(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
F16K 7/16 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
F16K7/16 A
(21)【出願番号】P 2019533930
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2018021739
(87)【国際公開番号】W WO2019026417
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017147513
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】三浦 尊
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 研太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀信
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0131607(US,A1)
【文献】特開2005-328063(JP,A)
【文献】特開2012-189165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00- 7/20
F16K 31/44-31/62
C23C 16/00-16/56
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源からチャンバに向けてプロセスガスを供給する流路を備えたガス供給システムであって、
前記流路に設けられ、自動開閉により前記チャンバに供給するプロセスガスの流量を調整する自動弁と、
前記流路における前記自動弁の下流であって前記チャンバの直近に設けられ、手動開閉により前記プロセスガスの流量を調整する手動弁と
を備え、
前記手動弁は、開閉に伴いステム及びディスクと連動し、シートに着座及び離座するダイヤフラムを有するダイレクトダイヤフラム弁であって、バルブストロークを調整するストローク調整機構を有
し、
前記手動弁は、
前記ステムを昇降させるハンドルと、
前記ステムが螺挿されるボンネットナットと
を備え、
前記ストローク調整機構は、
前記ボンネットナットと前記ハンドルとの間に位置し、前記ステムが昇降自在に挿通され、前記ボンネットナットに螺挿される筒状のストローク調整部材と、
前記ストローク調整部材の外周面に螺合され、前記ボンネットナットに対する前記ストローク調整部材の昇降を規制するロックナットと
を備える、ガス供給システム。
【請求項2】
前記ストローク調整機構は、前記手動弁の全開時における前記ステムの上昇を規制することによって、前記バルブストロークを調整する、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記ストローク調整機構は、前記手動弁の全開時における前記ステムの上昇を規制することによって、前記手動弁のCv値を調整する、請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記ストローク調整機構は、前記ボンネットナットに対する前記ストローク調整部材の螺進量に基づいて前記バルブストロークを設定する、請求項
1から3の何れか一項に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記ステムは、前記ストローク調整部材の下端面の下方に段差部を有し、
前記ストローク調整機構は、前記ストローク調整部材の下端面が前記ステムの段差部に当接することにより前記手動弁の全開時における前記ステムの上昇を規制する、請求項
4に記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記手動弁の全閉時における前記ストローク調整部材の下端面と前記ステムの段差部との離間距離は前記バルブストロークと等しい、請求項
5に記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記ステムは、その先端部に装着されるシール部材を有し、
前記先端部は、前記ステムが挿通される前記ボンネットナットの挿通孔に前記シール部材を介して接触し、
前記ステムは、前記ストローク調整部材の挿通孔を貫通し、
前記ステムと前記ストローク調整部材とは互いに同軸に配置されている、請求項
1から6の何れか一項に記載のガス供給システム。
【請求項8】
前記ストローク調整部材は、その外周面に、前記ボンネットナットに螺挿される細目ねじからなる第1雄ねじ部を有し、
前記ステムは、その外周面に前記ステムが螺挿される並目ねじからなる第2雄ねじ部を有する、請求項
1から7の何れか一項に記載のガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給システムに関し、特に半導体製造設備のガス供給系を形成するガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス内にALD(atomic layer Deposition)法を採用する近年の半導体製造設備にあっては、ガス供給系の反応炉としてのチャンバの近くに、高温下で使用可能であり、且つプロセスガスの微小流量を高精度で制御可能なダイレクトタッチ型のメタルダイヤフラム弁(以下、ダイヤフラム弁又はダイレクトダイヤフラム弁とも称する)が使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなダイヤフラム弁は、弁体であるダイヤフラムによるダイレクトシール構造を採用することにより、応答性やガスの置換性に優れているだけでなくパーティクルフリーに近い特徴を有するため、半導体製造設備や化学産業設備、食品産業設備等の分野で広く実用に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなガス供給システムは、ガス供給源からチャンバに向けてプロセスガスを供給する流路を備え、この流路には、自動開閉によりチャンバに供給するプロセスガスの微小流量を高精度に調整する自動弁として、上述したダイヤフラム弁が設けられている。また、流路における自動弁の下流であってチャンバの直近には、手動開閉によりプロセスガスの流量を調整する手動弁が設けられている。この手動弁は、チャンバ内のメンテナンス時やプロセスガスの緊急遮断時に使用される。特にALDプロセスでは、チャンバの容積を維持する必要があり、チャンバの堆積物を除去するメンテナンスの頻度が高いため、チャンバの直近に手動弁を設けることは不可欠である。
【0006】
しかしながら、上述した自動弁でガスの流量を高精度に制御しても、手動弁の個体差に基づく流量係数(Cv値)のばらつきにより、チャンバに供給するガス流量がばらつくおそれがある。従って、チャンバの直近に手動弁を設置するガス供給システムにおいて、手動弁に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることにより、ガス供給システム全体のプロセスガスの流量特性の変動を低減し、ガス流量制御の精度を高めることが求められている。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チャンバの直近に手動弁を設置するガス供給システムにおいて、手動弁に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることにより、ガス供給システム全体のプロセスガスの流量特性の変動を低減し、ガス流量制御の精度を高めることができるガス供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガス供給システムは、ガス供給源からチャンバに向けてプロセスガスを供給する流路を備えたガス供給システムであって、流路に設けられ、自動開閉によりチャンバに供給するプロセスガスの流量を調整する自動弁と、流路における自動弁の下流であってチャンバの直近に設けられ、手動開閉によりプロセスガスの流量を調整する手動弁とを備え、手動弁は、開閉に伴いステム及びディスクと連動し、シートに着座及び離座するダイヤフラムを有するダイレクトダイヤフラム弁であって、バルブストロークを調整するストローク調整機構を有し、手動弁は、ステムを昇降させるハンドルと、ステム及びディスクが昇降自在に収容されるボンネットナットとを備え、ストローク調整機構は、ボンネットナットとハンドルとの間に位置し、ステムが昇降自在に挿通され、ボンネットナットに螺挿される筒状のストローク調整部材と、ストローク調整部材の外周面に螺合され、ボンネットナットに対するストローク調整部材の昇降を規制するロックナットとを備える。
【0009】
好ましくは、ストローク調整機構は、手動弁の全開時におけるステムの上昇を規制することによって、バルブストロークを調整する。
好ましくは、ストローク調整機構は、手動弁の全開時におけるステムの上昇を規制することによって、手動弁のCv値を調整する。
【0011】
好ましくは、ストローク調整機構は、ボンネットナットに対するストローク調整部材の螺進量に基づいてバルブストロークを設定する。
好ましくは、ステムは、ストローク調整部材の下端面の下方に段差部を有し、ストローク調整機構は、ストローク調整部材の下端面がステムの段差部に当接することにより手動弁の全開時におけるステムの上昇を規制する。
【0012】
好ましくは、手動弁の全閉時におけるストローク調整部材の下端面とステムの段差部との離間距離はバルブストロークと等しい。
好ましくは、ステムは、その先端部に装着されるシール部材を有し、先端部は、ステムが挿通されるボンネットナットの挿通孔にシール部材を介して接触し、ステムは、ストローク調整部材の挿通孔を貫通し、ステムとストローク調整部材とは互いに同軸に配置されている。
【0013】
好ましくは、ストローク調整部材は、その外周面に、ボンネットナットに螺挿される細目ねじからなる第1雄ねじ部を有し、ステムは、その外周面にステムが螺挿される並目ねじからなる第2雄ねじ部を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガス供給システムによれば、チャンバの直近に手動弁を設置するガス供給システムにおいて、手動弁に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることにより、ガス供給システム全体のプロセスガスの流量特性の変動を低減し、ガス流量制御の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス供給システムのブロック図である。
【
図2】
図1の第2手動弁の全閉時における縦断面図である。
【
図4】
図1の第2手動弁の全開時における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るガス供給システム1のブロック図を示す。ガス供給システム1は、ガス供給源2からチャンバ4に向けてプロセスガスを供給する流路6を備えている。流路6には、矢印で示すプロセスガスの流れ方向から順に、第1手動弁8、フィルタ10、減圧弁12、圧力計14、流量制御器16、自動弁18、第2手動弁(手動弁)20が設けられている。
【0017】
このガス供給システム1は、例えば、プロセス内にALD(atomic layer Deposition)法を採用する半導体製造設備のガス供給系に使用されている。ALD法は、その良好な熱履歴や段差被覆性の点から半導体製造の成膜プロセスに広く活用され、プロセスガスとして、原料ガスや液体原料ガス等のプロセスガスをチャンバ4内へ供給し、ウエハ等の表面での化学反応によって成膜するものであり、原子層相当の微細な膜厚を高精度に形成することができる。
【0018】
ガス供給源2は、例えばプロセスガスが貯留されたタンクであって、流路6にプロセスガスを供給する。第1手動弁8は、手動の開閉弁であって、メンテナンス時にガス供給源2からフィルタ10側へのプロセスガスを遮断する際に使用される。フィルタ10はガス供給源2から供給されたプロセスガスに含まれるパーティクル等を除去する。減圧弁12はガス供給源2から供給されたプロセスガスを所定圧力に減圧調整する。
【0019】
圧力計14は、減圧弁12で調整後のプロセスガスの圧力を表示する。流量制御器16は、マスフローコントローラであって、自動弁18に流れるプロセスガスを所定流量に調整し、表示器16aに調整された流量を表示する。自動弁18は、流路6のチャンバ4の近くに設けられる、いわゆる炉口弁であって、圧縮エアー圧によるパルス制御で自動開閉されるエアー駆動式のオンオフ弁であり、流量制御器16で流量調整された後のプロセスガスの微小流量を高精度に制御可能である。
【0020】
自動弁18は、チャンバ4における成膜時の化学反応による高温(例えば150℃~400℃)に曝されるため、高温下で使用可能であり、且つ微小流量を高精度に制御可能なダイレクトダイヤフラム弁が採用されている。このダイヤフラム弁は、応答性やガスの置換性に優れ、パーティクルフリーに近い特徴を有している。
【0021】
第2手動弁20は、流路6における自動弁18の下流であってチャンバ4の直近に設けられ、自動弁18と同様の高温に曝される。第2手動弁20は、手動開閉により自動弁18を経てチャンバ4に供給するプロセスガスの流量を調整するオンオフ弁であって、主としてチャンバ4内のメンテナンス時やプロセスガスの緊急遮断時に使用される。
【0022】
特にALDプロセスでは、チャンバ4の容積を維持する必要があるため、チャンバ4の堆積物を除去する頻度が高くなる傾向にある。このため、チャンバ4の直近にはチャンバ4のメンテナンス用の第2手動弁20が、いわゆるファイナルバルブとして設けられている。チャンバ4は、反応炉であって、自動弁18ひいて第2手動弁20を介してプロセスガスが供給されることにより、ウエハ等の表面に化学反応によって成膜し、1原子層相当の微細な膜厚を高精度に形成する。
【0023】
ここで、自動弁18でプロセスガスの流量を高精度に制御しても、第2手動弁20の個体差に基づく流量係数(Cv値)のばらつきにより、チャンバ4に供給されるガス流量にばらつきが生じるおそれがある。従って、チャンバ4の直近に第2手動弁20を設置するガス供給システム1において、第2手動弁20に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることにより、ガス供給システム1全体のプロセスガスの流量特性の変動を低減し、ガス流量制御の精度を高めることが求められている。
【0024】
そこで、第2手動弁20をベローズ弁等の大流量弁(Cv値大)とすることが考えられる。これにより、ガス流量制御時に第2手動弁20を全開にすることで、自動弁18で流量制御した後のプロセスガスが第2手動弁20を流れる際、その流路抵抗は小さくなる。このため、第2手動弁20に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることができ、ガス供給システム1全体のガス流量制御の精度を高めることができる。
【0025】
しかし、第2手動弁20には、自動弁18と同様のダイレクトダイヤフラム弁を使用せざるを得ない。何故なら、ガス供給システム1、特にALDプロセスのガス供給システム1では、応答性やガスの置換性に優れ、パーティクルフリーに近い特徴を有するバルブの使用が要求されるため、置換性が悪く、蛇腹部分にパーティクルが堆積し易いベローズ弁等の使用は好ましくないからである。
【0026】
また、ガス供給システム1のレイアウトの制約上、チャンバ4の直近には大きなスペースを確保することは困難であるため、大型且つ大流量(Cv値大)のダイレクトダイヤフラム弁の設置はできない。以上の理由により、本実施形態のガス供給システム1では、チャンバ4の直近に設置する第2手動弁20に小型且つ小流量(Cv値小)のダイレクトダイヤフラム弁を採用している。
【0027】
図2は、第2手動弁20の全閉時における縦断面図を示す。なお、以下、
図2~
図5の説明においては各図の上側を上方として説明している。本実施形態の第2手動弁20は、主として、ボディ22、ダイヤフラム24、ボンネットナット26、ディスク28、ステム32、及びハンドル34と、さらにストローク調整機構36とを備えている。ボディ22は、ステンレス鋼等の金属材により形成され、両側には流体入口38及び流体出口40、上部には流体入口38及び流体出口40に連通する上方が開放された凹状の弁室42が形成されている。
【0028】
弁室42の底面には合成樹脂製の別体のシート44が略埋設状態で設けられている。弁室42の内周面の下側には段部46が形成されている。なお、シート44をボディ22と一体形成しても良い。ダイヤフラム24は、シート44の上方に配設され、弁室42の気密を保持するとともに、ダイヤフラム24の中央部が上下動してシート44に当離座する。ダイヤフラム24は、ステンレス鋼や、その他の形状記憶合金等の金属製薄板により中央部を上方へ膨出せしめた皿状に形成されている。
【0029】
ダイヤフラム24の周縁部は、弁室42の内周面の段部46に載置され、ボンネットナット26の下端部により段部46側へ押圧され、気密状態で挟持固定されている。ボンネットナット26は、筒状に形成され、その下端部はボディ22の弁室42内に挿入されるとともに、ボディ22の上部に突出された筒状部に螺合されて固定されている。ディスク28は、ステンレス鋼等の金属製であり、ボンネットナット26の下端部内に上下動(昇降)自在に挿入され、ディスク28の下端面がダイヤフラム24の中央部の上面を押さえつつ当接する。
【0030】
ステム32は、その先端部47の外周面にOリング(シール部材)49が装着されている。ステム32は、先端部47の下端面がディスク28に当接可能に、ボンネットナット26内に上下動自在に螺挿されている。
図2の第2手動弁20の全閉時、ステム32は、ディスク28を下方へ押圧してダイヤフラム24の中央部をシート44に当座させる。
【0031】
ステム32の上端部にはステム操作用のハンドル34が固定されている。ダイヤフラム24の周縁部の上面とボンネットナット26の下端面との間には環状のストッパー部材48が介設されている。ストッパー部材48は、第2手動弁20の全閉時、ダイヤフラム24の中央部がシート44に当座してステム32の下降を規制する。
【0032】
ここで、本実施形態の第2手動弁20は、ストローク調整機構36によってステム32のストローク調整が可能に構成されている。ストローク調整機構36は、ボンネットナット26とハンドル34との間に位置する筒状のストローク調整部材50と、ストローク調整部材50の外周面に螺合される環状のロックナット52とから構成されている。
【0033】
詳しくは、ストローク調整部材50は、ステム32が上下動自在に挿通される挿通孔54、ストローク調整部材50の外周面に形成された雄ねじ部(第1雄ねじ部)56、ストローク調整部材50の上部に形成された拡径部58を備えている。ステム32はストローク調整部材50の挿通孔54を貫通しており、ステム32とストローク調整部材50とは互いに同軸に配置されている。
【0034】
雄ねじ部56は、一般的な並目ねじよりもねじピッチが小さく、ねじ山が多い細目ねじから形成されている。ロックナット52の内周面には雌ねじ部60が形成され、雌ねじ部60はボンネットナット26と拡径部58との間において、ストローク調整部材50の雄ねじ部56に螺合されている。
【0035】
一方、ボンネットナット26は、ステム32がOリング49を介して上下動自在に挿通される挿通孔62、挿通孔62の内周面の上部に形成される雌ねじ部64、雌ねじ部64の下方に形成される拡径部66、拡径部66における内周面に形成され、ステム32が螺挿される雌ねじ部68を備えている。ステム32は、Oリング49により、ボンネットナット26の挿通孔62において軸線方向に保持される。また、ステム32には、外周面に雌ねじ部68が螺合される雄ねじ部(第2雄ねじ部)70が形成されている。雄ねじ部70は一般的な並目ねじから形成されている。
【0036】
以下、第2手動弁20のバルブストロークΔSの設定手順について説明する。
先ず、ストローク調整部材50の雄ねじ部56をボンネットナット26の雌ねじ部64に螺進させる。このときの螺進量はLである。次に、ロックナット52の下端面がボンネットナット26の上端面に当接するまでロックナット52の雌ねじ部60をストローク調整部材50の雄ねじ部56に螺進させる。そして、ロックナット52を所定のトルクで強固に締結することにより、ボンネットナット26に対するストローク調整部材50の上下動を規制してロックする。これにより、第2手動弁20のバルブストロークΔSが設定される。
【0037】
第2手動弁20を閉弁状態にする場合には、ハンドル34を回し、ステム32の雄ねじ部70をボンネットナット26の雌ねじ部68に対して螺進させて下降させる。これにより、
図2に示すように、ステム32の下端32aがディスク28の上端面28aに当接する。そして、ディスク28が下降してダイヤフラム24の中央部を下方へ押し下げ、ダイヤフラム24が弾性変形し、シート44に当座して第2手動弁20が全閉される。ストッパー部材48によってステム32の下降が規制されるため、ハンドル34の締め過ぎによるダイヤフラム24の損傷や破損が防止される。
【0038】
図3は
図2の領域Aの拡大図を示す。ステム32には、雄ねじ部70の形成箇所よりも上方が段階的に縮径されることにより段差部32bが形成されている。第2手動弁20の全閉状態においては、ステム32が下降したことによりストローク調整部材50の下端面50aとステム32の段差部32bとは離間距離Dで離間しており、この離間距離Dが上述したバルブストロークΔSとして規定される。
【0039】
このように、バルブストロークΔSは、ボンネットナット26の雌ねじ部64に対するストローク調整部材50の雄ねじ部56の螺進量Lを調整することにより調整可能である。具体的には、螺進量Lを大きくすることにより離間距離Dが小さくなってバルブストロークΔSが小さくなり、螺進量Lを小さくすることにより離間距離Dが大きくなってバルブストロークΔSが大きくなる。
【0040】
図4は、第2手動弁20の全開時における縦断面図を示す。第2手動弁20を全開状態にする場合には、ハンドル34を回してステム32を上昇させる。これにより、
図4に示すように、ダイヤフラム24はその弾性力や流体入口38におけるガス圧によりディスク28を押し上げつつ元の形状に復元し、シート44から離座して第2手動弁20が全開される。
【0041】
図5は
図4の領域Bの拡大図を示す。第2手動弁20の全開状態においては、ステム32が上昇したことによりストローク調整部材50の下端面50aにステム32の段差部32bが当接し、離間距離Dがゼロとなる。このように、ストローク調整部材50は、第2手動弁20の全開時、ストローク調整部材50の下端面50aにステム32の段差部32bに当接してステム32の上昇を規制する。
【0042】
以上のように本実施形態のガス供給システム1では、チャンバ4の直近に設置した第2手動弁20にバルブストロークΔSを調整するストローク調整機構36を設けている。これにより、第2手動弁20の個体差に基づくCv値のばらつきをストローク調整機構36により調整することができる。従って、チャンバ4の直近に第2手動弁20を設置するガス供給システム1において、第2手動弁20に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることにより、ガス供給システム1全体のプロセスガスの流量特性の変動を低減し、ガス流量制御の精度を高めることができる。
【0043】
しかも、本実施形態では、開閉に伴いステム32及びディスク28と連動し、シート44に着座及び離座するダイヤフラム24を有するダイレクトダイヤフラム弁を第2手動弁20に採用している。これにより、ガス供給システム1が適用されるプロセスの清浄度等の要求仕様や、狭小スペースしか確保できない等のガス供給システム1のレイアウトの制約上の要求を満たしながら、ガス供給システム1全体のガス流量制御の精度を高めることができる。
【0044】
詳しくは、ストローク調整機構36は、第2手動弁20の全開時におけるステム32の上昇を規制することによって、バルブストロークΔSを調整し、ひいては第2手動弁20のCv値を調整する。第2手動弁20の全開時におけるステム32の上昇規制は、ストローク調整部材50の下端面50aがステム32の段差部32bに当接することにより行われる。これにより、ガス流量制御時において、自動弁18におけるガス流量制御を第2手動弁20の全開時におけるCv値を加味して高精度に行うことが可能となる。
【0045】
また、ストローク調整機構36は、ボンネットナット26とハンドル34との間に位置し、ステム32が上下動自在に挿通され、ボンネットナット26に螺挿される筒状のストローク調整部材50と、ストローク調整部材50の外周面に螺合され、ボンネットナット26に対するストローク調整部材50の上下動を規制するロックナット52とから構成される。このようにステム32とは別部材のストローク調整部材50及びロックナット52を設けるだけの簡単な構成で、ストローク調整機構36を実現することができる。
【0046】
また、ストローク調整機構36では、ボンネットナット26に対するストローク調整部材50の螺進量Lを調整し、ひいてはストローク調整部材50の下端面50aとステム32の段差部32bとの離間距離Dを調整するだけの簡単な作業で、バルブストロークΔSを設定することができる。
【0047】
また、第2手動弁20の全閉時におけるストローク調整部材50の下端面50aとステム32の段差部32bとの離間距離DはバルブストロークΔSと等しい。これにより、ストローク調整部材50の螺進量Lにより調整したバルブストロークΔSを容易に視認することができるため、バルブストロークΔSの調整をより一層簡単に行うことができる。
【0048】
また、ステム32の先端部47にOリング49が装着され、ステム32の昇降に際し、先端部47がOリング49を介してボンネットナット26の挿通孔62に接触する。これにより、ステム32の雄ねじ部70をボンネットナット26の雌ねじ部68に対して螺進させたときに発生するパーティクルがOリング49によって弁室42に混入することが防止される。
【0049】
また、ステム32の先端部47は、ボンネットナット26の挿通孔62にOリング49を介して接触する。これにより、第2手動弁20の開閉作動時に、ステム32は挿通孔62において軸線方向に保持され、ステム32の揺動が防止される。従って、ガス流量制御時における流量変動が防止され、さらにはガス流量制御の精度を高めることができる。
【0050】
また、ステム32は、ストローク調整部材50の挿通孔54を貫通しており、ステム32とストローク調整部材50との軸線は互いに同軸に配置されている。これにより、ステム32は、ストローク調整部材50の挿通孔54において軸線方向に保持される。従って、第2手動弁20が水平方向に対し傾斜して設置される場合であっても、ステム32の軸線が挿通孔54の軸線に対してずれることはなく、ステム32の下端32aをディスク28に対して垂直に接触させることができ、ガス流量制御を高精度に行うことができる。
【0051】
また、ストローク調整部材50の雄ねじ部56は、並目ねじよりもねじピッチが小さく、ねじ山が多い細目ねじから形成されるのに対し、ステム32の雄ねじ部70は並目ねじから形成されている。これにより、第2手動弁20の開閉操作を迅速且つ円滑に行うことができる一方、バルブストロークΔSの調整を高精度に行うことができる。
【0052】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、本発明のガス供給システム1の構成機器は上述した構成に厳密に限定されるものではなく、また、当該ガス供給システム1はALDプロセス以外のプロセスを採用した半導体製造設備の他、化学産業設備、食品産業設備等の種々のプロセスのガス供給系にも適用可能である。
【0053】
また、ストローク調整機構36は、上述した構成に厳密に限定されるものではなく、ダイレクトダイヤフラム弁である第2手動弁20においてバルブストロークΔSを調整可能であれば良い。これにより、少なくとも第2手動弁20に起因したガス流量制御への影響を最小限に留めることができ、ガス供給システム1全体のガス流量制御の精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス供給システム
2 ガス供給源
4 チャンバ
6 流路
18 自動弁
20 第2手動弁(手動弁、ダイレクトダイヤフラム弁、ダイヤフラム弁)
24 ダイヤフラム
26 ボンネットナット
28 ディスク
32 ステム
32b 段差部
34 ハンドル
36 ストローク調整機構
44 シート
47 先端部
49 Oリング(シール部材)
50 ストローク調整部材
50a 下端面
52 ロックナット
54 ストローク調整部材の挿通孔
56 雄ねじ部(第1雄ねじ部)
62 ボンネットナットの挿通孔
70 雄ねじ部(第2雄ねじ部)