(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 41/04 20220101AFI20220510BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20220510BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20220510BHJP
【FI】
H04L41/04
H04M11/00 302
H04W88/18
(21)【出願番号】P 2017253912
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-11-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、第5世代セルラネットワークを実現するミリ波エッジクラウドの研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】阪口 啓
(72)【発明者】
【氏名】タン ザ カン
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002735(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199494(WO,A1)
【文献】SABELLA, D. et al.,Mobile-Edge Computing Architecture: The role of MEC in the Internet of Things,IEEE Consumer Electronics Magazine,2016年09月22日,Vol. 5, No. 4,pp. 84-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/04-41/052
H04M 11/00
H04W 88/18
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1-4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信網と、
ポータルと、
アプリケーションと、
を備え、
前記複数の通信網はそれぞれ、
既設ネットワークをベースとして構成され、その制御プレーンに追加された、モバイルエッジコンピューティング機能のための機能要素を備えるコアネットワークと、
前記コアネットワークに接続される小型アクセスネットワークと、
を含み、前記機能要素によって、前記小型アクセスネットワークにおけるモバイルエッジコンピューティング機能およびユーザ、
前記アプリケーション間のオーケストレーションが提供さ
れ、
前記ポータルには、前記複数の通信網それぞれの前記小型アクセスネットワークの情報が事前に登録されており、
前記アプリケーションは、前記ポータルに登録されている前記小型アクセスネットワークの情報を取得し、使用する前記小型アクセスネットワークを選択することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記小型アクセスネットワークは、自身のセル内で生じている、または生じうるトラヒックに関する情報、および/または、ユーザコンテキストを、前記コアネットワークに提供可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記小型アクセスネットワークは、前記モバイルエッジコンピューティング機能を利用したサービスの利用者が必要とする情報、
前記モバイルエッジコンピューティング機能の計算機能の少なくとも一方をプリフェッチする計算機サーバを備えることを特徴とする請求項1
または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数の通信網における無線通信方法であって、
前記複数の通信網はそれぞれ、コアネットワークおよび小型アクセスネットワークを含み、
前記無線通信方法は、
ユーザ端末がアプリケーションサーバに
、モバイルエッジコンピューティング
に関する登録依頼
を行うステップと、
前記登録依頼に応答して、前記アプリケーションサーバが、
前記コアネットワークに含まれるモバイルエッジコンピューティングのための機能要素に、ユーザ情報を登録するステップと、
前記モバイルエッジコンピューティングのための機能要素が、
前記小型アクセスネットワークおよび/または前記ユーザ端末のコンテキスト情報を収集するステップと、
前記モバイルエッジコンピューティングのための機能要素が、収集した情報にもとづい
てサービスおよび/またはリソースの最適化を行うステップと、
前記ユーザ端末から前記モバイルエッジコンピューティングのための機能要素に、セッションの確立要求を行うステップと、
前記モバイルエッジコンピューティングのための機能要素が、前記小型アクセスネットワークに対してポリシー設定を行うステップと、
前記モバイルエッジコンピューティングのための機能要素が、前記小型アクセスネットワークの情報をポータルに登録するステップと、
前記アプリケーションサーバが、前記ポータルに登録された複数の前記小型アクセスネットワークの情報を取得し、取得した情報にもとづいて、使用する前記小型アクセスネットワークを選択することを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォンやタブレット端末の普及と、それらに配信されるコンテンツの大容量化は、トラヒックの爆発的な増大を招いている。こうしたトラヒックの増加に対応するソリューションとして、半径の小さいエリア(スモールセルと呼ばれる)をカバーする基地局を多数配置してRAN(Radio Access Network)すなわち無線アクセスネットワークを構築し、端末当たりの通信速度を改善する分散型ネットワークシステムがある。第5世代セルラネットワークでは、ミリ波を利用したRANを導入が検討されており、本明細書においてこれをMiEdge(Millimeter-wave Edge cloud)-RANと称する。
【0003】
一方で、モバイルエッジコンピューティングあるいはモバイルエッジクラウド(MEC)が注目されている。MECでは、ユーザ端末に近いネットワークの周縁部(エッジ)にサーバやコンピュータなどのコンピューティングリソースやストレージを配置され、コアネットワーク(インターネット)を経由させずにユーザ端末に近い場所でさまざまなデータ処理が行われる。MECの導入により、多様なサービスの提供が期待されている。
【0004】
MECに関して、欧州の標準化団体であるETSI(European Telecommunications Standards Institute)により標準化が進められている。ETSIでは、MECの機構は定義されているが、RANとのインタフェースは任意とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】5G-MiEdge deliverable D1.1, “Use Cases and Scenario Definition”、[online]、インターネット<URL:https://5g-miedge.eu/wp-content/uploads/2017/05/5G-MiEdge_D1.1_v6.3_final.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ベースとなるネットワークにエッジコンピューティング機能および小型アクセスネットワークを融合した無線通信システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、無線通信システムに関する。無線通信システムは、既設ネットワークをベースとして構成され、その制御プレーンに追加された、エッジコンピューティング機能のための機能要素を備えるコアネットワークと、コアネットワークに接続される小型アクセスネットワークと、を備える。機能要素によって、小型アクセスネットワークにおけるエッジコンピューティング機能およびユーザ、アプリケーション間のオーケストレーションが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、ベースとなるネットワークにMECおよび小型アクセスネットワークを融合した無線通信システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】既設ネットワークシステムのブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る拡張された無線通信システムを示す図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、MiEdge-RANの構成を示す図である。
【
図4】MECサービスへの登録に関するシーケンス図である。
【
図5】サービスデプロイメント・最適化に関するシーケンス図である。
【
図6】サービス/コンテンツの提供に関するシーケンス図である。
【
図7】プリフェッチの効果を説明するシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】シミュレーションに用いたパラメータを示す図である。
【
図9】大容量データプリフェッチングによるデータQoS管理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1の無線通信システムの変形を示す図である。
【
図12】ポータルを介したMECサービスの登録に関するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
1. 既設ネットワークシステム
実施の形態に係る無線通信システムについて説明する前に、ベースとなる既設ネットワークシステムについて説明する。なお、ここで議論するのは将来のシステムであり、既設とは現時点で構築されているという意味で無く、後述するモバイルエッジコンピューティングに関する実装を行う時点における既設である。
【0012】
図1は、既設ネットワークシステム200のブロック図である。理解の容易化と説明の簡潔化のために、以下の説明では、既設ネットワーク200は、"3GPP TS23.501, System Architecture for the 5G System"に規定される5G無線ネットワークの基本アーキテクチャに準拠するものとし、いくつかの機能要素や参照ポイント(インタフェース)に付される名称や符号は、5G無線ネットワークのそれらを流用する。なお、5G無線ネットワークのアーキテクチャは策定段階にあって流動的なものであるから、将来において変更される場合もあり、本発明はそのような変更も包含する。
図1には、抽象レイヤーが示される。
【0013】
既設ネットワーク200は、端末210(UE:ユーザ機器)、NG-RAN(Next-Generation Radio Access Network)220およびコアネットワーク230を備える。
【0014】
・端末210
UEには5G無線通信およびミリ波通信のための機能が実装されている。
【0015】
・NG-RAN220
5G通信に準拠し、マクロセル(あるいはピコセル、フェムトセル)を有している。
【0016】
・コアネットワーク230
5Gシステムでは、コアネットワーク230が、制御プレーン(C-Plane)232とユーザプレーン(U-Plane)234に分離されている。
【0017】
制御プレーンは、以下の機能要素あるいはノードを含む。
AMF(Access and Mobility management Function)すなわちアクセスモビリティ管理機能は、登録管理(Registration management)、接続管理(Connection management)到達可能性の管理(Reachability management)、移動管理(Mobility management)、アクセス認証(Access authentication)、アクセス認可(Access authorization)、セキュリティコンテキスト管理(Security context management)の機能を提供するエンティティである。
【0018】
SMF(Session Management Function)すなわちセッション管理機能は、セッション管理(Session management)、ユーザ端末のIPアドレス管理、UPFの選択、制御、UPFにおける課金データ収集の制御、コーディネートの機能を提供するエンティティである。
【0019】
NEF(Network Exposure Function)すなわちネットワーク開示機能は、サードパーティへのサービスおよび機能(たとえば、アプリケーション機能、エッジコンピューティング、モビリティパターン、コミュニケーションパターン)の開示のための機能要素である。
【0020】
ユーザプレーン
UPF(User Plane Function)すなわちユーザプレーン機能は、リモートアクセルツール(RAT)の中の、あるいはRAT間のアンカーポイントであり、DN(データネットワーク)との接続のPDU(Protocol data unit)セッションポイントである。パケットルーティング、パケットフォワーディング、トラヒック使用のレポート、ユーザプレーンにおけるQoS(Quality of Service)の管理を提供する。
【0021】
以上が既設ネットワーク200のアーキテクチャである。
【0022】
2. 拡張されたネットワークシステム
図2は、実施の形態に係る拡張された無線通信システム100を示す図である。この無線通信システム100は、上述の既設ネットワーク200をベースとして構成される。
【0023】
この無線通信システム100は、拡張されたコアネットワーク200Aおよび小型アクセスネットワーク300を備える。
【0024】
2.1 MiEdge-RAN
小型アクセスネットワーク300は、"ETSI GS MEC 003, Mobile Edge Computing (MEC); Framework and Reference Architecture"に規定されるMECのフレームワーク・アーキテクチャに準拠するものとし、以下では、MiEdge-RANとも称する。
【0025】
拡張されたコアネットワーク200Aには、MiEdge-RAN300が接続される。
図3(a)、(b)は、MiEdge-RAN300の構成を示す図である。
図3(a)は、5GネットワークにおけるMiEdge-RANを、
図3(b)は、非3GPPアクセスのネットワークにおけるMiEdge-RANを示す。MiEdge-RAN300は、以下の機能要素を有する。
【0026】
(1)RAN:UEに対する制御プレーンおよびユーザプレーンの提供
(2)AP(Access Point) 非3GPPアクセスの場合
・UEに対するユーザプレーンの提供
・MEHにおける要求されたサービスのルーティング
・要求されたサービスにおけるデータフローのQoS制御
(3)UPF
・MEHにおける要求されたサービスのルーティング
・要求されたサービスにおけるデータフローのQoS制御
(4)MEH(Mobile Edge Host)
・サービス/コンテンツのホスティング
・後述のMSFからの制御による、サービス/コンテンツのアクティベート、追加、転送、再開。
【0027】
図3(a)のUPFは、MEH用のユーザプレーンファンクションであり、N9経由で
図2のDN用のUPFと接続され、N4経由で
図2のSMFと接続される。また
図3(a)のRANは、N2経由でAMFと接続される。
図2のNL2インタフェースは、複数のMiEdge-RANの情報収集、リソース制御を行うため、RAN,UPF,MEHのすべてに接続される。
図3(b)は非3GPP系であり、APがインターネット経由でASに接続される。
【0028】
図2に戻る。NG-RAN220が、AMFおよびUPFとのインタフェースN2,N9を有するのに対して、MiEdge-RAN300は、AMF,UPFとのインタフェースN2,N9に加えて、SMFとのインタフェースN4を有する点に留意されたい。
【0029】
MECに関連して、コアネットワーク200Aには、AS(Application Server/Service)すなわちアプリケーションサーバ/サービスが含まれる。ASは、MECのアプリケーション/サービスを提供するコアであり、UEによりホストされるピアアプリケーションと、アプリケーション固有のインタフェースを共有する。MECのコンテキストの中で、ASはMEHによってホストされ、ホストされたアプリケーションにより生成されたサービスを提供する。QoSの改善のために、異なる複数のMEHをネットワークに相互接続し、ASとの間の専用の通信に用いてもよい。
【0030】
2.2 MSF(MEC Service Function)
既設ネットワーク200の拡張のための機能要素400であるMSFが追加されている。拡張されたコアネットワーク200Aは、拡張された制御プレーン232Aを備える。制御プレーン232Aは、既設ネットワーク200の制御プレーン232に追加された重要な機能要素、すなわちMSFにより拡張されている。MSFは、MECサービス管理、NEFを介したMEC機能のASへの開示、ユーザ端末UEのMEC(LADN:Local Area Data Network)への登録、MEC管理およびオーケストレーション(短期および長期にわたる)にもとづくユーザ端末のエッジサービスを可能にするコアネットワークの新管理機能である。
【0031】
MSFは、5GシステムにおけるMECを可能とするためのあらゆる機能、手続を管理する。MSFは、以下の特徴、機能を有する。
【0032】
(1)ポリシー制御
MSFは、ネットワークにおけるユーザサブスクリプション、サービス要求、サービスデプロイメントにもとづき、ネットワークコンフィギュレーションポリシーを提供する。
【0033】
(2)リソース管理
MSFは、無線・コンピューテーションリソースのリソース・統計情報の提供にもとづき、リソースの最適化、トラヒック予測を可能とする。
【0034】
(3)リソース情報の共有
MSFは、無線事業者間のビジネス上の同意にもとづいて、非3GPPアクセスネットワークにおいて、無線およびコンピューテーションリソースに関する情報を供給するためのインタフェースでありえる。
【0035】
(4)MSFは、ANDSF(Access network discovery and selection function)のような機能によって提供されうる。ネットワークでのサービスの配備をオンラインで動的にシェアするのにも有効である。
【0036】
(5)データリポジトリ
MSFは、購読データ、ポリシーデータ、露出のための構造データ、アプリケーション情報などをストアする。サービスプロバイダは、アクセス認可により、NEFを介してこのデータの一部にアクセスする。
【0037】
(6)コンテキスト管理
MSFは、ユーザ、ネットワーク、エッジクラウド、サービスに関連するポリシーなどから、さまざまなコンテキスト情報を収集する。
【0038】
(7)最適化アルゴリズム
MSFは、MiEdge-RANにおける最適なリソース割り当てを提供する。
【0039】
続いて、インタフェースについて説明する。
図2には、リキッドRAN制御プレーンのためのインタフェースNL1~NL5が破線で、ユーザ/アプリケーション間のオーケストレーションのためのインタフェースNO1~NO3が一点鎖線で示される。
【0040】
MECの能力は、NEFならびにNL4,NL5インタフェースを用いて、ASに開示・提供される。
【0041】
AS(あるいはアプリケーションプロバイダ)は、MEC上で実行される特定アプリケーションを生成し、それらを論理インタフェースNO2を介して、UEに提供する。
【0042】
UEがアプリケーションを(ダウンロードすること無く)アクティベートすると、UEは、NO1インタフェースを介してMSFに登録される。
【0043】
UEが、アプリケーションのシナリオの(想定している)場所に近づくと、AMFが、NL1インタフェースを介してMECサービス開始のトリガーを与える。そして、NO3インタフェースを介したユーザ・アプリケーション間のオーケストレーションがスタートする。
【0044】
UEが、シナリオに入ると、MSFは、UEに関連するアクセスおよびコンピュテーションを管理し、NL3インタフェースを介してSMFを用いてセッションを開始する。
【0045】
続いて、
図4~
図6を参照して、通信システム100におけるシグナリングの一例を説明する。
【0046】
図4は、MECサービスへの登録に関するシーケンス図である。UEは、サービスプロバイダに対して、NO2インタフェース経由でサービスサブスクリプションを登録する(S100)。
図4において、サービスプロバイダは、ASに存在するものとして示している。サービスプロバイダは、MSFに対して、NO3インタフェース経由でユーザのサブスクリプションを更新する(S102)。かくしてUEにMECサービスの使用許可が与えられる。
【0047】
図5は、サービスデプロイメント・最適化に関するシーケンス図である。サービス/リソースの集中最適化(Central Optimization)(S210)のために、MSFには、ネットワークコンテキストおよびユーザコンテキストが集約される。
【0048】
MiEdge-RANは、ネットワークコンテキスト、すなわち無線リソースに関する情報やトラヒックに関する情報をSMFに提供する。具体的には無線リソース情報は、MiEdge-RANからAMF、NEFおよびインタフェースN2,NNEF,NL4を介してMSFに提供される(S200)。またトラヒック情報は、MiEdge-RANから、SMF、NEFおよびインタフェースN4,NNEF,NL4を介してMSFに提供される(S202)。
【0049】
ユーザコンテキストは、UEから、AMF、NEFおよびインタフェースN1,NNEF,NL4を経由してMSFに提供され、あるいはNO1インタフェースを経由してUEから直接提供される(S204)。ユーザコンテキストは、ユーザの位置情報、要求トラヒックの発生機構などを含む。
【0050】
MiEdge-RANもまた、ユーザコンテキストを収集する(S206)。MiEdge-RANは、無線/トラヒックの状態を測定し(S208)、無線/トラヒックの状態に関する情報やユーザコンテキストを、局所最適化(Local Optimization)に利用する(S212)。
【0051】
MSFは、集中最適化(S210)の結果を、NL2インタフェースを介してMiEdge-RANに反映させる(S214)。その後、MiEdge-RANとASの間でサービスデプロイメントが発生する(S216)。サービスデプロイメントには、データのキャッシング、プリフェッチ、サービス再開などが含まれる。
【0052】
図6は、サービス/コンテンツの提供に関するシーケンス図である。セッション確立の要求が、UEから、AMF,SMFおよびインタフェースN1,N11、NL3を介してMSFに送信される(S300)。MSFは、SMFおよびインタフェースNL3,N4を介してMiEdge-RANに対して、ポリシーのセットアップを行う(S302)。ポリシーのセットアップは、AMFおよびインタフェースNL1,N1経由でも行われる(S304)。
【0053】
UEに対してアクセスが許可され、リンクがセットアップされる(S306)。そしてUEとMiEdge-RANの間でサービス提供が始まる(S306)。
【0054】
以上、実施の形態に係る通信システム100について説明した。
通信システム100によれば、5Gアーキテクチャを拡張し、リキッド制御プレーンを導入することができる。MSFを制御プレーン232に追加することで、MSFによるMiEdge-RANのオーケストレーションと運用が可能となる。
【0055】
また通信システム100によれば、ユーザのコンテキスト情報(すなわち位置情報や要求トラヒックの発生機構)の活用が可能となる。たとえばスモールセルを有するMiEdge-RAN300に、計算機サーバを設置し、コンテキスト情報にもとづいて、事前にデータあるいは計算機能をプリフェッチし、キャッシングすることで、低コストバックホールにおいても、超高速・低遅延アクセス網を構築できる。
【0056】
比較技術として、MSFが実装されないシステム(比較システム)について検討すると、比較システムでは、特定のユーザのファイルをプリフェッチしたり、MiEdge-RANを集中最適化したりすることは不可能であることに留意されたい。
【0057】
図7は、プリフェッチの効果を説明するシミュレーション結果を示す図である。横軸はバックホール容量を、縦軸はシステムレートを示す。
図8は、シミュレーションに用いたパラメータを示す図である。
【0058】
図7を参照すると、10
3Mbpsのバックホール容量を有するシステムでは、プリフェッチを行わない場合のシステムレートは、3.5Gbpsに留まるのに対して、プリフェッチを導入することにより、システムレートを9Gbpsまで高めることができる。
【0059】
図9は、大容量データプリフェッチングによるデータQoS管理の一例を示すフローチャートである。ここでは、ユーザコンテキスト、ユーザの目的地、ユーザのサービス利用履歴が利用される。たとえば、ユーザのカレンダにアクセスすることにより、ユーザの目的地が特定される(S400)。また、UEが必要とするデータ量を予測する(S402)。予測には、過去のユーザのサービス利用履歴を参照することができる。これらは、上述したように、MiEdge-RANに提供される。
【0060】
そして、取得したユーザコンテキストにもとづいて、プリフェッチングの対象となるMiEdge-RANを特定する(S404)。この処理には、移動通信ネットワーク事業者(MNO:Mobile Network Operator)を活用し、電力マップが参照される。
【0061】
そして、実際に要求トラヒックが発生するまでの所要時間tu,nが予測される(S406)。これはAMFの機能を活用することができる。所要時間tu,nは、現在のユーザの位置と、トラヒックが発生するスモールセルの位置との距離や移動手段などから推定することができる。あるいはカレンダのスケジュールからトラヒックが発生する時刻を予測してもよい。
【0062】
そして、予想した時刻tu,nよりも時間TP前に、プリフェッチングを開始すべきタイミングを設定する(S408)。TPは、プリフェッチに要する時間であり、もしくはそれより長く定めてもよい。
【0063】
将来、さまざまな場所にMiEdge-RANが設置されるようになり、またさまざまなMECサービスが、さまざまなサービスプロバイダから提供されるようになる。こうした状況下において、各サービスプロバイダが、自身と関連のないインフラ(すなわち他人が設置したMiEdge-RAN)を利用してサービスを展開することができれば、MECの用途はさらに広がることが期待される。
【0064】
図10は、
図1の無線通信システムの変形を示す図である。5Gネットワークのプレイヤとしては、ユーザ(消費者)、移動通信ネットワーク事業者、アプリケーション事業者に加えて、小型アクセスネットワーク提供者が存在しうる。小型アクセスネットワーク提供者は、ロケーションやイベントに特化したエッジクラウド/エッジコンピューティングを含む小型アクセスネットワーク(すなわちMiEdge-RAN)を設置し、および貸し出す役割を担う。
【0065】
さらに
図10のシステムでは、プレイヤとしてポータル500が追加される。ポータル500はASと接続される。なお、5Gシステムは、NEFを介して外部に開示されており、ポータル500はオプションとしてNEFおよびNL5を介してシステムと接続されてもよい。
図10の実線(i)(ii)は、ポータルベースの集中制御を表している。
【0066】
ポータル500は、WEB市場(eコマース)を介して、小型アクセスネットワークと、そこで実行されるロケーション(イベント)特化型アプリケーションをマッチングする役割を果たす。ユーザはこれまでと同様にアプリケーションを購入、実行する。アプリケーションはポータル500を介して利用するネットワークを選択する。
【0067】
図11は、
図10のシステムの実装の一例を示す図である。MiEdge-RANには、RAN,UPF,MEHの機能が実装される。5Gのコア(制御プレーン)は拡張され、AMF,NEFに加えて、MSFが実装される。2つのASは、複数のアプリケーション(MECサービス)が、異なるサービスプロバイダから提供されることを表している。また、複数の510_1,510_2は、MiEdge-RANを含む5G通信網(あるいは事業者)が複数の存在することを表している。ポータル500は、複数のMiEdge-RANと、複数のアプリケーション(AS)を仲介する役割を果たす。
【0068】
図12を参照して、ポータルを備える
図10のシステムにおけるシグナリングを説明する。
図12は、ポータルを介したMECサービスの登録に関するシーケンス図である。小型アクセスネットワークの事業者は、ポータルとの間で事前契約を結ぶ(S500)。具体的には、MSFがMiEdge-RANの情報をポータルに登録する。ASは、ポータルに登録されたMiEdge-RANの情報を取得する。(S502)。ユーザ(UE)とサービスプロバイダ(AS)との契約は、
図4と同様である。
【0069】
図10のシステムにおけるサービスデプロイメント・最適化に関するシーケンスは、
図5と同様であり、サービス/コンテンツの提供に関するシーケンスは
図6と同様である。
【0070】
以上が変形例に係るシステムの説明である。ポータルが存在しない場合、MECの利用は、特定のASとMiEdge-RANの組み合わせの間に制限されることとなる。これに対して、ポータルを導入することにより、ASは、ポータルを介して世の中に存在するMiEdge-RANの情報を収集できるようになる。言い換えれば、MECを利用可能なMiEdge-RANとASの組み合わせの制限を取り除くことができる。このようにポータルの導入により、ユーザ(端末ユーザに限らない、ASすなわちサービスプロバイダやMiEdge-RANの設置者を含む)中心のネットワークおよびそのオーケストレーションの実現が可能となる。
【0071】
ポータルの導入により、MiEdge-RANの提供者(管理者)は、ポータルを介して自身の管理するMiEdge-RANを利用したASからインセンティブを受ける仕組みを提供することも可能である。このことはMiEdge-RANの普及を促す原動力となりうる。
【0072】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0073】
100 通信システム
200 既設ネットワーク
210 端末
220 NG-RAN
230 コアネットワーク
232 制御プレーン
234 ユーザプレーン
300 小型アクセスネットワーク、MiEdge-RAN
400 拡張機能エンティティ