(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】海苔簀張設具
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20220510BHJP
【FI】
A23L17/60 103G
(21)【出願番号】P 2018238457
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000210241
【氏名又は名称】竹下産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】諌山 光雄
(72)【発明者】
【氏名】桁山 広利
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-041191(JP,U)
【文献】実開平05-031594(JP,U)
【文献】特開昭57-105169(JP,A)
【文献】特開2017-020592(JP,A)
【文献】実開昭57-054293(JP,U)
【文献】実開昭56-173096(JP,U)
【文献】特開平09-107928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
F16F 1/00-6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海苔簀を簀枠に張設するために用いられる海苔簀張設具において、
海苔簀に係止する係止部と、海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢しながら簀枠に保持される付勢部とを、一体的に形成
し、
付勢部は、簀枠を挟持する一対のバネ片で海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢し、
バネ片は、海苔簀から離反する方向(バネ片の先端)に向けて幅を細くし、先端を簀枠側に折曲したことを特徴とする海苔簀張設具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔製造機で海苔生地から乾燥海苔を製造する際に海苔簀を簀枠に張設するために用いられる海苔簀張設具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より乾燥海苔は、海苔製造機に設けられた抄製装置で海苔簀に海苔生地を抄製した後に、海苔製造機に設けられた乾燥装置で海苔生地を乾燥させることによって製造される。海苔製造機では、複数枚の海苔簀を横に並べた状態で1個の簀枠に張設し、簀枠ごと複数枚の海苔簀を抄製装置や乾燥装置に順次搬送することで、大量の乾燥海苔を連続して製造するようにしている。
【0003】
そして、簀枠には、各海苔簀が海苔簀引張具を用いて適度な引張力を保持しながら張設されている。従来の海苔簀引張具としては、海苔簀に係止する係止体と、海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢するバネを有する付勢体とを、それぞれ別体に形成し、係止体に付勢体を取付けた構成となっていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の海苔簀引張具では、海苔簀に係止する係止体と海苔簀を簀枠側に引張する付勢体とがそれぞれ別体に形成されていたために、係止体に付勢体を取付けて製作する必要があり、海苔簀引張具の製作コストが増大するとともに、長期使用によって係止体と付勢体との取付部分が破損してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、海苔簀を簀枠に張設するために用いられる海苔簀張設具において、海苔簀に係止する係止部と、海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢しながら簀枠に保持される付勢部とを、一体的に形成し、付勢部は、簀枠を挟持する一対のバネ片で海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢し、バネ片は、海苔簀から離反する方向(バネ片の先端)に向けて幅を細くし、先端を簀枠側に折曲することにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、本発明では、海苔簀を簀枠に張設するために用いられる海苔簀張設具において、海苔簀に係止する係止部と、海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢しながら簀枠に保持される付勢部とを、一体的に形成することにしているために、海苔簀張設具の製作コストを低減することができ、海苔簀張設具の寿命を延ばすことができる。
【0011】
特に、簀枠を挟持する一対のバネ片で海苔簀を簀枠側に引張する方向に付勢することにした場合には、海苔簀を簀枠側に良好に安定して引張することができる。
【0012】
また、海苔簀から離反する方向に向けてバネ片の幅が細くなるようにした場合には、海苔簀を簀枠側に引張する引張力を適度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】海苔製造機を示す模式図(a)、簀枠に張設した海苔簀を示す模式図(b)。
【
図2】簀枠に海苔簀張設具を介して海苔簀を張設した状態を示す拡大説明図。
【
図3】海苔簀張設具を示す正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)。
【
図4】海苔簀張設具の使用状態を示す正面図(a)、側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る海苔簀張設具の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。本発明に係る海苔簀張設具は、海苔製造機で海苔生地から乾燥海苔を製造する際に海苔簀を簀枠に張設するために用いられるものである。
【0015】
図1に示すように、海苔製造機1は、製造機2と乾燥機3とを前後に並べて配置している。これら製造機2及び乾燥機3には、複数枚の海苔簀4を左右幅方向に並べて着脱自在に張設した簀枠5を間欠的に搬送するための間欠搬送装置6,7,8が設けられている。
【0016】
海苔簀4は、簀枠5ごと製造機2の間欠搬送装置6で製造機2の上部前端から上部後端まで搬送された後に、製造機2の間欠搬送装置6から乾燥機3の上側の間欠搬送装置7に受け渡される。その後、海苔簀4は、簀枠5ごと乾燥機3の上側の間欠搬送装置7で乾燥機3の上部前端から上部後端まで搬送された後に、乾燥機3の上部後端で下方に折り返され、乾燥機3の中途部後端から中途部前端まで搬送され、乾燥機3の中途部前端で乾燥機3の上側の間欠搬送装置7から下側の間欠搬送装置8に受け渡される。その後、海苔簀4は、簀枠5ごと乾燥機3の下側の間欠搬送装置8で乾燥機3の中途部前端から中途部後端まで搬送された後に、乾燥機3の中途部後端で下方に折り返され、乾燥機3の下部後端から下部前端まで搬送され、乾燥機3の下部前端で乾燥機3の下側の間欠搬送装置8から再び製造機2の間欠搬送装置6に受け渡される。その後、海苔簀4は、簀枠5ごと製造機2の間欠搬送装置6で製造機2の下部後端から下部前端まで搬送された後に、製造機2の下部前端で上方に折り返される。これにより、海苔製造機1には、海苔簀4を簀枠5ごと連続して搬送する搬送経路が形成されることになる。
【0017】
搬送経路には、製造機2に設けた抄製装置9、脱水装置10、乾燥機3に設けた乾燥装置11、製造機2に設けた剥離装置12が順に配置されている。
【0018】
そして、海苔製造機1は、間欠搬送装置6,7,8、抄製装置9、脱水装置10、乾燥装置11、剥離装置12を連動して動作するよう制御している。すなわち、海苔製造機1は、複数の海苔簀4を簀枠5ごと搬送経路に沿って搬送していき、抄製装置9で各海苔簀4の上面に生海苔と水分とからなる海苔生地を所定形状(たとえば、正方形)に抄製した後に、脱水装置10で海苔生地の脱水を行い、その後、乾燥装置11で海苔生地を熱風によって強制的に乾燥させて乾燥海苔とした後に、剥離装置12で各海苔簀4から乾燥した乾燥海苔を剥離し、その後、再び海苔簀4を簀枠5ごと抄製装置9に搬送する動作を連続して繰り返し行う。これにより、海苔製造機1は、海苔生地から乾燥海苔を連続して、しかも、複数枚の乾燥海苔を同時に製造する。
【0019】
この海苔製造機1においては、海苔簀4に海苔生地を抄製した後に乾燥させて乾燥海苔を製造するために、海苔簀4を簀枠5に適度の引張力で張設する必要がある。そのため、海苔簀4は、
図2に示すように、簀枠5に海苔簀張設具13と海苔簀係止具14とを介して張設されている。
【0020】
海苔簀張設具13は、
図2及び
図3に示すように、海苔簀4に係止する係止部15と、簀枠5を挿通する挿通部16と、海苔簀4を簀枠5側に引張する方向に付勢しながら簀枠5に保持される付勢部17とを、一枚の薄板状の弾性素材(金属板)から一体的に形成している。
【0021】
係止部15は、海苔簀張設具13の前端部分を鋭角状に折り返して側面視略V字状に形成し、海苔簀4の端部に挿入して海苔簀4を係止できるようになっている。
【0022】
挿通部16は、海苔簀張設具13の左右側部の後端部分を円弧状に折り返すとともに、折り返した先端部分も円弧状に折り返して、簀枠5の直径よりも上下及び左右に広い側面視略横長円環状に形成し、側面視略U字状に形成された後端部の弾性(バネ力)を利用して先端部分を持ち上げて、内側に簀枠5を挿通させることができるようになっている。挿通部16は、側面視略横長円環状に形成しているために、先端部分と後端部分との間で簀枠5が移動できるようになっている。
【0023】
付勢部17は、挿通部16の先端部分の上部と下部に後方へ向けて伸延させた一対の上下対称形状のバネ片18,19を形成し、これらの一対のバネ片18,19の弾性(バネ力)を利用して海苔簀4を簀枠5側に引張する方向に付勢しながら簀枠5に保持されるようになっている。
【0024】
各バネ片18,19は、使用状態において海苔簀4から離反する方向に向けて伸延するとともに、簀枠5側(内側:上方のバネ片18は下側、下方のバネ片19は上側)に折曲して、海苔簀4から離反する方向(簀枠5に近接する方向)に沿って一対のバネ片18,19による挟持力が強くなるようにしている。各バネ片18,19の幅は、同一幅であってもよいが、ここでは、海苔簀4から離反する方向に向けて幅が細くなるようにしている。幅の変化は、連続的であっても段階的であってもよい。また、各バネ片18,19の長さは、先端が付勢部17(挿通部16)の先端部分まで伸延させた長さとしており、簀枠5が付勢部17(挿通部16)の先端まで移動しても各バネ片18,19の内側面が簀枠5の外周面に当接するようにしている。なお、バネ片18,19は、海苔簀4を簀枠5側に引張することができればよく、形状や材質などが限定されるものではない。
【0025】
海苔簀張設具13は、
図4に示すように、挿通部16に簀枠5を挿通させた状態で係止部15で海苔簀4を係止させると、付勢部17のバネ片18,19の内側面が簀枠5の外周面に当接し、一対のバネ片18,19の弾性(バネ力)によって簀枠5に対して海苔簀4を引張する方向(
図4(b)に矢印で示す方向)に張力が働き、海苔簀4を簀枠5に張設することができる。
【0026】
なお、海苔簀係止具14としては、海苔簀張設具13の付勢部17を無くして係止部15と挿通部16だけからなる構成のものを用いることができる。
【0027】
以上に説明したように、上記海苔簀張設具13は、海苔簀4に係止する係止部15と、海苔簀4を簀枠5側に引張する方向に付勢しながら簀枠5に保持される付勢部17とを、一体的に形成した構成となっている。
【0028】
そのため、上記構成の海苔簀張設具13では、構造を簡素化することができ、海苔簀張設具13の製作コストを低減することができるとともに、破損しにくい構造となって海苔簀張設具13の寿命を延ばすことができる。
【0029】
また、上記海苔簀張設具13は、簀枠5を挟持する一対のバネ片18,19で海苔簀4を簀枠5側に引張する方向に付勢する構成となっている。
【0030】
そのため、上記構成の海苔簀張設具13では、一対のバネ片18,19で簀枠5を挟持した状態のまま(簀枠5に一対のバネ片18,19で均等に力をかけた状態)で海苔簀4を簀枠5側に引張させることになり、海苔簀4を簀枠5側に良好に安定して引張することができる。
【0031】
さらに、上記海苔簀張設具13は、海苔簀4から離反する方向に向けてバネ片18,19の幅が細くなるように構成している。
【0032】
そのため、上記構成の海苔簀張設具13では、バネ片18,19の幅に応じて海苔簀4を簀枠5側に引張する引張力を適度に調整する(変化させる)ことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 海苔製造機 2 製造機
3 乾燥機 4 海苔簀
5 簀枠 6,7,8 間欠搬送装置
9 抄製装置 10 脱水装置
11 乾燥装置 12 剥離装置
13 海苔簀張設具 14 海苔簀係止具
15 係止部 16 挿通部
17 付勢部 18,19 バネ片