例では、板バネ金具7がケース5によって湾曲状に支持された状態において、各突起部73の先端が外側コア部33を押圧するように、板バネ金具7の長さ、突起部73の突出長さ、形成位置等が調整されている。そのため、板バネ金具7は、コイル2に接触しない。このようなリアクトル1Aは、コイル2と板バネ金具7との間の電気的絶縁性に優れる。本例の板バネ金具7は、上述の外側コア部33を囲む周壁部42を介して、外側コア部33を間接的に押圧する。詳しくは、板バネ金具7は、外側コア部33の外周面のうち、ケース5の開口部55側に配置される一面を覆う周壁部42の一面を押圧する(
図1A)。保持部材4を省略して、板バネ金具7が外側コア部33を直接押圧してもよい。この点は、後述する変形例1を参照するとよい。
【0087】
本例の両端部71,72は、本体部70より厚さが薄い箇所を含む。詳しくは、両端部71,72はそれぞれ、傾斜面77を含む。傾斜面77は、帯板の一面側から他面側に向かって板バネ金具7の厚さが薄くなるように傾斜する。傾斜面77を備える板バネ金具7は、一面の長さが他面の長さより長い帯板から構成されるといえる。傾斜面77を除いて両面の長さが異なることで、板バネ金具7は、長さが長い一面が凹となり、長さが短い他面が凸となるように湾曲し易い。そのため、長さが長い一面がケース5の開口部55側に位置し、長さが短い他面がケース5の内底面510側に位置するように板バネ金具7をケース5に収納すれば、板バネ金具7は、内底面510側に向かって凸となるように湾曲した状態を維持し易い。その結果、板バネ金具7は、組合体10を内底面510側に良好に押し付けられる。なお、板バネ金具7がケース5に収納された状態では、両端部71,72の傾斜面77はそれぞれ、ケース5の内底面510側から開口部55側に向って板バネ金具7の厚さが薄くなるように傾斜する。
【0088】
両端部71,72に傾斜面77を備えることで、板バネ金具7の先端は尖っているといえる。そのため、板バネ金具7及びケース5の構成材料にもよるが、
図1A,
図1Bに示すように、板バネ金具7の先端がケース5の内壁面521,522に食い込んだ状態にできる。この食い込み又は突き刺しによって、板バネ金具7は、リアクトル1Aの使用時に振動等が生じても位置ずれし難く、両内壁面521,522に支持された状態を維持し易い。また、板バネ金具7がケース5から脱落し難い。そのため、板バネ金具7は、長期にわたり、組合体10をケース5の内底面510側に良好に押圧できる。リアクトル1Aの製造過程で、板バネ金具7の先端をケース5の内壁面521,522に食い込ませることで、又は突き刺すことで、このような板バネ金具7が食い込んだ状態にできる。なお、傾斜面77は省略できる。この点は、後述する実施形態2を参照するとよい。
【0089】
板バネ金具7の長さ、幅W7、厚さ等は、組合体10をケース5の内底面510側に押圧可能な付勢力を発現できる範囲で適宜選択できる。
【0090】
代表的には、板バネ金具7の長さは、ケース5の開口部55の長辺長さより長いことが挙げられる。ここで、板バネ金具7の一面又は他面に沿った長さであって、最短の長さを実長さと呼ぶ。また、板バネ金具7の一方の端部71から他方の端部72までの最短距離を見掛け長さと呼ぶ。例えば、板バネ金具7が円弧状に塑性変形された成形体であれば、実長さは弧の長さ、見掛け長さは弦の長さに相当する。常温Tr、例えば日本国では20℃±15℃において、板バネ金具7の見掛け長さが、端部71,72を支持するケース5の内壁面521,522間の距離、即ちケース5の開口部55の長辺長さL5以上であれば、実長さは長辺長さL5より長い。そのため、板バネ金具7は、ケース5に支持された状態において、湾曲箇所を確実に有し、組合体10を押し付ける付勢力を発現できる。本例のように両端部71,72の先端が両内壁面521,522に食い込む板バネ金具7は、内壁面521,522への食い込み箇所を含む。このような板バネ金具7の見掛け長さは、長辺長さL5より長い。また、本例のように、突起部73を含む板バネ金具7は、実長さを長辺長さL5より長くし易い。
【0091】
板バネ金具7の幅W7が大きいほど、板バネ金具7は組合体10をより確実に押圧し易い。幅W7は、例えば、ケース5の開口部55の幅W5より小さく、かつ組合体10の幅W1の50%以上100%未満、更に60%以上80%以下が挙げられる。板バネ金具7の幅W7がケース5の幅W5より小さいことで、製造過程で、ケース5の開口部55から板バネ金具7を収納し易い。また、板バネ金具7の幅W7が組合体10の幅W1より小さいことで、板バネ金具7が大き過ぎず、ケース5が板バネ金具7を適切に支持し易い。板バネ金具7の厚さは、例えば0.5mm以上1.0mm以下程度が挙げられる。
【0092】
板バネ金具7の構成材料は、バネ性に優れる金属が好ましい。バネ性に優れる金属として、例えば、鉄基合金、特に各種の鋼等が挙げられる。鋼の一例として、クロム鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。ステンレス鋼は、例えばSUS304等が挙げられる。また、板バネ金具7の構成材料は、ケース5の構成材料より線膨張係数が小さく、ケース5に比較して熱収縮し難い金属でもよい。この場合は、後述の製造方法(i)を好適に利用できる。更に、板バネ金具7の構成材料は、ケース5の構成材料より高硬度であると、傾斜面77を備える場合にケース5に端部71,72が食い込み易く好ましい。本例の板バネ金具7は、クロム鋼の帯板から構成される。そのため、本例の板バネ金具7は、アルミニウム系材料からなるケース5より高硬度である。
【0093】
板バネ金具7の形状、大きさ、構成材料、個数等は適宜選択できる。板バネ金具7の大きさは、実長さ、幅W7、厚さ、傾斜面77の角度等が挙げられる。
例えば、突起部73の個数は、一つでもよい。又は、例えば板バネ金具7の幅W7が局所的に広く又は狭くてもよい。又は、例えば複数の板バネ金具7がケース5の開口部55の短辺方向に並んで配置されてもよい。
但し、本例のように幅W7が幅W1の60%以上80%以下であり、ある程度大きい上に、板バネ金具7の個数が一つであると、組立部品点数が少ない。この点で、リアクトル1Aは組立作業性に優れる。
【0094】
〈封止樹脂部〉
封止樹脂部6は、ケース5内に充填される。また、封止樹脂部6は、組合体10を覆う。より具体的には、封止樹脂部6は、組合体10とケース5との隙間に介在される。また、封止樹脂部6は、組合体10における開口部55側の領域を覆う。このような封止樹脂部6は、組合体10の機械的保護、外部環境からの保護、組合体10とケース5との間の電気的絶縁性の向上、組合体10とケース5との一体化によるリアクトル1Aの強度や剛性の向上といった種々の機能を奏する。封止樹脂部6の材質によっては放熱性の向上も期待できる。なお、外部環境からの保護は、防食性の向上等を目的とする。
【0095】
本例の封止樹脂部6は、組合体10の全体、及び板バネ金具7の全体を埋設する。そのため、封止樹脂部6は、板バネ金具7の両端部71,72がケース5の内壁面521,522に直接押圧された状態、即ち板バネ金具7が湾曲された状態を維持する機能も奏すると期待される。板バネ金具7が湾曲された状態が長期にわたり維持されることで、板バネ金具7は、組合体10を内底面510側に押圧する付勢力を発現し続けられる。そのため、封止樹脂部6がケース5から剥離するような応力が封止樹脂部6に作用して、組合体10が封止樹脂部6と共にケース5から脱落しようとしても、板バネ金具7は、上記の脱落を効果的に防止できる。
【0096】
封止樹脂部6の埋設範囲は適宜変更できる。例えば、板バネ金具7の少なくとも一部や組合体10の一部が封止樹脂部6から露出されてもよい。
【0097】
封止樹脂部6の構成材料は、各種の樹脂が挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の一例として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。その他、上記構成材料は、PPS樹脂等の熱可塑性樹脂でもよい。上記構成材料は、樹脂に加えて、熱伝導性に優れる粉末や電気絶縁性に優れる粉末を含有してもよい。上記粉末は、上述のアルミナ等のセラミックスといった非金属無機材料からなるものが挙げられる。上記粉末を含む封止樹脂部6は、放熱性や電気絶縁性により優れる。その他、封止樹脂部6は公知の樹脂組成物を利用できる。本例の封止樹脂部6の構成材料は、アルミナ等の粉末を含有しており、放熱性に優れる。
【0098】
〈接着層〉
本例のリアクトル1Aは、接着層9を備える。接着層9は、組合体10とケース5の内底面510との間に介在される。本例の接着層9は、
図1Aに示すように、組合体10における一方の巻回部21の一面及び保持部材4の一面と、内底面510とを接合する。上記巻回部21の一面、保持部材4の一面はいずれも、
図1Aでは下面である。
【0099】
接着層9は、組合体10と内底面510とを強固に接合する。そのため、リアクトル1Aの使用時に振動や熱衝撃等が生じても、組合体10はケース5から脱落し難い。従って、接着層9は、組合体10におけるケース5からの脱落防止に寄与する。上記熱衝撃は、リアクトル1Aの使用環境の温度差、通電・非通電に伴う温度差等に起因して生じ得る。また、接着層9によって接合されることで、組合体10は、内底面510に対する近接状態を維持できる。そのため、組合体10の熱、本例では特にコイル2の熱がケース5の底部51に伝わり易い。従って、接着層9は、放熱性の向上にも寄与する。
【0100】
接着層9の構成材料、形成領域、厚さ等は適宜選択できる。接着層9の構成材料は、代表的には、樹脂等の電気絶縁材料が挙げられる。樹脂等を含む接着層9は、組合体10におけるケース5への載置領域と、ケース5の内底面510との間の電気絶縁性を高め易い。上記構成材料は、樹脂に加えて、熱伝導性に優れる粉末等を含有してもよい。上記構成材料の熱伝導率は、例えば0.1W/m・K以上、更に1W/m・K以上、2W/m・K以上が挙げられる。熱伝導率が0.1W/m・K以上の接着層9は、組合体10の熱をケース5の内底面510に伝え易い。このような接着層9を備えるリアクトル1Aは放熱性に優れる。
【0101】
接着層9には、市販の接着シートや市販の接着剤が利用できる。例えば、上記接着剤を組合体10や内底面510に塗布して塗布層を形成することが挙げられる。接着層9の形成領域は、接合面積に応じて選択すればよい。
【0102】
接着層9の厚さが薄いほど、組合体10の巻回部21の一面と、ケース5の内底面510との間隔C8が小さくなり易い。その結果、コイル2の熱がケース5、特に底部51に伝わり易い。そのため、リアクトル1Aは放熱性に優れる。放熱性の向上を望む場合には、接着層9の厚さは、例えば、0.3mm以上1mm以下、更に0.5mm以下が好ましい。接着層9が0.3mm以上であれば、組合体10と内底面510とを良好に接合できる上に、上述の電気絶縁性も高め易い。
【0103】
(リアクトルの製造方法)
実施形態1のリアクトル1Aの製造方法として、例えば、以下の製法(i),(ii)等が利用できる。製法(i)は、ケース5の熱伸縮を利用して板バネ金具7を押圧する方法である。製法(ii)は、ケース5の開口部55の長辺長さL5より長い板バネ金具7を物理的に嵌め込む方法である。
【0104】
《製法(i) 焼嵌め法》
製法(i)の具体的な工程(i-1)から(i-5)を以下に示す。
(i-1)組合体10をケース5に収納する(
図3A)。
(i-2)組合体10を収納したケース5を常温T
rより高い所定の温度T
5に加熱する(
図3B)。
(i-3)温度T
5であるケース5に、常温T
r以下の所定の温度T
7である板バネ金具7を配置する(
図3C)。
温度T
7における板バネ金具7の見掛け長さL7は、温度T
5におけるケース5の開口部55の長辺長さL50以下とする。見掛け長さL7は、板バネ金具7の一方の端部71から他方の端部72までの最短距離とする。但し、常温T
rにおける板バネ金具7の見掛け長さは、常温T
rにおける開口部55の長辺長さL5より長いとする。
(i-4)板バネ金具7を配置したケース5内に封止樹脂部6の原料樹脂60を充填する(
図3D)。
(i-5)原料樹脂60の充填後、所定の温度T
6に加熱して原料樹脂60を固化して封止樹脂部6を形成する(
図1A)。
【0105】
以下、各工程を説明する。
工程(i-1)では、組合体10と、ケース5とを用意し、組合体10をケース5に収納する。この工程(i-1)は、代表的には、常温T
rで行う。本例では、コイル2と、磁性コア3と、保持部材4とを組み付けた後、樹脂モールド部8を形成することで、組合体10が製造される。組合体10は、樹脂モールド部8によって一体化されるため、取り扱い易く、ケース5に容易に収納できる。また、本例では、ケース5の内底面510に接着層9となる接着シート90を配置したり、接着剤を塗布したりするとよい。なお、
図3Aは、樹脂モールド部8を省略している。また、
図3Aから
図3Dは、接着シート90を例示する。
【0106】
本例では、巻回部21,22の並び方向がケース5の深さ方向に沿うように、組合体10をケース5に収納する。この収納により、縦積み型のリアクトル1Aが製造できる。
【0107】
工程(i-2)では、組合体10を収納した状態でケース5を加熱する。この加熱は、封止樹脂部6の原料樹脂60を固化し易いように行う予熱に相当する。そのため、温度T5は、封止樹脂部6の構成材料に応じて選択するとよい。但し、Tr<T5である。常温Trから温度T5に加熱することで、ケース5は熱膨張する。この熱膨張により、温度T5におけるケース5の開口部55の長辺長さは、常温Trでの長さL5から長さL50に変化する。L5<L50である。ケース5の熱膨張に伴う長辺長さの変化量は、代表的には、ケース5の構成材料の熱膨張係数、ケース5の体積、常温Trと温度T5との温度差によって調整する。
【0108】
工程(i-3)では、温度T5という高温のケース5に、温度T7という相対的に低温の板バネ金具7を収納する。T7≦Tr<T5である。ここでは、板バネ金具7の長手方向がケース5の開口部55の長辺方向に沿うように、板バネ金具7をケース5に収納する。
【0109】
特に、温度T7での板バネ金具7の見掛け長さL7は、熱膨張状態であるケース5の開口部55の長辺長さL50以下とする。温度T7での見掛け長さL7が温度T5での長辺長さL50に実質的に等しい場合、つまりL7=L50である場合、板バネ金具7は、ケース5内の組合体10の上に載せるようにして配置できる。温度T7での見掛け長さL7が、温度T5での長辺長さL50より短い場合、つまりL7<L50である場合、板バネ金具7は、ケース5内に容易に配置できる。
【0110】
板バネ金具7は、常温Tr以下の温度T7であるため、温度T7での板バネ金具7の見掛け長さL7は、常温Trでの見掛け長さと同等、又は熱収縮によって常温Trでの見掛け長さより短い。そこで、常温Trにおける板バネ金具7の見掛け長さが常温Trにおける開口部55の長辺長さL5より長くなるように、見掛け長さL7、開口部55の長辺長さL50を調整する。この調整により、後述するように、原料樹脂60の冷却過程でケース5が熱収縮すると、板バネ金具7が内壁面521,522に確実に押圧される。特に、ケース5において板バネ金具7を保持する箇所は、開口部55の短辺方向に対向する内壁面523,524ではなく、長辺方向に対向する内壁面521,522である。そのため、ケース5の熱収縮量が大きくなり易い。従って、ケース5の熱収縮を利用した板バネ金具7の押圧を良好に行うことができる。
【0111】
本例の板バネ金具7は、端部71,72に傾斜面77を備える。そのため、板バネ金具7の表裏面のうち、長さが短い一面がケース5の内底面510側を向くように、板バネ金具7をケース5に収納する。また、本例の板バネ金具7は、U字状の突起部73を備える。そのため、突起部73の先端がケース5の内底面510側を向くように、板バネ金具7をケース5に収納する。このような収納によって、ケース5が熱収縮すると、板バネ金具7は、内底面510側に向かって凸となるように湾曲し易く、突起部73によって組合体10を押圧できる。
【0112】
なお、
図3Cは、ケース5に収納する前の板バネ金具7として、突起部73を除いて、一直線状に延びる帯板を例示する。この板バネ金具7は、突起部73の先端を各外側コア部33の一面に載置し易い。上記外側コア部33の一面は、
図3Cでは上面であり、ここではこの上面を覆う保持部材4の周壁部42一面である。その他、ケース5に収納する前において、板バネ金具7は弓なりに湾曲していてもよい。即ち、ケース5に収納する前の板バネ金具7は、塑性変形によって湾曲された帯板を利用できる。予め湾曲した板バネ金具7においても、温度T
7での見掛け長さL7は、温度T
5での長辺長さL50以下とする。予め湾曲した板バネ金具7の図示は省略する。
【0113】
工程(i-3)の別例として、温度T7における板バネ金具7の見掛け長さL7は、温度T5におけるケース5の開口部55の長辺長さL50より長くてもよい。この場合、板バネ金具7を押し込むことで、組合体10の上に板バネ金具7を配置することができる。板バネ金具7はケース5の内底面510側が凸となるように押し込むとよい。本例のように、板バネ金具7の端部71,72に傾斜面77を備え、ケース5の構成材料が板バネ金具7より柔らかい金属である場合、板バネ金具7を押し込むと、各端部71,72の先端は、ケース5の内壁面521,522に食い込む。このような板バネ金具7とケース5との組み合わせとして、例えば、板バネ金具7の構成材料がクロム鋼であり、ケース5の構成材料が純アルミニウムであることが挙げられる。温度T7での見掛け長さL7が温度T5での長辺長さL50より長ければ、板バネ金具7はより確実に湾曲する。
【0114】
工程(i-4)では、ケース5の温度を温度T
5に保持した状態で、ケース5に原料樹脂60を充填する。原料樹脂60は、流動状態の樹脂であり、固化されることで封止樹脂部6を構成する。
図3Dは、原料樹脂60の充填途中を示し、原料樹脂60の液面がケース5の深さ方向の中間位置にある状態を例示する。
【0115】
工程(i-4)では、ケース5の温度が温度T5に保持されることで、ケース5の長辺長さL50が実質的に変化しない。即ち、ケース5は温度T5での熱膨張状態のままである。一方、板バネ金具7は、組合体10やケース5からの熱伝導によって、徐々に加熱されて温度が上昇することで熱膨張し得る。板バネ金具7の端部71,72に傾斜面77を備え、ケース5の構成材料が上述のように板バネ金具7の構成材料より柔らかい金属であれば、この熱膨張によって、傾斜面77を含む板バネ金具7の先端が自動的にケース5の内壁面521,522に食い込む。そのため、板バネ金具7が熱膨張することを許容する。板バネ金具7の構成材料の熱膨張係数がケース5の構成材料の熱膨張係数より小さい場合には、板バネ金具7の熱膨張量が小さい。そのため、板バネ金具7の熱膨張を実質的に無視できる場合がある。
【0116】
工程(i-5)では、原料樹脂60の充填後、所定の温度T6、即ち固化温度に加熱して、所定の時間保持することで原料樹脂60を固化する。所定時間が経過した後、常温Trまで冷却することで、封止樹脂部6が形成される。常温Trまでの冷却過程で、ケース5は熱収縮する。この熱収縮により、ケース5の長辺長さは、温度T5での長さL50から常温Trでの長さL5に変化する。上記熱収縮に伴って、対向する内壁面521,522が近付くように変位する。一方、温度T5での板バネ金具7の見掛け長さは常温Trでのケース5の長辺長さL5より長い。そのため、この冷却過程で、内壁面521,522にわたって配置される板バネ金具7において、両端部71,72は、両内壁面521,522に押圧される。両内壁面521,522の押圧によって、板バネ金具7は湾曲する。
【0117】
本例の板バネ金具7は、端部71,72に傾斜面77を備える。そのため、両内壁面521,522が近付くように変位することで、各端部71,72の先端は、各内壁面521,522に自動的に食い込む。この食い込みによって、板バネ金具7は、ケース5に直接支持される。また、傾斜面77を備えることで、板バネ金具7は、ケース5の内底面510側が凸となるように湾曲し易い。
【0118】
板バネ金具7が湾曲しつつ、原料樹脂60が固化される。固化後の封止樹脂部6は、両端部71,72がケース5の内壁面521,522に直接押圧されて、板バネ金具7が湾曲された状態を維持することに寄与する。
【0119】
リアクトル1Aの使用時にコイル2の発熱等でケース5が高温になることがある。しかし、リアクトル1Aは、封止樹脂部6によってケース5の熱膨張を抑制できる。そのため、板バネ金具7は、リアクトル1Aの使用時においても、ケース5の内壁面521,522に食い込んだ状態を維持できる。従って、板バネ金具7は、リアクトル1Aの使用時に振動等が生じてもケース5に対して位置ずれしたり、ケース5から脱落したりすることなく、長期にわたり、上述の食い込みによって湾曲状態を維持できる。つまり、板バネ金具7は、長期にわたり、組合体10をケース5の内底面510側に押し付けた状態を良好に維持できる。
【0120】
《製法(ii) 押込み法》
製法(ii)の具体的な工程(ii-1),(ii-2)を以下に示す。
(ii-1)組合体10及び板バネ金具7をケース5に収納する。
常温T
rにおける板バネ金具7の見掛け長さは、常温T
rにおけるケース5の開口部55の長辺長さL5より長いとする。見掛け長さは、板バネ金具7の一方の端部71から他方の端部72までの最短距離とする。
(ii-2)板バネ金具7を配置したケース5内に封止樹脂部6の原料樹脂60を充填して固化し、封止樹脂部6を形成する(
図1A)。
【0121】
製法(ii)は、任意の温度において、ケース5の開口部55の長辺長さより十分に長い板バネ金具7を用意して、ケース5に板バネ金具7を押し込むという方法である。製法(i)で説明したように、リアクトル1Aの製造過程で、ケース5は、常温Trから、封止樹脂部6を固化する温度T6まで加熱されることで、熱膨張する。しかし、常温Trでの見掛け長さが常温Trでの長辺長さL5より長ければ、リアクトル1Aの製造過程でケース5が熱収縮しても、最終的に、板バネ金具7は、ケース5によって湾曲状態に支持される。
【0122】
工程(ii-1)は、代表的には、常温Trで行う。まず、組合体10をケース5に収納する。本例では、巻回部21,22の並び方向がケース5の深さ方向に沿うように、組合体10をケース5に収納する。
【0123】
次に、板バネ金具7をケース5に収納する。詳しくは、ケース5の開口部55において長辺方向に対向する内壁面521,522に対して、各端部71,72が当接するように板バネ金具7を押し込む。特に、ケース5の内底面510側が凸である湾曲状態となるように板バネ金具7を押し込む。
【0124】
本例の板バネ金具7は、端部71,72に傾斜面77を備える。そのため、板バネ金具7を押し込むと、板バネ金具7は湾曲状態から直線状に復帰しようと反発して端部71,72で内壁面521,522を押圧する。この押圧により、上述のように各端部71,72の先端は、ケース5の内壁面521,522に食い込む。この食い込みによって、板バネ金具7は、ケース5に直接支持される。また、傾斜面77を備えることで、上述のように板バネ金具7は、ケース5の内底面510側が凸となるように湾曲し易い。そのため、ケース5の内底面510側が凸である湾曲状態となるように板バネ金具7を押し込み易い。
【0125】
工程(ii-2)では、ケース5によって湾曲状態に支持された板バネ金具7を備えるケース5に、原料樹脂60を充填し、原料樹脂60を固化することで封止樹脂部6を形成する。固化後の封止樹脂部6は、両端部71,72がケース5の内壁面521,522に直接押圧されて、板バネ金具7が湾曲された状態を維持することに寄与する。
【0126】
(効果)
実施形態1のリアクトル1Aは、以下の理由により、小型であり、放熱性に優れる。
〈小型〉
(a)ケース5が板バネ金具7をボルト止めする取付台等を有さない。そのため、リアクトル1Aは、上記取付台が設けられたケースを有するリアクトルに比較して、組合体10の外周面とケース5の内面との間隔を小さくできる。その結果、ケース5の長辺長さL5と、短辺長さである幅W5とを小さくすることができる。
【0127】
(b)縦積み型であるため、平置き型に比較して、設置面積を小さくできる場合がある。具体的には、組合体10における巻回部21,22の並び方向に沿った長さをLaとする。組合体10における巻回部21,22の軸方向に沿った長さをLbとする。組合体10における並列方向及び軸方向の双方に直交する方向に沿った長さをLcとする。縦積み型の設置面積はLb×Lc程度である。平置き型の設置面積はLa×Lb程度である。従って、Lc<Laであれば、縦積み型の設置面積は平置き型より小さい。
【0128】
(c)縦積み型は、後述する直立型である実施形態2のリアクトル1Bに比較して、ケース5の高さを小さくできる場合がある。上述の長さLa~Lcを用いて説明すると、La<Lbであれば、リアクトル1Aの高さはリアクトル1Bより小さい。
【0129】
〈放熱性〉
(A)上述の組合体10の外周面とケース5の内面との間隔が小さいため、組合体10の熱がケース5に伝わり易い。本例では、巻回部21,22の外周面とケース5の内壁面523,524、内底面510とが実質的に平行である。そのため、リアクトル1Aは上記間隔が小さい領域を広く有することからも、コイル2の熱等がケース5に伝わり易い。
【0130】
(B)縦積み型は、平置き型に比較して、両巻回部21,22におけるケース5の内面に対向する面積を大きく確保し易い。詳しくは、平置き型では、両巻回部において並び方向に平行な合計二面と、各巻回部において並び方向の両側に位置する一面との合計四面がケースの内面に対向する。これに対し、縦積み型では、両巻回部21,22において並び方向に平行な合計四面、
図1Aでは紙面手前側の面及び紙面奥側の面と、一方の巻回部21の一面、
図1Aでは下面との合計五面がケース5の内壁面523,524、内底面510にそれぞれ対向する。即ち、縦積み型では、平面同士で対向する箇所の面積が平置き型より大きい。そのため、縦積み型は、コイル2におけるケース5への放熱面積を平置き型より増大できる。このような縦積み型は、ケース5を放熱経路として効率よく利用できる。
【0131】
(C)縦積み型では、一方の巻回部21の一面、
図1Aでは下面がケース5の内底面510に近接される。そのため、組合体10の熱、特にコイル2の熱がケース5の底部51に伝わる。例えば、ケース5の底部51が冷却機構等で冷却されれば、底部51を介して、コイル2の熱がケース5外の冷却機構等に伝わり易い。本例のリアクトル1Aは接着層9を備えて、組合体10と内底面510とが接合されていることからも、組合体10の熱、特にコイル2の熱が底部51に伝わり易い。
【0132】
(D)板バネ金具7は、組合体10の押圧箇所として、板バネ金具7の湾曲箇所の最下点を含むため、組合体10をケース5の内底面510側に良好に押し付けられる。この押し付けによって、組合体10の熱、特にコイル2の熱がケース5の底部51により確実に伝わる。従って、上述のようにケース5の底部51が冷却機構等で冷却される場合には、底部51を介して、コイル2の熱がケース5外の冷却機構等により伝わり易い。
【0133】
(E)本例のリアクトル1Aでは、板バネ金具7が端部71,72に傾斜面77を有する。そのため、板バネ金具7は、ケース5の内底面510側が凸になるように湾曲し易い。また、傾斜面77を含む先端がケース5の内壁面521,522に食い込む。そのため、板バネ金具7は、ケース5の内周面に支持された状態を維持し易く、組合体10を内底面510側に押し付けた状態を良好に維持できる。このことからも、リアクトル1Aは放熱性により優れる。
【0134】
(F)本例のリアクトル1Aでは、板バネ金具7が突起部73を有する。そのため、板バネ金具7は、突起部73によって、組合体10をケース5の内底面510側により確実に押し付けられる。このことからも、リアクトル1Aは放熱性により優れる。
【0135】
更に、実施形態1のリアクトル1Aは、板バネ金具7が組合体10をケース5の内底面510側に押圧する。また、板バネ金具7はケース5の内壁面521,522に直接押圧されて湾曲状態に支持される。そのため、リアクトル1Aは、ケース5がボルト止めする取付台等を有さず、板バネ金具7がボルトによってケース5に固定されていないものの、組合体10がケース5から脱落することを防止できる。本例のリアクトル1Aでは、封止樹脂部6が組合体10と板バネ金具7とを埋設する。そのため、封止樹脂部6によっても、ケース5による板バネ金具7を湾曲状に支持する状態及び板バネ金具7による組合体10を押圧する状態が維持され易い。
【0136】
また、板バネ金具7が組合体10をケース5の内底面510側に押し付けているため、ケース5から剥離するような応力が封止樹脂部6に作用しても、組合体10が封止樹脂部6と共にケース5から脱落することが防止される。更に、本例のリアクトル1Aでは、接着層9を備えて、組合体10と内底面510とが接合されていることからも、組合体10におけるケース5からの脱落が防止され易い。加えて、縦積み型では、平置き型に比較して、ケース5の深さを深くすることができる。このことからも、組合体10におけるケース5からの脱落が防止され易い。
【0137】
更には、実施形態1のリアクトル1Aでは、板バネ金具7がケース5によって直接支持されるため、ボルト及び締結工程が省略できる。そのため、リアクトル1Aは、組立部品点数が少なく、組立作業性にも優れる。
【0138】
その他、本例のリアクトル1Aは、保持部材4を備えて、板バネ金具7が外側コア部33を間接的に押圧する。そのため、リアクトル1Aは、組合体10と板バネ金具7との間の電気絶縁性に優れる。
【0139】
[実施形態2]
以下、主に
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。
実施形態2のリアクトル1Bの基本的構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様であり、コイル2と、磁性コア3と、ケース5と、板バネ金具7と、封止樹脂部6とを備える。ケース5は、平面形状が長方形状の開口部55を有する(
図2参照)。板バネ金具7は、両端部71,72がケース5の長辺方向に対向する箇所、ここでは内壁面521,522に直接押圧されて、ケース5の内底面510側に向かって湾曲された状態に支持される。上記長辺方向は
図4では紙面左右方向である。このような板バネ金具7によって、組合体10は、ケース5の内底面510側に押し付けられる。その他、本例のリアクトル1Bは、実施形態1と同様に、組合体10が保持部材4、樹脂モールド部8を備えると共に、ケース5内に接着層9を備える。
【0140】
実施形態2のリアクトル1Bにおいて、実施形態1のリアクトル1Aとの相違点は、組合体10におけるケース5の収納状態、板バネ金具7における形状・ケース5による支持状態・押圧箇所が挙げられる。以下、実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0141】
〈組合体の収納形態〉
実施形態2のリアクトル1Bは、二つの巻回部21,22を備える直立型である。即ち、各巻回部21,22の軸方向がケース5の深さ方向になるように、両巻回部21,22がケース5に配置される。そのため、リアクトル1Bに備えられる両巻回部21,22は、ケース5内において上記軸方向がケース5の内底面510に直交し、両巻回部21,22の並び方向が内底面510に平行するように配置される。巻回部21,22の軸方向は、
図4では紙面上下方向である。
【0142】
直立型は、平置き型、更には上述の縦積み型に比較して、設置面積をより小さくできる場合がある。具体的には、上述の組合体10における長さLa~Lcを用いて説明すると、直立型の設置面積は、La×Lc程度である。従って、La<Lbであれば、直立型の設置面積は縦積み型より小さい。
【0143】
また、直立型は、平置き型、更には上述の縦積み型に比較して、コイル2におけるケース5への放熱面積を大きく確保し易い。直立型では、両巻回部21,22の外周面の実質的に全てがケース5の側壁部52の内周面に囲まれる。詳しくは、直立型では、巻回部21,22において並び方向に平行な合計四面と、巻回部21,22における並び方向の一面との合計六面がケース5の内壁面521~524にそれぞれ対向する。平面同士で対向する箇所の面積が縦積み型より大きいため、コイル2の熱が側壁部52に伝わり易い。例えば、ケース5の側壁部52に近接して冷却機構が配置される場合には、側壁部52を介して、コイル2の熱がケース外の冷却機構に伝わり易い。また、直立型では、平置き型に比較してケース5の深さを深くすることができる。この点から、組合体10におけるケース5からの脱落が防止され易い。なお、巻回部21,22における上述の四面は、
図4では紙面手前側の面及び紙面奥側の面である。巻回部21,22における上述の並び方向の一面はそれぞれ、
図4では巻回部21の左面、巻回部22の右面である。
【0144】
〈板バネ金具〉
実施形態2に備えられる板バネ金具7は、実施形態1で説明した傾斜面77及び突起部73を有していない。本例の板バネ金具7は、その全長にわたって一様な厚さ及び一様な幅を有する平坦な帯板である。
【0145】
また、実施形態2に備えられる板バネ金具7では、常温Trにおける板バネ金具7の実長さは、常温Trにおけるケース5の開口部55の長辺長さより長いとする。かつ、ケース5によって湾曲状に支持された状態において、常温Trにおける板バネ金具7の見掛け長さは、常温Trにおけるケース5の開口部55の長辺長さ以上とする。板バネ金具7は、上述の特定の実長さ及び見掛け長さを満たす帯板によって構成する。上記特定の実長さ及び見掛け長さを満たす板バネ金具7は、ケース5に支持された状態において湾曲箇所を確実に有する。上述のようにリアクトル1Bの製造過程でケース5が熱伸縮しても、最終的に、板バネ金具7はケース5によって湾曲状に支持される。そのため、板バネ金具7は、組合体10を押し付ける付勢力を発現できる。
【0146】
更に、常温Trでの板バネ金具7の見掛け長さは、リアクトル1Bの製造過程においてケース5の最高温度でのケース5の開口部55の長辺長さ以上でもよい。即ち、常温Trでの板バネ金具7の見掛け長さは、ケース5が熱膨張して開口部55の長辺長さが最も長いときの長辺長さ以上でもよい。上記最高温度は、代表的には上述の封止樹脂部6の原料樹脂60を固化する温度T6が挙げられる。このような板バネ金具7では、常温Trでの実長さは、常温Trでの開口部55の長辺長さより長い。そのため、板バネ金具7は、ケース5に支持された状態において湾曲箇所をより確実に有し、組合体10を押し付ける付勢力を発現できる。
【0147】
このような板バネ金具7を備える実施形態2のリアクトル1Bは、上述の製法(ii)によって製造できる。例えば、常温Trの板バネ金具7をケース5の内底面510側が凸となるように、常温Trのケース5に押し込む。そして、板バネ金具7の両端部71,72を内壁面521,522に支持させれば、板バネ金具7は内壁面521,522によって湾曲状態に維持される。
【0148】
《ケースによる支持》
本例のケース5は、板バネ金具7を押圧する内壁面521,522にそれぞれ、凹部57を備える(
図5も参照)。凹部57のそれぞれには、板バネ金具7の端部71,72が収納される。各端部71,72が凹部57に嵌め込まれることで、板バネ金具7は、内壁面521,522に確実に支持される。そのため、板バネ金具7は、上述の傾斜面77を有していなくても、長期にわたって位置ずれし難く、またケース5から脱落し難く、内壁面521,522から押圧された状態に維持される。従って、板バネ金具7は、組合体10をケース5の内底面510側に押し付けた状態を長期にわたって維持できる。
【0149】
更に、本例では、封止樹脂部6は、組合体10と板バネ金具7とを埋設する。そのため、凹部57における板バネ金具7との隙間に封止樹脂部6の一部が充填されることからも、板バネ金具7及び組合体10がケース5から脱落し難い。また、封止樹脂部6によって、板バネ金具7の湾曲状態が維持され易い。
【0150】
《押圧箇所》
実施形態2に備えられる板バネ金具7は、
図4に示すようにケース5によって、弓なりに湾曲して支持される。板バネ金具7は、この弓なりの湾曲箇所におけるケース5の深さ方向の最下点及びその近傍を組合体10の押圧箇所とする。
【0151】
ここで、リアクトル1Bは、直立型である。そのため、ケース5に収納された状態での組合体10におけるケース5の開口部55側に位置する部位は、磁性コア3のうち、一方の外側コア部33である。そのため、板バネ金具7は、開口部55側に位置する外側コア部33の外端面3oを押圧する。詳しくは、板バネ金具7は、開口部55側の外側コア部33の外端面3oにおいて、開口部55の長辺方向の中心位置近くを押圧する。即ち、直立型では、板バネ金具7は、ケース5の開口部55の長辺方向の全長にって配置されるものの、コイル2に接触しない。従って、実施形態2のリアクトル1Bは、コイル2と板バネ金具7との間の電気絶縁性に優れる。
【0152】
本例のリアクトル1Bは、樹脂モールド部8を備える。そのため、板バネ金具7は、外側コア部33の外端面3oを覆う外側樹脂部83を介して、外端面3oを間接的に押圧する。外側樹脂部83によって、リアクトル1Bは、組合体10と板バネ金具7との電気絶縁性に優れる。
【0153】
なお、樹脂モールド部8を省略して、又は樹脂モールド部8から外側コア部33の外端面3oの少なくとも一部を露出させて、板バネ金具7が外側コア部33を直接押圧してもよい。
【0154】
《その他の構成》
その他、リアクトル1Bは、直立型である。そのため、ケース5に収納された状態において磁性コア3の他方の外側コア部33は、ケース5の内底面510側に位置する。本例のリアクトル1Bでは、他方の外側コア部33の外端面3oを覆う樹脂モールド部8の外側樹脂部83と、内底面510とが接着層9によって接合される。組合体10において、内底面510との接合領域が一つの外端面3oによって構成されることで、リアクトル1Bは安定した接合状態を維持し易い。
【0155】
《変形例》
ケース5が内壁面521,522の双方に凹部57を備えると共に、板バネ金具7の両端部71,72が傾斜面77を備えてもよい。又は、一方の内壁面521は凹部57を備え、他方の内壁面522は凹部57を省略してもよい。このとき、凹部57に嵌め込まれる端部71は、傾斜面77を備えていなくてよい。凹部57を備えていない他方の内壁面522に支持される端部72のみが傾斜面77を備えるとよい。
【0156】
[実施形態3]
以下、主に
図6を参照して、実施形態3のリアクトル1Cを説明する。
実施形態3のリアクトル1Cでは、縦積み型の実施形態1のリアクトル1Aに対して、板バネ金具7における形状・ケース5による支持状態・押圧箇所が類似する。実施形態3のリアクトル1Cにおいて、実施形態1との主な相違点は、組合体10の構造にある。リアクトル1Cに備えられる組合体10では、巻回部の数が二つではなく一つである。
【0157】
以下、実施形態3のリアクトル1Cの概要を説明する。その後、実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。
なお、
図6、及び後述する
図7は、
図1Aと同様に、ケース5において内壁面521,522を有する箇所であって、
図2に示す内壁面524近くの箇所をケース5の深さ方向に平行な平面で切断している。切断線は、
図2に示すA-A切断線を参照されたい。
【0158】
〈概要〉
実施形態3のリアクトル1Cは、コイル2と、磁性コア3と、ケース5と、板バネ金具7と、封止樹脂部6とを備える。ケース5は、平面形状が長方形状の開口部55を有する。本例では、板バネ金具7の両端部71,72はそれぞれ、傾斜面77を備える。傾斜面77を含む先端がケース5における長辺方向に対向する内壁面521,522に食い込むことで、両端部71,72は内壁面521,522に直接押圧される。この押圧によって、板バネ金具7は、ケース5の内底面510側に向かって湾曲された状態に支持される。組合体10は、板バネ金具7によって、内底面510側に押し付けられる。本例では、板バネ金具7の押圧箇所は突起部73を含む。その他、本例では、組合体10と内底面510との間に、接着層9が設けられている。
【0159】
リアクトル1Cに備えられる組合体10は、コイル2と、磁性コア3と、保持部材4と、樹脂モールド部8とを備える。
【0160】
〈コイル〉
コイル2は、一つの巻回部25を有する。本例の巻回部25は、1本の連続する被覆平角線が螺旋状に巻回されてなる四角筒状のエッジワイズコイルである。そのため、コイル2は、巻回部25の外周面250として、四つの実質的に平坦な平面を備える。また、コイル2は、長方形の枠状の端面251,252を備える。なお、外周面250は、巻回部25の軸方向に実質的に平行する面である。端面251,252は、上記軸方向に実質的に直交する面である。
【0161】
巻回部25の外周面250を構成する四面のうち、一部は、後述する磁性コア3の外側脚部36,37に挟まれておらず、これらに覆われていない。外周面250の残部は、外側脚部36,37に挟まれて、これらに覆われる。
図6は、四面のうちの一面を示す。四面のうち、残りの二面、
図6では上面及び下面は、外側脚部36,37に覆われている。
【0162】
巻回部25から引き出される巻線の端部には、図示しない電源等の外部装置が接続される。巻線の詳細な図示は省略する。
【0163】
〈磁性コア〉
磁性コア3は、巻回部25の内側及び外側に配置され、環状の閉磁路を形成する。磁性コア3は、一つの内側脚部35と、二つの外側脚部36,37と、二つの連結部38,39とを備える。内側脚部35は、巻回部25の内側に配置される。外側脚部36,37及び連結部38,39は、巻回部25の外側に配置される。外側脚部36,37は、巻回部25の外周面250の一部を挟む。本例では、外側脚部36,37は、外周面250を構成する四面のうち、対向する二面、
図6では上面及び下面を挟み、残りの二面を挟まない。連結部38,39は、巻回部25の各端面251,252を挟む。
【0164】
本例では、内側脚部35は、巻回部25の内周形状に対応した外周形状と、巻回部25の内寸に対応した外寸とを有する直方体状である。外側脚部36,37、及び連結部38,39も直方体状である。外側脚部36,37及び連結部38,39の外周面のうち一面、
図6では紙面手前側の面は面一である。上記紙面手前側の面に対向する紙面奥側の面も面一である。そのため、巻回部25の外周面250のうち、外側脚部36,37に挟まれない二面、
図6では紙面手前側の面及び紙面奥側の面はそれぞれ、外側脚部36,37及び連結部38,39における上記紙面手前側の面及び紙面奥側の面より突出する。この点で、巻回部25の外周面250における外側脚部36,37に挟まれない二面は、ケース5の内壁面521,522に近接できる。
【0165】
本例の磁性コア3は、2つのE字状のコア片3a,3bを備える。各コア片3a,3bは、同一形状、同一の大きさである。コア片3aは、連結部38と、三つの脚片とを備える。三つの脚片はそれぞれ、内側脚部35の半分、外側脚部36の半分、外側脚部37の半分である。また、三つの脚片は、連結部38から立設されると共に、連結部38の軸方向に離間して並ぶ。コア片3bは、連結部39と、内側脚部35及び外側脚部36,37の残り半分からなる三つの脚片とを備える。三つの脚片は、連結部39から立設されると共に、連結部39の軸方向に離間して並ぶ。
【0166】
〈保持部材〉
リアクトル1Cに備えられる保持部材4は、巻回部25及びコア片3a,3bを支持して、巻回部25に対するコア片3a,3bの位置決めに利用される。保持部材4の詳細な図示は省略する。
【0167】
本例の保持部材4は、巻回部25の各端面251,252側に配置される枠状の部材である。各保持部材4の基本的構成は同じである。そのため、代表して、端面251側に配置される保持部材4を説明する。保持部材4は、枠板部と、枠板部から延設される突片とを備える。枠板部は、巻回部25の端面251と、コア片3aの連結部38の内面との間に配置される。また、枠板部は、内側脚部35の端部が挿通される貫通孔を備える。突片は、巻回部25と内側脚部35との両者の間の一部に差し込まれる。そのため、上記両者の間の残部には、突片の厚さに応じた隙間が設けられる。この隙間には、樹脂モールド部8の構成樹脂が充填される。
【0168】
〈樹脂モールド部〉
リアクトル1Cに備えられる樹脂モールド部8は、図示しない内側樹脂部と、外側樹脂部88とを備える一体成形物である。内側樹脂部は、巻回部25と内側脚部35との間に設けられて、内側脚部35の少なくとも一部を覆う。外側樹脂部88は、外側脚部36,37の少なくとも一部及び連結部38,39の少なくとも一部を覆う。本例では、外側樹脂部88は、コア片3a,3bの接続箇所を含めて、外側脚部36、連結部38、外側脚部37、及び連結部39を連続して覆う。このような外側樹脂部88は、コア片3a,3bを一体に保持することに寄与する。また、外側樹脂部88は、組合体10の外周面を構成する。なお、樹脂モールド部8は、巻回部25の外周面250のうち対向する二面、
図6で紙面手前側の及び紙面奥側の面を覆っていない。
【0169】
〈配置形態〉
実施形態3のリアクトル1Cは、脚縦積み型である。即ち、巻回部25の軸方向がケース5の深さ方向に直交すると共に、外側脚部36、内側脚部35及び外側脚部37の並び方向がケース5の深さ方向になるように、組合体10がケース5に収納される。上記軸方向は、
図6では紙面左右方向である。上記深さ方向及び上記並び方向は、
図6では紙面上下方向である。
【0170】
脚縦積み型では、巻回部25の外周面250のうち、磁性コア3に覆われていない箇所がケース5の内壁面に対向するように配置される。本例では、巻回部25の外周面250のうち、対向する二面、
図6では紙面手前側の面及び対向する紙面奥側の面はそれぞれ、内壁面523,524に向かい合うと共に、近接して配置される。つまり、巻回部25の外周面250のうち、上述の二面は、二つの内壁面523,524に挟まれる。
【0171】
また、脚縦積み型では、ケース5に収納された状態での組合体10におけるケース5の開口部55側に位置する部位は、磁性コア3のうち、一方の外側脚部36及び連結部38,39の一部である。そのため、板バネ金具7は、磁性コア3の一部を押圧する。具体的には、磁性コア3のうち、開口部55側に位置する外側脚部36及び連結部38,39の少なくとも一部を押圧する。即ち、脚縦積み型では、板バネ金具7は、ケース5の開口部55の長辺方向の全長にわたって配置されるものの、コイル2に接触しない。また、本例では、板バネ金具7は、磁性コア3を直接押圧せず、磁性コア3において樹脂モールド部8によって覆われた箇所を間接的に押圧する。
【0172】
詳しくは、本例では、板バネ金具7のうち、湾曲箇所におけるケース5の深さ方向の最下点である突起部73が、外側脚部36における連結部38,39近くの箇所であって、外側樹脂部88に覆われた箇所を押圧する。
【0173】
その他、脚縦積み型では、他方の外側脚部37は、ケース5の内底面510側に位置する。そのため、本例では、外側脚部37と内底面510とは接着層9によって接合される。
【0174】
(効果)
実施形態3のリアクトル1Cは、以下の理由により、小型であり、放熱性に優れる。
【0175】
〈小型〉
(a)実施形態1と同様に、ケース5が板バネ金具7をボルト止めする取付台等を有さないため、組合体10の外周面とケース5の内周面との間隔が小さくなり易い。
【0176】
(b)脚縦積み型であるため、平置き型に比較して、設置面積を小さくできる場合がある。具体的には、組合体10における内側脚部35及び外側脚部36,37の並び方向に沿った長さをLaとする。組合体10における巻回部25の軸方向に沿った長さをLbとする。組合体10における上述の並び方向及び上記軸方向の双方に直交する方向に沿った長さをLcとする。脚縦積み型の設置面積はLb×Lc程度である。平置き型の設置面積はLa×Lb程度である。従って、Lc<Laであれば、脚縦積み型の設置面積は平置き型より小さい。
【0177】
(c)脚縦積み型は、後述する直立型である実施形態4のリアクトル1Dに比較して、ケース5の高さを小さくできる場合がある。上述の長さLa~Lcを用いて説明すると、La<Lbであれば、リアクトル1Cの高さは、リアクトル1Dより小さい。
【0178】
〈放熱性〉
(A)組合体10の外周面とケース5の内面との間隔が小さいため、組合体10の熱がケース5に伝わり易い。本例では、巻回部25の外周面250のうち、上述の二面と、ケース5の内壁面523,524との間隔が小さい。そのため、コイル2の熱がケース5の側壁部52に伝わり易い。
【0179】
(B)脚縦積み型は、平置き型に比較して、巻回部25におけるケース5の内面に対向する面積を大きく確保し易い。詳しくは、平置き型では、巻回部の外周面を構成する四面のうち、一面のみがケースの内底面に対向する。これに対し、脚縦積み型では、巻回部25の外周面250のうち二面がケース5の内壁面523,524にそれぞれ対向する。即ち、脚縦積み型では、平面同士で対向する箇所の面積が平置き型より大きい。そのため、脚縦積み型では、コイル2におけるケース5への放熱面積が平置き型より大きい。
【0180】
更に、実施形態3のリアクトル1Cでは、以下の理由により、実施形態1と同様に、組合体10がケース5から脱落することを防止できる。
・ケース5の内壁面521,522によって湾曲状態に支持された板バネ金具7が、組合体10をケース5の内底面510側に押圧する。
・封止樹脂部6が組合体10と板バネ金具7とを埋設する。
・脚縦積み型では、上述のようにLc<Laであれば、平置き型に比較して、ケース5の深さが深くなり易い。
・本例では、接着層9が組合体10と内底面510とを接合する。
・本例では、傾斜面77を含む先端がケース5の内壁面521,522に食い込むため、板バネ金具7がケース5に支持された状態を維持し易い。
・本例では、突起部73によって、組合体10は、ケース5の内底面510側により確実に押し付けられる。
【0181】
その他、本例のリアクトル1Cでは、板バネ金具7は、樹脂モールド部8の外側樹脂部88を介して、磁性コア3の外側脚部36を間接的に押圧する。そのため、リアクトル1Cは、組合体10と板バネ金具7との間の電気絶縁性に優れる。
【0182】
[実施形態4]
以下、主に
図7を参照して、実施形態4のリアクトル1Dを説明する。
実施形態4のリアクトル1Dの基本的構成は、実施形態3のリアクトル1Cと同様であり、コイル2と、磁性コア3と、ケース5と、板バネ金具7と、封止樹脂部6とを備える。コイル2は、一つの巻回部25を備える。磁性コア3は、E字状のコア片3a,3bを組み合わせて構成される。
但し、実施形態4のリアクトル1Dは、脚縦積み型ではなく、直立型である。また、実施形態4のリアクトル1Dでは、板バネ金具7における形状・ケース5による支持状態・押圧箇所が、実施形態3とは異なり、実施形態2に類似する。
以下、実施形態3との相違点を中心に説明し、実施形態2,3と重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0183】
実施形態4のリアクトル1Dは、直立型である。即ち、巻回部25の軸方向と、内側脚部35の軸方向及び両外側脚部36,37の軸方向とがケース5の深さ方向になるように、組合体10がケース5に収納される。巻回部25の外周面250のうち、対向する二面、
図7では紙面手前側の面及び対向する紙面奥側の面はそれぞれ、ケース5の内壁面523及び図示しない内壁面524に対向するように配置される。また、外周面250における上記対向する二面はそれぞれ、内壁面523,524に近接して配置される。上記軸方向及び上記深さ方向は、
図7では紙面上下方向である。
【0184】
また、直立型では、ケース5に収納された状態での組合体10におけるケース5の開口部55側に位置する部位は、磁性コア3のうち、一方の連結部39である。そのため、板バネ金具7は、磁性コア3の一部である連結部39を押圧する。本例では、板バネ金具7は、連結部39を直接押圧せず、連結部39において樹脂モールド部8の外側樹脂部88によって覆われた箇所を間接的に押圧する。
【0185】
なお、本例では、板バネ金具7は、突起部73及び傾斜面77を有していない。板バネ金具7は、各端部71,72がケース5の内壁面521,522に設けられた凹部57に嵌め込まれることで、ケース5の内底面510側に向かって湾曲した状態を維持され、組合体10を内底面510側に押し付ける。
【0186】
その他、直立型では、内側脚部35及び外側脚部36,37がケース5の内底面510に直交するように、磁性コア3がケース5内に配置される。また、他方の連結部38は、ケース5の内底面510側に位置する。本例では、連結部38と内底面510とは接着層9によって接合される。
【0187】
実施形態4のリアクトル1Dは、直立型であるため、平置き型、更には実施形態3の脚縦積み型に比較して、設置面積をより小さくできる場合がある。具体的には、実施形態3で説明した組合体10における長さLa~Lcを用いて説明すると、直立型の設置面積は、La×Lc程度である。従って、La<Lbであれば、直立型の設置面積は、実施形態3の脚縦積み型より小さい。
【0188】
また、実施形態4のリアクトル1Dでは、実施形態3の脚縦積み型と同様に、巻回部25の外周面250のうちの二面、
図7では紙面手前側の面及び紙面奥側の面と、ケース5の内壁面523,524とが平面同士で対向する。そのため、コイル2におけるケース5への放熱面積が平置き型より大きい。
【0189】
更に、直立型では、Lc<Lbであれば、平置き型に比較してケース5の深さを深くすることができる。この点から、組合体10におけるケース5からの脱落が防止され易い。
【0190】
(用途)
実施形態1から4のリアクトル1Aから1Dは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品、例えば種々のコンバータや電力変換装置の構成部品等に利用できる。コンバータの一例として、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両に搭載される車載用コンバータや、空調機のコンバータ等が挙げられる。車載用コンバータは代表的にはDC-DCコンバータである。
【0191】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態1から4のリアクトル1Aから1Dに対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
【0192】
(変形例1)
変形例1では、保持部材が省略されている。
図1Aを参照して、二つの巻回部21,22を備える場合に保持部材が省略された具体例を説明する。外側コア部33における巻回部21,22の並び方向に沿った大きさ、即ちケース5の深さ方向に沿った大きさを巻回部21,22の外周面に面一になる程度の大きさにする。外側コア部33がこのように大きいことで、板バネ金具7は、外側コア部33をケース5の内底面510側に直接押圧できる。外側コア部33における板バネ金具7との接触箇所には、例えば絶縁テープ等が貼り付けられてもよい。この場合、板バネ金具7は、外側コア部33をケース5の内底面510側に間接的に押圧できる。また、この場合、外側コア部33と板バネ金具7との間の電気絶縁性が高められる。
【0193】
保持部材を省略する場合、コイル及び磁性コアの少なくとも一方が樹脂等の電気絶縁材料で覆われていれば、コイルと磁性コアとの間の電気絶縁性が高められる。例えば、コイルが樹脂部によって覆われた被覆コイルを備える形態、磁性コアが樹脂モールド部によって覆われた被覆コアを備える形態が挙げられる。被覆コアは、例えば、磁性コアを構成するコア片に対して樹脂モールド部を形成し、被覆コア片を接着剤等で接合することで製造できる。
【0194】
二つの巻回部21,22を備える場合に保持部材を省略する場合、板バネ金具の押圧箇所は、例えば、以下を含むことが挙げられる。
縦積み型では、上記押圧箇所は、被覆コイルを含む。
縦積み型又は直立型であって、外側コア部を間接的に押圧する場合では、上記押圧箇所は、樹脂で被覆された外側コア部を含む。
縦積み型又は直立型であって、外側コア部を直接的に押圧する場合は、上記押圧箇所は、樹脂で被覆されてない外側コア部を含む。
【0195】
(変形例2)
コイルが以下の構成(1)から(3)の少なくとも一つを満たす。
(1)巻線や巻回部の形状、大きさ等が実施形態1から4とは異なる。巻回部は、例えば円筒状等である。
(2)二つの巻回部を備える場合において、コイルは、独立した2本の巻線によってそれぞれ形成される巻回部を備える。この場合、各巻回部から引き出される巻線の両端部のうち、一方の端部同士は、直接又は間接的に接続される。直接接続には、溶接や圧着等が利用できる。間接接続には、巻線の端部に取り付けられる適宜な金具等が利用できる。
(3)二つの巻回部を備える場合において、各巻回部の仕様が異なる。
【0196】
(変形例3)
磁性コアが以下の構成(1)から(4)少なくとも一つを満たす。
(1)コア片の角部が面取りされている。このコア片は、角部が欠け難く、強度に優れる。
(2)磁性コアにおいて巻回部の内側に配置される箇所が複数のコア片で構成される。
(3)磁性コアにおいて巻回部の内側に配置される箇所の外周形状が巻回部の内周形状に非相似である。具体的には、巻回部が四角筒状であり、内側コア部又は内側脚部が円柱状であること等が挙げられる。
(4)二つの巻回部を備える場合において、磁性コアは、内側コア部の少なくとも一部と外側コア部とが一体のコア片を備える。具体的なコア片として、U字状のコア片、L字状のコア片等が挙げられる。
【0197】
(変形例4)
ケースの開口部の平面形状がレーストラック状、楕円状等である。
なお、ケースの開口部の平面形状が長方形状とは、ケースの開口縁がつくる輪郭に内接する最小の長方形をとり、この長方形における直交する二辺の長さが異なる形状とする。
【符号の説明】
【0198】
1A,1B,1C,1D リアクトル、10 組合体
2 コイル、21,22,25 巻回部、23 接続部
250 外周面、251,252 端面
3 磁性コア、31,32 内側コア部、33 外側コア部
3a,3b コア片、35 内側脚部
36,37 外側脚部、38,39 連結部
3e 内端面、3o 外端面
4 保持部材、41 枠板部、42 周壁部、43 貫通孔
5 ケース
51 底部、510 内底面
52 側壁部、521,522,523,524 内壁面
55 開口部、57 凹部
6 封止樹脂部、60 原料樹脂
7 板バネ金具、70 本体部、71,72 端部
73 突起部、77 傾斜面
8 樹脂モールド部、83,88 外側樹脂部
9 接着層、90 接着シート
W1,W5,W7 幅、L5、L50 長辺長さ、L7 見掛け長さ