(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】電気化学的バイオセンサ及びアルブミンとその複合体の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/327 20060101AFI20220510BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20220510BHJP
G01N 27/48 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G01N27/327
G01N27/416 336Z
G01N27/48 311
(21)【出願番号】P 2017532224
(86)(22)【出願日】2015-09-01
(86)【国際出願番号】 IB2015056619
(87)【国際公開番号】W WO2016038505
(87)【国際公開日】2016-03-17
【審査請求日】2018-08-31
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】4377/CHE/2014
(32)【優先日】2014-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】516333827
【氏名又は名称】インディアン インスティテゥート オブ サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INDIAN INSTITUTE OF SCIENCE
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ヴィネイ
(72)【発明者】
【氏名】バト,ナヴァカンタ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】渡戸 正義
【審判官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505335(JP,A)
【文献】特開2005-308720(JP,A)
【文献】特開平9-80010(JP,A)
【文献】特開2003-215086(JP,A)
【文献】特表2009-532706(JP,A)
【文献】特開平10-325821(JP,A)
【文献】特開2008-96163(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157523(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0053289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0089774(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304547(US,A1)
【文献】国際公開第2005/108968(WO,A1)
【文献】特開2013-24870(JP,A)
【文献】特開2007-255912(JP,A)
【文献】G. Luque et al,Electrochemical sensor for amino acids and albumin based on composites containing carbon nanotubes and copper microparticles,Talanta,2007年3月,p.1282-1287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基板に配置された少なくとも一対の導電路と、
(ii)前記導電路に接続された
少なくとも1つの二又は三電極部材と、
(iii)
前記電極部材の表面に配置されたボロン酸またはボロン酸誘導体から選択されるボロネート親和剤で処理された薄膜と、
(
iv)アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の
金属ポルフィリン物質または銅塩(Cu(II))である受容体と、を備え、前記受容体は
、前記処理された薄膜の下かつ前記電極部材の上に配置されることを特徴とする、
生体試料を採取及び保持するための電気化学的活性化装置。
【請求項2】
前記基板がポリマ又は紙である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極部材は前記基板に配置された1つの三電極部材
である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電極部材は前記基板に配置された複数の二電極部材
である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電極部材は前記基板に配置された複数の三電極部材
である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電極部材はパターン電極である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ボロン酸誘導体は、フェニルボロン酸(PBA)、アミノフェニルボロン酸(APBA)と
、からなる群から選択され
る、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
前記受容体は
、塩化銅(CuCl
2)
である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アルブミンは、尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)又はグリコアルブミン(GA)である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、ハウジングの内部に配置され、前記ハウジングはカートリッジ又はカセットである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
電気化学的に活性の装置を保持するホルダであって、
(i)ハウジングの内部に配置された装置を検出し信号を調整する手段と、
(ii)前記ハウジングの一端に配置されたUSBコネクタと、前記ハウジングの他端に配置された導電ポートと、
(iii)
少なくとも一対の導電路と、少なくとも1つの二又は三電極部材と、前記電極部材の表面に配置されたボロン酸またはボロン酸誘導体から選択されるボロネート親和剤で処理された薄膜とを備えた、生体試料を採取及び保持するために前記導電ポートを介して前記ハウジングに接続するように配置された電気化学的活性化装置と
、
(iv)前記処理された薄膜の下かつ前記電極部材の上に配置され、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の
金属ポルフィリン物質または銅塩(Cu(II))である受容体
と、を備えることを特徴とするホルダ。
【請求項12】
前記ボロン酸誘導体は、フェニルボロン酸(PBA)、アミノフェニルボロン酸(APBA)と、からなる群から選択され、バイオ検体がグリコアルブミンの場合はアミノフェニルボロン酸(APBA)が選択されることを特徴とする請求項11記載のホルダ。
【請求項13】
生体試料中のバイオ検体濃度を測定するためのポイントオブケア用バイオセンサであって、
(i)表示部材と導電ポートとを有するハウジングと、
(ii)生体試料を採取及び保持するために前記導電ポートを介して前記ハウジングに接続するように配置された電気化学的活性化装置であって、少なくとも一対の導電路と、
少なくとも1つの二又は三電極部材と、
前記電極部材の表面に配置されたボロン酸またはボロン酸誘導体から選択されるボロネート親和剤で処理された薄膜と、を備える装置と、
(iii)基板の上であって、前記処理された薄膜の下かつ前記電極部材の上に配置された、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の
金属ポルフィリン物質または銅塩(Cu(II))である受容体
と、
(
iv)前記ハウジングの内部に配置され、前記装置に
酸化還元電位を印加
して酸化還元電流を測定し、
酸化還元電流とアルブミン濃度との対応関係から線形フィットすることによって前記生体試料中のアルブミンバイオ検体濃度を読み取り表示するように構成されたデジタル制御部と、を備えることを特徴とするバイオセンサ。
【請求項14】
データベース部材は、前記デジタル制御部に接続され、相互作用する酸化還元電流と併せて生体試料中のアルブミンバイオ検体濃度の基準値を記憶する、請求項13に記載のポイントオブケア用バイオセンサ。
【請求項15】
前記ボロン酸誘導体は、フェニルボロン酸(PBA)、アミノフェニルボロン酸(APBA)と、からなる群から選択され、バイオ検体がグリコアルブミンの場合は、アミノフェニルボロン酸(APBA)が選択されることを特徴とする請求項13または14に記載のポイントオブケア用バイオセンサ。
【請求項16】
(
i)
少量の生体試料を
装置上に載置
する工程であって、前記装置は、少なくとも1つの二又は三電極部材と、前記電極部材の表面に配置されたボロン酸またはボロン酸誘導体から選択されるボロネート親和剤で処理された薄膜と、前記処理された薄膜の下かつ前記電極部材の上に配置された、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の金属ポルフィリン物質または銅塩(Cu(II))である受容体と、を備え、
(ii)前記電極部材
に酸化還元電位を印加
して酸化還元電流を測定する工程と、
(
iii)
酸化還元電流と
アルブミン濃度と
の対応関係から線形フィットすることによって前記生体試料中のアルブミンバイオ検体の濃度を
判定する工程と、
を有する生体試料中の
アルブミンバイオ検体濃度を測定する方法。
【請求項17】
前記生体試料は、ヒトの血液及び尿であ
り、前記少量は、1~300マイクロリットル(μL)の範囲であり、前記バイオ検体は、尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、又はグリコアルブミン(GA)である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
(i)アルブミンを含む生体試料を第1及び第2の二又は三電極部材を含む装置上に載置する工程であって、前記第1の電極部材は、グリコアルブミンを濾過するように配置されたボロン酸またはボロン酸誘導体から選択されるボロネート親和剤で処理された薄膜を備え、前記第1及び第2の電極部材はアルブミン結合性かつ電気化学的に活性の塩化銅(CuCl
2
)である受容体に化学的に接触している工程と、
(ii)同一の酸化還元電位を前記第1及び第2の電極部材に印加し、前記第2の電極部材で総酸化還元電流を測定して総アルブミン濃度を判定し、前記第1の電極部材で前記処理された薄膜によるグリコアルブミン濾過後の非グリコアルブミン酸化還元電流を測定して非グリコアルブミン濃度を判定する工程と、
(iii)前記総酸化還元電流から前記非グリコアルブミン酸化還元電流を減算し、結果得られた電流値を前記総酸化還元電流で除算してグリコアルブミン酸化還元電流の割合を算出する工程と、
(iv)グリコアルブミン酸化還元電流の割合とグリコアルブミン濃度との対応関係から線形フィットすることによって前記生体試料中のグリコアルブミン濃度を判定する工程と、
を有する生体試料中のグリコアルブミン濃度を測定する方法。
【請求項19】
前記ボロン酸誘導体は、フェニルボロン酸(PBA)、アミノフェニルボロン酸(APBA)と、からなる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体試料中のバイオ検体を定量測定するためのバイオセンサ及び方法に関する。本発明は、特に、少量の生体試料中のアルブミン及びその複合体を正確に検出し定量測定するための電気化学的に活性のバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性球状タンパク質であるアルブミンは、ヒト血液中に最も多く存在するタンパク質である。66,438ダルトンの分子量を有するヒト血清アルブミンは、肝臓で生合成されるものであり、585個のアミノ酸を含んでいる。血清中の総タンパク質の60%を占め、血液浸透圧の80%を担っている。アルブミンは、甲状腺ホルモン、脂肪酸、非抱合型ビリルビン、ヘミン、薬物分子及び金属イオンを運搬する。そのため、人体内の分子のタクシーと呼ばれている。成人の血清中の一般的なアルブミン濃度は、35~50g/Lである。
【0003】
血漿中のアルブミン値が正常であることは、健康状態が良好であることを示すものとして認識されている。ヒト血清アルブミン(HSA)は、壊死、ネフローゼ、肝炎、栄養失調、関節炎、免疫異常、癌、糖尿病及び一部の重症感染症などのいくつかの慢性疾患において、それ自体がバイオマーカー又は準じるものである。血液中のアルブミンが不足する低アルブミン血症は、肝疾患、ネフローゼ症候群、腸内の過剰なアルブミン喪失及び血管透過性の増加が原因となる場合がある。一方、高アルブミン血症は、人体において重度の脱水症状の兆候である。
【0004】
尿中アルブミンは、潜在的な糖尿病性腎症のバイオマーカーである。糖尿病は慢性代謝性疾患であり、心臓、脳、腎臓、眼、神経系といった生命に不可欠な身体部位のほとんど全てに影響を及ぼす。世界的にも、糖尿病性腎症は腎不全の主要な原因である。糖尿病性腎症は、腎臓糸球体の毛細血管障害によって引き起こされる進行性腎疾患である。アルブミンは血液成分であり、アルブミンの分子サイズと糸球体における負の電荷を理由としてり、健康な腎臓では尿中排泄されない。尿中のアルブミンの存在は、糖尿病性腎症の早期発見では定着したバイオマーカーである。健常者では、尿中アルブミンは30mg/L未満でなければならない。尿中アルブミンが30~300mg/Lの間であれば、この状態を微量アルブミン尿と呼ぶ。米国糖尿病協会によれば、2型糖尿病患者は診断時から、1型糖尿病患者は診断5年後から糖尿病性腎症の年1回の微量アルブミン尿症の定期検診が義務付けられている。
【0005】
アルブミンは肝臓で生成されるため、血清アルブミンは、肝機能検査において重要なバイオマーカーである。急性肝炎や肝硬変を患うほとんどの患者は、アルブミン値はほぼ30g/Lであり、中毒性肝炎や肝腫瘍を患っている場合は25g/Lまで低下する。
【0006】
アルブミンは健康や疾病において重要な役割を果たしている。広範囲の生理的状態を対象に、血清アルブミンには計り知れないほど多くの用途がある。
【0007】
タンパク質糖化は、糖尿病合併症の進行において、また、タンパク質糖化から生じるその他の重篤な合併症の原因の理解において、現在広く知られたマーカーである。糖化ヘモグロビンは、長期に渡る糖尿病管理では確立された基準であり、90~120日間の平均血糖値が得られる。アルブミンは、補欠分子族や添加物を含まないタンパク質である。血液が循環する際、アルブミンは非酵素的糖化によってグルコースを蓄積する。グリコ(糖化)アルブミンは、血糖コントロールマーカーとして用いることができる。アルブミンの半減期はRBCの寿命より著しく短いため、グリコアルブミンは、中間の血糖指標として用いることができる。5年以上になる糖尿病患者では、グリコアルブミンの月次評価が糖尿病合併症予防に効果的である。HbA1cの臨床測定値が不正確でありうる貧血患者や異常ヘモグロビン症患者にとって、グリコアルブミン検査は有用である。
【0008】
メトヘムアルブミンは、急性出血性膵炎の診断に重要である。高メトヘムアルブミン値と出血性膵炎には関連があり、この疾患の診断の良い指標となることを示す研究がある。
【0009】
アルブミンの電気化学的検出は、金属タンパク質の検出よりも幾分か困難である。ヘモグロビンやミオグロビンなどの金属タンパク質は、ヘム補欠分子族の形態で鉄Fe(II)を酸化還元中心として含むため、タンパク質分子は比較的容易に電極表面に到達する。一方、アルブミンはその構造中にヘム補欠分子族を含まないため、理論上、タンパク質分子と電極表面との間の電子伝達の可能性はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バイオ検体を検出するための電気化学センサは、生体試料中のアルブミンタンパク質を定量的に検出して測定するなど、多くの特殊なセンサ用途で使用されている。一般的な電気化学センサは、薄膜蒸着工程を施した後にフォトリソグラフィマスク及び/又はエッチング技術を使ってパターン化された1本以上の薄い導体を非導電性薄膜層と共に含むが、これらの技術の代わりに、スクリーン印刷を用いるのが電気化学バイオセンサを低コストとするのには良い選択である。しかし、既知の装置及び方法は、免疫学的技術又は複雑な電極改良に基づくものであり、低コストのポイントオブケア用バイオセンサには適していない。
【0011】
Journal of Micromechanics and Microengineering、vol.17(2007)835-842には、Chao-June Huangらにより、尿中アルブミン濃度を測定するための尿中アルブミンの電気化学的検出において、硫黄-金結合形成により金電極の表面にアルブミンが吸着されることが開示されている。
【0012】
J. Analytica Chemica Acta(1921)では、Richardらの「ポリピロールをベースとしたヒト血清アルブミンセンサの開発(Development of polypyrrole-based human serum albumin sensor)」において、導電性ポリマコーティングへの抗体の直接混入に適した電気合成方法が開示されている。
【0013】
欧州特許公開第2040074号には、ハロゲン化キサンテン系色素を含有するタンパク質分析試薬を用いて尿中アルブミンを分析する比色法が開示されている。
【0014】
米国特許第5182214号には、血清アルブミン検出のための蛍光をベースとした方法が開示されている。この方法は、血清アルブミンの存在下で増強されるアニオン性シアニン色素の蛍光に基づいている。
【0015】
米国特許出願公開第2006/0223192号には、サンプル中の総アルブミン値に対する血液サンプル中のグリコアルブミン量を測定するための免疫クロマトグラフィ測定装置が開示されている。
【0016】
欧州特許公開第0769697号には、アルブミン染色色素及びグリコアルブミン染色色素を含有する試薬層を用いてグリコアルブミンを測定する比色乾燥試験装置が開示されている。
【0017】
欧州特許公開第1810036号には、尿サンプル中のアルブミン量を半定量的に測定するための試験紙が開示されている。試験紙のテストパッド領域には、クマシーブリリアントブルーが含まれており、その部分に尿サンプルを染み込ませると、タンパク質が存在していれば色が変化するようになっている。
【0018】
米国特許出願公開第2005/22339215号には、モノクローナル抗体とハイブリドーマに基づいてグリコアルブミンを検出する方法が開示されている。
【0019】
Journal of clinical chemistry and clinical biochemistry、21/10,1506-1510(1975)には、Scot N Andresにより、ジエチルアミノエチル-セファデックスのイオン交換クロマトグラフィを用いたメトヘムアルブミンの検出が開示されている。
【0020】
米国特許出願第2014/0170766号には、アプタマー受容体に基づく光度測定法を用い、唾液サンプル中の総アルブミンに対するグリコアルブミンを測定するためのポイントオブケア用装置が開示されている。
【0021】
これらの開示された方法は、主に抗アルブミン抗体結合、電極表面におけるアルブミンの吸着による酸化還元電流の変化、及びマイクロ流体力学に基づいている。
【0022】
また、様々なポイントオブケア用装置、例えば、Hemoclue社のAlbumin201、Axis Shield社のACR、Siemens社のDCA Vantage Analyzerなどもアルブミン検出に利用できる。
【0023】
これらの既知の装置及び方法はすべて、免疫学的技術に基づくものか、あるいは、複雑な電極の改良を伴うものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の主な目的は、生体試料を採取及び保持し、引き続き、少量の生体試料中のアルブミンとその複合体、特に、尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)及びメトヘムアルブミン(MHA)を定量検出する電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置を提供することにある。
【0025】
本発明の目的の1つは、電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置を収容するように構成された装置ホルダを提供することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置を収容するように構成され、電位の印加時に電気化学的に活性の装置を流れる酸化還元電流を測定することにより、少量の生体試料中の尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)及びメトヘムアルブミン(MHA)を検出及び定量測定するためのポイントオブケア用バイオセンサを提供することにある。
【0027】
また、本発明の目的の1つは、電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置を流れる酸化還元電流を正確に測定することにより、尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)及びメトヘムアルブミン(MHA)を検出及び定量測定する方法を提供することにある。
【0028】
また、本発明の目的は、金属補欠分子族を持たない電気的に絶縁された既知の生体分子であるGAを定量測定する方法を提供することにある。
【0029】
本発明は、少なくとも1つの二電極部材と、二電極部材と化学的に接触するアルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体とを備えた、生体試料を採取及び保持するための電気化学的に活性の装置を提供する。また、本発明は、本発明の装置を有するポイントオブケア用バイオセンサと、生体試料中のバイオ検体を測定する方法を提供する。本発明の装置、ポイントオブケア用バイオセンサ及び方法では、尿及び血液サンプル中の酸化還元電流値を判定することによりアルブミンバイオ検体濃度の正確な測定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の一態様における電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の二電極構造を示す概略分解図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の態様における電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の三電極構造の概略分解図である。
【
図3a】
図3aは、本発明の更に別の態様における電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の2対の三電極構造の概略分解図である。
【
図3b】
図3bは、本発明の更に別の態様における電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置のトレイを備えた2対の三電極構造の概略分解図である。
【
図4a】
図4aは、尿中アルブミン及びヒト血清アルブミン用の三電極構造を有する電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の概略上面図である。
【
図4b】
図4bは、受容体が薄膜の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図4c】
図4cは、受容体が電極の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図4d】
図4dは、電極が受容体としての役割を果たす電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図5a】
図5aは、メトヘムアルブミン用の三電極構造を有する電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の概略上面図である。
【
図5b】
図5bは、受容体が薄膜の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図5c】
図5cは、受容体が電極の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図6a】
図6aは、グリコアルブミンを定量測定するための2組の三電極構造を有する電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の概略上面図である。
【
図6b】
図6bは、総ヒト血清アルブミン検出のために受容体が薄膜の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図6c】
図6cは、総ヒト血清アルブミン検出のために受容体が電極の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図6d】
図6dは、総ヒト血清アルブミン検出のために電極が受容体としての役割を果たす電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図6e】
図6eは、受容体が薄膜の表面に配置され、生体試料からグリコアルブミン成分を濾過するためにボロン酸誘導体からなる別の化学物質層が第2の薄膜の表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図6f】
図6fは、受容体が薄膜の表面に配置され、ボロン酸誘導体の別の化学物質層も受容体と同じ薄膜表面に配置された電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の装置を保持する装置ホルダの斜視図である。
【
図8a】
図8aは、本発明の装置を保持するポイントオブケア用バイオセンサの斜視図である。
【
図8b】
図8bは、ポイントオブケア用バイオセンサの大まかな内部電子構造の概略図である。
【
図9】
図9は、生体試料である尿中のヘミンの還元ピークを示すプロットである。
【
図10】
図10は、本発明の装置及びポイントオブケア用バイオセンサを用いてバイオ検体濃度を定量測定するための工程段階を示す高水準フローチャートである。
【
図11】
図11は、合成尿溶液中のCuCl
2の酸化還元挙動を示すプロットである。
【
図12】
図12は、メチレンブルー(MB)のサイクリックボルタモグラムを示すプロットである。
【
図13】
図13は、メトヘモグロビン血症におけるメチレンブルーの酸化還元挙動の模式図である。
【
図14】
図14は、ヘミンを添加した場合と添加しなかった場合のメチレンブルー(MB)のサイクリックボルタモグラムのプロットを示す。
【
図15】
図15は、MB及びロイコメチレンブルー(LMB)のUV-VISスペクトルを示すプロットである。
【
図16】
図16は、ヘミン濃度が異なるロイコメチレンブルーのUV-VISスペクトルを示す。
【
図17】
図17は、メチレンブルーとヘミンにより変形したメチレンブルーのUV-VISスペクトルを示す。
【
図19】
図19は、MB-ヘミンをベースとした検出の反応機構の概略図である。
【
図20a】
図20aは、CuCl
2を添加する前のMBのサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図20b】
図20bは、還元電流に対するCuCl
2濃度のプロットを示す。
【
図21】
図21は、本発明の装置及びポイントオブケア用バイオセンサを用いてグリコアルブミン濃度を定量測定するための工程段階を示す高水準フローチャートである。
【
図22a】
図22aは、様々な尿中アルブミン濃度における遊離ヘミンのサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図22b】
図22bは、還元電流に対する尿中アルブミン濃度のプロットを示す。
【
図23a】
図23aは、様々な尿中アルブミン濃度におけるCuCl
2中の遊離Cu(II)のサイクリックボルタモグラムである。
【
図23b】
図23bは、還元電流及び酸化電流に対する尿中アルブミン濃度のプロットを示す。
【
図24a】
図24aは、様々な尿中アルブミン濃度における遊離ヘミンとMBのサイクリックボルタモグラムである。
【
図24b】
図24bは、還元電流に対する尿中アルブミン濃度のプロットを示す。
【
図25a】
図25aは、様々な尿中アルブミン濃度におけるCuCl
2中の遊離Cu(II)とMBのサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図25b】
図25bは、還元電流に対する尿中アルブミン濃度のプロットを示す。
【
図26a】
図26aは、様々なヒト血漿中アルブミン濃度におけるCuCl
2中の遊離Cu(II)のサイクリックボルタモグラムである。
【
図26b】
図26bは、還元電流及び酸化電流に対する尿中アルブミン濃度のプロットを示す。
【
図27a】
図27aは、様々なメトヘムアルブミン濃度におけるMBのサイクリックボルタモグラムを示す。
【
図27b】
図27bは、還元電流に対するメトヘムアルブミン濃度を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
このように、本発明は、少量の尿及び血液の生体試料中のアルブミンとその複合体、例えば、尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)及びメトヘムアルブミン(MHA)などのバイオ検体を正確に検出し定量測定のための電気化学的に活性かつアルブミン結合性のバイオセンサを提供する。
【0032】
本発明の一態様では、生体試料を採取及び保持するための電気化学的に活性の装置は、基板に配置された少なくとも一対の導電路を備え、導電路が少なくとも1つの二電極部材に接続される。受容体は、電極部材及びバイオ検体を含む生体試料と化学的に接触している。本発明の装置は、カートリッジ又はカセットの形態のハウジングを効果的に備える。
【0033】
本発明の別の態様では、本発明の電気化学的に活性の装置を保持するホルダはハウジングを備え、ハウジングの内部には少なくとも1つの装置検出・信号調整装置が配置される。コネクタ、好ましくはUSBコネクタがハウジングの一端に設けられ、導電ポートがハウジングの他端に配置される。電気化学的に活性の装置は、生体試料を採取及び保持するために導電ポートを介してハウジングに接続するように配置される。装置は、少なくとも一対の導電路と、少なくとも1つの二電極部材と、アルブミン結合性で電気化学的に活性の受容体が基板に配置されている。受容体は、二電極部材及び測定対象のバイオ検体を含む生体試料と化学的に接触するように配置される。
【0034】
本発明の更に別の態様では、生体試料中のバイオ検体濃度を測定するためのポイントオブケア用バイオセンサは、表示部材と導電ポートとを有するハウジングを備える。電気化学的に活性の装置は、生体試料を採取及び保持するために導電ポートを介してハウジングに接続される。装置は、少なくとも一対の導電路と、少なくとも1つの二電極部材と、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体が基板に配置されている。受容体は、二電極部材及びバイオ検体を含む生体試料と化学的に接触する。デジタル制御部は、ハウジングの内部に配置され、装置に印加される酸化還元電位から酸化還元電流を測定し、アルブミン濃度に直線的にマッチングする対応する酸化還元電流を測定することにより、アルブミンバイオ検体濃度を読み取り表示するように構成される。
【0035】
本発明の一態様では、また、生体試料中のアルブミンバイオ検体及びその複合体の濃度を測定する方法を提供する。この方法では、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体に化学的に接触し、バイオ検体を含む少量の生体試料を載置した少なくとも1つの二電極部材に、酸化還元電位を印加する。この方法では、二電極部材の対応する酸化還元電流と直線的にマッチングさせることにより、生体試料中のアルブミンバイオ検体濃度を測定する。
【0036】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。最初に、生体試料を採取及び保持し、引き続き生体試料中に存在する目的のアルブミン検体とその複合体を測定するための、本発明の電気化学的に活性の装置の好適な実施形態を、
図1を参照して説明する。
【0037】
図1に示す装置100は、基板101を備えており、その上に装置の他の構成要素が組み立てられる又は配置されるベースとなっている。本実施形態において、基板101は、長尺の長方形構造として例示されている。しかし、基板101は、装置100を保持するバイオセンサの形状及び構成に応じて、正方形、円形などの他の形状をとることができることが理解される。基板101は、パターン電極の組み込みに適した任意の適切な剛性材料又は可撓性材料で形成することができる。基板101の好適な材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エポキシ繊維複合材料、ポリアミド複合材料及び紙などの材料を使用することができる。また、基板101の好適な剛性材料としては、セラミック、ガラス又は同様の他の材料とすることができる。いずれの場合でも、基板101に適した材料の選択は、基板101が所望の強度及び可撓性を有するだけでなく、電気絶縁体としても機能することができるように行われる。本発明の用途を考慮すると、生体試料が基板101と物理的に接触したときに浸出しないように、基板101に親水性を持たせると効果的である。基板101の表面の質は、一般的には滑らかである。しかし、基板101の表面は、粗面であってもよく、及び/又は、凹みや穴があってもよい。また、基板101の端部は、バイオ検体の測定に使用されるバイオセンサへ容易に挿抜できるように、テーパ形状又は湾曲形状など適切な形状とされる。
【0038】
一対の導電路102a及び102bが、基板101に配置される。導電路102a及び102bは、スクリーン印刷、リソグラフィ、熱蒸着、スパッタリング、レーザパターニングなどのパターン形成法を用いて形成されるが、スクリーン印刷が好ましい。
図1の例示的態様は、一対の導電路102a及び102bを形成して実施される。しかし、必要な導電路数は適切に増加・変更することができる。導電路102a及び102bの経路は、
図1では直線状の路線として例示されている。多角形などの他の適切な構成の導電路を使用することもできる。導電路102a及び102bの物質は、銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、炭素などの導電性物質、その他の適切な導電性物質、又は、これらの物質の合金とすることができる。また、導電路102a及び102bの物質は、金、プラチナ、水銀、炭素、ガラス状炭素及びグラファイトなどのように電気化学的に活性とすることもできる。導電路102a及び102bは、以下に説明する本発明のバイオセンサと電気的に接続するために使用される。
【0039】
図1に示すように、一対の電極103a及び103bが、導電路102a及び102bにそれぞれ電気的に接続される。
図1に示すように、電極103a及び103bは、導電路102a及び102bに重ねられ、導電路102a及び102bに層を形成するように導電路102a及び102bの終端に配置される。電極103a及び103bの材料は、金、プラチナ、水銀、炭素、ガラス状炭素及びグラファイトなどの電気化学的に活性な金属又は合金から選択される。
図1に示す電極配置では、電極103aは作用電極、電極103bは対電極となる。
【0040】
薄膜104は、
図1に示すように一対の電極103a、103bに配置され、以下に説明する受容体を一体化するベース部材となる。薄膜104の物質は、ポリマ、セルロース、ニトロセルロース、ナイロン、綿布、ろ紙などとすることができる。薄膜104は、ボロン酸、フェニルボロン酸(PBA)、アミノフェニルボロン酸(APBA)及びその誘導体からなる群から選択されるボロネート親和剤で、好ましくはアミノフェニルボロン酸(APBA)で処理される。薄膜は、グリコアルブミンを検出するためにボロネート親和剤で処理される。
【0041】
本発明の装置100は、ヒト生体試料中の尿中アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)及びメトヘムアルブミン(MHA)などのアルブミンバイオ検体を個別に又は共に検出及び定量測定するために使用される。よって、本発明では、アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体105が電極と化学的に接触している。この好適な実施形態では、受容体105は、電気化学的に活性の物質の層として示されている。尿生物試料中の尿中アルブミン及び血液生体試料中の血清アルブミン(SA)を検出するために受容体105として使用される電気化学的に活性の物質は、少なくとも有機物、無機物、金属ポルフィリン物質であり、好ましくはヘミン、ヘマチン、アルカリヘミン又はアルカリヘマチン、塩化銅(CuCl2)、銅塩(Cu(II))、メチレンブルー、メチレンブルーとヘミン、ヘマチン、アルカリヘミン又はアルカリヘマチンとの組合せ、メチレンブルーと銅塩(Cu(II))との組み合わせ、及び、その変異体である。
【0042】
受容体105と電極103a、103bとの化学的接触は、以下のように開始することが好ましい。受容体105の溶液を調製した後、電極に吐出し乾燥することで、電極103a及び103b上に固体化学物質層を形成し、この官能化電極をバイオ検体の定量測定に使用する。
【0043】
あるいは、受容体溶液を、目的のバイオ検体を含む選択された生体試料と予め混合しておき、薄膜104を必要に応じて備えた電極103a及び103bに少量の予混合溶液を吐出する。
【0044】
本発明の別の態様では、受容体溶液を別途調製し、電極に直接又は電極に配置された薄膜上に吐出する。その後、アルブミンバイオ検体を含む目的の生体試料を電極に塗布する。
【0045】
図1に示すように、パッシベーション層106が導電路を覆うように配置される。パッシベーション層106は、装置の導電素子を保護し、電極領域を正確に画定するために使用される。
【0046】
本発明の更に別の態様では、
図2に示すように、生体試料を採取及び保持するために、本発明の装置100は、受容体(
図1に示す)と併せて使用される3つの電極103a、103b、103cを一組とした構成を有するものとして示されており、電極103a、103b、103cはそれぞれ導電路102a、102b、102cに接続される。電極の数が多くなるほど、より高精度で生体試料中の単一のバイオ検体の検出を容易に行うことができる。この実施形態では、電極103cは基準電極として機能する。基準電極103cに好適な物質は、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、銀/塩化銀(Ag/AgCl)又は飽和カロメルであり、電極の電位は経時変化しない。
【0047】
図3aに示す本発明の更に別の態様では、本発明の装置100は、導電路102a、102b、102c、102d、102e、102f上に配置され、所定の生体試料中の複数のバイオ検体濃度を測定するために使用されるように構成された二対の三電極103a、103b、103c、103d、103e、103fを有するものとして示されている。この態様では、目的の生体試料が血液及び尿である場合、電極にシールドされたウェルプレート又はトレイが配置され、
図3bに示すように検知領域を2つに区分し、生体試料の個別検知が容易に行うことができるように構成される。したがって、電極の各対と併せて設けられた2つの別々の受容体がこれらの試料を受け取り、これらの2つの異なる生体試料中のアルブミン濃度の測定が別々に行われる。また、必要と思われる場合には、
図3bに示すような物理的な仕切り壁を設けて電極を分離してもよい。
【0048】
図4aには、少なくとも有機物、無機物、金属ポルフィリン物質であり、好ましくはヘミン、アルカリヘミン、アルカリヘマチン、塩化銅(CuCl
2)、銅塩(Cu(II))、メチレンブルー、メチレンブルーとヘミン、ヘマチン、アルカリヘミン又はアルカリヘマチンとの組合せ、及び、メチレンブルーと銅塩(Cu(II))との組み合わせから選択された受容体を採用することにより、微量アルブミン尿及びHSAを測定する装置100の三電極構造が例示される。
【0049】
図4bは前図に対応する断面図であり、基板101の表面に導電路102a、102b、102cが配置される。三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。薄膜104が、電極103a、103b、103cの表面に配置される。受容体層105は、薄膜104の表面に配置される。
【0050】
図4cは前図に対応する断面図であり、基板101の表面に導電路102a、102b、102cが配置される。三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。受容体105は、電極103a、103b、103cの表面に配置される。
【0051】
図4dは前図に対応する断面図であり、基板101の表面に導電路102a、102b、102cが配置される。三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなり、これらの電極には受容体105が塗布されている。
【0052】
図4a、b、c及びdに示すこれらの実施形態は、尿及び血液サンプル中のアルブミンバイオ検体を測定するために用いられる。
【0053】
図5aには、受容体としてとしてメチレンブルー(MB)を用いて生体試料中のメトヘムアルブミン(アルブミン-ヘム複合体)を測定する装置100の三電極構造が例示される。
【0054】
図5bは前図に対応する断面図であり、基板101の表面に導電路102a、102b、102cが配置される。三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。薄膜104が、電極103a、103b、103cの表面に配置される。受容体層105は、薄膜104の表面に配置される。
【0055】
図5cは前図に対応する断面図であり、基板101の表面に導電路102a、102b、102cが配置される。三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。受容体105は、電極103a、103b、103cの表面に配置される。
【0056】
図5a、b及びcに示すこれらの実施形態は、生体試料中のメトヘムアルブミン複合体を測定するために用いられる。
【0057】
図6aに、2組の三電極構造を有し、生体試料中の総アルブミン及びグリコアルブミンの測定に用いられる電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置100の上面図を示す。
【0058】
図6bは前図に対応する断面図であり、基板101の表面左半分に導電路102a、102b、102cが配置される。基板101の左半分の三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。薄膜104が、電極103a、103b、103cの表面に配置される。受容体層105は、薄膜104の表面に配置される。
【0059】
図6cは前図に対応する断面図であり、基板101の表面左半分に導電路102a、102b、102cが配置される。基板101の左半分の三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなる。受容体105は、電極103a、103b、103cの表面に配置される。
【0060】
図6dは前図に対応する断面図であり、基板101の表面左半分に導電路102a、102b、102cが配置される。基板101の左半分の三電極構造は、導電路102a、102b、102cに接続された作用電極103aと、対電極103bと、基準電極103cとからなり、これらの電極には受容体105が塗布されている。
【0061】
図6eは前図に対応する断面図であり、基板101の表面右半分に導電路102d、102e、102fが配置される。基板101の右半分の三電極構造は、導電路102d、102e、102fに接続された作用電極103dと、対電極103eと、基準電極103fとからなる。薄膜104が、電極103d、103e、103fの表面に配置される。受容体層105は、薄膜104の表面に配置される。第2の薄膜107が受容体層105の表面に配置される。ボロン酸誘導体からなる化学物質層108が、生体試料からグリコアルブミン成分を濾過するために第2の薄膜107の表面に配置される。
【0062】
図6fは前図に対応する断面図であり、基板101の表面右半分に導電路102d、102e、102fが配置される。基板101の右半分の三電極構造は、導電路102d、102e、102fに接続された作用電極103dと、対電極103eと、基準電極103fとからなる。受容体105及びボロン酸誘導体が、電極103d、103e、103fの表面に配置される。
図6a、b、c、d、e及びfに示すこれらの実施形態は、血液サンプル中の総アルブミン及びグリコアルブミン成分を除くアルブミンを測定するために用いられる。
【0063】
本発明の更に別の態様における、生体試料中のバイオ検体の検出用の装置ホルダ200が、
図7に示される。装置ホルダ200は、装置検出・調整装置を有するハウジング201を備え、ハウジング201は、プロセッサ及び表示部材に接続するように構成される。ハウジング201には、装置挿入口203が設けられている。装置挿入口203に挿入される装置100は、ハウジング201に接続された基板上に少なくとも1つの二電極部材とアルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体を有し、受容体が生体試料204を受けるように構成されている。
図7に示すように、USBプラグ202がハウジング201に接続される。装置ホルダ200は、検査用の生体試料を採取及び保持するために使用される。また、装置ホルダ200には、装置検出機能、信号調整機能、及び、装置100に収容されたバイオ検体の種類を識別するためのデータ取得機能が設けられている。装置ホルダ200のユーザは、ホルダ200をプロセッサに挿入し、測定用の生体試料を採取することができる。
【0064】
本発明の装置ホルダ200は、処理・表示装置に挿入された後に電源が投入される。そして、装置100を装置ホルダ200内に装着する。装置ホルダ200のハウジング201内にある装置検出装置は、指定の装置を検出したことを示すように構成されている。装置ホルダ200が装置100を検出すると、装置100に生体試料が載せられ、基準電極に対して所望の酸化還元電位が、デジタル/アナログ変換器(DAC)を介して装置の作用電極に印加される。対電極及び作用電極を通過する酸化還元電流は、コンバータ(電圧電流変換器)を用いて測定される。
【0065】
図8aに、生体試料中のバイオ検体を検知するためのポイントオブケア用バイオセンサ300を示す。ポイントオブケア用バイオセンサ300はハウジング301を備え、これにマイクロUSB302用及びマイクロSDカード303用のポートが設けられている。マイクロUSB302はバイオセンサ300の充電に用いられ、マイクロSDカードは記憶装置として用いられる。また、表示部材304がハウジング301に備えられており、タッチセンサ式の装置を含む、LCD、LED、OLED、OMLED、TFT又はそのディスプレイとすることができる。ハウジング301には、装置挿入口305が設けられている。装置挿入口305には、装置と電気的に係合する金属接点が設けられている。つまり、挿入口305は、装置100の電極部材を介して装置100が収容されるように設けられている。ポイントオブケア用バイオセンサ300は、ユーザが容易に簡単な方法でポイントオブケア用バイオセンサ300と装置100を使用できるように設けられている。最初に装置100がポイントオブケア用バイオセンサ300に挿入され、その後、生体試料の採取に際し伴う侵襲的手段が最小限ですむ1~300μLの範囲の少量の生体試料が装置100に載せられる。また、ユーザは、湿度、温度変化及び保存条件などの環境要因に制限されることなく、室温で自由にバイオセンサ300を使用することができる。バイオセンサ300を使用することにより、ユーザは、大幅に短時間で、目的のバイオ検体の濃度レベルを測定することができる。これは、バイオ検体が受容体に瞬間的に結合するためである。バイオセンサ300では濃度レベルを測定するためにバイオ検体固有の結合特性を利用しているため、表示部材304上にバイオ検体濃度が瞬時且つ正確に表示され、ユーザに提供される。本発明のバイオセンサ300を使用することにより、ユーザは、検査前の生体試料の活性調製を必要とすることなくバイオセンサを使用することができる。
【0066】
次に、
図8bを参照すると、バイオセンサ300の電子機器の内部構造が示されている。ハウジング301内には、データベース部材306が設けられており、生体試料中に存在するヒト血清アルブミン(HSA)、グリコアルブミン(GA)、メトヘムアルブミン(MHA)及び尿中アルブミンのバイオ検体濃度と酸化還元電流の標準値が保存されている。また、データベース306は、過去及び現在のバイオ検体濃度に関するデータを含む。バイオセンサ300の様々な機能を実行するために必要な実行ファイルが、バイオセンサ300の記憶媒体に保存されている。ハウジング301内にデータベース部材306に接続して設けられたデジタル制御部307は、アルブミンバイオ検体を含む生物試料を載置したアルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体を有する少なくとも1つの二電極部材に酸化還元電位を印加し、対応する酸化還元電流を測定するように構成されている。デジタル制御部307は、濃度レベルに直線的にマッチングさせることによりアルブミンバイオ検体の酸化還元電流を測定し、アルブミンバイオ検体濃度の測定値を表示するように設けられる。
【0067】
バイオセンサ300への電力供給は、バイオセンサ300に接続された電源装置308により制御される。電源装置308は、充電回路を備えたオンライン及びオフラインの両方の方式の充電式電池を含む。信号調整・装置検出装置309は、マイクロコントローラ307に接続され、バイオセンサ300内に装置100があることを検出し、電極に酸化還元電位を印加し、選択された生体試料からの酸化還元電流を測定する。湿度センサ310及び温度センサ311が、ハウジング301内に配置される。マイクロコントローラ307によるバイオ検体の濃度レベルの測定が完了すると、その濃度レベルが、バイオ検体の濃度レベルの過去のデータと共にディスプレイ部材304に表示される。
【0068】
また、本発明は、生体試料中のアルブミンバイオ検体を正確に検出及び定量測定する方法を提供する。血液や尿などの目的の生体試料を、以下に示す標準プロトコルに従った最小限の侵襲的手段により、非常に少量、即ち、マイクロリットル(μL)の範囲の量で、ヒト被験者から採取する。本発明の方法において、バイオ検体の測定に使用することができる生体試料の好適な量は、1~300マイクロリットル(μL)の範囲が好ましい。生体試料の必要量は、装置の受容体の表面積の大きさによって決まる。少量の試料の採取は、侵襲性が最小限の試料採取技術で行うことができることから、被験者の負担を大幅に減少させることができる。生体試料の量を少量とすることにより、ユーザは、瀉血による採取製品の必要性を回避することができる。
【0069】
本発明の方法では、バイオ検体の判定と正確な測定は、電気化学の原理を実施することにより行われる。よって、電位の印加時に電気化学的に活性の装置を流れる酸化還元電流の測定による場合、測定用に選択されると効果的なバイオ検体は、球状タンパク質-ヒト血清アルブミン(HSA)及び尿中アルブミン-である。また、本発明の方法では、グリコアルブミン(GA)やメトヘムアルブミン(MHA)などのアルブミン複合体の量を測定する。本発明においては、特に、金属補欠分子族を持たない電気的に絶縁された既知の生体分子であるGAの定量測定が行われる。
【0070】
本発明において、受容体物質は、金属ポルフィリン配位子、金属イオン、有機分子及びこれらの物質の組み合わせからなる群から選択される。
【0071】
本発明の方法では、受容体物質が、以下に記載される好適な化学物質の溶液として効果的に調製される。例えば、ヘミンが好適な受容体として選択される場合、好ましくはアルカリ性水溶液(NaOH/KOH)又はジメチル・スルホキシド(DMSO)、又は当該物質が可溶な他の溶媒にヘミンを溶解させる。
【0072】
ベースとなる化学物質がCu(II)である受容体物質、好ましくはCuCl2及びCU2SO4の場合、その化学物質を、蒸留水、アルコール、水酸化アンモニウム又は当該物質が可溶な他の溶媒に溶解させることが好ましい。
【0073】
受容体としてメチレンブルー(MB)を用いる場合、当該化学物質を、蒸留水又は当該化学物質が可溶な他の溶媒に溶解させることが好ましい。
【0074】
このようにして調製された受容体溶液は、生体試料の塗布前に、本発明の装置における電極部材又は薄膜を有する電極部材に塗布される。
【0075】
また、受容体溶液を生体試料と予め混合し、混合溶液を装置における電極部材又は薄膜を有する電極部材に塗布することもできる。
【0076】
次に、例示的態様における尿中アルブミンの検出及び測定方法を説明する。尿サンプル中のアルブミンの存在を検査するために、少量の生体試料(尿)を、本発明の装置の受容体と化学的に接触させる。受容体は、金属ポルフィリン物質のヘミンである。ヒトアルブミンは、脂肪酸、金属イオン、ヘミンやビリルビン、また、ワルファリン、アセチルサリチル酸といった医薬品などの様々な物質に結合することが知られている。ヘミンはアルブミンへの結合定数が高い。ヘミンの結合定数は1.1×10
8M
-1であり、
図9に示すようにヘミンは電気化学的に活性である。ヘミンは、第二鉄(Fe(III))の状態の鉄を含むが、これが、サイクリックボルタンメトリーにおいて式Fe(III)+e
-→Fe(II)に示すように第一鉄(Fe(II))に還元され、
図9に示すような還元ピークが得られる。ヘミンに対するアルブミンの結合とヘミンが示す還元電流ピークを考慮し、アルブミン濃度検出には、リガンド受容体としてヘミンが選択される。
図9に示す遊離ヘミンの還元ピーク電流を用いて、尿サンプル中でヘミンがアルブミンと結合した場合の対応する還元ピーク電流の変化と照らし合わせる。
【0077】
目的の生体試料中のアルブミン濃度の測定に先立ち、様々な尿や合成尿試料中の基準アルブミン濃度(mg/L)に関するデータを収集し、データベース部材に保存する。これにより、データベース部材には基準尿中アルブミン濃度(mg/L)の値と対応するヘミン酸素還元電流値(μA)とが保存される。指定の濃度の好適な酸素還元電流値は、試験を繰り返し、選択されたアルブミン濃度に対する酸素還元電流値が同一となった結果として得られたものである。
【0078】
次に、
図10a及び
図10bを参照し、バイオ検体測定の工程段階を説明する。本発明のバイオセンサを選び、電源を投入する。そして、バイオセンサに装置を装着する。バイオセンサは、指定の装置を検出したことを示すように構成されている。バイオセンサが装置を検出すると、生体試料が装置に載せられ、デジタル/アナログ変換器(DAC)により基準電極に対して所望の酸化還元電位が装置の作用電極に印加される。酸化還元電位は、化学物質の電子を受け取りやすさと、それによる還元の尺度である。化学物質は、それぞれ固有の酸化還元電位を有する。電位が正であるほど、電子に対する物質の親和性が大きくなり、還元される傾向にある。よって、人工尿溶液中のヘミンの酸化還元電位は、約-0.5Vとなることもある。対電極と作用電極を通過する酸化還元電流は、電圧/電流変換器を用いて測定される。
【0079】
測定された酸化還元電流は、記憶された酸化還元電流値と照合され、一致すると、これに対応する尿中アルブミン濃度がバイオセンサに取り込まれ、表示される。あるいは、線形フィット方程式を使って、酸化還元電流値からバイオ検体濃度を計算することもできる。尿サンプル中のアルブミン濃度レベルを抽出した後、バイオセンサはその値を表示する。
【0080】
本発明の別の態様においては、ヒト血漿が、アルブミン含有量を判断するための生体試料として使用される。この生体試料に対し、上述したステップに沿って上述した受容体を使用してアルブミン含有量を判断する。
【0081】
例示的態様においては、CuCl
2が、血漿アルブミンに結合する受容体として採用される。Cu(II)はアルブミンへの結合定数が最も高い。Cu(II)の結合定数は1.6×10
16M
-1であり、
図11に示すように、Cu(II)は電気化学的に活性である。CuCl
2は、酸化数+2の銅を含み、Cu(0)に還元され、
図11に示すような酸化ピークに伴う還元ピークが得られる。Cuとアルブミンの結合の観点からみると、生体試料中のアルブミン濃度の変化に直線的に比例する還元ピーク及び酸化ピークの減少が観察される。Cu(II)に対するアルブミンの結合とCu(II)が示す還元ピーク及び酸化ピークを考慮し、アルブミン濃度の検出には、受容体としてCu(II)が選択される。
【0082】
メチレンブルー(MB)は、周知の電気化学的酸化還元色素である。
図12に示すように、MBは、サイクリックボルタモグラムにおいて可逆的な酸化還元ピークを示す。一般に、MBは、生物学におけるDNA染色や、メトヘモグロビン血症の解毒剤として使用される。メトヘモグロビン血症治療において、MBは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)酵素の存在下で(電子を受け取ることにより)ロイコメチレンブルー(LMB)に還元される。その後、LMBは、メトヘモグロビン分子中の第二鉄(Fe
+3)に電子を供与し、これをヘモグロビン分子中の第一鉄(Fe
+2)に変える。NADPH酵素の存在下でのMBからLMBへの還元が、
図13に示すこのプロセスの鍵である。本発明では、サイクリックボルタンメトリー法を用いて、電気化学的経路によりMBをLMBに還元する。Fe
+3含有元素又は第二鉄の元素が還元形態のMB(LMB)に添加されると、MBはその電子を第二鉄(Fe
+3)に供与し、これを第一鉄(Fe
+2)に還元する。この反応では、以下の化学反応式に示されるように、Fe
+3の形の鉄がFe
+2の形の鉄に還元される一方で、LMBは更に酸化され、MBの形態となる。
MB+2e
-+H
+→LMB
LMB+2Fe
+++→MB+2Fe
++
【0083】
図14に示すように、MBの還元電流ピークは、LMBからFe
+3への電子供与による接触電流のため、ヘミンを添加した後に増加する。この反応は、紫外・可視(UV-VIS)分光法を用いて分析される。
図15に示すように、MBは約660nmに吸収ピークを示すが、LMBは無色の液体であり、UV-VISスペクトルに吸収ピークを示さない。ここで、LMB溶液は、アスコルビン酸を用いたMBの化学的還元により調製される。ヘミンをLMB溶液に加えると、LMBは電子をヘミンに供与することにより酸化してMBとなり、
図16に示すようにMBピークが現れる。純粋なMBのUV-VISスペクトルをヘミンによりMBに変換されたものと比較すると、
図17に示すように600nm以下で吸収の増加が見られる。この吸収の増加は、MB試料中の
図18に示すようなヘミンが存在することに起因する。
【0084】
上述したヘミンのMBに対する活性の原理に基づき、本発明の方法では、ヘミン-MBの組み合わせをベースとした受容体をアルブミン検出に採用している。
【0085】
ヘミン-MBをベースとするアルブミン検出では、低ヘミン濃度でも高還元ピーク電流が測定されるが、これはLMBが電子供与することによるヘミンの還元に起因するものであり、一部のヘミン分子は、
図19に示すような直接検出の場合と同様に電極表面で直接還元される。その結果、少量のMBが電流増幅器として作用する。
【0086】
ヘミンをベースとした尿中アルブミンの直接検出では、ヘミンが電極表面で還元され、これによる還元電流が得られる。一方、MB-ヘミンをベースとした検出の場合、LMB分子からヘミン分子への電子の供与によってもヘミンは還元され、MB-ヘミンをベースとした検出では、より低いヘミン濃度でも同様のピーク電流が得られる。このように、MB-ヘミンの組み合わせを用いることで、同等の還元電流値を得ながら、ヘミンの使用量を大幅に低減できる。
【0087】
測定された酸化還元電流が、記憶された酸化還元電流値との照合で一致すると、これに対応する尿中アルブミン濃度がバイオセンサに取り込まれ表示される。あるいは、線形フィット方程式を使って、酸化還元電流値からバイオ検体濃度を計算することもできる。尿サンプル中のアルブミン濃度レベルを抽出した後、バイオセンサはその値を表示する。
【0088】
本発明の別の態様では、MB-CuCl
2の組み合わせの受容体が使用される。この種の受容体が使用されると、MB-ヘミン反応の場合で前述したように、接触電流に起因して、
図20に示すように、Cu(II)を添加した後のMBのサイクリックボルタモグラムにおける還元ピーク電流が増加する。銅-アルブミン複合体は、スーパーオキシドジスムターゼ活性を有することが知られており、還元形態のMBから電子を消去することができる。尿中アルブミン検出用の受容体がCuCI
2-MBの組み合わせの場合、アルブミンをCu(II)-MB溶液に添加すると、銅-アルブミン複合体が還元形態のMB(LMB)から電子を消去することでメチレンブルーの酸化を促進し、電極表面でMB濃度が増加するという事実により、還元ピーク電流が増加する。
【0089】
測定された酸化還元電流が、記憶された酸化還元電流値との照合で一致すると、これに対応する尿中アルブミン濃度がバイオセンサに取り込まれ表示される。あるいは、線形フィット方程式を使って、酸化還元電流値からバイオ検体濃度を計算することもできる。尿サンプル中のアルブミン濃度レベルを抽出した後、バイオセンサはその値を表示する。
【0090】
本発明の別の態様においては、ヒト血漿が、アルブミン含有量を判断するための生体試料として使用される。この生体試料に対し、上述したステップに沿って上述した受容体を使用してアルブミン含有量を判断する。
【0091】
本発明の方法の別の態様においては、CuCl
2が、血漿アルブミンに結合する受容体として採用される。Cu(II)はアルブミンへの結合定数が最も高い。Cu(II)の結合定数は1.6×10
16M
-1であり、
図11に示すように、Cu(II)は電気化学的に活性である。CuCl
2は、酸化数+2の銅を含み、Cu(0)に還元され、
図11に示すような酸化ピークに伴う還元ピークが得られる。Cuとアルブミンの結合の観点からみると、生体試料中のアルブミン濃度の変化に直線的に比例する還元ピーク及び酸化ピークの減少が観察される。Cu(II)に対するアルブミンの結合とCu(II)が示す還元ピーク及び酸化ピークを考慮し、アルブミン濃度の検出には、受容体としてCu(II)が選択される。
【0092】
ここでは、CuCl2を受容体として用いた血液サンプル中のアルブミンバイオ検体の測定について説明してきたが、他の適切な受容体、例えば、ヘミン、MB-ヘミン、MB-CuCl2もまたアルブミン濃度を判定するために使用することができる。
【0093】
本発明の更なる態様では、本発明のバイオセンサを用いてグリコアルブミン濃度を測定する。このように使用されるバイオセンサは、
図6aに示す電極構成を効果的に備えている。2組の電極のそれぞれをCuCl
2で処理し、そのうちの1組の電極にボロン酸又はその誘導体で処理した薄膜が設けられる。
【0094】
ボロン酸及びボロン酸誘導体は、グルコースなどの炭水化物や、糖化ヘモグロビン、グリコアルブミンなどの糖化タンパク質に対し親和性を持つ。本発明では、ボロン酸アフィニティー法の原理(又はボロネート親和性の原理)を利用して、全アルブミン成分からグリコアルブミン成分を分離する。
【0095】
図21の工程段階に示されるように、両組の電極に少量の血液又は血漿を塗布する。両組の電極に酸化還元電位印加し、対応する酸化還元電流をこれらの電極から測定する。両電極において測定された酸化還元電流の差を計算することにより、グリコアルブミン濃度が得られる。
【0096】
本発明の別の態様におけるヒト血漿中のメトヘムアルブミン濃度を判断するステップを説明する。メトヘムアルブミンは、ヘミンとアルブミンの複合体であり、鉄が(Fe+3)の形態で存在する。メトヘムアルブミン複合体は、本文献に記載の方法でHSAとウシのヘミンを用いて調製される。使用される受容体はMBである。
【0097】
測定された酸化還元電流が、記憶された酸化還元電流値との照合で一致すると、これに対応した尿中アルブミン濃度がバイオセンサに取り込まれ表示される。あるいは、線形フィット方程式を使って、酸化還元電流値からバイオ検体濃度を計算することもできる。尿サンプル中のアルブミン濃度レベルを抽出した後、バイオセンサはその値を表示する。
【0098】
次に、本発明の主題を以下の実施例を使って説明する。これらの実施例は説明目的のものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0099】
ヘミンを受容体として用いた場合の尿中アルブミン濃度とその対応する還元電流の測定
14.1gのNaCl、2.8gのKCl、17.3gの尿素、19mlのアンモニア水(25%)、0.60gのCaCl2及び0.43gのMgSO4を0.02モル/LのHClに溶解して合成尿を調製する。HCl及びアンモニア水を使って、合成尿の最終pHを6.04に調節する。蒸留水中に水酸化ナトリウムが0.1~1Nの溶液20mlに、1~6mgのヘミンを溶解させる。溶液を蒸留水でさらに希釈する。ヘミン溶液の最終容積は40mlであり、pHは11.5である。容積20μLのヘミン溶液を受容体として用いて、尿中アルブミンを検出する。3mgのヒトアルブミンを10mlの合成尿溶液に溶解し、微量アルブミン溶液を調製する。この原液を適切に希釈することにより、様々な濃度の微量アルブミン溶液を調製する。濃度の異なる微量アルブミン溶液を一定量の受容体(例えば20μL)と予混合し、試験用に最終容量300μLとする。
【0100】
所望量の生体試料(尿)を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図22aに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.1V/秒、0Vから-1.4Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用した値から得られる。
【0101】
尿サンプルに含まれるアルブミンがヘミンに結合し、
図22a及び
図22bに示すように還元ピーク電流が尿中アルブミン濃度に対し直線的に減少する。尿サンプル中のアルブミン濃度が増加すると、アルブミンはますますヘミンと結合し、これにより電極上の遊離ヘミン濃度が減少し、その結果、遊離ヘミンの還元ピーク電流が減少する。
【0102】
尿中アルブミン濃度値(mg/L)をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表1に示すような表にまとめる。表1は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=-1.96x+209
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表1】
【実施例2】
【0103】
ヘミン受容体を使った尿中アルブミンの測定
試料容積300μLの合成尿を1~5μgのヘミン受容体を有する電極に載せ、電位窓を0V~-1.4Vに指定してCH Instruments社のelectrochemical workstationを使ったサイクリックボルタモグラムから、還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流の値は200μAである。この電流値を表1に当てはめると、対応する尿中アルブミン濃度5mg/Lが得られる。
【実施例3】
【0104】
銅を受容体として用いた場合の尿中アルブミン濃度値及びその対応する還元電流値の測定
14.1gのNaCl、2.8gのKCl、17.3gの尿素、19mlのアンモニア水(25%)、0.60gのCaCl2及び0.43gのMgSO4を0.02モル/LのHClに溶解して合成尿を調製する。HCl及びアンモニア水を使って、合成尿の最終pHを6.04に調節する。5~25mgのCuCl2を50mlの人工尿溶液に溶解する。容積20μLのこの溶液を受容体として用いて、尿中アルブミンを検出する。2mgのヒトアルブミンを10mlの合成尿溶液に溶解し、微量アルブミン溶液を調製する。この微量アルブミン溶液を20μLの微量の受容体と既知濃度で予混合し、最終容量220μLとする。
【0105】
所望量の生体試料(尿)を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図23aに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.15V/秒、0.6Vから-0.4Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用することで得られる。
【0106】
尿サンプルに含まれるアルブミンがCu(II)に結合し、
図23a及び
図23bに示すように酸化還元ピーク電流が尿中アルブミン濃度に対し直線的に減少する。尿サンプル中のアルブミン濃度が増加すると、アルブミンはますますCu(II)と結合し、これにより電極上の遊離Cu(II)濃度が減少し、その結果、遊離Cu(II)の還元ピーク電流が減少する。
【0107】
尿中アルブミン濃度値(mg/L)をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表2に示すような表にまとめる。表2は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=-0.0103x+4.363
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表2】
【実施例4】
【0108】
銅をベースとした合成尿中の尿中アルブミンの直接検出
試料容積220μLの合成尿を2~6μgのCuCl2受容体を有する電極に載せ、電位窓を0.6V~-0.4Vに指定してCH Instruments社のelectrochemical workstationを使ったサイクリックボルタモグラムから、酸化還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流の値は4.17μAである。この電流値を表2に当てはめると、対応する尿中アルブミン濃度18.2mg/Lが得られる。
【実施例5】
【0109】
MB-ヘミンを受容体として用いた場合の尿中アルブミン濃度値及びその対応する還元電流値の測定
14.1gのNaCl、2.8gのKCl、17.3gの尿素、19mlのアンモニア水(25%)、0.60gのCaCl2及び0.43gのMgSO4を0.02モル/LのHClに溶解して合成尿を調製する。HCl及びアンモニア水を使って、合成尿の最終pHを6.04に調節する。MBを脱イオン水に溶解させる。10~45mgのMBを10mlの脱イオン水に溶解させる。1~10mgのヘミンを40mlの合成尿に溶解させる。容積9μL(ヘミン5μL+MB4μL)のこの溶液を受容体として用いて、尿中アルブミンを検出する。3mgのヒトアルブミンを10mlの合成尿溶液に溶解し、微量アルブミン溶液を調製する。この微量アルブミン溶液を9μLの微量の受容体と既知濃度で予混合し、最終容量300μLとする。
【0110】
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【0111】
所望量の生体試料(尿)を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図24aに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.1V/秒、0Vから-1Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用することにより得られる。
【0112】
前述したように、LMBがヘミンに電子供与するために起る接触電流により、ヘミンをベースとした尿中アルブミンの直接検出と比較し、より低いヘミン濃度でもより高いピーク電流が得られる。尿サンプルに含まれるアルブミンがヘミンに結合し、
図24a及び
図24bに示すように酸化還元ピーク電流が尿中アルブミン濃度に対し直線的に減少する。尿サンプル中のアルブミン濃度が増加すると、アルブミンはますますヘミンと結合し、これにより電極上の遊離ヘミン濃度が減少し、その結果、遊離ヘミンの酸化還元ピーク電流が減少する。
【0113】
尿中アルブミン濃度値(mg/L)をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表3に示すような表にまとめる。表3は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=-1.288x+189
【0114】
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表3】
【実施例6】
【0115】
MB-ヘミンをベースとした合成尿中の尿中アルブミンの直接検出
試料容積300μLの合成尿を、MBが5~15μgとヘミンが0.1~1μgであるMB-ヘミン受容体を有する電極に載せ、電位窓を0.6V~-0.4Vに指定してCH Instruments社のelectrochemical workstationを使ったサイクリックボルタモグラムから、酸化還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流の値は187.9μAである。この電流値を表3に当てはめると、対応する尿中アルブミン濃度5mg/Lが得られる。
【実施例7】
【0116】
MB-CuCl
2
を受容体として用いた場合の尿中アルブミン濃度値及びその対応する還元電流値の測定
14.1gのNaCl、2.8gのKCl、17.3gの尿素、19mlのアンモニア水(25%)、0.60gのCaCl2及び0.43gのMgSO4を0.02モル/LのHClに溶解して合成尿を調製する。HCl及びアンモニア水を使って、合成尿の最終pHを6.04に調節する。1~10mgのMBを10mlの合成尿に、5~35mgのCuCl2を30mlの合成尿に溶解させ(例えば、CuCl240μL+MB30μL)、尿中アルブミンを検出する。2mgのヒトアルブミンを10mlの合成尿溶液に溶解し、微量アルブミン溶液を調製する。この微量アルブミン溶液を70μLの少量の受容体と既知濃度で予混合し、最終容量220μLとする。
【0117】
所望量の生体試料(尿)を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図25aに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.1V/秒、0Vから-0.5Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用することにより得られる。
【0118】
尿サンプルに含まれるアルブミンがCu(II)に結合し、アルブミン-銅複合体を形成する。この複合体がメチレンブルーの還元ピーク電流を増加させ、
図25a及び
図25bに示すように還元ピーク電流が尿中アルブミン濃度に対し直線的に増加する。尿サンプル中のアルブミン濃度が増加すると、アルブミンはますますCu(II)と結合してアルブミン-銅複合体を形成し、これにより電極上で更に多くのメチレンブルーが酸化され、メチレンブルーの還元ピーク電流が増加する。
【0119】
尿中アルブミン濃度値(mg/L)をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表4に示すような表にまとめる。表4は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=0.1098x+0.6903
【0120】
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表4】
【実施例8】
【0121】
MB-CuCl
2
をベースとした合成尿中の尿中アルブミンの直接検出
試料容積220μLの合成尿を、MBが10~50μgとCuCl2が5~55μgであるMB-CuCl2受容体を有する電極に載せ、電位窓を0V~-0.5Vに指定してCH Instruments社のelectrochemical workstationを使ったサイクリックボルタモグラムから、酸化還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流の値は30.8μAである。この電流値を表4に当てはめると、対応する尿中アルブミン濃度9.09mg/Lが得られる。
【実施例9】
【0122】
CuCl
2
を受容体として用いた場合の血漿サンプル中のヒト血清アルブミン濃度値及びその対応する還元電流値の測定
アルブミン濃度が34.02g /Lのヒト血漿を原液として採取する。血漿を希釈して、アルブミン濃度を5g/lから32.09g/lにする。CuCl2受容体のストック溶液を70~150g/L濃度で塩水を使って調製し、20μLの少量を希釈血漿溶液と予混合し、総量300μLを電極表面に載せて、還元ピーク電流値を測定する。
【0123】
所望量のヒト血漿を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図26aに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.3V/秒、1Vから-0.6Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用することにより得られる。
【0124】
ヒト血漿サンプルに含まれるアルブミンがCu(II)に結合し、
図26a及び
図26bに示すように酸化還元ピーク電流が尿中アルブミン濃度に対し直線的に減少する。血漿サンプル中のアルブミン濃度が増加すると、アルブミンはますますCu(II)と結合し、これにより電極上の遊離Cu(II)濃度が減少し、その結果、遊離Cu(II)の還元ピーク電流が減少する。
【0125】
ヒト血漿中のアルブミン濃度値(g/L)をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表5に示すような表にまとめる。表5は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=-19.28x+716.8
【0126】
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表5】
【実施例10】
【0127】
CuCl
2
をベースとしたヒト血漿中のアルブミンの直接検出
試料容積300μLの合成尿を、CuCl2が1~10μgであるCuCl2受容体を有する電極に載せ、電位窓を1V~-0.6Vに指定したCH Instruments社のelectrochemical workstationを使ったサイクリックボルタモグラムから、酸化還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流の値は676.8μAである。この電流値を表5に当てはめると、対応する尿中アルブミン濃度5g/Lが得られる。
【実施例11】
【0128】
メチレンブルーを受容体として用いた場合の生体試料中のメトヘムアルブミン値及び対応する還元電流値の測定
ヘミン(Sigma Aldrich社)をアルカリ溶液に公知の方法で溶解してメトヘムアルブミンを調製する。この溶液を5mlの2%ヒトアルブミンと混合し、1NのHClでpHを7.4に調節する。 1~7mgのMBをpH7で10mlのPBSに溶解する。濃度の異なるメトヘムアルブミン溶液をMB溶液に添加し、還元ピーク電流値を得る。還元ピーク電流値は、走査速度0.1V/秒、-0.2Vから-0.5Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用したものである。メトヘムアルブミン量をその対応する還元電流値(μA)と共に記録し、表6に示すような表にまとめる。表6は、以下に示す線形フィット方程式から作成することができる。
y=1.006x+41.19
【0129】
上記の式において、「y」は酸化還元電流値を表し、「x」は検体濃度を表す。
【表6】
【0130】
所望量(μL)のMB受容体をバイオセンサ装置の電極表面に載せ、乾燥させる。
【0131】
所望量の生体試料(標準溶液中のメトヘムアルブミン複合体)を取り、バイオセンサ装置の電極に載せる。
図27a及び
図27bに示されるように、これに対応するサイクリックボルタモグラムが、走査速度0.1V/秒、-0.2Vから-0.5Vまでの様々な電位窓でCH Instruments社のelectrochemical workstationを使用することにより得られる。
【0132】
還元形態のMB(LMB)がメトヘムアルブミン複合体に電子供与するため、
図27a及び
図27bに示すように還元ピーク電流がメトヘムアルブミン複合体に対し直線的に増加する。
【0133】
本発明では、生体試料中のバイオ検体、すなわち、尿中アルブミン、HSA、メトヘムアルブミン及びGAを定量測定するために、非酵素的な非抗体ベースの受容体が電極と併用される。
【0134】
本発明は、ヒトアルブミンに電気化学的に活性の物質を添加し、ヒトアルブミンに関連するバイオ検体を電気化学的に検出する方法を採用している。
【0135】
本発明のバイオ検体の定量測定は、少量の試料を用いて行う最小侵襲技術である。
【0136】
また、以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された本発明の一般的及び特定の特徴の全てと、言語上その中間にあると考えられるであろう本発明の特許請求の範囲の記述の全てを対象とすることを意図していることも理解される。
【符号の説明】
【0137】
100 電気化学的に活性かつアルブミン結合性の装置
101 基板
102a、102b、102c、102d、102e、102f 導電路
103a、103b、103c、103d、103e、103f 電極
104 薄膜
105 アルブミン結合性かつ電気化学的に活性の受容体
106 パッシベーション層
107 第2の薄膜
108 化学物質層
200 装置ホルダ
201 ハウジング
202 USBプラグ
203 装置挿入口
204 生体試料
300 ポイントオブケア用バイオセンサ
301 ハウジング
302 マイクロUSB
303 マイクロSDカード
304 表示部材
305 装置挿入口
306 データベース部材
307 デジタル制御部(マイクロコントローラ)
308 電源装置
309 信号調整・装置検出装置
310 湿度センサ
311 温度センサ