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特許7068876汚泥含有排水の処理装置および処理方法、並びに、水処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】汚泥含有排水の処理装置および処理方法、並びに、水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20220510BHJP
   B01F 35/00 20220101ALI20220510BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20220510BHJP
【FI】
C02F11/00 A
B01F15/00 B ZAB
B01F7/16 F
C02F11/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018052345
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019162592
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良行
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-047153(JP,A)
【文献】特開2006-263670(JP,A)
【文献】特開2002-086200(JP,A)
【文献】特開2001-113146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0023193(US,A1)
【文献】特開2008-114126(JP,A)
【文献】特開平11-123396(JP,A)
【文献】特開昭56-126497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
B01F 15/00
B01F 7/00- 7/32
C02F 3/00- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機汚泥および無機汚泥を含有する汚泥含有排水の処理方法であって、水槽内で前記汚泥含有排水に含まれている汚泥粒子を解砕し、有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配を生じさせる工程を含み、
前記工程では、水槽内の汚泥含有排水を撹拌する撹拌機を用いて前記汚泥粒子を解砕し、
前記撹拌機が、前記水槽の深さ方向に長く、前記水槽の深さ方向の寸法が前記水槽の深さ方向に直交する方向の寸法より大きい撹拌翼を有し、
前記撹拌翼は、前記汚泥含有排水に浸漬されている部分の前記水槽の深さ方向の寸法が、前記水槽の水深の0.44倍以上である、汚泥含有排水の処理方法。
【請求項2】
有機汚泥および無機汚泥を含有する汚泥含有排水の処理装置であって、
前記汚泥含有排水を貯留する水槽と、
前記水槽内の汚泥含有排水を撹拌する撹拌機と、
を備え、
前記撹拌機が、前記水槽の深さ方向に長く、前記水槽の深さ方向の寸法が前記水槽の深さ方向に直交する方向の寸法より大きい撹拌翼を有し、
前記撹拌翼を、前記撹拌翼の深さ方向の長さのうち、前記汚泥含有排水の水深の0.44倍以上が前記汚泥含有排水に浸漬するように、前記汚泥含有排水の流量または前記撹拌翼の位置を制御する制御手段と、
を備える、汚泥含有排水の処理装置。
【請求項3】
前記撹拌機は、回転軸と、前記回転軸に固定された撹拌翼取り付け部とを更に有し、
前記撹拌翼は、長手方向一端が前記撹拌翼取り付け部に固定されている板状体または棒状体である、請求項に記載の汚泥含有排水の処理装置。
【請求項4】
前記撹拌機が、前記撹拌翼の位置を上下動させる昇降装置を備えている、請求項2または3に記載の汚泥含有排水の処理装置。
【請求項5】
前記水槽が、前記水槽から有機汚泥を引き抜く第一抜き出し配管、および、前記水槽から無機汚泥を引き抜く第二抜き出し配管を有する、請求項2~4の何れかに記載の汚泥含有排水の処理装置。
【請求項6】
生物反応槽と、
請求項2~5の何れかに記載の汚泥含有排水の処理装置と、
固液分離装置と、
前記生物反応槽から流出した汚泥含有排水を前記水槽に流入させる流入配管と、
前記水槽内の上部汚泥含有液を前記生物反応槽へと送る返送配管と、
前記水槽内の下部汚泥含有液を前記固液分離装置へと送る送出配管と、
を備える、水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥含有排水の処理装置および汚泥含有排水の処理方法、並びに、水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水などの被処理水や余剰汚泥などの被処理汚泥を生物処理した際に生じる汚泥含有排水中に含まれている汚泥は、沈殿槽において沈殿させた後、生物処理槽に返送または余剰汚泥として処理されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、沈殿槽において汚泥含有排水中の汚泥を沈降させて得た処理水(上澄水)は、例えば最終沈殿地などの後段の処理装置へと送られて処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-317220号公報
【文献】特開2002-210483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、汚泥含有排水には、通常、有機汚泥と無機汚泥とが含まれている。そのため、汚泥含有排水を処理する際に汚泥を返送する生物処理槽および後段の処理装置における処理効率を向上させる観点からは、有機汚泥を生物処理槽に返送する割合を高めつつ、固液分離し易い無機汚泥を最終沈殿地などの後段の処理装置へと送る割合を高めることが好ましい。
【0005】
しかし、上記従来の技術では、沈殿槽において有機汚泥および無機汚泥の双方を区別することなく沈殿させて生物処理槽へと返送しており、汚泥含有排水を効率的に処理することができていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水から、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得る技術を提供することを目的とする。
また、本発明は、汚泥含有排水を効率的に処理し得る水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水では、有機汚泥と無機汚泥とが集合して汚泥粒子を形成していること、並びに、汚泥含有排水を貯留した水槽内で汚泥粒子に水平方向に衝撃を与えれば、水槽内で有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に重力方向の濃度勾配が生じ、有機汚泥濃縮水と無機汚泥濃縮水とを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥含有排水の処理装置は、有機汚泥および無機汚泥を含有する汚泥含有排水の処理装置であって、前記汚泥含有排水を貯留する水槽と、前記水槽内の汚泥含有排水を撹拌する撹拌機とを備え、前記撹拌機が、前記水槽の深さ方向に長い撹拌翼を有することを特徴とする。このように、水槽の深さ方向に長い撹拌翼を有する撹拌機を設けて汚泥含有排水を撹拌すれば、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水から、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得ることができる。
【0009】
ここで、本発明の汚泥含有排水の処理装置は、前記撹拌翼は、前記水槽の深さ方向の寸法が、前記水槽の深さ方向に直交する方向の寸法よりも大きいことが好ましい。水槽の深さ方向の寸法が水槽の深さ方向に直交する方向の寸法よりも大きい撹拌翼を使用すれば、有機汚泥濃縮水の有機汚泥の含有割合および無機汚泥濃縮水の無機汚泥の含有割合を更に高めることができる。
【0010】
また、本発明の汚泥含有排水の処理装置は、前記撹拌翼は、前記汚泥含有排水に浸漬されている部分の前記水槽の深さ方向の寸法が、前記水槽の水深の0.44倍以上であることが好ましい。撹拌翼の汚泥含有排水に浸漬されている部分の水槽の深さ方向の寸法が水深の0.44倍以上であれば、有機汚泥濃縮水の有機汚泥の含有割合および無機汚泥濃縮水の無機汚泥の含有割合を更に高めることができる。
【0011】
そして、本発明の汚泥含有排水の処理装置は、前記撹拌機は、回転軸と、前記回転軸に固定された撹拌翼取り付け部とを更に有し、前記撹拌翼は、長手方向一端が前記撹拌翼取り付け部に固定されている板状体または棒状体であることが好ましい。撹拌翼が、長手方向一端が撹拌翼取り付け部に固定されている板状体または棒状体であれば、有機汚泥濃縮水の有機汚泥の含有割合および無機汚泥濃縮水の無機汚泥の含有割合を更に高めることができる。
【0012】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の水処理システムは、生物反応槽と、上述した汚泥含有排水の処理装置の何れかと、固液分離装置と、前記生物反応槽から流出した汚泥含有排水を前記水槽に流入させる流入配管と、前記水槽内の上部汚泥含有液を前記生物反応槽へと送る返送配管と、前記水槽内の下部汚泥含有液を前記固液分離装置へと送る送出配管とを備えることを特徴とする。上述した撹拌翼を備える撹拌機で汚泥含有排水を撹拌した場合、通常、有機汚泥の含有割合は水槽の上部で高まり易く、無機汚泥の含有割合は水槽の下部で高まり易い。従って、返送配管および送出配管を設ければ、生物処理槽および固液分離装置における処理効率を向上させることができる。
【0013】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥含有排水の処理方法は、有機汚泥および無機汚泥を含有する汚泥含有排水の処理方法であって、水槽内で前記汚泥含有排水に含まれている汚泥粒子を解砕し、有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配を生じさせる工程を含むことが好ましい。このように、汚泥粒子を解砕し、有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配を生じさせれば、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水から、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水から、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得ることができる。
また、本発明によれば、汚泥含有排水を効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に従う汚泥含有排水の処理装置の一例の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明に従う汚泥含有排水の処理装置の他の例の概略構成を示す斜視図である。
図3】(a)および(b)は、本発明に従う汚泥含有排水の処理装置の別の例の概略構成を示す断面図である。
図4】本発明の汚泥含有排水の処理装置において使用し得る撹拌機の変形例の形状を示す斜視図である。
図5】(a)~(c)は、撹拌機で使用し得る撹拌翼の形状を示す斜視図である。
図6】(a)および(b)は、本発明の汚泥含有排水の処理装置を適用した水処理システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0017】
(汚泥含有排水の処理装置)
本発明の汚泥含有排水の処理装置は、有機汚泥および無機汚泥を含む汚泥含有排水を処理する際に用いることができる。そして、有機汚泥および無機汚泥を含む汚泥含有排水としては、特に限定されることなく、例えば消化槽などの生物反応槽から流出した汚泥含有排水などが挙げられる。なお、汚泥含有排水は、通常、無機凝集剤や高分子凝集剤などの凝集剤を含有しておらず、また、本実施形態では撹拌の際にも凝集剤を添加していない。
【0018】
ここで、図1に、本発明の汚泥含有排水の処理装置の一例の概略構成を示す。図1に示す汚泥含有排水の処理装置100は、汚泥含有排水を貯留する水槽10と、水槽10内の汚泥含有排水を撹拌する撹拌機20とを備えている。また、水槽10には、汚泥含有排水が流入する流入配管30と、水槽10の底面からの高さが水槽10内に貯留された汚泥含有排水の水深の約半分となる位置に接続された第一抜き出し配管40と、水槽10の底部に接続された第二抜き出し配管50とが設けられている。なお、流入配管30、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50には、それぞれ、流量の調整が可能な弁31,41,51が設けられている。そして、汚泥含有排水の水槽10への供給および水槽10からの抜き出しは、バッチ方式で行ってもよいし、連続(押し出し流れ)方式で行ってもよい。
【0019】
そして、撹拌機20は、モーター21と、モーター21に一端が取り付けられた回転軸22と、回転軸22の他端側(図1では下側)に固定された撹拌翼取り付け部23と、撹拌翼取り付け部23に取り付けられた複数(図示例では5つ)の撹拌翼24とを供えている。
なお、撹拌機20は、撹拌翼24の位置を上下動させる昇降装置を備えていてもよい。昇降装置を備えていれば、撹拌翼24の汚泥含有排水に浸漬されている部分の長さを容易に調節することができる。
【0020】
ここで、撹拌翼取り付け部23は、撹拌翼24が固定される環状の固定部23Bと、固定部23Bを回転軸22と連結する連結部23Aとを有している。そして、環状の固定部23Bは、環の中心に回転軸22が位置するように板状の連結部23Aを介して回転軸22と連結されている。
【0021】
また、撹拌翼24は、水槽10の深さ方向に長い撹拌翼であり、図示例では長手方向一端(上端)が撹拌翼取り付け部23の固定部23Bに固定されている。なお、撹拌機20が有する撹拌翼の数は、適宜調節することができる。
【0022】
そして、汚泥含有排水の処理装置100では、流入配管30を介して流入した汚泥含有排水を撹拌機20の撹拌翼24で撹拌することにより、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を第一抜き出し配管40から得ることができると共に、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水を第二抜き出し配管50から得ることができる。
この理由は、明らかではないが、水槽10の深さ方向に長い撹拌翼24を使用して汚泥含有排水を撹拌した場合、有機汚泥と無機汚泥とが集合して形成した汚泥粒子に対し、水槽10内に大きな水流を発生させることなく撹拌翼24を衝突させ、水槽10内で汚泥粒子を良好に解砕することができるので、水槽10内の上部では、無機汚泥よりも沈降し難い有機汚泥が留まるとともに、沈降し易い無機汚泥が減少することで、結果的に有機汚泥が濃縮される一方、沈降し易い無機汚泥が水槽10内の下部で濃縮されるからであると推察される。
【0023】
なお、通常は上述したように有機汚泥が水槽内の上部で濃縮されるが、汚泥の性状に起因して有機汚泥が沈降し易い場合には、水槽の下部から有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を抜き出してもよい。
【0024】
また、撹拌翼24は、水槽10中の汚泥含有排水に浸漬されている部分の水槽10の深さ方向の寸法が、水槽10の水深の0.44倍以上であることが好ましく、0.47倍以上であることがより好ましく、0.95倍以下であることが好ましい。汚泥含有排水に浸漬されている部分の水槽10の深さ方向の寸法が上記下限値以上であれば、撹拌翼24を汚泥粒子に十分に衝突させ、有機汚泥濃縮水の有機汚泥の含有割合および無機汚泥濃縮水の無機汚泥の含有割合を更に高めることができる。また、汚泥含有排水に浸漬されている部分の水槽10の深さ方向の寸法が上記上限値以下であれば、撹拌翼24で効率的な撹拌をすることができる。
【0025】
なお、撹拌翼24は、水槽10の深さ方向に長い形状であれば、図5(a)に示すような棒状の撹拌翼24Aであってもよいし、図5(b)に示すような板状の撹拌翼24Bであってもよいし、図5(c)に示すような折り曲げ板状の撹拌翼24Cであってもよい。
【0026】
また、撹拌翼取り付け部23の形状および撹拌翼24の配設位置は図1に示す形状および配設位置に限定されるものではなく、例えば、図4に示すような形状および配設位置とすることができる。ここで、図4に示す撹拌機20Aは、回転軸22に固定された板状の撹拌翼取り付け部23に撹拌翼24が設けられている以外は、図1に示す撹拌機20と同様の構成を有している。
なお、撹拌翼24は、回転軸22を中心とした同心円上に配置することが、駆動の安定性向上および省エネルギーの観点から好ましい。
【0027】
以上、一例を用いて本発明の汚泥含有排水の処理装置について説明したが、本発明の汚泥含有排水の処理装置は上記一例に限定されるものではない。
【0028】
具体的には、例えば、水槽10の内壁面には、第一抜き出し配管40から抜き出す汚泥と第二抜き出し配管50から抜き出す汚泥とが混ざるのを防止する仕切り板が設けられていてもよい。
【0029】
また、水槽10の形状、並びに、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50の配設位置は図1に示す形状および配設位置に限定されるものではなく、例えば、図2,3に示すような形状および配設位置にすることができる。
【0030】
ここで、図2に示す汚泥含有排水の処理装置100Aは、水槽10の形状が底面側がすり鉢状に細くなっている略円柱状であり、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50が水槽10の底部に設けられている以外は図1に示す汚泥含有排水の処理装置100と同様の構成を有している。そして、この処理装置100Aでは、バッチ方式で汚泥含有排水を処理することができる。具体的には、弁41,51を閉じた状態で弁31を開いて流入配管30から汚泥含有排水を流入させた後、弁31を閉じ、撹拌機20で水槽10内の汚泥含有排水を撹拌し、その後、弁51を開いて水槽10内の下部から例えば無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水を抜き出してから、弁51を閉じて弁41を開くことにより、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を第一抜き出し配管40から抜き出すことができる。
なお、図2では、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50が水槽10の底部に個別に接続している場合を示したが、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50は、水槽10の底部に接続する1本の共通配管に接続していてもよい。即ち、処理装置100Aでは、水槽10の底部に接続した1本の共通配管から第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50が分岐していてもよい。
【0031】
また、図3(a)に示す汚泥含有排水の処理装置100Bは、矩形状の水槽10の流入配管30が設けられている側に撹拌機20が設置されており、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50が、第二抜き出し配管50が第一抜き出し配管40よりも流入配管30側に位置するように水槽10の底面に設けられている以外は図1に示す汚泥含有排水の処理装置100と同様の構成を有している。そして、この処理装置100Bでは、連続(押し出し流れ)方式で汚泥含有排水を処理することができる。具体的には、流入配管30から流入させた汚泥含有排水を撹拌機20で撹拌した後、例えば沈降し易い無機汚泥の含有割合が高い無機汚泥濃縮水を流入配管30側に位置する第二抜き出し配管50から間欠的に抜き出すと共に、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を下流側(図3では右側)の第一抜き出し配管40から抜き出すことにより、汚泥含有排水を押し出し流れで処理することができる。
なお、第一抜き出し配管40は、図3(b)に示すように水槽10の流入配管30が設けられている側とは反対側の側面に設けられていてもよい。また、連続方式で汚泥含有排水を処理する場合、第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50は、図1に示すように、水槽10の流入配管30が設けられている側とは反対側の側面に第一抜き出し配管40が上側に位置するように設けられていてもよい。
【0032】
(水処理システム)
本発明の水処理システムは、本発明の汚泥含有排水の処理装置を用いたものであり、生物反応槽と、固液分離装置と、本発明の汚泥含有排水の処理装置と、生物反応槽から流出した汚泥含有排水を処理装置の水槽に流入させる流入配管と、処理装置の水槽内から汚泥含有液を生物反応槽へと送る返送配管と、処理装置の水槽内から汚泥含有液を固液分離装置へと送る送出配管とを備えている。
なお、生物反応槽としては、特に限定されることなく、下水などの被処理水を処理する活性汚泥槽や、被処理汚泥を消化処理する消化槽などが挙げられる。また、固液分離装置としては、特に限定されることなく、沈殿池や脱水機などが挙げられる。
【0033】
具体的には、本発明の水処理システムの第一形態は、例えば図1に示すような、高さ方向の異なる位置に第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50を設けた処理装置100を用いたものであり、第一抜き出し配管40を生物反応槽に接続して水槽10内の上部から上部汚泥含有液を生物反応槽へと送る返送配管とすると共に、第二抜き出し配管50を固液分離装置に接続して水槽10内の下部から下部汚泥含有液を固液分離装置へと送る送出配管としたものである。
そして、この水処理システムでは、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を水槽10内の上部から生物反応槽へと返送すると共に、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水を水槽10内の下部から固液分離装置へと送ることができるので、汚泥含有排水を効率的に処理することができる。
【0034】
また、本発明の水処理システムの第二形態は、例えば図3に示すような、水の流れ方向の異なる位置に第一抜き出し配管40および第二抜き出し配管50を設けた処理装置100Bを用いたものであり、第一抜き出し配管40を生物反応槽に接続して水槽10内から汚泥含有液を生物反応槽へと送る返送配管とすると共に、第一抜き出し配管40よりも流入配管30および撹拌機20側に位置する第二抜き出し配管50を固液分離装置に接続して水槽10内から汚泥含有液を固液分離装置へと送る送出配管としたものである。
そして、この水処理システムでは、水の流れ方向(図3では左側から右側へと向かう方向)にみて、沈降し易い無機汚泥の含有割合が高い無機汚泥濃縮水を先に固液分離装置へと送った後、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水を生物反応槽へと返送することができるので、汚泥含有排水を効率的に処理することができる。
【0035】
なお、上述したような水処理システムの具体的としては、例えば図6に示すような水処理システムを挙げることができる。
【0036】
ここで、図6(a)に示す水処理システムは、生物反応槽200と、汚泥含有排水の処理装置100と、固液分離装置としての沈殿池300と、濃縮・脱水機400とを備えている。そして、図6(a)に示す水処理システムでは、生物反応槽200から流出した汚泥含有排水が処理装置100で処理され、有機汚泥濃縮水が生物反応槽200へと返送されると共に、無機汚泥濃縮水が沈殿池300へと送られて固液分離される。なお、沈殿池300で沈殿した汚泥は、通常、濃縮・脱水機400へと送られるが、図6(a)中に破線で示すように生物反応槽200へと返送してもよい。
【0037】
また、図6(b)に示す水処理システムは、生物反応槽としての消化槽500と、汚泥含有排水の処理装置100と、固液分離装置としての濃縮・脱水機400とを備えている。そして、図6(b)に示す水処理システムでは、消化槽500から流出した汚泥含有排水が処理装置100で処理され、有機汚泥濃縮水が消化槽500へと返送されると共に、無機汚泥濃縮水が濃縮・脱水機400へと送られて固液分離される。
【0038】
以上、本発明の水処理システムについて説明したが、本発明の水処理システムは上述した例に限定されるものではない。具体的には、本発明の水処理システムでは、汚泥含有排水の処理装置として図2に示すような処理装置100Aを使用し、バッチ方式で処理を行ってもよい。この場合、マニュアル操作で、或いは、制御装置を使用して、弁41,51を交互に開閉することにより第二抜き出し配管50を介して水槽内の下部汚泥含有液を固液分離装置へと送り、第一抜き出し配管40を介して水槽内の上部汚泥含有液を生物反応槽へと送ることができる。
【0039】
(汚泥含有排水の処理方法)
本発明の汚泥含有排水の処理方法は、有機汚泥および無機汚泥を含む汚泥含有排水を処理する際に用いることができる。そして、有機汚泥および無機汚泥を含む汚泥含有排水としては、特に限定されることなく、例えば消化槽などの生物反応槽から流出した汚泥含有排水などが挙げられる。なお、汚泥含有排水は、通常、無機凝集剤や高分子凝集剤などの凝集剤を含有しておらず、また、本実施形態では撹拌の際にも凝集剤を添加していない。
【0040】
そして、本発明の汚泥含有排水の処理方法は、水槽内で汚泥含有排水に含まれている汚泥粒子を解砕し、有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配を生じさせる工程を含むものである。
【0041】
ここで、汚泥粒子の解砕は、特に限定されることなく、汚泥粒子に対して撹拌翼などを物理的に接触させて汚泥粒子に衝撃を与えることにより、行うことができる。
なお、撹拌翼としては、特に限定されることなく、上述した本発明の汚泥含有排水の処理装置の撹拌機が有する撹拌翼等を用いることができる。即ち、上記工程は、本発明の汚泥含有排水の処理装置を用いて行うことが好ましい。そして、例えば図1に示すような処理装置を用いてバッチ方式で汚泥含有排水を処理する場合には、使用する撹拌翼の寸法は、第一抜き出し配管40から有機汚泥濃縮水を抜き出した後でも撹拌翼の一部が水中に浸漬している長さであることが好ましい。
【0042】
そして、本発明の汚泥含有排水の処理方法では、水槽内で有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配を生じさせることにより、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得ることができる。なお、水槽内における有機汚泥濃度および無機汚泥濃度に勾配は、水深方向に漸増または漸減するものであってもよいし、水深方向にステップ状に変化するものであってもよい。そして、通常、有機汚泥の含有割合は水槽の上部で高まり易く、無機汚泥の含有割合は水槽の下部で高まり易い。
【0043】
以上、本発明の汚泥含有排水の処理方法について説明したが、本発明の汚泥含有排水の処理方法は上述した内容に限定されるものではない。
【実施例
【0044】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
図1に示すような構造の汚泥含有排水の処理装置を使用し、消化槽から流出した汚泥含有排水を処理した。
具体的には、表1に示す設計の撹拌機を使用し、汚泥含有排水を10分間撹拌した後、第一抜き出し配管40から上部汚泥含有液を引き抜き、更に、第二抜き出し配管50から下部汚泥含有液を引き抜いた。なお、上部汚泥含有液を引き抜く量は、引き抜き前の水深の50%とした。
そして、得られた上部汚泥含有液および下部汚泥含有液について、下水試験方法に準拠し、蒸発残留物(TS)および強熱減量物(VTS)を測定し、有機汚泥の含有割合(=(VTS/TS)×100%)の差を算出した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2~6)
汚泥含有排水に浸漬する撹拌翼の長さを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして汚泥含有排水を処理した。
そして、実施例1と同様にして得られた上部汚泥含有液および下部汚泥含有液の評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
パドル型撹拌翼を有する撹拌機を使用した以外は実施例1と同様にして汚泥含有排水を処理した。なお、この撹拌機は、3枚のパドル型撹拌翼を、水深方向に3段に並べて設置したものである。各撹拌翼は、水深方向の寸法が1.5cmで、水深方向に直交する方向の寸法が6cmの横長であり、撹拌翼間の深さ方向の距離が7.5mmになる(即ち、最上段(1段目)にある撹拌翼の上端から最下段(3段目)の撹拌翼の下端までの距離が6cmになる)ように設置されていた。
そして、実施例1と同様にして得られた上部汚泥含有液および下部汚泥含有液の評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1より、実施例1~6、特には実施例3~6では、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水が良好に得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、有機汚泥と無機汚泥とを含む汚泥含有排水から、有機汚泥の含有割合を高めた有機汚泥濃縮水と、無機汚泥の含有割合を高めた無機汚泥濃縮水とを得ることができる。
また、本発明によれば、汚泥含有排水を効率的に処理することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 水槽
20,20A 撹拌機
21 モーター
22 回転軸
23 撹拌翼取り付け部
23A 連結部
23B 固定部
24,24A,24B,24C 撹拌翼
30 流入配管
40 第一抜き出し配管
50 第二抜き出し配管
31,41,51 弁
100,100A,100B 処理装置
200 生物反応槽
300 沈殿池
400 濃縮・脱水機
500 消化槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6