IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンソジールの特許一覧

<>
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図1
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図2
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図3
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図4
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図5
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図6
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図7
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図8
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図9
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図10
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図11
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図12
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図13
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図14
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図15
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図16
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図17
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図18
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図19
  • 特許-義歯を準備するためのキット 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】義歯を準備するためのキット
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/34 20060101AFI20220510BHJP
   A61C 13/36 20060101ALI20220510BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61C13/34 Z
A61C13/36
A61C13/00 A
A61C8/00
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017200083
(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2018064938
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】1660123
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311008368
【氏名又は名称】アンソジール
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100133983
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 均
(72)【発明者】
【氏名】ブルム,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】デュパスキエ,アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード,エルベ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0359615(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0162148(US,A1)
【文献】特表2014-521468(JP,A)
【文献】特開2014-168592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/34
A61C 13/36
A61C 13/00
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯を準備するためのキットであって、
- 3D印刷のような連続的な層における材料の配置を用いる付加技術によって製造されるマスターモデルと、
- 該マスターモデルの上に義歯要素を取り外し可能に固定することが意図された外ネジ山を備える固定ネジとを有し、
- 前記マスターモデルは、前記義歯要素を受けることが意図された少なくとも1つの基準面を有し、前記義歯要素は、前記基準面を圧迫し、前記基準面は、付加技術によって前記マスターモデルの製造中に生成され、
- 前記マスターモデルは、少なくとも1つのネジ山付き空洞を有し、ネジ込みによって前記固定ネジを受け入れることが意図された前記ネジ山付き空洞の内ネジ山が、付加技術によって前記マスターモデルの製造中に生成され、
- 前記固定ネジの前記外ネジ山は、
・ 前記層の厚さよりも10倍以上大きいピッチと、
・ 前記層の厚さよりも5倍以上大きいネジ山の高さとを有する、
キット。
【請求項2】
前記固定ネジの前記外ネジ山は、メトリックプロファイルを有さない、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記固定ネジの前記外ネジ山は、台形プロファイルを有する、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記固定ネジ及び前記ネジ山付き空洞は、義歯要素が前記マスターモデルの上に固定されるときに、前記固定ネジが少なくとも4つのピッチに沿って前記内ネジ山に係入されるように、構成される、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
- 当該キットは、貫通固定される多数補綴物フレームの形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- 前記ネジ山付き空洞は、前記貫通固定される多数補綴物フレームに形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入されることが意図された遠位セグメントを備える突出体に形成される、
請求項1に記載のキット。
【請求項6】
- 当該キットは、貫通固定される多数補綴物フレームの形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- 前記ネジ山付き空洞は、中空シートの続きに形成され、該中空シートは、前記貫通固定される多数補綴物フレームによって支持される対応する突出体の遠位セグメントの少なくとも部分を受けることが意図される、
請求項1に記載のキット。
【請求項7】
- 前記突出体の前記遠位セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項5に記載のキット。
【請求項8】
- 前記突出体の前記遠位セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項6に記載のキット。
【請求項9】
- 当該キットは、前記マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- 前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の一方は、前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図されたセグメントを備える突出体を有する、
請求項5に記載のキット。
【請求項10】
- 当該キットは、前記マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- 前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の一方は、前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図されたセグメントを備える突出体を有する、
請求項6に記載のキット。
【請求項11】
- 前記突出体の前記セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項9に記載のキット。
【請求項12】
- 前記突出体の前記セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項10に記載のキット。
【請求項13】
- 当該キットは、単一の義歯の橋脚歯の形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- 単一の義歯の前記橋脚歯を受け入れることが意図された中空接続ソケットが、前記ネジ山付き空洞の口に形成される、
請求項1に記載のキット。
【請求項14】
前記中空接続ソケットは、非円形の断面を有する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
- 当該キットは、単一の義歯の橋脚歯の形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- 前記ネジ山付き空洞は、単一の義歯の前記橋脚歯に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図された遠位セグメントを備える突出体に形成される、
請求項1に記載のキット。
【請求項16】
- 前記突出体の前記遠位セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項15に記載のキット。
【請求項17】
- 当該キットは、前記マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- 前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の一方は、前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入するように意図された突起を有する、
請求項14に記載のキット。
【請求項18】
- 当該キットは、前記マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- 前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の一方は、前記マスターモデル及び前記偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図された突起を有する、
請求項15に記載のキット。
【請求項19】
- 前記突起は、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項17に記載のキット。
【請求項20】
- 前記突起は、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 前記中空シートは、その内面に横方向隙間を備える、
請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記固定ネジが、患者の口内の前記インプラントの前記ネジ山付き空洞内にネジ込みによって係合及び/又は保持され得ないよう、前記固定ネジの前記外ネジ山のプロファイルは、患者の口内の前記インプラントの前記ネジ山付き空洞の前記内ネジ山のプロファイルと異なる、請求項1に記載のキット。
【請求項22】
患者の口腔の口腔内スキャンによって得られる、修復されるべき患者の歯列の三次元コンピュータ化モデリングのコンピュータファイルに基づき、義歯の準備のためのマスターモデルを製造する方法であって、
前記マスターモデルは、前記マスターモデルの上に義歯要素を取り外し可能に取り付けるための外ネジ山を備える固定ネジを受け入れるように設計された内ネジ山を備える、少なくとも1つのネジ山付き空洞を有し、
当該方法は、付加技術によって前記マスターモデルの製造中に生成されることが意図された、並びに、患者の口内の歯科インプラントの基準面に対応する、少なくとも1つの基準面が、前記三次元コンピュータ化モデリングに含められる、ステップを含み、
前記マスターモデルの製造中に、前記内ネジ山は、付加技術によって生成されることを特徴とする
方法。
【請求項23】
補綴歯科医による義歯要素の製造、調節又は制御のための請求項1に記載のキットの使用であって、
補綴歯科医は、
- 前記義歯要素が前記マスターモデルの前記基準面を直接的に圧迫するよう、前記義歯要素を取り付け、
- 前記固定ネジを前記マスターモデルの前記ネジ山付き空洞にネジ込むことによって、前記義歯要素を前記マスターモデルに固定する、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義歯修復(dental prosthetic restoration)の分野に関し、より具体的には、(「三次元印刷」とも呼ぶ)3D印刷のような付加技術(additive technology)によって製造されるマスターモデルを含むキットの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
マスターモデルは、製造されるべき補綴物(prosthesis)によって修復される患者の口腔の少なくとも部分の表現である。補綴歯科医は、マスターモデルを用いて、患者の歯列に適合するように正確に寸法取られた補綴物を準備する。
【0003】
マスターモデルは、患者の口腔内の幾何学的形状をプロットすることに基づき製造される。従来的に、マスターモデルは、概ねU形状の歯型ホルダ(impression holders)内に配置される歯科用ペーストを用いて得られる患者の歯列の歯型からプラスタ(plaster)において製造される。歯科修復が1つ又はそれよりも多くの歯科インプラントの使用を含むとき、マスターモデルは、患者の口内の1つ又はそれよりも多くのインプラントの位置を正確に再現するような方法において位置付けられ且つ方向付けられる1つ又はそれよりも多くのインプラント類似体(implant analogs)を有する。義歯要素のブランクは、インプラント類似体の内ネジ山付きボア内にネジ込まれる外ネジ山を備える固定ネジによって、マスターモデルにそれぞれ固定される。
【0004】
今日、三次元の口腔内スキャンのプロセスは、歯型ホルダを用いて歯型を取ることを必要とせずに、患者の口腔内の幾何学的形状をプロットすることを可能にし、その精密さは、歯型を取る歯科医の器用さに大幅に依存する。三次元の口腔内スキャンは、患者の歯列の三次元コンピュータ化モデルを提供し、補綴歯科医は、このモデルを引き続き用いて、補綴物を構成する。
【0005】
次に、患者の歯列の三次元コンピュータ化モデルを用いて、材料の追加を含む製造プロセス(3D印刷のような付加技術)によってマスターモデルを製造する。3Dプリンタが、一連の材料の微細な層を積み重ねることによって、マスターモデルを「印刷する」。
【0006】
この脈絡において、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に記載されているように、取り付けられるインプラント類似体を正確且つ指標付けされた方法で受け入れることが意図された空洞が形成される。
【0007】
歯科医(dental surgeons)によって用いられるインプラントの各ブランドに特有の特定の(標準化されていない)外形を有する、取り付けられるインプラント類似体を受け入れることが意図された空洞の印刷において十分な精度を達成するときに、問題が生じる。補綴歯科医(prosthetist)は、異なるブランドのインプラント類似体の十分な蓄えを有し、次に、インプラント類似体をそれらのそれぞれの空洞内に正しく係合させることが必要である。その上、インプラント類似体の追加は、マスターモデルの製造コストを大幅に増加させる。
【0008】
最後に、隣接するインプラントは、互いに近接近して並びにインプラント類似体を用いてマスターモデル内に再現するのを不可能にする角度で、患者の口内に配置されなければならないことがある。
【0009】
特許文献6は、3D印刷のような付加技術によって製造されるマスターモデルを記載している。ここでも、インプラント類似体を正確且つ割り出された方法で受け取るために、空洞が形成される。より大きな信頼性のために、マスターモデルに形成される孔に係入する固定ネジを用いて、インプラント類似体をマスターモデルに固定し得る(図32)。しかしながら、固定ネジを受け入れることが意図された孔をマスターモデルに生成する方法は、全く無視されている。特に、マスターモデルを付加技術によって製造した後の材料の除去(特に穿孔)を含む製造プロセスによってそれを製造することは全く可能である。その上、孔が、内ネジ山を備えているかどうかは知られておらず、或いは、孔が、固定ネジを力で挿入する、且つ/或いは固定ネジを螺入するときに内ネジ山を創り出す、滑らかな円筒形の孔であるかどうかは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2011/029093A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0374466A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0135931A1号明細書
【文献】国際公開第2014/139498号
【文献】国際公開第2014/161552A2号
【文献】米国特許出願公開第2013/0216980A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によって対処する問題は、不正確さのリスクを低減すると同時に、低コストに、連続的な層における材料の配置、例えば、3D印刷を用いる、付加技術によって、マスターモデルを製造することである。
【0012】
本発明によって対処する他の問題は、補綴歯科医による補綴物の成形中にマスターモデル上で補綴物を確実に保持することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的及び他の目的を達成するために、本発明は、義歯を準備するためのキットであって、
- 3D印刷のような連続的な層における材料の配置を用いる付加技術によって製造されるマスターモデルと、
- マスターモデルの上に義歯要素を取り外し可能に固定することが意図された外ネジ山を備える固定ネジとを有し、
- マスターモデルは、義歯要素を受けることが意図された少なくとも1つの基準面を有し、義歯要素は、基準面を圧迫し、基準面は、患者の口内の歯科インプラントの基準面に対応し、付加技術によってマスターモデルの製造中に生成され、
- マスターモデルは、少なくとも1つのネジ山付き空洞を有し、ネジ込みによって固定ネジを受け入れることが意図されたネジ山付き空洞の内ネジ山が、付加技術によってマスターモデルの製造中に生成され、
- 固定ネジの前記外ネジ山は、
・ 層の厚さよりも10倍以上大きいピッチと、
・ 層の厚さよりも5倍以上大きいネジ山の高さとを有する、
キットを利用可能にする。
【0014】
マスターモデルは、基準面を有する少なくとも1つの歯科インプラントを有する患者の口腔幾何学的形状をプロットすることによって製造される。マスターモデルの基準面は、歯科インプラントの基準面に対応し、従って、基準面を直接的に圧迫する義歯要素を受けることができる。
【0015】
マスターモデルは、インプラント類似体を有さない。何故ならば、固定ネジを受け入れることが意図されたネジ山は、マスターモデルの製造中に直接的に印刷されるからである。(補綴物、例えば、貫通固定される多数補綴物フレームのような、又は橋脚歯のような)歯科補綴物要素を(直接的な接触によって)受ける基準面は、同様に、3D印刷によって直接的に生成される。よって、マスターモデルのコストは大幅に低減され、隣接するインプラント類似体の干渉のリスクはもはやない。
【0016】
補綴歯科医による義歯要素の製造、調節又は制御の間、補綴歯科医は、
- 義歯要素がマスターモデルの基準面を直接的に圧迫するよう、義歯要素を取り付け、
- 固定ネジを義歯要素に並びにマスターモデルのネジ山付き空洞にネジ込むことによって、義歯要素をマスターモデルに固定する。
【0017】
固定ネジのネジ山のピッチ及びネジ山の高さは、層の厚さに対する十分な寸法をネジに与えて、ネジ山付き空洞の内ネジ山が確実且つ正確な方法で固定ネジを受け入れて満足な保持をもたらすことを保証する。
【0018】
有利には、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞内にネジ込むことによって固定ネジを係合し且つ/或いは保持し得ないよう、マスターモデルの(一時的な)固定ネジのネジ山のプロフィールは、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞のネジ山のプロフィールとは異なり得る。これは、補綴物(又は義歯要素)をマスターモデルに(一時的に)固定するためのネジが、補綴物を患者の口内のインプラントに引き続き固定する確定的な固定ネジとして歯科医によって再使用される状況を防止する。それにより、口内の補綴物の固定の失敗のリスクが低減される。次に、コストを低減するために、補綴物をマスターモデルに固定するネジは、生体非適合性材料で作製されることができ、義歯要素をマスターモデルに固定するために専ら用いられるのに対し、義歯要素を患者の口内の歯科インプラントに固定するために、異なるネジが用いられる。
【0019】
好ましくは、固定ネジの外ネジ山は、メトリックプロファイル(metric profile)でないプロファイルを有することができる。メトリックプロファイルは、本発明によって設定されるパラメータに従うために過度に減少された厚さの層を用いることを必要とする。これは、3D印刷時間が大幅に増大させ、結果的に、マスターモデルを得るコストを大幅に増大させる。加えて、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞は、一般的に、メトリックプロファイルを有するネジ山を備える。よって、固定ネジの外ネジ山がメトリックプロファイルを有さないならば、これは補綴物の確定的な固定のために口内の殆どのインプラントにおいて再使用されることを防止する。
【0020】
好ましくは、固定ネジの外ネジ山は、台形のプロファイルを有することができる。よって、ネジ山はそれらの頂上に切断エッジを有さず、それは補綴物の製造中に固定ネジが数回挿入されるネジ山付き空洞の内ネジ山に損傷を与えるリスクを制限する。
【0021】
有利には、固定ネジ及びネジ山付き空洞は、義歯要素がマスターモデルの上に固定されるときに、固定ネジが少なくとも4つのピッチに沿って内ネジ山に係入されるように、構成される。
【0022】
4つのピッチに沿う係合は、固定ネジの締付け中のネジ山付き空洞の内ネジ山に対する損傷のリスクを制限するのに十分であることが証明されている。これはネジ山付き空洞の内ネジ山の構成材料(一般的にはプラスチック)が塑性変形させられるのを回避し或いは偶発的に引き裂かれるのさえも回避する。
【0023】
有利には、
- キットは、貫通固定される多数補綴物フレームの形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- ネジ山付き空洞は、貫通固定される多数補綴物フレームに形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入されることが意図された遠位セグメントを備える突出体に形成され得る。
【0024】
貫通固定される多数補綴物フレームは、歯列弓の部分的又は完全な修復のために概ね用いられる。それは、互いに平行でない(斜めの)方向に延びる幾つかインプラントを介して、患者の口内で概ね着用される。貫通固定される多数補綴物フレームに形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図された遠位セグメントを備える突出体は、マスターモデル上の多数補綴物フレームの正確な位置決めを可能にする。
【0025】
代替的に、
- キットは、貫通固定される多数補綴物フレームの形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- ネジ山付き空洞は、中空シートの続きに形成され、中空シートは、貫通固定される多数補綴物フレームによって支持される対応する突出体の遠位セグメントの少なくとも部分を受けることが意図され得る。
【0026】
貫通固定される多数補綴物フレームによって支持される対応する突出体の遠位セグメントの少なくとも部分を受けることが意図された中空シートは、マスターモデル上の多数補綴物フレームの正確な位置決めを可能にする。
【0027】
好ましくは、
- 突出体の遠位セグメントは、その外面に横方向隙間(lateral clearance)を備え、且つ/或いは
- 中空シートは、その内面に横方向隙間を備え得る。
【0028】
(例えば、切頭円錐形の外形を用いて)その外面に横方向隙間を備える遠位セグメントを備える各突出体は、貫通固定される多数補綴物フレームの(場合によっては、例えば、切頭円錐形の内形を用いて、その内面に横方向隙間を備える)対応する中空シートと協働して、突出体の各々の上での補綴物フレームの漸進的且つ正確な中心化(芯出し)を可能にする。突出体の外側の横方向隙間は、特に突出体が互いに対して斜めのそれぞれの軸方向に沿って展開するときに、突出体上での貫通固定される多数補綴物フレームの係合を容易にする。
【0029】
有利には、
- キットは、マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- マスターモデル及び偽性歯肉の一方は、マスターモデル及び偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図されたセグメントを備える突出体を有し得る。
【0030】
偽性歯肉は、補綴歯科医が、具体的には、補綴物とインプラントとの接合部が歯肉によって十分に隠されていることを検証することによって、準備中の補綴修復の審美的性質を保証することを可能にする。
【0031】
好ましくは、
- 突出体の前記セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 中空シートは、その内面に横方向隙間を備え得る。
【0032】
ここでも、突出体の各々の上での偽性歯肉の漸進的且つ正確な中心化(芯出し)を可能にするために、(例えば、切頭円錐形の外形を用いて)その外面に横方向隙間を備える突出体の各セグメントは、偽性歯肉の(場合によっては、例えば、切頭円錐形の内形を用いて、その内面に横方向隙間を備える)対応する中空シートと協働する。突出体の外側の横方向隙間は、特に突出体が互いに対して傾斜するそれぞれの軸方向に沿って展開するときに、突出体上での偽性歯肉の係合を容易にする。
【0033】
好ましくは、
- キットは、単一の義歯の橋脚歯の形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- 単一の義歯の橋脚歯を受け入れることが意図された中空接続ソケットが、ネジ山付き空洞の口に形成され得る。
【0034】
よって、マスターモデルは、単一の義歯の橋脚歯を正確に受け入れるように設計されたコネクタシステムを有し、このコネクタシステムは、マスターモデルの製造中に直接的に印刷される。中空接続ソケットは、非円形の断面を有することができ、よって、橋脚歯は、マスターモデルに対して順々に割り出される(indexed in rotation)ことができる。
【0035】
代替的に、
- キットは、単一の義歯の橋脚歯の形態の義歯要素と組み合わせられることが意図され、
- ネジ山付き空洞は、単一の義歯の橋脚歯に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入することが意図された遠位セグメントを備える突出体に形成され得る。
【0036】
ここでも、突出体上での単一の義歯の橋脚歯の漸進的且つ正確な中心化(芯出し)のために、
- 突出体の遠位セグメントは、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 中空シートは、その内面に横方向隙間を備え得る。
【0037】
好ましくは、
- キットは、マスターモデルに取り付けられることが意図された偽性歯肉を追加的に含み、
- マスターモデル及び前記偽性歯肉の一方は、マスターモデル及び偽性歯肉の他方に形成される対応する中空シートに少なくとも部分的に係入するように意図された突起を有し得る。
【0038】
偽性歯肉は、補綴歯科医が、具体的には、補綴物(又は補綴物の橋脚歯)とインプラントとの接合部が歯肉によって十分に隠されていることを検証することによって、準備中の補綴修復の審美的性質を保証することを可能にする。
【0039】
有利には、
- 突起は、その外面に横方向隙間を備え、且つ/或いは
- 中空シートは、その内面に横方向隙間を備え得る。
【0040】
ここでも、突起上での偽性歯肉の漸進的且つ正確な中心化(芯出し)を可能にするために、(例えば、切頭円錐形の外形を用いて)その外面に横方向隙間を備える突起は、(場合によっては、例えば、切頭円錐形の内形を用いて、その内面に横方向隙間を備える)対応する中空シートと協働する。
【0041】
本発明の他の特徴によれば、修復されるべき患者の歯列の三次元コンピュータ化モデリングのコンピュータファイルに基づき、義歯の準備のためのマスターモデルを製造する方法が可能にされる。本発明によれば、方法は、付加技術によってマスターモデルの製造中に生成されることが意図された、並びに、患者の口内の歯科インプラントの基準面に対応する、少なくとも1つの基準面が、三次元コンピュータ化モデリングに含められる、ステップを含む。
【0042】
本発明の更なる特徴によれば、3D印刷のような付加技術によって製造されるマスターモデルが可能にされ、マスターモデルは、義歯要素を受けることが意図された少なくとも1つの基準面を有し、義歯要素は、基準面を圧迫し、基準面は、付加技術によってマスターモデルの製造中に制され、患者の口内に配置される歯科インプラントの基準面に対応する。
【0043】
本発明の他の主題、構成及び利点は、以下の特定の実施形態の記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】貫通固定される多数補綴物フレームの形態の義歯要素と偽性歯肉との組み合わせにおけるマスターモデルを有する、本発明の第1の実施態様に従ったキットの分解斜視図である。
図2図1からのマスターモデルの断面図である。
図3】偽性歯肉がマスターモデルの上に位置付けられた図1からのキットの分解斜視図である。
図4図3からのマスターモデルの断面図である。
図5】組み立てられたときの図1からのキットの斜視図である。
図6図5からのマスターモデルの断面図である。
図7図1からのキットの固定ネジの斜視図である。
図8】部分断面における図7からの固定ネジの側面図である。
図9】マスターモデルに係入されたときの図7からの固定ネジの側面図である。
図10】単一の補綴物の橋脚歯の形態の義歯要素と偽性歯肉との組み合わせにおけるマスターモデルを有する、本発明の第2の実施態様に従ったキットの分解斜視図である。
図11図10からのマスターモデルの詳細の斜視図である。
図12】偽性歯肉がマスターモデルの上に位置付けられた図10からのキットの分解斜視図である。
図13図12からのマスターモデルの断面図である。
図14】組み立てられたときの図10からのキットの斜視図である。
図15図14からのマスターモデルの断面図である。
図16図10からのキットの固定ネジの斜視図である。
図17】部分断面における図16からの固定ネジの側面図である。
図18】突出体又は突起の幾つかの例の側面図である。
図19】突出体又は突起の幾つかの例の側面図である。
図20】突出体又は突起の幾つかの例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に従ったキット1の2つの特定の実施形態本発明を図1乃至18に示す。第1の実施形態を図1乃至9に示すのに対し、第2の実施形態を図10乃至17に示す。
【0046】
これらの実施形態の全てにおいて、義歯(dental prosthesis)を準備するためのキット1は、3D印刷のような、連続的な層3(図9を参照)における材料の配置を用いる付加技術(additive technology)によって製造されるマスターモデル2を有する。マスターモデル2は、口腔内スキャンに基づき製造される。
【0047】
キット1は、追加的に、義歯5をマスターモデル2に取り外し可能に固定することを意図する外ネジ山4aを備える少なくとも1つの固定ネジ4を有する。実施形態の各々に特有の2つの固定ネジ4は、一方では図7及び図8に、他方では図16及び図17に例示されている。これらの固定ネジ4は、それらの外ネジ山4aに関して同一であり、基本的に、それらのヘッド4bの形状に関してのみ異なり、回転駆動のために、中空の六角形のソケット4cがヘッド4bに形成されている。
【0048】
マスターモデル2は、義歯要素5を受けることを意図する少なくとも1つの基準面Sを有し、義歯要素5は基準面Sを圧迫し、基準面Sは、付加技術によってマスターモデル2の製造中に生成される。
【0049】
マスターモデル2は、少なくとも1つのネジ山付き空洞6を有し、ネジ止めによって固定ネジ4を受け入れることを意図するネジ山付き空洞6の内ネジ山6aが、付加技術によってマスターモデル2の製造中に生成される(図1乃至図6及び図10乃至図15を参照)。
【0050】
図9においてより明確に示すように、固定ネジ4の外ネジ山4aは、
・ 層3の厚さの10倍以上のピッチP、及び
・ 層3の厚さEの5倍以上のネジ山の高さH
を有する。
【0051】
更に図9において、固定ネジ4の外ネジ山4aはメトリックプロファイル(metric profile)を有していないことに留意のこと。固定ネジ4の外ネジ山4aは、台形プロファイルを有しているので、固定ネジ4は、メトリックプロファイルを備える内ネジ山を概ね有する歯科インプラント内に受け入れられることができない。固定ネジ4は、生体適合性である必要がない軽金属材料で製造される。何故ならば、固定ネジ4は、患者の口内の歯科インプラントにネジ込むことによって受け入れられることができないからである。
【0052】
固定ネジ4及びネジ山付き空洞6は、義歯5がマスターモデル2に固定されるときに、図9に例示するように、固定ネジ4が少なくとも4つのピッチに沿って内ネジ山6aに係入されるように、構成される。
【0053】
図1乃至図9に例示する第1の実施形態において、キット1は、貫通固定される多数補綴物フレーム7の形態の義歯要素5と組み合わせられる。この貫通固定される多数補綴物フレーム7(transfixed multiple prosthesis frame)は、患者の口内の複数(この場合は4つ)のインプラントに固定されることが意図されている。よって、患者の口内に位置付けられるときのインプラントを表す幾つか(4つ)のネジ山付き空洞6が設けられる。
【0054】
各ネジ山付き空洞6は、切頭円錐形の外形を有する遠位セグメント8aを備える突出体8(excrescence)内に形成され、遠位セグメント8aは、図6からより詳細に分かるように、貫通固定される多数補綴物フレーム7に形成される対応する切頭円錐形シート7aに少なくとも部分的に係入することが意図される。
【0055】
図1乃至図4により良く見られるように、マスターモデル2の後部に位置する突出体8は、マスターモデル2の前部にある突出体8が展開するそれぞれの軸方向に対して斜めのそれぞれの軸方向に沿って展開する。この斜めの配置は、それ自体が患者の口内のインプラントの向きの像(image)である、ネジ山付き空洞6の向きに起因する。
【0056】
キット1は、追加的に、マスターモデル2に取り付けられることが意図された偽性歯肉9(false gum)を含む。各突出体8は、図4及び図6からより具体的に分かるように、偽性歯肉9に形成された対応する切頭円錐形シート9aに少なくとも部分的に係入することが意図された切頭円錐形の外形を備える近位セグメント8bを有する。
【0057】
突出体8の遠位セグメント8aと近位セグメント8bとの間に、マスターモデル2は、実質的にリングの形状の基準面Sを含む。この基準面Sは、口内のインプラントによって支持され、貫通固定される多数補綴物フレーム7を支持することを意図する、基準面に(大きさ、位置及び向きにおいて)正確に対応する。よって、貫通固定される多数補綴物フレーム7が異なる突出体8の基準面Sの全ての上に同時に位置するとき、貫通固定される多数補綴物フレーム7は、それが患者の口内に位置するように位置決めされ且つ方向付けられる。よって、補綴歯科医は、接触ゾーン及び閉塞点のために近接して位置付けられる歯(この場合には拮抗歯列弓の歯)を考慮に入れて、貫通固定される多数補綴物フレーム7上の補綴物を想像することができる。
【0058】
逆に、貫通固定される多数補綴物フレーム7の上に突出体8を設けることが可能であり、突出体8は(ネジ山付き空洞6の口で)マスターモデル内に形成される中空シートに少なくとも部分的に受け入れられることが意図される。
【0059】
図10乃至図17に例示する第2の実施形態において、キット1は、単一の義歯の橋脚歯10の形態の義歯要素5と組み合わせられる。
【0060】
橋脚歯10が患者の口内で占める位置と同じ位置において、橋脚歯10をマスターモデル2上で正確に受け且つ保持するために、中空の接続ソケット11がネジ山付き空洞6の口に形成される。
【0061】
中空接続ソケット11は、橋脚歯10を受けることを意図する口内のインプラントの中空ソケットの基準面に正確に(大きさ、位置及び向きにおいて)対応する基準面Sを有する。よって、橋脚歯10が中空接続ソケット11に係入されるときに、橋脚歯10はそれが患者の口内にあるように位置付けられ且つ方向付けられる。よって、補綴歯科医は、接触ゾーン及び閉塞点のために近接して位置付けられる歯(この場合には補綴物に隣接しない歯D1及びD2並びに拮抗歯列弓の歯)を考慮に入れて、補綴物を橋脚歯10に適合させることによって、補綴物を想像することができる。
【0062】
中空接続ソケット11は、橋脚歯10を順々に割り出す(index)ために非円形の断面を有する。ここで、中空接続ソケット11の断面は、橋脚歯10の下端を補完する三角形の形状を有する。
【0063】
逆に、単一の義歯の橋脚歯10に形成された対応する中空のシートに少なくとも部分的に係入することが意図された遠位セグメントを備える突出体に形成されたネジ山付き空洞6を設けることが可能である。
【0064】
キット1は、追加的に、マスターモデル2に取り付けられることが意図された偽性歯肉12を含む。切頭円錐形の突起13が、中空接続ソケット11の口に設けられ、偽性歯肉12に形成された対応する切頭円錐形のシート12aに少なくとも部分的に係入するよう意図されていることが、図10図11及び図13からより具体的に分かるであろう。
【0065】
ここでも、偽性歯肉12及びマスターモデル2によって支持される雄/雌コンポーネントの配置を逆に切り替え得る。
【0066】
本発明に従ったキット1の製造において、歯科医は、先ず、修復されるべき患者の歯列の口腔内スキャンを行う。
【0067】
この口腔内スキャンは、修復されるべき患者の歯列の三次元コンピュータ化モデリングを可能にする。
【0068】
次に、患者の口内に配置されるインプラント(又は複数のインプラント)が位置する1つ又はそれよりも多くの基準面に対応する基準面を含めるために、口腔内スキャンから得られたコンピュータファイルをコンピュータによって更に処理する。
【0069】
これに続いて、3D印刷のような連続的な層における材料の配置を用いる付加技術によって、マスターモデル2のコンピュータ支援製造が行われる。
【0070】
この製造中、3Dプリンタが、厚さEの材料3の連続的な精細な層を積み重ねることによってマスターモデル2を印刷する。
【0071】
具体的には、内ネジ山6aを備える1つ又はそれよりも多くのネジ山付き空洞6は、付加技術によってマスターモデル2の製造中に製造される。層3の厚さEは、比較的短い製造時間内の印刷を可能にするように選択されると同時に、補綴歯科医による補綴物の成形中にマスターモデル2上に補綴物を確実に保持することを保証する。固定ネジ4の外ネジ山4aのパラメータ(ピッチP及び高さH)が相応して設けられる。即ち、
・ ピッチPは、層3の厚さEの10倍以上であり、
・ ネジ山の高さHは、層3の厚さEの5倍以上である。
【0072】
1つ又はそれよりも多くの中空ソケット11の、或いは、適切であるならば、1つ又はそれよりも多くの突出体8又は突起13の、1つ又はそれよりも多くの基準面Sも、3D印刷によって生成される。
【0073】
マスターモデル2がひとたび得られると、補綴歯科医は、偽性歯肉9(図3及び図4)又は12(図12及び図13)を突出体8又は突起13に係合させ得る。偽性歯肉9又は12は、それらの1つ又はそれよりも多くの切頭円錐形のシート9a又は12aで、マスターモデル2の近位セグメント8b又は1つ又はそれよりも多くの突起13に係合させられる。
【0074】
第1の実施形態の場合、補綴歯科医は、貫通固定される多数補綴物フレーム7を基準面S上に配置する。貫通固定される多数補綴物フレーム7は、基準面Sに向かって、切頭円錐形の遠位セグメント8aによって漸進的に案内される。次に、補綴歯科医は、貫通固定される多数補綴物フレーム7をマスターモデル2の上に固定するために(図5及び図6)、固定ネジ4をネジ山付き空洞6に挿入し、固定ネジ4をネジ止めする。
【0075】
第2の実施形態の場合、補綴歯科医は、次に、中空接続ソケット11に橋脚歯10を挿入する。補綴歯科医は、橋脚歯10をマスターモデル2の上に固定するために(図14及び図15)固定ネジ4をネジ山付き空洞6に挿入し、固定ネジ4をネジ止めする。
【0076】
ネジ止めの終わりに、固定ネジ4は、少なくとも4つのピッチPに沿って内ネジ山6aに係入される。
【0077】
次に、補綴歯科医は、従来的なプラスタで作られたマスターモデルと同じような方法において、義歯要素(例えば、第1の実施形態の場合には貫通固定される多数補綴物7、又は第2の実施形態の場合には橋脚歯10を備える貫通固定される単一の義歯)を製造し、調整し、或いは制御することができる。
【0078】
義歯要素7又は10の製造、調節又は制御後、義歯要素は(確定的な固定ネジと呼ぶことがある)他のネジの助けを借りて患者の口内の歯科インプラントに取り付けられ且つ固定される。実際、固定ネジ4の外ネジ山4aのプロファイルは、患者の口内のインプラントの内ネジ山のプロファイルと異なるので、この固定ネジ4、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞内にネジ込みによって係合及び/又は保持されることができない。
【0079】
図1乃至図17に示す実施形態において、突出体8、突起13及び中空シート7a,9a,12aは、切頭円錐形である。しかしながら、突出体8及び突起13は、異なる形状の外形を有することができ、同様に、突出体8及び突起13の側面図である図18乃至図20に例示するように、それらの断面の漸進的な減少のために側方隙間を備えることができる。中空シート7a,9a,12aは、切頭円錐形以外の内側形状、例えば、図18乃至図20に例示する形状を補完する内側形状を有することもできる。
【0080】
3D印刷のような付加技術によって製造されるマスターモデル2について独立した特許保護が求められる場合があることが明示的に示されており、マスターモデル2は、義歯要素(貫通固定される多数補綴物フレーム7、単一の義歯の橋脚歯10等)を受けることが意図された少なくとも1つの基準面Sを有し、義歯要素は、基準面を直接的に圧迫し、基準面は、付加技術によってマスターモデルの製造中に生成され、患者の口内に配置される歯科インプラントの基準面に対応する。この保護は、固定ネジ4及び1つ又はそれよりも多くのネジ山付き空洞6の存在及びパラメータとは無関係に求められてよい。この構成の組み合わせによって解決される問題は、不正確さのリスクも低減させながら、低コストに、連続的な層における材料の配置、例えば、3D印刷を用いる付加技術によってマスターモデルを製造することの問題である。
【0081】
その上、患者の口内のインプラントに補綴物を固定するために、歯科医がマスターモデルに補綴物を固定するためにネジを再使用するのを避けるという問題を解決する解決策は、(特にネジは既に数回締められ/緩められており、口内での故障のリスクを有するので)、固定ネジ4の外ネジ山4aのパラメータと層3の厚みEとの間の、請求項1において述べられる関係に依存しない。独立した特許保護が求められているこの特定の問題に対する解決策は、
- 3D印刷のような連続的な層3における材料の配置を用いる付加技術によって製造されるマスターモデル2と、
- マスターモデル2の上に義歯要素5,7,10を取り外し可能に固定することが意図された外ネジ山4aを備える固定ネジ4とを有し、
- マスターモデル2は、義歯要素5,7,10を受けることが意図された少なくとも1つの基準面Sを有し、義歯要素5,7,10は、基準面Sを(直接的に)圧迫し、基準面Sは、付加技術によってマスターモデル2の製造中に生成され、
- マスターモデル2は、少なくとも1つのネジ山付き空洞6を有し、ネジ込みによって固定ネジ4を受け入れることが意図されたネジ山付き空洞6の内ネジ山6aは、付加技術によってマスターモデル2の製造中に生成され、
固定ネジ4の外ネジ山4aのプロファイルは、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞の内ネジ山のプロファイルと異なるので、固定ネジ4は、患者の口内のインプラントのネジ山付き空洞にネジ込みによって係合及び/又は保持されることができない、
義歯の準備のためのキット1である。
【0082】
本発明は明示的に記載された実施態様に限定されず、むしろ添付の請求項の範囲内に含まれる異なる変形及び一般化を含む。
【符号の説明】
【0083】
1 キット(kit)
2 マスターモデル(master model)
3 連続的な層(successive layers)
4 固定ネジ(fixing screw)
4a 外ネジ山(outer thread)
4b ヘッド(head)
4c ソケット(socket)
5 義歯要素(dental prosthesis element)
6 ネジ山付き空洞(threaded cavity)
6a 内ネジ山(inner thread)
7 義歯要素(dental prosthesis element)/貫通固定される多数補綴物フレーム(transfixed multiple prosthesis frame)
7a 切頭円錐形シート(frustoconical seat)/中空シート(hollow seats)
8 突出体(excrescences)
8a 遠位セグメント(distal segment)
8b 近位セグメント(proximal segment)
9 偽性歯肉(false gum)
9a 中空シート(hollow seats)
10 義歯要素(dental prosthesis element)/橋脚歯(abutment)
11 中空接続ソケット(hollow connection socket)
12 偽性歯肉(false gum)
12a 中空シート(hollow seats)
13 突起(protuberances)
E 厚さ(thickness)
H 高さ(height)
P ピッチ(pitch)
S 基準面(reference surface)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20