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特許7068815耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法
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  • 特許-耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
G01N3/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017238998
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019105574
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅徳
(72)【発明者】
【氏名】荒木 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉村 友季
(72)【発明者】
【氏名】大木 智明
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】田中 博一
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桑原 政道
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061014(JP,A)
【文献】特開2009-042251(JP,A)
【文献】特開2010-007454(JP,A)
【文献】特開2015-010917(JP,A)
【文献】特開2001-183975(JP,A)
【文献】特開2000-265553(JP,A)
【文献】特開平09-218144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0006126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隅角部を挟んで2つの柱状体が互いに直交する方向に配置されてL字型の形状をなす構造試験体に載荷する耐荷性能試験装置であって、
前記構造試験体の2つの端面のそれぞれに接続される載荷クレビスと、
前記載荷クレビスを前記2つの柱状体それぞれの中心軸を含む平面に直交する方向を回転中心として回転可能に支持するサポート架台と、
2つの前記サポート架台同士の間を連結し、かつ前記サポート架台同士の連結方向に伸縮するシリンダを有する伸縮装置と、
を備え、
前記シリンダの伸縮によって前記構造試験体に対して載荷可能に設けられていることを特徴とする耐荷性能試験装置。
【請求項2】
前記2つのサポート架台を支持するベース架台が設けられ、
前記サポート架台のうち一方の第1サポート架台は前記ベース架台に固定され、他方の第2サポート架台は前記ベース架台の支持面に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐荷性能試験装置。
【請求項3】
前記載荷クレビスと前記サポート架台との支持部における回転中心が、前記2つの柱状体それぞれの中心軸を含む平面に直交する方向から見て、前記柱状体の中心軸の延長線上に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐荷性能試験装置。
【請求項4】
前記構造試験体には、構造部材としての鋼材を有し、
前記鋼材と前記載荷クレビスとが溶着により固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐荷性能試験装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐荷性能試験装置を用いて前記構造試験体に載荷して耐荷性能を試験するための耐荷性能試験方法であって、
前記構造試験体の2つの端面のそれぞれに前記載荷クレビスを接続する工程と、
前記載荷クレビスに前記サポート架台を回転可能に支持する工程と、
前記2つのサポート架台同士の間を前記伸縮装置で連結する工程と、
前記伸縮装置のシリンダを伸縮することにより前記構造試験体に載荷する工程と、
を有することを特徴とする耐荷性能試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラーメン構造の耐荷性能を評価する際には、ラーメン構造を構成するコンクリート隅角部の接合部耐力を評価試験が行われ、例えば特許文献1に示すような構造体全体を模擬した載荷試験方法が知られている。
このような載荷試験の場合には、ラーメン構造全体を模擬した載荷試験が行われるが、試験体が大きくなる傾向があり、更に、固定端となる反力設備等、試験体の大きさを大きく上回る試験設備が必要となる。そして、スペースの制限により大規模な試験設備で載荷できない場合は、試験体を縮小することが必要となり、試験体の構造細目を満たすことが困難になる弊害も生じる。
【0003】
そこで、試験体あるいは試験装置の上述したようなサイズに関わる問題を解消する手段として、図4に示すような隅角部100aを挟む2本のコンクリート躯体101A、101BでL字形状の模擬試験体100を作成し、この模擬試験体100に載荷して耐荷性を試験する方法が採用されている。具体的には、隅角部100aを挟んだ両コンクリート躯体101A、101Bのそれぞれに載荷クレビス102A、102Bでコンクリート躯体101A、101Bの突出端を表裏から挟持した状態で長ボルト103によって固定し、これら2つの載荷クレビス102A、102Bを連結するように設置した油圧ジャッキ104を作動させて両コンクリート躯体101A、101Bに荷重を付加していた。
ここで、図4に示す符号Lはコンクリート躯体101A、101Bの接合部から載荷クレビス102A、102Bにおける油圧ジャッキ104の取付け部102aまでの距離、符号Pは油圧ジャッキ104の作用力(載荷力)、符号Vは取付け部102aにおける軸力、符号Hは取付け部102aにおける水平力、符号eはコンクリート躯体101A、101Bの中心軸から取付け部102aまでの偏心距離を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-066842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の耐荷性能試験装置では、以下のような問題があった。
すなわち、図4に示すような従来の耐荷性能試験装置100を用いた試験方法では、載荷クレビス102A、102Bとコンクリート躯体101A、101Bとの間に十分な摩擦力を確保することができずに、両者間に軸方向(図4で矢印E方向)の滑りが生じることがあった。この場合には、コンクリート躯体101A、101Bの軸方向力(軸力)を十分に伝達することができず、ラーメン構造の軸方向引張力による耐力減退、圧縮力による耐力増加という現象が反映できず、結果として曲げせん断のみで耐荷性能を評価せざるを得なかった。
【0006】
また、コンクリート躯体101A、101Bの表面に生じる軸方向力では、偏心モーメントM(=H×L+(V×e))が発生するため、試験体にかかるモーメント力の計算が複雑化し、更に塑性域ではモーメント-変形角の関係の検証が一層困難になっていた。
さらに、軸力と水平力を複数台の油圧ジャッキで分担して付加する方法も考えられるが、複数のジャッキを連動して制御するには制御ソフトや装置面で困難が伴うことから、複雑な構造となる問題があり、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型でかつ簡単な構造により正確に作用力を伝達することを可能とすることで、ラーメン構造の隅角部の耐荷性能を高精度で評価することができる耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る耐荷性能試験装置では、隅角部を挟んで2つの柱状体が互いに直交する方向に配置されてL字型の形状をなす構造試験体に載荷する耐荷性能試験装置であって、前記構造試験体の2つの端面のそれぞれに接続される載荷クレビスと、前記載荷クレビスを前記2つの柱状体それぞれの中心軸を含む平面に直交する方向を回転中心として回転可能に支持するサポート架台と、2つの前記サポート架台同士の間を連結し、かつ前記サポート架台同士の連結方向に伸縮するシリンダを有する伸縮装置と、を備え、前記シリンダの伸縮によって前記構造試験体に対して載荷可能に設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る耐荷性能試験方法では、上述した耐荷性能試験装置を用いて前記構造試験体に載荷して耐荷性能を試験するための耐荷性能試験方法であって、前記構造試験体の2つの端面のそれぞれに前記載荷クレビスを接続する工程と、前記載荷クレビスに前記サポート架台を回転可能に支持する工程と、前記2つのサポート架台同士の間を前記伸縮装置で連結する工程と、前記伸縮装置のシリンダを伸縮することにより前記構造試験体に載荷する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明では、2つのサポート架台の間を連結する伸縮装置のシリンダを伸縮させることで、構造試験体に対して大きな作用力(載荷力)を付加することができる。そして、隅角部と2つのサポート架台とを頂点とする三角形を構成し、シリンダの作用力が前記三角形の内力で釣り合うこととなる。そのため、シリンダの作用力が外部に伝達されることがなく、従来のような大きな反力設備が不要となる利点がある。
また、本発明では、構造試験体の2つの端面に接続される載荷クレビスが構造試験体の中心軸に位置することから、柱状体において軸力による偏心モーメントの偶力が生じることがなくなる。そのため、伸縮装置の載荷力に対して小型でかつ簡単な構造で構造試験体に正確に作用力を伝達することができ、ラーメン構造の隅角部の耐荷性能を正確に評価することができる。このように、簡単な図形上の釣り合いによって各部に生じる軸力、せん断力、曲げモーメントを精度よく算出することが可能となり、従来のような特殊な制御装置、載荷プログラムが不要になる。
【0011】
また、本発明では、上述したように2つの柱状体と伸縮装置のシリンダの力が三角形の内力で釣り合うことから、サポート架台が伸縮装置と構造試験体に接続される載荷クレビスとの偏心モーメントのみを負担するため、サポート架台を構造試験体の規模に対して十分に小さい部材にできる利点がある。
さらに、本発明では、構造試験体が実際のラーメン構造に対して半分程度の規模のものを採用できることから、試験体の製作コストを低減することができる。
さらにまた、本発明では、構造試験体が載荷クレビスを介してサポート架台と回転可能に連結されているため、柱状体の中心軸が載荷クレビスとサポート架台との回転中心と交差するように構造試験体の位置を調整することにより、不要な偏心モーメントの発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る耐荷性能試験装置は、前記2つのサポート架台を支持するベース架台が設けられ、前記サポート架台のうち一方の第1サポート架台は前記ベース架台に固定され、他方の第2サポート架台は前記ベース架台の支持面に沿って移動可能に設けられていることが好ましい。
【0013】
この場合には、第2サポート架台がベース架台に対して移動可能に設けられているため、ベース架台は移動可能なサポート架台との間にわずかな摩擦力が作用するものの、力学的に上述した三角形構造に対して縁が切られた状態となるため、ベース架台の設計強度を最小限に抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る耐荷性能試験装置は、前記載荷クレビスと前記サポート架台との支持部における回転中心が、前記2つの柱状体それぞれの中心軸を含む平面に直交する方向から見て、前記柱状体の中心軸の延長線上に位置していることが好ましい。
【0015】
本発明では、構造試験体に接続される載荷クレビスのサポート架台に対する回転中心が柱状体の中心軸の延長線上に一致しているので、構造試験体に対して不要な偏心モーメントの偶力の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る耐荷性能試験装置は、前記構造試験体には、構造部材としての鋼材を有し、前記鋼材と前記載荷クレビスとが溶着により固定されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、載荷クレビスを構造試験体の鋼材に溶着することで容易にかつ強固に固定することができる。そして、隅角部に対してモーメントの負担を小さくできる構造となるため、構造試験体の隅角部で塑性化が進んでも、載荷クレビスの周辺は弾性状態を保つことができ、正確なせん断力、軸力の伝達が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法によれば、小型でかつ簡単な構造により正確に作用力を伝達することを可能とすることで、ラーメン構造の隅角部の耐荷性能を高精度で評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による耐荷性能試験装置を上方から見た平面図である。
図2図1に示すA-A線矢視図である。
図3図1に示す耐荷性能試験装置の動作を説明するための簡略した図であって、(a)は載荷前の状態の図、(b)は載荷時でシリンダを伸張させた状態の図である。
図4】従来の耐荷性能試験装置を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法について、図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による耐荷性能試験装置1は、隅角部2Cを有する構造試験体2に載荷して耐荷性能を試験(耐荷性能試験)するための装置である。
【0022】
構造試験体2は、本実施の形態では鉄筋コンクリート造であり、隅角部2Cを挟んで2つの柱状体2A、2Bが互いに直交する方向に配置されてL字型の形状をなしている。柱状体2A、2Bは、ラーメン構造物の梁と柱に相当する部分である。隅角部2Cは、2つの柱状体2A、2Bの接合部である。柱状体2A、2Bは、それぞれ中心軸O1、O2方向から見た断面形状が正方形をなし、中心軸O1、O2方向に延びる長さ寸法も同じになっている。
【0023】
耐荷性能試験装置1において、図1の紙面に直交する方向が上下方向X2を示している。
構造試験体2は、耐荷性能試験装置1に取り付けた状態において、上方から見て、2つの柱状体2A、2Bの各中心軸O1、O2を含む平面に直交する方向を上下方向X2に向けた状態で設置される。
なお、図1及び図2において中心軸O1、O2に平行に延びる点線は、柱状体2A、2Bのコンクリート内部に埋設される鉄筋21(鋼材)を示している。
【0024】
構造試験体2は、柱状体2A、2Bのそれぞれの端面2bに正方形状の平板からなる端板23が固定されている。端板23は、柱状体2A、2Bの端面2bの全周から張り出した状態で取り付けられている。端板23の柱状体2A、2B側の面には、その面から突出する複数本のスタッドジベル22が溶着された状態で垂設されている。各スタッドジベル22は、柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2方向から見て、構造試験体2のコンクリートに埋設される鉄筋21に対応する位置に設けられている。鉄筋21に溶着されている。このように構成される構造試験体2は、端板23のスタッドジベル22を構造試験体2の鉄筋21に溶着した後に、構造試験体2のコンクリートを打設し、柱状体2A、2Bのそれぞれの端面2bに端板23が固定された構造が製造される。
【0025】
耐荷性能試験装置1は、構造試験体2の2つの端面2b、2bに固定された端板23に対して着脱自在に接続される載荷クレビス3(3A、3B)と、載荷クレビス3A、3Bを回転可能に支持するサポート架台4(4A、4B)と、2つのサポート架台4A、4B同士の間を連結し、かつサポート架台4A、4B同士の連結方向X1に伸縮するシリンダ51を有する油圧ジャッキ5(伸縮装置)と、2つのサポート架台4A、4Bを支持するベース架台6と、を備えている。
【0026】
載荷クレビス3A、3Bは、構造試験体2と、油圧ジャッキ5によって連結された2つのサポート架台4A、4Bのそれぞれと、を連結している。載荷クレビス3A、3Bは、固定板31と、固定板31の一方の第1面31aに直交する方向に突出するように設けられた連結板32と、を有している。
【0027】
固定板31は、端板23とほぼ同形状の正方形の平板であって、第2面31bが構造試験体2の端板23の外面に対して面接触により当接させた状態で、端板23における柱状体2A、2Bよりも外側に張出した外周部に対して複数のボルト33によって固定されている。
【0028】
連結板32は、図2に示すように、4枚が間隔をあけて互いに平行に配列されている。連結板32は、2枚一組でセットになっており、一組の連結板32、32同士の間隔は、後述するサポート架台4の連結リブ42の厚さ寸法と略同厚となっている。
【0029】
各連結板32には、図1に示すように、それぞれ厚さ方向に貫通する第1連結孔32aが形成されている。連結板32は、載荷クレビス3が構造試験体2に固定された状態で、第1連結孔32aの回転中心C1が上下方向X2を向くように配置される。また、第1連結孔32aの回転中心C1は、上方から見て、柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2の延長線上に位置している。この第1連結孔32aの回転中心C1は、載荷クレビス3とサポート架台4との支持部における回転中心である。そして、各連結板32の第1連結孔32aには、後述するサポート架台4の連結リブ42に形成される第2連結孔42aにも共通する連結ピン34が挿通される。
【0030】
ベース架台6は、構造試験体2に載荷クレビス3を介して連結された2つのサポート架台4A、4Bの両方が支持される。具体的にベース架台6は、一方向に延びるベース本体61と、ベース本体61における長さ方向の一端側に設けられる固定架台62と、長さ方向の他端側に設けられる摺動架台63と、を備えている。ベース本体61、固定架台62、及び摺動架台63は、それぞれH形鋼から構成されている。
【0031】
固定架台62は、ベース本体61の一端面61aに固定されている。固定架台62におけるベース本体61と反対側の固定面62aには、載荷クレビス3Aを介して構造試験体2に連結された第1サポート架台4Aがボルト64によって固定されている。すなわち、第1サポート架台4Aの位置は、ベース架台6に対して相対的に移動しない固定位置となる。なお、第1サポート架台4Aは、ボルト64の代わりに溶接により固定架台62に固定されていてもよい。
【0032】
摺動架台63は、ベース本体61の一端面61aに固定されている。摺動架台63におけるベース本体61と反対側の摺動面63a(支持面)には、載荷クレビス3Bを介して構造試験体2に連結された第2サポート架台4Bが連結方向X1に摺動可能に案内する一対の案内レール65が設けられている。一対の案内レール65は、互いに一定の間隔をあけて連結方向X1に沿って延在している。すなわち、第2サポート架台4Bの位置は、ベース架台6に対して連結方向X1に移動することになる。
【0033】
サポート架台4A、4Bは、ベース架台6に固定、又は摺動可能に支持され、かつ油圧ジャッキ5の端部が支持される架台本体41、43と、架台本体41を載荷クレビス3の連結板32に対して回転可能に連結する連結リブ42と、を備えている。
【0034】
第1サポート架台4Aの第1架台本体41は、ベース架台6における連結方向X1の一端側の固定架台62に対して固定されている。
【0035】
第1架台本体41は、第1サポート架台4Aをベース架台6に固定した状態で、連結方向X1の内側に突出し、油圧ジャッキ5の一端5aを支持する第1ジャッキ取付部44Aを有している。第1ジャッキ取付部44Aは、上下方向X2に貫通する係止孔44aが形成されており、係止ピン45によって油圧ジャッキ5の一端5aに対して上下方向X2を回転軸として回転可能に支持されている。
【0036】
連結リブ42は、2枚が間隔をあけて互いに平行に配列されている。連結リブ42には、それぞれ厚さ方向に貫通する第2連結孔42aが形成されている。連結リブ42は、載荷クレビス3が構造試験体2に固定された状態で、第2連結孔42aの回転中心C1が上下方向X2を向くように配置される。また、第2連結孔42aの回転中心C1は、上方から見て、柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2の延長線上に位置している。この第2連結孔42aの回転中心C1は、載荷クレビス3とサポート架台4との支持部における回転中心である。そして、各連結リブ42の第2連結孔42aには、載荷クレビス3の連結板32に形成される第1連結孔32aに挿通される連結ピン34が挿通される。すなわち、連結リブ42は、図2に示すように、上述した載荷クレビス3の一対の連結板32、32によって挟まれた状態でそれぞれの連結孔32a、42aに連結ピン34が挿通され、載荷クレビス3とサポート架台4A、4Bとが連結ピン34回りに回転自在に支持されている。
【0037】
第2サポート架台4Bの第2架台本体43は、ベース架台6における連結方向X1の他端側の摺動架台63に対して連結方向X1に摺動可能に支持されている。第2架台本体43のベース架台6側の端面には、ベース架台6に設けられた一対の案内レール65に沿って案内される摺動体46が支持されている。第2サポート架台4Bは、連結方向X1には移動可能であるが、連結方向X1に交差する方向への移動は規制されている。
【0038】
第2架台本体43は、第2サポート架台4Bをベース架台6に摺動可能に支持した状態で、連結方向X1の内側に突出し、油圧ジャッキ5の他端5bを支持する第2ジャッキ取付部44Bを有している。第2ジャッキ取付部44Bは、上下方向X2に貫通する係止孔44aが形成されており、係止ピン45によって油圧ジャッキ5の他端5bに対して上下方向X2を回転軸として回転可能に支持されている。
【0039】
第2サポート架台4Bの連結リブ42は、上述した第1サポート架台4Aと同様の構成であるので、ここでは説明を省略する。
【0040】
油圧ジャッキ5は、シリンダ51の伸縮方向を連結方向X1に向けた状態で、第1サポート架台4Aと第2サポート架台4Bとを連結している。
上述したように耐荷性能試験装置1では、隅角部2Cと2つのサポート架台4A、4Bで3つの頂点となる三角形を構成し、かつ2つの柱状体2A、2Bとシリンダ51とによって三角形を構成する各辺に配置され、シリンダ51の伸縮によって構造試験体2に対して載荷力を付与することが可能な構成になっている。
【0041】
次に、上述した耐荷性能試験装置1を用いて構造試験体2に載荷して耐荷性能を試験するための耐荷性能試験方法、及び作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
先ず、図3(a)に示すように、耐荷性能試験装置1に構造試験体2を取り付ける。具体的には、構造試験体2の2つの端面2b、2bのそれぞれに載荷クレビス3A、3Bを接続し、載荷クレビス3A、3Bにサポート架台4A、4Bを回転可能に支持させ、これらサポート架台4A、4Bをベース架台6に支持し、さらに2つのサポート架台4A、4B同士の間を油圧ジャッキ5で連結することで、試験準備が完了となる。
【0042】
載荷試験では、油圧ジャッキ5のシリンダ51を伸縮することにより構造試験体2に載荷する。つまり、図3(b)において、油圧ジャッキ5のシリンダ51が伸張することで、移動可能な第2サポート架台4Bが連結方向X1で第1サポート架台4Aに対して離反する方向(図3(b)の紙面で左側)に移動するととともに、同時に載荷クレビス3A、3Bを介して構造試験体2に曲げモーメント、せん断力、軸方向力を同時に発生させることができる。ここで、図3(b)は、シリンダ51を伸張させた状態で、第2サポート架台4Bが連結方向X1で外側に移動し、第1サポート架台4Aと第2サポート架台4Bとの離間が大きくなった状態を示している。
【0043】
ここで、図3(a)における符号Lは、構造試験体2における柱状体2A、2Bの隅角部2Cから載荷クレビス3A、3Bの回転中心C1までの距離を示している。
また、図3(a)において、符号Pは油圧ジャッキ5のシリンダ51の作用力(載荷力)、符号Vは柱状体2A、2Bの軸力、符号Hは軸力Vに直交する方向の力、符号eは載荷クレビス3の回転中心C1とサポート架台4のジャッキ取付部44A、44Bとの偏心距離である。この場合、ベース架台6では、載荷クレビス3を備えた構造試験体2の転倒モーメントM1のみを負担すればよく、サポート架台4のモーメントM2=P×eが上記転倒モーメントM1に比べて極めて小さいことから、サポート架台4を小さい部材にすることができる。
【0044】
そして、本実施の形態では、サポート架台4及びベース架台6ともにモーメントM=P×eを負担し、構造試験体2に生じるモーメント(H*L)に対して極めて小さくなる(H*L>>P×e)。そのため、構造試験体2に対してサポート架台4及びベース架台6を小さい部材にすることができる。
【0045】
本実施の形態による耐荷性能試験装置1においては、2つのサポート架台4A、4Bの間を連結する油圧ジャッキ5のシリンダ51を伸縮させることで、構造試験体2に対して大きな作用力(載荷力)を付加することができる。
そして、構造試験体2の隅角部2Cと2つのサポート架台4A、4Bとを頂点とする三角形(2つの柱状体2A、2Bとシリンダ51とによって構成される三角形)を構成し、シリンダ51の作用力が前記三角形の内力で釣り合うこととなる。そのため、シリンダ51の作用力が外部に伝達されることがなく、従来のような大きな反力設備が不要となる利点がある。
【0046】
また、本実施の形態では、構造試験体2の2つの端面2b、2bに端板23を介して接続される載荷クレビス3A、3Bが構造試験体2の中心軸O1、O2に位置することから、柱状体2A、2Bにおいて軸力による偏心モーメントの偶力が生じることがなくなる。そのため、油圧ジャッキ5の載荷力に対して小型でかつ簡単な構造で構造試験体2に正確に作用力を伝達することができ、構造試験体2の隅角部2Cの耐荷性能を正確に評価することができる。
このように、簡単な図形上の釣り合いによって各部に生じる軸力、せん断力、曲げモーメントを精度よく算出することが可能となり、従来のような特殊な制御装置、載荷プログラムが不要になる。
【0047】
また、本実施の形態では、上述したように2つの柱状体2A、2Bと油圧ジャッキ5のシリンダ51の力が三角形の内力で釣り合うことから、サポート架台4A、4Bが油圧ジャッキ5と構造試験体2に接続される載荷クレビス3との偏心モーメントのみを負担するため、サポート架台4A、4Bを構造試験体2の規模に対して十分に小さい部材にできる利点がある。
【0048】
さらに、本実施の形態では、構造試験体2が実際のラーメン構造に対して半分程度の規模のものを採用できることから、試験体の製作コストを低減することができる。
【0049】
さらにまた、本実施の形態では、構造試験体2が載荷クレビス3A、3Bを介してサポート架台4A、4Bとの回転可能に連結されているため、柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2が載荷クレビス3A、3Bとサポート架台4A、4Bとの回転中心C1と交差するように構造試験体2の位置を調整することにより、不要な偏心モーメントの発生を抑制することができる。
【0050】
本実施の形態では、第2サポート架台4Bの架台本体43がベース架台6の摺動架台63に対して移動可能に設けられているため、ベース架台6の摺動架台63は移動可能な第2サポート架台4Bの架台本体43に設けられる摺動体46との間にわずかな摩擦力が作用するものの、力学的に上述した三角形構造に対して縁が切られた状態となるため、ベース架台6の設計強度を最小限に抑えることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、構造試験体2に連結される載荷クレビス3の回転中心C1が柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2の延長線上に一致しているので、構造試験体2に対して不要な偏心モーメントの偶力の発生を抑制することができる。
【0052】
本実施の形態では、載荷クレビス3を構造試験体2の鉄筋21に溶着することで容易にかつ強固に固定することができる。そして、この場合には、隅角部2Cに対してモーメントの負担を小さくできる構造となるため、構造試験体2の隅角部2Cで塑性化が進んでも、載荷クレビス3の周辺は弾性状態を保つことができ、正確なせん断力、軸力の伝達が可能である。
【0053】
上述のように本実施の形態による耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法では、小型でかつ簡単な構造により正確に作用力を伝達することを可能とすることで、ラーメン構造である構造試験体2の隅角部2Cの耐荷性能を高精度で評価することができる。
【0054】
以上、本発明による耐荷性能試験装置および耐荷性能試験方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本実施の形態では、第1サポート架台4Aがベース架台6の固定架台62に固定され、第2サポート架台4Bがベース架台6の摺動架台63の摺動面63aに設けられる案内レール65に沿って移動可能に設けられた構成としているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、両サポート架台4A、4Bともにベース架台6に対して移動可能に設けるものであってもよいし、サポート架台4A、4Bをベース架台6に対して当接させた状態のみで支持させる構成であってもよい。
【0056】
そして、本実施の形態では、移動可能に設けられる第2サポート架台4Bの摺動手段として、本実施の形態では案内レール65に沿って摺動する摺動体46を備えた構成としているが、他の構成とすることも可能である。例えば、スムーズな移動を可能にするためにサポート架台4とベース架台6との間にローラーや球体を設置してもよい。或いは、サポート架台4とベース架台6の接する面を滑らかな平面とし、更に潤滑材を用いて滑らせる構成であってもよい。さらに、サポート架台4の移動をスムーズにするガイド板を設けるようにしてもよい。
【0057】
さらに、本実施の形態ではベース架台6を備えた構成としているが、このベース架台6を省略することも可能である。
【0058】
また、本実施の形態では、載荷クレビス3とサポート架台4との支持部における回転中心C1が、2つの柱状体2A,2Bそれぞれの中心軸を含む平面に直交する方向から見て、柱状体2A、2Bの中心軸O1、O2の延長線上に位置しているが、必ずしも前記回転中心C1がこの延長線上に一致することに制限されることはない。例えば前記回転中心C1が柱状体2A、2Bの端面2bの前記中心軸O1、O2方向に延びる領域程度の範囲に位置したものであってもかまわない。
【0059】
さらに、本実施の形態では、構造試験体2を構成する鋼材(鉄筋21)と端板23のスタッドジベル22とを溶着により固定しているが、このような固定構造であることに限定されることはない。例えば、接続方法としては、構造試験体2のコンクリートに埋設される鉄骨を利用してスタッドジベル22と溶接により接続してもよい。また、構造試験体2に予めスタッドジベルを埋め込んでおいて端板23の一部と溶接またはネジ締結により接続してもよい。また、端板23にスタッドジベル22を設けずに、端板23に直接、構造試験体2の鋼材を溶接する構造であってもかまわない。
【0060】
さらにまた、本実施の形態では、構造試験体2として鉄筋コンクリート造を対象としているが、これに限定されることはない。鋼材とコンクリートからなる合成構造であってもよいし、鋼材のみで構成される構造試験体であってもよい。
また、柱状体の中心軸に直角な方向の断面形状は、本実施の形態のように正方形であることに限定されず、例えば正方形以外の多角形や円形の断面であってもよい。
【0061】
また、伸縮装置としては、本実施の形態のような油圧ジャッキ5であることに限定されることはなく、例えばエアシリンダやピニオンラック等の伸縮装置を採用することも可能である。
【0062】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 耐荷性能試験装置
2 構造試験体
2b 端面
2A、2B 柱状体
2C 隅角部
3、3A、3B 載荷クレビス
4 サポート架台
4A 第1サポート架台
4B 第2サポート架台
5 油圧ジャッキ(伸縮装置)
6 ベース架台
21 鉄筋(鋼材)
22 スタッドジベル
23 端板
31 固定板
32 連結板
32a 連結孔
41、43 架台本体
42 連結リブ
42a 連結孔
51 シリンダ
62 固定架台
63 摺動架台
63a 摺動面(支持面)
C1 回転中心
O1、O2 中心軸
X1 連結方向
X2 上下方向
図1
図2
図3
図4