(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】便蓋装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/12 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A47K13/12
(21)【出願番号】P 2017253958
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】緑 文也
(72)【発明者】
【氏名】荒津 義和
(72)【発明者】
【氏名】木稲 洋介
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-068123(JP,A)
【文献】特開2016-148440(JP,A)
【文献】特開平03-041919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便蓋と、
ケーシングと、
前記便蓋を前記ケーシングに対して回動可能に支持する第1の支持部及び第2の支持部と、
前記第1の支持部に設けられ、前記便蓋が閉まる際に粘性力により前記便蓋の閉方向とは逆方向の制動力を前記便蓋に作用させる緩衝ユニットと、
前記第2の支持部に設けられ、前記便蓋の開方向のみに前記便蓋を付勢するアシストユニットであって、前記便蓋が閉まる際に弾性力により前記便蓋に付勢力を作用させるアシストユニットと、
を備え
、
前記緩衝ユニットは、前記便蓋が閉まる際に、弾性力により前記便蓋を開方向に付勢する付勢力を前記便蓋に作用させ、
前記アシストユニットの前記弾性力は、前記緩衝ユニットの前記弾性力よりも大きいことを特徴とする便蓋装置。
【請求項2】
前記便蓋は、前記第1の支持部と連結する第1のヒンジ部と、前記第2の支持部と連結する第2のヒンジ部と、を有し、
前記第1のヒンジ部及び前記第2のヒンジ部は、前記便蓋の左端及び右端のそれぞれから離れていることを特徴とする請求項
1記載の便蓋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、便蓋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便蓋が一対の支持部によってケーシングに対して回動可能に支持された便蓋装置において、一方の支持部に緩衝機構が設けられることがあった(特許文献1)。緩衝機構は、便蓋が回動する際に、粘性力によって便蓋の回動方向とは逆方向の制動力を便蓋に与える。これにより、便蓋がゆっくりと閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便蓋に、機能部が設けられ便蓋が重くなった場合や、便蓋の材料やサイズ等によって便蓋が重くなった場合、または、便蓋の重心から離れた位置で便蓋が支持される場合、便蓋が閉じる際に従来よりも大きな回動力が便蓋に働くこととなる。このため、便蓋が勢いよく閉じ、例えば便座の上面に勢いよく衝突してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、便蓋が閉じる際に便蓋に大きな制動力を与えるため、緩衝機構(緩衝ユニット)の粘性力を大きくすることが考えられる。例えば、緩衝機構に粘性係数の高い流体を利用したり、複数の緩衝機構を設けたりすることが考えられる。しかし、緩衝機構の粘性力を大きくすると、便蓋を閉じる際だけでなく、便蓋を開く際に便蓋に与えられる制動力も大きくなる。このため、使用者が便蓋を開く際に、重く感じ、容易に便蓋を開きにくくなってしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便蓋が勢いよく閉まることを抑制しつつ、容易に便蓋を開くことができる便蓋装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、便蓋と、ケーシングと、前記便蓋を前記ケーシングに対して回動可能に支持する第1の支持部及び第2の支持部と、前記第1の支持部に設けられ、前記便蓋が閉まる際に粘性力により前記便蓋の閉方向とは逆方向の制動力を前記便蓋に作用させる緩衝ユニットと、前記第2の支持部に設けられ、前記便蓋の開方向のみに前記便蓋を付勢するアシストユニットであって、前記便蓋が閉まる際に弾性力により前記便蓋に付勢力を作用させるアシストユニットと、を備えたことを特徴とする便蓋装置である。
【0008】
この便蓋装置によれば、緩衝ユニットによって生じる制動力と、アシストユニットによって生じる付勢力とによって、便蓋が勢いよく閉まることを抑制できる。また、開方向のみに便蓋を付勢するアシストユニットを設けることにより、緩衝ユニットの粘性力を大きくしたり複数の緩衝ユニットを設けたりした場合と比較して、使用者が便蓋を開く際に便蓋を重く感じることを抑制し、容易に便蓋を開くことができる。したがって、機能部付きの便蓋の場合、重い便蓋の場合、又は便蓋の支持位置が後方にある場合であっても、便蓋が勢いよく閉まることを抑制しつつ、容易に便蓋を開くことができる。さらに、アシストユニットと緩衝ユニットとを異なる支持部に設けることにより、便蓋が閉まる際に、アシストユニット及び緩衝ユニットによって便蓋に作用する力が一方の支持部に偏ることを抑制できる。これにより、便蓋に作用する力の偏りによって便蓋がねじれたり破損したりすることを抑制できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記緩衝ユニットは、前記便蓋が閉まる際に、弾性力により前記便蓋を開方向に付勢する付勢力を前記便蓋に作用させることを特徴とする便蓋装置である。
【0010】
この便蓋装置によれば、緩衝ユニットは、便蓋が閉まる際に、粘性力による制動力だけでなく、弾性力による付勢力も便蓋に作用させる。これにより、付勢力を大きくするためにアシストユニットが大型化してしまうことを抑制できる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記アシストユニットの前記弾性力は、前記緩衝ユニットの前記弾性力よりも大きいことを特徴とする便蓋装置である。
【0012】
この便蓋装置によれば、便蓋が閉まる際に、アシストユニットによって便蓋に作用する力(アシストユニットの弾性力による付勢力)と、緩衝ユニットによって便蓋に作用する力(緩衝ユニットの弾性力による付勢力および粘性力による制動力)と、の差を小さくすることができる。これにより、便蓋がねじれたり破損したりすることを抑制できる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記便蓋は、前記第1の支持部と連結する第1のヒンジ部と、前記第2の支持部と連結する第2のヒンジ部と、を有し、前記第1のヒンジ部及び前記第2のヒンジ部は、前記便蓋の左端及び右端のそれぞれから離れていることを特徴とする便蓋装置である。
【0014】
この便蓋装置によれば、第1、2のヒンジ部は、便蓋の左端及び右端のそれぞれから離れていることにより、第1、2のヒンジ部が便蓋の左端及び右端のそれぞれに設けられた場合に比べて、第1のヒンジ部と第2のヒンジ部との間の距離を短くすることができる。これにより、便蓋がねじれたり破損したりすることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、便蓋が勢いよく閉まることを抑制しつつ、容易に便蓋を開くことができる便蓋装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る便蓋装置を例示する斜視図である。
【
図2】実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する平面図である。
【
図3】実施形態に係る便蓋装置の緩衝ユニットを例示する断面図である。
【
図4】実施形態に係る便蓋装置のアシストユニットを例示する断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係る便蓋装置の動作を例示する模式図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る便蓋装置の便蓋を例示する斜視図及び平面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(d)は、実施形態に係る便蓋装置のケーシングを例示する平面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、実施形態に係る便蓋装置を例示する平面図及び断面図である。
【
図9】実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する断面図である。
【
図10】実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る便蓋装置を例示する斜視図である。
図1に示すように、実施形態に係る便蓋装置100は、ケーシング10と、使用者が着座する便座30と、便蓋50と、を有する。便座30及び便蓋50のそれぞれは、ケーシング10に対して回動可能に支持されている。言い換えれば、便座30及び便蓋50のそれぞれは、開閉自在に軸支されている。
図1の状態は、便座30が閉られた状態(下げられた状態)であり、便蓋50が開いた状態(上げられた状態)である。便蓋50は、閉じた状態では、ケーシング10及び便座30の上面を上方から覆う(
図8を参照)。
【0018】
ケーシング10の内部には、便座30に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。例えば、ケーシング10の内部には、洗浄ノズル70や、洗浄ノズル70の動作を制御する制御回路などが設けられる。洗浄ノズル70は、使用者が便座30に座っているときに、ケーシング10の内部から前方へ進出した状態で、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する。また、ケーシング10には、便座30に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。
【0019】
なお、本願明細書において、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左側方」及び「右側方」のそれぞれは、開いた便蓋50に背を向けて便座30に座った使用者から見た方向である。
【0020】
図1に示すように、ケーシング10は、上面15を有する。上面15の後方には、左右方向において並ぶ一対の溝(第1の溝21a及び第2の溝21b)が設けられている。
【0021】
また、便蓋50は、左右方向において並ぶ一対のヒンジ部(第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62)を有する。便蓋50が閉じた状態において、一対のヒンジ部は、便蓋50の後端に位置する。便蓋50の第1のヒンジ部61は、第1の溝21aに配置されている。便蓋50の第2のヒンジ部62は、第2の溝21bに配置されている。便蓋50は、第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62において、回動可能に軸支される。
【0022】
図2は、実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する平面図である。
図2は、
図1のように、便座30が閉じ、便蓋50が開いた状態で、ケーシング10の上面15を上方から見た様子を示す。
【0023】
図2に示すように、便蓋装置100は、左右方向に並ぶ一対の支持部(第1の支持部71及び第2の支持部72)を有する。第1の支持部71及び第2の支持部72は、便蓋50をケーシング10に対して回動可能に支持する。
【0024】
第1の支持部71の少なくとも一部は、ケーシング10の第1の溝21aに配置される。第1のヒンジ部61は、第1の溝21aにおいて、第1の支持部71と連結されている。また、第2の支持部72の少なくとも一部は、ケーシング10の第2の溝21bに配置されている。第2のヒンジ部62は、第2の溝21bにおいて、第2の支持部72と連結されている。
【0025】
この例では、第1の支持部71及び第2の支持部72のそれぞれは、左右方向に延びる軸であり、ケーシング10内から突出している。第1の支持部71は、第1のヒンジ部61の穴61h(
図6参照)に挿入され、第1のヒンジ部61と係合している。また、第2の支持部72は、第2のヒンジ部62の穴62h(
図6参照)に挿入され、第2のヒンジ部62と係合している。これにより、第1の支持部71及び第2の支持部72の回転と共に、便蓋50が回動(開閉)する。
【0026】
便蓋装置100は、第1の支持部71に設けられた緩衝ユニット80を有する。この例では、緩衝ユニット80は、ケーシング10内に収納されている。緩衝ユニット80は、第1の支持部71と係合しており、第1の支持部71に力を作用させる。これにより、緩衝ユニット80は、便蓋50と係合した第1の支持部71を介して、便蓋50に力を作用させる。より具体的には、緩衝ユニット80は、便蓋50が閉まる際に粘性力により便蓋50の閉方向とは逆方向の制動力を便蓋50に作用させるものである。
なお、便蓋50の閉方向とは、便蓋50の先端50a(
図1参照)が下方及び前方へ向かう方向である。また、便蓋50の開方向とは、便蓋50の先端50aが上方及び後方へ向かう方向である。
【0027】
また、便蓋装置100は、第2の支持部72に設けられたアシストユニット90を有する。この例では、アシストユニット90は、ケーシング10内に収納されている。アシストユニット90は、第2の支持部72と係合しており、第2の支持部72に力を作用させる。これにより、アシストユニット90は、便蓋50と係合した第2の支持部72を介して便蓋50に力を作用させる。より具体的には、アシストユニット90は、便蓋50が閉まる際に、弾性力により便蓋50に開方向の付勢力を作用させる。アシストユニット90は、便蓋50の開方向のみに便蓋50を付勢するものである。すなわち、アシストユニット90は、便蓋50の閉方向には便蓋50を付勢しない。
【0028】
例えば、便蓋には、便蓋を閉じた際に、便器内部に設けた光触媒に紫外線を照射する紫外線照射ユニットなどの機能部が設けられることがある。また、例えば、便蓋にはユリア樹脂などの比較的重い材料が用いられたり、サイズの大きな便蓋が用いられたりすることがある。このような場合には、便蓋全体の重さが、重くなる。また、便蓋を回動可能に支持する支持部がケーシングの後方に配置された場合、便蓋の重心と支持部との距離が長くなる。便蓋が重い場合や、便蓋の重心と支持部との距離が長い場合には、便蓋が閉まる際に、便蓋の自重によって、便蓋を閉める方向に便蓋を回転させる回動力が大きくなる。このため、便蓋が勢いよく閉じ、便座の上面に衝突してしまう恐れがある。これに対して、実施形態においては、便蓋50が閉まる際に、緩衝ユニット80によって生じる制動力と、アシストユニット90によって生じる付勢力とによって、便蓋50が勢いよく閉まることを抑制できる。
【0029】
例えば、緩衝ユニットの粘性力を大きくしたり、緩衝ユニットの数を増やしたりすることで制動力を大きくし、便蓋が勢いよく閉まることを抑制する方法も考えられる。しかし、この場合には、便蓋を開くときに便蓋に作用する制動力も同時に大きくなってしまい、使用者が便蓋を開きにくくなってしまう。これに対して、実施形態においては、開方向のみに便蓋50を付勢するアシストユニット90を設けることにより、緩衝ユニットの粘性力を大きくしたり複数の緩衝ユニットを設けたりした場合と比較して、使用者が便蓋50を開く際に便蓋50を重く感じることを抑制し、容易に便蓋50を開くことができる。したがって、便蓋50に機能部が設けられた場合、便蓋50が重い場合、又は便蓋50の支持位置が後方にある場合であっても、便蓋50が勢いよく閉まることを抑制しつつ、容易に便蓋50を開くことができる。さらに、アシストユニット90と緩衝ユニット80とを異なる支持部に設けることにより、便蓋50が閉まる際に、アシストユニット90及び緩衝ユニット80によって便蓋50に作用する力が一方の支持部に偏ることを抑制できる。これにより、便蓋50に作用する力の偏りによって便蓋50がねじれたり破損したりすることを抑制できる。
【0030】
図3は、実施形態に係る便蓋装置の緩衝ユニットを例示する断面図である。
図3は、
図2に示すC-C線における断面を示す。
緩衝ユニット80は、ケーシング10に対して固定された収納筒81と、軸本体82と、軸本体82の周りに放射状に突出する羽根部83とを有する。第1の支持部71は、軸本体82と接続されており、軸本体82(及び羽根部83)と共に回転する。例えば、第1の支持部71は、軸本体82(及び羽根部83)と一体であってもよい。例えば、収納筒81から左側方に突出した部分が第1の支持部71に相当する。あるいは、軸本体82を第1の支持部71の一部と見なしてもよい。
【0031】
収納筒81は、軸本体82と羽根部83とを内部に収納する。収納筒81の内部において、軸本体82及び羽根部83は、回転可能に支持されている。また、収納筒81の内部の空間には、油などの流体が充填されている。第1の支持部71(軸本体82及び羽根部83)が回転すると、羽根部83が収納筒81の内部の流体を押しながら回転する。このため、羽根部83には、流体の粘性による制動力(抵抗力)が働く。この制動力は、第1の支持部71を介して便蓋50に伝達され、便蓋50の回動を制動する。すなわち、軸本体82、羽根部83、収納筒81及びその内部の流体は、ダンパとして機能する。このようにして緩衝ユニット80は、粘性力により、便蓋50の回動方向(閉方向又は開方向)とは逆方向の制動力を便蓋50に与える。
【0032】
また、緩衝ユニット80は、便蓋50が閉まる際に、弾性力により便蓋50を開方向に付勢する付勢力を便蓋50に作用させる。例えば、緩衝ユニット80は、収納筒81の内部に設けられた弾性体84(例えばコイルバネ)を有する。弾性体84の一部は、収納筒81に対して固定されており、弾性体84の別の一部は、軸本体82に対して固定されている。これにより、弾性体84の弾性力が、軸本体82及び第1の支持部71を介して便蓋50に伝達される。この弾性力によって、緩衝ユニット80は、便蓋50を開方向に付勢する。
【0033】
例えば、緩衝ユニット80に弾性体を設けず、アシストユニット90の弾性力だけで便蓋50に作用する付勢力を大きくする場合、アシストユニット90が大型化する恐れがある。これに対して、実施形態においては、緩衝ユニット80が、便蓋50が閉まる際に、粘性力による制動力だけでなく、弾性力による付勢力も便蓋50に作用させる。これにより、付勢力を大きくするためにアシストユニット90が大型化することを抑制できる。
【0034】
図4は、実施形態に係る便蓋装置のアシストユニットを例示する断面図である。
図4は、
図2に示すD-D線における断面を示す。
アシストユニット90は、ケーシング10に対して固定された収納筒91と、軸本体92と、弾性体94(例えばコイルバネ)と、を有する。第2の支持部72は、軸本体92と接続されており、軸本体92と共に回転する。例えば、第2の支持部72は、軸本体92と一体であってもよい。例えば、収納筒91から右側方に突出した部分が第2の支持部72に相当する。あるいは、軸本体92を第2の支持部72の一部と見なしてもよい。
【0035】
収納筒91は、軸本体92及び弾性体94を内部に収納する。収納筒91の内部において、軸本体92は回転可能に支持されている。また、弾性体94の一部は、収納筒91に対して固定されており、弾性体94の別の一部は、軸本体92に対して固定されている。これにより、弾性体94の弾性力が、軸本体92及び第2の支持部72を介して便蓋50に伝達される。この弾性力によって、アシストユニット90は、便蓋50を開方向に付勢する。
【0036】
以上の例においては、緩衝ユニット80及びアシストユニット90はケーシング10内に設けられている。ただし、緩衝ユニット80、アシストユニット90、第1の支持部71及び第2の支持部72の配置は、この例に限らない。例えば、緩衝ユニット80及びアシストユニット90を便蓋50に取り付けてもよい。この場合、第1の支持部71は、便蓋50に取り付けられた緩衝ユニット80及びケーシング10と係合し、緩衝ユニット80を介して便蓋50を支持する。また、第2の支持部72は、便蓋50に取り付けられたアシストユニット90及びケーシング10と係合し、アシストユニット90を介して便蓋50を支持する。
【0037】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係る便蓋装置の動作を例示する模式図である。
便蓋50が閉まる際に、便蓋50の左側には、緩衝ユニット80により、便蓋50の閉方向とは逆方向の制動力F1と、便蓋50の開方向の付勢力F2と、が作用する。一方、便蓋50の右側には、アシストユニット90により、便蓋50の開方向の付勢力F3が作用する。
【0038】
緩衝ユニット80およびアシストユニット90の双方が弾性力によって便蓋50を付勢する場合、緩衝ユニット80の弾性力がアシストユニット90の弾性力よりも大きいと、アシストユニット90によって便蓋50に作用する力(付勢力F3)と、緩衝ユニットによって便蓋に作用する力(制動力F1及び付勢力F2)と、の差が大きくなり、便蓋50がねじれたり破損したりする恐れがある。
【0039】
例えば、
図5(a)に示す例においては、アシストユニット90の弾性力は、緩衝ユニット80の弾性力よりも小さい。例えば、アシストユニット90の弾性体94のバネ定数は、緩衝ユニット80の弾性体84のバネ定数よりも小さい。この場合、便蓋50の左側に掛かる力(制動力F1及び付勢力F2)が、便蓋50の右側に掛かる力(付勢力F3)に比べて大きくなる。このため、便蓋50の左側に比べて、便蓋50の右側が下方に下がりやすく、便蓋50の右側における便蓋50が閉まる力N1(モーメント)が、便蓋50の左側における便蓋50の閉まる力N2(モーメント)よりも大きくなる。このため、便蓋50がねじれる場合がある。
【0040】
一方、
図5(b)に示す例においては、アシストユニット90の弾性力は、緩衝ユニット80の弾性力よりも大きい。例えば、アシストユニット90の弾性体94のバネ定数は、緩衝ユニット80の弾性体84のバネ定数よりも大きい。これにより、便蓋50が閉まる際に、緩衝ユニット80によって便蓋50に作用する力と、アシストユニット90によって便蓋に作用する力と、の差を小さくすることができる。これにより、便蓋50がねじれたり破損したりすることを抑制できる。例えば、制動力F1と付勢力F2との和と、付勢力F3とが等しいことが望ましい。
【0041】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る便蓋装置の便蓋を例示する斜視図及び平面図である。
図6(b)は、閉じた状態の便蓋50を左側方から見た様子を示す。
便蓋50は、例えばユリア樹脂で形成されている。便蓋50は、例えば左右対称であり、側方から見たときに屈曲した形状を有する。便蓋50の本体は、屈曲した一枚板状の屈曲板部51である。屈曲板部51の外周には、縁部57が設けられている。
図6(b)に示すように、便蓋50(屈曲板部51)は、上面53と、上面53とは反対側の下面55と、を有する。便蓋50が閉じた状態において、上面53は上を向き、下面55は下方を向く。すなわち、下面55は、便蓋50が閉じた状態において、ケーシング10及び便座30の上面と対向する面である。縁部57は、屈曲板部51の外周において、上面53から下面55へ向かう方向に突出した形状である。
【0042】
図6(b)に示すように、下面55は、第1下面55aと、第2下面55bと、を有する。便蓋50が閉じた状態において、第1下面55aは便蓋50の前方側に位置し、第2下面55bは、第1下面55aの後方側に位置する。屈曲板部51の屈曲形状に対応して、側方から見たときに、第2下面55bが延びる方向は、第1下面55aが延びる方向と交差する。例えば、便蓋50が閉じた状態において、第1下面55aは、略水平方向に延びる部分であり、第2下面55bは、前方に向かう下り傾斜を有する部分である。
【0043】
同様に、上面53は、第1上面53aと、第2上面53bと、を有する。便蓋50が閉じた状態において、第1上面53aが前方側であり、その後方に第2上面53bが接続されている。便蓋50の上面53は、便蓋50の下面55と平行である。より具体的には、第1上面53aは第1下面55aと平行であり、第2上面53bは第2下面55bと平行である。
【0044】
第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62は、便蓋50が閉じた状態において、便蓋50の後端に位置し第2下面55bに設けられている。一対のヒンジ部は、上面53から下面55へ向かう方向に突出した形状である。第1のヒンジ部61は、便蓋50の左端付近に位置し、第2のヒンジ部62は、便蓋50の右端付近に位置する。
【0045】
第1のヒンジ部61、第2のヒンジ部62は、それぞれ、左右方向に延びる穴61h、穴62hを有する。穴61h、穴62hは、それぞれ、第1の支持部71、第2の支持部72と係合する。これにより、便蓋50は、第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62において、回動可能に軸支される。
【0046】
一対のヒンジ部は、便蓋50の左右の端よりも内側である。すなわち、第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62は、便蓋50の左端50L及び右端50Rのそれぞれから離れている。これにより、第1のヒンジ部61、第2のヒンジ部62が、それぞれ、便蓋50の左端50L、右端50Rに設けられた場合に比べて、第1のヒンジ部61と第2のヒンジ部62との間の距離を短くすることができる。これにより、便蓋50がねじれたり破損したりすることを抑制できる。
【0047】
第1下面55aには、2つの当接部59が設けられている。当接部59は、便蓋50が閉じた状態において、便座30の上面に当接する。すなわち、便蓋50が閉じた状態においては、便蓋50は、一対のヒンジ部および当接部59において支持される。当接部59の厚さ(高さ)は、便蓋50の厚さよりも薄い。このため、
図6(b)のように、側方から見たときには、当接部59は視認されない。
【0048】
図7(a)~
図7(d)は、実施形態に係る便蓋装置のケーシングを例示する平面図である。
図7(a)はケーシング10を後方から見た様子を示し、
図7(b)はケーシング10を上方から見た様子を示し、
図7(c)はケーシング10を右側方から見た様子を示し、
図7(d)はケーシング10を左側方から見た様子を示す。ケーシング10は、例えばポリプロピレンなどの樹脂で形成されている。ケーシング10は、左側面11と、右側面13と、上面15と、便座配置面16と、後面17と、を有する。
【0049】
上面15は、上方を向き、後方を向かない面である。この例では、上面15は、上方及び前方に向いた傾斜面である。便座配置面16は、上面15の前方に設けられ、閉じた状態の便座30の後方部分が配置される面である。すなわち、便座30が閉じた状態において、便座30の後方部分は、便座配置面16に沿って便座配置面16の直上に位置する。上面15と便座配置面16との間には、段差が形成されており、便座配置面16の位置が低くなっている。便座配置面16は、上方及び前方に向いた傾斜面である。ケーシング10の上面15とは、閉じた状態の便座30が配置されない範囲をいうものとする。すなわち、上面15は、便座配置面16、及び便座配置面16、との間の段差よりも上方に位置する範囲である。
【0050】
上面15と便座配置面16との間において、ケーシング10の右端及び左端には、第1の段差部19a及び第2の段差部19bが設けられている。第1の段差部19aは、上面15の左端が後退した部分であり、
図7(d)に示すように、ケーシング10の左側方に露出している。第2の段差部19bは、上面15の右端が後退した部分であり、
図7(c)に示すように、ケーシング10の右側方に露出している。
【0051】
便座30の左後端32(
図1参照)は、第1の段差部19aに配置され、ケーシング10に設けられた支持軸23a(
図7(d)参照)に支持される。便座30の右後端31(
図1参照)は、第2の段差部19bに配置され、ケーシング10に設けられた支持軸23b(
図7(d)参照)に支持される。これにより、便座30は、回動可能に軸支される。
【0052】
後面17は、後方を向く面である。後面17は、後方及び上方を向く傾斜面でもよい。この例では、後面17は、後方及び上方を向く第1後面17aと、第1後面17aから下方へ延びる第2後面17bと、を有する。
第1の溝21a及び第2の溝21bは、上面15及び第1後面17aが下方に窪んだ部分である。第1の溝21a及び第2の溝21bは、左側面11と右側面13との間に設けられており、左側面11及び右側面13から離れている。言い換えれば、第1の溝21a及び第2の溝21bは、ケーシング10の左右端よりも内側に配置されている。すなわち、
図7(c)に示すように、第1の溝21a及び第2の溝21bは、ケーシング10の右側方に露出せず、右側面13に覆われているため右側方から視認されない。また、
図7(d)に示すように、第1の溝21a及び第2の溝21bは、ケーシング10の左側方に露出せず、左側面11に覆われているため左側方から視認されない。
【0053】
ケーシング10の左側面11及び右側面13のそれぞれは、便座30の後端よりも後方において段差を有さない。より具体的には、左側面11は、閉じた状態の便座30の左後端32よりも後方において、段差を有さない。また、右側面13は、閉じた状態の便座30の右後端31よりも後方において段差を有さない。
【0054】
なお、本願明細書において「段差を有さない」とは、厳密に段差がない場合だけでなく、例えば3mm、好ましくは1mmより大きい段差がない状態を含むものとする。例えば、
図7(c)に示す右側面13のように、ケーシング10の側面は、複数の部材で形成されてもよい。このとき、複数の部材の面は、ケーシング10の側面において、面一となるように設けられている。2つの面が「面一」であるとは、2つの面の互いに突き合わされた端部において、一方の面に対して垂直な方向における、2つの面の間の距離が0mm以上3mm以下であることをいうものとする。すなわち、「面一である」とは、2つの面の間に全く段差及び隙間が無いことだけでなく、僅かな段差及び隙間が存在する場合を含んでもよい。
【0055】
また、例えば、便蓋50に設けられた一対ヒンジ部のうち、一方のヒンジ部が固定された状態で、他方のヒンジ部に便蓋をねじる力が加えられた場合、ヒンジ部間の距離が長いと便蓋がねじれやすく、便蓋が破損する恐れがある。これに対して、実施形態においては、第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62のそれぞれは、ケーシング10の左側面11(左端)と右側面13(右端)との間において、ケーシング10の左側面11及び右側面13から離れた位置に配置されている。これにより、第1のヒンジ部61及び第2のヒンジ部62が、ケーシング10の左側面11及び右側面13に設けられた場合に比べて、ヒンジ部間の距離を短くすることができる。これにより、ヒンジ部間における便蓋50のねじれによる破損を抑制することができる。
【0056】
図8(a)及び
図8(b)は、実施形態に係る便蓋装置を例示する平面図及び断面図である。
図8(a)は、便座30及び便蓋50が閉じた状態の便蓋装置100を、左側方から見た様子を示す。
図8(b)は、
図8(a)の断面図であり、便蓋装置100の左右方向における中心を通り、左右方向に垂直な断面を示す。
【0057】
便座30は、例えばポリプロピレンなどの樹脂で形成されている。便座30は、閉じた便蓋50と対向する上面35を有する。また、便座30は、便蓋50と同様に、側方から見たときに屈曲した形状を有する。すなわち、便座30の上面35は、前方側の上面35aと、後方側の上面35bと、を有し、側方から見たときに上面35bが延びる方向は、上面35aが延びる方向と交差する。
【0058】
図8(a)に示すように、便蓋50の下面55は、便座30の上面35及びケーシング10の上面15を上方から覆う。より具体的には、便蓋50の第1下面55aが、便座30の上面35aを上方から覆い、便蓋50の第2下面55bが、便座30の上面35b及びケーシング10の上面15を上方から覆う。
【0059】
便蓋50が閉じた状態において、便蓋50の第1下面55aは、便座30の上面35aと平行である。また、便蓋50が閉じた状態において、便蓋50の第2下面55bは、便座30よりも後方側においてケーシング10の上面15と平行である。
【0060】
これにより、便蓋50の下面55を便座30の上面35に均一に近づけること、および、便蓋50の下面55をケーシング10の上面15に均一に近づけることができる。そのため、閉じられた便蓋50がいずれの位置で撓んでも、便蓋50の下面55が、すぐに便座30の上面35又はケーシング10の上面15と当接し、便蓋50が下方から支持される。つまり、便座30の上面35及びケーシング10の上面15の全体によって、閉じられた便蓋50に掛かる荷重を支えやすく、撓みによる便蓋50の破損を抑制することができる。
【0061】
なお、本願明細書において、「平行」とは、厳密な平行だけでなく、略平行を含むものとする。すなわち、「平行」とは、2つの面の間の距離が一定である場合だけでなく、2つの面の間の距離が例えば5ミリメートル(mm)以下の範囲で変化する場合も含む。
例えば、便座30の上面35aに対して垂直な方向における、便座30の上面35aと便蓋50の第1下面55aとの間の距離L1は、5mm以上10mm以下である。例えば、ケーシング10の上面15に対して垂直な方向における、ケーシング10の上面15と便蓋50の第2下面55bとの間の距離L2は、5mm以上10mm以下である。
【0062】
図8(b)に示すように、便蓋50が閉じた状態において、便蓋50の第2下面55bは、便座30の上面35bと平行である。例えば、便座30の上面35bに対して垂直な方向に沿った、便座30の上面35bと便蓋50の第2下面55bとの間の距離L3は、5mm以上10mm以下である。距離L1、距離L2、距離L3は、互いに等しいことが望ましい。
【0063】
また、便蓋50の第1下面55aが、便座30の上面35aに対して平行であり、便蓋50の第2下面55bが、ケーシング10の上面15に対して平行である場合、便蓋50の上面53と便蓋50の下面55とが非平行であると、便蓋50の厚さや重量が増し、便蓋50の開閉動作がしにくなり使用者の使い勝手が悪くなったり、便蓋50が成形しにくくなったりする恐れがある。これに対して、
図6に関して説明したように、実施形態においては、便蓋50の上面53と便蓋50の下面55とは、平行である。これにより、便蓋50を薄くすることができ、便蓋50の開閉動作のしにくさを抑制し、使用者の使い勝手が悪くなることを抑制することができる。また、便蓋50の成形性の低下を抑制することができる。
【0064】
また、便蓋50の下面55が、便座30の上面35及びケーシング10の上面15のそれぞれと平行である場合、便座30の上面35とケーシング10の上面15との間に段差があると、便蓋50の下面55にも段差が形成されることとなる。この場合、便蓋50の形状が複雑となり、製造が困難になる恐れがある。また、便蓋50の上面53にも段差が形成され、清掃性が低下する恐れもある。これに対して、実施形態においては、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、便座30の上面35(上面35b)は、ケーシング10の上面15と面一である。これにより、便座30の上面35とケーシング10の上面15との間の凹凸が小さいため、便蓋50の形状が複雑になることや、段差によって清掃性が低下することを抑制できる。
【0065】
また、便蓋50は、便蓋50が閉じた状態において、ケーシング10の上面15の全体を覆っている。言い換えれば、便蓋50の下面55は、ケーシング10の上面15の全体と向き合う。これにより、ケーシング10の上に埃が溜まることを抑制できる。また、便座30とケーシング10との間に埃が溜まることも抑制できる。なお、
図8(b)に示すように、左右方向に垂直な断面において、ケーシング10の上面15と第1後面17aとの間に湾曲した曲面r1が設けられている。上面15は、曲面r1を含まず、例えば直線状に延びる部分である。
【0066】
また、
図8(b)に示すように、便座30の内部には、便座ヒータ37が設けられている。便座ヒータ37は、例えば、便座30の開口の周りに沿って設けられた環状の金属部材を有する。便座ヒータ37の金属部材に通電が行われることで、便座ヒータ37は便座30の上面35を温める。便座ヒータ37としては、例えば、チュービングヒータや、シーズヒータ、ハロゲンヒータ、カーボンヒータなどを用いてもよい。金属部材は、例えば、アルミニウムや銅などで構成される。また、金属部材の形状は、シート状やワイヤ状、メッシュ状など、種々の形状を採用することができる。
【0067】
便蓋50を閉じた状態において、便座ヒータ37による熱は、便座30の上面35と便蓋50の下面55との間の距離が長い部分から、外部へ逃げやすい。これに対して、便蓋50の第1下面55aが、便座30の上面35aと平行であることにより、便座30の上面35と便蓋50の下面との間の距離が長い部分が生じることを抑制できる。これにより、便座30の上面35と便蓋50の下面との間の距離が長い部分から、便座ヒータ37による暖気が外部へ逃げることを抑制できる。
【0068】
図9は、実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する断面図である。
図9は、
図8(a)に示すA-A断面における、ケーシング10及び便蓋50の左端付近を示す。
ケーシング10の上面15と左側面11との間に曲面r2が設けられている。上面15及び左側面11のそれぞれは、曲面r2を含まず、前後方向に垂直な断面において直線状に延びる部分である。
【0069】
便蓋50の左端部(縁部57)は、ケーシング10の左側面11よりも外側(左側)へ延びている。また、縁部57の下端57sは、上面15よりも下方まで延びている。縁部57の下端57sと上面15との間の、上下方向における距離L9は、例えば1mm以上5mm程度以下である。
【0070】
便蓋50は、曲面r2の一部を覆う。すなわち、縁部57の一部は、左右方向において曲面r2の一部と重なる。一方、便蓋50は、ケーシング10の左側面11を覆わない。すなわち、縁部57は、左右方向において、左側面11と重ならない。縁部57の下端57sと左側面11との間の、上下方向における距離L4は、例えば6mm以上10mm以下程度である。
【0071】
ケーシング10及び便蓋50の右端に関しても、上記と同様である。すなわち、ケーシング10の上面15及び右側面13の間には、曲面r3が設けられる(
図7(b)参照)。上面15及び右側面13のそれぞれは、曲面r3を含まず、前後方向に垂直な断面において直線状に延びる部分である。便蓋50の右端部は、ケーシング10の右側面13よりも外側(右側)へ延びている。便蓋50が閉じた状態において、縁部57の一部は、左右方向において曲面r3の一部と重なる。一方、便蓋50が閉じた状態において、縁部57は、左右方向において右側面13と重ならない。
【0072】
このように、便蓋50は、便蓋50が閉じた状態において、ケーシング10の左側面11及び右側面13を露出させる。これにより、便蓋50を閉じた状態のままでケーシング10の左側面11及び右側面13の掃除が行いやすい。また、便蓋50は、便蓋50が閉じた状態において、ケーシング10の上面15の右側端15g(
図7(b)参照)から左側端15hまでを覆っているため、ケーシング10の上面15に埃が溜まることを抑制できる。
【0073】
図10は、実施形態に係る便蓋装置の一部を例示する断面図である。
図10は、
図8(a)に示すB-B断面における、便座30及び便蓋50の左端付近を示す。
便座30の上面35と左側面33との間に曲面r4が設けられている。上面35及び左側面33のそれぞれは、曲面r4を含まず、前後方向に垂直な断面において直線状に延びる部分である。
【0074】
便蓋50の左端部(縁部57)は、便座30の左側面33よりも外側(左側)へ延びている。また、縁部57の下端57sは、上面35よりも下方まで延びている。縁部57の下端57sと上面15との間の、上下方向における距離L5は、例えば1mm以上5mm程度以下である。
【0075】
便蓋50は、曲面r4の一部を覆う。すなわち、縁部57の一部は、左右方向において曲面r4の一部と重なる。一方、便蓋50は、便座30の左側面33を覆わない。すなわち、縁部57は、左右方向において、左側面33と重ならない。縁部57の下端57sと左側面33との間の、上下方向における距離L6は、例えば6mm以上10mm以下である。
【0076】
便座30及び便蓋50の右端に関しても、上記と同様である。すなわち、便座30の上面35及び右側面34の間には、曲面r5が設けられる(
図1参照)。上面35及び右側面34のそれぞれは、曲面r5を含まず、前後方向に垂直な断面において直線状に延びる部分である。便蓋50の右端部は、便座30の右側面34よりも外側(右側)へ延びている。便蓋50が閉じた状態において、縁部57の一部は、左右方向において曲面r5の一部と重なる。一方、便蓋50が閉じた状態において、縁部57は、左右方向において右側面34と重ならない。
【0077】
このように、便蓋50は、便蓋50が閉じた状態において、便座30の左側面33及び右側面34を露出させる。例えば、側方から見たときに、便蓋50は、便座30よりも薄い。また、便蓋50は、便蓋50が閉じた状態において、便座30の上面35の右側端35g(
図1参照)から左側端35hまでを覆う。
【0078】
便座30の横幅がケーシング10よりも小さいと、便座30が上方からケーシング10を覆う範囲が狭くなる。そのため、例えば、便蓋50が開いた状態において、ケーシング10の便座配置面16の左右端部が露出し、露出した部分に埃が溜まりやすくなることがある。これに対して、実施形態おいては、便蓋50が閉じた状態において、便蓋50は、便座30の左側面33及び右側面34を覆わず、露出させている。これにより、便座30の横幅を大きくすることができる。したがって、便座30がケーシング10を上方から覆う範囲を広くすることができ、ケーシング10上に埃が溜まることを抑制することができる。また、便座30とケーシング10との間に埃が溜まることも抑制できる。
【0079】
また、便蓋50が閉じた状態において、便座30の左側面33及び右側面34が露出していると、便座ヒータ37による熱が、露出した左側面33及び右側面34から外部に逃げやすくなる恐れがある。これに対して、便蓋50の第1下面55aが便座30の上面35aと平行であることにより、便蓋50の第1下面55aの全体を均一に便座30に近づけることができる。これにより、便座ヒータ37の熱が外部に逃げることを抑制することができる。また、便蓋50の第2下面55bが便座30の上面35bと平行であることにより、便蓋50の第2下面55bの全体を均一に便座30に近づけることができ、さらに熱が逃げることを抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便蓋装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0081】
10 ケーシング、 11 左側面、 13 右側面、 15 上面、 15g 右側端、 15h 左側端、 16 便座配置面、 17 後面、 17a 第1後面、 17b 第2後面、 19a 第1の段差部、 19b 第2段差部、 21a 第1の溝、 21b 第2の溝、 23a 支持軸、 23b 支持軸、 30 便座、 31 右後端、 32 左後端、 33 左側面、 34 右側面、 35 上面、 35a 第1上面、 35b 第2上面、 35g 右側端、 35h 左側端、 37 便座ヒータ、 50 便蓋、 50L 左端、 50R 右端、 50a 先端、 51 屈曲板部、 53 上面、 53a 第1上面、 53b 第2上面、 55 下面、 55a 第1下面、 55b 第2下面、 57 縁部、 57s 下端、 59 当接部、 61 第1のヒンジ部、 61h 穴、 62 第2のヒンジ部、 62h 穴、 70 洗浄ノズル、 71 第1の支持部、 72 第2の支持部、 80 緩衝ユニット、 81 収納筒、 82 軸本体、 83 羽根部、 84 弾性体、 90 アシストユニット、 91 収納筒、 92 軸本体、 94 弾性体、 100 便蓋装置、 r1~r5 曲面