(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】管継手およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 21/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
F16L21/00 B
(21)【出願番号】P 2018087876
(22)【出願日】2018-04-28
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】特許業務法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】船越 高志
(72)【発明者】
【氏名】相嶋 匡也
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-043844(JP,A)
【文献】実開平04-056289(JP,U)
【文献】実開昭54-038927(JP,U)
【文献】特開2011-163533(JP,A)
【文献】特開2005-140304(JP,A)
【文献】特開2014-070724(JP,A)
【文献】特開2000-046282(JP,A)
【文献】特開2007-309503(JP,A)
【文献】実開昭55-052333(JP,U)
【文献】実開平01-083987(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0061283(US,A1)
【文献】特開平04-073481(JP,A)
【文献】登録実用新案第3045823(JP,U)
【文献】特開2002-045865(JP,A)
【文献】特開2016-056949(JP,A)
【文献】中国実用新案第205781607(CN,U)
【文献】特開2015-197137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の管に用いられる管継手であって、
開口端からの内径が、漸時縮径されるテーパ径孔部と、
前記テーパ径孔部に接続され、第1の径で延び、前記管が挿入される大径孔部と、
前記大径孔部における前記テーパ径孔部側とは反対側の端で段差面を介して接続し、前記第1の径より小さい第2の径で延びる小径孔部と、
前記段差面に形成され、前記管の端面が当接するシール用の円環状の突起と、を備
え、
前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面は、外壁面よりも平滑である、金属からなる管継手。
【請求項2】
前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面の表面粗さRaは0.1以下である、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記突起は高さ0.05~0.2mmである請求項
1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記突起は断面形状が半円状の突起である請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項5】
前記小径孔部に対応する外壁に形成されるフランジと、
前記フランジに形成されるビス穴と、を更に備える請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項6】
前記小径孔部を挟む対向する位置に配置される一対の磁石を更に備える請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項7】
樹脂製の管に用いられる管継手の製造であって、
金属に対して、小径孔部を形成すること、
前記小径孔部と同心で、前記小径孔部の径より大きい径で前記小径孔部との接続部に底面を有し、前記管が挿入される大径孔部を形成すること、
前記底面である段差面に前記管の端面が当接する前記大径孔部と同心の円環状のシール用の突起を形成すること、
前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面を電解研磨すること、を有する管継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造のプロセスにおいては、様々な薬液が使用され、薬液を供給するための多くの配管が設置される。配管に用いられる管の材料は、這いまわし形状が固定される金属製のものや、這いまわし形状を這いまわし後にも変えることのできる樹脂製のものが使用される。
【0003】
特許文献1は、バックリングがフロントリングの内周にもぐり込むテーパ面を有し、フロントリングの内周が、円筒面と、円筒面の後端に連なるテーパ面とを有する管継手であって、フロントリングのテーパ面は、バックリングのテーパ面に対応するテーパ角度を有する後側テーパ面と、後側テーパ面と円筒面との間にあって、後側テーパ面のテーパ角度よりも小さいテーパ角度を有する前側テーパ面とからなる管継手について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば半導体製造のフォトリソグラフィの現像プロセスにおいては、レジスト材料に応じて、水酸化テトラメチルアンモニウム、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル等の薬液が使用されることがある。このような薬液を管に流した場合には、薬液が静電気により帯電する。特に樹脂製の管を用いた場合には薬液が流れる管も帯電することとなる。この場合に薬液や管の帯電の程度によっては、静電気の放電等により管やそれを接続する管継手の耐久性に影響を与える恐れがある。一方で静電気を除去することにより帯電を抑えられる金属製の管を用いた場合には、薬液によっては金属成分が薬液に溶出してしまう恐れもある。
【0006】
本開示は、上述の事情に鑑みてされたものであり、管を流れる流体や管の静電気による帯電を抑えると共に、金属の溶出を抑えた管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の管継手は、開口端からの内径が、漸時縮径されるテーパ径孔部と、
前記テーパ径孔部に接続され、第1の径で延びる大径孔部と、
前記大径孔部における前記テーパ径孔部側とは反対側の端で段差面を介して接続し、前記第1の径より小さい第2の径で延びる小径孔部と、
前記段差面に形成される円環状の突起と、を備える金属からなる管継手である。
【0008】
また、本開示の管継手においては、前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面の表面粗さRaは0.1以下とすることができる。また、本開示の管継手においては、前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面は、外壁面よりも平滑としてもよい。また、本開示の管継手においては、前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面は、電解研磨により形成されることとしてもよい。
【0009】
また、本開示の管継手においては、前記突起は高さ0.05~0.2mmであってもよく、また、半円状の突起であってもよい。
【0010】
また、本開示の管継手においては、前記小径孔部に対応する外壁に形成されるフランジと、前記フランジに形成されるビス穴と、を更に備えていてもよい。
【0011】
また、本開示の管継手においては、前記小径孔部を挟む対向する位置に配置される一対の磁石を更に備えていてもよい。
【0012】
また、本開示の管継手においては、前記小径孔部を挟んで、一対の前記段差面、一対の前記大径孔部及び一対の前記テーパ径孔部が順に配置されていてもよい。
【0013】
本開示の管継手の製造方法は、金属に対して、小径孔部を形成すること、
前記小径孔部と同心で、前記小径孔部の径より大きい径で前記小径孔部との接続部に底面を有する大径孔部を形成すること、
前記底面である段差面に前記大径孔部と同心の円環状の突起を形成すること、
前記大径孔部の内壁面、前記段差面及び前記小径孔部の内壁面を電解研磨すること、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、管を流れる流体や管の静電気による帯電を抑えると共に、金属の溶出を抑えた管継手が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】管継手の大径孔部付近について示す拡大一部断面図。
【
図4】管継手が管に接続された際の様子について示す側面図。
【
図6】管継手が管に接続された際の他の例について示す側面図。
【
図7】管継手の周囲に磁石を配置した場合について概略的に示す側面図である。
【
図8】
図7と同様の場合について示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0017】
図1は、本発明に係る管継手の側面図である。
図2は、
図1の管継手の断面図である。
図3は、管継手の大径孔部付近について示す拡大一部断面図である。
図1~
図3に示されるように、管継手1は、全体として金属の管状の構造であり、両端にそれぞれ管が挿入されることにより、2つの管を接続する。ここで接続される管4はPFA(Perfluoroalkoxy Alkanes)等の樹脂製のものである。管継手1を構成する金属は、例えばJIS(日本工業規格)規格でSUS316等のステンレス鋼等を使用することができる。またステンレス鋼に限らず導電性のある金属を用いることができる。管を接続する孔は、少なくともテーパ径孔部21と、大径孔部22と、小径孔部23とから構成されている。
【0018】
テーパ径孔部21は、開口端211から径を次第に小さくしながら延びる孔である。大径孔部22は、テーパ径孔部21に連続して接続し、第1の径で延びている。小径孔部23は、大径孔部22におけるテーパ径孔部21側とは反対側の端で段差面24を介して接続し、大径孔部22と同心で第1の径より小さい第2の径で延びている。段差面24は、小径孔部23の開口周囲に形成される円環状の突起25を備えている。管継手1は、流体の流れる方向で、小径孔部23を挟んで、一対の段差面24、一対の大径孔部22及び一対のテーパ径孔部21が内側から順に配置される。管継手1の外側は、外壁面12、後述する袋ナット3と螺合する雄ネジ11、及びフランジ13を有している。
【0019】
図4は、管継手1が管4に接続された際の様子について示す側面図である。
図5は、
図4の部分断面図である。
図4及び
図5に示されるように、管4は、テーパ径孔部21から段差面24に管4の端部が接触するまで差し込まれる。管4とテーパ径孔部21との間に楔状にフロントリング51が差し込まれ、更に管4とフロントリング51との間に楔状にバックリング52が差し込まれる。バックリング52を押し込むように袋ナット3を雄ネジ11に螺合して、管4と管継手1とを接続、固定する。
【0020】
金属製の管継手1は、このような構成とすることにより、管継手1を通る帯電した流体の電荷を除去することができる。突起25の位置で流体のリークを防ぐため、流体が触れる金属部分は小径孔部23の内壁面231と段差面24の一部までで、大径孔部22の内壁面221には触れないため、酢酸ブチル等の金属を溶出される流体を使用した場合であっても金属の溶出を抑えることができる。ここで、突起25は、高さ0.05~0.2mmとすることができ、また、突起25は、半円状であってもよい。このようにすることにより、例えば樹脂管の端面に適切に接してシールし、突起25より外側への流体のリークを抑えることができる。
【0021】
ここで大径孔部22の内壁面221、段差面24及び小径孔部23の内壁面231は、電解研磨により形成されることとしてもよい。これにより金属を溶出される流体を使用した場合であっても金属の溶出をより抑えることができる。また、大径孔部22の内壁面221、段差面24及び小径孔部23の内壁面231の表面粗さRaは0.1以下とすることができる。表面粗さRa0.1以下の表面は、電解研磨で形成することができる。大径孔部22の内壁面221、段差面24及び小径孔部23の内壁面231は、外壁面12よりも平滑とすることができる。また、大径孔部22の内壁面221、段差面24及び小径孔部23の内壁面231は、電解研磨後に硝酸パッシベーションなどの不動態膜で被覆することができる。
【0022】
また
図2に示されるように、管継手1は、小径孔部23に対応する外壁に形成されるフランジ13と、フランジ13に形成されるビス穴14と、を更に有していてもよい。
図6は、管継手1が管4に接続された際の他の例について示す側面図である。この場合に、
図6に示されるように、ビス穴14に、接地されたアース配線62をビス61で固定することにより、より効率的に流体又は管4に帯電した静電気を除去することができる。
【0023】
また、管継手1は、フランジ13の周囲で、小径孔部23を挟む対向する位置に配置される一対の磁石71及び72を更に有していてもよい。
図7は、管継手1の周囲に磁石71及び72を配置した場合について概略的に示す側面図である。
図8は、
図7と同様の場合について概略的に示す平面図である。
図7に示されるように、例えば、小径孔部23を挟んで、磁石71及び72をS極及びN極が互いに対向するように配置すると、管内に一方向に向かう磁界が発生する。帯電した流体が磁石71及び72の間を流れると、
図8に示すように、流体に帯電した電荷91はローレンツ力により内壁面231の方向に移動させられる力を受け、アース配線62に電気的に接続された内壁面231に取り込まれやすくなる。従って、このような磁石71及び72を配置した構成とすることにより、帯電した流体の電荷91を内壁面231から効率的に除去することができる。
【0024】
管継手の製造方法
上述のような管継手1は、例えば、以下のように製造することができる。まず、ステンレス鋼等の金属に対して、第2の径の小径孔部23を形成する。次に、小径孔部23と同心で第2の径より大きい第1の径の大径孔部22を形成する。その際に、大径孔部22の底部24が小径孔部23との段差面24となる。次に、底面24である段差面24に大径孔部22と同心の円環状の突起25を形成する。最後に大径孔部22の内壁面、段差面24及び小径孔部23の内壁面を電解研磨する。ここで、小径孔部23の形成は、円環状の突起25を形成した後に行われるものであってもよい。
大径孔部22、小径孔部23及び突起25は、基本的に切削により加工されるため、精度の高い加工であっても微小な凹凸や棘を残すこととなる。そこで電解研磨を行うことにより、凹凸や棘を溶かしてより平坦な面を形成し、金属を溶かす性質の薬液を流した場合であっても金属の溶出を抑制できる表面とすることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る管継手1によれば、管4を流れる流体や管4の静電気による帯電を抑えると共に、金属の溶出を抑えることができる。
なお、上述の実施形態は一例であり、各構成の修正及び変更は可能である。本発明の技術的範囲は、請求の範囲の記載に示されるものであり、上述の実施形態に係る各構成の修正及び変更は、請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる限り、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 管継手
11 雄ネジ
12 外壁面
13 フランジ
14 ビス穴
21 テーパ径孔部
211 開口端
22 大径孔部
221 大径孔部の内壁面
23 小径孔部
231 小径孔部の内壁面
24 段差面
25 突起
3 袋ナット
4 管
51 フロントリング
52 バックリング
61 ビス
62 アース配線
71 磁石
72 磁石