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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20220510BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220510BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220510BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220510BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20220510BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20220510BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220510BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220510BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20220510BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20220510BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220510BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M50/443 C
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/449
H01M10/0583
H01M10/04 Z
H01M6/02 Z
H01M10/0566
H01G11/52
H01G11/12
H01M50/466
H01M50/451
H01M10/052
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017250111
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117699
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0207480(US,A1)
【文献】国際公開第2015/083389(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0058387(US,A1)
【文献】特開2016-006718(JP,A)
【文献】特表2015-503832(JP,A)
【文献】特開2015-201400(JP,A)
【文献】特開2013-191485(JP,A)
【文献】特開2006-049114(JP,A)
【文献】特開2014-103082(JP,A)
【文献】特開2018-045902(JP,A)
【文献】特開2003-092145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/497
H01M10/05-10/0587
H01G11/00-11/86
H01M6/00-6/22
H01M10/00-10/04;10/06-10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを含む第一部材、及び、第一の電極を含む第二部材を有する電極体と、
電解液と、
前記電極体及び前記電解液を収容するケースと、を備え、
前記第一部材は、前記セパレータに重ねられ且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極を含み、平行若しくは略平行な一対の平坦部と、前記一対の平坦部の第一方向における一方側の端部同士を接続するターン部と、を含む折返し部が形成された長尺状であり、
前記第一の電極は、枚葉状であり、
前記折り返し部の内側には、前記第二部材が配置され、
前記セパレータは、多孔質膜である基材層と、多孔性樹脂或いは樹脂粒子とバインダーとを含んだ塗工層又は無機塗工層であり且つ前記基材層に重ねられる保護層と、を含み、
前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられている蓄電素子。
【請求項2】
前記セパレータは、前記第二の電極の第一の面に重ねられた第一セパレータと、前記第二の電極の前記第一の面と反対側に位置する第二の面に重ねられた第二セパレータとを有し、
前記第一セパレータの前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられ、
前記第二セパレータの前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられている、請求項1に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極とセパレータとを有する電極体を備えた蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、つづら折りされたセパレータと電極板とを備えたリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」と称する)が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この電池は、図19に示すように、長尺電極板101と、正極電極板104と、両電極板101、104間に挿入されたセパレータ107とが、交互に積層されて構成された電極積層体である。
【0003】
長尺電極板101は、両面でセパレータ107と密着しており、長手方向に所定間隔で交互に折り畳まれてつづら折り状に積層された長尺の可撓性材料からなる電極板(長尺電極板と称する)である。負極の長尺電極板101は、銅箔102の両面に形成された負極活物質層103を有する。
【0004】
セパレータ107は、長尺の絶縁膜からなる。このセパレータ107は、負極の長尺電極板101の両面に接して折り畳まれている。具体的に、セパレータ107は、長尺電極板101の銅箔102のうち、負極活物質層103の形成されている部分を両面から包み込んでいる。即ち、長尺電極板101とその両面を包むセパレータ107とは一体化して一体長尺物108を形成している。
【0005】
正極電極板104は、両面でセパレータ107に密着しており、多数の互いに独立した短冊形状の電極板(短冊状電極板と称する)である。正極の各短冊状電極板104は、アルミニウム箔105の両面に形成された正極活物質層106を有する。
【0006】
そして、長尺電極板101とセパレータ107とからなる一体長尺物108に対し、その両側から多数の短冊状電極板104が交互に積層されて電池100が構成されている。即ち、一枚の一体長尺物108と多数の短冊状電極板104との積層に際し、一体長尺物108はつづら折りに折り畳まれ、その間に短冊状電極板104が両側から挿入されて一体長尺物108に挟持された構造を電池100は持っている。
【0007】
ところで、上記構成の電池100では、例えば、電池の小型化を目的として、セパレータ107を薄くすることが望まれているが、セパレータ107を薄くすると、セパレータ107の強度が低下するおそれがあり、この場合、例えば、長尺電極板101や正極電極板104から落ちたコンタミ等がセパレータ107を貫通しやすい。これに対して、セパレータ107において絶縁膜の表面に硬い材料からなる保護層を形成して、セパレータ107の強度を向上させると、コンタミ等がセパレータ107を貫通することを抑えられるが、保護層がガス抜けや電解液の透過を妨げるため、セパレータ107におけるガス抜けや電解液の透過性を確保しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-103082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本実施形態は、折り返されたセパレータを備えた蓄電素子であって、セパレータの強度を確保しつつ、セパレータにおけるガス抜けや電解液の透過性を確保した蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の蓄電素子は、
セパレータを含む第一部材、及び、第一の電極を含む第二部材を有する電極体と、
電解液と、
前記電極体及び前記電解液を収容するケースと、を備え、
前記第一部材は、平行若しくは略平行な一対の平坦部と、前記一対の平坦部の第一方向における一方側の端部同士を接続するターン部と、を有し、
前記折り返し部の内側には、前記第二部材が配置され、
前記セパレータは、基材層と、該基材層よりも硬く且つ該基材層に重ねられる保護層と、を含み、
前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられている。
【0011】
かかる構成によれば、セパレータを薄くしても、セパレータのターン部以外の領域には保護層が配置されているため、コンタミ等がセパレータを貫通することを抑制することができる。さらに、ターン部において保護層や保護層から基材層にかけて溝が存在することで、この溝を介して電解液やガスの拡散性を向上できるため、ターン部のセパレータにおいてガス抜けや電解液の浸透性を確保できる。以上により、セパレータの強度を確保しつつ、セパレータにおけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0012】
前記蓄電素子では、
前記第一部材は、前記セパレータに重ねられ且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極を含み、
前記セパレータは、前記第二の電極の第一の面に重ねられた第一セパレータと、前記第二の電極の前記第一の面と反対側に位置する第二の面に重ねられた第二セパレータとを有し、
前記第一セパレータの前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられ、
前記第二セパレータの前記ターン部において、前記保護層又は前記保護層から前記基材層にかけて溝が設けられていてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、折り返し部における第二の電極の内側又は外側に配置されたセパレータのいずれにおいても、平坦部には保護層が配置されているため、コンタミ等がセパレータを貫通することを抑制ことができる。さらに、ターン部の内側に溝が存在すると共に、ターン部の外側にも溝が存在するため、セパレータにおいてガス抜けや電解液の浸透性を確保できる。以上により、ターン部の内側及び外側のいずれにおいても、セパレータにおけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本実施形態の蓄電素子によれば、折り返されたセパレータを備えた蓄電素子であって、セパレータの強度を確保しつつ、セパレータにおけるガス抜けや電解液の透過性を確保した蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III位置における断面図である。
図4図4は、電極体を説明するための断面図である。
図5図5は、電極体を説明するための斜視図である。
図6図6は、負極の構成を説明するための図である。
図7図7は、セパレータの構成を説明するための図である。
図8図8は、つづら折り状態の負極及びセパレータの構成を説明するための斜視図である。
図9図9は、折り返し部を説明するための斜視図である。
図10図10は、電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図11図11は、正極の構成を説明するための図である。
図12図12は、前記蓄電素子の電極体の製造方法を説明するための図である。
図13図13は、他実施形態に係る電極体を説明するための斜視図である。
図14図14は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図15図15は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図16図16は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図17図17は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図18図18は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の斜視図である。
図19図19は、従来の電池の積層構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図12を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0017】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0018】
蓄電素子は、図1図5に示すように、第一部材21及び第二部材22を有する電極体2と、電解液と、電極体2及び電解液を収容するケース3と、を備える。また、蓄電素子1は、少なくとも一部が外部に露出した状態でケース3に取り付けられる外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5と、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6と、を備える。
【0019】
本実施形態の電極体2では、第二部材22は、第一の電極である。また、本実施形態の電極体2では、第一部材21は、第一の電極22と極性の異なる第二の電極24とセパレータ25とを含む。さらに、本実施形態の電極体2では、第一の電極22は正極であり、第二の電極24は負極である。尚、各図においては、構造を示すために、電極体2を構成する電極等の厚さを誇張して表す等、電極体2の構成を模式的に表している。
【0020】
本実施形態の第一部材21は、一対のセパレータ25と、一対のセパレータ25に挟まれた負極24とを含む。第一部材21は、例えば、長尺状の負極24と、負極24と長尺方向を揃えた状態で負極24に重ねられた長尺状のセパレータ25とを含む。
【0021】
負極24は、図6に示すように、金属箔241と、金属箔241の両面のそれぞれに重ねられる負極活物質層242と、を有する。即ち、負極24は、一つの金属箔241と一対の負極活物質層242とを有する。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0022】
負極活物質層242は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
【0023】
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、グラファイトである。
【0024】
負極活物質層242に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0025】
負極活物質層242は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層242は、導電助剤を有していない。
【0026】
負極24は、矩形状の電極本体部243と、電極本体部243の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する負極タブ244と、を有する(図6参照)。電極本体部243では、金属箔241の両面が負極活物質層242に覆われ、負極タブ244では、金属箔241が露出している。即ち、負極タブ244は、負極活物質層242を有していない。
【0027】
セパレータ25は、基材層251と基材層251よりも硬く且つ基材層251に重ねられる保護層252とを有する(図10参照)。本実施形態のセパレータ25は、折り曲げられることで、保護層252を露出させるとともに、基材層251を負極24に重ねた状態で、負極24に重ねられている。また、本実施形態のセパレータ25は、負極24の一方の面(第一の面)に重ねられる第一セパレータ25Aと、負極24の他方の面(第一の面と反対側の第二の面)に重ねられる第二セパレータ25Bとを有する。
【0028】
本実施形態のセパレータ25では、第一セパレータ25A及び第二セパレータ25Bは、それぞれ、別体として形成されている。また、本実施形態のセパレータ25では、第一セパレータ25Aの構成と、第二セパレータ25Bの構成とは同じである。
【0029】
第一セパレータ25Aは、長尺状(帯状)の部材であり、絶縁性を有する部材である。
【0030】
基材層251は、例えば、多孔質膜(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリアミド等により形成される多孔質膜)である。具体的には、基材層251は、シャットダウン機能を有するポレオレフィン微多孔質膜である。
【0031】
保護層252は、例えば、多孔性樹脂、或いは、樹脂粒子とバインダーとを含んだ塗工層である。保護層252に用いられるバインダーは、そのガラス転移温度が20℃以上であることが好ましい。また、このバインダーの分子量は、50万以上であることが好ましい。このバインダーのガラス転移温度が20℃以上である場合、バインダーが硬くなり、保護層252が割れやすくなるで。また、このバインダーの分子量が50万以上である場合、バインダーが硬くなり、保護層252が割れやすくなる。そのため、このバインダーのガラス転移温度が20℃以上であり、且つ、このバインダーの分子量が50万以上である場合、バインダーが硬くなり、保護層252が割れやすくなる。尚、保護層252には、溝2520が設けられている。
【0032】
本実施形態の第一セパレータ25Aでは、保護層252の厚みは、基材層251の厚みよりも薄い。具体的に、基材層251の厚みは略均一であると共に、保護層252の溝2520を除く領域における厚みも略均一である。基材層251の厚みは、例えば、12μmである。保護層252の溝2520を除く領域における厚みは、例えば、4μmである。この場合、基材層251の一方の面に保護層252の溝2520を除く領域が重ねられた第一セパレータ25Aの厚みは、例えば、16μmである。一方、仮に、この第一セパレータ25Aと同じ強度を有するように第一セパレータ25Aを基材層251のみで構成した場合、この厚みは、例えば、20μmである。尚、基材層251の厚みや保護層252の厚みが略均一であるとは、基材層251の厚みや保護層252の厚みが均一である場合に加えて、基材層251の厚みや保護層252の厚みが製造誤差の範囲内で異なっている場合も含む。また、第一セパレータ25Aにおける保護層252の溝の深さは、保護層252の溝2520を除く領域における厚みと略同じである。
【0033】
第二セパレータ25Bの構成(つづら折りされる前の第二セパレータ25Bの構成)は、図7に示した長尺な第一セパレータ25Aの構成と同じである。
【0034】
本実施形態の第一部材21では、負極24とセパレータ25とが折り返されることで折り返し部23が形成される。この折り返し部23の折目部位がターン部234であり、この折り返し部23の折り目部位以外の部位が平坦部233である。具体的に、第一部材21は、図8に示すように、複数の折り返し部23を有するつづら折り状態(蛇腹状)に折り畳まれている。換言すると、第一部材21は、ターン部234を反対に向けた状態で隣り合う折り返し部23同士がその一部を共通させた状態で連続するつづら折り状態である。
【0035】
折り返し部23は、谷折り面231及び山折り面232(即ち、谷折り面231と反対側の面)をそれぞれ有し且つ谷折り面231同士を対向させた一対の平坦部233と、一対の平坦部233の端部同士を接続するターン部234と、を含む。換言すると、折り返し部23は、ターン部234と、このターン部234の端縁から延びる一対の平坦部233とを有する。
【0036】
折り返し部23の内側には、正極22が配置されている。本実施形態の第一部材21は、上述のように、複数の折り返し部23を有することによりつづら折り状態となっており、各折り返し部23の内側には、正極22が配置されている。
【0037】
本実施形態の第一部材21では、複数の折り返し部23が、一対の平坦部233の延びる方向を揃えた状態で、一対の平坦部233が並ぶ方向に並んで設けられる。一つの折り返し部(第一折り返し部)23Aに着目したときに、第一折り返し部23Aと、その隣(図8における後ろ側)の折り返し部(第二折り返し部)23Bとでは、第一折り返し部23Aのターン部234Aと、第二折り返し部23Bのターン部234Bとの間の平坦部233A、233Bを共通させている。これにより、第一折り返し部23Aと第二折り返し部23Bとは、平坦部233が延びる方向における反対側に配置されている。
【0038】
以下では、平坦部233が並ぶ方向を直交座標系におけるX軸方向とし、平坦部233が延びる方向(図8における左右方向)を直交座標系におけるY軸方向(第一方向)とし、ターン部234のターン軸Sの延びる方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0039】
複数のターン部234のそれぞれは、Z軸方向に延びるターン軸S周りでの第一部材21が旋回(方向転換)している部位である。ターン軸S回りでの第一部材21の折り曲げは、例えば、180°の折り曲げである。換言すると、複数のターン部234のそれぞれは、湾曲している部位である。本実施形態のターン部234は、第一部材21の湾曲の開始位置Bより外側の部位である(図10参照)。
【0040】
本実施形態の一対の平坦部233は、平行若しくは略平行に延びている。また、平坦部233は、略平坦な形状をしている。また、本実施形態の一対の平坦部233は、折り返し部23のうちターン部234を除く部位、換言すると、第一部材21の湾曲の開始位置Bより内側の部位である。
【0041】
上述のように、第一部材21をつづら折り状態に折り畳むことにより、長尺な負極24及びセパレータ25はつづら折り状態に折り畳まれる。つづら折り状態の第一部材21において、負極タブ244は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の第一部材21では、各負極タブ244は、電極本体部243のZ軸方向の一方(図8における上側)の端縁におけるY軸方向の一方(図8における右側)の端部からZ軸方向に延びている。負極タブ244は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている(図3参照)。本実施形態の負極タブ244の束は、集電体5に溶接されている。
【0042】
つづら折り状態の第一セパレータ25Aは、例えば、Y軸方向に延びる略平坦なセパレータ平坦部253と、湾曲したセパレータターン部254とを有する。第一セパレータ25Aでは、セパレータ平坦部253とセパレータターン部254とが交互に連続して形成されている。
【0043】
第一セパレータ25Aのセパレータ平坦部253は、平坦部233に対応する(平坦部233を構成する)部位である。また、このセパレータ平坦部253は、平行若しくは略平行に並んでいる。尚、このセパレータ平坦部253は、第一セパレータ25Aのうち第一部材21の湾曲の開始位置Bより内側の部位(第一セパレータ25Aのうちセパレータターン部254を除く部位)である。
【0044】
第一セパレータ25Aのセパレータターン部254は、ターン部234に対応する(ターン部234を構成する)部位である。また、このセパレータターン部254は、第二方向における一方側と他方側に配置されている。尚、このセパレータ平坦部253は、第一セパレータ25Aのうち第一部材21の湾曲の開始位置Bより外側の部位(第一セパレータ25Aのうちセパレータ平坦部253を除く部位)である。
【0045】
本実施形態のつづら折り状態の第一セパレータ25Aのターン部234Aにおいて、保護層252には、溝2520が設けられている。また、本実施形態のつづらおり状態の第二セパレータ25Bのターン部234Aにおいて溝2520が設けられている。さらに、本実施形態の第一セパレータ25Aや第二セパレータ25Bにおいて、ターン部234Aの全体(ターン部234Aが広がる方向におけるターン部234Aの全体)やターン部234Bの全体(ターン部234Bが広がる方向におけるターン部234Bの全体)にそれぞれ溝2520が設けられているため、保護層252は、第一折り返し部23Aのターン部234及び第二折り返し部23Bのターン部234Bを避けた位置で基材層251に重ねられていることになる(図10参照)。また、上述のように、第一セパレータ25Aは、保護層252を露出させるとともに、基材層251を負極24に重ねた状態で、負極24に重ねられている。これにより、第一セパレータ25Aにおいて、セパレータ平坦部253では保護層252が露出し、セパレータターン部254では基材層251が露出している。
【0046】
また、この第一セパレータ25Aのセパレータ平坦部253は、基材層251及び保護層252を有する。具体的に、このセパレータ平坦部253は、第一折り返し部23Aに対応する負極24の平坦部233を構成する部位の内側に配置された基材層251と、この基材層251の内側に配置された保護層252(正極22側に配置された保護層252)とを有する。また、このセパレータ平坦部253は、第二折り返し部23Bに対応する負極24の平坦部233を構成する部位の外側に配置された基材層251と、この基材層251の外側に配置された保護層252とを有する。このセパレータ平坦部253の基材層251は、負極24の平坦部233を構成する部位の内側の全域、或いは、負極24の平坦部233を構成する部位の外側の全域に重ねられている。
【0047】
つづら折り状態の第一セパレータ25Aでは、セパレータターン部254は、少なくとも基材層251を有する。本実施形態の第一セパレータ25Aでは、セパレータターン部254は、基材層251のみを有する。具体的に、このセパレータターン部254は、第一折り返し部23Aに対応する負極24のターン部234を構成する部位の内側に配置された基材層251と、第二折り返し部23Bに対応する負極24のターン部234を構成する部位の外側に配置された基材層251とを有する。このセパレータターン部254の基材層251は、負極24のターン部234を構成する部位の内側の全域、或いは、負極24のターン部234を構成する部位の外側の全域に重ねられている。
【0048】
第二セパレータ25Bは、第一セパレータ25Aと同様に、セパレータ平坦部253とセパレータターン部254とを有するつづら折り状態に折り畳まれている。第二セパレータ25Bにおいても、セパレータ平坦部253とセパレータターン部254とが、交互に連続して形成されている。
【0049】
また、つづら折り状態の第二セパレータ25Bのターン部234Aにおいても、保護層252には、溝2520が設けられている。また、本実施形態のつづらおり状態の第二セパレータ25Bのターン部234Bにおいても溝2520が設けられている。さらに、本実施形態の第一セパレータ25Aや第二セパレータ25Bにおいて、ターン部234Aの全体(ターン部234Aが広がる方向におけるターン部234Aの全体)やターン部234Bの全体(ターン部234Bが広がる方向におけるターン部234Bの全体)にそれぞれ溝2520が設けられているため、保護層252は、第一折り返し部23Aのターン部234A及び第二折り返し部23Bのターン部234Bを避けた位置で基材層251に重ねられていることになる。また、上述のように、この第一部材21では、セパレータ25は、保護層252を露出させるとともに、基材層251を負極24に重ねた状態で、負極24に重ねられている。これにより、第二セパレータ25Bにおいても、セパレータ平坦部253では保護層252が露出し、セパレータターン部254では基材層251が露出している。
【0050】
本実施形態の第二セパレータ25Bにおいても、セパレータ平坦部253は、基材層251及び保護層252を有する。具体的に、このセパレータ平坦部253は、第一折り返し部23Aに対応する負極24の平坦部233を構成する部位の外側に配置された基材層251と、この基材層251の外側に配置された保護層252とを有する。また、このセパレータ平坦部253は、第二折り返し部23Bに対応する負極24の平坦部233を構成する部位の内側に配置された基材層251と、この基材層251の内側に配置された保護層252(正極22側に配置された保護層252)とを有する。このセパレータ平坦部253の基材層251は、負極24の平坦部233を構成する部位の内側の全域、或いは、負極24の平坦部233を構成する部位の外側の全域に重ねられている。
【0051】
第二セパレータ25Bでは、セパレータターン部254は、少なくとも基材層251を有する。本実施形態の第二セパレータ25Bでは、折り曲げられることにより、セパレータターン部254は、基材層251を露出している。具体的に、このセパレータターン部254は、第一折り返し部23Aに対応する負極24のターン部を構成する部位の外側に配置された基材層251と、第二折り返し部23Bに対応する負極24のターン部を構成する部位の内側に配置された基材層251とを有する。このセパレータターン部254の基材層251は、負極24のターン部を構成する部位の内側の全域、或いは、負極24のターン部を構成する部位の外側の全域に重ねられている。
【0052】
本実施形態の電極体2では、第一セパレータ25Aと第二セパレータ25Bとの間に挟まれた負極24が折り返されて構成された複数の折り返し部23に、それぞれ、正極22が配置されているため、第一セパレータ25Aや第二セパレータ25Bは、正極22と負極24との間に配置される。これにより、この電極体2において、正極22と負極24とが互いに絶縁される。
【0053】
また、第一セパレータ25A及び第二セパレータ25Bは、いずれも、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、第一セパレータ25Aや第二セパレータ25Bを挟んで対向する正極22と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0054】
正極22は、図11に示すように、金属箔221と、金属箔221の両面にそれぞれ重ねられる正極活物質層222と、を有する。即ち、正極22は、一つの金属箔241と一対の正極活物質層222とを有する。本実施形態の金属箔221は、例えば、アルミニウム箔である。この正極22は、折り返し部23の外側に配置されている。換言すると、正極22は、つづら折り状態の第一部材21(負極24及びセパレータ25)において、X軸方向に隣り合う平坦部233間のそれぞれに配置されている。このため、本実施形態の電極体2は、複数の正極22を有している。具体的に、正極22のY軸方向における端縁のうちターン部234に対向する側の端縁は、この端縁に並ぶセパレータ平坦部253の保護層252のY軸方向における端縁よりも内側に位置している(図10参照)。
【0055】
正極活物質層222は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
【0056】
本実施形態の正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO、LiaNixO、LiaMnzO、LiaNixCoyMnzO等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO、LiaMnbPO、LiaMnbSiO、LiaCobPOF等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3である。
【0057】
正極活物質層222に用いられるバインダーは、負極活物質層242に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0058】
正極活物質層222は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層222は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0059】
具体的に、複数の正極22のそれぞれは、矩形状の正極本体223と、正極本体223の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)正極タブ224と、を有する。本実施形態の正極本体223は、Y軸方向に長い矩形状である。正極本体223では、金属箔221の両面が正極タブ224側の端部を残して正極活物質層222に覆われ、正極タブ224では、金属箔221が露出している。即ち、正極タブ224は、正極活物質層222を有しない。
【0060】
正極本体223における正極活物質層222は、X軸方向に対向する(詳しくは、セパレータ25を介して対向する)平坦部233の負極活物質層212よりY-Z面(Y軸とZ軸とを含む平面)方向において小さい。即ち、正極本体223の正極活物質層222は、全域において平坦部233の負極活物質層212と対向し、平坦部233の負極活物質層212は、周縁部を除いた領域において正極本体223の正極活物質層222と対向する。
【0061】
本実施形態の電極体2において、各正極22の正極タブ224は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の正極22では、各正極タブ224は、正極本体223のZ軸方向の一方(図5における上側)の端縁におけるY軸方向の他方(電極平坦部本体215に対する負極タブ244の位置とは反対側:図5における左側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の正極本体223のそれぞれから延びている正極タブ224は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている。本実施形態の正極タブ224の束は、負極タブ244の束と同様に、集電体5に溶接されている(図3参照)。
【0062】
以下、本実施形態の電極体2の製造方法の主要な工程を説明する。
【0063】
まず、長尺状の負極24の両面に、長尺方向を揃えた状態で長尺状のセパレータ25が二枚配置される。このとき、いずれのセパレータ25も、保護層252が外側に配置され、基材層251が内側に配置された(負極24に重ねられた)状態で負極24の両面に配置される。尚、このセパレータ25の保護層252は、基材層251の一方の面の全体に配置されている。このセパレータ25が重ねられた負極24(第一部材21)上に、正極22が配置され、図12に示すように、正極22を挟むように第一部材21が折り曲げられる。これにより、第一部材21に、平坦部233及びターン部234を有する折り返し部23が形成される。また、折り返し部23の内側に、正極22が配置される。
【0064】
電極体2の製造工程では、第一部材21が折り曲げられる際に、負極24の外側に露出するセパレータ25には、基材層251の外側に基材層251よりも硬い保護層252が配置されている。そのため、第一部材21の折り曲げの際に、負極24の外側に露出するセパレータ25のセパレータターン部254において保護層252が折れる。これにより、セパレータターン部254において、保護層252に溝(切り欠き、割れ)が生じる。本実施形態の製造方法では、セパレータターン部254の全体において、保護層252に溝(切り欠き、割れ)が生じることにより、保護層252が基材層251から剥がれて、基材層251が露出する。換言すると、負極24の外側に露出するセパレータ25の保護層252は、ターン部234を避けた位置で基材層251に重ねられた状態になる。尚、保護層252は、基材層251よりも硬く、基材層251よりも降伏応力が低いことから、基材層251よりも折れやすい。
【0065】
また、本実施形態の電極体2の製造工程では、第一部材21が折り曲げられる際に、負極24の内側に配置されるセパレータ25(正極22を覆うセパレータ25)においても、基材層251の内側に基材層251よりも硬い保護層252が配置されている。そのため、第一部材21の折り曲げの際に、負極24の内側に配置されたセパレータ25のセパレータターン部254において保護層252が折れる。これにより、セパレータターン部254において、保護層252に溝(切り欠き、割れ)が生じる。本実施形態の製造方法では、セパレータターン部254の全体において、保護層252に溝(切り欠き、割れ)が生じることにより、保護層252が基材層251から剥がれて、このセパレータターン部254において、基材層251が露出する。換言すると、負極24の内側に露出するセパレータ25の保護層252は、ターン部234を避けた位置で基材層251に重ねられた状態になる。
【0066】
このような第一部材21上への正極22の配置と、正極22を挟むような第一部材21の折り曲げを繰り返すことで、折り返し部23が複数形成されてつづら折り状態となった第一部材21を有する電極体であって、各折り返し部23の内側に正極22が配置された電極体2を製造することができる。
【0067】
図1図3に戻り、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間が画定される。ケース3は、この内部空間に、電極体2と共に電解液を収容する。
【0068】
この電解液は、非水溶液系電解液である。詳しくは、電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0069】
ケース3は、上記の電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0070】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0071】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁部となる)部位である。本実施形態の閉塞部311は、矩形状である。
【0072】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、X軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0073】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、折り返し部23の平坦部233が長壁部313と平行(略平行)となる(即ち、各ターン部234が短壁部314と対向する)ように、電極体2が収容される(図4参照)。
【0074】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ部材である。この蓋板32の輪郭形状は、ケース本体31の開口周縁部310(図2参照)に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Y軸方向に長い矩形状の板材である。
【0075】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。このため、外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。また、外部端子4は、溶接性の高い金属材料によって形成される。例えば、正極の外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成され、負極の外部端子4は、銅又は銅合金等の銅系金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、少なくとも一部がケース3の外部に露出した状態で蓋板32に取り付けられる。
【0076】
絶縁部材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。具体的に、絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって蓋板32側が開口した袋状に形成されている(図2参照)。本実施形態の絶縁部材6は、ケース本体31に沿った形の袋状である。この袋状の絶縁部材6には、折り返し部23の平坦部233及び正極22が絶縁部材6における長壁部313と対応する部位(X軸方向に対向する壁状の部位)と略平行となり、各ターン部234が絶縁部材6における短壁部314と対応する部位(Y軸方向に対向する壁状の部位)と対向するように、電極体2が収容される。
【0077】
以上の蓄電素子1によれば、セパレータ25を薄くしても、保護層252が配置されているため、コンタミ等がセパレータ25を貫通することを抑制ことができる。さらに、ターン部234には保護層252が配置されていないことで、ターン部234のセパレータ25においてガス抜けや電解液の浸透性を確保できる。従って、セパレータ25の強度を確保しつつ、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0078】
さらに、この蓄電素子1では、平坦部233において正極活物質層222と負極活物質層242とがセパレータ25(セパレータ平坦部253)を挟んで直接対向しているが、セパレータ平坦部253が保護層252を有することにより、平坦部233における短絡が防止できる。一方、この蓄電素子1では、ターン部234において正極活物質層222と負極活物質層242とがセパレータ25(セパレータターン部254)及び空間を挟んで対向しているため、短絡のおそれが低い。これを踏まえて、ターン部234では、保護層252を設けず、電解液の透過性を確保している。以上により、蓄電素子1では、セパレータ25による短絡防止と電解液の透過性を確保している。
【0079】
また、仮に、セパレータ25が基材層251のみで構成されている電極体2を製造しようと試みると、基材層251が柔らかいことにより、第一部材21を一旦折り曲げたとしても折り曲げた状態を保持できないおそれがあった。これに対して、本実施形態の製造方法によれば、セパレータ平坦部253は基材層251と基材層251よりも硬い保護層252を含むと共に、セパレータターン部254が基材層251のみを含む電極体2を製造できる。この場合、第一部材21を折り曲げる際に、基材層251よりも硬い保護層252が折れるため、セパレータ25全体が基材層251と保護層252とを含む電極体2を製造する場合と比べて、セパレータ25を折り曲げた状態が保持される。
【0080】
さらに、ターン部234の内側及び外側の両方にセパレータ25が配置された蓄電素子1では、ターン部234の内側及び外側のいずれにおいても、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の浸透性を確保したいという要請があった。これに対して、本実施形態の電極体2では、折り返し部23における負極24の内側又は外側に配置された第一セパレータ25A及び第二セパレータ25Bのいずれにおいても、平坦部233には保護層252が配置されているため、コンタミ等が第一セパレータ25Aや第二セパレータ25Bを貫通することを抑制することができる。さらに、ターン部234の内側や外側には保護層252が配置されていないため、第一セパレータ25Aにおいてガス抜けや電解液の浸透性を確保できると共に、第二セパレータ25Bにおいてもガス抜けや電解液の浸透性を確保できる。従って、ターン部234の内側及び外側のいずれにおいても、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0081】
また、本実施形態の電極体2では、セパレータ平坦部253が基材層251よりも硬い保護層252を含んでいるため、セパレータ平坦部253が基材層251のみで形成される構成よりもセパレータ平坦部253の厚みを薄くしても、セパレータ平坦部253の強度を十分に確保することができる。
【0082】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0083】
上記実施形態の電極体2では、保護層252は、樹脂粒子とバインダーとを含んだ塗工層等であったが、無機塗工層(例えば、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機酸化物で構成される無機粒子を含んだ無機塗工層)や、アクリル重合体や不織布のようなセルロース系材料であってもよい。このような保護層252も基材層251よりも硬いため、このような保護層252を有する電極体2において、セパレータ25の強度を確保しつつ、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。また、このような保護層252も、基材層251よりも降伏応力が低いことから基材層251よりも折れやすい。そのため、このような保護層252を有する電極体2を製造する際においても、セパレータ25を折り曲げた状態が保持されやすい。
【0084】
上記実施形態の第一部材21は負極24とセパレータ25とを含んでいたが、図13及び図14に示すように、第一部材21はセパレータ25のみを有していてもよく、折り返し部23はセパレータ25のみを折り返して形成されてもよい。この場合、電極体2は、第一折り返し部23Aの内側に配置される負極24(第二折り返し部23Bの外側に配置される負極24)と、第二折り返し部23Bの内側に配置される正極22(第一折り返し部23Aの外側に配置される正極22)とを有する。この場合においても、セパレータ25は、基材層251と保護層252とを有し、ターン部234において保護層252には溝が設けられている(保護層は、ターン部234を避けて基材層251に重ねられている)。この構成においても、セパレータ25の強度を確保しつつ、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0085】
尚、上記実施形態のセパレータ25は、基材層251と基材層251の一方の面に重ねられる保護層252とを含んでいるが、基材層251と基材層251の両方の面に重ねられる保護層252とを含んでいてもよい。基材層251の両方の面に保護層252が重ねられる構成では、基材層251の一方の面に保護層252が重ねられる構成と比べて、セパレータ25の強度を高めることができる。
【0086】
また、この構成のセパレータ25では、基材層251の厚みは、例えば、12μmである。保護層252の厚みは、例えば、2μmである。この場合、基材層251の両方の面に保護層252が重ねられたセパレータ25の厚みは、例えば、16μmである。一方、仮に、このセパレータ25と同じ強度を有するようにセパレータ25を基材層251のみで構成した場合、この厚みは、例えば、20μmである。このように、基材層251の両方の面に保護層252が重ねられる構成では、基材層251よりも厚みが薄くても強度を確保できる保護層252を2枚用いることで、基材層251の片方の面に保護層252が重ねられる構成と比べて、基材層251の厚みを薄くすることでセパレータ25全体の厚みを薄くしても、セパレータ25の強度を確保できる。
【0087】
上記実施形態の電極体2では、第一セパレータ25A及び第二セパレータ25Bは、それぞれ別体として形成されていたが、これらが一体として形成されていてもよい。具体的に、第一部材21は、長尺状のセパレータ25を長尺方向の中心位置で折り曲げたものと、セパレータ25の折り曲げ部に長尺方向における端縁が当たった状態でセパレータ25の内側に配置された負極24とを有してもよい。この場合、セパレータ25は、負極24の一方の面を覆うと共に、負極24の長尺方向における端縁を覆うように延び、且つ、負極24の他方の面を覆ってもよい。また、第一部材21は、長尺の袋状のセパレータ25と、このセパレータ25に収容される長尺状の負極24とを有してもよい。
【0088】
さらに、上記実施形態の電極体2では、長尺状の第二セパレータ25Bの構成は、長尺状の第一セパレータ25Aの構成と同じであったが、これらの構成は異なっていてもよい。
【0089】
上記実施形態の電極体2では、基材層251の一方の面の全体に保護層252が配置されたセパレータ25が折り曲げられていたが、基材層251の一方の面に間欠的に保護層252を配置したセパレータ25が折り曲げられてもよい。また、基材層251の一方の面の全体に保護層252を形成し、この保護層252を間欠的に取り除いたセパレータ25が折り曲げられてもよい。このようなセパレータ25が折り曲げられた場合においても、保護層252がターン部を避けた位置に配置される。
【0090】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、負極24及びセパレータ25を有する第一部材21がつづら折り状態で、正極22が枚葉状(短冊状)であるが、この構成に限定されない。正極22及びセパレータ25を有する第一部材21がつづら折り状態で、負極24が枚葉状であってもよい。さらに、セパレータ25を有する第一部材21や負極24とセパレータ25とを有する第一部材21は、つづら折り状態でなくてもよく、少なくとも一つの折り返し部23を有していればよい。具体的に、図15に示すように、負極24及びセパレータ25を含み且つ折り返し部23を有する第一部材21が複数配置されると共に、各折り返し部23の外側及び各折り返し部23の内側に正極22が配置されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、ターン部234がY軸方向における反対側に並ぶよう、折り返し部23が配置されているが、ターン部234がY軸方向における同じ側に並ぶよう、折り返し部23が配置されていてもよい。
【0092】
さらに、上記実施形態の蓄電素子1では、ターン部234の全体において保護層252に溝2520が設けられていたが、ターン部234の一部において保護層252に溝2520が設けられていてもよい。換言すると、保護層252が、ターン部234を避けた位置に配置されていたが、ターン部234の全体を避けた位置に配置されるのみならず、ターン部234の一部を避けた位置に配置されていてもよい。具体的に、図16に示すように、ターン部234の一部(例えば、ターン部234の平坦部233側の端部)の外側において、保護層252に溝2520が設けられていてもよい。換言すると、ターン部の234の外側において、保護層252が、ターン部234の少なくとも一部(例えば、ターン部234の平坦部233側の端部)を避けるように配置されていてもよい。尚、このターン部234の溝2520が設けられる部位がごく狭い部位である場合、ターン部234の外側において、保護層252が厚み方向の全体において割れていることになる。また、溝2520は、ターン部234における保護層252の二箇所に設けられていてもよいし、一箇所や三箇所以上の複数箇所に設けられていてもよい。このような構成においても、セパレータ25の強度を確保しつつ、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0093】
また、上記実施形態の蓄電素子1では、保護層252の溝2520の深さは、保護層252の厚みと略同一であったが、保護層252における溝2520が設けられていない領域の厚みよりも浅くてもよく、好ましくは、保護層252の溝2520が設けられていない領域の厚みの50%以上であればよい。具体的に、図17に示すように、ターン部234において、保護層252には三箇所の溝2520が設けられていてもよい。また、この溝2520の深さは、保護層252の厚みよりも浅く、例えば、保護層252の厚みの50%以上である。これにより、保護層252の溝2520が設けられている領域の厚みの最小値は、保護層252の溝2520の深さは、保護層252の溝2520が設けられていない領域の厚みの50%未満となる。このような構成では、保護層252の溝2520の深さが保護層252の厚みと略同一である構成と比べて、セパレータ25の強度をさらに向上することができる。また、このような構成においても、保護層252の溝2520を介して電解液やガスの拡散性が改善するため、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0094】
さらに、上記実施形態の蓄電素子1では、保護層252に溝2520が設けられていたが、保護層252から基材層251にかけて溝2520が設けられていてもよい。このような構成においても、保護層252の溝2520を介して電解液やガスの拡散性が改善するため、セパレータ25におけるガス抜けや電解液の透過性を確保できる。
【0095】
上記実施形態のケース3は、折り返し部23の平坦部233がケース3の長壁部313と平行となるように電極体2を収容していたが、例えば、第一折り返し部23Aのターン部234Aが閉塞部311と対向するように電極体2を収容してもよい。この構成では、保護層252は、ケース3の閉塞部311側に配置された各ターン部234Aを避けるように配置されているため、負極24間に電解液を保持する上で重要なケース3の閉塞部311側での電解液の吸い上げを十分に実現できる。
【0096】
上記実施形態の正極タブ224や負極タブ244は、集電体5に溶接されていたが、クリップ部材等により集電体5に接続されていてもよい。
【0097】
上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0098】
蓄電素子(例えば電池)1は、図18に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0099】
1…蓄電素子、2…電極体、21…第一部材、22…正極(第一の電極、第二部材)、221…金属箔、222…正極活物質層、223…正極本体、224…正極タブ、23…折り返し部、23A…第一折り返し部、23B…第二折り返し部、231…谷折り面、232…山折り面、233、233A、233B…平坦部、234…ターン部、S…ターン軸、24…負極(第二の電極)、24A…山折り線、24B…谷折り線、241…金属箔、242…負極活物質層、243…電極本体部、244…負極タブ、25…セパレータ、251…基材層、252…保護層、2520…溝、253…セパレータ平坦部、254…セパレータターン部、3…ケース、31…ケース本体、310…開口周縁部、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、4…外部端子、5…集電体、6…絶縁部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、101…長尺電極板、102…銅箔、103…負極活物質層、104…正極電極板、105…アルミニウム箔、106…正極活物質層、107…セパレータ、B…開始位置
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