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特許7068823アルデヒドをカルボン酸エステルにする酸化的エステル化用の金を基礎とする触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】アルデヒドをカルボン酸エステルにする酸化的エステル化用の金を基礎とする触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/68 20060101AFI20220510BHJP
   B01J 21/10 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220510BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220510BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20220510BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20220510BHJP
   C07C 67/44 20060101ALI20220510BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20220510BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
B01J23/68 Z
B01J21/10 Z
B01J23/52 Z
B01J23/66 Z
B01J32/00
B01J35/08 Z
B01J37/04 102
B01J37/08
C07C51/235
C07C57/055 B
C07C67/44
C07C69/653
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017537452
(86)(22)【出願日】2015-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2015081338
(87)【国際公開番号】W WO2016113106
(87)【国際公開日】2016-07-21
【審査請求日】2018-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】15151466.8
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リギン
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス グレンピング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス テペリス
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】関根 崇
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-296429号公報
【文献】特開平9-52044号公報
【文献】特開2000-154164号公報
【文献】特開2002-361086号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドをカルボン酸エステルへと酸化的にエステル化するための、粒子の形の加水分解耐性触媒において、前記触媒は、a)金0.01~10mol%、b)ケイ素40~94mol%、c)アルミニウム3~40mol%、およびd)Mg、またはMgとLa、Ce、Y、Zr、Mn、Pbおよび/もしくはBiとの組み合わせ2~40mol%を含み、前記成分b)~d)は酸化物として存在しており、かつ前記成分a)~d)の量の記述は、酸素を除いた触媒の組成100mol%を基準とするものであり、
前記触媒は、1つのコアと少なくとも1つのシェルとからなるシェル構造を示し、前記成分a)の全体量の少なくとも80%は、最も外側のシェルの成分であり、
かつ、前記触媒は、8.57~11のPZC値を示すことを特徴とする、アルデヒドをカルボン酸エステルへと酸化的にエステル化するための、粒子の形の加水分解耐性触媒。
【請求項2】
前記触媒は、酸素を除いて、前記成分a)~d)からなることを特徴とする、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒は、前記成分a)0.05~2mol%を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の触媒。
【請求項4】
前記成分a)は、2~10nmの平均直径を示す粒子の形で存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒の粒子は、10~200μmの平均直径を示し、かつ球状の形を示すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒は、前記成分d)として、Mg、Ce、La、Y、Zr、Mn、Pbおよび/またはBi 2~30mol%を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒の製造方法において、b)ケイ素40~94mol%、c)アルミニウム3~40mol%、およびd)Mg、またはMgとLa、Ce、Y、Zr、Mn、Pbおよび/もしくはBiとの組み合わせ2~40mol%からなり、前記成分b)~d)が酸化物として存在し、8~12のPZC値を示し、かつ10~200μmの平均直径を示す塩基性混合酸化物担体に、0.5~5.0のpH値を示す、成分a)を形成するための金含有溶液を添加し、ここで、前記成分a)~d)の量の記述は、酸素を除いた触媒の組成100mol%を基準とすることを特徴とする、触媒の製造方法。
【請求項8】
(メタ)アクロレインを酸素および一価アルコールと反応させてアルキル(メタ)アクリラートにする際の、請求項1から6までのいずれか1項記載の触媒の使用。
【請求項9】
メタクロレインを、酸素およびメタノールと反応させてMMAにすることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
(メタ)アクロレインを酸素および二価、三価または四価アルコールと反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートまたはジ(メタ)アクリラート、トリ(メタ)アクリラートもしくはテトラ(メタ)アクリラートにする際の、請求項1から6までのいずれか1項記載の触媒の使用。
【請求項11】
酸化的エステル化を連続的に実施することを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記触媒が、前記酸化的エステル化の間に、攪拌される反応器中で懸濁液の形で存在することを特徴とする、請求項11記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば(メタ)アクロレインをメチル(メタ)アクリラートへと反応させることができる、酸化的エステル化用の新規触媒に関する。本発明による触媒は、このような反応で、特に極めて長い期間にわたっても機械的および化学的に高い安定性により優れている。このことは特に、僅かであっても水を含有する媒体中で連続運転する場合に、比較的早期に活性および/または選択性を失う、先行技術による触媒と比べた改善点である。
【0002】
先行技術
カルボン酸エステルを製造するためのアルデヒドの接触酸化的エステル化は、先行技術において広範囲に記載されている。このような反応により、たとえばメタクロレイン(MAL)およびメタノールから極めて効果的にメチルメタクリラートを製造することができる。ことに、US 5,969,178およびUS 7,012,039には、イソブテンまたはtert-ブタノールからMMAを連続的に製造する方法が記載されている。この方法は、次の工程を含むものである:
1) イソブテンまたはtert-ブタノールからメタクロレインへの酸化、および
2) 酸化物系担体上に存在するPd-Pb触媒による、メタノールを用いた、MALからのMMAへの直接的な酸化的エステル化。
【0003】
しかしながら、先行技術から公知の触媒は全て、比較的長い耐用時間で、ことに水性媒体に対して敏感である。たとえば、EP 1393800では確かに良好な活性および選択性が記載されているが、同時に、触媒の寿命に関する情報は存在しない。ここでは、金含有触媒、ことに担体上で6nm未満の平均直径を示す金ナノ粒子が挙げられている。MMAに対する選択率は、Au4.5質量%の含有率の場合に93%までとされており、かつ空時収率は、50.7mol MMA/kg触媒・hまでとされている。触媒を製造の際の金含有溶液のpH値は、5~10、好ましくは6~9の範囲にある。
【0004】
US 6,040,472には別の触媒が記載されているが、この触媒は比較において不十分な活性およびMMAに対する選択率を生じるにすぎない。ここには、シェル構造を有するPd-Pb含有触媒が挙げられている。MMAに対する選択率は、91%までとされており、かつ空時収率は5.3molまでとされている。
【0005】
EP 2177267およびEP 2210664には、シェル構造を有するニッケル含有触媒が記載されている。MMAに対する選択率は、この触媒の場合に97%までである。空時収率は、触媒中で約1質量%の金含有率で、9.7mol MMA/kg触媒・hと記載されている。
【0006】
US 2013/0172599は、また、Si、Alおよび塩基性の第3の成分、ならびに高められた耐酸性を示す金属からなるケイ素含有材料を記載している。ここではNi、Co、ZnまたはFeが挙げられている。この材料は、貴金属含有触媒用の担体として使用することができる。メタクロレインをMMAにする酸化的エステル化用の好ましい触媒の態様は、SiO2-Al23-MgO上に担持されたAu/NiO触媒を含んでいる。
【0007】
しかしながら、比較例2から、この触媒が時間と共に活性を失うことが明らかとなる。これはおそらく、反応混合物中に存在する水の不利な影響に起因するものと思われる。
【0008】
課題
本発明の課題は、第1に、アルデヒドをカルボン酸エステルにする高選択性の酸化的エステル化用の新規触媒の製造を提供することであった。このような触媒は、ことに水を含有する、およびカルボン酸を含有する混合物中で、機械的および化学的に高い安定性を示すべきであり、かつ先行技術と比べて長期にわたる活性(生産性)および選択性の維持を提供すべきである。
【0009】
前記課題はとりわけ、この触媒が、メタクロレインをアルキルメタクリラート、特にMMAにする酸化的エステル化のために適しているべきであることにある。
【0010】
その他の課題は、具体的には挙げられていないが、明細書、実施例、特許請求の範囲または本発明の全体の文脈から導き出すことができる。
【0011】
解決策
上記の課題は、新規の加水分解耐性触媒により解決された。この本発明による触媒は、粒子の形状で存在し、かつアルデヒドをカルボン酸エステルにする酸化的エステル化において長期間にわたって使用することができる。本発明による触媒は、次の成分を含むことを特徴とする:
a)金0.01~10mol%、好ましくは0.05~2mol%、
b)ケイ素40~94mol%、
c)アルミニウム3~40mol%、および
d)アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Ti、Zr、Cu、Mn、Pb、SnまたはBiから選択される少なくとも1種の他の元素2~40mol%、好ましくは2~30mol%、ただし前記成分b)~d)は酸化物として存在する。成分a)~d)についての前記の量の記述は、酸素を除いた触媒の組成100mol%を基準とする。このような、酸化物の形で存在する酸素を考慮しない組成の記載が実用的である、というのも、これらの元素のいくつかは、明らかに異なる酸化数を示すことができ、またはたとえば混合酸化物も存在することができるためである。好ましくは、この触媒は、酸素を除いて、成分a)~d)からなる。
【0012】
さらに、前記触媒は、1つのコアと、少なくとも1つのシェルとからなる、好ましくは1つのコアと、1つ、または2つのシェルからなるシェル構造を有する。この場合、成分a)は、成分a)の全質量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは全てが、1つのシェルの成分である。
【0013】
好ましい態様の場合に、触媒は、コアおよびコア上に直接載っている金含有シェルの他に、別の薄い外側のシェルを備えており、この別の薄い外側のシェルは、ことに1種以上の成分b)~d)からなり、かつ最大でも少量の成分a)を含む。このシェルは、高い機械的負荷下での成分a)の摩耗を低減することにより、耐用時間を更に延長するために役立つ。
【0014】
この場合、シェル構造とは、程度に差はあるものの、コア自体が均質な構造を示し、シェル、つまりコアを取り囲む領域が、コアとは区別できる構造を有していることを意味する。「程度に差はあるものの、均質な」とは、この場合、コアまたは1つのシェル内で、たとえば酸化物系のナノクリスタルの形で十分に局所的な差異が存在してもよいが、全体のコアもしくは全体のシェルにわたり、このようなナノ相は一様に分配されていることを意味する。これについて、例として、触媒活性シェル内での金が挙げられ、この金は、ナノ粒子の形でこのシェルにわたって一様に分配されている。
【0015】
ことに、シェル構造によって、全体の触媒成形体において、金原子の大部分が表面近傍に、つまり外側から見て粒子半径の50%未満を構成する領域内に存在し、かつそれにより全体の触媒成形体にわたり一様でなく分配されるような活性成分(Au)の分布が考えられる。
【0016】
コアとシェルとの間、もしくは2つのシェルの間の界面は、鮮明である必要はなく、変化する組成を伴う勾配の形で存在してもよいことも指摘される。たとえば、金ナノ粒子の濃度は、コアから始まり内側から外側に見て増大することができる。このことは、本発明の粒子が、一般に、比較的高い多孔率を示すという事実から単に生じるだけである。本発明によれば、1層より多くのシェルを備え、金粒子が外側のシェルに集中していて、かつ金粒子分布の勾配が存在するような、余り好ましくはない実施形態では、全体の粒子半径の内側の少なくとも50%内に金粒子は20%未満存在するか、好ましくは10%未満で存在するか、特に好ましくは存在せず、この場合、この全体の粒子半径は、コアの他に内側の、金貧有または金不含のシェルを含むことができる。
【0017】
本発明による触媒の他の重要な特徴は、本発明による触媒が、7~11のゼロ電荷点(または「Point of Zero Charge」、以後、PZC値という)を示すことである。PZC値の正確な定義および決定方法は、たとえばPowder technology, 103, 1999, 30-36にある。ここで、PZC値は、液体媒体中に存在する固体の酸化物系表面の最も重要な特性の一つであると解釈される。PZC値は、酸化物系表面での負電荷と正電荷との合計が釣り合っている場合の液体、ことに水性媒体のpH値と類似するものと見なすことができる。たとえば、取り囲んでいる液体のpH値がPZC値よりも大きい場合には、酸化物系表面の電荷は負であり、かつ取り囲んでいる液体媒体のpH値よりもPZC値が大きい場合には、その逆で表面電荷は正である。ことに20μm未満の直径を示す粒子についてのPZC値の適切な決定方法は、ゼータ電位の決定および電気泳動移動度である。この決定は、これとは別に、かつ明らかにより簡単で、かつ粒子サイズとは無関係に、一般に、酸化物系粒子が濃縮されて懸濁されている、取り囲んでいる水性の媒体のpH値の簡単な決定によっても行うことができる。このようにして、異なる粒子を互いに良好に比較することができる、近似された、本発明の実施のための十分なPZC値が得られる。
【0018】
本発明により、意外にも、ことに成分a)としての金、成分b)としてのケイ素の酸化物、および成分c)としてのアルミニウムの酸化物、ならびに成分d)としての、次の元素、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Cu、Mn、Pb、Sn、Biまたは原子番号57~71を示すランタノイドから好ましくは選択される1種以上の酸化物の所定の組合せが、上記の課題を解決することが明らかとなった。この場合、意外にも、とりわけ酸化的エステル化用に使用された触媒の活性および選択性を、これらが顕著に低下することなく、長期間にわたり維持することができる。成分d)は、Mg、Ce、La、Y、Zr、Mn、Pb、Biおよび/またはこれらの元素の混合物であることが特に好ましい。
【0019】
この場合、ことに意外にも、触媒の酸性度/塩基性度は、最良の触媒性能を達成するために重要な役割を演じることが見出された。触媒が酸性に傾きすぎる場合、アルデヒドおよびアルコールの反応混合物、つまり酸化的エステル化の原料中に、副生成物としてのアセタールが多量に形成され、それにより選択率が明らかに低下する。それに対して触媒が塩基性に傾きすぎる場合、アルコールと、二重結合、たとえばメタクロレイン(MAL)中に存在する二重結合とのマイケル付加物が反応混合物中に形成され、それにより同様に選択率が明らかに低下する。この触媒は、本発明の場合にいくらか塩基性の表面を必要とする。触媒表面の酸性度/塩基性度の尺度として、そのPZC値を採用することができる。
【0020】
好ましくは、触媒粒子は、10~200μm、特に好ましくは20~120μmの平均直径を示し、かつこの場合に球状の形を示す。同時にまたはこれとは無関係に、成分a)は、好ましくは2~10nmの平均直径を示す粒子の形で存在する。
【0021】
酸化的エステル化用の記載された触媒の他に、ことに、酸化的エステル化用の触媒の製造方法も、本発明の構成要素である。この触媒粒子の製造方法は、b)ケイ素40~94mol%、c)アルミニウム3~40mol%、およびd)アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Ti、Zr、Cu、Mn、Pb、SnまたはBiから選択される少なくとも1種の他の元素2~40mol%からなり、成分b)~d)は酸化物として存在し、8~12のPZC値を示し、かつ10~200μmの平均直径を示す塩基性混合酸化物担体に、0.5~5.0のpH値を示す、成分a)を形成する金含有溶液を添加し、ここで、成分a)~d)の量の記述は、酸素を除いた触媒の組成100mol%を基礎とすることを特徴とする。金含有溶液は、ことにテトラクロリド金酸の水溶液であってよい。この溶液は、任意で、b)、c)および/またはd)の他の元素の可溶性の塩を含んでいてもよい。
【0022】
この金含有活性成分を、成分b)、c)およびd)からなる担体に施与する方法は、本発明の場合に重要である。この場合、適用される担体の塩基性度も、金含有溶液の酸性度も、重要な役割を演じる。この2つの要素の組合せが、高い活性、選択率、加水分解耐性および長い耐用時間を示す、シェル構造を有する触媒を合成することを可能にする。
【0023】
金含有溶液の酸性度は、とりわけ、溶液中での様々な種類の金(III)錯体イオンの形成に大きな影響を及ぼし(これについて、たとえばGeochimica et Cosmochimica Acta Vol. 55, pp. 671-676を参照)、かつ最終的に担体の表面との結合の性質に大きな影響を及ぼす。多くの文献において、金含有溶液のpH範囲は、ほぼ7が優先されている(たとえばEP 1393800参照)。本発明の場合には、意外にも、0.5~5.0のpH範囲が、この方法で製造された触媒の触媒性能にとって最良の条件であることが明らかになったことが見出された。
【0024】
この方法の特別な態様の場合に、金含有溶液は、金化合物の他に少なくとも1種の付加的化合物を含む。この化合物は、成分b)、c)および/またはd)をイオンの形で含む。この態様により、金ナノ粒子に対して付加的な保護層が生じることができ、この保護層は、触媒のより長い耐用時間のためにさらに有益である。この場合に、イオンの形の成分b)は、ケイ酸塩、たとえばケイ酸ナトリウムまたはケイ酸アンモニウムが、溶液中に含まれていることを意味し、これらは後に任意の、熱による焼結または焼成の際に酸化ケイ素に変換される。イオンの形の成分c)またはd)は、相応する水溶性の塩、たとえば硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどを意味する。
【0025】
記載された粒子の製造、たとえば濾過による単離、および更なる清浄化の後に、この粒子は最後に特に好ましくは焼成される。これは、たとえば300~600℃の温度で行うことができる。
【0026】
記載された触媒および記載されたその製造方法の他に、(メタ)アクロレインを酸素および一価アルコールと反応させてアルキル(メタ)アクリラートにする際の、このような本発明による触媒、または本発明により製造された触媒の使用も、本発明の構成要素である。(メタ)アクロレイン内の括弧は、この場合、この原料が、アクロレインであることも、メタクロレインであることもできることを意味する。相応して、アルキル(メタ)アクリラートは、アルキルアクリラートも、アルキルメタクリラートも意味する。この場合、このアルキル基は、使用されたアルコールによって決定される。
【0027】
この使用の際に、好ましくは、メタクロレインを、本発明による触媒の存在下で、酸素およびメタノールと反応させてMMAにする。
【0028】
これとは別に、このような使用の際に、(メタ)アクロレインを、酸素および二価、三価または四価アルコールと反応させてヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートとジ(メタ)アクリラート、トリ(メタ)アクリラートまたはテトラ(メタ)アクリラートにすることもできる。後者の化合物は、架橋剤として公知である。二価アルコールについての特に好ましい例は、エチレングリコールである。
【0029】
特に好ましくは、酸化的エステル化は、本発明による触媒の存在下で連続的に実施される。さらに特に好ましくは、この触媒は、酸化的エステル化の間に、攪拌された反応器中で懸濁液の形で(スラリーとして)用いられる。
【0030】
実施例
PZC測定
粉末材料(3.0g)を脱塩水中のNaCl 0.1質量%溶液7.5mLに懸濁させ、磁気攪拌機で攪拌する(100rpm)。この懸濁液のpH値は、室温で15分攪拌した後にpHセンサで測定する。この値を、以後、PZCという。
【0031】
予備成形された担体の製造
実施例1
250mLのガラスビーカー中に、Mg(NO32・6H2O 21.35gおよびAl(NO33・9H2O 31.21gを装入し、脱塩水41.85g中に、磁気攪拌機で攪拌しながら溶解させる。その後、60質量%のHNO3 1.57gを攪拌しながら添加する。シリカゾル(Bad Koestriz社のKoestrosol 1530AS)166.67gを、500mLの三口フラスコ中に秤取し、攪拌しながら15℃に冷却する。60質量%のHNO3 2.57gを、さらに攪拌しながらゆっくりとゾルに添加する。15℃で攪拌しながら、硝酸塩溶液を45分でゾルに添加する。添加後に、混合物を30分以内で50℃に加熱し、この温度でさらに24時間攪拌する。この時間の後に、混合物を乾燥庫内で130℃で、予熱されたシャーレ上で薄層の形に乾燥させ、引き続き乳鉢で磨砕して微細な粉末にする。乾燥した粉末を、薄層の形で、Naber炉中で2時間にわたり300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間にわたり600℃に加熱し、さらに600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、9.81であった。
【0032】
実施例2
250mLのガラスビーカー中に、Mg(NO32・6H2O 32.03gおよびAl(NO33・9H2O 31.21gを一緒に装入し、脱塩水41.85g中に、磁気攪拌機で攪拌しながら溶解させる。その後、60質量%のHNO3 1.57gを攪拌しながら添加する。シリカゾル(Bad Koestritz社のKoestrosol 1530AS)166.67gを、500mLの三口フラスコ中に秤取し、攪拌しながら15℃に冷却する。60質量%のHNO3 2.57gを、攪拌しながらゆっくりとゾルに添加する。15℃で攪拌しながら、硝酸塩溶液を45分にわたりゾルに添加する。添加後に、混合物を30分以内に50℃に加熱し、この温度でさらに24時間攪拌する。この時間の後に、混合物を乾燥庫内で130℃で、予熱されたシャーレ上で薄層の形に乾燥し、引き続き乳鉢で粉砕して微細な粉末にする。乾燥した粉末を、薄層の形で、Naber炉中で2時間以内で300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、さらに2時間以内に600℃に加熱し、最終的に600℃でさらに3時間保持する。この材料のPZCは、9.36であった。
【0033】
実施例3
250mLのガラスビーカー中に、Mg(NO32・6H2O 10.68gおよびAl(NO33・9H2O 31.21gを一緒に装入し、脱塩水41.85g中に、磁気攪拌機で攪拌しながら溶解させる。その後、60質量%のHNO3 1.57gを攪拌しながら添加する。シリカゾル(Bad Koestritz社のKoestrosol 1530AS)166.67gを、500mLの三口フラスコ中に秤取し、攪拌しながら15℃に冷却する。60質量%のHNO3 2.57gを、攪拌しながらゆっくりとゾルに添加する。15℃で攪拌しながら、硝酸塩溶液を45分以内にゾルに添加する。添加後に、混合物を30分以内に50℃に加熱し、この温度でさらに24時間攪拌する。この時間の後に、混合物を乾燥庫内で130℃で、予熱されたシャーレ上で薄層の形に乾燥させ、引き続き乳鉢で粉砕して微細な粉末にする。乾燥した粉末を、薄層の形で、Naber炉中で2時間にわたり300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、さらに2時間以内に600℃に加熱し、最終的に600℃でさらに3時間保持する。この材料のPZCは、7.91であった。
【0034】
ドープされた担体の製造
実施例4~13、ならびに比較例1
比較例1(Sn)
SnCl2・2H2O(440mg、1.95mmol)を、蒸留したメタノール5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を、薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、さらに2時間以内に600℃に加熱し、最終的に600℃でさらに3時間保持する。この材料のPZCは、6.85であった。
【0035】
実施例4(Bi)
Bi(NO33・5H2O(947mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に、60質量%のHNO3 2.9gを添加しながら溶解させ、この溶液を、上記の実施例1からの予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ600℃でさらに3時間保持する。この材料のPZCは、9.21であった。
【0036】
実施例5(Mn)
Mn(NO32・4H2O(494mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間にわたり乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ600℃でさらに3時間保持する。この材料のPZCは、8.95であった。
【0037】
実施例6(Ce)
Ce(NO33・6H2O(848mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、9.56であった。
【0038】
実施例7(Zr)
ZrO(NO32・6H2O(663mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、8.90であった。
【0039】
実施例8(Pb)
Pb(NO32(647mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、9.35であった。
【0040】
実施例9(Al)
Al(NO33・9H2O(734mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、9.12であった。
【0041】
実施例10(Y)
Y(NO33・6H2O(750mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、9.34であった。
【0042】
実施例11(La)
La(NO33・6H2O(845mg、1.95mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、10.20であった。
【0043】
実施例12(Mg)
Mg(NO32・6H2O(2.0g、7.8mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥し、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、12.14であった。
【0044】
実施例13(Li)
LiOH(470mg、19.5mmol)を、脱塩水5g中に溶解させ、この溶液を、上記の実施例1で得られた、予備成形されたSiO2-Al23-MgO担体10gと混合し、集中的に振盪する。こうして得られた、乾燥したように見える担体を薄層の形で、乾燥庫内で105℃で10時間乾燥させ、次いで乳鉢で微細に粉砕し、かつ薄層の形でNaber炉中で2時間以内に300℃に加熱し、300℃で3時間保持し、2時間以内に600℃に加熱し、かつ最終的に600℃で3時間保持する。この材料のPZCは、12.31であった。
【0045】
触媒製造(ドープされた担体およびドープされていない担体上にAuを施す)
実施例14~27、ならびに比較例2~5
比較例2
比較例1で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.89であった。
【0046】
実施例14
実施例4で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.09であった。
【0047】
実施例15
実施例5で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.72であった。
【0048】
実施例16
実施例6で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.92であった。
【0049】
実施例17
実施例7で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥し、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.87であった。
【0050】
実施例18
実施例8で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.59であった。
【0051】
実施例19
実施例9で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.82であった。
【0052】
比較例3
実施例1で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=12.0、NaOH 20質量%の添加により調節)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温に冷却した。NaBH4 1.0gを、室温で添加し、反応混合物をさらに30分攪拌し、次いで濾過した。引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。材料を、105℃で10時間乾燥させた。この材料のPZCは、11.15であった。
【0053】
実施例20
実施例1で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl・3HO(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.49であった。
【0054】
実施例21
実施例2で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl・3HO(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.57であった。
【0055】
比較例4
実施例3で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl・3HO(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、6.99であった。
【0056】
実施例22
実施例1で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl・3HO(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=0.4、濃塩酸の添加により調節)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.29であった。
【0057】
実施例23
実施例1で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中の懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl・3HO(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=5.2、20質量%のNaOH溶液の添加により調節)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.63であった。
【0058】
実施例24
実施例10で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.80であった。
【0059】
比較例5
実施例1で得られた、ドープされていない担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)およびNi(NO32・6H2O(567mg、1.95mmol)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=2.3)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、8.64であった。
【0060】
実施例25
実施例11で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.69であった。
【0061】
実施例26
実施例12で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.29であった。
【0062】
実施例27
実施例13で得られた、ドープされた担体10gの、脱塩水33.3g中での懸濁液を90℃に加熱し、この温度で15分攪拌した。この懸濁液に、攪拌しながら、水8.3g中のHAuCl4・3H2O(205mg)の、予め90℃に予熱された溶液(pH=1.6)を添加した。添加の後に、この混合物をさらに30分攪拌し、次いで冷却し、室温で濾過し、引き続きそれぞれ水50mLで6回洗浄した。この材料を105℃で10時間乾燥させ、乳鉢で微細に粉砕し、1時間以内に18から450℃に加熱し、最終的に450℃で5時間焼成した。この材料のPZCは、9.14であった。
【0063】
MMA製造のためのバッチ法の場合の実施例
金含有触媒(384mg)、メタクロレイン(1.20g)およびメタノール(9.48g)を、140mLの鋼製オートクレーブ中で、磁気攪拌機を用いて、60℃で、かつN2中のO2 7体積%の大気中で30barの圧力で2時間攪拌した。2時間後に、この混合物を冷却し、脱気し、濾過し、かつガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。各触媒を、同じ条件下で少なくとも2回試験し、かつそれぞれの試験の結果を平均化した。試験したそれぞれの触媒について、得られたメタクロレイン転化率(U(MAL)、%)、空時収率(RZA、mol MMA/kg触媒・h)およびメタクロレインからMMAへの反応の選択率(S(MMA)、%)が、次の表1にまとめられている。
【0064】
表1(この製造によるバッチ試験における触媒性能):
【表1】
【0065】
これらの実施例および比較例によって、高すぎるPZC値(VB3)または低すぎるPZC値(VB4)を示す触媒は、本発明によるPZC値(実施例20および21)を示す同等の触媒と比べて低い活性を、低減された形の空時収率(RZA)の形で示すことを証明することができた。同様に、請求項に記載されたような一連の金属は、良好な活性および選択性を示すが、たとえば予想に反してスズ(VB2)はそれほど適しておらず、したがって本発明の場合に成分d)として使用することができないことを証明することができた。
【0066】
同様に、特に好ましくは、いわば本発明による方法によって製造されなかった本発明による触媒は、本発明により好ましい態様で製造された触媒と比べて劣った特性を示すことを証明することができた。たとえば、実施例26および27の場合、担体材料のPZC値は、本発明によれば高すぎる値である。これは、いずれの場合にも、確かに許容可能であるが、しかしながら結果として、理想的とはいえない触媒の選択性および活性を生じる。この関連性は、ことに実施例26と実施例20との比較から判明する。同じことが、金含有溶液のpH値にも該当する。たとえば、理想的な値を示す実施例20と比較して、低すぎるpH値(実施例22)または高すぎるpH値(実施例23)で製造された触媒は、同様に許容可能であるが、しかしながら改善の余地がある選択率(実施例22)または活性(実施例22および23)を生じる。
【0067】
VB5(比較例5)による文献から公知のNi含有触媒の、当初は極めて良好であった性能は、この触媒の長時間作用を観察すると、反対に相対化される(これについて、表2、VB5参照)。
【0068】
金触媒を用いた加水分解試験
実施例28~32、比較例6および7
触媒粉末4gを、攪拌しながら(500rpm)80℃で、10質量%の酢酸ナトリウム溶液200g(pH=7、酢酸の添加により調節)中に懸濁させた。必要に応じて酢酸を添加して、pH=7の一定の値に保持した。80℃で16時間攪拌した後、触媒を濾別し、脱塩水で洗浄し、乾燥庫中で10時間以内に105℃で乾燥させた。こうして得られた(乾燥した)触媒を、上記のようなMMA製造のためのバッチ試験において試験した。この試験の結果(それぞれ2回のバッチ試験からの平均値)は、次の表中にまとめられており、かつ表中では新たな触媒を用いたバッチ試験と比較されている。
【0069】
表2(加水分解試験によるバッチ試験における触媒性能):
【表2】
【0070】
この試験によれば、本発明による触媒の長時間作用は極めて良好であり、たとえばNiのような本発明によらない成分d)を含む先行技術による触媒(VB5)は、極めて著しい作用低下を示し、かつ連続的な製造条件下で早くに交換しなければならないことを証明することができた。
【0071】
同じことが、触媒製造時に、最適値でないpH値の金含有溶液を用いた比較例7による触媒についても該当する。この触媒も、水性媒体中で高い活性損失を被る。
【0072】
MMAを製造するための連続的試験(一般的記載)
400mlの全体容積を示す攪拌槽型反応器中に、粉末触媒20gを装入した。攪拌下でメタノール中NaOHの1質量%溶液を添加することにより、メタノール中のMALの42.5質量%の溶液のpH値をpH=7に調節した。この溶液を、一定の添加速度で連続的に、攪拌され、かつ通気される攪拌槽型反応器(空気を通気)中に、10barの圧力で80℃の内部温度で供給した。同時に、この反応器中に、反応器内の値がpH=7で一定に保たれる程度の量の1質量%のNaOH溶液(メタノール中)を供給した。フィルターを介してこの反応混合物を反応器から連続して取り出した。生成物試料を下記に示す時間後に取り出し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0073】
比較例8 Au/NiO触媒を用いたMMA製造のための連続試験
この実施例では、比較例5で得られた、NiO-Au触媒(欧州特許出願公開第2177267号明細書(EP2177267A1)および欧州特許出願公開第2210664号明細書(EP2210664A1)と同様に製造)20gを、上記と同様に連続的MMA製造において使用した。この結果は、表3にまとめられている。
【0074】
実施例33
この実施例では、実施例16で得られた、本発明によるCeO-Au触媒20gを、上記と同様にMMA製造において使用した。これらの結果は、表3にまとめられている。
【0075】
表3.選択した触媒を用いた連続的MMA製造
【表3】
【0076】
最終的には、連続的に実施された酸化的エステル化における比較により、先行技術に記載されているようなNi含有触媒と比べて、本発明による触媒の選択率は、1000時間の運転時間の後に一定の高い水準を保つが、先行技術の触媒は選択率を4.6%失うことを証明することができる。本発明による触媒の活性も、この期間内でそれほど明らかには低下していない。