(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】医療用圧迫器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/132 20060101AFI20220510BHJP
A61F 5/30 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B17/132
A61F5/30
(21)【出願番号】P 2018198978
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518178752
【氏名又は名称】國枝 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100153811
【氏名又は名称】青山 高弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186831
【氏名又は名称】梅澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】國枝 武彦
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0271541(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206298(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035440(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0198052(US,A1)
【文献】国際公開第2018/008607(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0280541(US,A1)
【文献】中国実用新案第204814035(CN,U)
【文献】登録実用新案第3159768(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/132
A61F 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧迫部位に接触する圧迫部と、
帯状の支持固定帯と、
前記支持固定帯の両端部を、前記圧迫部を介して接続し、前記圧迫部位側を内側にして全体を閉じた形状とする紐状部材と、
前記紐状部材の巻取り及び繰り出しにより、
前記圧迫部の前記圧迫部位に対する圧力を調節する調節部と、を備える医療用圧迫器具。
【請求項2】
前記調節部は、前記支持固定帯の前記両端部の一方側に固定され、
前記紐状部材は、前記調節部から、前記圧迫部、前記両端部の他方側、及び前記圧迫部の順にそれぞれ少なくとも2か所で貫通して、前記調節部に戻る経路で配線される、請求項1に記載の医療用圧迫器具。
【請求項3】
前記紐状部材は、前記両端部の一方側と前記圧迫部との間、及び前記両端部の他方側と前記圧迫部との間において、それぞれ交差する経路で配線される、請求項1又は2に記載の医療用圧迫器具。
【請求項4】
前記調節部は、内部にリールを備えた調節ダイヤルとして前記支持固定帯の一部に備え付けられ、前記調節ダイヤルの回転により、前記紐状部材を巻き取り、前記調節ダイヤルの反対方向への回転により、前記紐状部材を繰り出す、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の医療用圧迫器具。
【請求項5】
前記圧迫部は、
前記紐状部材が下面から上面へと貫通する開口を有する取付部と、
前記取付部の前記下面に一端が取り付けられた弾性部材と、
前記弾性部材の他端に取り付けられた接触部材と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1
~4のいずれか一項に記載の医療用圧迫器具。
【請求項6】
前記調節部は、
バッテリーと、
スイッチと、
前記紐状部材が巻き付けられ、前記スイッチの操作に応答して、前記バッテリーの動力により与えられる回転により前記紐状部材の巻き取り及び繰り出しを行うリールと、
をさらに備える請求項1~5のいずれかに記載の
医療用圧迫器具。
【請求項7】
前記支持固定帯に連なって、前記支持固定帯を装着している腕の血流音を検出する音響センサーと、
前記血流音を解析して、前記圧迫部による前記
圧迫部位への圧迫を強めるか否かを判定し、前記リールを回転して、圧迫を強める場合に前記紐状部材を巻き取り、圧迫を弱める場合に前記紐状部材を繰り出す制御部と、
をさらに備える請求項6に記載の医療用圧迫器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用圧迫器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液透析においては、血液を血管内から取り出して透析回路を経由して、再び血管内に返すためのバスキュラーアクセス(以下「VA」という。)が必要となる。VAには、自己血管を用いた内シャント(AVF:ArterioVenotus Fistila)、人工血管使用の内シャント(AVG:ArterioVenolis Graft)、及び動脈表在化がある。透析終了時の返血作業では、VAからA側、V側の2箇所の透析用留置針を抜針した後に、穿刺部の止血処置に入ることになる。VAの中でもAVFでは、原則として患者がAVFの腕とは反対の腕でもって圧迫止血(以下「自己止血」という。)を行うことになるが、それ以外のVAにおいては医療スタッフによる用手的な圧迫止血を要している現状がある。そこで用手的な圧迫止血を完全に代替できる医療器具があれば、このような問題を解決できると見込まれる。
【0003】
特許文献1には、非伸縮性もしくは低伸縮性の繊維、不織布或いはフィルム等からなる帯体の所定位置に硬質ケースを任意の手段で取付け、この硬質ケースの内部に流体を充填することによって膨張可能なバルーンを収容させた圧迫止血ベルトにおいて、上記バルーンに逆止弁を着脱可能に装着させたものであって、上記バルーンと、該バルーンに流体を充填させるための流体供給管および該流体供給管に着脱可能に装着される逆止弁とによって圧迫部を構成し、上記逆止弁を、上記流体供給管の端部に嵌め込みまたはネジ込みによって着脱可能に装着させるとともに、逆止弁と流体供給管との間にパッキン等のシール材を挟み込んだものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の止血ベルトなどによって、止血部位のみを圧迫しかつ圧迫力の調整は可能となっている。しかし、止血部位の調整に煩雑な点があることと、巻き付いたベルトが止血部位以外にも圧迫を加え組織や神経損傷の可能性を否定できない問題があり、圧迫による止血に際して改善すべき点が残されている。本発明は、圧迫の強さを適切かつ容易に調整可能で、対象部位以外への不必要な圧迫を防ぐことを意図したもので、止血に限らず圧迫を必要とする医療分野において対応できる圧迫器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る医療用圧迫器具は、肢体の部位に巻き付くと共に、前記部位に対して一部開いた形状を形成する開口部を備える支持固定帯と、前記支持固定帯の前記開口部を挟んだ両側を連結し、非伸縮性を有する紐状部材と、前記紐状部材に取り付けられ、前記部位に対する接触面を備え、前記紐状部材に加えられる張力により前記接触面を前記部位に押しつけることで圧迫する圧迫部と、前記紐状部材の巻き取り及び繰り出しにより、前記紐状部材の張力を調節する調節部を備える。
【発明の効果】
【0007】
患部等の所望の箇所を適切に圧迫すると同時に圧迫力の精確な調整を可能とする圧迫器具を提供すると共に、圧迫部120と調節部150を分離することにより、圧迫対象部位へのアプローチを容易とし、また、調節行為自体による圧迫位置や圧迫力の誤差を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る医療用圧迫器具の基本的構成を示す。
【
図2】本実施の形態に係る圧迫部による圧迫の態様を示す。
【
図5】本実施の形態に係る医療用圧迫器具の平面図を示す。
【
図6】本実施の形態に係る医療用圧迫器具の側面図を示す。
【
図7】押圧ロッドによる表示ダイヤルへの作用を説明する圧迫部の断面図を示す。
【
図8】ダブルリールの場合の調節部の側面図を示す。
【
図9】ダブルリールの場合の調節部の断面図を示す。
【
図15】逆回転防止機構による調節ダイヤルセットの仕組みを示す。
【
図16】シングルリールの場合の調節部の側面断面図を示す。
【
図17】表示ダイヤルを備えた場合の平面図を示す。
【
図19】調節スライドを備えた支持固定帯の構造を示す。
【
図20】支持固定帯をスライドした後の状態を示す。
【
図21】つまみ付き調節スライドを備えた支持固定帯の平面図を示す。
【
図22】つまみ付き調節スライドを備えた支持固定帯のその他の図を示す。
【
図23】支持固定帯に設けられた調節スライドの概要を示す。
【
図27】止血用途の医療用圧迫器具を装着した態様を示す。
【
図28】マイク用伸縮アームを備えた側面図を示す。
【
図29】マイク用伸縮アームの回転態様の平面図を示す。
【
図30】マイク用伸縮アームの回転態様の側面図を示す。
【
図31】VAの止血の際の圧迫部とマイクロホンの位置関係を示す。
【
図33】自動型の調節部の外観および構成図を示す。
【
図34】自動モジュールの信号処理回路の構成例を示す。
【
図35】圧力自動調節のためのフィードバック回路を示す。
【
図36】左シャント肢における止血時のマイクロフォンを備えた止血用途の医療用圧迫器具の装着例を示す。
【
図37】本器具を肢体に巻き付ける直前の支持固定帯の分離状態を示す。
【
図38】肢体に巻き付けた際の支持固定帯の連結状態を示す。
【
図39】支持固定帯の板バネを用いた連結の仕組みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施の形態に係る医療用圧迫器具の基本的構成を示す。本実施形態に係る医療用圧迫器具は、支持固定帯100と、紐状部材110と、圧迫部120と、調節部150とを備える。医療用圧迫器具の一例として、止血器具を例に挙げて説明する。
【0010】
支持固定帯100は、肢体、体幹等の体の各部位に巻き付くことができる構造である。帯状であっても管状であってもよく、いずれにしても、体の所定の部位の周りに取付可能な構造である。支持固定帯100は、体の部位に巻き付くと共に、この部位に対して一部開いた形状を形成する開口部を備える。
【0011】
支持固定帯100は、患部等の所望の部位に当てて、帯状の態様として体の各部位に巻き付けることで、支持固定する役割を果たす。巻き付ける部位としては、肢体、体幹の他、胸部用、腹部用、背部用、上肢用、下肢用、肩用などがある。支持固定帯100は、使用する部位に応じて帯の幅と長さが異なる。
【0012】
材質は、硬性と軟性に分かれており、用途によって使い分けることができる。支持固定帯100を硬性とした場合、ポリカーボネート製であり、力を加えるとたわむ。支持固定帯100を軟性とした場合、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン製であり、弾性にて伸縮する。支持固定帯100を硬性・軟性にした場合、下記それぞれの利点がある。
【0013】
硬性の場合、土台として硬い素材を用いていることより、安定性を高くしたい場合に、支持固定体による全周性の締め付けが強くなりすぎない特徴を有する。この土台の安定性に起因して、圧迫部による精度の高い圧力の負荷が可能となる。圧迫する部位が正確でなく適切な圧迫力を負荷できない場合には、種々の医学的問題が生じる。例えば、圧迫止血する場合においては、不完全な圧迫に起因する血種、血管の瘤化、仮性動脈瘤形成、血管閉塞等のリスクにつながる。材質は、耐熱性に優れ、強度も高い特徴のプラスチック樹脂であるポリカーボネートである。力を加えるとたわむ性質を有する。上肢または下肢を挟み込むように取り囲んでいる。調節スライドがあり、上肢・下肢の太さに合わせて長さを変えることができる。
【0014】
軟性の場合、体に密着して装着感が良いことが特徴である。長時間にわたり支持固定する場合や、圧迫部の精度の要求水準が高くない場合に用いる。
【0015】
紐状部材110は、細長く断面の太さに対して長さが十分に大きい部材である。ワイヤーまたは、ヒモ等により構成され、本実施の形態ではワイヤーの場合を例に挙げて説明する。紐状部材110により、支持固定帯100、圧迫部120、調節部150を連結する。紐状部材110は、支持固定帯100の開口部を挟んだ両側を連結し、非伸縮性を有する。
【0016】
調節部内のリールに巻き取られるワイヤー、ヒモは十分な引っ張り強度を持つもので伸縮性はない。素材としてはワイヤーはスチール製、ヒモはナイロン製を主体とする。潤滑材を必要せずにすべりを良くするために、表面には円滑コーティングを施す。また、ワイヤー、ヒモの折り返し部分においてもすべりを損なわないように、他材との接触面積は最小とする工夫をしたり、小型のプーリーを介するものとする。ワイヤーが、他材に空けられた孔を通じて配線される場合は、抵抗なく円滑に巻き取られるために、小型プーリーを用いることにより、折り返し部分を円滑にする。
【0017】
圧迫部120は、体の任意の部位を体表から圧迫できる部分である。圧迫部120は、紐状部材に取り付けられ、この部位に対する接触面を備え、紐状部材110に加えられる張力により接触面を前記部位に押しつけることで圧迫する。圧迫部120は、紐状部材110の巻き取り及び繰り出し方向への移動に影響を与えない位置に固定され、紐状部材110の巻き取りにより生じる緊張により、この部位に対して押し付けられる。圧迫部120は、支持固定帯100に紐状部材110を介して連結させることで、圧迫部120に存在するバネの復元力によりピンポイントで直接的な圧迫が可能となる。止血用や虚血圧迫治療用等、広く圧迫を必要とする医療分野への対応を意図している。
【0018】
圧迫部120の形態と構造は、使用目的によって次のように異なる。第1に、圧迫止血のために用いるものがある。具体的には、各種カテーテル治療後のシース抜去、血液透析終了後の透析用留置針抜去の圧迫止血に用いる。対象とする血管の種類、具体的には上腕動脈、橈骨動脈、大腿動脈、透析用のVAに応じて、圧迫部120の大きさや構造が異なる。負荷している圧力の大きさは表示ダイヤルで確認できる。
【0019】
第2に、圧迫治療用:トリガーポイントの虚血圧迫療法に用いる。複数のトリガーポイントに対応できるように、位置の調整が容易となっている。圧迫部120内において、軸部材125の位置調整が容易となっている反面、圧力表示の必要性がないため止血用より構造が単純化されている。次に、
図2~
図7を参照して圧迫部120の具体的構成及び動作について説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る圧迫部による圧迫の態様を示す。圧迫部120は、紐状部材110によって支持固定帯100に連結されており、調節部150の調節により、紐状部材110の緊張を高めていく。一番上が最も弛緩した状態である。圧迫部120が、軸部材125をはさんで体幹と反対側に位置している。すなわち、図中では上側に位置している。
【0021】
紐状部材110を引き締めていくと、真ん中の図のように、紐状部材110の緊張により圧迫部120が下に下がる。さらに引き締めていくと、一番下の図のように、紐状部材110の緊張により圧迫部120がさらに下に下がる。このように圧迫部120が下に下がり、肢体に密着する方向に移動することにより、患部等を圧迫する。
【0022】
このように紐状部材110を引き締めることにより、圧迫部120が体に密着していくと共に、紐状部材110で結びつけている支持固定帯100どうしもさらに縮まり、全体として肢体を引き締めていく。
【0023】
図4は、圧迫部の具体的な構成を示す。圧迫部120が軸部材125を備え、この軸部材125が体に密着していく点を
図2を参照して説明したので、この軸部材125の詳細な構成を
図4を参照して説明する。圧迫部120は、紐状部材110が下面から上面へと貫通する開口を有する取付部122と、取付部122の前記下面に一端が取り付けられた軸部材125と、軸部材125の他端に取り付けられたパッド(接触部材)134と、を備える。
【0024】
軸部材125は、圧縮コイルバネ130を備える。圧縮コイルバネ130は一端が取付部122に取り付けられ、他端がパッド134に取り付けられる。圧縮コイルバネ130は取付部122から押し下げる力を受け、圧縮コイルバネの復元力により、パッド134を押し下げ、パッド134を介して密着した身体を圧迫する。
【0025】
軸部材125は、さらに押圧ロッド124とパッド134を備える。パッド134は体に直接密着するために、体を刺激しない柔らかい素材によって構成される。取付部122の軸部材125に対する反対側には、外枠121が設けられる。押圧ロッド124が取付部122を貫通した部分が外枠121内部に収容される。貫通した押圧ロッド124に係合して作用する各機構もまた外枠121に収容されるが、詳細は後述する。また、
図5以降では、外枠121を外した状態にて説明する。
【0026】
図5は、本実施の形態に係る医療用圧迫器具の平面図を示す。
図4及び
図5に示すように、取付部122に対して軸部材125及び体側と反対側に、外枠121が設けられる。そして、
図4にて説明したように、外枠121の内側に押圧ロッド124が収容される。
図4及び
図5に示した位置関係により、紐状部材110は、調整部150及び支持固定帯100のもう一方との間で、取付部122を貫通する。取付部122には外周129の穴が開いており、設けられた穴を、紐状部材110が、調整部150側から入っていく。
【0027】
紐状部材110は下面から上面へと貫通し、上面の支持固定帯100のもう一方の側へ進み、今度は上面から下面へ貫通して、支持固定帯100のもう一方へ抜ける。支持固定帯100のもう一方で紐状部材110は貫通し、同様に取付部122を貫通して調節部150に戻ってくる。
図6は、本実施の形態に係る医療用圧迫器具の側面図を示す。
図5と
図6に、上述の紐状部材110の通り抜けを示す。
図3はワイヤーの配線図を示す。
図5に示した圧迫部120及び調節部150を備えた構成のうちの、紐状部材110及び調節ダイヤル151のみを残した構成を
図3に示す。調節ダイヤル151の位置から進んで、単純に支持固定体100の対面側を一周して戻ってくるのではなく、まずクロス215にてクロスを形成して戻ってくる側の紐状部材110と交差し、さらに進んでクロス216にてクロスを形成して戻ってくる側の紐状部材110と交差する。その上で支持固定体100の対面側を一周して戻ってくる。このようにして、圧迫部120を紐状部材110で囲む構成とすることにより、紐状部材110の緊張により圧迫部120を体表面に押し当てていく。
【0028】
図7は、押圧ロッドによる表示ダイヤルへの作用を説明する圧迫部の断面図を示す。押圧ロッド124の断端は鋸歯1261が形成されており、取付部122及び外枠121内部を貫通している。外枠121の中では鋸歯1261に歯車1263がかみ合っており、表示ダイヤル1262の表示内容に対応している。具体的には、
図4及び
図6に示したように、体表面によりパッド134から圧縮コイルバネ130に作用すると共に、押圧ロッド124を合わせて押し上げる。これにより押圧ロッド124が取付部122をさらに貫通し、上部よりさらに飛び出ていく。貫通した結果、歯車1263を回転させて、回転した分だけダイヤル表示を回転する。その結果として、圧縮コイルバネ130の復元力を数値で表すことができる。すなわち、正確な圧迫負荷を計測できる。
【0029】
図1の説明に戻り、今度は調節部150について説明する。調節部150は、紐状部材110の巻き取り及び繰り出しにより、紐状部材110の張力を調節する。調節部150は、圧迫部120によるピンポイントで直接的な圧迫力を調節する部分である。調節部150で、紐状部材110(ワイヤー)を巻き取ることで、支持帯、圧迫部、調節部が張力により互いに引っ張られ、支持帯の巻き付けが強くなる。結果として、圧迫部120に存在する圧縮コイルバネ130が皮膚にピンポイントで押し付けられる。
【0030】
調節部150が備える調節ダイヤルを回すことで、内部のリールが回転しワイヤーが巻き取られ、張力が上がる。逆に回すことで紐状部材110が巻戻され、張力が弱まる。調節ダイヤルを回す手段により手動型(手でダイヤルを回す)、電動型(スイッチにより電動でダイヤルを回す)、自動型(センサーで感知し、自動でダイヤルが回る)に分類される。
【0031】
調節部150で紐状部材110を巻き取れば、支持固定体100が内側に変位するので、支持固定体に囲まれている肢体は締め付けられる。その結果、圧迫部120は内側により変位することとなり内側に押しつけられる力が増加する。
【0032】
調節部150は、支持固定帯100を体の所望の部位に巻き付けるときの両端を結びつけることで、支持固定帯100により巻き付けた部分の内径を伸縮することにより、支持固定帯100による圧迫を調節する。
【0033】
調節部150で、ワイヤー(紐状部材110)を巻き取ることで、支持固定帯100、圧迫部120、調節部150が張力により互いに引っ張られ、支持固定帯100の巻き付けが強くなる。結果として、圧迫部120に存在するバネが皮膚にピンポイントで押し付けられる。このように調節部150は、圧迫部120によるピンポイントで直接的な圧迫力を調節する部分である。調節ダイヤルを回すことで、内部のリールが回転しワイヤーが巻き取られ、張力が上がる。逆に回すことでワイヤーが巻戻され、張力が弱まる。
【0034】
手動型の場合、調節部150は、調節ダイヤルを右に回すことで、内部のリールも右回転しワイヤーが巻き取られる。そうすると支持固定帯100が内側にたわみ、圧迫部120のパッドが皮膚の止血部位に押し付けられる。そのままバネが圧縮され、その復元力が圧迫力となる。調節ダイヤルを左に回すと、上記と反対の流れで圧迫力が弱まることになる。
【0035】
調節部150と紐状部材110の組み合わせには、次のバリエーションがある。調節部の第1の例は、二連リールを用いたダブルリール機構で、紐状部材110を両端から巻き取ることができる。第2の例として、シングルリール機構で、紐状部材110の片端から巻き取ることができる。この場合、ワイヤー断端を他の物体に固定しもう一方の断端を一連リールで巻き取る構成にするだけで足りる。
【0036】
図8は、ダブルリールの場合の調節部の側面図を示す。
図9は、ダブルリールの場合の調節部の断面図を示す。調節部150には、調節ダイヤル151と外枠152が備えられ、調節ダイヤル151を回すことでワイヤー110の緊張及び弛緩を調節すると共に、外枠152の中に内部機構を収容する。外枠152の中には、二連リール153と回転クリック機構154が収容されている。
【0037】
図10は、ダブルリールの場合の回転機構を示す。左に五角形のつまみの部分を示し、右に示す内部構造のように、二連リール153のそれぞれに対して2つの紐状部材110がそれぞれ取り付けられ、同じ方向に調整ダイヤル151を回転したときに、それぞれリール内で収容され、繰り出されていく。調節ダイヤルを回すと、リールも同じ方向に回転する。
図11は、ワイヤー断端の固定方法を示す。リールの中央回転体にワイヤー固定のための環状構造がある。ワイヤーはその穴を通り、断端がこぶ状となって固定される。
【0038】
図12は、クリック板と鋸歯状構造を示す。外枠152の中にはクリック板156及び鋸歯状構造158が収容され、調節ダイヤル151が回転するごとに、クリック板156が鋸歯状構造158にかみ合って、カチ、カチという音がする。調節ダイヤルを回すと、クリック板が、外枠の鋸歯状構造に接触して、クリック音が鳴る。
【0039】
図13は、回転クリック機構を示す。調節ダイヤル151に、図示するようにクリック板156、外側の鋸歯状構造157及び鋸歯状構造158が収容されている。
図13左は後述する逆回転防止機構が作動せず時計回り・反時計回りどちらにも回転できる状態を示す。
図13右は逆回転防止機構がおりて、時計回りの方向、つまり巻き取る方向にしか回転できない状態を示す。
【0040】
図14は、逆回転防止機構を示す。
図14に調節ダイヤル151内部の概要が示され、左が調節ダイヤルセット前、右が調節ダイヤルセット後の構成を示している。調節ダイヤル151内部に逆回転防止機構200が収容されている。逆回転防止機構200として調節ダイヤルが下に移動する軌道となるスリットを指している。調節ダイヤルがセットされていない状態のとき、左図に示すように逆回転防止機構200となる調節ダイヤル裏面に組み込まれている突起が上に上がっている。調節ダイヤルを時計回りに回転させると、右図に示すように、調節ダイヤルが200に沿って下に降りて調節ダイヤル裏面に組み込まれている突起も降りて、クリック板の動作を一方向に制限するので、反時計回りには回転しないこととなる。
【0041】
図15は、逆回転防止機構による調節ダイヤルセットの仕組みを示す。具体的には、逆回転防止機構が作動するために、調節ダイヤルが下りてくる仕組みであり、ダイヤル側面の突起と、それにはまり込むスリットの関係を示す。
図14右図に示すように調節ダイヤル151がセットされた場合、
図15上図に示した状態となる。このとき、
図15下図に調節ダイヤル151がセットされた状態を示すように、一方向にしか回転できないように固定される。調節ダイヤル151には内側に出っ張り、中心構造にはスリットがあり、はまり込む構造が形成されている。
図15に示すように、それが円周上に三カ所ある。調節ダイヤル151下面3カ所に配置された逆回転防止機構200が、ダイヤルを回転させると下りて、クリック板の可動を制限する。
【0042】
ワイヤー巻き取りにおいて、巻き取るワイヤー長が大きすぎるとよりリールを回転させる必要があるため、巻き取り時間も長くなる問題がある。これを解決する機構として、クイック調節機構とすることにより、リール回転前に、調節ハンドルを引っ張ってワイヤーをある程度引き込んでから、リール回転に移ることで、巻き取り時間を大幅に短縮できる。巻き取りを速やかにすることができる。
【0043】
図16は、シングルリールの場合の調節部の側面断面図を示す。調節部150に備えられた調節ダイヤル151を回すことでワイヤー110の緊張及び弛緩を調節する。調節部150には、一連リール210と回転クリック機構154が設けられている。
【0044】
図17は、表示ダイヤルを備えた場合の平面図を示す。
図7に示したように、押圧ロッド124の係合動作により表示ダイヤル1262の目盛りが増減する点について説明したが、
図17ではこの表示ダイヤル1262を平面図としてみた場合について示している。
図17に示すように、体重計のような数字と目盛りが設けられており、押圧ロッド124の作用により、目盛りの表記が左右に動く。
【0045】
調節部の基本型は、二連リールを用いたダブルリール機構である。しかし、ワイヤーを一本で構成する場合においては、ワイヤー断端を他の物体に固定しもう一方の断端を一連リールで巻き取ることだけで、用途を達成できる。
【0046】
(クイック調節機構)
図18は、クイック調節機構を示す。上述の調節部150に調節ハンドル225を備えた構成を示している。調節ハンドル225により、クイック調節操作を行う。ワイヤー巻き取りにおいて、巻き取るワイヤー長が大きすぎるとよりリールを回転させる必要があるため、巻き取り時間も長くなる問題がある。
【0047】
これを解決する機構として、リール回転前に、調節ハンドル225を引っ張ってワイヤーをある程度引き込んでから、リール回転に移ることで、巻き取り時間を大幅に短縮できる。巻き取りを速やかに行う場合に適用となる。シングルリール機構での使用を前提としている。クイック調節機構を設けることにより、リール初期状態において、ワイヤー入口と出口は一直線上となるので、抵抗なくワイヤー引き込みが可能となる。一旦リールが回転すると、ワイヤーが巻き付くので、もはや引き込むことは不可能となる。
【0048】
以上、調節部150についてまとめると、回転クリック機構については、クリック板を長くしたり、トーションバネを用いることで、回転時の抵抗とする予定である。調節ダイヤルを右に回すと、ワイヤーがリールに巻き取られることになるが、逆回転防止機構がスリットに沿って下に降りてクリック板の動きを制限するので、そのまま右回転しかできなくなる。調節ダイヤルを左に回すと、逆回転防止機構がスリットに沿って上に戻るので、クリック板の可動が自由となり、左に自由に回せる。ダイヤルの固定は、ダイヤルを軽く右に回し、逆回転防止機構を下した状態で行う。
【0049】
調節部150により巻き取られたワイヤーにより、支持固定体100が腕方向にたわみ、圧迫部120のバネが圧縮され、その復元力により、止血対象部位等が圧迫される。バネの縮みの分だけ、反対方向に押圧ロッドが出る。押圧ロッドの飛び出た長さを、歯車を経由して表示ダイヤル上の数値で示すことになる。あらかじめバネの圧縮割合を圧力(mmHg等)に換算計算しているので、バネの縮み=復元力を正確に表示できる。
【0050】
図19は、調節スライドを備えた支持固定帯の構造を示す。支持固定帯100にその他各部を装着した状態でももちろん本実施の形態に係る効果を奏することはできるが、装着者の体形や、装着部位によっては、支持固定帯100が適切に装着できない場合もあるので、調節スライド230によって、支持固定帯100のサイズ調節を可能にする。
図20は、支持固定帯をスライドした後の状態を示す。
図19に示す支持固定帯100を調節スライド230によって伸ばした状態を
図20に示す。
【0051】
図21は、つまみ付き調節スライドを備えた支持固定帯の平面図を示す。つまり支持固定帯100を側部から見たときの状態を示す。また
図22は、つまみ付き調節スライドを備えた支持固定帯のその他の図を示す。
図21及び
図22に示すように、側部のつまみによって調節スライド230をスライドさせて、支持固定帯100の長さを調節する。このつまみ部分を押したときにスライド可能となり、戻したときに位置固定され、それにより長さが固定される。
【0052】
図23は、支持固定帯に設けられた調節スライドの概要を示す。つまみと支持固定帯100の間に板バネが設けられ、この板バネの弾性力により、調節スライド230の固定及び移動可能状態を変更する。
図23に示すように、つまみ部分を押すことで板バネが縮み、ロックが外れて、スライド可能となる。
【0053】
図24は、支持固定帯のたわみの様子を示す。支持固定帯100の内側に屈曲する仕組みを説明する。支持固定帯100の曲がりやすさには、一番左が曲がりやすく、左から2番目がその次、左から3番目がその次、一番右が一番曲がりにくい、という順序で差がある。切れ目の大きさまたは支持帯の幅が異なるためである。ワイヤーに引っ張られる力が強くなるにしたがって上記の様に曲がっていく。これにより支持帯による皮膚への締め付け部位が分散でき、効果的に圧迫部のバネが皮膚に接触できる。
【0054】
以上の各部を備えた医療用圧迫器具の実際の使用方法を、主に手動型について説明する。まず事前の準備として、支持固定帯100は、連結部を外し直線状にしておく。通常の抜針行為において、皮膚穿刺部に右手親指でガーゼを軽く押し当てる。左手で留置針を素早く抜く。抜くと同時に右手親指でガーゼを強く圧迫する。圧迫力が弱いとガーゼに血がにじんでくるので判別できる。
【0055】
本器具による止血行為として、右手親指でガーゼを強く圧迫したまま、左手で本器具を把持し、圧迫部の上に左手親指を当てておく。圧迫部120のパッドが、右手親指の直上に来るように移動する。ガーゼを穿刺部に押し当てた状態のまま、右手親指を離す。同時に左手親指をそのまま下におろし、パッドをガーゼに押し当てる。
【0056】
次に、左手親指を、皮膚穿刺部方向に強く押し込む。この時、左手親指は圧迫部ごと、上から強く押さえつけて圧迫止血していることになる。空いた右手で、本器具の支持固定帯と圧迫部を連結する。左手親指による圧迫を徐々に緩めていくのと同時に、右手で調節ダイヤルを回し、圧迫力が下がらないようにする。この時、ガーゼに血がにじんでこないことを確認する。血がにじんでくれば圧迫力が弱いことになるので、右手で調節部の調節ダイヤルを回し、圧迫力を強くする。以上を踏まえ、最後に左手親指を完全に離す。
【0057】
最終的な確認としてVAの血流音(以下、シャント音とする)の聴診を行う。聴取したシャント音の大きさにより、適宜調節ダイヤルで圧迫力を調節し、シャントが閉塞しないようにする。以上の手順にて終了となる。所定の止血時間の経過後、調節ダイヤルを回して圧迫力を徐々に弱め、再出血しないことを確認。連結部で分離し、支持固定帯を取外して終了する。
【0058】
次に、調節部150を手動型に替えて電動型にした場合の構成例について説明する。
図25は、電動型の調節部を示す。調節部150は、モーター・ギアボックスの他、ダブルリール、バッテリー310を備える。
図26は、電動型調節部の外観および構成図を示す。
図26左は電動型調節部の外観、
図26右は内部の構成図を示す。ミニモーターはDCモーターを使用し、バッテリー310は充電式とする。ギアボックスは低速ギア(減速機)を使用する。
【0059】
調節部150はさらに、スイッチ320と、紐状部材110が巻き付けられ、スイッチの操作に応答して、バッテリー310の動力により与えられる回転により紐状部材110の巻き取り及び繰り出しを行うリール340をさらに備える。スイッチ320は、押し続けることで作動するものとし、+ボタンはリール340の巻き上げ、-ボタンは巻き戻しの動作となる。
【0060】
以上のようなバッテリー310を用いた電動型の構成にすることにより、手動で調節するのに比べて、スイッチ操作によって圧迫の度合いをより詳細に調節することができる。そこで次に、スイッチ操作をしなくても圧迫の自動調節を実現する自動型の構成例について説明する。
【0061】
図27は、止血用途の医療用圧迫器具を止血のために右シャント肢に装着した態様を示す。
【0062】
図28は、マイク用伸縮アームを備えた側面図を示す。支持固定帯100には、マイクロフォン用の伸縮アームを付属する。
図29は、マイク用伸縮アームの回転態様の平面図を示す。
図30は、マイク用伸縮アームの回転態様の側面図を示す。
図31は、左シャント肢における止血時の圧迫部とマイクロフォンの位置関係を示す。圧迫部とマイクロフォンの位置関係として、マイクロフォンは、圧迫部による止血部位より、約30mm下流に位置する。
【0063】
このように配置することにより、圧迫止血による血管の閉塞度合に応じて血流が少なくなり、比例して血流音(シャント音)も低下することを考慮した最適な位置とすることができる。
図28~
図33に示す自動型の医療用圧迫器具では、このように音響センサーの一例であるマイクロフォンを備える。音響センサーは、支持固定帯100に連なって、支持固定帯100を装着している腕の血流音を検出する。
【0064】
図32は、自動型の調節部を示す。
図33は、自動型の調節部の外観および構成図を示す。左は自動型調節部の外観、
図33右は内部の構成図を示す。調節部150として、電動型の構成に、制御基板ボックスとマイクロフォン(音響センサー)が加わる。制御基板ボックスは、アンプ、制御回路、出力回路より構成される
【0065】
図34は、自動モジュールの信号処理回路の構成例を示す。
図35は、圧力自動調節のためのフィードバック回路を示す。あらかじめ、最低限度となるシャント音(=閾値)を、感度調節つまみにより設定しておく。各図に示す回路にてシャント音は閾値を維持させる。本実施形態に係る医療用圧迫器具はこのように、
図32~
図34の各部に示すように、この血流音を解析して、圧迫部120による圧迫部位への圧迫を強めるか否かを判定し、リール340を回転して、圧迫を強める場合に紐状部材110を巻き取り、圧迫を弱める場合に紐状部材110を繰り出す制御部をさらに備える。
【0066】
(音量について)
高感度のマイクロフォンを用いており、スピーカーにシャント音を出力できる。また、聴診器と比較して10倍程度まで音量の増幅が可能となっている。この場合、一番小さなレベルであるレベル1が通常の聴診器と同等の音量となる。
【0067】
(シャント音周波数特性)
シャント血流音の基本周波数は0~500Hz帯域であるので、パスフィルタによりこの帯域を中心に感知するように設計する。これは、外部音混入によるノイズ対策としても働く。マイクロフォンの形状としては、通常の聴診器と同様にチェストピース(皮膚に直接あてる部分)を構成している。
【0068】
音響センサーとしては直径10~15mmのコンデンサマイクロフォンの他、MEMS素子(シリコンマイクロフォン)を用いることで小型化を図ることも検討している。MEMS素子だと高圧蒸気滅菌にも耐久可能となるメリットがある。その他、シャント血流による音の代わりに、振動を皮膚から検出することでも自動的に止血可能と見込まれるので、振動センサーを使用してもよい。
【0069】
シャント音を分析することで、シャント狭窄を早期に検出できる可能性が報告されている。そこで、追加機能として、シャント音の録音と保存機能の他、Bluetooth(登録商標)通信機能をオプションとして用意してもよい。これにより、シャント音をパソコンにワイヤレス転送し、市販のソフトウェアを用いて、パソコン上でのシャント音再生・グラフ表示、周波数解析等のデータ解析に役立てることを期待できる。
【0070】
図36は、マイクロフォンを備えた止血用途の医療用圧迫器具を、右シャント肢に装着した態様を示す。
図36に示すように、支持固定帯100が腕での周囲に装着され、圧迫を加えたい部位に圧迫部120が設けられている。そして既に説明したようにマイクロフォンが血流を測定可能な位置へと延びている。
【0071】
図37、
図38、
図39は、調節部と支持固定帯の連結の状態を示す。板バネが調節部先端に付属しており、押すことで板バネが縮み取り外すことが可能となる。
図37は、本器具を肢体に巻き付ける直線の支持固定帯の分離状態を示す。
図38は、肢体に巻き付けた際の支持固定帯の連結状態を示す。
図39は、支持固定帯の板バネを用いた連結の仕組みを示す。
【0072】
上述の実施の形態によれば、所定の部位を圧迫する、圧迫を弱めるというだけでなく、圧迫の度合いを定量的に調整することができる。通常の患部への圧迫は、感覚的に強い、弱い、と言う程度でしか圧迫を調節することができなかったところを、調節部150により定量的に圧力を調節することができるので、一旦支持固定帯100を体の部位から外した後でも、一度調節した量に圧迫の度合いを調節することにより、直ちに同じ圧迫量に合わせることができる。
【0073】
また、圧迫部120による圧迫を調節する調節部150を設ける場合、通常は調節の対象である圧迫部120に直接設けることになるが、調節部150を操作する際に圧迫部120を手で押し付けることになってしまう。そこで圧迫部120と調節部150を紐状部材110を介して連結することにより、調節部150を圧迫部120から離して、例えば支持固定帯100に設ける。
【0074】
このように、圧迫部120と調節部150を分離することにより、圧迫部120を直接押し付けてしまうことによる、患部への不必要な刺激を防ぐことができる。また、対象部位に正確な圧力を付加できる仕組みを提供することができる。締め付けることで圧迫を加えることができるので、締め付け可能な部位なら、どんな部位も対象として圧迫を加えることができる。従来は特にサポーターのような形で圧迫してきたが、その締め付け方を、リールや配線などを利用することにより実現することができた。
【0075】
さらに、既に微調整された状態を手で触れることで誤った位置に動かしてしまうことを防ぐことができる。症状によって一定の圧迫度合いにより圧迫し続けることが必要な場合もあり、手で触れた結果適切に調節された配置がずれることもある。調節部150を支持固定帯100側に配置することにより、誤操作をなくすことができる。
【0076】
以上のように、紐状部材110を用いた支持固定帯により、体表の任意の部位をピンポイントで圧迫できる。原理上、支持固定帯100を巻き付けることができれば圧力を負荷できるため、多方面に応用可能である。圧迫が有効なすべての医療上の場面において、広く対応できる。特に、下記の用途に対応することができる。
<1>医療用サポーターとして使用できる。
<2>検査・処置上の出血場面に使用できる。
血液透析終了時における留置針抜去後の止血にも使用可能
【0077】
以上,本発明について実施例を用いて説明したが,本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施例に,多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが,特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0078】
支持固定帯100、紐状部材110、圧迫部120、取付部122、
押圧ロッド124、弾性部材125、圧縮コイルバネ130、
パッド134、調節部150