(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】チャックの爪の案内構造およびチャックの爪の挿入方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/16 20060101AFI20220510BHJP
B23B 31/39 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B23B31/16 D
B23B31/39
(21)【出願番号】P 2020553917
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042268
(87)【国際公開番号】W WO2020090780
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018203390
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】永翁 博
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237212(JP,A)
【文献】米国特許第4617721(US,A)
【文献】特開昭60-249513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/16
B23B 31/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体に設けられた取付溝に挿入される爪を案内するチャックの爪の案内構造であって、
前記取付溝に連通する案内空間を画定する案内空間画定部であって、当接する前記爪を第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制する当接面を有する案内空間画定部と、
前記案内空間画定部に設けられ、前記第1方向とは異なる第2方向において前記爪を前記取付溝に沿う位置に規制する規制部と、を備
え、
前記規制部は、前記案内空間の内側に向かって凸となる湾曲面を有している、チャックの爪の案内構造。
【請求項2】
前記案内空間内に、前記爪の挿入方向において互いに異なる位置に複数の前記規制部が設けられている、請求項1に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項3】
前記案内空間画定部は、前記規制部の先端よりも前記案内空間の外側に位置して前記案内空間を画定する側壁面を有している、請求項1
または2に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項4】
前記案内空間画定部に移動可能に設けられ、前記規制部を支持する規制支持部を更に備えた、請求項1~
3のいずれか一項に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項5】
前記規制支持部は、前記案内空間画定部に螺合している、請求項
4に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項6】
チャック本体に設けられた取付溝に挿入される爪を案内するチャックの爪の案内構造であって、
前記取付溝に連通する案内空間を画定する案内空間画定部であって、当接する前記爪を第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制する当接面を有する案内空間画定部と、
前記案内空間画定部に設けられ、前記第1方向とは異なる第2方向において前記爪を前記取付溝に沿う位置に規制する規制部と、を備え、
前記案内空間画定部は、前記規制部の先端よりも前記案内空間の外側に位置して前記案内空間を画定する側壁面を有している、チャックの爪の案内構造。
【請求項7】
前記案内空間内に、前記爪の挿入方向において互いに異なる位置に複数の前記規制部が設けられている、請求項6に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項8】
前記案内空間画定部に移動可能に設けられ、前記規制部を支持する規制支持部を更に備えた、請求項6または7に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項9】
前記規制支持部は、前記案内空間画定部に螺合している、請求項8に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項10】
チャック本体に設けられた取付溝に挿入される爪を案内するチャックの爪の案内構造であって、
前記取付溝に連通する案内空間を画定する案内空間画定部であって、当接する前記爪を第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制する当接面を有する案内空間画定部と、
前記案内空間画定部に設けられ、前記第1方向とは異なる第2方向において前記爪を前記取付溝に沿う位置に規制する規制部と、
前記案内空間画定部に移動可能に設けられ、前記規制部を支持する規制支持部と、を備えた、チャックの爪の案内構造。
【請求項11】
前記案内空間内に、前記爪の挿入方向において互いに異なる位置に複数の前記規制部が設けられている、請求項10に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項12】
前記規制支持部は、前記案内空間画定部に螺合している、請求項10または11に記載のチャックの爪の案内構造。
【請求項13】
チャック本体に設けられた取付溝に爪を挿入するチャックの爪の挿入方法であって、
請求項1~
12のいずれか一項に記載のチャックの爪の案内構造の前記案内空間に前記爪を挿入して、前記当接面により前記爪を前記第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制するとともに前記規制部により前記爪を前記第2方向において前記取付溝に沿う位置に規制する工程と、
前記案内空間から前記取付溝に前記爪を移動させて、前記取付溝に前記爪を挿入する工程と、を備えた、チャックの爪の挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック本体に設けられた取付溝に挿入される爪を案内するチャックの爪の案内構造、および取付溝に爪を挿入するチャックの爪の挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したチャックの爪の案内構造は、チャック本体に設けられた取付溝に対応するように設けられ、その案内構造を用いて、交換する爪を取付溝に案内して挿入するようになっている。特許文献1では、チャック外周側に配置された工作機械の基部に位置決めプレートが設置されている。交換する爪を取付溝に挿入する際には、まず、その位置決めプレートに、交換するジョーをはめ込んだジョーホルダー(爪案内部材)が取り付けられる。続いて、チャックの回転により位置決めプレートのジョーホルダーの取り付け位置と、チャックの爪の取付溝を合致させる。その後、ジョーを、ジョーホルダーのスライドレールに沿ってチャックの取付溝に向けて移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、位置決めプレートとチャックとが離れていることや、工作機械の基部に傾き等が生じることにより、位置決めプレートに取り付けたジョーホルダーの取付位置とチャックのジョー取付溝を合致させるための調整が長時間となる問題があった。
【0005】
そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、交換する爪を速やかに取付溝に向けて移動させることができるチャックの爪の案内構造およびチャックの爪の挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
チャック本体に設けられた取付溝に挿入される爪を案内するチャックの爪の案内構造であって、
前記取付溝に連通する案内空間を画定する案内空間画定部であって、当接する前記爪を第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制する当接面を有する案内空間画定部と、
前記案内空間画定部に設けられ、前記第1方向とは異なる第2方向において前記爪を前記取付溝に沿う位置に規制する規制部と、を備えた、チャックの爪の案内構造、
を提供する。
【0007】
上述したチャックの爪の案内構造において、
前記案内空間内に、前記爪の挿入方向において互いに異なる位置に複数の前記規制部が設けられている、
ようにしてもよい。
【0008】
上述したチャックの爪の案内構造において、
前記規制部は、前記案内空間の内側に向かって凸となる湾曲面を有している、
ようにしてもよい。
【0009】
上述したチャックの爪の案内構造において、
前記案内空間画定部は、前記規制部の先端よりも前記案内空間の外側に位置して前記案内空間を画定する側壁面を有している、
ようにしてもよい。
【0010】
上述したチャックの爪の案内構造において、
前記案内空間画定部に移動可能に設けられ、前記規制部を支持する規制支持部を更に備える、
ようにしてもよい。
【0011】
上述したチャックの爪の案内構造において、
前記規制支持部は、前記案内空間画定部に螺合している、
ようにしてもよい。
【0012】
本発明は、
チャック本体に設けられた取付溝に爪を挿入するチャックの爪の挿入方法であって、
上述のチャックの爪の案内構造を準備する工程と、
前記爪を前記案内空間に挿入して、前記当接面により前記爪を前記第1方向において前記取付溝に沿う位置に規制するとともに前記規制部により前記爪を前記第2方向において前記取付溝に沿う位置に規制する工程と、
前記案内空間から前記取付溝に前記爪を移動させて、前記取付溝に前記爪を挿入する工程と、を備えた、チャックの爪の挿入方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、交換する爪を速やかに取付溝に向けて移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による案内構造を備えたチャックを示す図である。
【
図4】
図3のセットスクリューとその周辺の拡大断面図である。
【
図6】
図3の案内構造の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、チャックが、NC旋盤等の工作機械の主軸に固着されるチャックである例について説明する。
【0016】
図1および
図2に示すように、チャック1は、NC旋盤等の工作機械の主軸50に固着されている。チャック1のチャック本体2は、取付溝3(取付位置)を有しており、取付溝3に設置される爪4によってワークWをクランプするようになっている。ワークWは、搬送装置として例示するローダー51によってチャック1に搬送される。チャック1にクランプされたワークWは、複数の刃具を備えた刃物台(図示しない)の前後左右の移動によって加工される。爪4は、加工するワークWの径が変わる時や長期間の使用による摩耗が生じた時に、手動または爪自動交換装置60によって交換される。
【0017】
チャック本体2は、前ボディ5と、取付ボルト(図示しない)によって前ボディ5の後端面を塞ぐ後ボディ6と、を備えている。チャック本体2の前ボディ5および後ボディ6の内側に、内部空間(図示しない)が形成されている。
図1に示すように、前ボディ5には、取付位置として例示する取付溝3が複数(例えば、3個)設けられている。取付溝3は、円周方向に等間隔に配置されている。
図2および
図3に示すように、取付溝3は、T字状の断面を有する幅広の底部7と、底部7より幅狭の上部8と、を有しており、チャック軸線CLに対して垂直方向(半径方向)に延びるように形成されている。すなわち、底部7は、取付溝3のうち、半径方向に延びるように上部8よりも後方に形成された部分である。上部8は、取付溝3のうち、半径方向に延びるように底部7よりも前方に形成された部分である。なお、本明細書においては、
図2における右側を前側と称し、左側を後側と称して、以下説明する。
【0018】
前ボディ5には、各取付溝3に対応するようにマスタージョー9が配置されている。チャック本体2のチャック軸線CL上には、各マスタージョー9に噛み合う駆動部材(図示しない)が配置され、駆動部材の移動によって各マスタージョー9が取付溝3に沿って半径方向に移動するようになっている。チャック本体2に備えたロック機構(図示しない)により取付溝3に案内された爪4とマスタージョー9とが連結される。爪4は、取付溝3と横断面形状が略同一であるベースジョー10と、ベースジョー10の前面に複数のボルト11で固定されるトップジョー12と、を含んでいる。爪4が取付溝3に取り付けられた場合には、ベースジョー10は、取付溝3の底部7および上部8に挿入され、トップジョー12は、取付溝3の前方に配置される。
【0019】
本実施の形態によるチャックの爪の案内構造(以下、単に案内構造30と記す)は、上述したチャック本体2に設けられた取付溝3に挿入される爪4を案内するための構造である。
【0020】
図3に示すように、案内構造30は、取付溝3に連通する案内空間Aを画定する案内空間画定部15と、案内空間A内に設けられた規制部14Bと、を備えている。案内空間画定部15は、当接する爪4を第1方向Pにおいて取付溝3に沿う位置に規制する当接面14Aを有している。規制部14Bは、第1方向Pとは異なる第2方向Qで爪4を取付溝3に沿う位置に規制する。本実施の形態においては、第1方向Pは、チャック軸線CLに沿う方向に相当し、第2方向Qは、半径方向で見たときのチャック軸線CLに対する垂直方向に相当する。第2方向Qは、
図3における左右方向に相当する。
【0021】
このような案内構造30について、より具体的に説明する。
【0022】
図1および
図2に示すように、チャック本体2の外面において、各取付溝3に対応する位置(取付溝3の外周側の位置)に、取付面13が形成されている。その取付面13は、平坦状に形成されており、取付面13には、
図3に示すように、案内空間画定部15がボルト16によって取り付けられている。
【0023】
案内空間画定部15は、案内空間Aよりも後方に位置する後部17と、後部17からチャック本体2の前方に向けて突出する突出部18と、を含んでいる。本実施の形態では、
図3に示すように、後部17は、第2方向Qに延びており、後部17の両端部から前方(
図3における下方)に向けて突出部18が突出している。突出部18は、第2方向Qにおける案内空間Aの両側に配置されている。後部17および突出部18により、案内空間Aが画定されている。
【0024】
図3に示すように、案内空間画定部15の後部17には、爪4の案内面4aを当接させる上述した当接面14A(当接箇所)が設けられている。半径方向で見たときに、当接面14Aが取付溝3の底部7の底面7aと一致するように案内空間画定部15の位置は調整されている。
【0025】
図3および
図4に示すように、左右両側の突出部18には、交換する爪4の側面4bを当接させる規制部14B(当接箇所)が設けられている。その規制部14Bは、規制支持部19aを介して突出部18に取り付けられている。本実施形態では、規制部14Bおよび規制支持部19aの組合体として例示するセットスクリュ19が突出部18に取り付けられている。規制支持部19aは、突出部18に移動可能に取り付けられており、規制部14Bを支持している。規制支持部19aは、セットスクリュ19のうち規制部14B以外の部分に相当し、本実施の形態では、規制部14Bと規制支持部19aとが一体に構成されている。規制支持部19aは、突出部18に螺合している。すなわち、規制支持部19aは、突出部18に設けられたねじ穴18aに螺合するネジ部19bと、工具(図示しない)が嵌合可能な工具嵌合部19cと、を含んでいる。工具嵌合部19cには、案内空間画定部15の外側から工具が挿入可能になっている。セットスクリュ19の先端部が規制部14Bとして構成されており、その規制部14Bに爪4の側面4bを当接させる。規制部14Bの先端は、半径方向で見たときに取付溝3の底部7の側面7bと一致するように調整されている。
【0026】
よって、案内空間画定部15に設けられた当接面14Aおよび規制部14Bにより、案内空間Aに挿入された爪4の案内面4aと側面4bの位置を取付溝3に合致させることができる。
【0027】
図4に示すように、案内空間画定部15は、規制部14Bの先端よりも案内空間Aの外側(
図4における左側)に位置する側壁面15aを有していてもよい。その側壁面15aは、案内空間Aを画定する。本実施の形態においては、半径方向で見たときに、案内空間Aの両側(
図3における左右両側)に、側壁面15aが形成されている。側壁面15aは、取付溝3の底部7の側面7bよりも第2方向Qにおいて外側(
図4における左側)に配置されている。
【0028】
本実施の形態においては、
図3に示すように、案内空間画定部15の後部17に、複数の上述した当接面14Aが設けられていてもよい。
図3においては、後部17に、2つの当接面14Aが設けられており、第2方向Qにおける後部17の両端部に配置されている。2つの当接面14Aの間には、後方に引き込まれた形状を有するラック凹部17aが設けられている。ラック凹部17a内には、爪4の案内面4aの間に設けられたラック4dが挿入可能になっており、爪4が案内空間画定部15と干渉することを防止している。
【0029】
本実施の形態においては、
図2に示すように、案内空間A内に、爪4の挿入方向(半径方向)において互いに異なる位置に複数の規制部14Bが設けられていてもよい。
図2に示す例では、各突出部18に、規制部14Bをそれぞれ含む2つのセットスクリュ19が設けられている。2つのセットスクリュ19は、チャック軸線CLに沿う方向において異なる位置に配置されていてもよい。また、規制部14Bをそれぞれ含む2つのセットスクリュ19の大きさは異なっていてもよい。
【0030】
図4に示すように、規制部14Bは、案内空間Aの内側に向かって凸となる湾曲面14Baを有していてもよい。その湾曲面14Baは、例えば、球面の一部をなしていてもよい。この湾曲面14Baに、爪4の側面4bが当接し、側面4bの位置が規制されるようになっている。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態による案内構造30を用いて、チャック本体2に設けられた取付溝3にチャック1の爪4を挿入する方法について説明する。ここでは、爪自動交換装置60を用いて、爪4を取付溝3に挿入する方法について説明する。
【0032】
まず、上述した案内構造30の案内空間Aに爪4が挿入されて、規制部14Bにより、第1方向Pおよび第2方向Qにおいて爪4が取付溝3に沿う位置に規制される。より具体的には、
図1に示すように、爪自動交換装置60の把持爪61の突起62が爪4の係合凹部4cに係合した状態で、爪4が、案内空間Aの上方から下降させて案内空間Aに挿入される。すると、爪4の案内面4aが、案内空間画定部15の後部17の当接面14Aに当接する。そして、案内面4aを当接面14Aに当接させながら、爪4を更に下降させる。このようにして、爪4の案内面4aが、第1方向Pにおいて取付溝3の底部7の底面7aに沿う位置に位置づけられる。その後、爪4の側面4bが、セットスクリュ19の規制部14Bに当接する。そして、案内面4aを当接面14Aに当接させるとともに側面4bを規制部14Bに当接させながら、爪4を更に下降させる。このようにして、爪4の側面4bが、第1方向Pおよび第2方向Qにおいて取付溝3の底部7の側面7bに沿う位置に位置づけられる。
【0033】
続いて、爪4を案内空間Aから取付溝3に移動させて、取付溝3に爪4が挿入される。この場合、爪4の案内面4aを当接面14Aに当接させるとともに、爪4の側面4bを規制部14Bに当接させながら、爪4を、取付溝3内の所望の位置まで下降させる。
【0034】
このようにして、チャック本体2に設けられた取付溝3に、チャック1の爪4を挿入することができる。
【0035】
爪4が取付溝3に挿入されて所望の位置に達した後、チャック本体2に備えたロック機構(図示しない)により、取付溝3に挿入された爪4とマスタージョー9とが連結される。その後、爪自動交換装置60の把持爪61が爪4の係合凹部4cから離れて、把持爪61が引き上げられる。このようにして、チャック本体2に設けられた取付溝3にチャック1の爪4が取り付けられる。なお、案内構造30は、チャック本体2の取付溝3に爪4を挿入する場合にチャック本体2の取付面13に取り付けて、爪4が取付溝3に取り付けられた後に、取付面13から取り外されてもよい。
【0036】
従って、交換する爪4を当接させる複数の当接面14Aおよび規制部14Bを備えた案内空間画定部15をチャック本体2に設けることにより、当接面14Aおよび規制部14Bに爪4を当接させながら、取付溝3に向けて移動させることができる。従来のような、位置決めプレートとチャックとの間が離れていること場合には、位置決めプレートに取り付けたジョーホルダーの取り付け位置とチャックのジョー取り付け溝を合致させるための調整が長時間となる。しかしながら、本実施の形態では、交換する爪4の案内面4aと側面4bの位置を取付溝3に対応させることを速やかに行うことができる。そして、チャック本体2に案内空間画定部15が設けられたことにより、従来のように、爪を案内する部品(ジョーホルダー)を別の場所で保管して管理することを不要にできる。また、案内空間画定部15をチャック本体2に取り付けて、当接面14Aおよび規制部14Bを取付溝3に応じて移動可能としていることにより、案内空間画定部15を取り付ける位置を調整することにより、交換する爪4の案内面4aと側面4bの位置を取付溝3に対応させることができる。更に、案内空間画定部15に移動可能なセットスクリュ19を設け、そのセットスクリュ19に当接させた爪4を取付溝3に向けて移動させるようにしたことで、爪4の移動を滑らかに行うことができる。
【0037】
このように本実施の形態によれば、チャック本体2に設けられた取付溝3に連通する案内空間Aを画定する案内空間画定部15が当接面14Aを有し、案内空間A内に、規制部14Bが設けられている。当接面14Aは、第1方向Pにおいて爪4を取付溝3に沿う位置に規制し、規制部14Bが、第2方向Qにおいて爪4を取付溝3に沿う位置に規制する。このことにより、取付溝3に挿入される前に、爪4を取付溝3に合致する位置に位置づけることができる。このため、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。また、案内空間Aが取付溝3に連通しているため、案内空間Aと取付溝3とが離れることを回避できる。このため、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、案内空間A内に、爪4の挿入方向において互いに異なる位置に複数の規制部14Bが設けられている。このことにより、規制部14Bによって取付溝3に沿う位置に規制された状態で、爪4を、案内空間Aから取付溝3に挿入させることができる。このため、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、規制部14Bは、案内空間Aの内側に向かって凸となる湾曲面14Baを有している。このことにより、爪4の側面4bを、取付溝3の側面7bに沿う位置に容易に規制することができる。このため、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、案内空間画定部15は、規制部14Bの先端よりも案内空間Aの外側に位置して案内空間Aを画定する側壁面15aを有している。このことにより、案内空間A内の爪4の側面4bを、規制部14Bに当接させることができ、爪4の側面4bが、側壁面15aに当接することを回避することができる。このため、爪4の側面4bを、取付溝3の側面7bに沿う位置に容易に規制することができ、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、案内空間画定部15に、規制部14Bを支持する規制支持部19aが移動可能に設けられている。このことにより、規制支持部19aを案内空間画定部15に対して移動させることにより、規制部14Bの位置を、取付溝3の側面7bに沿うように調整することができる。このため、爪4の側面4bを、取付溝3の側面7bに沿う位置に規制することができ、交換する爪4を速やかに取付溝3に向けて移動させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、規制支持部19aは、案内空間画定部15に螺合している。このことにより、規制支持部19aを、案内空間画定部15に対して容易に移動させることができ、規制部14Bの位置を、取付溝3の側面7bに沿うように容易に調整することができる。
【0043】
ところで、
図5に示す変形例のように、案内空間画定部15は、後部17と、一方の突出部18とで構成されていてもよい。この場合、後部17と当該突出部18とで爪4を案内する案内空間Aが形成される。後部17は、爪4のラック4dよりも外側(
図5における左側)に形成されてもよい。この場合でも、当接面14Aと規制部14Bにより案内空間Aにある爪4の案内面4aと側面4bの位置を取付溝3に対応させることができる。
【0044】
また、
図6に示す変形例のように、案内空間画定部15は、チャック本体2と一体に構成されていてもよい。言い換えると、チャック本体2のうち取付溝3の外周側の部分が、案内空間画定部15として構成されていてもよい。
図6に示す変形例では、取付溝3の外周側の部分(上部)に、取付溝3の底部7の底面7aに合致した当接面14Aが設けられている。当接面14Aは、底面7aに連続状に形成されていてもよく、底面7aと同一面をなしていてもよい。規制部14Bを有するセットスクリュ19の規制支持部19aは、チャック本体2に螺合されている。この場合においても、当接面14Aと規制部14Bにより案内空間Aにある爪4の案内面4aと側面4bの位置を取付溝3に対応させることができる。
【0045】
図7に示す変形例では、
図6に示す変形例に対してセットスクリュ19を用いていない点が主に異なる。
図7に示す変形例のように、規制部14Bを、一般的な面取り加工で形成される傾斜面で構成してもよい。この場合、傾斜面は、側面7bに対して45°の角度で2mmの面取り寸法を有していてもよい。
図7に示す変形例では、
図6に示す当接面14Aと同様の当接面14Aによって、当接する爪4を第1方向Pにおいて取付溝3に沿う位置に規制される。また、上述した傾斜面として構成された規制部14Bによって、当接する爪4を第2方向Qにおいて取付溝3に沿う位置に規制される。
【0046】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。