(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】タオルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41G 1/00 20060101AFI20220510BHJP
D03D 27/00 20060101ALI20220510BHJP
A47K 10/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A41G1/00 U
D03D27/00 C
A47K10/02 C
A47K10/02 D
(21)【出願番号】P 2017254441
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】本多 希久子
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-295582(JP,A)
【文献】特開昭60-146040(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130371(JP,U)
【文献】実開昭49-121768(JP,U)
【文献】実開昭60-082474(JP,U)
【文献】特開2002-030536(JP,A)
【文献】特開2004-360163(JP,A)
【文献】テキスタイル技術,1999年,P78-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G1/00-11/02
A47K10/00-10/14
10/18-10/48
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花の形状に折られる長方形状のタオルの製造方法であって、
ボビンに巻き付けられた糸に糸染を行って、第1の色を有する第1の糸、及び第2の色を有する第2の糸を用意する工程と、
前記第1の糸、及び前記第2の糸のそれぞれをクリールに掛ける工程と、
前記タオルの中央
に第1
のラインを形成すると共に、前記第1
のラインの隣接位置
に第2
のラインを形成するように、前記第1の糸及び前記第2の糸をビームに巻き取る工程と、
を備え
、
前記第1のライン及び前記第2のラインのそれぞれは第1方向に沿って延びており、
前記第2のラインは、前記第1のラインの前記第1方向に交差する第2方向の両側のそれぞれに配置されており、
各前記第2のラインから見て前記タオルの前記第2方向の両端側のそれぞれに第3のラインが配置されており、
前記第1の色の明度は、前記第2の色の明度よりも低く、
前記第1のラインは前記第1の糸が織り込まれて形成され、前記第3のラインは前記第2の糸が織り込まれて形成され、
前記第2のラインは、前記第1の糸と前記第2の糸の2種類の糸が織り込まれて形成される、
タオルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の糸及び前記第2の糸をビームに巻き取る工程では、前記第1
のラインの両隣に前記第2
のラインを形成する、
請求項
1に記載のタオルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花の形状に折り畳まれるタオルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タオルとしては種々のものが知られている。実開平3-127593号公報には、おしぼり用タオル、バスタオル又はキッチンタオルとして使用されるタオルが記載されている。タオルは、パイル糸、縦糸及び横糸が織り込まれて形成されており、このタオルには、一対の変色体が取り付けられている。変色体は、温度変化によって色彩が変化すると共にマイクロカプセル状にされた染料を有し、この染料が合成樹脂製シート、布又は皮革等の表面にコーティング又はプリントされることによって形成される。このタオルでは、変色体の色彩を確認することによって、タオルの温度を把握することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タオルは、箱に詰められてギフト等として贈られることがあり、タオルのデザイン性を高めることが求められている。しかしながら、タオルは、折り畳まれたり丸められたりして箱詰めされることが多く、タオルのデザイン性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、デザイン性が高いタオルを容易に製造することができるタオルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタオルの製造方法は、花の形状に折られる長方形状のタオルの製造方法であって、ボビンに巻き付けられた糸に糸染を行って、第1の色を有する第1の糸、及び第2の色を有する第2の糸を用意する工程と、第1の糸、及び第2の糸のそれぞれをクリールに掛ける工程と、タオルの中央に第1のラインを形成すると共に、第1のラインの隣接位置に第2のラインを形成するように、第1の糸及び第2の糸をビームに巻き取る工程と、を備え、第1のライン及び第2のラインのそれぞれは第1方向に沿って延びており、第2のラインは、第1のラインの第1方向に交差する第2方向の両側のそれぞれに配置されており、各第2のラインから見てタオルの第2方向の両端側のそれぞれに第3のラインが配置されており、第1の色の明度は、第2の色の明度よりも低く、第1のラインは第1の糸が織り込まれて形成され、第3のラインは第2の糸が織り込まれて形成され、第2のラインは、第1の糸と第2の糸の2種類の糸が織り込まれて形成される。
【0007】
このタオルの製造方法では、花の形状に折られるタオルであって、第1の色、及び第2の色を備えたタオルが製造されるので、デザイン性が高いタオルを製造することができる。このタオルの製造方法では、ボビンに巻き付けられた糸に糸染を行うことにより、第1の色を有する第1の糸、及び、第2の色を有する第2の糸を用意し、第1の糸及び第2の糸のそれぞれをクリールに掛ける。そして、長方形状のタオルの中央に第1のラインを形成すると共に、第1のラインの隣接位置に第2のラインを形成するように、第1の糸及び第2の糸をビームに巻き取る。よって、タオルを構成する糸は、タオルの中央に第1の色が配置され、第1の色の隣接位置に第2の色が配置されるようにビームに巻き取られる。従って、巻き取ったタオルに製織、糊抜き、乾燥、及び裁断を行うと、中央に第1の色が配置され、中央の隣接位置に第2の色が配置された鮮やかなタオルが製造される。以上のように、糸をビームに巻き取るときに、第1の色が中央に位置して第2の色が中央の隣接位置に位置するように糸を巻き取っていくことにより、デザイン性が高いタオルを容易に製造することができる。更に、このタオルを花形に折ると、中央に第1の色が位置すると共に、第1の色の隣接位置に第2の色が位置する鮮やかな花形のタオルが形成される。従って、この花形のタオルを複数詰めることにより、デザイン性が高いタオルの詰め合わせを作り込むことができる。
【0008】
また、長方形状のタオルの中央に明度が低い第1の色のラインを形成し、第1の色のラインの隣接位置に明度が高い第2の色のラインを形成する。従って、中央に明度が低い第1の色が位置すると共に、第1の色の隣接位置に明度が高い第2の色が位置する花形のタオルを形成することができる。その結果、タオルに、中央に影が落ちた花としての立体感を表現することができるので、よりデザイン性が高いタオルを製造することができる。
【0009】
また、第1の糸及び第2の糸をビームに巻き取る工程では、第1のラインの両隣に第2のラインを形成してもよい。この場合、中央に第1の色が位置すると共に、第1の色の周囲に第2の色が位置する鮮やかなタオルを形成することができるので、タオルのデザイン性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デザイン性が高いタオルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るタオルの表面を示す写真である。
【
図4】実施形態に係るタオルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】(a),(b),(c)及び(d)は、
図4の製造方法の各工程における糸の状態を概略的に示す図である。
【
図6】
図1のタオルを折り畳んで形成された花形のタオルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら本発明に係るタオルの製造方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るタオル1の表面1Aを示す写真である。
図2は、タオル1の裏面1Bを示す写真である。
図3は、タオル1の配色を示す平面図である。タオル1は、花の形状に折られるタオル(
図6参照)であり、例えば、花の形状に折られた複数のタオル1が箱に詰められて贈られる。
図1~
図3に示されるように、タオル1は、長方形状を成しており、一対の第1の辺2aと、一対の第2の辺2bとを有する。なお、タオル1は正方形状であってもよい。以下では、第1の辺2aが延びる方向を第1方向D1、第2の辺2bが延びる方向を第2方向D2として説明する。
【0014】
タオル1は、互いに色彩が異なる複数種類の糸によって製造される。例えば、本実施形態に係るタオル1は、5種類の糸によって製造されており、5種類の糸の色彩が互いに異なっている。また、タオル1は、互いに色彩が異なる複数種類のラインL1~L9を有し、ラインL1~L9のそれぞれは第1方向D1に沿って延びている。ラインL1~L9は、例えば、タオル1の中心2cに対して互いに対称となる位置に配置されている。一例として、ラインL1,L9の幅(第2方向D2の長さ)は10mm以上且つ20mm以下であり、ラインL2~L4それぞれの幅は8mm以上且つ18mm以下であり、ラインL5~L8それぞれの幅は4mm以上且つ10mm以下である。
【0015】
ラインL1の色彩は第1の色C1であり、ラインL3の色彩は第2の色C2であり、ラインL5の色彩は第3の色C3であり、ラインL7の色彩は第4の色C4であり、ラインL9の色彩は第5の色C5である。第1の色C1の明度は第2の色C2の明度よりも低く、第2の色C2の明度は第3の色C3の明度よりも低く、第3の色C3の明度は第4の色C4の明度よりも低く、第4の色C4の明度は第5の色C5の明度よりも低い。第5の色C5は、例えば白色である。
【0016】
第1の色C1の色相、第2の色C2の色相、第3の色C3の色相、第4の色C4の色相、及び第5の色C5の色相は、互いに同一であり、例えばマゼンタである。また、第1の色C1の彩度は第2の色C2の彩度よりも高く、第2の色C2の彩度は第3の色C3の彩度よりも高く、第3の色C3の彩度は第4の色C4の彩度よりも高く、第4の色C4の彩度は第5の色C5の彩度よりも高い。
【0017】
すなわち、第5の色C5が最も明るく、第4の色C4が2番目に明るく、第3の色C3が3番目に明るく、第2の色C2が4番目に明るく、第1の色C1が最も暗い。また、ラインL2の色彩は第1の色C1と第2の色C2の中間色であり、ラインL4の色彩は第2の色C2と第3の色C3の中間色であり、ラインL6の色彩は第3の色C3と第4の色C4の中間色であり、ラインL8の色彩は第4の色C4と第5の色C5の中間色である。
【0018】
従って、ラインL1からラインL2、ラインL3、ラインL4、ラインL5、ラインL6、ラインL7、ラインL8、ラインL9に向かうに従って明るくなる。また、ラインL9からラインL8、ラインL7、ラインL6、ラインL5、ラインL4、ラインL3、ラインL2、ラインL1に向かうに従って彩度が高くなり色鮮やかになる。従って、ラインL1が最も暗いが最も彩度が高く、ラインL9が最も明るいが彩度は最も低い。
【0019】
第1の色C1のラインL1は、タオル1の第2方向D2の中央に設けられており、タオル1の中心2cを通ると共に第1方向D1に沿って直線状に延びている。ラインL2はラインL1の第2方向D2の両側、ラインL3はラインL2の第2方向D2の両側、ラインL4はラインL3の第2方向D2の両側、ラインL5はラインL4の第2方向D2の両側、ラインL6はラインL5の第2方向D2の両側、ラインL7はラインL6の第2方向D2の両側、ラインL8はラインL7の第2方向D2の両側、ラインL9はラインL8の第2方向D2の両側、にそれぞれ配置されている。
【0020】
よって、タオル1の色彩については、中心2cから第2方向D2の両端側のラインL9に向かうに従って、明度が高くなると共に彩度が低くなっている。また、ラインL9よりも第2方向D2の両端側に向かうと、明度が低くなると共に彩度が高くなっている。すなわち、ラインL9の第2方向D2の両端側には、ラインL8、ラインL7、ラインL6及びラインL5が設けられている。従って、タオル1の色彩は、中心2cが最も濃く且つ鮮やかであり、中心2cから第2方向D2の両端側に向かうに従って薄く且つ白色(第5の色C5)に近くなり、白色よりも第2方向D2の両端側に向かうに従って濃く且つ色鮮やかになる。
【0021】
タオル1は、例えば、第1の色C1を有する第1の糸T1、第2の色C2を有する第2の糸T2、第3の色C3を有する第3の糸T3、第4の色C4を有する第4の糸T4、及び、第5の色C5を有する第5の糸T5によって製造される。ラインL1は第1の糸T1が織り込まれて形成され、ラインL3は第2の糸T2が織り込まれて形成され、ラインL5は第3の糸T3が織り込まれて形成され、ラインL7は第4の糸T4が織り込まれて形成され、ラインL9は第5の糸T5が織り込まれて形成される。
【0022】
ラインL2は、第1の糸T1と第2の糸T2の2種類の糸が織り込まれて形成される。
図1に示されるように、表面1AにおけるラインL2の第1の糸T1と第2の糸T2の比率は、第2方向D2の両端側に向かうに従って第2の糸T2(薄い色)の割合が多くなり、第2方向D2の中央側に向かうに従って第1の糸T1(濃い色)の割合が多くなる。
【0023】
一方、
図2に示されるように、裏面1BにおけるラインL2の第1の糸T1と第2の糸T2の比率は、第2方向D2の両端側に向かうに従って第1の糸T1(濃い色)の割合が多くなり、第2方向D2の中央側に向かうに従って第2の糸T2(薄い色)の割合が多くなる。従って、表面1AのラインL2の色彩は第2方向D2の両端側に向かうに従って薄くなっており、裏面1BのラインL2の色彩は第2方向D2の両端側に向かうに従って濃くなっている。
【0024】
ラインL4は第2の糸T2と第3の糸T3の2種類の糸が織り込まれて形成され、ラインL6は第3の糸T3と第4の糸T4の2種類の糸が織り込まれて形成され、ラインL8は第4の糸T4と第5の糸T5の2種類の糸が織り込まれて形成される。ラインL4の第2の糸T2と第3の糸T3の比率、ラインL6の第3の糸T3と第4の糸T4の比率、ラインL8の第4の糸T4と第5の糸T5の比率は、例えば、ラインL2の第1の糸T1と第2の糸T2の比率と同様である。
【0025】
この場合、表面1AのラインL4,L6,L8の色彩は第2方向D2の両端側に向かうに従って薄くなっており、裏面1BのラインL4,L6,L8の色彩は第2方向D2の両端側に向かうに従って濃くなっている。なお、
図3では簡略化のためラインL2,L4,L6,L8の色彩を中間色一色として示している。しかしながら、実際には
図1及び
図2に示されるように、ラインL2,L4,L6,L8の色彩は第2方向D2の中央側と両端側とにおいて互いに異なっている。すなわち、ラインL2、ラインL4、ラインL6及びラインL8のそれぞれは、単体でグラデーションを形成している。また、タオル1の第1の辺2a及び第2の辺2bは、例えば、ミシンによってヘム巻きされて縫製される。
【0026】
次に、本実施形態に係るタオル1の製造方法について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4に示されるフローチャートは、タオル1の製造方法の一例を示しており、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5からタオル1を織り、糊抜き等の後処理を経てタオル1を完成させる方法の例を示している。
【0027】
まず、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5の元となる糸のそれぞれを紡績する。このとき、原綿に対して撚り合わせを行って糸を紡績して、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5の元となる糸をそれぞれ作製する。
【0028】
そして、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5の元となる糸のそれぞれをボビンBに巻き付けて糸染を行う(ステップS1)。糸染は、例えば、1色あたり5時間程度かかるので、本実施形態では、糸染に24時間以上且つ26時間以下の時間をかける。糸染では、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5の元となる糸のそれぞれをボビンBにソフト巻きしてボビンBに巻き付ける。その後、それぞれのボビンBを染色釜に入れて各ボビンBに染色を行うことによって第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5を作製する。そして、ソフト巻きされていた第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5のそれぞれをチーズ巻きに巻きかえて仕上げ巻きを行い、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5を用意する(糸を用意する工程)。
【0029】
続いて、整経機を用いて第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5を整経する(ステップS2)。このとき、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5のそれぞれをクリールKに掛ける(クリールに掛ける工程)。タオル1では、グラデーションを形成するため、グラデーションを形成しない場合と比較して、クリールKに立てる糸の本数が多く、且つ糸をクリールKに立てる時間が長い。例えば、各クリールKに立てる糸の本数は300本以上且つ450本以下であり、各糸を各クリールKに立てる時間は60分以上且つ80分以下である。なお、
図5(b)では、理解を容易にするため、簡略化したクリールKを図示している。
【0030】
各クリールKに掛けた第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5をタイコリールに巻き取る。タオル1では、グラデーションを形成するため、タイコリールに各糸を巻き取る時間は、グラデーションを形成しない場合よりも長く、例えば、110分以上且つ130分以下である。そして、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5をビームEに巻き取る巻き返しを、タオル1の中央に第1の色C1のラインL1を形成すると共に、第1の色C1のラインL1の隣接位置に第2の色C2のラインL2,L3を形成するように実行する(糸を巻き取る工程、ステップS3)。
【0031】
具体的には、
図5(c)及び
図5(d)に示されるように、ビームEに7枚分のタオル1がビームEの長手方向(軸線方向)に沿って並ぶように巻き取りを行う。なお、
図5(c)は簡略化したビームEを示しており、
図5(d)はビームEに巻かれるタオル1の配置を模式的に示している。
【0032】
また、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5のタイコリールへの巻き取りは、タイコリールに対する張力が均一となるように実行する。また、ビームEへの第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5の巻き返しは、巻き取られた糸を織機に設置するために行う。ビームEを織機に設置して、ビームEに巻き取った第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4及び第5の糸T5を1本ずつ織機の糸に繋ぎ、その後、織機によって製織を実行する(ステップS4)。
【0033】
織機は、例えば、エアジェット織機である。この織機では、第1の糸T1、第2の糸T2、第3の糸T3、第4の糸T4、及び第5の糸T5を縦糸、横糸及びパイル糸として用いる。この織機は、横糸に対して縦糸及びパイル糸を上下移動させ、横糸を通る糸道を形成し、横糸を織機の一端から他端まで走らせる。そして、横糸と交差された縦糸及びパイル糸を寄せて打ち込みを行う。このとき、縦糸及びパイル糸は、予め入力されたデータに基づいて上下移動し、例えば、縦糸及びパイル糸が1本1本制御されて
図1~
図3に示される模様を備えるタオル1が織られる。タオル1は複数種類の糸からパイルをランダムに出すことによって織られてもよく、このようにタオル1が織られることによってグラデーションが形成されたタオル1が作製される。
【0034】
次に、タオル1の糊抜きを実行する(ステップS5)。糊抜きでは、例えば、回転可能とされた筒型又はドラム型の容器にタオル1を収容し、当該容器に水を入れてタオル1を回転させることにより、タオル1の糊を洗い落とす。糊抜きの時間は、例えば、30分以上且つ40分以下であり、糊抜きで用いる水の温度は、80℃以上且つ90℃以下である。このように糊抜きを行うことにより、パイル糸等の風合いが高まると共にタオル1の吸水性が高められる。
【0035】
続いて、タオル1の乾燥を実行する(ステップS6)。タオル1の乾燥では、例えば、タオル1を高所に吊り上げてタオル1に温風を吹き付けた状態とする。タオル1の乾燥の時間は、一例として70℃程度である。但し、タオル1の乾燥の時間、及びタオル1の乾燥の温度は、タオル1の厚さ等に応じて適宜変更される。
【0036】
タオル1の乾燥を終えた後には、タオル1の仕上げを行う(ステップS7)。タオル1の仕上げは、例えば、整反、裁断、縫製及び検品を含む。タオル1の整反では、例えば、タオル1を引っ張りながらタオル1をテンターに入れてタオル1を加熱する。この加熱によって、タオル1の幅出しを行うと共に、タオル1のしわ及び収縮の発生を抑制してタオル1の形状を整える。タオル1の整反時の加熱温度は、例えば、70℃以上且つ80℃以下である。
【0037】
タオル1の整反を終えた後には、裁断を行って1枚1枚のタオル1に分断し、例えば、ミシンでヘム巻きを行って縫製を実行する。縫製を行った後、タオル1の検品及び検針を行う。検針は、慎重に複数回行うことが好ましく、例えば、タオル1を載せるベルトを備えた非接触型の検針器を用いて行う。このように検品及び検針を終えた後、タオル1を出荷して一連の工程が終了する。
【0038】
次に、タオル1を花の形状に折り畳む方法について説明する。まず、
図1に示される状態からタオル1の中心2cを手で持って、タオル1を、中心2cを頂点とした円錐状とする。そして、タオル1の1つの隅部2d1を持ち上げると共に、隅部2d1を波打たせながら中心2cに接触させる。この波打たせた部分は、中心2cを囲む内側の花びら3a(
図6参照)に相当する部分である。隅部2d1を中心2cに接触させた後には、隅部2d1を手で押さえつつ、別の隅部2d2を持って中心2cに寄せると共に中心2cから外側に開き1枚の花びらとする。続いて、更に別の隅部2d3を持って中心2cに寄せると共に隅部2d2とは異なる方向に隅部2d3を開いて1枚の花びらとし、残りの隅部2d4を持って中心2cに寄せると共に隅部2d2,2d3とは異なる方向に隅部2d4を開いて1枚の花びらとする。以上のように、隅部2d2,2d3,2d4のそれぞれを花びらとすることによって、
図6に示されるように、タオル1を花の形状に折ることが可能である。
【0039】
続いて、本実施形態に係るタオル1の製造方法から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る製造方法では、花の形状に折られるタオル1であって、少なくとも第1の色C1及び第2の色C2を備えたタオル1が製造されるのでデザイン性が高いタオル1を製造することができる。
図5(a)に示されるように、タオル1の製造方法では、ボビンBに巻き付けられた糸に糸染を行うことにより、少なくとも、第1の色C1を有する第1の糸T1、及び第2の色C2を有する第2の糸T2を用意し、第1の糸T1及び第2の糸T2のそれぞれをクリールKに掛ける。
【0040】
そして、長方形状のタオル1の中央に第1の色C1のラインL1を形成すると共に、第1の色C1のラインL1の隣接位置に第2の色C2のラインL2を形成するように、第1の糸T1及び第2の糸T2をビームEに巻き取る。よって、タオル1を構成する糸は、タオル1の中央に第1の色C1が配置され、第1の色C1の色の隣接位置に第2の色C2が配置されるようにビームEに巻き取られる。従って、巻き取ったタオル1に製織、糊抜き、乾燥及び裁断を行うと、中央に第1の色C1が配置され、中央の隣接位置に第2の色C2が配置された鮮やかなタオル1が製造される。
【0041】
以上のように、糸をビームEに巻き取るときに、第1の色C1が中央に位置して第2の色C2が中央の隣接位置に位置するように糸を巻き取っていくことにより、デザイン性が高いタオル1を容易に製造することができる。更に、
図6に示されるように、タオル1を花形に折ると、中央に第1の色C1が位置すると共に、第1の色C1の隣接位置に第2の色C2が位置する鮮やかな花形のタオル1が形成される。従って、この花形のタオル1を複数詰めることにより、デザイン性が高いタオル1の詰め合わせを作り込むことができる。
【0042】
また、第1の色C1の明度は、第2の色C2の明度よりも低い。よって、長方形状のタオル1の中央に明度が低い第1の色C1のラインL1を形成し、第1の色C1のラインL1の隣接位置に明度が高い第2の色C2のラインL2を形成する。従って、中央に明度が低い第1の色C1が位置すると共に、第1の色C1の隣接位置に明度が高い第2の色C2が位置する花形のタオル1を形成することができる。その結果、タオル1に、中央に影が落ちた花としての立体感を表現することができるので、よりデザイン性が高いタオル1を製造することができる。
【0043】
また、第1の糸T1及び第2の糸T2をビームEに巻き取る工程では、第1の色C1のラインL1の両隣に第2の色C2のラインL2を形成する。よって、中央に第1の色C1が位置すると共に、第1の色C1の周囲に第2の色C2が位置する鮮やかなタオル1を形成することができるので、タオル1のデザイン性を更に高めることができる。
【0044】
また、第1の糸T1及び第2の糸T2を巻き取る工程では、
図3に示されるように、第1の色C1のみのラインL1の両隣に第1の色C1及び第2の色C2を含むラインL2を形成し、ラインL2の両隣に第2の色C2のみのラインL3を形成する。よって、ラインL1とラインL3の間に中間色のラインL2を形成することにより、タオル1の中央から第2方向D2の両端側に向かうに従って色を徐々に変化させることができる。従って、タオル1の中央から第2方向D2の両端側に向かうに従って色が少しずつ変化するグラデーションを形成することができる。
【0045】
また、第2の色C2を含むラインL3,L4の第2方向D2の両端側には、第3の色C3を含むラインL5,L6が配置されており、第3の色C3の明度は第2の色C2の明度よりも高く、第3の色C3の彩度は第2の色C2の彩度よりも低い。また、第2の色C2の彩度は第1の色C1の彩度よりも低い。よって、第2方向D2の中央に位置する第1の色C1から第2方向D2の両端側に向かうに従って、彩度が低くなると共に明度が高くなる。すなわち、タオル1の中央が最も彩度が高く且つ明度が低いので、
図6に示されるように、花形に折られたタオル1では、花の中央の彩度が高く且つ明度が低くなる。その結果、中央に影が落ちた花をタオル1によって忠実に再現することができる。
【0046】
また、第5の色C5を含むラインL8,L9の第2方向D2の両端側には、第4の色C4を含むラインL6,L7が配置されており、第4の色C4の明度は第5の色C5の明度よりも低く、第4の色C4の彩度は第5の色C5の彩度よりも高い。よって、ラインL8,L9よりも隅部2d1,2d2,2d3,2d4に近いラインL6,L7の明度が低く且つ彩度は高くなるので、タオル1の花びらの端部を色鮮やかにすることができる。
【0047】
以上、本発明に係るタオルの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、本発明に係るタオルの製造方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0048】
例えば、前述の実施形態では、中心2cを撮むと共に、3つの隅部2d2,2d3,2d4を開いてタオル1を花形に折る例について説明した。しかしながら、タオル1を花形に折る方法は、上記の例に限られず、適宜変更可能である。
【0049】
また、前述の実施形態では、第1の色C1の第1の糸T1、第2の色C2の第2の糸T2、第3の色C3の第3の糸T3、第4の色C4の第4の糸T4、及び第5の色C5の第5の糸T5を備えたタオル1について説明した。しかしながら、タオルの色の種類の数、糸の種類の数は、4以下であってもよいし又は6以上であってもよく、適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、中心2cからラインL1~L9及びラインL8~L5がこの順で第2方向D2に沿って並ぶタオル1について説明した。しかしながら、ラインの数、幅及び形状は、前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…タオル、1A…表面、1B…裏面、2a…第1の辺、2b…第2の辺、2c…中心、2d1,2d2,2d3,2d4…隅部、C1…第1の色、C2…第2の色、C3…第3の色、C4…第4の色、C5…第5の色、D1…第1方向、D2…第2方向、L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7,L8,L9…ライン、T1…第1の糸、T2…第2の糸、T3…第3の糸、T4…第4の糸、T5…第5の糸。