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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】二酸化炭素排出量削減製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20220510BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220510BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B05D7/24 303A
B01D53/14 100
B01D53/62
B01D53/81
B01J20/06 A
B01J20/06 B
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/16
B01J20/28 A ZAB
B32B27/18 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021162039
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021053852
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514323257
【氏名又は名称】三登商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左成 勝男
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094751(JP,A)
【文献】特開2007-119623(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B01D 53/14- 53/18,
53/34- 53/85,
53/92, 53/96
B01J 20/00- 20/28,
20/30- 20/34
C09D 1/00- 10/00,
101/00-201/10
D06N 1/00- 7/06
D06M 10/00- 11/84,
16/00,
19/00- 23/18
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般消費者向けまたは産業用途向け製品が焼却処分される際に、前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品から発生する二酸化炭素の排出量を削減するための、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法であり、
前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品の基材に対して、二酸化炭素吸収カプセルの分散液を付与し、二酸化炭素吸収層を形成する工程を含み、
前記二酸化炭素吸収カプセルは、二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造であり、
前記二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、5~12質量%であり、
前記二酸化炭素吸収物質は、金属水酸化物、金属酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化合物、リチウムケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記二酸化炭素吸収物質の含有量は、二酸化炭素吸収カプセル中、0.01~10質量%であり、
前記二酸化炭素吸収層の厚みは、2~100μmであり、
前記二酸化炭素吸収層は、最外層として形成され、
前記基材は、プラスチック基材、布地、皮革または紙であり、
前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品は、樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品である、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、種々の基材に対して原料として配合するのではなく、既存の種々の基材(一般消費者向け製品の基材)に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用でき、かつ、基材を燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することのできる、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼した際に発生する二酸化炭素の量を削減するために、炭酸カルシウムやゼオライト等を二酸化炭素吸収剤として配合した製品が知られている(特許文献1~2)。また、特許文献3の積層体は、接着層に二酸化炭素吸収剤が含まれる。しかしながら、このような積層体は、さらにシーラント層が接着層の上に形成されることによって完成される積層体である。シーラント層が形成される前の状態(すなわち接着層が形成された時点での状態)では、市場に流通する完成品ではなく、一般消費者向けの製品でもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-106171号公報
【文献】特開平7-188487号公報
【文献】特開2017-94751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~2に記載の製品は、二酸化炭素吸収剤を、PET製品や紙を製造する際に、原料として混入させて作製される。混入させる際に、二酸化炭素吸収剤は、たとえば、ペレットやチップ等の形状に加工され、適用される。また、特許文献3の積層体は、接着層に二酸化炭素吸収剤が含まれる。しかしながら、このような積層体は、さらにシーラント層が接着層の上に形成されることにより完成される積層体である。シーラント層が形成される前の状態(すなわち接着層が形成された時点での状態)では、市場に流通する完成品ではなく、一般消費者向けの製品でもない。
【0005】
そのため、特許文献1~2に記載の従来の製品は、たとえば、ペレットやチップ等の形状に加工する手間があったり、製造装置の改良を要するなどの問題があった。そのため、従来製品は、製造コスト、製造しやすさ、歩留まり等の点において、改善の余地があった。また、従来の製品は、二酸化炭素吸収剤を、原料として混入させていたため、使用できる基材が限られていた。また、特許文献3に記載の積層体は、接着層に二酸化炭素吸収剤が含まれるとのことであるが、接着層の上にシーラント層を設けることにより完成される積層体であり、言い換えれば、シーラント層が形成される前の状態では、積層体として完成されていない。すなわち、特許文献3に記載の発明は、すでに一般消費者向け製品として市場に流通した後の完成品である製品に対して、そのような市場に流通した後の製品を焼却処分する際に発生する二酸化炭素を削減するためになされた発明ではない。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、種々の基材に対して原料として配合するのではなく、既存の種々の製品(一般消費者向けに完成された製品)の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用でき、そのような製品が焼却処分される際に、基材を燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することのできる、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
【0008】
(1)一般消費者向けまたは産業用途向け製品が焼却処分される際に、前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品から発生する二酸化炭素の排出量を削減するための、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法であり、前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品の基材に対して、二酸化炭素吸収カプセルの分散液を付与し、二酸化炭素吸収層を形成する工程を含み、前記二酸化炭素吸収カプセルは、二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造であり、前記二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、3~15質量%であり、前記二酸化炭素吸収層の厚みは、2~100μmであり、前記基材は、プラスチック基材、布地、皮革または紙であり、前記一般消費者向けまたは産業用途向け製品は、樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品である、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法。
【0009】
このような構成によれば、本発明の製造方法は、種々の基材に対して、原料として配合するのではなく、既存の製品(一般消費者向けまたは産業用途向けに完成された製品)の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用することができる。そのため、基材の製造装置に改良を加える必要がない。また、二酸化炭素吸収物質をペレットやチップの形状に加工する必要がない。そのため、本発明の製造方法は、従来の方法と比較して、二酸化炭素排出量削減製品を製造しやすい。さらに、得られた二酸化炭素排出量削減製品は、付与前の基材を燃焼させる場合と比較して、燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することができる。さらに、本発明が対象とする製品は、それ自体が、一般消費者向けまたは産業用途向け製品として完成された製品である。すなわち、上記特許文献3に記載の積層体のように、さらにシーラント層が形成されるような未完成品ではない。したがって、本発明の製造方法は、一般消費者向けの製品(たとえば、各種樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品)や、産業用途向けの製品(各種梱包材や車両シート等)を処分する際に、焼却の前に、二酸化炭素吸収層を形成する工程が実施される。このような工程は、非常に簡便である。さらに、本発明は、従来の方法では適用が困難であった布製品などにも適用可能である。また、本発明の製造方法は、基材に対して原料として混入させる必要がない。そのため、プラスチック基材や紙などの基材に対して適用する場合であっても、本発明の製造方法は、製造装置の改良や、加工の手間もない。
【0010】
(2)前記二酸化炭素吸収層は、最外層として形成される、(1)記載の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法。
【0011】
このような構成によれば、本発明の製造方法は、製品の最外層として、二酸化炭素吸収層が形成される。すなわち、本発明は、製品を焼却処分する際に、製品の表面に処理を施す簡便な方法である。また、本発明は、上記した特許文献3に関する積層体のように、さらにシーラント層が設けられることにより完成される積層体の発明とは著しく相違する。
【0012】
(3)前記二酸化炭素吸収物質は、金属水酸化物、金属酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化合物、リチウムケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、(1)または(2)記載の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法。
【0013】
このような構成によれば、得られた二酸化炭素排出量削減製品は、付与前の基材を燃焼させる場合と比較して、燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量をより削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、種々の基材に対して原料として配合するのではなく、既存の種々の製品(一般消費者向けまたは産業用途向けに完成された製品)の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用でき、そのような製品が焼却処分される際に、基材を燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することのできる、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<二酸化炭素排出量削減製品の製造方法>
本発明の一実施形態の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法(以下、本製造方法ともいう)は、一般消費者向けまたは産業用途向け製品が焼却処分される際に、一般消費者向けまたは産業用途向け製品から発生する二酸化炭素の排出量を削減するための、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法である。一般消費者向けまたは産業用途向け製品の基材に対して、二酸化炭素吸収カプセルの分散液を付与し、二酸化炭素吸収層を形成する工程を含む。二酸化炭素吸収カプセルは、二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造である。二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、3~15質量%である。二酸化炭素吸収層の厚みは、2~100μmである。基材は、プラスチック基材、布地、皮革または紙である。一般消費者向けまたは産業用途向け製品は、樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品である。以下、それぞれについて説明する。
【0016】
(二酸化炭素吸収カプセル)
二酸化炭素吸収カプセルは、基材に付与される分散液中に分散されるカプセルである。二酸化炭素吸収カプセルは、二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造である。
【0017】
二酸化炭素吸収物質は特に限定されない。一例を挙げると、二酸化炭素吸収物質は、金属水酸化物、金属酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化合物、リチウムケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む。二酸化炭素吸収物質がこれらから選択されることにより、得られる二酸化炭素排出量削減製品は、付与前の基材を燃焼させる場合と比較して、燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量をより削減することができる。
【0018】
金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。アルミノケイ酸塩は、アルミノシリケート、ゼオライト等が挙げられる。チタン酸化合物は、チタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウム等が挙げられる。リチウムケイ酸塩は、リチウムシリケート等が挙げられる。このほか、二酸化炭素吸収物質は、有機化合物の二酸化炭素吸収物質であってもよい。有機化合物の二酸化炭素吸収物質は、たとえば、テレフタル酸カリウム熱分解物、ココナツ中果皮繊維等である。
【0019】
二酸化炭素吸収カプセルは、このような二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造である。両親媒性脂質は、一分子内に親水基と親油基とを有する脂質である。両親媒性脂質は、リン脂質が挙げられ、たとえば、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等が好ましい。両親媒性脂質は、自己組織化によって水中あるいは有機溶媒中で脂質二重層を形成することができる。本実施形態では、この脂質二重層内に、上記した二酸化炭素吸収物質が取り込まれている。
【0020】
二酸化炭素吸収カプセルの製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、二酸化炭素吸収カプセルは、超臨界逆相蒸発法によって形成され得る。超臨界逆相蒸発法は、たとえば、再表02/032564号公報、特開2003-119120号公報、特開2005-298407号公報および特開2008-063284号公報等に開示されている超臨界逆相蒸発方法および装置を用いて行い得る。
【0021】
二酸化炭素吸収カプセルの直径は特に限定されない。一例を挙げると、二酸化炭素吸収カプセルの直径は、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることがさらに好ましい。また、二酸化炭素吸収カプセルの直径は、1000nm以下であることが好ましく、500nmであることがより好ましく、250nmであることがさらに好ましい。二酸化炭素吸収カプセルは、カプセル中に、水溶液を封じ込めることができ、二酸化炭素吸収物質が親水性の場合、水溶液に添加し、二酸化炭素吸収物質が疎水性の場合、膜内に固定することによって、二酸化炭素吸収物質をカプセル内に封入することができる。なお、二酸化炭素吸収カプセルは、市販品が用いられてもよく、たとえば、アクテイブ(株)製のナノベシクル二酸化炭素削減添加剤が用いられ得る。
【0022】
二酸化炭素吸収物質の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、二酸化炭素吸収物質の含有量は、二酸化炭素吸収カプセル中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。また、二酸化炭素吸収物質の含有量は、二酸化炭素吸収カプセル中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
(分散液)
分散液は、上記した二酸化炭素吸収カプセルを分散させた液体である。分散液は特に限定されない。一例を挙げると、分散液は、各種油性溶媒、水性溶媒、樹脂溶媒、インク組成物等のうち、上記した二酸化炭素吸収カプセルが、脂質二重層の構造を維持し得る溶媒であればよい。
【0024】
分散液における二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、付与後に得られる二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、3質量%以上となる量であればよく、5質量%以上となる量であることが好ましい。また、分散液における二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、付与後に得られる二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、15質量%以下となる量であればよく、12質量%以下となる量であることが好ましい。二酸化炭素吸収カプセルの含有量が3質量%以上であることにより、得られる二酸化炭素排出量削減製品は、付与前の基材を燃焼させる場合と比較して、燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することができる。一方、二酸化炭素吸収カプセルの含有量が15質量%以下であることにより、二酸化炭素吸収カプセルが分散液中に均一に分散しやすく、かつ、基材に適用した際に、基材の風合いや外観、透明性などを損ないにくい。
【0025】
(基材)
基材は、二酸化炭素吸収カプセルの分散液が付与されることにより、二酸化炭素吸収層が形成される。基材は、プラスチック基材、布地、皮革または紙である。また、基材は、一般消費者向けまたは産業用途向けの製品として市場に流通する製品の基材である。本実施形態の製造方法は、これらの基材を含む種々の基材に適用することができる。すなわち、本実施形態の製造方法は、種々の基材に対して、原料として二酸化炭素吸収物質を配合するのではなく、既存の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用することができる。そのため、基材の製造装置に改良を加える必要がない。基材に付与できれば適用できるため、基材は、何ら限定されない。また、二酸化炭素吸収カプセルは、分散液の状態で基材に付与されればよいため、二酸化炭素吸収物質をペレットやチップの形状に加工する必要がない。そのため、本実施形態の製造方法は、従来の方法と比較して、幅広い基材を採用でき、かつ、二酸化炭素排出量削減製品を製造しやすい。
【0026】
プラスチック基材は、たとえば、ポリエステル系ポリマー(たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(たとえば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(たとえば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状またはノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(たとえば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(たとえば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、およびポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等である。また、このようなプラスチック基材を含む樹脂製品は、たとえば、ペットボトル、各種食料品容器(醤油、食料油等)、洗剤(シャンプー等も含む)。産業用としては、人工芝、各種容器玩具、電化製品等である。また、布地基材を含む布製品は、たとえば、ポリエステル素材(ゲームシャツ、ジャンパー、ジャージー等)等である。また、紙基材を含む紙製品は、たとえば、送り状、(発送資材)壁紙、シール材全般等である。
【0027】
皮革は、各種天然皮革、合成皮革を含む。天然皮革は、牛、馬、豚、山羊、羊、鹿、カンガルーなどの哺乳類動物の皮革、ダチョウなどの鳥類動物の皮革、亀、トカゲ、蛇、鰐などの爬虫類動物の皮革、サメ、エイなどの魚類動物の皮革等である。合成皮革(人工皮革)は、各種ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどの樹脂繊維によって、ニット、織物、不織布などの基布を作り、これに塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタンなどの溶液を塗布または含浸させ、エンボス加工やもみ加工をして、皮革に似せて仕上げた皮革である。また、このような皮革基材を含む皮革製品は、たとえば、カバン、バッグ、ソファー(車両、電車、飛行機等のシートを含む)、衣服、靴、各種革製品の小物類(財布、キーケース等)等である。
【0028】
(二酸化炭素吸収層)
二酸化炭素吸収層は、上記した分散液が基材に付与され、乾燥されることにより形成される層である。二酸化炭素吸収層には、二酸化炭素吸収カプセルが含まれる。
【0029】
二酸化炭素吸収層の厚みは、2μm以上であればよく、3μm以上であることがより好ましい。また、二酸化炭素吸収層の厚みは、100μm以下であればよく、80μm以下であることが好ましい。二酸化炭素吸収層の厚みが2μm以上であることにより、基材を燃焼した際の二酸化炭素排出量を削減しやすい。一方、二酸化炭素吸収層の厚みが100μm以下であることにより、基材の風合いや外観、透明性などを損ないにくい。
【0030】
二酸化炭素吸収層は、基材に対して、上記した二酸化炭素吸収カプセルの分散液を付与し、乾燥することにより形成し得る。分散液を付与する方法は特に限定されない。一例を挙げると、分散液は、基材に対して、各種印刷装置(スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等)、各種塗工装置などにより付与することができる。また、付与された分散液を乾燥する方法は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥方法は、熱乾燥、活性線による硬化など、基材や分散液の性状に合わせて適宜採用することができる。
【0031】
なお、本実施形態において、基材に対する分散液の付与は、間接的に行われてもよい。すなわち、別途準備した転写用の基材に分散液を付与し、転写用の基材上に二酸化炭素吸収層を設けた転写フィルムを作製し、次いで、得られた転写フィルムを用いて、所望の基材に二酸化炭素吸収層を転写してもよい。また、分散液を、各種公知の方法(スプレー噴射、コーターによる塗布等)により基材に付与してもよい。
【0032】
二酸化炭素吸収層は、このように、一般消費者向けまたは産業用途向けの製品の基材に対して、二酸化炭素吸収層が形成される。形成された二酸化炭素吸収層は、最外層として設けられることが好ましい。これにより、二酸化炭素排出量削減製品は、廃棄する際に、焼却処分の前に、製品の基材に二酸化炭素吸収層を形成し、その後、焼却処理を行うことができる。すなわち、本実施形態の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法は、製品を焼却処分する際に、製品の表面に処理を施す簡便な方法である。また、本実施形態の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法は、上記した特許文献3に関する積層体のように、さらにシーラント層が設けられることにより完成される積層体の発明とは著しく相違する。すなわち、特許文献3の積層体は、シーラント層が設けられることによって完成され、その後、使用され得るのに対し、本実施形態の二酸化炭素排出量削減製品は、一般消費者または産業用途において使用され得る完成された製品を、焼却処分する際に、二酸化炭素排出量を削減するために、二酸化炭素吸収層が、好適には最外層として形成された製品を製造する方法である。
【0033】
得られた二酸化炭素排出量削減製品は、廃棄する際に焼却処分される。本実施形態の二酸化炭素排出量削減製品は、二酸化炭素吸収物質を含む二酸化炭素吸収カプセルが付与された二酸化炭素吸収層が設けられている。そのため、燃焼すると、発生する二酸化炭素の排出量が削減される。なお、本実施形態において、二酸化炭素吸収層を形成する工程は、焼却処分の直前に、製品に対して実施されてもよく、直前でなく予め実施されてもよい。この場合、得られた製品は、二酸化炭素吸収層が形成された後で、一般消費者向けまたは産業用途としてさらに使用し続けられ、その後、焼却処分されてもよい。
【0034】
二酸化炭素の排出量が削減されるには、種々の機序が関与すると考えられ、その一例は以下のとおりと推測される。すなわち、得られた二酸化炭素排出量削減製品が燃やされると、二酸化炭素が発生する。これに対し、二酸化炭素吸収物質は、脱水素触媒として働き、炭素と酸素との結合を抑制するとともに、炭素同士の結合を促進する(すなわち炭化反応を促進する)。その結果、炭化物が多く生成される。得られた炭化物は、1000℃以上の高温を与えても二酸化炭素を発生しにくく、残差(灰)に閉じ込められる。これにより、大気中への二酸化炭素の排出量が削減される。
【0035】
以上、本実施形態の二酸化炭素排出量削減製品の製造方法によれば、種々の基材に対して、原料として配合するのではなく、既存の製品(一般消費者向けまたは産業用途向けに完成された製品)の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用することができる。そのため、基材の製造装置に改良を加える必要がない。また、二酸化炭素吸収物質をペレットやチップの形状に加工する必要がない。そのため、本実施形態の製造方法は、従来の方法と比較して、二酸化炭素排出量削減製品を製造しやすい。さらに、得られた二酸化炭素排出量削減製品は、付与前の基材を燃焼させる場合と比較して、燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することができる。さらに、本実施形態が対象とする製品は、それ自体が、一般消費者向けまたは産業用途向け製品として完成された製品である。すなわち、上記特許文献3に記載の積層体のように、さらにシーラント層を形成することを意図した製品ではない。したがって、本実施形態の製造方法は、一般消費者向けまたは産業用途向けの製品(たとえば、各種樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品)を処分する際に、焼却の前に、二酸化炭素吸収層を形成する工程が実施される。このような工程は、非常に簡便である。さらに、本実施形態は、従来の方法では適用が困難であった布製品などにも適用可能である。また、本実施形態の製造方法は、基材に対して原料として混入させる必要がない。そのため、プラスチック基材や紙などの基材に対して適用する場合であっても、本実施形態の製造方法は、製造装置の改良や、加工の手間もない。
【実施例
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0037】
(実施例1)
二酸化炭素吸収カプセル(二酸化炭素吸収剤としてアルミノケイ酸ナトリウムを0.05~0.2質量%含む。リン脂質からなる)を、酢酸エチルに分散させた分散液を準備した。得られた分散液を、PETフィルム(厚み100μm)に対し、乾燥後の二酸化炭素吸収層の厚みが5μmとなるよう、コーターを用いて付与し、100~120℃で乾燥し、基材上に二酸化炭素吸収層を設けた二酸化炭素排出量削減製品を作製した。得られた二酸化炭素排出量削減製品において、二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、3質量%であった。
【0038】
(実施例2)
得られた二酸化炭素排出量削減製品において、二酸化炭素吸収カプセルの含有量が、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、6質量%となるように、分散液中の二酸化炭素吸収カプセルの含有量を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、二酸化炭素排出量削減製品を作製した。
【0039】
(実施例3)
得られた二酸化炭素排出量削減製品において、二酸化炭素吸収カプセルの含有量が、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、12質量%となるように、分散液中の二酸化炭素吸収カプセルの含有量を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、二酸化炭素排出量削減製品を作製した。
【0040】
(実施例4)
二酸化炭素吸収カプセル(二酸化炭素吸収剤としてアルミノケイ酸ナトリウムを0.05~0.2質量%含む。リン脂質からなる)を、ウレタン系ホットメルト樹脂(AH500、DIC)に分散させた分散液を準備した。得られた分散液を、PETフィルム(厚み50~100μm)に対し、乾燥後の二酸化炭素吸収層の厚みが40μmとなるよう、コーターを用いて付与し、80~110℃で乾燥し、基材上に二酸化炭素吸収層を設けた二酸化炭素排出量削減製品を作製した。得られた二酸化炭素排出量削減製品において、二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、6質量%であった。
【0041】
(実施例5)
二酸化炭素吸収カプセル(二酸化炭素吸収剤としてアルミノケイ酸ナトリウムを0.05~0.2質量%含む。リン脂質からなる)を、ウレタン系樹脂(クリスボンNB765、DIC)に分散させた第1の分散液を準備した。また、二酸化炭素吸収カプセル(二酸化炭素吸収剤としてアルミノケイ酸ナトリウムを0.05~0.2質量%含む。リン脂質からなる)を、ウレタン系ホットメルト樹脂(AH500、DIC)に分散させた第2の分散液を準備した。得られた第1の分散液を、PETフィルム(厚み50~100μm)に対し、乾燥後の二酸化炭素吸収層の厚みが30μmとなるよう、コーターを用いて付与し、80~110℃で乾燥した。次いで、第2の分散液を、第1の分散液を付与したPETフィルムに対し、乾燥後の二酸化炭素吸収層の厚みが30μmとなるよう、コーターを用いて付与し、80~110℃で乾燥した。これにより、基材上に2層の二酸化炭素吸収層を設けた二酸化炭素排出量削減製品を作製した。得られた二酸化炭素排出量削減製品において、二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、6質量%であった。
【0042】
(比較例1)
上記実施例1~5で用いた基材(PETフィルム)そのものを比較例1の製品とした。
【0043】
上記実施例1~5および比較例1の製品を用いて燃焼試験を行い、二酸化炭素の排出量を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
<燃焼試験>
実施例1~5、比較例1の製品(縦5cm×横5cm)を400℃で燃焼させた。この際、燃焼時に発生した二酸化炭素の排出量を、縦型管状炉を用いて測定した。結果を表1に示す。表1において、実施例1~5の結果は、比較例1の結果(PETフィルムのみを燃焼したもの)に対し、二酸化炭素の排出量がどの程度削減されたかを示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、実施例1~5の製品は、いずれも、基材に対して原料として配合するのではなく、二酸化炭素吸収層として付与したことにより、容易に二酸化炭素排出量削減製品を製造することができた。また、この製品を燃焼した場合に、基材そのもの(比較例1)と比較して、発生する二酸化炭素排出量を、大幅に削減することができた。
【要約】
【課題】種々の基材に対して原料として配合するのではなく、既存の種々の基材に対して付与することにより二酸化炭素吸収物質を適用でき、かつ、基材を燃焼した際に発生する二酸化炭素排出量を削減することのできる、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法を提供する。
【解決手段】一般消費者向けまたは産業用途向け製品が焼却処分される際に、一般消費者向けまたは産業用途向け製品から発生する二酸化炭素の排出量を削減するための、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法であり、一般消費者向けまたは産業用途向け製品の基材に対して、二酸化炭素吸収カプセルの分散液を付与し、二酸化炭素吸収層を形成する工程を含み、二酸化炭素吸収カプセルは、二酸化炭素吸収物質を、両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込んだ構造であり、二酸化炭素吸収カプセルの含有量は、二酸化炭素吸収層に対し、固形分換算で、3~15質量%であり、二酸化炭素吸収層の厚みは、2~100μmであり、基材は、プラスチック基材、布地、皮革または紙であり、一般消費者向けまたは産業用途向け製品は、樹脂製品、布製品、皮革製品または紙製品である、二酸化炭素排出量削減製品の製造方法。
【選択図】なし