(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20220510BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220510BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220510BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220510BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220510BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02J7/34 D
H02J7/35 K
H02J3/38 180
H02J3/38 120
H02J3/46
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2018186950
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沼田 一男
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121479(JP,A)
【文献】特開2016-032419(JP,A)
【文献】特開2019-221036(JP,A)
【文献】特開2016-140206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/35
H02J 3/38
H02J 3/46
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を出力する複数の分散電源と、
前記複数の分散電源のそれぞれに接続され所定の電力を出力し互いに並列に接続された複数の第1の電力変換器と、
前記複数の第1の電力変換器と並列に接続され電力を双方向に所定の電力へ変換する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器に接続された充放電可能な蓄電池と、
前記分散電源および放電時の前記蓄電池から電力を供給される負荷と、
前記第1の電力変換器の出力電力値、前記第2の電力変換器の入出力電力値、前記負荷への供給電力のそれぞれを測定する電力値把握手段と、
前記複数の分散電源から前記負荷へ供給する電力が最大になるよう、前記複数の第1の電力変換器のうち1台を定格運転させ、前記負荷へ供給する電力と前記蓄電池の充放電電力と前記定格運転した第1の電力変換器の出力電力から必要な第1の電力変換器の運転台数を求め、前記必要な運転台数分の第1の電力変換器を運転させ、前記負荷へ供給する電力および前記蓄電池の充放電電力と前記1台の定格運転した第1の電力変換器の出力電力との差を案分して残りの運転している第1の電力変換器に対して出力電力値を与える制御手段と、を備える電力供給システム。
【請求項3】
前記複数の第1の電力変換器の合計定格電力容量より前記第2の電力変換器の定格電力容量が小さいとき、
前記制御手段は、前記第2の電力変換器の電力値把握手段が前記第2の電力変換器の定格電力容量より大きな充電電力を測定したとき、または前記第2の電力変換器の定格電力容量に近い値の充電電力を測定したとき、前記求められた必要な第1の電力変換器の運転台数を1台減らす、請求項1または請求項2に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システム(photovoltaic(PV)system)や風力発電システムなどの再生可能エネルギーを利用した分散電源で発電した電力を自家設備(負荷)への供給電力として利用することが行われている。このとき、分散電源の出力電力は天候等の環境の影響に左右され、安定した電力供給が望めないことから、充放電が可能な二次電池(蓄電池)を併用するのが一般的である。
【0003】
このような再生可能エネルギーを利用した電力供給システムにおいて、電力会社からの系統電源に依存しない、地産地消型の独立した電力供給システムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
系統電源から独立し、分散電源と蓄電池を用いて負荷へ電力を供給する電力供給システムにおいて、負荷の供給電力を賄うためや用途に応じて複数の分散電源を設置することがある。その場合、分散電源の容量に見合った蓄電池を必ずしも設置できるわけではない。
【0006】
分散電源が複数ある場合、分散電源に接続されたPCSを使って負荷へ電力を供給するシステムにおいて、PCSが定格運転のみ可能な種類の機器の場合、負荷の変動に応じた電力を供給するといった木目細かな制御が出来ないという問題がある。すなわち、PCSが定格運転のみの場合はONまたはOFF(100%出力または0%出力)の運転になるため、PCS1台分の定格未満の電力については供給することができない。
【0007】
また、PCSが0~100%まで出力電力が可変な出力抑制機能を持つ種類の機器の場合、PCSは応答速度が遅いという特徴を持っているため、急激な負荷変動や天候の変動が発生して供給過多の状態になると、通常であれば分散電源で発電した電力が蓄電池の充電電力として吸収されるが、分散電源の容量と比較して蓄電池の容量が小さい場合は、蓄電池へ充電するための電力が許容量を超えると蓄電池(正確には蓄電池内または別個に設けられている電力変換器(PCS))がトリップしてしまうという問題がある。
【0008】
本実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本実施形態の目的は、分散電源と蓄電池からなる独立電源システムにおいて蓄電池のトリップを回避する電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、実施形態の電力供給システムは、直流電力を出力する複数の分散電源と、前記複数の分散電源のそれぞれに接続され所定の電力を出力し互いに並列に接続された複数の第1の電力変換器と、前記複数の第1の電力変換器と並列に接続され電力を双方向に所定の電力へ変換する第2の電力変換器と、前記第2の電力変換器に接続された充放電可能な蓄電池と、前記分散電源および放電時の前記蓄電池から電力を供給される負荷と、前記第1の電力変換器の出力電力値、前記第2の電力変換器の入出力電力値、前記負荷への供給電力のそれぞれを測定する電力値把握手段と、前記複数の分散電源から前記負荷へ供給する電力が最大になるよう、前記複数の第1の電力変換器のうち1台を定格運転させ、前記負荷へ供給する電力と前記蓄電池の充放電電力と前記定格運転した第1の電力変換器の出力電力から必要な第1の電力変換器の運転台数を求め、前記必要な運転台数分の第1の電力変換器を運転させ、前記負荷へ供給する電力および前記蓄電池の充放電電力と前記1台の定格運転した第1の電力変換器の出力電力との差を案分して残りの運転している第1の電力変換器に対して出力電力値を与える制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記複数の第1の電力変換器のうち運転回数の少ない第1の電力変換器を優先して運転させるようにしてもよい。
【0011】
また、前記複数の第1の電力変換器の合計定格電力容量より前記第2の電力変換器の定格電力容量が小さいとき、前記制御手段は、前記第2の電力変換器の電力値把握手段が前記第2の電力変換器の定格電力容量より大きな充電電力を測定したとき、または前記第2の電力変換器の定格電力容量に近い値の充電電力を測定したとき、前記求められた必要な第1の電力変換器の運転台数を1台減らすようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すシステム構成図。
【
図2】本発明の第1の実施形態のPCSの台数制御を示すフローチャート図。
【
図3】本発明の第2の実施形態のPCSの台数制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態の構成)
以下、本発明に係る第1の実施形態の構成について
図1を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示すシステム構成図である。負荷1に電力を供給するため、その供給源として、リチウムイオン電池など充放電が可能な二次電池である蓄電池2と、蓄電池2に並列に接続された分散電源である太陽電池3から構成されている。負荷1の規模が大きい場合に、その供給電源を確保するため太陽電池3を複数設置した場合を想定した実施例である。なお、太陽電池3の台数について本実施形態では5台で構成しているが、この台数は例示であることは言うまでもない。分散電源は、本実施形態では太陽電池3を用いているがこれに限られるものでは無く、風力発電等の再生可能エネルギーを利用して直流電力を発電する装置や水素等の化学反応を利用した燃料電池でも良い。
【0014】
複数の太陽電池3のそれぞれに対応する形で、複数の電力変換器(PCS4a(第1の電力変換器))が接続され、太陽電池3が発電した直流電力を所定の電力(負荷に応じてDC/DC変換またはDC/AC変換を行う機種を選定する)へ変換する。ここで、PCS4aは、遠隔で運転/停止をすることができ、0~100%まで出力電力が可変な出力抑制機能を持つ種類の機器を用いている。
【0015】
蓄電池2にも電力変換器(PCS4b(第2の電力変換器))が接続され、PCS4bは蓄電池2を充電または放電するために双方向に電力を変換する。PCS4a、4bは並列に接続され、蓄電池2が放電時は太陽電池3とともに負荷1へ電力を供給する。蓄電池2が充電時は太陽電池3で発電された電力の一部または全部を充電する。ここで、蓄電池2の充電/放電の切替は、負荷1に供給する電力が不足した場合は放電となり、過多の場合は充電に切り替わる。
【0016】
また電力値を測定する電力センサ5(電力値把握手段)を備えており、電力センサ5aは複数のPCS4aのそれぞれの出力電力を測定し、電力センサ5bは蓄電池2の充放電電力を測定するため本実施形態ではPCS4bの負荷1側に設置している。電力センサ5cは負荷1へ供給される電力値を測定する。ここで、本実施形態ではPCS4a、4bとは別に電力センサ5a、5bを設けているが、電力値把握手段としてはPCS4a、4b本体から出力電力を直接検出するようにしても良い。
【0017】
電力センサ5a、5b、5cで検出した電力値を制御装置6(制御手段)へ取り込み、そして制御手段6はPCS4aに対して運転台数を算出し、運転/停止指令を与え、出力電力値を設定する。制御装置6は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)を使うことによって実現することができ、電力センサ5a、5bやPCS4aとの信号のやり取りは、DC4~20mA電流信号によるものやRS-485などのシリアルインターフェースなどが使用できる。
【0018】
(第1の実施形態の作用、効果)
次に、本発明に係る第1の実施形態のPCS4aの台数制御について
図2のフローチャートを使って説明する。フローチャートに示す演算や指令等は、制御装置6に例えばプログラムを構築することで実現できる。ここで、PCS4aの台数制御を行う目的は、分散電源である太陽電池3から負荷1へ供給する電力が最大になるようにするためである。
【0019】
図2のステップS1で代表PCS4aの出力を100%に設定する(定格運転)。代表PCS4aとは、複数のPCS4aのうちのいずれかのPCS4aを固定しても良いし、任意のタイミングでどのPCS4aが代表PCS4aとなるか切り替えても良い。代表PCS4aに対して100%出力の指令を与え、発電電力を電力センサ5aで計測し(X)、制御装置6に入力する。ここで、発電電力は発電源が太陽電池3であるため、代表PCS4aに対して100%出力の指令を与えたとしても天候や時間帯により発電電力は一定に定まるものではない。また、最大の発電電力を得るためにPCS4a内でMPPT制御(Maximum Power Point Tracking)を実行するようにしても良い。
【0020】
ステップS2で、代表PCS4a以外のその他のPCS4aについて発電電力を電力センサ5aで計測し(Pi)、制御装置6に入力する。
【0021】
ステップS3で、太陽電池3で発電された電力の総和を、式、
(Y)=(X)+Σ(Pi) ・・・(1)
で求める。ここで、(Y)は太陽電池3の発電電力総和で、(X)は代表PCS4aの発電電力、(Pi)は代表PCS4a以外のその他PCS4aの個々の発電電力を意味し、Σ(Pi)はその他PCS4aの個々の発電電力の和である。
【0022】
ステップS4で、蓄電池2の充放電電力(CT)を計測する。(CT)は蓄電池2が放電時は正、充電時は負の値となる。
【0023】
ステップS5で、負荷1が消費する電力を計測し(A)、制御装置6に入力する。
【0024】
次に、ステップS6で、PCS4aの運転台数(B)を、式、
(B)=(A)/(X)(小数点以下は切り上げ) ・・・(2)
で求める。負荷1の消費電力(A)を代表PCS4aの発電電力(X)で割ることで、負荷1の消費電力を満足するためのPCS4aの運転台数を求めることができ、商の小数点以下を切り上げることで1台(正確に言うと1台未満)多いPCS4aの運転台数を求めていることになる。もちろん、PCS4aの運転台数は設置数による制限があるため、PCS4aが全台100%で運転しても負荷1の消費電力を賄うことができない場合は、蓄電池2から足りない電力を供給することになる。
【0025】
ステップS7で、ステップS6で求めた台数分、PCS4aを運転させる。このとき、運転するPCS4aは、例えば運転回数の少ないPCS4aから優先して運転するようにすると、PCS4aの起動回数が平準化され寿命が平均化するという効果が得られる。また、運転回数の代わりに運転時間を指標として用いれば同様の効果が得られる。また、逆に運転回数の多い方または運転時間の長い方から運転するようにすれば寿命が順番に訪れることになるので、PCS4aの寿命による交換やメンテナンスを平準化できるという効果を得られる。当然ながらPCS4aを停止する場合も同様で、運転回数の多い方または運転時間の短い方から停止するようにすれば同様の効果が得られることになる。なお、PCS4aの運転回数や運転時間は制御装置6でそれぞれカウント数を積算することにより実現できる。
【0026】
ステップS8で、その他PCS4aの出力設定値を、式、
(C)=[(A)-(X)]/[(B)-1] ・・・(3)
で求め、その他PCS4aに対して出力設定値を与える。なお、分子の“-(X)”と分母の“-1”は代表PCS4aの分を除いているためである。このようにすると、式(2)で求めたPCS4aの運転台数は1台多いものとなっていたが、出力設定値(C)をその他PCS4aに案分して与えることにより、負荷1の消費電力に相当する電力を供給できることになる。また、その他PCS4aは100%運転をしていないことになり余力があるため、多少の負荷変動や天候変化による発電変動についても追従できるという効果がある。
【0027】
ステップS1へ戻り、繰り返しステップS1~S8を実行することで、負荷1の消費電力および分散電力3の発電電力に応じてPCS4aの運転台数を定め、太陽電池3から負荷1への供給電力が最大になるような制御を行うことができる。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態について説明する。構成は第1の実施形態と同じなため説明は省略し、作用、効果について
図3を参照して説明する。
【0029】
図3は、本発明に係る第2の実施形態のPCS4aの台数制御を示すフローチャートである。特に、蓄電池2の充電時にPCS4bの定格以上の電力が入力された場合(PCS4bへの過大入力)のPCS4aの台数制御を示すもので、
図2のステップS6とステップS7の間にステップP1とステップP2を追加したものであり、この差異について説明する。なお、PCS4bへ過大入力がなされると機器保護機能(インターロック機能)が働き、PCS4bがトリップ(強制停止)することになる。
【0030】
PCS4b過大入力の検出は、電力センサ5bがPCS4bの定格以上の値を示したことをもって検出する(ステップP1)。本実施形態では充電時と放電時とで正負があるため絶対値で判定するようにすると良い。
【0031】
PCS4b過大入力を検出すると、ステップP2でPCS4aの運転台数を1台減らす演算をするため、PCS4b過大入力状態を解消することができる。すなわち、もともとステップS6で小数点を切り上げてPCS4aの運転台数を算出しているので、この小数点以下に相当する分だけ電力が減ることになり、結果的にPCS4b過大入力を解消することに繋がる。なお、これも制御装置6で実現でき、実現手段であるPLCは制御周期が非常に高速であるため、PCS4b過大入力を検出してから数十~数百msec程度以内で実現することができる。もし処理が間に合わないようであれば、PCS4b過大入力を、蓄電池2の充電時にPCS4bの定格に近い値の電力が入力された場合、と置き換えても良い。そうすれば時間的な余裕ができるので、PCS4bがトリップする前に確実に充電電力を減らすことができる。これにより、PCS4b過大入力によるPCS4bのトリップを回避することができるという効果がある。
【0032】
ステップP2ではPCS4aの運転台数を1台減らす演算としていたが、PCS4b過大入力電力の大きさに応じてPCS4aの運転台数を減らす数を1台より多くするようにしても良い。
【0033】
PCSの機種によっては、過大入力が発生するとインターロック機能によりPCSを強制停止させていたため、その場合は手動による復帰操作が伴い操作員の負担が大きいものとなっていたが、本実施形態によればトリップを回避できるため、操作員の手動による復帰操作が不要になり、操作員の負担を軽減することができる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・負荷
2・・・系統電源
3・・・太陽電池
4a、4b・・・PCS
5a、5b、5c・・・電力センサ
6・・・制御装置