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特許7068713歯科用の画像処理装置、歯科用の撮影システム、歯科用の画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】歯科用の画像処理装置、歯科用の撮影システム、歯科用の画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20220510BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B6/14 300
A61B6/03 360G
A61B6/03 360D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019551117
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039182
(87)【国際公開番号】W WO2019082841
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2017204342
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 信
(72)【発明者】
【氏名】小林 公一
(72)【発明者】
【氏名】森清 友亮
(72)【発明者】
【氏名】坂上 勇太
(72)【発明者】
【氏名】亀田 剛
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-131403(JP,A)
【文献】特表2017-520292(JP,A)
【文献】国際公開第01/03065(WO,A1)
【文献】再公表特許第2015/076406(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定する位置決定手段と、
前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する座標系設定手段と、を備える、
歯科用の画像処理装置。
【請求項2】
前記座標系設定手段は、前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置との中点と、前記位置決定手段によって決定された前記切歯管の位置と、を規定の比率で内分する位置を、前記原点として定義する、
請求項1に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項3】
前記座標系設定手段は、
前記左側オトガイ孔の位置から前記右側オトガイ孔の位置へのベクトルを仮の座標軸として定義し、
前記中点から前記切歯管の位置を通るベクトルを前記第1の座標軸として定義し、
前記第1の座標軸と前記仮の座標軸との外積によって前記第2の座標軸を定義し、
前記第2の座標軸と前記第1の座標軸との外積によって前記第3の座標軸を定義する、
請求項2に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項4】
前記座標系設定手段によって設定された前記三次元座標系によって表された、前記上顎部と前記下顎部との少なくとも一方における歯に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得された前記歯に関する情報を出力する出力手段と、を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項5】
前記情報取得手段は、前記歯に関する情報として、前記上顎部と前記下顎部との少なくとも一方における複数の歯の位置座標を取得する、
請求項4に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項6】
前記情報取得手段は、前記複数の歯のそれぞれについて重心の位置座標を取得する、
請求項5に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項7】
前記情報取得手段は、前記複数の歯の位置座標を近似する近似曲線を取得し、
前記出力手段は、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標と前記近似曲線とを出力する、
請求項5又は6に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項8】
前記情報取得手段は、前記近似曲線として、前記複数の歯の位置座標を2次関数で回帰して得られた曲線を取得する、
請求項7に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項9】
前記出力手段は、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標のそれぞれと、前記情報取得手段によって取得された前記近似曲線と、の差を示す情報を出力する、
請求項7又は8に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項10】
前記出力手段は、前記座標系設定手段によって設定された前記三次元座標系における、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標のそれぞれから前記差の向きに前記差の大きさだけ離れた位置に、前記複数の歯のそれぞれを表す画像を表示させる、
請求項9に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項11】
前記情報取得手段は、前記歯に関する情報として、前記歯の歯軸を取得する、
請求項4から10のいずれか1項に記載の歯科用の画像処理装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の歯科用の画像処理装置と、
前記被検者の前記上顎部と前記下顎部とを撮影する撮影手段と、を備え、
前記位置決定手段は、前記撮影手段による撮影によって得られた前記三次元画像において、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とを決定する、
歯科用の撮影システム。
【請求項13】
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定し、
決定した前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する、
歯科用の画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定する位置決定手段、
前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する座標系設定手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用の画像処理装置、歯科用の撮影システム、歯科用の画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯の特徴を示す指標として歯軸を求める手法が知られている。例えば、非特許文献1は、非接触式レーザー計測器により生体外(in vitro)における上顎中切歯の表面形状を計測し、主成分分析法を用いて歯軸を求める手法を開示している。また、非特許文献2は、歯科用コーンビームCT(CBCT:Cone-Beam Computed Tomography)を用いて生体内(in vivo)におけるヒト歯20本のCT画像を取得し、主成分分析法を用いて歯軸を求める手法を開示している。更に、非特許文献3,4は、歯のCT画像から歯根部と顎骨とを手動で分離して歯の三次元的な形状を構築し、主成分分析法を用いて三次元の歯軸を決定する手法を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】飯島進吾、笠原紳、木村幸平、菊地正嘉、村本睦司、「上顎中切歯における歯軸に関する研究-定量的歯軸の決定-」、補綴誌、48、p.74-83、2004
【文献】G.Kim, et al., "Automatic Teeth Axes Calculation for Well-Aligned Teeth Using Cost Profile Analysis Along Teeth Center Arch", IEEE Trans Biomed Eng, VOL.59, NO.4, p.1145-1154, APRIL 2012
【文献】坂本信、春日勇人、坂井幸子、小林公一、遠藤英昭、「マイクロCTを用いた三次元歯軸の評価」、臨床バイオメカニクス、Vol.35、p.99-104、2014
【文献】坂本信、春日勇人、坂井幸子、小林公一、遠藤英昭、「コーンビームCTによる三次元歯軸の自動決定」、臨床バイオメカニクス、Vol.36、p.119-125、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1~4に開示された手法は、個別の歯ごとに設定されたローカルな座標系において歯軸を求めている。そのため、複数の歯の相対的な関係を評価することが難しい、との課題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の歯の相対的な関係を好適に評価することができる歯科用の画像処理装置、歯科用の撮影システム、歯科用の画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る歯科用の画像処理装置は、
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定する位置決定手段と、
前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する座標系設定手段と、を備える。
【0007】
前記座標系設定手段は、前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置との中点と、前記位置決定手段によって決定された前記切歯管の位置と、を規定の比率で内分する位置を、前記原点として定義してもよい。
【0008】
前記座標系設定手段は、
前記左側オトガイ孔の位置から前記右側オトガイ孔の位置へのベクトルを仮の座標軸として定義し、
前記中点から前記切歯管の位置を通るベクトルを前記第1の座標軸として定義し、
前記第1の座標軸と前記仮の座標軸との外積によって前記第2の座標軸を定義し、
前記第2の座標軸と前記第1の座標軸との外積によって前記第3の座標軸を定義してもよい。
【0009】
前記歯科用の画像処理装置は、
前記座標系設定手段によって設定された前記三次元座標系によって表された、前記上顎部と前記下顎部との少なくとも一方における歯に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得された前記歯に関する情報を出力する出力手段と、を更に備えても良い。
【0010】
前記情報取得手段は、前記歯に関する情報として、前記上顎部と前記下顎部との少なくとも一方における複数の歯の位置座標を取得してもよい。
【0011】
前記情報取得手段は、前記複数の歯のそれぞれについて重心の位置座標を取得してもよい。
【0012】
前記情報取得手段は、前記複数の歯の位置座標を近似する近似曲線を取得し、
前記出力手段は、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標と前記近似曲線とを出力してもよい。
【0013】
前記情報取得手段は、前記近似曲線として、前記複数の歯の位置座標を2次関数で回帰して得られた曲線を取得してもよい。
【0014】
前記出力手段は、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標のそれぞれと、前記情報取得手段によって取得された前記近似曲線と、の差を示す情報を出力してもよい。
【0015】
前記出力手段は、前記座標系設定手段によって設定された前記三次元座標系における、前記情報取得手段によって取得された前記複数の歯の位置座標のそれぞれから前記差の向きに前記差の大きさだけ離れた位置に、前記複数の歯のそれぞれを表す画像を表示させてもよい。
【0016】
前記情報取得手段は、前記歯に関する情報として、前記歯の歯軸を取得してもよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る歯科用の撮影システムは、
前記歯科用の画像処理装置と、
前記被検者の前記上顎部と前記下顎部とを撮影する撮影手段と、を備え、
前記位置決定手段は、前記撮影手段による撮影によって得られた前記三次元画像において、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とを決定する。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る歯科用の画像処理方法は、
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定し、
決定した前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
被検者の上顎部と前記被検者の下顎部とを示す三次元画像において、前記下顎部における左側オトガイ孔の位置と、前記下顎部における右側オトガイ孔の位置と、前記上顎部における切歯管の位置と、を決定する位置決定手段、
前記位置決定手段によって決定された前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置と前記切歯管の位置とにより定められる位置を原点とする三次元座標系であって、前記原点と前記切歯管の位置とを通る第1の座標軸と、前記左側オトガイ孔の位置と前記右側オトガイ孔の位置とを結ぶ直線と前記第1の座標軸とに垂直な第2の座標軸と、前記第1の座標軸と前記第2の座標軸とに垂直な第3の座標軸と、を有する前記三次元座標系を設定する座標系設定手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の歯の相対的な関係を好適に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る撮影システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態においてワールド座標系の仮X軸が定義された例を示す図である。
図4】本発明の実施形態においてワールド座標系のZ軸及び原点が定義された例を示す図である。
図5】本発明の実施形態においてワールド座標系のY軸が定義された例を示す図である。
図6】本発明の実施形態においてワールド座標系のX軸が定義された例を示す図である。
図7】本発明の実施形態においてワールド座標系が設定された三次元画像を上顎部及び下顎部の正面から見た図である。
図8】本発明の実施形態においてワールド座標系のX-Y平面に投影された被検者の上顎部の歯列を、歯軸及び回帰曲線と共に示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る撮影システムで実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
図10】本発明の実施形態に係る画像処理装置によって実行されるワールド座標系の設定処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本発明の評価実験において、ワールド座標系のX-Y平面に投影された被検者の上顎部の歯列に対して2次から4次曲線で回帰した結果を示す図である。
図12】本発明の評価実験において、ワールド座標系のX-Y平面に投影された被検者の下顎部の歯列に対して2次から4次曲線で回帰した結果を示す図である。
図13】本発明の評価実験において、ワールド座標系のX-Y平面に投影された被検者の上顎部の歯軸を示す図である。
図14】本発明の評価実験において、ワールド座標系のX-Y平面に投影された上顎部の歯軸とY軸との角度を、6名の被検者のそれぞれについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0023】
図1に、本発明の実施の形態に係る撮影システム100の全体構成を示す。撮影システム100は、被検者10の歯を撮影して診断することを目的とする歯科用のシステムである。図1に示すように、撮影システム100は、CT装置200と、画像処理装置300と、を備える。CT装置200と画像処理装置300とは、有線又は無線による通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0024】
CT装置200は、被検者10の三次元画像を取得するための撮影装置であって、被検者10の歯を含む部位を撮影対象としてコーンビーム方式で断層画像(CT画像)を取得する歯科用のコンピュータ断層撮影装置である。被検者10とは、検査の対象者であって、一例として、歯科、口腔外科等の医療施設を受診する患者である。CT装置200は、このような医療施設における診療室に設置される。
【0025】
CT装置200は、被検者10の上顎部と下顎部とを含む部位を撮影部位(撮影対象)として撮影する撮影手段として機能する。具体的には図1に示すように、CT装置200は、X線発生装置210と、X線カメラ220と、アーム230と、制御装置240と、を備える。
【0026】
X線発生装置210は、制御装置240からの指令に応じてX線を発生する。具体的に説明すると、CT装置200において、被検者10は、椅子に座った状態で図示しない固定部によって頭部が固定される。この状態において操作者がスイッチを操作して撮影を開始すると、制御装置240がX線発生装置210にX線を発生させる。X線発生装置210から発生したX線は、図示しない絞りによって照射範囲(例えば図1において点線で示す範囲)が絞られ、被検者10の撮影部位に向けて照射される。X線発生装置210から被検者10に照射されたX線は、X線カメラ220によって検出される。
【0027】
X線カメラ220は、X線に感度を有するCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等のイメージセンサを備え、X線発生装置210から発生したX線をイメージセンサによって検出する。これにより、被検者10の撮影部位をX線によって撮影したCT画像が得られる。
【0028】
X線発生装置210とX線カメラ220とは、アーム230によって被検者10を挟んで向かい合った状態で保持されている。アーム230は、制御装置240による指令に応じて回転する。これにより、X線発生装置210とX線カメラ220とは、向かい合ったまま被検者10の周囲を移動する。このようにして被検者10の撮影部位を様々な方向から撮影することができる。
【0029】
制御装置240は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリと、ユーザインタフェースと、通信インタフェースと、を備える。制御装置240は、CT装置200全体の動作を制御し、操作者からの指示に従ってCT装置200を上述したように動作させる。これにより、被検者10の上顎部と下顎部とを含む撮影部位をX線により様々な方向から撮影した複数のCT画像を取得する。
【0030】
画像処理装置300は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等、操作者に操作される端末装置である。画像処理装置300は、一例として、CT装置200が設置された医療施設の内部に設置される。図2に示すように、画像処理装置300は、制御部310と、記憶部320と、操作部330と、表示部340と、通信部350と、を備える。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
【0031】
制御部310は、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。制御部310において、CPUが、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、画像処理装置300全体の動作を制御する。
【0032】
記憶部320は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリである。記憶部320は、OS(Operating System)及びアプリケーションプログラムを含む、制御部310が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部320は、制御部310が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0033】
操作部330は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパッド、タッチパネル等の入力装置を備えており、操作者から操作を受け付ける。操作者は、操作部330を操作することによって、画像処理装置300に対する指令を入力することができる。
【0034】
表示部340は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。表示部340は、CT装置200から取得されたCT画像、及びCT画像から再構成された被検者10の三次元画像を表示する。このように、表示部340は、制御部310による処理の結果として得られた各種の情報を表示する。
【0035】
通信部350は、CT装置200を含む外部の装置と通信するためのインタフェースである。画像処理装置300は、例えば有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、又はその他の通信規格に従った通信線でCT装置200と接続されている。通信部350は、制御部310の制御のもとでCT装置200と通信し、CT装置200からCT画像のデータを取得する。また、通信部350は、有線又は無線による通信を介してインターネット等の広域ネットワークに接続することができる。
【0036】
図2に示すように、制御部310は、機能的に、画像データ取得部311と、再構成部312と、位置決定部313と、座標系設定部314と、情報取得部315と、出力部316と、を備える。制御部310において、CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して、そのプログラムを実行して制御することにより、これら各部として機能する。
【0037】
画像データ取得部311は、CT装置200において被検者10をCT撮影することによって得られた画像データを取得する。具体的に説明すると、画像データ取得部311は、通信部350を介してCT装置200と通信し、CT装置200から、被検者10を様々な方向からCT撮影した複数のCT画像を示す画像データを取得する。取得された画像データは、記憶部320に記憶される。画像データ取得部311は、制御部310が通信部350と協働することによって実現される。画像データ取得部311は、画像データ取得手段として機能する。
【0038】
再構成部312は、画像データ取得部311によって取得された画像データに基づいて三次元画像を再構成(再構築)する。画像データ取得部311によって取得された画像データは、CT装置200において、被検者10の上顎部と下顎部とを含む撮影部位を様々な方向から撮影した複数のCT画像を示している。再構成部312は、それぞれ二次元の断層画像である複数のCT画像を、公知の三次元化の手法を用いて三次元的に再構成する。具体的に説明すると、複数のCT画像のピクセルデータから三次元のボクセルデータを生成して、例えば図3図7に示すような三次元画像50を生成する。再構成部312は、制御部310が記憶部320と協働することによって実現される。再構成部312は、再構成手段として機能する。
【0039】
図3図7に示すように、再構成部312によって生成された三次元画像50は、CT装置200における撮影部位である被検者10の上顎部と下顎部とを示している。上顎部は、上顎の歯及び骨を含む部位であり、下顎部は、下顎の歯及び骨を含む部位である。再構成部312によって生成された三次元画像50は、必要に応じて表示部340に表示され、被検者10の診断のために使用される。
【0040】
位置決定部313は、再構成部312によって生成された三次元画像50において、下顎部における左側オトガイ孔の位置と、下顎部における右側オトガイ孔の位置と、上顎部における切歯管(上顎切歯管)の位置と、を決定する。オトガイ孔(Mental Foramen)とは、下顎骨の前面に左右一対存在する孔である。オトガイ孔は、成人では通常、第2小臼歯又は第1、第2小臼歯間の下方で下顎骨の中央の高さの位置し、オトガイ神経、オトガイ動脈及びオトガイ静脈が通っている。上顎切歯管(Maxillary Incisors Tube)とは、鼻腔と口腔とをつなぐ管であり、上顎骨口蓋突起を上面から下面へ前下方に向けて貫いている。上顎切歯管の入り口は、上顎の裏側(口蓋)の中央前方部に位置し、上顎切歯管の中は、蝶口蓋動脈と鼻口蓋神経とが通っている。
【0041】
このような左側及び右側のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とは、座標系設定部314がワールド座標系を設定するための基準となる位置として用いられる。操作者は、表示部340に表示された三次元画像50を見ながら、被検者10の左右のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とを手動で特定し、操作部330を操作して特定した位置を画像処理装置300に入力する。位置決定部313は、このようにして操作者から操作部330を介して入力された位置を、左右のオトガイ孔の位置及び上顎切歯管の位置として決定する。位置決定部313は、制御部310が操作部330及び表示部340と協働することによって実現される。位置決定部313は、位置決定手段として機能する。
【0042】
座標系設定部314は、位置決定部313によって決定された左側オトガイ孔の位置と右側オトガイ孔の位置と切歯管の位置とを基準として、ワールド座標系を設定する。ワールド座標系は、世界座標系又はグローバル座標系とも呼ばれ、三次元画像50の全体を表す三次元座標系である。各歯について個別に設定されたローカル座標系に対して、ワールド座標系は、三次元画像50に含まれる複数の歯の全体を包括的に評価するための座標系である。以下、図3から図7を参照して、ワールド座標系を設定する手順について説明する。
【0043】
第1に、座標系設定部314は、左側オトガイ孔の位置から右側オトガイ孔への位置へのベクトルを、仮の座標軸である仮X軸として定義する。仮X軸は、ワールド座標系を設定するための一時的な座標軸である。図3に、三次元画像50において定義された仮X軸を示す。図3に示すように、仮X軸は、左右のオトガイ孔を結び、下顎部を横に貫く直線(ベクトル)として表される。
【0044】
仮X軸を定義すると、座標系設定部314は、第2に、左側オトガイ孔の位置と右側オトガイ孔との位置の中点から上顎切歯管の位置を通るベクトルを、第1の座標軸であるZ軸として定義する。そして、座標系設定部314は、左右のオトガイ孔の中点と上顎切歯管の位置とを、規定の比率、具体的には2/3の比率で内分する位置を、原点Oとして定義する。図4に、三次元画像50において定義されたZ軸及び原点Oを示す。図4に示すように、Z軸は、下顎部から上顎部へと延びる直線(ベクトル)として表される。また、原点Oは、下顎部と上顎部との間における上顎部寄りの位置に設定される。
【0045】
Z軸と原点Oとを定義すると、座標系設定部314は、第3に、Z軸と仮X軸との外積によって、第2の座標軸であるY軸を定義する。具体的に説明すると、座標系設定部314は、Z軸を示す三次元ベクトルと仮X軸を示す三次元ベクトルとの外積を計算し、得られた三次元ベクトルによって定められる座標軸をY軸と定義する。図5に、三次元画像50において定義されたY軸を示す。図5に示すように、Y軸は、原点Oを通り、且つ、Z軸と仮X軸とに垂直な座標軸として定義される。
【0046】
Y軸を定義すると、座標系設定部314は、第4に、Y軸とZ軸との外積によって、第3の座標軸であるX軸を定義する。具体的に説明すると、座標系設定部314は、Y軸を示す三次元ベクトルとZ軸を示す三次元ベクトルとの外積を計算し、得られた三次元ベクトルによって定められる座標軸をX軸と定義する。図6に、三次元画像50において定義されたX軸を示す。図6に示すように、X軸は、原点Oを通り、且つ、Y軸とZ軸とに垂直な座標軸として定義される。
【0047】
このようにして、座標系設定部314は、ワールド座標系として、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とを有する三次元の直交座標系を構築する。図7に、構築されたワールド座標系を、上顎部及び下顎部の正面から見た、すなわちY軸に平行(X-Z平面に垂直)な視線によって見た様子を示す。図7に示すように、ワールド座標系の原点Oは、両頬側から見てほぼ中心に位置しており、且つ、Y-Z平面は、被検者10の上顎部、下顎部及び口腔内のほぼ中央を左右に分断する正中面として設定される。そのため、座標系設定部314によって設定されたワールド座標系は、三次元画像50における歯全体を評価するのに適した座標軸であると言える。座標系設定部314は、制御部310が記憶部320と協働することによって実現される。座標系設定部314は、座標系設定手段として機能する。
【0048】
図2に戻って、情報取得部315は、座標系設定部314によって設定されたワールド座標系によって表された、上顎部と下顎部との少なくとも一方における歯に関する情報を取得する。歯に関する情報とは、歯の位置、向き、状態等の特徴を示す情報であって、歯を診断又は分析するために必要となる情報である。情報取得部315は、ワールド座標系が設定された三次元画像50を分析することにより、三次元画像50から歯に関する情報を抽出する。情報取得部315は、制御部310が記憶部320と協働することによって実現される。情報取得部315は、情報取得手段として機能する。
【0049】
具体的に説明すると、情報取得部315は、歯に関する情報として、上顎部及び下顎部における歯列及び歯軸を取得する。歯列とは、複数の歯の並び(歯並び)を意味する。情報取得部315は、座標系設定部314によって設定されたワールド座標系において、上顎部及び下顎部における複数の歯の位置座標を計算することによって、歯列を取得する。
【0050】
より詳細に説明すると、情報取得部315は、歯列を構成する複数の歯の位置座標として、複数の歯のそれぞれについて重心の位置座標を取得する。ここで、情報取得部315は、重心の位置座標を取得するために、例えば非特許文献3に開示されたように、歯髄腔を考慮しない三次元形状重心を計算する。或いは、情報取得部315は、歯髄腔を考慮して各歯の重心を計算しても良い。このようにして、情報取得部315は、複数の歯のそれぞれについて重心の位置座標を計算することにより、上顎部及び下顎部のそれぞれについて歯列を取得する。
【0051】
また、情報取得部315は、上顎部及び下顎部における複数の歯のそれぞれについて、歯軸を取得する。ここで、情報取得部315は、歯軸を取得するための手法として、非特許文献3に開示された手法を用いることができる。具体的に説明すると、情報取得部315は、複数の歯のそれぞれについて、三次元主成分分析法を用いて長軸方向の主成分である三次元ベクトルを、座標系設定部314によって設定されたワールド座標系で計算する。そして、情報取得部315は、計算した三次元ベクトルを各歯の歯軸として取得する。
【0052】
歯列及び歯軸を取得すると、情報取得部315は、歯列を構成する複数の歯の位置座標を近似する近似曲線を取得する。近似曲線は、歯列を定量的に評価し、分かり易く表現するために近似した曲線である。情報取得部315は、近似曲線として、複数の歯の位置座標を2次~4次関数で回帰して得られた曲線を取得する。
【0053】
具体的に説明すると、情報取得部315は、ワールド座標系で得られた複数の歯の重心の位置座標を、ワールド座標系におけるX-Y平面とX-Z平面とのそれぞれに投影する。そして、情報取得部315は、投影された複数の歯の重心の位置座標を、2次関数、3次関数又は4次関数によって回帰する。言い換えると、情報取得部315は、投影された複数の歯の座標値を最も良く近似する2次、3次又は4次関数の係数を計算する。そして、情報取得部315は、計算した係数を有する2次、3次又は4次関数の曲線を、歯列を近似する近似曲線として取得する。
【0054】
図8に、被検者10の上顎部における前歯(中切歯:FDI歯式11,21、側切歯:FDI歯式12,22、犬歯:FDI歯式13,23)の歯列をX-Y平面に投影し、前歯の三次元モデル及び近似曲線と共に表した例を示す。ここで、図8では、近似曲線として、2次関数(Quadratic function)、3次関数(Cubic function)及び4次関数(Fourth-order function)で回帰して得られた回帰曲線を示している。また、図8では、歯根側から歯冠側への向きを歯軸の向きと定義し、その向きを図中において矢印で示している。このように、情報取得部315によって得られた歯列、歯軸及び近似曲線を、歯の三次元モデルと共に表示することで、被検者10が有する複数の歯の相対的な位置関係及び向きの関係が視覚的に理解し易くなる。
【0055】
なお、情報取得部315は、図8のように被検者10の上顎部における歯列をX-Y平面に投影した場合だけでなく、上顎部における歯列をX-Z平面に投影した場合と、下顎部における歯列をX-Y平面及びX-Z平面に投影した場合とについても、同様の手法によって近似曲線を取得する。その他、情報取得部315は、被検者10の上顎部又は下顎部における任意の部分の歯列を任意の平面に投影した場合についても、同様の手法によって近似曲線を取得することができる。
【0056】
このようにして近似曲線を取得すると、情報取得部315は、歯に関する情報として、更に、各歯の位置座標と歯列の近似曲線との差を計算する。近似曲線との差がより大きい歯は、歯列からより大きくずれているため矯正すべき歯であることを意味する。具体的に説明すると、情報取得部315は、X-Y平面に投影された各歯の位置座標と近似曲線との差として、各歯の重心位置と近似曲線とのY軸方向における距離を計算する。また、情報取得部315は、X-Z平面に投影された各歯の位置座標と近似曲線との差として、各歯の重心位置と近似曲線とのZ軸方向における距離を計算する。得られた差(距離)の大きさは、歯を矯正する場合において歯をどの程度移動させれば良いかの指標となる。また、得られた差の向き、すなわち各歯の近似曲線からのずれの向きは、歯を矯正する場合において歯をどの向きに移動させれば良いかの指標となる。また、得られた差の大きさ及び向きは、インプラントの植立位置及び植立方向を決定するための指標になる。
【0057】
出力部316は、情報取得部315によって取得された歯に関する情報を出力する。情報取得部315によって取得された歯に関する情報とは、具体的には、ワールド座標系で得られた複数の歯の位置座標(歯列)、歯軸、及び歯列を近似する近似曲線である。出力部316は、このような歯列、歯軸及び近似曲線を示す情報を、表示部340に表示させることによって出力する。
【0058】
一例として、出力部316は、図8に示したように、被検者10の上顎部における歯列をX-Y平面に投影した画像を、表示部340に表示させる。また、出力部316は、図8に示した画像だけでなく、被検者10の上顎部又は下顎部における任意の部分の歯を任意の平面に投影した画像を、歯列の近似曲線、歯軸等と共に、表示部340に表示させることができる。このように、出力部316は、被検者10の様々な部分の歯に関する情報を、様々な角度で表現した画像を出力することができる。出力部316は、制御部310が表示部340と協働することによって実現される。出力部316は、出力手段として機能する。
【0059】
更に、出力部316は、情報取得部315によって取得された複数の歯の位置情報のそれぞれと、情報取得部315によって取得された歯列の近似曲線と、の差を示す情報を出力する。具体的に説明すると、出力部316は、情報取得部315によって取得された各歯の位置座標と歯列の近似曲線との差の大きさと向きとを示す情報を出力する。例えば、出力部316は、図8に示した画像を表示部340に表示させる際に、各歯の位置に、近似曲線との差の大きさと向きとを示す矢印を併せて表示させる。これにより、操作者は、歯を矯正する場合に、どの歯をどの向きにどの程度移動させればよいかを容易に確認することができる。
【0060】
このとき、出力部316は、座標系設定部314によって設定されたワールド座標系における、情報取得部315によって取得された複数の歯の位置座標のそれぞれから近似曲線との差の向きに近似曲線との差の大きさだけ離れた位置に、複数の歯のそれぞれを表す画像を表示させてもよい。具体的に説明すると、出力部316は、複数の歯のそれぞれを表す画像として、図8に示した各歯の三次元モデルを、近似曲線との差の向きに差の大きさだけ移動させて表示部340に表示させてもよい。これにより、各歯の三次元モデルが歯列の近似曲線に沿った位置に表示されるため、操作者は、歯を矯正した場合における歯列の様子を、実際に歯を矯正する前に予め確認することができる。
【0061】
以上のように構成される撮影システム100において実行される処理の流れについて、図9及び図10を参照して、説明する。
【0062】
図9は、CT装置200と画像処理装置300との間で実行される処理の流れを示している。図9に示す処理は、操作者がCT装置200を操作して被検者10のCT撮影を開始する指示を入力すると、開始する。
【0063】
図9に示す処理を開始すると、CT装置200において、制御装置240は、被検者10のCT撮影を実行する(ステップS1)。具体的に説明すると、制御装置240は、アーム230を回転させながら、X線発生装置210によって被検者10の上顎部と下顎部とを含む撮影部位にX線を照射し、照射されたX線をX線カメラ220で検出する。これにより、制御装置240は、被検者10の上顎部と下顎部とを含む撮影部位を様々な角度から撮影した複数のCT画像を取得する。
【0064】
CT撮影を実行した後、CT装置200は、CT撮影によって得られた複数のCT画像を示す画像データを、画像処理装置300からの要求に応じて、又は自発的に、画像処理装置300に送信する(ステップS2)。画像処理装置300において、制御部310は、画像データ取得部311として機能し、CT装置200から送信された画像データを受信する。
【0065】
画像データを受信すると、制御部310は、再構成部312として機能し、受信した画像データから三次元モデルを作成する(ステップS3)。具体的に説明すると、制御部310は、受信した画像データによって示される複数のCT画像から三次元画像50を再構成する。これにより、制御部310は、被検者10の上顎部と下顎部とを示す三次元モデルを作成する。
【0066】
三次元モデルを作成すると、制御部310は、作成した三次元モデルを示す三次元画像50において、ワールド座標系を設定する(ステップS4)。ステップS4におけるワールド座標系の設定処理の詳細については、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0067】
図10に示すワールド座標系の設定処理を開始すると、制御部310は、位置決定部313として機能し、左右のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とを決定する(ステップS41)。具体的に説明すると、操作者は、表示部340に表示された三次元画像50を見ながら、被検者10の左右のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とを手動で特定する。制御部310は、このようにして操作者によって特定された位置を、操作部330を介して操作者から受け付け、受け付けた位置を、左右のオトガイ孔の位置及び上顎切歯管の位置として決定する。
【0068】
左右のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とを決定すると、制御部310は、左側オトガイ孔から右側オトガイ孔へのベクトルを仮X軸として定義する(ステップS42)。具体的には図3に示したように、制御部310は、被検者10の下顎部における両側のオトガイ孔を結ぶベクトルを、ワールド座標系における仮X軸として定める。
【0069】
仮X軸を定義すると、制御部310は、両側のオトガイ孔の中点から上顎切歯管を通るベクトルをZ軸と定義する(ステップS43)。そして、制御部310は、両側のオトガイ孔の中点から上顎切歯管への2/3の位置を原点Oと定義する(ステップS44)。具体的には図4に示したように、制御部310は、下顎部において定められた仮X軸上の点から上顎部における切歯管へ向けたベクトルをZ軸と定め、且つ、その間を規定の比率として2/3で内分する位置を原点Oとして定める。
【0070】
原点Oを定義すると、制御部310は、Y軸をZ軸と仮X軸の外積によって定義する(ステップS45)。具体的に説明すると、制御部310は、Z軸として定めたベクトルと仮X軸として定めたベクトルとの外積を計算し、得られたベクトルをY軸として定める。その結果、図5に示したように、Y軸は、原点Oを通り、Z軸と仮X軸とに垂直な座標軸として定められる。
【0071】
Y軸を定義すると、制御部310は、X軸をY軸とZ軸の外積によって定義する(ステップS46)。具体的に説明すると、制御部310は、Y軸として定めたベクトルとZ軸として定めたベクトルとの外積を計算し、得られたベクトルをX軸として定める。その結果、図6に示したように、X軸は、原点Oを通り、Y軸とZ軸とに垂直な座標軸として定められる。
【0072】
このようにして、制御部310は、CT装置200によって得られた被検者10の上顎部と下顎部とを示す三次元画像50において、三次元の直交座標系であるワールド座標系を設定する。ステップS42~S46において、制御部310は、座標系設定部314として機能する。
【0073】
図9に戻って、ステップS4においてワールド座標系を設定すると、制御部310は、各歯の位置及び歯軸を計算する(ステップS5)。具体的に説明すると、制御部310は、三次元画像50における被検者10の複数の歯のそれぞれについて、ステップS4で設定したワールド座標系での重心の位置座標を計算する。また、制御部310は、歯軸として、三次元主成分分析法を用いて各歯の長軸方向の三次元ベクトルを計算する。
【0074】
各歯の位置及び歯軸を計算すると、制御部310は、歯列の近似曲線を計算する(ステップS6)。具体的に説明すると、制御部310は、ステップS5で得られた複数の歯の重心の位置座標をX-Y平面とX-Z平面とのそれぞれに投影する。そして、制御部310は、X-Y平面とX-Z平面とのそれぞれに投影された複数の歯の位置座標を、2次、3次又は4次関数によって回帰し、得られた回帰曲線を歯列の近似曲線として取得する。
【0075】
歯列の近似曲線を計算すると、制御部310は、各歯の位置と近似曲線との差を計算する(ステップS7)。具体的に説明すると、制御部310は、X-Y平面とX-Z平面とのそれぞれにおいて、各歯の位置座標の、近似曲線からのずれを計算する。これにより、制御部310は、歯を矯正する場合における歯の移動の距離及び向きの指標を取得する。ステップS5~S7において、制御部310は、情報取得部315として機能する。
【0076】
続いて、制御部310は、出力部316として機能し、ステップS5~S7における結果を出力する(ステップS8)。具体的に説明すると、制御部310は、例えば図8に示したような、歯列、歯軸及び歯列の近似曲線を示す画像を、表示部340に表示させる。このとき、制御部310は、歯を矯正する際における歯の移動の距離及び向きの指標として、ステップS7において計算された各歯の位置と近似曲線との差の大きさと向きとを示す矢印等の情報を、図8に示した画像に更に表示させる。
【0077】
このように、制御部310は、三次元画像50の全体を包括する座標系としてワールド座標系を設定し、ワールド座標系で表現された歯列、歯軸、歯列の近似曲線等の情報を取得して表示する。これにより、操作者は、被検者10が有する複数の歯の相対的な関係性を容易に認識することができる。
【0078】
(実験結果)
次に、上述した撮影システム100によって得られたワールド座標系及び歯列の近似曲線を評価するために行った実験の結果について説明する。
【0079】
本実験では、被検者として成人6名(男性4名、女性2名、平均年齢29歳)の歯全体を、コーンビーム方式のCT装置200(KR-X SCAN、近畿レントゲン工業社)を用いて撮影した。CT撮影は、上下の歯が噛み合わさって重なると歯の位置及び向きを評価し難くなるため、被検者10がプラスチック製のバイトピース(噛み合わせ部分厚さ:2mm)を噛んだ状態で行った。そして、CT撮影によって得られたCT画像(tube voltage: 85kV,tube current: 8mA,voxel size: 0.256×0.256×0.256mm,field of view:φ123×123mm)から、三次元医用画像構築ソフト(ZedView 9.3、LEXI)を使用して三次元画像を再構成し、歯及び上下顎骨の三次元モデルを作成した。
【0080】
作成した三次元モデルに対して、上下顎骨の中切歯(Central incisor:FDI歯式11,21,31,41)、側切歯(Lateral incisor:FDI歯式12,22,32,42)及び犬歯(Canine:FDI歯式13,23,33,43)を対象として、歯軸(PC-A:Principal Component analysis-Axis)及び重心(COG:Center Of Gravity)を計算により求めた。具体的に説明すると、非特許文献3に開示されたように、三次元主成分分析法を用いて歯軸PC-Aとして歯の長軸方向の主成分である三次元ベクトルを求め、重心COGとして歯髄腔を考慮しない三次元形状重心を求めた。このとき、歯軸PC-A及び重心COGは、各歯について個別に設定されたローカル座標系で求めた。
【0081】
次に、前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)の空間的絶対位置を評価するために、図3から図7及び図10を参照して上述した手順で、すなわち左右のオトガイ孔と上顎切歯管という3箇所の特徴点から原点O、X軸、Y軸及びZ軸を定義して、ワールド座標系を設定した。そして、ローカル座標系で求めた上下顎骨の中切歯、側切歯及び犬歯の歯軸PC-A及び重心COGを、設定したワールド座標系でのベクトル及び座標値に変換して表現した。
【0082】
本実験では、異なる被検者間におけるワールド座標系の構築精度を評価した。具体的に説明すると、3名の被検者について設定したワールド座標系の原点Oの平均座標を求めた。そして、3名の被検者の原点Oのそれぞれについて、求めた平均座標との三次元的な距離を、原点Oの空間的な誤差として算出した。その結果、原点Oの空間的な誤差は、平均誤差で0.45±0.20 mmであり、最大誤差で0.94 mmであった。原点Oの平均誤差が0.45±0.20 mmであることから、異なる被検者間におけるワールド座標系の構築精度は、臨床上問題のない範囲であった。
【0083】
また、この3名の被検者について、ワールド座標系を設定する際に定義した仮X軸とX軸との相対角度差を評価した。その結果、仮X軸とX軸との相対角度差の平均誤差は、X-Z平面内の原点Oの周りにおいて2.7±0.7°であった。このことから、任意の被検者によるワールド座標系の構築の再現性は十分であると考えられる。以上のように、本手法のワールド座標系を設定するための3点の特徴点(左右のオトガイ孔2点及び上顎切歯管1点)が顎骨の解剖学的特徴点として明確であることが、安定したワールド座標系の構築につながったものと思われる。
【0084】
続いて、6名の被検者のそれぞれについてワールド座標系で得られた歯列を2~4次曲線で回帰した結果を評価した。図11及び図12は、6名の被検者のうちの1名について、上顎部及び下顎部の前歯部の歯列を表現するために、ワールド座標系において得られた各歯の重心COGの座標値をX-Y平面に投影し、投影した座標値を2次から4次関数の曲線で回帰した結果を示す。更に、図11及び図12では、各歯の歯軸をX-Y平面に投影した直線を併せて示している。
【0085】
図11及び図12において、各歯の重心COGの座標値を2次、3次及び4次関数のそれぞれで回帰して得られた曲線は、ほとんど重なって見えている。特に2次関数による回帰曲線と3次関数による回帰曲線とでは、大きな相違は見られなかった。一方で、4次関数による回帰曲線は、2次及び3次関数による回帰曲線とは比較的異なることが分かった。なお、上顎部及び下顎部の歯列をX-Z平面に投影した場合についても、ほぼ同様の結果が得られた。
【0086】
6名の被検者のそれぞれについて、このような上下顎部の前歯の歯列に対する2次~4次関数による回帰を実行し、相関係数rを計算した。その結果、相関係数rは、2次関数でr=0.79~0.99、3次関数でr=0.89~0.99、4次関数でr=0.94~1.00となり、回帰曲線の次数が増加するほど相関係数rが上昇する傾向が見られた。回帰曲線の次数を上げることで相関係数rが上昇することは明らかではあるが、回帰曲線の次数を上げることにより変曲点が生じる。そのため、目的に応じて回帰曲線の種類を選択する必要があるが、本実験のように歯列と歯軸とを評価する場合には、高次の曲線を使用することはあまり適さず、低次の2次関数による回帰曲線で示すことが、理解のし易さの観点及び計算量を抑える観点から適していることが分かった。言い換えると、画像処理装置300において、情報取得部315は、歯列を近似する近似曲線として、歯列を2次関数で回帰して得られた曲線を取得することが好適である。
【0087】
更に、6名の被検者のそれぞれについてワールド座標系で得られた歯軸PC-Aを評価した。図13に、1名の被検者の上顎部の前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)について、ワールド座標系のX-Y平面に投影した歯軸PC-Aを示す。図13において、X-Y平面に投影された歯軸PC-AとY軸とのなす角度をαXYと定義した。ここで、角度αXYの向きについて、上下顎歯における右側前歯の歯軸PC-AとY軸とのなす角度αXYは、原点Oを通る正中面(Y-Z平面)に対して右頬側への向きを正と定義し、左側前歯の歯軸PC-AとY軸とのなす角度αXYは、Y-Z平面に対して左頬側への向きを正と定義した。なお、図13における11~23の数字はFDI歯式を表す。図14でも同様である。
【0088】
図14に、6名の被検者(#1~#6)の上顎部の前歯(中切歯:11,21、側切歯:12,22、犬歯:13,23)について求めた角度αXYを示す。図14に示すように、右側前歯(中切歯:11、側切歯:12、犬歯:13)は多くの被検者で右頬側を向き、左側前歯(中切歯:21、側切歯:22、犬歯:23)は大よそ左頬側を向いている。一方で、被検者#2の上顎歯(11,12,13)のように右側前歯が左頬側を向く場合もあり、個人差が認められる。また、図示しないが、下顎部の歯軸PC-AをX-Y平面に投影した場合、及び、上下顎部の歯軸PC-AをX-Z平面に投影した場合についても、図13及び図14と同様に評価した。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係る撮影システム100及び画像処理装置300は、CT装置200によるCT撮影によって得られた被検者10の上顎部と下顎部とを示す三次元画像50において、左右のオトガイ孔の位置と上顎切歯管の位置とを基準としてワールド座標系を設定する。このように、左右のオトガイ孔と上顎切歯管という3つの特徴点を基準としてワールド座標系を設定することで、被検者10が有する複数の歯の相対的な関係を評価するのに適した座標系として、普遍的で個人差の少ないワールド座標系を一義的に定めることができる。
【0090】
更に、本実施形態に係る撮影システム100及び画像処理装置300は、被検者10の歯に関する情報として、歯列、歯軸及び歯列の近似曲線を、ワールド座標系で計算して出力する。これにより、被検者10が有する歯の位置、向き等の特徴を、複数の歯の間で比較しながら評価することができ、歯科矯正時における歯の三次元移動測定、インプラントの手術前計画等に活用することができる。
【0091】
特に、従来の歯列を求める手法として、被検者10の口腔内模型を作成し、三次元測定機又はデジタルノギスによって口腔内模型を測定して歯列を求める手法、口腔内模型を写真画像に写してからデジタイジングする手法等がある。しかしながら、これらの手法では、歯頚上部の表面的な特徴から歯列を求めているため、正確性及び再現性に課題があった。これに対して、本実施形態に係る撮影システム100及び画像処理装置300は、ワールド座標系として、上下顎部の特徴点を用いて普遍的で個人差の少ない座標系を設定し、設定したワールド座標系のもとで、被検者10が有する複数の歯の相対的な関係を評価する。その結果、顔面頭蓋に対する複数の歯の位置及び複数の歯の位置の相対的な関係の特徴等のような、歯列を含む複数の歯の相対的な関係によって定められる特徴を、より好適に評価することができる。
【0092】
(変形例)
以上に本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0093】
例えば、上記実施形態では、位置決定部313は、操作者によって手動で特定された位置を、左右のオトガイ孔の位置及び上顎切歯管の位置として決定した。しかしながら、本発明において、位置決定部313は、操作者による手動以外の方法で、左右のオトガイ孔の位置及び上顎切歯管の位置を決定しても良い。例えば、位置決定部313は、特徴点抽出の手法を用いて三次元画像50における上顎部及び下顎部の特徴点を抽出することにより、左右のオトガイ孔の位置及び上顎切歯管の位置を決定しても良い。
【0094】
上記実施形態では、座標系設定部314は、左右のオトガイ孔の中点と上顎切歯管の位置とを2/3の比率で内分する位置を、ワールド座標系の原点Oと定義した。しかしながら、本発明において、座標系設定部314は、上記実施形態とは異なる手順によって原点Oを定義しても良い。例えば、原点Oを定義するための規定の比率は2/3であることに限らず、その他の値であっても良い。或いは、位置決定部313によって決定された左側オトガイ孔の位置と右側オトガイ孔の位置と切歯管の位置とにより定められる位置であれば、左右のオトガイ孔の中点を求めずに原点Oを定義しても良い。また、ワールド座標系の第1から第3の座標軸は、上記実施形態においてX軸、Y軸及びZ軸を定義した手順に限らず、どのような手順で定義しても良い。
【0095】
上記実施形態では、CT装置200と画像処理装置300とはそれぞれ独立した装置であった。しかしながら、本発明において、CT装置200と画像処理装置300とが一体となっていても良い。言い換えると、被検者10の三次元画像を取得するための撮影手段を備えた1つの装置が、本発明に係る撮影システムとして機能しても良い。例えば、CT装置200の制御装置240が上述した画像処理装置300の機能を備えていても良い。
【0096】
或いは、画像処理装置300は、上記実施形態でのようにCT装置200が設置された医療施設の内部に設置されることに限らず、医療施設の外部に設置され、CT装置200と広域ネットワークを介して通信可能に接続されていても良い。この場合、画像処理装置300は、広域ネットワークを介してCT装置200からCT画像のデータを取得して上述した処理を実行する。
【0097】
上記実施形態では、CT装置200は、コーンビーム方式で被検者10のCT画像を取得する装置であった。しかしながら、本発明において、CT装置200は、コーンビーム方式以外の方式のCT(コンピュータ断層撮影)によって、被検者10のCT画像を取得しても良い。更に、画像処理装置300によって処理される被検者10の三次元画像は、CTによって得られたものに限らない。例えば、画像処理装置300は、磁気共鳴画像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)によって得られた被検者10の三次元画像に対して、上述した処理を実行することも可能である。
【0098】
上記実施形態では、画像処理装置300が表示部340を備えていた。しかしながら、本発明において、表示部340は、画像処理装置300の外部に設けられていても良い。この場合、出力部316は、情報取得部315によって取得された歯列、歯軸等の歯に関する情報を、画像処理装置300の外部に設けられた表示部340に送信し、表示部340に表示させることによって出力する。
【0099】
上記実施形態では、画像処理装置300の制御部310において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって、図2に示した各部として機能した。しかしながら、本発明において、制御部310は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、各種制御回路等の専用のハードウェアを備え、専用のハードウェアが、図2に示した各部として機能しても良い。この場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現しても良いし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現しても良い。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現しても良い。なお、これら専用のハードウェア及びCPUを含む各機能を実行する主体を総称してプロセッサと呼ぶことができる。
【0100】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた画像処理装置及び撮影システムとして提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の情報処理装置等を、本発明に係る画像処理装置及び撮影システムとして機能させることもできる。すなわち、上記実施形態で例示した画像処理装置300及び撮影システム100による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る画像処理装置及び撮影システムとして機能させることができる。
【0101】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0102】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0103】
本出願は、2017年10月23日に出願された、日本国特許出願特願2017-204342号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2017-204342号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0104】
10…被検者
50…三次元画像
100…撮影システム
200…CT装置
210…X線発生装置、220…X線カメラ、230…アーム、240…制御装置
300…画像処理装置
310…制御部、311…画像データ取得部、312…再構成部、313…位置決定部、314…座標系設定部、315…情報取得部、316…出力部
320…記憶部、330…操作部、340…表示部、350…通信部
図1
図2
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