(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】2液型非イソシアネートプライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 5/00 20060101AFI20220510BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20220510BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20220510BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220510BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220510BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20220510BHJP
【FI】
C09D5/00 D
C09D161/28
C09D167/00
C09D7/63
C09D7/20
C09D7/41
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000158
(22)【出願日】2018-01-04
【審査請求日】2021-01-04
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513018659
【氏名又は名称】コーティングス フォーリン アイピー カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Coatings Foreign IP Co., LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】デルソン トリンダーデ
(72)【発明者】
【氏名】シュ-ジャン リャン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー カウアー
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533150(JP,A)
【文献】米国特許第05407995(US,A)
【文献】米国特許第04233197(US,A)
【文献】特開平11-106680(JP,A)
【文献】特表2009-511251(JP,A)
【文献】特開2003-334490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00、
101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルおよびメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む第1部と、
非ブロック化酸触媒を含む第2部と、
を含む、2液型(2k)イソシアネート非含有プライマー組成物。
【請求項2】
前記第1部が、ポリエステルの第1の部分を含み、前記第2部が、ポリエステルの第2の部分を含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記第1部が、ポリエステルの第1の部分を含み、前記第2部が、ポリエステルの第2の部分を含み、前記第2部が、非ブロック化酸触媒および前記ポリエステルの第2の部分
を有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記第2部の非ブロック化酸触媒が、芳香族スルホン酸である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記第2部の非ブロック化酸触媒が、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記プライマー組成物が、
100~
110℃の温度で硬化性である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
前記第1部が、酸触媒を
含まない、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項8】
前記第1部が、炭化水素溶剤、アルコール溶剤、および少なくとも1種の顔料
をさらに含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項9】
前記第1部が、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、流動添加剤、および顔料を含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項10】
車体部品上にプライマーコーティングを塗装する方法であって、
ポリエステルおよびメラミンを含む第1部を、非ブロック化酸触媒を含む第2部と混合して、混合組成物を生成することと、
前記混合組成物を前記車体部品に適用することと、
前記車体部品上の前記混合組成物を、
120℃未満の温度で硬化させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月30日に出願された米国仮特許出願第62/440,570号の利益を主張するものである。
技術分野は、一般に、イソシアネートを実質的に含まず、低温度で硬化性である、基材をコーティングするための2液型プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート架橋剤および活性水素を含む官能基を有するバインダー成分をベースとした2液型または2成分型(2k)コーティング組成物は、その非常に優れた技術特性のため、工業コーティングおよび車両のコーティングに幅広く使用されている。このようなコーティング組成物は、水性および溶剤系の両方の形態で使用される。
【0003】
こうしたコーティング組成物は、大抵、時間指定された硬化作業中、高温で硬化される。典型的には、コーティング組成物を適用する部品は、硬化作業後にさらなる処理が施される。その処理は、硬化作業の直後に行われることもあるが、計画されたもしくは意図しない遅延の後に行われることもある。しかし、イソシアネートを含むコーティング組成物は、硬化作業が完了した後も架橋を継続することが判明している。したがって、硬化作業に後続するさらなる処理の間、架橋の具体的なレベルは部品ごとに異なり得る。たとえば、硬化作業の直後に処理された部品のコーティングは、硬化作業の翌日に処理された部品のコーティングより少ない架橋を示し得る。コーティングの架橋レベルの違いは、外観および挙動の不均一性を招き得る。
さらに、軽量車両に対する継続的な要望は、高性能スチール、アルミニウム、プラスチックおよび複合材料などの、新しい自動車部品の材料の増加と、極薄および/または軽量の自動車部品の使用の増加につながっている。大抵の場合、このような部品は、典型的に従来の自動車部品上の従来型コーティングを硬化させる際に使用される高温の焼付温度(high-bake temperature)に耐えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、時間にさほど左右されない改善された処理ウィンドウを示す、プライマー組成物などのコーティング組成物を提供することが要望される。また、従来型コーティングと比べて低温度、たとえば約120℃未満の温度で硬化されるプライマー組成物を提供することも要望されている。さらに、他に望まれている特徴や特性が、この背景と併せて、後述の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態において、2液型(2k)イソシアネート非含有プライマー組成物を提供する。プライマー組成物は、ポリエステルおよびメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む第1部を含む。プライマー組成物は、非ブロック化酸触媒を含む第2部をさらに含む。プライマー組成物は、イソシアネートを実質的に含まない。
別の実施形態では、2液型(2k)の低温で硬化性のプライマー組成物を提供するが、これは、架橋可能な成分の第1の部分および架橋成分を含む第1部を含む。プライマー組成物は、架橋可能な成分の第2の部分および非ブロック化酸触媒を含む第2部をさらに含む。組成物は、約120℃未満の温度で硬化性である。
別の実施形態は、車体部品にプライマーコーティングを塗装する方法を提供する。この方法は、ポリエステルおよびメラミン樹脂を含む第1部を、非ブロック化酸触媒を含む第2部と混合して、混合組成物を生成することを含む。また、該方法は、混合組成物を車体部品に適用することを含む。さらに、該方法は、約120℃未満の温度で車体部品上の混合組成物を硬化させることを含む。
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明中でさらに記載する簡略化した形態の選択された概念を述べるために提供するものである。この概要は、特許請求の範囲の主題の重要な特徴または基本的な特徴を明確にすることを意図したものではなく、また、特許請求の範囲の主題の範囲を決定するために利用することを意図したものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明は、単なる性質上の例示であり、本明細書に記載のプライマー組成物を限定することは意図しない。さらに、前述の背景または以下の詳細な説明で挙げるいずれの理論にも束縛されることを意図しない。
【0008】
基材をコーティングするためのプライマー組成物を、本明細書において提供する。プライマー組成物は、当技術分野において公知の任意のタイプの基材をコーティングするために利用することができる。実施形態において、基材は、車両、自動車、または自動車両である。「車両」または「自動車」または「自動車両」は、自動車、たとえば自家用車、バン、ミニバン、バス、SUV(sports utility vehicle:スポーツカー)、トラック、ミニトラック、トラクター、バイク、トレーラー、ATV(all terrain vehicle:オールテラインビークル)、ピックアップトラック、ブルドーザー、移動クレーン車およびアースムーバーなどのヘビーデューティームーバー、飛行機、ボート、船、ならびに他の交通手段を含む。
例示的なプライマー組成物は、イソシアネートを含まないまたは実質的に含まない。プライマー組成物中のイソシアネートの存在に関して「実質的に含まない」という用語は、プライマー組成物が、プライマー組成物の総質量に基づき、0.1質量%未満、あるいは0.05質量%未満、あるいは0.01質量%未満、あるいは0.005質量%未満、あるいは0.001質量%未満のイソシアネートしか含まないことを意味する。
【0009】
例示的なプライマー組成物は、2液型、2成分型、または2種型コーティング組成物である。「2液型」、「2成分型」または「2種型」組成物は、別々の容器に保管され、典型的にはコーティング組成物の成分の品質保持期間を延長するために密封される2つの成分を含む熱硬化性コーティング組成物を指す。2成分型コーティング組成物の取り扱いは、一般に、反応性成分の時期尚早な反応を回避するために、使用直前に反応性成分を一緒に混合することを要する。「使用直前」という用語は、2成分型コーティング組成物を扱う当業者に周知である。すぐに使えるコーティング組成物を実際の使用/適用前に調製できる時間は、コーティング組成物のポットライフによって決まる。ポットライフは、コーティング組成物の相互に反応性の成分を混合したら、コーティング組成物がさらに正しく処理され得、または適用され得、品質が損なわれていないコーティングを実現できる時間である。2成分型コーティング組成物を調製/混合し、適用するために適した時間ウィンドウを有するように、充分に長いポットライフが望まれる。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、約20分を超える、たとえば約40分超、約60分超、約2時間超、約4時間超、たとえば約8時間超のポットライフを有する。例示的な実施形態において、プライマー組成物のポットライフは、約20時間以下である。
基材表面上に所望の厚さの層のポットミックスを適用する。適用後、層を乾燥し、硬化して、基材表面上にコーティングを形成する。典型的な2液型コーティング組成物は、架橋可能な成分および架橋成分を含む。
【0010】
さらに、例示的なプライマー組成物は、従来のプライマーと比べて低温度、たとえば約120℃(250°F)未満の温度で硬化性である。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、約110℃(230°F)未満の温度、たとえば約87℃(190°F)~約110℃(230°F)で硬化性である。たとえば、プライマー組成物は、選択された継続時間にわたる硬化作業の間、オーブン中、約120℃未満の温度、たとえば約87℃~約110℃または約100℃~約110℃で焼付硬化され得る。例示的な実施形態において、選択された継続時間は、約5分、約10分、約15分、約20分、約30分、または約60分である。
【0011】
本明細書で用いる場合、「低VOCコーティング組成物」は、組成物の1リットル当たり0.6キログラム(1ガロン当たり5ポンド)未満、好ましくは0.53キログラム(1ガロン当たり4.4ポンド)未満の有機溶剤(揮発性有機成分)を含むコーティング組成物を意味する。VOCレベルは、ASTM D3960で挙げられる手順で決定される。
本明細書で用いる場合、「高固体組成物」は、約40%超、たとえば約45~約85%、たとえば約50~約65%(すべて、組成物の総質量に基づく質量%で表す)の固体成分を有するコーティング組成物を意味する。
【0012】
本明細書で用いる場合、「GPC重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを利用して測定された重量平均分子量を意味する。Hewlett-Packard社(Palo Alto,Calif.)によって供給された高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使用した。別段指定されない限り、使用した液相は、テトラヒドロフランであり、標準液はポリメチルメタクリレートだった。
本明細書で用いる場合、「Tg」は、ガラス転移温度を意味する。本明細書で用いる場合、「高分子固体」または「バインダー固体」は、乾燥状態の高分子またはバインダーを意味する。
例示的なプライマー組成物は、架橋可能な成分および架橋成分を有するバインダーを含む。「架橋可能な成分」は、化合物、オリゴマー、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖の末端に位置する、ポリマーの主鎖からのペンダント、またはこれらの組み合わせの各分子中に位置する架橋可能な官能基を有する化合物、オリゴマー、ポリマーまたはコポリマーを含む。当業者は、特定の架橋可能な基の組み合わせが、存在する場合、それらの間で架橋(自己架橋)し、それにより下記の架橋成分中の架橋基と架橋する能力を損なうことが考えられるため、架橋可能な成分から除外され得ることに気がつくであろう。
【0013】
例示的な架橋可能な成分は、ヒドロキシル、アセトアセトキシ、カルボキシル、第1級アミン、第2級アミン、エポキシ、無水物、イミノ、ケチミン、アルジミン、またはこれらの組み合わせから選択される、平均で2~25個、たとえば2~15個、たとえば2~5個、たとえば2~3個の架橋可能な基を有することができる。例示的な架橋可能な官能基は、ヒドロキシルおよびイミノ官能基である。例示的な架橋可能な成分は、ポリエステルを含む。
架橋可能なヒドロキシル官能基を有するポリエステルは、プライマー組成物に適している。例示的なポリエステルは、1500超、たとえば約1500~約100,000、たとえば約2000~約50,000、たとえば約2000~約8000、たとえば約2000~約5000のGPC重量平均分子量を有する。例示的なポリエステルのTgは、約-50℃~約+100℃、たとえば約-20℃~約+50℃である。
【0014】
例示的なポリエステルは、通常、脂環式ポリカルボン酸を含めた好適なポリ酸、および多価アルコールを含む好適なポリオールから重合される、任意の従来の溶剤可溶性ポリエステルでよい。好適な脂環式ポリカルボン酸の例として、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸およびシクロブタンテトラカルボン酸がある。脂環式ポリカルボン酸は、シス型だけでなくトランス型でも使用することができ、また両方の型の混合物も使用できる。所望に応じて、脂環式ポリカルボン酸と一緒に使用できる、好適なポリカルボン酸の例として、芳香族および脂肪族ポリカルボン酸、たとえばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロゲノフタル酸、たとえばテトラクロロまたはテトラブロモフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸がある。
【0015】
好適な多価アルコールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。所望に応じて、たとえば、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、エトキシ化またはプロポキシ化フェノールなどの一価アルコールも、多価アルコールと一緒に含んでもよい。
【0016】
例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約10質量%超、たとえば約15質量%超、約20質量%超、たとえば約25質量%超、たとえば約30質量%超、たとえば約33質量%超の架橋可能な成分、たとえばポリエステルを含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約60質量%未満、たとえば約50質量%未満、約45質量%未満、たとえば約40質量%未満、たとえば約35質量%未満、たとえば約34質量%未満の架橋可能な成分、たとえばポリエステルを含む。
【0017】
本明細書で用いる場合、「架橋成分」は、化合物、オリゴマー、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖の末端に位置する、ポリマーの主鎖からのペンダント、またはこれらの組み合わせの各分子中に位置する架橋性官能基を有する化合物、オリゴマー、ポリマーまたはコポリマーを含み、これらの官能基は、架橋可能な成分の架橋可能な官能基と架橋して(硬化工程中)、架橋構造形態のコーティングを生成することができる。当業者は、特定の架橋性基/架橋可能な基の組み合わせは、架橋して成膜架橋構造を生成することを失敗することが考えられるため、本明細書における実施形態から除外され得ることに気がつくであろう。
【0018】
例示的な架橋成分は、メラミン、アミン、ケチミン、エポキシ、ポリ酸、無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される架橋性官能基を有する化合物、オリゴマー、ポリマーまたはコポリマーから選択することができる。当業者にとって、一般に架橋成分の特定の架橋性基が、架橋可能な成分の特定の架橋可能な基と架橋することは明確であると考えられる。いくつかの対になる組み合わせとして、(1)メラミン架橋性基が、一般に、ヒドロキシル、第1級および第2級アミン、ケチミン、またはアルジミン架橋可能基と架橋し、(2)ケチミン架橋性基が、一般に、アセトアセトキシ、エポキシ、または無水物架橋可能基と架橋し、(3)エポキシ架橋性基が、一般に、カルボキシル、第1級および第2級アミン、ケチミン、または無水物架橋可能基と架橋し、(4)アミン架橋性基が、一般に、アセトアセトキシ架橋可能基と架橋し、(5)ポリ酸架橋性基が、一般に、エポキシ架橋可能基と架橋し、(6)無水物架橋性基が、一般に、エポキシおよびケチミン架橋可能基と架橋する。例示的な架橋成分は、メラミンである。
メラミンホルムアルデヒド樹脂(「メラミン」)は、コーティング用の周知の架橋剤である。メラミンは、ヒドロキシル官能性ポリマーと反応して、架橋コーティングを生成することができる。メラミンは、通常、自動車両および軽トラック用の相手先商標製品製造(OEM:original equipment manufacturing)コーティング中の架橋剤として使用される。これらのOEMコーティングは、普通、130℃(265°F)以上のような高温で焼き付けされる。周囲温度での、ヒドロキシル基とメラミン官能基との間の反応は、極度に遅い。一部のメラミンは、アミノ、より厳密にはイミノ官能基を有する。メラミンは、完全にホルミル化された、いわゆる完全にアルキル化されたメラミンでよい。架橋剤であることに加えて、メラミンは、接着剤の接着性を促進することも知られている。高温下の硬化の要件により、メラミンは、一般には、低温で硬化させる必要があるコーティングには使用されない。
例示的な実施形態において、メラミンを、ヒドロキシル含有コーティング組成物に添加し、その結果、接着性が改善され、有効なポットライフを有するコーティングが生成される。例示的なメラミンは、メラミンのイミノ基(以下、-NH基と呼ぶ)、ヒドロキシル基、またはこれらの組み合わせ中に少なくとも1つの手が付けられていない水素を有する。
【0019】
少なくとも1つの-NH基またはヒドロキシル基を有する例示的なメラミンには、単量体メラミン、高分子メラミンホルムアルデヒド樹脂またはこれらの組み合わせが挙げられる。単量体メラミンには、トリアジン核ごとにメタノール、n-ブタノール、またはイソブタノールなどのC1-C5一価アルコールでエーテル化された、平均で3つ以上のメチロール基を含有する低分子量メラミンが挙げられる。一部のこのような好適な単量体メラミンには、アルキル化メラミン、たとえばメチル化、ブチル化、イソブチル化メラミンおよびこれらの混合物が挙げられる。これらの好適な単量体メラミンの多くは、商業的に供給される。たとえば、Cytec Industries Inc.社(West Patterson,N.J.)製のCymel(登録商標)303、Cymel(登録商標)1168、Cymel(登録商標)373、Cymel(登録商標)370、Cymel(登録商標)380、Cymel(登録商標)325、またはCymel(登録商標)1158が、好適なメラミンであり得る。好適な高分子メラミンホルムアルデヒド樹脂には、高イミノ(部分的にホルミル化された-NH)メラミンが挙げられる。
【0020】
例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約5質量%超、たとえば約10質量%超、たとえば約15質量%超、たとえば約18質量%超の架橋成分、たとえばメラミンを含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約30質量%未満、たとえば約25質量%未満、たとえば約20質量%未満、たとえば約19質量%未満の架橋成分、たとえばメラミンを含む。
【0021】
例示的な実施形態において、プライマー組成物は、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約0.5質量%超、たとえば約1質量%超、たとえば約2質量%超、たとえば約3質量%超のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約15質量%未満、たとえば約10質量%未満、たとえば約5質量%未満、たとえば約4質量%未満のメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約2質量%超、たとえば約5質量%超、たとえば約10質量%超、たとえば約14質量%超のブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、プライマー組成物の総質量に基づき、約25質量%未満、たとえば約20質量%未満、たとえば約18質量%未満、たとえば約15質量%未満のブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。
【0022】
例示的な架橋可能な成分は、プライマー組成物の全固形質量の約1~約99質量%、約10~約50質量%、約20~約40質量%、または約30~約35質量%の、架橋可能なヒドロキシル基を有するポリエステル、およびプライマー組成物の全固形質量の約1~約35質量%、約5~約30質量%、約10~約25質量%、約15~約20質量%、または約18~約19質量%の、-NH基、ヒドロキシル基、またはこれらの組み合わせから選択される架橋可能な基を有するメラミンを有し得る。
例示的な実施形態において、ポリエステルおよびメラミンは、プライマー組成物中に、ポリエステル:メラミンの質量比が約0.5:1から約5:1、たとえば約1:1から約3:1、たとえば約1.5:1から約2:1で提供される。
【0023】
一実施形態において、2液型プライマー組成物は、第1部または成分および第2部または成分を含む。例示的な実施形態において、架橋成分は、2液型プライマー組成物の第1部の中に含まれる。さらに、架橋可能な成分の第1の部分が、2液型プライマー組成物の第1部の中に含まれる。架橋可能な成分の第2の部分は、2液型プライマー組成物の第2部の中に含まれ得る。
例示的な実施形態において、架橋可能な成分の総質量に基づき、約1質量%、約2質量%、約5質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約80質量%、約85質量%、約90質量%、約95質量%、約98質量%、または約99質量%の架橋可能な成分が、プライマー組成物の第1部の中に含まれるが、残りの架橋可能な成分は、プライマー組成物の第2部の中に含まれる。
【0024】
プライマー組成物の第2部は、架橋触媒をさらに含む。例示的な架橋触媒は、ブロック化されていない。たとえば、架橋触媒は、非ブロック化酸触媒でよい。例示的な非ブロック化酸触媒は、芳香族スルホン酸である。たとえば、非ブロック化酸触媒は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)でよい。他の好適な非ブロック化触媒、たとえば非ブロック化酸触媒を利用してもよい。例示的な実施形態において、プライマー組成物の第2部は、非ブロック化酸触媒から、または非ブロック化酸触媒および架橋可能な成分の第2の部分から本質的になる。さらに、例示的な実施形態において、プライマー組成物の第1部は、実質的に、架橋触媒を含まない。プライマー組成物の第1部の中の架橋触媒の存在に関して「実質的に含まない」という用語は、プライマー組成物の第1部が、プライマー組成物の総質量に基づき、0.1質量%未満、あるいは0.05質量%未満、あるいは0.01質量%未満、あるいは0.005質量%未満、あるいは0.001質量%未満の架橋触媒を含むことを意味する。
例示的な実施形態において、プライマー組成物の第2部は、硬化プロセスを加速するために触媒量の触媒を含む。触媒量は、バインダーのヒドロキシル成分中に存在する反応性オリゴマーの第1次ヒドロキシル基の反応性に依存し得る。例示的な実施形態において、プライマー組成物は、約0.001%~約5%、たとえば約0.01%~2%、たとえば約0.02%~1%、たとえば約0.6%(すべて、プライマー組成物の総質量に基づく質量%で表す)の触媒を含む。
【0025】
例示的な実施形態において、プライマー組成物の第1部は、高固体コーティング系に配合されてよく、少なくとも1種の有機溶剤をさらに含有する。例示的な有機溶剤は、芳香族炭化水素、たとえば石油ナフサまたはキシレン;ケトン、たとえばメチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはアセトン;エステル、たとえば酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシル;およびグリコールエーテルエステル、たとえば酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択してよい。添加する有機溶剤の量は、組成物の所望の固体レベルならびに所望のVOC量によって決まる。
例示的な実施形態において、プライマー組成物の第1部は、少なくとも1種のアルコール溶剤をさらに含んでよい。例示的なアルコール溶剤は、n-ブチルアルコールおよび/またはイソブチルアルコールであるが、他の好適なアルコール溶剤を使用してもよい。
プライマー組成物の第1部は、通常の、当技術分野で周知の添加剤、たとえば顔料、安定剤、レオロジーコントロール剤、流動剤、強化剤、紫外線保護剤、水分捕捉剤、および充填剤も含有してよい。このような追加の添加剤は、当然ながら、コーティング組成物の目的用途によって決まる。導電性顔料、たとえばカーボンブラック顔料、導電性黒鉛、金属粒子、または導電性ポリマーをコーティング組成物に添加してもよい。例示的な第1部は、塗装業で周知のように、流動添加剤(flow additive)、たとえばアクリルコポリマー流動添加剤、もしくは他のアクリルポリマー、反応性オリゴマー、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。また、第1部は、色素分散体の形態などのさまざまな顔料を含んでよい。
【0026】
第1部および第2部を、使用する直前または使用する約5~30分前に混合して、限定されたポットライフを有するポットミックスを形成してよい。ポットミックスの層は、典型的には、スプレー、静電スプレー、ローラー塗布、ディッピングまたはブラッシングなどの従来の技術によって基材に適用される。次いで、コーティング組成物の層は、約120℃未満の温度、たとえば約88~約110℃または約100~約110℃で、30分間~24時間の範囲の選択された継続時間、硬化して、所望のコーティング特性を有する基材上のコーティングを形成する。実際の硬化時間は、適用された層の厚さおよび任意の追加の機械的補助、たとえばコーティングされた基材全体に空気を連続的に流して硬化速度を加速する助けをする送風機によって決まる。
【0027】
例示的なプライマー組成物を、金属または非金属基材に適用することができる。非金属基材の一例として、SMC、GTX、ナイロン、メラミンおよび/またはアクリル複合材料、TPO、TPV、ポリプロピレン、PVC、発泡スチロール、ポリシクロペンタジエンなどを含めたプラスチックまたは複合プラスチックが挙げられる。「プラスチック」とは、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの熱可塑性オレフィン、熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート、熱硬化性シート成形コンパウンド、反応射出成形コンパウンド、アクリロニトリル系材料、ナイロンなどを含めた、一般的な熱可塑性または熱硬化性合成非導電材料のいずれかを意味する。
【0028】
例示的なプライマー組成物は、ベースコート層および後続のトップコート層など、1つ以上の他のコーティング層でコーティングされるプライマー層を形成する上で特に有用である。例示的なプライマー組成物は、OEM自動車両のコーティングまたは車両を再塗装するためのコーティング用のプライマーとして使用することができる。例示的なプライマー組成物は、これらに限定されないが、携帯電話、ハンドヘルド計算機、携帯情報端末(PDA)、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、もしくはタブレットコンピューターなどのデジタル装置;電子レンジ、冷蔵庫、食洗機および乾燥機、テレビ、もしくは電話機などの家庭用品;スポーツ用品;またはツールおよび保護装置などの、装置またはそのプラスチックまたは非プラスチック部品を備えた器具をコーティングするために使用することもできる。
【0029】
特定の実施形態において、プライマー組成物は、第1のポリマー、第2のポリマー、および溶剤を含むものとして特徴付けられ得る。実施形態において、第1のポリマーおよび第2のポリマーは、バインダーポリマー成分の一部として識別される。「バインダーポリマー成分」という用語は、コーティング組成物の成膜構成要素を指す。典型的には、バインダーポリマー成分は、硬度、保護、接着性などの所望の特性を有するコーティングを形成する上で必須の、ポリマー、オリゴマー、およびこれらの組み合わせを含むことができる。溶剤、顔料、触媒、レオロジー改質剤、酸化防止剤、紫外線安定剤および吸収剤、平滑剤、消泡剤、へこみ防止剤、または他の通常の添加剤などの追加の成分は、この用語に含まれない。1種以上のこれらの追加の成分を、コーティング組成物に含んでもよい。実施形態において、また、以下に詳述するように、コーティング組成物は、非機能性ポリマー、架橋剤、顔料および添加剤などの他の成分をさらに含む。
第1のポリマーは、酸性官能基を有する、第1のポリマー結合部分、またはその誘導体を含む。第2のポリマーは、アミン官能基を有する、第2のポリマー結合部分を含む。酸性官能基およびアミン官能基は、少なくともコーティング組成物を基材に適用した後に、実質的に互いに反応性である。酸性官能基およびアミン官能基の互いに対する反応性に関する「実質的に」という用語は、少なくとも60%、あるいは少なくとも75%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも99%の酸性官能基およびアミン官能基は、互いに反応性であることを意味する。実施形態において、第1および第2のポリマーが、極性溶剤などの溶剤に溶解するとき、酸性官能基およびアミン官能基間のイオン相互作用は最小限になり、それによって最小限のゲル化を示すコーティング組成物がもたらされる。また、実施形態において、溶剤の蒸発後、たとえばコーティング組成物を基材に適用した後、第1および第2のポリマーは、酸性官能基およびアミン官能基間のイオン相互作用によって、互いに反応性であり、それによって硬化後に、接着性などのコーティング性能が改善されたコーティング層が形成される。
【0030】
第1のポリマーは、実質的にアミン官能基を含まず、第2のポリマーは、実質的に酸性官能基を含まない。第1のポリマー中のアミン官能基の存在に関して「実質的に含まない」という用語は、第1のポリマーを形成するために利用される混合物が、混合物の総質量に基づき、0.1質量%未満、あるいは0.05質量%未満、あるいは0.01質量%未満、あるいは0.005質量%未満、あるいは0.001質量%未満のアミン官能基を含むことを意味する。第2のポリマー中の酸性官能基の存在に関して「実質的に含まない」という用語は、第2のポリマーを形成するために利用される混合物が、混合物の総質量に基づき、0.1質量%未満、あるいは0.05質量%未満、あるいは0.01質量%未満、あるいは0.005質量%未満、あるいは0.001質量%未満の酸性官能基を含むことを意味する。
【0031】
第1のポリマーは、コーティング組成物中で、コーティング組成物のバインダーポリマー成分の総質量に基づき、10~90質量%、あるいは10~80質量%、あるいは10~60質量%の量で利用され得る。第2のポリマーは、コーティング組成物中で、コーティング組成物のバインダーポリマー成分の総質量に基づき、10~90質量%、あるいは10~80質量%、あるいは10~60質量%の量で利用され得る。実施形態において、第1のポリマーの酸性官能基および第2のポリマーのアミン官能基は、コーティング組成物中、酸性官能基とアミン官能基のモル比が10:1~1:10、あるいは5:1~1:5、あるいは4:1~1:4で利用される。
【0032】
第1のポリマーは、酸性官能基を有する第1のポリマー結合部分、またはその誘導体を含む。第1のポリマー結合部分は、少なくとも第1のポリマーの主鎖の一部であってよい、第1のポリマーの側鎖であってよい、第1のポリマーにグラフト化されていてよい、またはこれらの組み合わせでよい。第1のポリマーは、複数のポリマー結合部分を含んでよく、該ポリマー結合部分は、第1のポリマーのいずれの位置にあってもよい。特定の実施形態において、第1のポリマー結合部分は、第1のポリマーである。第1のポリマー結合部分は、酸性官能性モノマー、酸性官能性オリゴマー、または酸性官能性マクロモノマーから形成され得る。実施形態において、モノマー、オリゴマー、またはマクロモノマーは、エチレン性不飽和二重結合などの重合可能な二重結合を含む。実施形態において、第1のポリマーは、コポリマーである。コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期性コポリマー、統計的コポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトコポリマーでよい。コポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよい。
酸性官能基またはその誘導体は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、または酸無水物基でよい。第1のポリマー結合部分は、複数の種類の酸性官能基またはその誘導体を有してよい。特定の実施形態において、酸性官能基またはその誘導体は、カルボン酸基である。
【0033】
実施形態において、第1のポリマー結合部分は、酸性官能性モノマーを含めた第1のポリマーモノマー混合物から重合される。特定の実施形態において、酸性官能性モノマーは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、ケイ皮酸、グルタコン酸、ムコン酸、ウンデシレン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、およびこれらの組み合わせの群から選択される。実施形態において、第1のポリマーモノマー混合物は、酸性官能性モノマーのいずれかの酸無水物を含んでよい。好適な酸無水物には、マレイン酸無水物およびイタコン酸無水物が挙げられる。これらの実施形態において、酸無水物モノマーを加水分解して、対応するカルボキシル基を形成してもよい。第1のポリマーモノマー混合物は、酸性官能性モノマーおよび酸無水物モノマーを含み得ることを理解されたい。
【0034】
実施形態において、第1のポリマーモノマー混合物は、酸性官能性モノマーまたはその誘導体を、第1のポリマーモノマー混合物の総質量に基づき、約0.1~約12質量%、あるいは約0.5~10質量%、あるいは約0.5~8質量%、あるいは約1~約5質量%の量で含む。理論に束縛されるわけではないが、12質量%超の量の酸性官能性モノマーを含むポリマーモノマー混合物から重合されるポリマーは、感湿性のコーティング組成物をもたらし、第2のポリマーとの反応性からコーティング組成物のゲル化につながると考えられている。理論に束縛されるわけではないが、0.1質量%未満の量の酸性官能性モノマーを含むポリマーモノマー混合物から重合されるポリマーは、第2のポリマーとは充分に反応しないポリマーをもたらすとも考えられている。
【0035】
第1のポリマーは、約5000~約200000、あるいは約8000~約200000、あるいは約10000~約200000の量の重量平均分子量を有してよい。本明細書で開示される「分子量」は、別段指定されない限り、標準液としてポリスチレンを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。第1のポリマーは、約1.05~約10.0、あるいは約1.2~約8、あるいは約1.5~約5の量の多分散性を有し得る。第1のポリマーは、約-5℃~約100℃、あるいは約0℃~80℃、あるいは約10℃~約60℃の量のTgを有し得る。「Tg」は、ポリマーのガラス転移温度を意味し、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる、またはFox in Bull.Amer.Physics Soc.,1,3,123頁(1956)に記載されるように計算することができる。理論に束縛されるわけではないが、上記の重量平均分子量を有する第1のポリマーは、最小限のゲル化を示し、改善された接着性などの改善されたコーティング性能を有するコーティング組成物をもたらすと考えられている。特に、重量平均分子量が5000未満のポリマーは、第2のポリマーとの反応および硬化の前に、コーティング組成物から蒸発して出てよい。さらに、重量平均分子量が200000超のポリマーは、コーティング組成物の噴霧適用に適さない粘度を有するコーティング組成物をもたらし得る。第1のポリマーは、それぞれ少なくとも酸性官能基またはその誘導体を有する1種以上のポリマーを含むことができる。各ポリマーは、複数の種類の酸性官能基またはその誘導体を有することができる。
【0036】
第2のポリマーは、アミン官能基を有する第2のポリマー結合部分を含む。アミン官能基は、第1級アミン、第2級アミン、または第3級アミンでよい。第2のポリマー結合部分は、少なくとも第2のポリマーの主鎖の一部でよい、第2のポリマーの側鎖でよい、第2のポリマーにグラフト化されてよい、またはこれらの組み合わせでよい。第2のポリマーは、複数の第2のポリマー結合部分を含んでよく、このポリマー結合部分は、第2のポリマーの任意の位置にある。特定の実施形態において、第2のポリマー結合部分は、第2のポリマーである。第2のポリマー結合部分は、アミン官能性モノマー、アミン官能性オリゴマー、またはアミン官能性マクロモノマーから形成され得る。実施形態において、モノマー、オリゴマー、またはマクロモノマーは、エチレン性不飽和二重結合などの重合性二重結合を含む。実施形態において、第2のポリマーは、コポリマーである。コポリマーは、ランダムコポリマー、交互コポリマー、周期性コポリマー、統計的コポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトコポリマーでよい。コポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0037】
実施形態において、第2のポリマー結合部分は、アミン官能性モノマー、カルボキシル官能性モノマー、またはこれらの組み合わせを含む第2のポリマーモノマー混合物から重合され得る。一実施形態において、第2のポリマー結合部分は、アミン官能性モノマーを含む第2のポリマーモノマー混合物から重合され得る。アミン官能性モノマーは、t-ブチルアミノエチルメタクリレート(t-BAEMA)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、およびこれらの組み合わせの群から選択されてよい。別の実施形態では、第2のポリマー結合部分は、カルボキシル官能性モノマーを含む第2のポリマーモノマー混合物から重合される。カルボキシル官能性モノマーは、メタクリル酸でよい。実施形態において、第2のポリマーが、メタクリル酸などのカルボキシル官能性モノマーから重合される場合、第2のポリマーは、プロピレンイミンなどのイミン化合物と反応して、第1級アミン官能基を形成する。第2級アミン官能基は、t-BAEMAから重合され得る。あるいは、第2級アミン官能基は、エポキシ官能基を含むポリマーおよび第1級アミンおよびアルカノールアミンなどのアミン化合物から重合され得る。第3級アミン官能基は、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートおよびN,N-ジエチルアミノエチルアクリレートなどのN,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ならびにN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのN,N-ジアルキルアミノアルキルメタクリレートから重合され得る。
【0038】
実施形態において、第2のポリマーモノマー混合物は、第2のポリマーモノマー混合物の総質量に基づき、約0.1~約15質量%、あるいは約0.5~12質量%、あるいは約0.5~10質量%、あるいは約1~約7質量%の量のアミン官能性モノマーを含む。理論に束縛されるわけではないが、15質量%超の量のアミン官能性モノマーを含むポリマーモノマー混合物から重合されるポリマーは、第1のポリマーとの反応性のためにゲル化するコーティング組成物をもたらすと考えられている。また、理論に束縛されるわけではないが、0.1質量%未満の量のアミン官能性モノマーを含むポリマーモノマー混合物から重合されるポリマーは、第1のポリマーと充分には反応しないポリマーをもたらすと考えられている。
【0039】
第2のポリマーは、約5000~約200000、あるいは約8000~約200000、あるいは約10000~約200000の量の重量平均分子量を有し得る。第2のポリマーは、約1.05~約10.0、あるいは約1.2~約8、あるいは約1.5~約5の量の多分散性を有し得る。第2のポリマーは、約-5℃~約100℃、あるいは約0℃~80℃、あるいは約10℃~約60℃の量のTgを有し得る。理論に束縛されるわけではないが、上記の重量平均分子量を有する第2のポリマーは、最小限のゲル化を示し、改善された接着性などの改善されたコーティング性能を示すコーティング組成物をもたらすと考えられている。特に、重量平均分子量が5000未満のポリマーは、第1のポリマーとの反応および硬化の前に、コーティング組成物から蒸発し得る。さらに重量平均分子量が200000超のポリマーは、コーティング組成物の噴霧適用に適さない粘度を有するコーティング組成物をもたらし得る。第2のポリマーは、それぞれ少なくともアミン官能基またはその誘導体を有する1種以上のポリマーを含むことができる。各ポリマーは、複数の種類のアミン官能基またはその誘導体を有することができる。
【0040】
実施形態において、第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方は、架橋可能な官能基を有する。「架橋可能な官能基」という用語は、化合物、オリゴマー、ポリマー、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖の末端に位置する、ポリマーの主鎖からのペンダント、またはこれらの組み合わせの各分子中に位置する官能基を指し、これらの官能基は、(硬化工程中に)架橋性官能基と架橋して、架橋構造の形態のコーティングを生成することができる。当業者は、特定の架橋可能な官能基の組み合わせが、存在する場合、それらの間で架橋(自己架橋)することによって、架橋性官能基と架橋する能力を損なうことが考えられるため、除外され得ることに気がつくであろう。架橋可能な官能基の実行可能な組み合わせは、自己架橋すると思われる組み合わせを除くコーティング用途において使用可能な架橋可能な官能基の組み合わせを指す。
【0041】
典型的な架橋可能な官能基として、ヒドロキシル、チオール、アセトアセトキシ、カルボキシル、第1級アミン、第2級アミン、エポキシ、無水物、ケチミン、アルジミン、またはこれらの実行可能な組み合わせを挙げることができる。オルトエステル、オルトカーボネート、または環構造が開裂されるとヒドロキシル基もしくはアミン基を生じ得る環状アミドなどの他のいくつかの官能基も、架橋可能な官能基として適し得る。
【0042】
特定の実施形態において、架橋可能な官能基は、ヒドロキシル官能基である。ヒドロキシル官能基は、第1級ヒドロキシル基、第2級ヒドロキシル基、またはこれらの組み合わせでよい。ヒドロキシル官能基を有する第1のポリマーは、ヒドロキシル官能性モノマーをさらに含む第1のポリマーモノマー混合物から重合され得る。ヒドロキシル官能基を有する第2のポリマーは、ヒドロキシル官能性モノマーをさらに含む第2のポリマーモノマー混合物から重合され得る。第1級ヒドロキシル基を形成するために利用されるヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例として、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)が挙げられる。第2級ヒドロキシル基を形成するために利用されるヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例として、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)が挙げられる。特定の実施形態において、ヒドロキシル官能性モノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせの群から選択される。第1のポリマーのヒドロキシル官能基の選択は、第2のポリマーのヒドロキシル官能基の選択とは無関係であり、その逆も同様であることを理解されたい。他の実施形態において、架橋可能な官能基は、チオール官能基である。さまざまな実施形態において、第2のポリマーのみの架橋可能な官能基は、アミン官能基である。
【0043】
実施形態において、第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方を、当技術分野において既知の任意のアクリルモノマーおよび当技術分野において既知の任意のエチレン性不飽和モノマーなどの、追加のモノマーから重合する。これらの追加のモノマーの非限定的な例として、非置換または置換アルキルアクリレート、たとえばアルキル基中に1~20個の炭素原子を有するもの;アルキルメタクリレート、たとえばアルキル基中に1~20個の炭素原子を有するもの;脂環式アクリレート;脂環式メタクリレート;アリールアクリレート;アリールメタクリレート;他のエチレン性不飽和モノマー、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド;ビニル芳香族化合物、たとえばスチレン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。他の非限定的な例として、非官能性アクリルモノマー、たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全異性体)、ブチルメタクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全異性体)、ブチルアクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリロニトリルなどが挙げられる。さらなる非限定的な例として、他のエチレン性不飽和モノマー、たとえばビニル芳香族化合物が挙げられる。ビニル芳香族化合物の非限定的な例として、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。特定の実施形態において、第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方は、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせの群から選択される追加のモノマーから重合される。第1のポリマーの追加のモノマーの選択は、第2のポリマーの追加のモノマーの選択とは無関係であり、その逆も同様であることを理解されたい。
【0044】
例示的な実施形態において、第1のポリマーは、スチレン、ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびメタクリル酸の反応生成物を含む。スチレンを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約10~約50質量%、あるいは約20~約40質量%、あるいは約25~約35質量%の量で利用してよい。ブチルアクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約10~約50質量%、あるいは約20~約40質量%、あるいは約25~約35質量%の量で利用してよい。イソボルニルアクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約1~約40質量%、あるいは約10~約30質量%、あるいは約15~約25質量%の量で利用してよい。2-ヒドロキシルエチルメタクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、0.1~30質量%、あるいは約1~約20質量%、あるいは約3~約12質量%の量で利用してよい。ヒドロキシプロピルメタクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、0.1~30質量%、あるいは約1~約20質量%、あるいは約3~約12質量%の量で利用してよい。メタクリル酸を、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約1~約9質量%、あるいは約3~約7質量%の量で利用してよい。
【0045】
別の例示的な実施形態において、第1のポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、およびメタクリル酸の反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約10~約50質量%、あるいは約20~約40質量%、あるいは約25~約35質量%の量で利用してよい。ブチルメタクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約5~約45質量%、あるいは約15~約35質量%、あるいは約20~約30質量%の量で利用してよい。エチルヘキシルアクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約5~約45質量%、あるいは約15~約35質量%、あるいは約20~約30質量%の量で利用してよい。2-ヒドロキシエチルメタクリレートを、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、0.1~40質量%、あるいは約10~約30質量%、あるいは約15~約25質量%の量で利用してよい。メタクリル酸を、それぞれ第1のポリマーの総質量に基づき、約0.1~12質量%、あるいは約0.1~約8質量%、あるいは約0.1~約4質量%の量で利用してよい。
【0046】
例示的な実施形態において、第2のポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびt-ブチルアミノエチルメタクリレートの反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約60~約90質量%、あるいは約70~約85質量%、あるいは約75~約81質量%の量で利用してよい。ブチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約5~約25質量%、あるいは約10~約20質量%、あるいは約12~約18質量%の量で利用してよい。t-ブチルアミノエチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約3~約10質量%、あるいは約5~約9質量%の量で利用してよい。
別の例示的な実施形態において、第2のポリマーは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、およびt-ブチルアミノエチルメタクリレートの反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約60~約90質量%、あるいは約70~約85質量%、あるいは約75~約81質量%の量で利用してよい。エチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約5~約25質量%、あるいは約10~約20質量%、あるいは約12~約18質量%の量で利用してよい。t-ブチルアミノエチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約3~約10質量%、あるいは約5~約9質量%の量で利用してよい。
【0047】
別の例示的な実施形態において、第2のポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、およびN,N-ジメチルアミノエチルアクリレートの反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約60~約90質量%、あるいは約70~約85質量%、あるいは約75~約81質量%の量で利用してよい。ブチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約5~約25質量%、あるいは約10~約20質量%、あるいは約12~約18質量%の量で利用してよい。N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約3~約10質量%、あるいは約5~約9質量%の量で利用してよい。
【0048】
別の例示的な実施形態において、第2のポリマーは、メチルメタクリレート、エチルアクリレートの反応生成物、メタクリル酸およびプロピレンイミンの反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約65~約95質量%、あるいは約73~約87質量%、あるいは約77~約83質量%の量で利用してよい。エチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約5~約25質量%、あるいは約10~約20質量%、あるいは約12~約18質量%の量で利用してよい。メタクリル酸を、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約1~約7質量%、あるいは約2~約6質量%の量で利用してよい。プロピレンイミンを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約1~約7質量%、あるいは約1~約5質量%の量で利用してよい。
【0049】
別の例示的な実施形態において、第2のポリマーは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、およびN,N-ジメチルアミノエチルアクリレートの反応生成物を含む。メチルメタクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約60~約90質量%、あるいは約70~約85質量%、あるいは約75~約81質量%の量で利用してよい。ブチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約0.1~約15質量%、あるいは約1~約15質量%、あるいは約3~約8質量%の量で利用してよい。2-ヒドロキシエチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、約0.1~約25質量%、あるいは約1~約17質量%、あるいは約7~約13質量%の量で利用してよい。N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートを、それぞれ第2のポリマーの総質量に基づき、0.1~12質量%、あるいは約1~約10質量%、あるいは約4~約10質量%の量で利用してよい。
【0050】
第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方は、独立に、直鎖状もしくは分枝状アクリルポリマー、直鎖状もしくは分枝状ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、またはこれらの組み合わせから選択される。「アクリルポリマー」は、他のエチレン性不飽和モノマー、たとえばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびビニル芳香族化合物、たとえばスチレンで共重合されてもよいアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する、重合された「(メタ)アクリレート」を含むポリマーを意味する。
実施形態において、第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方は、ポリエステルポリマーである。ポリエステルポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよい。有用なポリエステルは、脂肪族または芳香族ジカルボン酸、ポリオール、ジオール、芳香族または脂肪族環状無水物および環状アルコールのエステル化生成物を含めてよい。第1のポリマーのポリエステルの選択は、第2のポリマーのポリエステルの選択とは無関係であり、その逆も同様であることを理解されたい。
【0051】
好適な脂環式ポリカルボン酸の非限定的な例に、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、およびシクロブタンテトラカルボン酸がある。脂環式ポリカルボン酸は、シス型だけでなく、トランス型および両方の型の混合物として使用することができる。好適なポリカルボン酸のさらなる非限定的な例として、芳香族および脂肪族ポリカルボン酸、たとえばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロゲノフタル酸、たとえばテトラクロロまたはテトラブロモフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸を挙げることができる。ポリ酸の組み合わせ、たとえばポリカルボン酸および脂環式ポリカルボン酸の組み合わせは好適であり得る。ポリオールの組み合わせも好適であり得る。
【0052】
非限定的な好適な多価アルコールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコールおよびポロプロピレングリコールが挙げられる。所望に応じて、たとえば、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、エトキシ化またはプロポキシ化フェノールなどの一価アルコールも、多価アルコールと共に含めてよい。
【0053】
好適なポリエステルの非限定的な例として、分枝状コポリエステルポリマーが挙げられる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,861,495号に記載の分枝状コポリエステルポリマーおよび製造方法が好適であり得る。1つのカルボキシル基および2つのヒドロキシル基、2つのカルボキシル基および1つのヒドロキシル基、1つのカルボキシル基および3つのヒドロキシル基、または3つのカルボキシル基および1つのヒドロキシル基を有するものを含めたABx(x=1~3)タイプなどの多官能基を有するモノマーを使用して分枝構造を作製することができる。このようなモノマーの非限定的な例として、2,3ジヒドロキシプロピオン酸、2,3ジヒドロキシ2-メチルプロピオン酸、2,2ジヒドロキシプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などが挙げられる。
【0054】
分枝状コポリエステルポリマーは、通常、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のラクトン、およびこれらの組み合わせ、ならびに1種以上の分枝状モノマーの群から選択される鎖延長剤を含有するモノマー混合物から重合することができる。いくつかの好適なヒドロキシカルボン酸には、グリコール酸;乳酸;3-ヒドロキシカルボン酸、たとえば3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、およびヒドロキシピバル酸が挙げられる。いくつかの好適なラクトンには、カプロラクトン、バレロラクトン;ならびにグリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシカルボン酸、たとえば3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、およびヒドロキシピバル酸などの対応するヒドロキシカルボン酸のラクトンが挙げられる。特定の実施形態において、カプロラクトンを使用してもよい。実施形態において、分枝状コポリエステルポリマーは、一工程で、鎖延長剤および超分枝モノマーを含むモノマー混合物を重合することによって、または超分枝モノマーを最初に重合し、後続して鎖延長剤を重合することによって、生成することができる。
【0055】
実施形態において、第1のポリマーが、ポリエステルポリマー(本明細書において「酸官能性ポリエステル」とも呼ばれる)である場合、第1のポリマーは、過剰量の二酸もしくは無水物とポリオールを使用して、またはポリマー鎖が直鎖状または分枝構造の酸性官能基で終端することを保証する合成における当業者に既知の他の方法によって生成され得る。あるいは、ポリマー鎖の終端位置にヒドロキシ基を有するポリエステルを、二酸または無水物と後反応させて、酸性官能基を形成してもよい。
【0056】
実施形態において、第2のポリマーが、ポリエステルポリマー(本明細書において「アミン官能性ポリエステル」とも呼ばれる)である場合、第2のポリマーは、第3級アミン官能性ポリオールなどのアミン官能性ポリオールを、ポリ酸およびポリオールと共に合成に含めることによって、または当業者に既知の他の方法によって生成することができる。酸または無水物により縮合できる反応性基を1つだけ有するモノマーであって、ポリマー鎖の終端位置に第3級アミン官能基が配置されたモノマーの非限定的な例として、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノールなどが挙げられる。ポリマー鎖に沿ってアミン官能基を配置できる第3級アミン基を有するポリヒドロキシルの非限定的な例として、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ならびにAnsterdam,NetherlandsのAkzo Nobel N.V.からEthomeen(登録商標)(1つの第3級アミン窒素原子)およびEthoduomeen(登録商標)(2つの第3級アミン窒素原子)の商標名で市販されている化合物などの単純化合物が挙げられる。第2のポリマーは、上記のカルボン酸含有ポリエステルポリマーと、プロピレンイミンなどの適当なアミン化合物との反応などによって後重合を経ることもできる。
【0057】
上述したように、コーティング組成物は、溶剤をさらに含む。実施形態において、溶剤は、有機溶剤である。有機溶剤は、上記成分を分散かつ/または希釈し、所望の特性を有するコーティング組成物を形成する液体キャリアでよい。溶剤または溶剤ブレンドは、典型的には、石油ナフサまたはキシレンなどの芳香族炭化水素;メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンまたはアセトンなどのケトン;酢酸ブチルまたは酢酸ヘキシルなどのエステル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル;およびイソプロパノールおよびブタノールなどのアルコール、ならびにこれらの組み合わせの群から選択される。添加する有機溶剤の量は、プライマー組成物の所望の固体レベル、所望のレオロジー(たとえばスプレー)特性、および所望のVOC量によって決まる。有機溶剤は、プライマー組成物の総質量に基づき、10~95質量%、あるいは10~50質量%、あるいは20~30質量%の量で存在し得る。
プライマー組成物の全固体レベルは、プライマー組成物の総質量に基づき、約5~約90質量%、あるいは約5~約80質量%、あるいは約5~約60質量%の量でよい。
【0058】
実施形態において、コーティング組成物は、水性プライマー組成物である。他の実施形態では、プライマー組成物は、溶剤含有コーティング組成物である。特定の実施形態において、プライマー組成物は、実質的に水を含まない。プライマー組成物中の水の量に関して「実質的に含まない」という用語は、プライマー組成物が、プライマー組成物の総質量に基づき、5質量%未満、あるいは3質量%未満、あるいは2質量%未満、あるいは1質量%未満、あるいは0.1質量%未満の水を含むことを意味する。
また、上述したように、プライマー組成物は、架橋可能な成分と反応して、本明細書において架橋網目と呼ばれる架橋高分子網目を形成することができる架橋成分を含む。プライマー組成物は、改善されたコーティング性能、特に層間接着をもたらすことができることを理解されたい。
【0059】
「架橋剤」という用語は、化合物、オリゴマー、ポリマー、ポリマーの主鎖、ポリマーの主鎖の末端に位置する、ポリマーの主鎖からのペンダント、またはこれらの組み合わせの各分子中に位置する官能基である「架橋性官能基」を有する成分を指し、これらの官能基は、(硬化工程中に)架橋可能な官能基と架橋して架橋構造の形態のコーティングを作製することができる。当業者は、特定の架橋性官能基の組み合わせが、存在する場合、それらの間で架橋(自己架橋)し、それにより架橋可能な官能基と架橋する能力を損なうことが考えられるため、除外され得ることに気がつくであろう。実現可能な架橋性官能基の組み合わせは、自己架橋することが考えられる組み合わせを除く、コーティング用途に使用可能な架橋性官能基の組み合わせを指す。当業者は、架橋性官能基と架橋可能な官能基との特定の組み合わせが、架橋して成膜架橋構造を作製することに失敗すると考えられることから、除外されると考えられる。コーティング組成物は、同一または異なる架橋性官能基を有する複数の種類の架橋剤を含んでよい。典型的な架橋性官能基には、ヒドロキシル、チオール、アセトアセトキシ、カルボキシル、第1級アミン、第2級アミン、エポキシ、無水物、ケチミン、アルジミン、オルトエステル、オルトカーボネート、環状アミド、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
実施形態において、メラミン官能基を有するメラミン化合物を架橋剤として利用して、ヒドロキシル官能基およびアミン官能基などの架橋性官能基と反応させることができる。特定の実施形態において、第1級および第2級アミン官能基のみが、メラミン官能基と反応することができる。
【0060】
また、上述したように、コーティング組成物は、顔料をさらに含んでよい。コーティング組成物における使用向けの当技術分野において既知の任意の顔料を、コーティング組成物中で利用してよい。コーティング組成物は、コーティング組成物における使用向けの当技術分野において既知の他の添加剤をさらに含んでよい。このような添加剤の例として、紫外線安定剤、湿潤剤、平滑剤および流量制御剤、(メタ)アクリルホモポリマーをベースとした平滑剤、レオロジーコントロール剤、部分的に架橋されたポリカルボン酸またはポリウレタンなどの増粘剤、ならびに消泡剤を挙げることができる。添加剤は、当業者によく知られている通常の量で使用してよい。
【0061】
車体部品上にプライマーコーティングを塗装する方法も、本明細書で提供する。方法は、ポリエステルおよびメラミンを含む第1部を、非ブロック化酸触媒を含む第2部と混合して、混合組成物を生成する工程を含む。さらに、方法は、混合組成物を車体部品に適用することを含む。また、方法は、車体部品上の混合組成物を、約120℃未満、たとえば100~110℃の温度で硬化させることを含む。適用工程は、スプレー、電着、ブラッシング、ローリング、ディッピング、積層などを含んでよい。
(例1)
例1は、例示的なプライマー組成物の第1部および第2部の組成を表1で説明する。
【表1】
【0062】
少なくとも1つの例示的な実施形態を前述の説明の中で挙げてきたが、膨大な数の変形形態が存在することを理解すべきである。また、例示的な実施形態は単なる例に過ぎず、決して範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図しないことも理解すべきである。もっと正確に言えば、前述の詳細な説明は、例示的な実施形態を実行するために便利なロードマップを当業者に与えるものである。添付の特許請求の範囲に記載の範囲を逸脱することなく、例示的な実施形態に記載の要素の機能および配置にさまざまな変更を行うことが可能であることを理解されたい。
本発明は以下の事項を含んでいるともいえる。
(付記1)
ポリエステルおよびメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む第1部と、
非ブロック化酸触媒を含む第2部と、
を含む、2液型(2k)イソシアネート非含有プライマー組成物。
(付記2)
前記第1部が、ポリエステルの第1の部分を含み、前記第2部が、ポリエステルの第2の部分を含む、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記3)
前記第1部が、ポリエステルの第1の部分を含み、前記第2部が、ポリエステルの第2の部分を含み、前記第2部が、非ブロック化酸触媒および前記ポリエステルの第2の部分から本質的になる、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記4)
前記第2部の非ブロック化酸触媒が、芳香族スルホン酸である、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記5)
前記第2部の非ブロック化酸触媒が、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)である、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記6)
前記プライマー組成物が、約100~約110℃の温度で硬化性である、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記7)
前記第1部が、酸触媒を実質的に含まない、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記8)
前記第1部が、炭化水素溶剤およびアルコール溶剤をさらに含む、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記9)
前記第1部が、少なくとも1種の顔料および少なくとも1種の有機溶剤をさらに含む、付記8に記載のプライマー組成物。
(付記10)
前記第1部が、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、流動添加剤、および顔料を含む、付記1に記載のプライマー組成物。
(付記11)
架橋可能な成分の第1の部分および架橋成分(メラミン)を含む第1部と、
架橋可能な成分の第2の部分および非ブロック化酸触媒を含む第2部と、
を含む2液型(2k)低温硬化性プライマー組成物であって、
約120℃未満の温度で硬化性である、プライマー組成物。
(付記12)
前記架橋成分が、単量体メラミン、高分子メラミン、またはこれらの任意の混合物を含むメラミンホルムアルデヒド樹脂である、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記13)
前記架橋成分が、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記14)
前記架橋成分が、プライマー組成物の総質量に基づき、プライマー組成物の約15~約20質量%を占める、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記15)
前記架橋可能な成分がポリエステルである、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記16)
ポリエステルが、プライマー組成物の総質量に基づき、プライマー組成物の約25~約50質量%を占める、付記15に記載のプライマー組成物。
(付記17)
ポリエステルが、プライマー組成物の総質量に基づき、プライマー組成物の約30~約40質量%を占める、付記15に記載のプライマー組成物。
(付記18)
前記架橋成分がメラミンであり、前記架橋可能な成分がポリエステルであり、ポリエステルおよびメラミンが、ポリエステル:メラミンの質量比が約1.5:1から約2:1で提供される、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記19)
前記非ブロック化酸触媒が、プライマー組成物の総質量に基づき、プライマー組成物の約0.2~約2質量%を占める、付記11に記載のプライマー組成物。
(付記20)
車体部品上にプライマーコーティングを塗装する方法であって、
ポリエステルおよびメラミンを含む第1部を、非ブロック化酸触媒を含む第2部と混合して、混合組成物を生成することと、
前記混合組成物を前記車体部品に適用することと、
前記車体部品上の前記混合組成物を、約120℃未満の温度で硬化させることと、
を含む、方法。