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特許7068705機械方向にエンボス加工することで紙製品に溝形状を加工するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】機械方向にエンボス加工することで紙製品に溝形状を加工するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/07 20060101AFI20220510BHJP
   D21H 25/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B31F1/07
D21H25/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018549817
(86)(22)【出願日】2017-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2017023611
(87)【国際公開番号】W WO2017165534
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2019-12-17
(31)【優先権主張番号】15/077,250
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517093186
【氏名又は名称】スコアボード,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SCORRBOARD,LLC
【住所又は居所原語表記】1100 SW 27th Street,Renton,WA 98057,USA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーンフィールド,ジャイルズ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104621710(CN,A)
【文献】特開平09-158096(JP,A)
【文献】特開2002-103489(JP,A)
【文献】特開昭58-187337(JP,A)
【文献】特開昭60-027529(JP,A)
【文献】特開昭52-156090(JP,A)
【文献】米国特許第03773587(US,A)
【文献】国際公開第1999/047347(WO,A1)
【文献】特開昭47-041992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F1/00-7/02
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された効率で紙製品を製造する方法であって、本方法は、
機械方向に紙ロールから紙を解巻する工程と、
前記機械方向で、一対またはそれ以上の対のエンボス加工ロール内に解巻された紙を供給する工程であって、エンボス加工ロールの対の各々が、第1の方向に整合した突出刃を有してなると共に、前記解巻された紙を複数の整合した突出刃間で圧搾して、整合した突出刃間で圧搾された紙の一部が恒久的に変形されるように、整合した突出刃から離れた前記解巻された紙の領域に伸ばし(ストレッチ)を生じさせるように構成されている、工程と、
前記エンボス加工ロールによって、前記機械方向で、その紙に連続した溝を加工する工程であって、加工された前記連続した溝は前記伸ばされた領域に対応する、工程と、
を備え、
前記紙ロールから解巻された紙の最初の幅が、溝が加工された後の紙の幅と実質的に同じである、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
板紙製品を形成すべく、溝が加工された紙を1つ以上の追加の紙製品と組み合わせる工程を更に備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械方向で、溝が加工された紙を切断機内に供給する工程、及び、
その溝が加工された紙を1つ以上の間隔で切断する工程、
を更に備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記機械方向で、溝が加工された紙を接着機内に供給する工程、及び、
その溝が加工された紙を1つ以上の表面に接着する工程、
を更に備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記機械方向で、溝が加工された紙を板紙製造機内に供給する工程、
その板紙製造機内に、前記溝が加工された紙と協同的に、溝が加工されていない紙を供給する工程、及び、
前記溝が加工されていない紙に対する前記溝が加工されている紙のテークアップ率がゼロとなる板紙製品を製造する工程、
を更に備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記紙ロールから解巻される紙は、機械方向でのMD値が横断方向でのCD値よりも大きい繊維パターンを備えてなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
改善された効率で紙製品を製造する方法であって、本方法は、
機械方向に紙ロールから紙を解巻する工程と、
前記機械方向で、一対またはそれ以上の対のスコーリング加工ロール内に解巻された紙を供給する工程であって、スコーリング加工ロールの対の各々が、第1の方向に整合したスコーリング加工要素を有してなると共に、前記解巻された紙を複数の整合したスコーリング加工要素間で圧搾して、整合したスコーリング加工要素間で圧搾された紙の一部が恒久的に変形されるように、一つ又はそれ以上のスコーリング加工ポイントから離れた前記解巻された紙の領域に伸ばし(ストレッチ)を生じさせるように構成されている、工程と、
前記機械方向で、前記解巻された紙にスコーリング加工を施してその紙に連続した溝を加工する工程であって、加工された前記連続した溝は前記伸ばされた領域に対応する、工程と、
を含み、
前記紙ロールから解巻された紙の最初の幅が、溝が加工された後の紙の幅と実質的に同じである、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
板紙製品を形成すべく、スコーリング加工された紙を1つ以上の追加の紙製品と組み合わせる工程を更に備えてなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機械方向で、スコーリング加工された紙を板紙製造機内に供給する工程、
その板紙製造機内に、前記スコーリング加工された紙と協同的に、スコーリング加工されていない紙を供給する工程、及び、
前記スコーリング加工されていない紙に対する前記スコーリング加工されている紙のテークアップ率がゼロとなる板紙製品を製造する工程、
を更に備えてなる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記紙ロールから解巻される紙は、機械方向でのMD値が横断方向でのCD値よりも大きい繊維パターンを備えてなる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法の実施に使用するための機械であって、
後続のステージに対して紙を機械方向に供給するように構成された紙供給ロールと、
前記機械方向にその紙を受け取るように構成され、且つ、その紙を前記機械方向に溝加工するように構成された溝加工ステージと、
を備え、
前記溝加工ステージは一対のエンボス加工ロールを含む、ことを特徴とする機械。
【請求項12】
前記一対のエンボス加工ロールは、前記溝加工ステージに供給される紙に正弦波形状の溝を加工するように構成されている、請求項11に記載の機械。
【請求項13】
前記一対のエンボス加工ロールは、前記溝加工ステージに供給される紙に三角形状の溝を加工するように構成されている、請求項11に記載の機械。
【請求項14】
請求項7に記載の方法の実施に使用するための機械であって、
後続のステージに対して紙を機械方向に供給するように構成された紙供給ロールと、
前記機械方向にその紙を受け取るように構成され、且つ、その紙を前記機械方向に溝加工するように構成された溝加工ステージと、
を備え、
前記溝加工ステージは、当該溝加工ステージに供給される紙にスコーリング加工された溝を加工するように構成された一対のスコーリング加工ロールを含むことを特徴とする、機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械方向にエンボス加工することで紙製品に溝形状を加工するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近代の製紙技術は製紙工場で抄紙機を使用して、板紙製品(すなわち段ボール)を製造するために板紙メーカによって利用できる紙のロールを製造する。その結果、紙のロールは連続的に作動する機械から製造できる。近代の抄紙機は典型的には、木質繊維(他の繊維も利用可能)を含む木材パルプを含んだ幾種類かの物質から紙を製造する。これら繊維は長形であることが多く、互いに整合(配向性一致)するのに適している。これら繊維は、当初は抄紙機のヘッドボックスから移動中のスクリーン上に供給できるスラリ形態である。近代の抄紙機においては、これら繊維は互いに整合し、スクリーンが移動する方向に整合される傾向にある。内在する繊維のこの整合は紙の主方向であり、機械方向(流れ方向)と同一方向である。よって、この主方向は単に機械方向(MD)と呼ばれることが多く、製造される紙は関連するMD値を有する。
【0003】
従って、紙が製紙プロセスの最後に巻き取られると、そのロールは機械方向に巻き取られた紙となる。紙の機械方向での内在する繊維の整合によって、紙自体は、機械方向に直交している横断方向(CD)と比較して大きな抵抗力を機械方向に有する。このことは、CD値がMD値よりも小さいために紙が機械方向に比べて横断方向で容易に曲げられ、折られ、あるいは変形できることを意味する。
【0004】
紙が板紙製品の製造に使用されるとき、板紙製品のために使用される紙の部分は波形化できる。伝統的な波形化機(コルゲートマシン)は、下に存在する紙製品を紙の横断方向に波形化するため、紙の機械方向の自然の偏向力の利点を活用できない。横断方向の強度を(機械方向の強度を犠牲にして)増加させるため、紙メーカは、抄紙機のヘッドボックスにて当初のスクリーンに供給されたときに繊維の自然な整合を乱すように試みる対策を求めた。しかし、そのような対策は、抄紙機の運用速度を遅くし、抄紙機の効率を低下させる。結果として、従来式の波形化技術のために、横断方向の増加した紙強度のための製紙効率は犠牲にされる。さらに、機械方向における紙の増加した自然強度の質は、板紙製造対策における横断方向の波形化技術によっては活用されないままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】(特になし)
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一群の請求項に記載されている通りである。
【0007】
請求項の特徴および付随する利点の多くは、添付の図面に照らして以下の詳細な説明を読むことで理解が進むため、さらに容易に解釈されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、従来型の波形化ステージ(コルゲート段階)に紙を供給するための機械の構造を示す簡略図である。
図2図2は、図1に示す従来型の波形化ロール(コルゲートロール)から得られた、波形が形成されている紙製品の一部を示す簡略図である。
図3図3は、ここに開示する本発明の一実施例に従う、機械方向のエンボス加工ステージに紙を供給する機械の構造を示す簡略図である。
図4図4は、ここに開示する本発明の一実施例に従う、図3に示すエンボス加工ロールから得られた、溝が形成された紙製品の一部を示す簡略図である。
図5図5は、ここに開示する本発明の一実施例に従う、機械方向のスコーリング加工(刻印加工)ステージに紙を供給する機械の構造を示す簡略図である。
図6図6は、ここに開示する本発明の一実施例に従う、図5に示すスコーリング加工ロールから得られるスコーリング加工された紙製品の一部を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[詳細な説明]
以下の説明は、当該技術の技術者(当業者)に、ここで開示する発明を実施して利用させるように提供されている。ここで説明されている一般的な原理は、この詳細な説明の精神と範囲から逸脱せずに、ここで説明されている詳細以外の実施態様および適用態様にも活用できる。本開示発明は、記述されている実施例に限定されず、ここで開示または暗示されている原理および特徴と合致する最も広い範囲の解釈が与えられるべきである。
【0010】
大要的には、ここに開示する発明は紙の機械方向にて紙に溝を加工するシステムと方法に利用できる。従来の板紙製造方式では、紙のロールは機械方向に解巻され(巻き解かれ)、その後に横断方向に波形化されることができる。横断方向の波形化は紙のMD値を利用できない。紙の内在する繊維と同じ方向(例えば機械方向)でのエンボス加工またはスコーリング加工(刻印加工)を介して溝加工を施すことは、板紙製品に溝形成された中間物を創り出すのに、用いられた紙の機械方向の自然の強度を利用する。
【0011】
一実施例においては、板紙製品のために溝を形成する方法は、紙ロールから機械方向に紙を解巻することを含んでいる。続くエンボス加工ステージまたはスコーリング加工テージが、溝を形成するために紙にエンボス加工またはスコーリング加工を施す。加工された溝は紙の機械方向に整合され、(CD値との比較で)さらに高いMD値で整合された溝を有することになる。さらに、溝形成のための紙の線状エンボス加工またはスコーリング加工は従来式の波形化との比較で紙の収縮を大きく減少させる。これらの及び他の特徴は、図1から図6に関して以下で説明している実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【0012】
図1は、従来型の波形化ロールに紙を供給する機械100の構造図である。もちろん、従来型の波形化機(コルゲートマシン)は幾つかの追加の特徴と部材を含んでいるが、ここでの説明のためには図1に示される部分のみが必要である。この構造図においては、紙120の先方縁部(導入端部)は、新製品を生み出すためにロール110の紙を形状化、切断、成形、組み合わせ、その他によって変形するのに適した機械に向けて第1方向122に供給することができるように、ロール110の紙は供給ロールから解巻される(巻き解かれる)ことができる。図1では、波形化ステージのみが説明の単純化のために示されている。よって、紙120が紙のロール110から解巻されると、紙120は第1方向122に延び出る。
【0013】
図1に示す紙120は、第2の波形化ロール130bと協調して機能するように整合されている第1の波形化ロール130aを含んだ波形化機に供給できる。よって、紙120が第1の波形化ロール130aと第2の波形化ロール130bとの間に供給されると、それら波形化ロールから突き出るリブ(突起部)は紙を所望の溝形状に加工する。すなわち、紙120は第1の波形化ロール130aと第2の波形化ロールのリブの周囲にて網目模様の連続形状に形を変え、(その結果)波形化された紙が得られる。得られる製品は溝が形成された紙150であり、それぞれの波形化ロール130aと130bのリブの形状に見合った形状を示す。溝が形成された紙150は波形化中間物と呼ぶことができ、追加の紙(複数)と共に使用して、1以上の仕上げ面に接着された1以上の波形化中間物を有した波形化ボード(段ボール)を形成する。
【0014】
段ボールの製造に使用する紙の波形化の1つの問題点は、溝加工された中間物に必要とされる紙が、仕上げ面(外面)に必要とされる紙よりも大幅に長いことである。これは、波形のリブの周囲に形成されて折られたとき、紙の全長が段ボール製品の平坦な表面部分よりも長くなるので当然である。この長さの相違はしばしば“テークアップ率”と呼ばれる。溝のサイズによっては、このテークアップ率は相当に高い数値になり得る(例えば、通常のC形溝形態では43%)。溝形成された紙150は図1の波形化機械100で分速1500フィート(1フィート=30.48cm)の速度で製造される。
【0015】
紙は、紙をロール形態に製造することのみに特化した製紙工場で製造される。よって、紙ロールは、機械(図1に機械100として示される部分)が配備されている板紙製造プラントに送られる。製紙プロセスは(1つの)製紙業者によって実行され、板紙製品は別の製紙業者によって製造されるので、多くの場合、それぞれの業者の関心事(思惑、利益、等々)は一致しない。
【0016】
不一致である関心事の一例には、下に存在する紙(基礎紙)120を製造する製紙工場での製紙方法と製紙機械における不一致が含まれる。図1の分解図において示されるように、紙の内在繊維125は伸ばされ、機械方向122で相互に整合する傾向がある。抄紙機の速度が増加するに連れてスラリがヘッドボックスからさらにスピーディに供給され、内在繊維は自然に抄紙機の機械方向にさらに整合が促がされる傾向になる。これで、大部分の内在繊維が機械方向に整合した最終紙製品が得られる。以下でさらに詳細に説明するように、板紙メーカは紙に高度に非整合状態である繊維(例えば、機械方向は度外視して全方位に配置された繊維)を含ませることに関心を抱くかも知れない。その理由を説明する前に、製紙プロセスのさらなる特徴が説明される。
【0017】
既に説明したように、紙120の機械方向は、紙の横断方向の値(CD値)に比べてさらに高い強度特性(MD値)と、さらに高い曲げ抵抗特性を示す。これは大部分が内在繊維を機械方向に整合させる製紙段階の特性のためである。もちろん、紙ロール110は次の製造ステージで、図1に示すように解巻されるとき、紙120の機械方向は波形化プロセスの機械方向と一致した状態に残る。
【0018】
図1の機械100において、波形化ロール130aと130bは紙120の横断方向に紙を波形加工する。即ち、紙120の波形化は機械方向122に対して平行ではなく、得られる溝は、波形化機械の機械方向122および紙120の機械方向の両方に直角な方向を有する。そのことは図2に関してより詳細に示されている。
【0019】
図2は、図1の従来型の波形化機械100から得られる波形加工された紙製品150の一部を示す。この図は溝加工紙150の一部の斜視図である。この機械方向122は図2に示されており、溝が紙の横断方向であるとき溝方向に垂直である(直交する)。図示のように、内在繊維125は紙の機械方向に整合状態のままであり、さらに波形化機械の機械方向122にも整合している。しかし、それらの溝は大部分の内在繊維125に対して垂直に(直角に)形成されている。これで、繊維とは整合しない溝が得られ、紙の自然強度であるMD値の利点(CD値との比較)は享受しない。紙のMD値を活用しないことで、特定の板紙強度の実現において、板紙製品の製造における非効率性が導かれる。すなわち、要求される板紙強度を実現するのに多くの紙(さらに重量がある紙、さらに大きな溝、等々)を必要とする。
【0020】
紙のCD値を増加させる努力において(板紙製造の特定目的のため)、紙メーカは、紙製品を横断方向でさらに強力にする努力において、意図的に内在繊維を非整合状態にすることが求められるであろう。これは機械方向の強度を弱めることになるが、紙製品は横断方向に波形加工されるので結局は最終板紙製品または板紙箱製品の強度を高めることになる。意図的に非整合化された内在繊維は、多くの場合、抄紙機のヘッドボックスでの攪拌を通じて提供されるが、抄紙機の運用速度は犠牲になる。
【0021】
よって、板紙メーカは、波形化機が横断方向に波形加工を施すがゆえに更に高いCD値を有する紙製品の取得に関心がある。しかし、紙メーカは、内在繊維が機械方向に整合している(例:さらに高いMD値を有する)紙の製造に関心がある。なぜなら、そのような整合は、比較的に構造が単純な装置を必要するだけであり、抄紙機に、より速い速度での運行を可能ならしめるからである。よって、この非整合に対する関心は、抄紙機の効率または板紙メーカの製品を犠牲にするが、その理由は全て横断方向の波形化のためである。本発明の説明の残り部分は、この関心事を再整合させる線状エンボス加工または線状スコーリング加工の技術に関するものである。
【0022】
図3は、ここで開示している発明の一実施例に従う、機械方向に紙をエンボス加工ステージに投入する機械200の構造を図示する。この実施例では、紙ロール110は、紙120がエンボス加工ステージのエンボス加工ロール230a及び230bに供給されるように解巻することができる。エンボス加工ロール230a及び230bは、図3の分解図ボックス内に示すように機械方向122に整合している(複数の)リブを含んでいる。すなわち、エンボス加工ロール230a及び230bの凹凸(溝部や谷部)は機械方向122に溝を形成するが、その溝(加工)は紙120のさらに大きなMD値に合致したものである。更に、エンボス加工ステージは、加熱、湿潤化または加湿セクション等のような、紙の調子を整えるに適した部分(部位)を含む追加の構造部を有することができる。線状エンボス加工された溝を創出することのこれらの及び他の追加の特徴は、説明の簡素化のためにここではこれ以上説明しない。
【0023】
エンボス加工は、エンボス加工ロール230a及び230bを通過する紙を伸ばして(ストレッチして)変形するプロセスである。紙120は、一方のエンボス加工ロール230bと密に整合している他方のエンボス加工ロール230aを通って圧搾されるとき、紙120はエンボス加工ロール230aと230bの間の接触点から伸び離れる傾向にある。これで得られるエンボス加工された紙250は、横方向での紙の伸び(延伸)のためにさらに大きくなった幅を有する。ただし、エンボス加工された紙250は今や、エンボス加工前の紙120の元の幅が、得られた溝加工中間物の幅とほぼ等しくなるように、溝を含んでいる。更に、紙120の長さ(紙120の機械方向で定義される長さ)もエンボス加工プロセスによって影響を受けない状態で残る。
【0024】
図4において以下でさらに説明するように、エンボス加工プロセスではテークアップ率(take-up factor)がほとんど無く、適用形態によってはテークアップ率がゼロである。これは、溝が単に波形化リブの周囲に形成されるのではなく、実際には伸ばされて所望のパターンを提供するからである。エンボス加工パターンは、波形加工(corrugating)に類似した溝加工パターンを創出する。従って、エンボス加工を通じて溝を形成することは、溝加工中間物250を創出する紙のMD値をも利用しながら、効率の大きな増加を導く(例えば、C形溝プロファイルの場合にはテークアップ率は43%程度も減少する)。
【0025】
図3の実施例において、エンボス加工ロール230a及び230bの凹凸(溝部や谷部)は、正弦波形状の溝が加工されるように曲線状である。他の実施例には三角パターン、鋸歯パターン、半矩形パターン、あるいは任意の他のエンボス加工パターンが含まれることができ、何らかの溝の形態が、エンボス加工ロール230a及び230bを通じて供給される下側の紙120に付与される。他の実施例では、エンボス加工ロールの片方だけが特定の溝構成形状を有し、他方のロールは平坦でもよい(非図示)。さらに別な実施例では、機械200は、所望の溝を加工するか増強するために第2及び第3のエンボス加工ステージのための追加のエンボス加工ロール(非図示)を含むことができる。
【0026】
図4は、ここで開示する発明の一実施例に従う、図3のエンボス加工ステージから得られる溝加工紙製品250の一部を図示する。図3に関して説明したように、加工された溝は機械方向122に調和している。よって、下側の紙の長繊維125は溝の方向と整合状態に残る。内在繊維を溝と整合させると、紙のさらに大きなMD値(CD値との比較)と溝とが適合する。図1に示す機械100の横断方向の波形化技術は、紙のCD値と適合した波形形状を必然的に有するので、図3の機械200を使用した線状エンボス加工プロセスは機械方向に溝を整合させることによって紙のMD値を利用する。従って、図3の機械200の溝加工するエンボス加工プロセスは、段ボールの特定の強度の達成を、少ない量の繊維の使用で可能にする。
【0027】
そのような線状エンボス加工のシステムと方法は、幾つかのレベルで効率向上を導き、紙メーカおよび板紙/箱メーカの関心の再適合化に成功する。まず、線状エンボス化は、(パルプ繊維が)最初に抄紙機のスクリーン上に注がれたときにパルプ繊維の整合(というよりむしろ非整合)を注意深く制御する必要性を、紙メーカに無視(度外視)させる。横断方向の強度を高めるため、抄紙機は内在長繊維が機械方向に自然に整合することを妨害するようになっているヘッドボックスを含むことができると説明した。線状エンボス加工によって、横断方向の改善された強度の必要性は低減され又は不要になる。従って、紙メーカは抄紙機の速度の改善に集中することができる。
【0028】
次に、板紙メーカは少ない紙材料で板紙製品を製造できる。ここで説明した線状エンボス化のシステムと方法は、製造のために少ない材料で済む溝加工中間物を創出する。すなわち、従来の波形化機では、溝加工中間物に必要な紙は表面部分に必要な紙よりも大きい(多い)(長さの観点で)。よって、効率の向上は2方面に及ぶ。すなわち、段ボールの製造には少ない紙量でよく、MD値を溝と表面の両方に適合させることで板紙での強度の向上が図られる。
【0029】
図3図4に関して説明された実施例は、正弦波形状の溝を加工するエンボス加工ステージを有している。しかし、他の実施例はエンボス加工ロールに異なる形状(三角形、鋸歯形、等々)を含ませることができ、あるいは単にスコーリング加工ステージを含ませることさえできる。図5図6に関して説明した実施例は、図3図4に関して説明した実施例の正弦波形状以外のプロセスにより形状化された、あるいは形成された溝の例である。
【0030】
図5は、ここで説明している発明の一実施例に従う、紙を機械方向にてスコーリング加工ステージに供給するための機械の一部を示す。この実施例では、紙ロール110は、紙120がスコーリング加工ステージでスコーリング加工ロール330a及び330bの対に供給されるように解巻される。スコーリング加工ロール330a及び330bは、図5の分解図ボックス内で示すように機械方向122に整合している(複数の)リブを含んでいる。すなわち、スコーリング加工ロール330a及び330bの凹凸(溝部や谷部)は、これも紙120の機械方向に整合している機械方向122の溝の加工に導くスコーリング加工線を加工する。
【0031】
エンボス加工と同様に、スコーリング加工は、スコーリング加工ロール330a及び330bを通る紙を伸ばし(ストレッチさせ)、または変形させるプロセスである。紙120の一部が、一方のスコーリング加工ロール330bと密に整合している他方のスコーリング加工ロール330aを通じて圧搾されるとき、紙120はスコーリング加工ポイントから伸び離れる傾向にある。
【0032】
得られたスコーリング加工された紙350は、これで横方向の紙の伸びのためにさらに大きくなっている幅を有する。しかし、スコーリング加工された紙350は、これでスコーリング加工前の紙120の元の幅が、得られる溝加工中間物の幅とほぼ等しくなるように溝を含んでいる。更に、紙120の長さ(紙120の機械方向で定義される長さ)もスコーリング加工プロセスには影響を受けない状態で残る。前述のように、エンボス加工に関して、スコーリング加工プロセスではテークアップ率がほとんど無くなる。これは、波形加工リブの周囲に溝が単に形成されるのではなく、実際には伸ばされて、所望のパターンが与えられるからである。スコーリング加工されたパターンは波形加工に類似した溝パターンを創出する。従って、スコーリング加工を通じて溝を加工すると、溝加工中間物350を造り出す紙のMD値を利用しながら効率の増加が得られる。
【0033】
図6は、ここに開示する発明の一実施例に従う、図5スコーリング加工ロールによって得られるスコーリング加工された製品の一部を示す。図6においては、平坦紙から加工された形状変化は少々極端に示されており、スコーリング加工は特徴的な三角形状の溝を提供する。そのような特徴的な三角パターンは三角歯形エンボス加工ステージでさらに顕著化するが、その概念は同一のままである。スコーリング加工ロール330a及び330bによって誘発されるスコーリング加工は、紙自体の伸びた繊維125のみならずコルゲート(波形化)の機械方向122にも整合する紙の機械方向に誘発された溝を生じさせる。
【0034】
ここで説明した発明には様々な修正および代用構造が適用できるが、それらの説明した実施例の一部は図示されており、詳細に説明されている。しかしながら、下記の各請求項を、ここに開示した特定形態に限定する意図はなく、それどころか、特許請求の範囲の精神と範囲内の全ての修正、代案構造および等価物をカバーすることが意図されている。
【符号の説明】
【0035】
110 紙(供給)ロール
120 紙
122 機械方向
230a,230b エンボス加工ロール
250 エンボス加工された紙
330a,330b スコーリング加工ロール
350 スコーリング加工された紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6