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特許7068708通信装置、通信装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20220510BHJP
   H04W 76/40 20180101ALI20220510BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220510BHJP
【FI】
H04W4/06 110
H04W76/40
H04W84/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019031760
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020137055
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】香川 忠與
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219650(JP,A)
【文献】特開2004-260266(JP,A)
【文献】特開平10-173668(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104981(WO,A1)
【文献】特開2018-093270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外部端末の各々と無線ネットワークを介して接続される通信装置であって、
同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信する場合の送信回数であって、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に前記送信回数を乗じた合計データ容量が、前記無線ネットワークの転送レートを超えないような前記送信回数を示す送信回数情報を取得する取得部と、
前記送信回数情報により示される前記送信回数に基づいて、前記同一のデータフレームを前記単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで前記複数の外部端末の各々に送信する通信部と、を備え、
前記送信回数情報により示される前記送信回数は、前記同一のデータフレームの送信時におけるヘッダ容量を加味して算出され、且つ、以下の式1で表される
通信装置。
送信回数=[転送レート÷データフレームの単位時間あたりのデータ容量] (式1)
但し、前記式1において、[]はガウス記号であり、[X]は、Xを超えない最大の整数を表す。
【請求項2】
前記通信部は、前記単位時間内に複数回繰り返し送信される前記同一のデータフレームに同一のシーケンス番号を割り当てる
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記単位時間内に1回目に送信される前記同一のデータフレームの再送ビットを無効化し、且つ、前記単位時間内に2回目以降に送信される前記同一のデータフレームの再送ビットを有効化する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置は、さらに、前記送信回数情報が予め記憶された記憶部を備え、
前記取得部は、前記送信回数情報を前記記憶部から読み出すことにより、前記送信回数情報を取得する
請求項1~3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置は、さらに、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に基づいて、前記送信回数を算出する算出部を備え、
前記取得部は、前記算出部により算出された前記送信回数を示す前記送信回数情報を取得する
請求項1~3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
複数の外部端末の各々と無線ネットワークを介して接続される通信装置の制御方法であって、
同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信する場合の送信回数であって、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に前記送信回数を乗じた合計データ容量が、前記無線ネットワークの転送レートを超えないような前記送信回数を示す送信回数情報を取得するステップと、
前記送信回数情報により示される前記送信回数に基づいて、前記同一のデータフレームを前記単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで前記複数の外部端末の各々に送信するステップと、を含み、
前記送信回数情報により示される前記送信回数は、前記同一のデータフレームの送信時におけるヘッダ容量を加味して算出され、且つ、以下の式1で表される
通信装置の制御方法。
送信回数=[転送レート÷データフレームの単位時間あたりのデータ容量] (式1)
但し、前記式1において、[]はガウス記号であり、[X]は、Xを超えない最大の整数を表す。
【請求項7】
請求項6に記載の通信装置の制御方法をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の外部端末の各々と無線ネットワークを介して接続される通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。通信装置と複数の外部端末の各々との間における通信方式として、マルチキャスト又はブロードキャストが用いられる。マルチキャスト及びブロードキャストでは、通信装置は、データフレームを複数の外部端末の各々に一斉に送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-244897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したマルチキャスト及びブロードキャストでは、その仕様上、データフレームが無線レイヤで欠落した場合に、無線レイヤでデータフレームの再送が行われない。そのため、アプリケーション層でデータフレームの再送処理が行われるように、無線通信のアプリケーションソフトウェアを再構築する必要がある。
【0005】
しかしながら、アプリケーション層でデータフレームの再送処理が行われるようにするためには、既存のアプリケーション層を変更する必要があり、無線通信のアプリケーションソフトウェアの再構築が大がかりとなるという課題が生じる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存のアプリケーション層を変更することなく、通信品質を高めることができる通信装置、通信装置の制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る通信装置は、複数の外部端末の各々と無線ネットワークを介して接続される通信装置であって、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信する場合の送信回数であって、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に前記送信回数を乗じた合計データ容量が、前記無線ネットワークの転送レートを超えないような前記送信回数を示す送信回数情報を取得する取得部と、前記送信回数情報により示される前記送信回数に基づいて、前記同一のデータフレームを前記単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで前記複数の外部端末の各々に送信する通信部と、を備える。
【0008】
本態様によれば、通信部は、送信回数情報により示される送信回数に基づいて、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで複数の外部端末の各々に送信する。これにより、万一、1回目に送信したデータフレームが無線レイヤで欠落した場合であっても、2回目以降に送信したデータフレームを複数の外部端末の各々に送信することができる。したがって、既存のアプリケーション層を変更することなく、無線通信のソフトウェアの再構築を最小限に抑えながら、通信品質を高めることができる。
【0009】
例えば、前記通信部は、前記単位時間内に複数回繰り返し送信される前記同一のデータフレームに同一のシーケンス番号を割り当てるように構成してもよい。
【0010】
本態様によれば、複数の外部端末の各々において、同一のデータフレームが複数回受信されるのを回避することができる。
【0011】
例えば、前記通信部は、前記単位時間内に1回目に送信される前記同一のデータフレームの再送ビットを無効化し、且つ、前記単位時間内に2回目以降に送信される前記同一のデータフレームの再送ビットを有効化するように構成してもよい。
【0012】
本態様によれば、複数の外部端末の各々において、同一のデータフレームが複数回受信されるのをより一層確実に回避することができる。
【0013】
例えば、前記通信装置は、さらに、前記送信回数情報が予め記憶された記憶部を備え、前記取得部は、前記送信回数情報を前記記憶部から読み出すことにより、前記送信回数情報を取得するように構成してもよい。
【0014】
本態様によれば、取得部は、送信回数情報を記憶部から読み出すことにより、送信回数情報を容易に取得することができる。
【0015】
例えば、前記通信装置は、さらに、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に基づいて、前記送信回数を算出する算出部を備え、前記取得部は、前記算出部により算出された前記送信回数を示す前記送信回数情報を取得するように構成してもよい。
【0016】
本態様によれば、同一のデータフレームの単位時間あたりのデータ容量に応じて、適切な送信回数を動的に設定することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る通信装置の制御方法は、複数の外部端末の各々と無線ネットワークを介して接続される通信装置の制御方法であって、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信する場合の送信回数であって、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に前記送信回数を乗じた合計データ容量が、前記無線ネットワークの転送レートを超えないような前記送信回数を示す送信回数情報を取得するステップと、前記送信回数情報により示される前記送信回数に基づいて、前記同一のデータフレームを前記単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで前記複数の外部端末の各々に送信するステップと、を含む。
【0018】
本態様によれば、送信回数情報により示される送信回数に基づいて、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで複数の外部端末の各々に送信する。これにより、万一、1回目に送信したデータフレームが無線レイヤで欠落した場合であっても、2回目以降に送信したデータフレームを複数の外部端末の各々に送信することができる。したがって、既存のアプリケーション層を変更することなく、無線通信のソフトウェアの再構築を最小限に抑えながら、通信品質を高めることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、上述した通信装置の制御方法をコンピュータに実行させる。
【0020】
本態様によれば、上述と同様に、既存のアプリケーション層を変更することなく、無線通信のソフトウェアの再構築を最小限に抑えながら、通信品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る通信装置等によれば、既存のアプリケーション層を変更することなく、通信品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1に係る通信システムの概要を示す図である。
図2】実施の形態1に係る通信装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る通信装置の通信部によるデータフレームの送信処理を説明するための図である。
図4】比較例に係る通信装置における送信回数と転送レートとの関係を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る通信装置における送信回数と転送レートとの関係を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係る通信装置の処理を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る通信装置の処理を説明するための図である。
図8】実施の形態1に係る通信装置により得られる効果を説明するための図である。
図9】IEEE802.11n及びIEEE802.11acの各規格における、転送レートと送信回数との対応関係を示す図である。
図10】実施の形態2に係る通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
(実施の形態1)
[1.通信システムの概要]
まず、図1を参照しながら、実施の形態1に係る通信システム2の概要について説明する。図1は、実施の形態1に係る通信システム2の概要を示す図である。
【0025】
図1に示すように、通信システム2は、映像配信装置4と、通信装置6と、複数の外部端末8とを備えている。通信装置6と複数の外部端末8の各々とは、無線ネットワーク10を介して接続されている。無線ネットワーク10は、例えばIEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN(Local Area Network)で構築されている。
【0026】
映像配信装置4は、映像データを配信するための装置である。映像配信装置4は、例えば有線LANで構築された有線ネットワークを介して通信装置6と接続されている。映像配信装置4は、映像データを、有線ネットワークを介して通信装置6に送信する。
【0027】
通信装置6は、例えば無線LANのアクセスポイントとして動作する。通信装置6は、映像配信装置4からの映像データを受信し、受信した映像データのデータフレームを、無線ネットワーク10を介して複数の外部端末8の各々にマルチキャスト又はブロードキャストで一斉に送信(いわゆる、多重送信)する。
【0028】
複数の外部端末8の各々は、例えば無線LANのステーションとして動作する。複数の外部端末8の各々は、通信装置6からのデータフレームを受信し、受信したデータフレームに基づいて映像データを再生する。なお、複数の外部端末8の各々は、例えばスマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等であり、再生した映像データを表示するための表示部を有している。
【0029】
[2.通信装置の機能構成]
次に、図2及び図3を参照しながら、実施の形態1に係る通信装置6の機能構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る通信装置6の機能構成を示すブロック図である。図3は、実施の形態1に係る通信装置6の通信部16によるデータフレームの送信処理を説明するための図である。
【0030】
図2に示すように、通信装置6は、記憶部12と、取得部14と、通信部16とを備えている。
【0031】
記憶部12は、送信回数情報が予め記憶されたメモリである。送信回数情報は、同一のデータフレームを単位時間内(例えば1秒間)に複数回繰り返し送信する場合の送信回数を示す情報である。より具体的には、送信回数情報は、同一のデータフレームの単位時間あたりのデータ容量に送信回数を乗じた合計データ容量が、無線ネットワーク10の転送レートを超えないような送信回数を示す情報である。なお、転送レートは、無線ネットワーク10における単位時間あたりの通信上限データ容量である。例えば、転送レートが9Mbpsであり、且つ、データフレームの単位時間あたりのデータ容量が4Mbpsである場合には、送信回数情報により示される送信回数は、「2回」である。
【0032】
取得部14は、送信回数情報を記憶部12から読み出すことにより、送信回数情報を取得する。取得部14は、取得した送信回数情報を通信部16に出力する。
【0033】
通信部16は、有線ネットワークを介して、映像配信装置4との間で有線通信する。また、通信部16は、無線ネットワーク10を介して、複数の外部端末8の各々との間で無線通信する。具体的には、通信部16は、取得部14からの送信回数情報により示される送信回数(例えば2回)に基づいて、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで複数の外部端末8の各々に送信する。
【0034】
例えば、図3に示すように、映像データのデータフレームが、データフレームA、データフレームB、データフレームC、・・・の順に送信される場合に、通信部16は、同一のデータフレームを1秒間に2回繰り返し送信する。すなわち、通信部16は、最初の1秒間では、同一のデータフレームAを2回繰り返し送信し、次の1秒間では、同一のデータフレームBを2回繰り返し送信し、さらに次の1秒間では、同一のデータフレームCを2回繰り返し送信する。
【0035】
また、通信部16は、単位時間内に複数回繰り返し送信される同一のデータフレームに同一のシーケンス番号を割り当てる。図3に示す例では、通信部16は、最初の1秒間において、1回目に送信されるデータフレームAにシーケンス番号「1」を割り当てた場合に、2回目に送信されるデータフレームAには、上記シーケンス番号「1」と同一のシーケンス番号「1」を割り当てる。同様に、通信部16は、次の1秒間において、1回目に送信されるデータフレームBにシーケンス番号「2」を割り当てた場合に、2回目に送信されるデータフレームBには、上記シーケンス番号「2」と同一のシーケンス番号「2」を割り当てる。同様に、通信部16は、さらに次の1秒間において、1回目に送信されるデータフレームCにシーケンス番号「3」を割り当てた場合に、2回目に送信されるデータフレームCには、上記シーケンス番号「3」と同一のシーケンス番号「3」を割り当てる。
【0036】
さらに、通信部16は、単位時間内に1回目に送信される同一のデータフレームの再送ビットを無効化し、且つ、単位時間内に2回目以降に送信(再送)される同一のデータフレームの再送ビットを有効化する。なお、「再送ビットを無効化する」とは、例えばデータフレームのヘッダにおける再送ビット値を「0」にすることである。また、「再送ビットを有効化する」とは、例えばデータフレームのヘッダにおける再送ビット値を「1」にすることである。
【0037】
ここで、図4及び図5を参照しながら、上述した送信回数と転送レートとの関係について説明する。図4は、比較例に係る通信装置における送信回数と転送レートとの関係を説明するための図である。図5は、実施の形態に係る通信装置6における送信回数と転送レートとの関係を説明するための図である。
【0038】
例えば、秒間30フレームの映像データの同一のデータフレーム(以下、「データフレームA」という)を1秒間に2回繰り返し送信する場合について考える。データフレームAの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsである場合には、少なくとも転送レートは4Mbps以上(例えば、転送レートは6Mbps以上等)を選択する必要がある。
【0039】
図4の(a)に示すように、データフレームAの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsであり、且つ、転送レートが6Mbpsである場合には、転送レートとデータ容量とのマージンは2Mbps(=6Mbps-4Mbps)となる。この場合、図4の(b)に示すように、同一のデータフレームAを1秒間に2回繰り返し送信した際には、同一のデータフレームAの1秒間あたりのデータ容量に送信回数を乗じた合計データ容量は、8Mbps(=4Mbps×2回)となり、転送レート(6Mbps)を超えてしまう。そのため、2回目に送信(再送)したデータフレームAが1秒以内に収まらず、複数の外部端末8の各々において映像データが正しく再生されないおそれが生じる。
【0040】
これに対して、図5の(a)に示すように、データフレームAの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsであり、且つ、転送レートが9Mbpsである場合には、転送レートとデータ容量とのマージンは5Mbps(=9Mbps-4Mbps)となる。この場合、図5の(b)に示すように、同一のデータフレームAを1秒間に2回繰り返し送信した際には、同一のデータフレームAの1秒間あたりのデータ容量に送信回数を乗じた合計データ容量は、8Mbps(=4Mbps×2回)となり、転送レート(9Mbps)を超えない。そのため、2回目に送信(再送)したデータフレームAが1秒以内に収まり、複数の外部端末8の各々において映像データが正しく再生される。
【0041】
以上のことから、上記の例では、転送レートは、データフレームAの1秒間あたりのデータ容量の2倍以上であるのが好ましい。なお、送信回数情報により示される送信回数は、次式1で近似することができる。
【0042】
送信回数=[転送レート÷単位時間あたりのデータ容量] (式1)
但し、上式の[X]は、Xの整数部分のみを表す。
【0043】
ここで、本実施の形態に係る上式1では、送信回数を簡便に算出するために、「転送レート」及び「単位時間あたりのデータ容量」を用いて算出しているが、データフレームの送信時における各種ヘッダ容量(例えば、IEEE802.11ヘッダ等)を加味して算出するようにしてもよい。これにより、通信装置6は、送信回数をより精度の高い値で算出することができる。
【0044】
[3.通信装置の処理]
次に、図6及び図7を参照しながら、実施の形態1に係る通信装置6の処理について説明する。図6は、実施の形態1に係る通信装置6の処理を示すフローチャートである。図7は、実施の形態1に係る通信装置6の処理を説明するための図である。
【0045】
以下、同一のデータフレームAを1秒間に2回繰り返し送信する場合における、通信装置6の処理について考える。
【0046】
図6に示すように、通信装置6の通信部16は、マルチキャスト又はブロードキャストでの送信でない場合には(S101でNO)、ユニキャストでデータフレームAの送信処理を行う(S102)。この場合、通信部16は、データフレームAを1秒間に1回のみ送信し、処理を終了する。
【0047】
ステップS101に戻り、一方、映像配信装置4から送信されたデータフレームAがマルチキャスト又はブロードキャストでの送信である場合には(S101でYES)、通信部16は、取得部14に対して、送信回数情報を記憶部12から読み出すように指示する。本実施の形態では、送信回数情報は、送信回数「2回」を示す情報である。取得部14は、記憶部12から送信回数情報を読み出し(S103)、読み出した送信回数情報を通信部16に出力する。
【0048】
データフレームAの送信処理がまだ行われておらず、データフレームAの送信回数が上限「2回」に達していない場合には(S104でNO)、通信部16は、データフレームAの送信が2回目以降の送信であるか否かを確認する(S105)。データフレームAの送信が2回目以降の送信でない場合には(S105でNO)、通信部16は、データフレームAにシーケンス番号「1」を割り当て(S106)、データフレームAの再送ビットを無効化する(S107)。その後、図7の(a)に示すように、通信部16は、データフレームAの1回目の送信処理を行う(S108)。これにより、通信部16は、データフレームAを複数の外部端末8の各々にマルチキャスト又はブロードキャストで送信する。
【0049】
ステップS104に戻り、データフレームAの1回目の送信処理が完了し、データフレームAの送信回数が上限「2回」に達していない場合には(S104でNO)、通信部16は、データフレームAの送信が2回目以降の送信であるか否かを確認する(S105)。データフレームAの送信が2回目以降の送信である場合には(S105でYES)、通信部16は、データフレームAに上記ステップS106で割り当てたシーケンス番号「1」と同一のシーケンス番号「1」を割り当て(S109)、データフレームAの再送ビットを有効化する(S110)。その後、図7の(b)に示すように、通信部16は、データフレームAの2回目の送信処理を行う(S108)。これにより、通信部16は、データフレームAを複数の外部端末8の各々にマルチキャスト又はブロードキャストで送信する。
【0050】
ステップS104に戻り、データフレームAの2回目の送信処理が完了し、データフレームAの送信回数が上限「2回」に達した場合には(S104でYES)、処理を終了する。
【0051】
[4.効果]
次に、図8を参照しながら、実施の形態1に係る通信装置6により得られる効果について説明する。図8は、実施の形態1に係る通信装置6により得られる効果を説明するための図である。
【0052】
本実施の形態では、通信部16は、送信回数情報により示される送信回数(例えば「2回」)に基づいて、同一のデータフレーム(例えば「データフレームA」)を単位時間内(例えば1秒間)に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで複数の外部端末8の各々に送信する。
【0053】
これにより、例えば図8の(a)に示すように、1回目に送信したデータフレームAが無線レイヤで欠落してこれを受信できなかった外部端末8でも、2回目にマルチキャスト又はブロードキャストで送信されたデータフレームAを受信することができる。したがって、既存のアプリケーション層を変更することなく、また、受信側である外部端末8の機能構成を変更することなく、無線通信のソフトウェアの再構築を最小限に抑えながら、通信品質を高めることができる。
【0054】
また、仮に、単位時間内に複数回繰り返し送信される同一のデータフレームに互いに異なるシーケンス番号を割り当てた場合には、複数の外部端末8の各々において、複数回受信したデータフレームがそれぞれ互いに異なるデータフレームとして扱われ、アプリケーション層にフォワードされてしまう。そのため、複数の外部端末8の各々において、同一のデータフレームが複数回受信されてしまい、データフレームの受信処理が破綻するおそれが生じる。
【0055】
これに対して、本実施の形態では、通信部16は、単位時間内に複数回繰り返し送信される同一のデータフレームに同一のシーケンス番号(例えば「1」)を割り当てる。これにより、複数の外部端末8の各々において、複数回受信したデータフレームが同一のデータフレームとして扱われる。その結果、例えば図8の(b)に示すように、1回目に送信されたデータフレームAを受信できた外部端末8では、2回目に送信されたデータフレームAが無線レイヤで破棄されるので、当該外部端末8が同一のデータフレームを複数回受信するのを回避することができる。
【0056】
また、単位時間内に複数回繰り返し送信される同一のデータフレームに同一のシーケンス番号を割り当てた場合であっても、外部端末8の実装条件によっては、複数の外部端末8の各々において、同一のデータフレームが複数回受信されてしまう可能性がある。これに対して、本実施の形態では、通信部16は、単位時間内に1回目に送信される同一のデータフレームの再送ビットを無効化し、且つ、単位時間内に2回目以降に送信される同一のデータフレームの再送ビットを有効化する。これにより、外部端末8が複数の同一のデータフレームを受信した場合でも、1回目に送信されたデータフレームと2回目に送信されたデータフレームとを区別することができる。その結果、例えば図8の(b)に示すように、1回目に送信されたデータフレームAを受信できた外部端末8では、2回目に送信されたデータフレームAを無線レイヤでより一層確実に破棄することができる。
【0057】
[5.変形例]
本実施の形態では、転送レートが9Mbpsであり、且つ、送信回数が2回である場合について説明したが、これに限定されない。IEEE802.11シリーズの規格に応じて、種々の転送レートを選択することができる。
【0058】
ここで、図9を参照しながら、転送レート及び送信回数の他の例について説明する。図9は、IEEE802.11n及びIEEE802.11acの各規格における、転送レートと送信回数との対応関係を示す図である。
【0059】
図9に示すように、IEEE802.11n(HT40)の規格では、データフレームの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsである場合、転送レート150Mbps、300Mbps、450Mbps、600Mbpsに対する送信回数はそれぞれ、上式1から、37回(≒150÷4)、75回(≒300÷4)、112回(≒450÷4)、150回(≒600÷4)となる。
【0060】
また、図9に示すように、IEEE802.11ac(VHT160)の規格では、データフレームの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsである場合、転送レート866Mbps、1.7Gbps、2.6Gbps、3.5Gbpsに対する送信回数はそれぞれ、上式1から、216回(≒866÷4)、425回(≒1700÷4)、650回(≒2600÷4)、875回(≒3500÷4)となる。
【0061】
なお、一般に、変調方式の特性上、転送レートが高くなるに従って、データフレームの到達率は低くなる傾向にある。しかしながら、上述したように、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信することにより、複数回送信したデータフレーム全体の到達率を向上させることができる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、図10を参照しながら、実施の形態2に係る通信装置6Aの機能構成について説明する。図10は、実施の形態2に係る通信装置6Aの機能構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
上記実施の形態1では、再送回数情報を記憶部12に予め固定値として記憶させるようにした。本実施の形態では、再生回数を動的に設定する点で、上記実施の形態1と異なる。
【0064】
図10に示すように、通信装置6Aは、上記実施の形態1で説明した記憶部12に代えて、算出部18を備えている。算出部18は、同一のデータフレームの単位時間あたりのデータ容量に基づいて、適切な転送レートを設定するとともに、送信回数を算出する。例えば、データフレームの1秒間あたりのデータ容量が4Mbpsである場合には、算出部18は、転送レートを9Mbpsに設定するとともに、上式1に基づいて送信回数「2回」を算出する。また、取得部14Aは、算出部18により算出された送信回数を示す送信回数情報を取得する。本実施の形態は、例えばデータフレームの1秒間あたりのデータ容量をある程度予測できる場合(例えば、通信部16で受信するデータフレームの種別が予め分かる場合等)に、特に有用である。
【0065】
このように、本実施の形態では、同一のデータフレームの単位時間あたりのデータ容量に応じて、適切な送信回数を動的に設定することができる。
【0066】
(他の変形例等)
以上、本発明の通信装置及び通信装置の制御方法について、実施の形態1及び2に基づいて説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記各実施の形態に対して当業者が思い付く変形を施して得られる形態、及び、上記各実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
【0067】
上記各実施の形態では、通信装置6が映像データを送信する場合について説明したが、これに限定されず、例えば音声データ等の任意のデータを送信するようにしてもよい。
【0068】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の通信装置6,6Aを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0069】
すなわち、同一のデータフレームを単位時間内に複数回繰り返し送信する場合の送信回数であって、前記同一のデータフレームの前記単位時間あたりのデータ容量に前記送信回数を乗じた合計データ容量が、前記無線ネットワークの転送レートを超えないような前記送信回数を示す送信回数情報を取得するステップと、前記送信回数情報により示される送信回数に基づいて、前記同一のデータフレームを前記単位時間内に複数回繰り返しマルチキャスト又はブロードキャストで前記複数の外部端末の各々に送信するステップと、を含む通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の通信装置は、例えば通信装置と複数の外部端末の各々とが無線ネットワークを介して接続された通信システム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
2 通信システム
4 映像配信装置
6,6A 通信装置
8 外部端末
10 無線ネットワーク
12 記憶部
14 取得部
16 通信部
18 算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10