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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/256 20160101AFI20220510BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20220510BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20220510BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L29/238
A23L29/269
A61K8/73
A61K9/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018066981
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178078
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501296210
【氏名又は名称】株式会社デリカシェフ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】峠 広延
(72)【発明者】
【氏名】坪井 美紀
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】石田 史佳
(72)【発明者】
【氏名】谷原 望
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 真裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 伊勢郎
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-300854(JP,A)
【文献】特開2008-220362(JP,A)
【文献】特開2013-183693(JP,A)
【文献】特開2018-196333(JP,A)
【文献】特開2009-000055(JP,A)
【文献】特開平08-280334(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106722750(CN,A)
【文献】渡瀬 峰男,熱可逆性ゲルのレオロジー的性質および熱的性質と感覚特性値の関連づけ ―非常に個体に近いゲルから非常に液体に近い液状ゼリーの「摂食・嚥下の流れ」に与える影響―,New Food Industry ,2016年,Vol.58, No.3,pp.48-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L29/00-29/294
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラギーナン、寒天、及びジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤と、
水と
を含有し、ウェランガムを含有せず、金属塩を含有しないゲル状組成物であって、
前記ゲル状組成物が、撹拌すると液状になるものであり、
前記ゲル状組成物を充填したカップを80°~90°傾けて10秒間保持した場合でも、前記ゲル状組成物の全体のゲル状組織が維持され、かつ、
前記ゲル状組成物の粘度が、回転式粘度計により測定された場合に、800mPa・s以下であることを特徴とする、ゲル状組成物。
【請求項2】
0.3質量%以下のカラギーナン、0.4質量%以下の寒天、及び0.4質量%以下のジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤と
を含有し、ウェランガムを含有せず、金属塩を含有しないゲル状組成物であって、
前記ゲル状組成物が、撹拌すると液状になるものであり、
前記ゲル状組成物の粘度が、回転式粘度計により測定された場合に、800mPa・s以下であることを特徴とする、ゲル状組成物。
【請求項3】
前記第1のゲル化剤と前記第2のゲル化剤との質量比が、100:5~100:220である、請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
容器に入れられた、請求項1~3の何れか1項に記載のゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物に関するものであって、特に撹拌すると液状になるゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル化剤を用いたゲル状組成物は、食品、医薬品、及び化粧品などの分野で幅広く知られている。ゲル状食品の典型的な例としては、ゼリー、プリン、及びババロアなどが挙げられる。特許文献1には、特定のゲル化剤を含むゲル状食品が記載されており、当該ゲル状食品は、ストローでの喫食が容易なものであるが、これはあくまでもゲルであり、スープ様の食感を有するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-96961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、透明容器入りのスープなどの製品には、粘性を付与するために増粘剤が使用されているが、輸送中に搖動することで、当該透明容器の蓋の裏面などに内容物が付着して美観を損なうという問題があった。上記製品を強固なゲル状に固めてしまえば、このような問題は発生しないが、それではもはやスープ様の食感は得られなくなってしまう。そこで、本発明は、輸送中に搖動しても容器の蓋の裏に付着しない程度の保形性を有するが、撹拌すれば液状になるゲル状組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のゲル化剤を組み合わせて使用すれば、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すゲル状組成物を提供するものである。
〔1〕カラギーナン、寒天、及びジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤と、
水と
を含有するゲル状組成物であって、
前記ゲル状組成物が、撹拌すると液状になるものであり、
前記ゲル状組成物を充填したカップを80°~90°傾けて10秒間保持した場合でも、前記ゲル状組成物の全体のゲル状組織が維持され、かつ、
前記ゲル状組成物の粘度が、回転式粘度計により測定された場合に、800mPa・s以下であることを特徴とする、ゲル状組成物。
〔2〕0.3質量%以下のカラギーナン、0.4質量%以下の寒天、及び0.4質量%以下のジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、
ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤と
を含有するゲル状組成物であって、
前記ゲル状組成物が、撹拌すると液状になるものであることを特徴とする、ゲル状組成物。
〔3〕前記第1のゲル化剤と前記第2のゲル化剤との質量比が、100:5~100:220である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のゲル状組成物。
〔4〕容器に入れられた、前記〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載のゲル状組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従えば、カラギーナン、寒天、及びジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤とを組み合わせて使用してゲル状組成物を調製し、当該ゲル状組成物の特性が特定の範囲のもの、すなわち、当該ゲル状組成物を充填したカップを80°~90°傾けて10秒間保持した場合でも、当該ゲル状組成物の全体のゲル状組織が維持され、かつ当該ゲル状組成物の粘度が、回転式粘度計により測定した場合に、800mPa・s以下となるように、前記第1のゲル化剤及び前記第2のゲル化剤の配合量を調整することによって、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製することができる。また、特定の濃度の前記第1のゲル化剤と、前記第2のゲル化剤とを組み合わせて使用してゲル状組成物を調製することによっても、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製することができる。これらのゲル状組成物は、輸送中に搖動しても容器の蓋の裏に付着しない程度の保形性を有するが、スプーンなどで撹拌した場合には、スープ様の液状になるものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のゲル状組成物は、カラギーナン、寒天、及びジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤と、水とを含有しており、撹拌すると液状になる。
【0008】
本明細書に記載の「撹拌」とは、ティースプーンやマドラーなどを用いて手動でかき混ぜる程度の撹拌のすべてを含み、例えば、スープなどをティースプーンで10~20回程度かき混ぜる程度のことをいう。その撹拌速度及び撹拌時間は、特に限定されない。また、本明細書に記載の「液状」とは、組成物全体が均一なゾル又は液体の状態であることをいい、硬いゲルが細かく粉砕されたクラッシュゼリーの形態とは異なるものである。本発明のゲル状組成物における撹拌時の液状化特性は、可逆的なものであっても不可逆的なものであってもいいが、好ましくは一度液状になるとゲルには戻らない不可逆的な特性である。
【0009】
本発明のゲル状組成物は、前記第1のゲル化剤及び前記第2のゲル化剤を組み合わせて使用して、ゲルの形態として調製される。調製した本発明のゲル状組成物は、傾斜面で全体の形状を維持できるだけの保形性を有し得る。例えば、前記ゲル状組成物を充填したカップを約80°~約90°傾けて約10秒間保持した場合でも、前記ゲル状組成物は、その全体のゲル状組織を維持することができる。このような傾斜試験に用いる測定対象としては、測定用のカップ内でゲル化処理して作製したゲル状組成物をそのまま使用してもいいし、別の容器内でゲル化処理して作製したゲル状組成物を前記カップに移したものを使用してもよい。測定用のカップの傾け方は、特に限定されないが、例えば、前記カップを平面に固定して傾けてもいいし、前記カップの側面をグリップして傾けてもよい。また、上記の保形性は、輸送中に搖動してもゲル状組成物がプラスチックカップなどの容器の蓋の裏に付着しない程度の保形性である。以上の性能をまとめて「保形性」と称する場合がある。
また、本発明のゲル状組成物は、ビスコテスタVT-04F(リオン株式会社製)の回転式粘度計により測定した場合に、約800mPa・s以下の粘度を示す。ある態様では、前記ゲル状組成物の粘度は、約100~約700mPa・sである。これらの物性を有する本発明のゲル状組成物は、撹拌すると液状になるものである。前記の保形性及び粘度を測定する場合の詳細な条件の例は、実施例において記載したとおりである。
【0010】
前記第1のゲル化剤及び前記第2のゲル化剤は、各々の単独では十分なゲルを形成できないような濃度で同時に使用されるが、両ゲル化剤の配合量を適宜調整することで、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製することができる。前記第1のゲル化剤の濃度は、調製されるゲル状組成物が撹拌すると液状になる特性を有する限り特に制限されないが、例えば、前記ゲル状組成物に対して、前記カラギーナンは、約0.3質量%以下、好ましくは約0.2~約0.29質量%の濃度であってもよく、前記寒天は、約0.4質量%以下、好ましくは約0.18~約0.38質量%の濃度であってもよく、前記ジェランガムは、約0.4質量%以下、好ましくは約0.3~約0.37質量%の濃度であってもよい。
【0011】
前記第2のゲル化剤の配合量は、前記第1のゲル化剤の配合量に合わせて、撹拌すると液状になるゲル状組成物が調製されるように適宜調整すればよい。すなわち、前記第2のゲル化剤の濃度は、調製されるゲル状組成物が撹拌すると液状になる特性を有する限り特に制限されないが、例えば、前記ゲル状組成物に対して、0.3質量%以下、好ましくは0.06~0.27質量%の濃度であってもよい。
【0012】
前記第1のゲル化剤と前記第2のゲル化剤との質量比は、調製されるゲル状組成物が撹拌すると液状になる特性を有する限り特に制限されないが、例えば、約100:5~約100:220であってもよく、好ましくは約100:10~約100:200である。
【0013】
本発明のゲル状組成物は、容器に充填してもよい。前記容器としては、当技術分野で通常使用される容器を特に制限されることなく使用することができるが、例えば、プラスチックカップ、チューブ、瓶、及び缶などであってもよい。本発明のゲル状組成物は、輸送中に搖動しても容器の蓋の裏に付着しない程度の保形性を有するため、蓋付容器にヘッドスペースを残して充填した場合などに、蓋の裏面に付着して美観を損なうという問題が効果的に低減され、透明容器に充填した場合には、内容物の美観が損なわれないことが容易に確認できるため、本発明の効果をより一層実感することができる。
【0014】
ある態様では、本発明のゲル状組成物は、4メッシュ(目開き4.75mm)の篩上に静かに乗せて約30秒間静置すると、その約80質量%以上、好ましくは約90質量%以上、さらに好ましくは約100質量%が、前記篩上に保持される。前記ゲル状組成物がこのような特性を有すると、その保形性がさらに良好なものとなる。
【0015】
また別の態様では、本発明は、0.3質量%以下、好ましくは0.29質量%以下のカラギーナン、0.4質量%以下、好ましくは0.38質量%以下の寒天、及び0.4質量%以下、好ましくは0.37質量%以下のジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤とを含有するゲル状組成物にも関している。特定の濃度の前記第1のゲル化剤に併せて前記第2のゲル化剤を使用すれば、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製することができる。前記ゲル状組成物の調製における具体的な作業工程は、常法によればよい。
【0016】
本発明のいずれのゲル状組成物も、種々の食品、医薬品、及び化粧品などの製品に適用することができる。そのため、前記ゲル状組成物は、撹拌すると液状になるという性質を失わない限り、前記製品を調製するために必要な追加の成分を適宜含むことができる。例えば、前記ゲル状組成物に具材及び調味料などを添加して作製したスープなどは、輸送中に搖動してもプラスチックカップなどの容器の蓋の裏に付着しない程度の保形性を有するが、喫食前に撹拌すれば液状になって口当たりの滑らかな食感を有するものである。また、前記ゲル状組成物に具材及び調味料などを添加して作製したパスタ用ソースは、麺と一緒にカップ容器などに施蓋せずに収容しても、当該容器からこぼれない程度の保形性を有しており、喫食前に当該容器内で撹拌すれば液状になって麺と滑らかに絡まるものである。あるいは、前記ゲル状組成物は、スープ、ソースなどに限定されず、ヨーグルト、チーズなどの乳製品や菓子を含む種々な食品にも適用を広げられるものである。
【0017】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0018】
〔実施例1~5及び比較例1~6〕
カラギーナンと、ローカストビーンガム(LBガム)又はキサンタンガムと、水とを、以下の表1に記載の量で混合して、実施例1~5(実1~5)及び比較例1~6(比1~6)の組成物を調製した。具体的には、ゲル化剤の溶融温度以上で各成分を混合してゲル化剤溶液を調製し、当該ゲル化剤溶液を、約90℃以上に加熱した後、約80℃以上に保持してから、ゲル化剤の固化温度以下に冷却した。調製した組成物の物性及び特性を、以下のようにして評価した。
【0019】
(1)保形性(傾斜試験)
上記ゲル化剤溶液を調製する際に、約90℃以上に加熱した後、約80℃以上に保持した各試験区の原料組成物を、深さ65mm、容積200mLの透明プラスチックカップに180~190mLずつ充填し、約10℃以下で約3~4時間かけて冷却固化した。上記カップを平面に固定し、当該平面を約80°~約90°傾けて10秒間保持した場合の測定試料の状態を、次のような基準で評価した。
維持:組成物の全体のゲル状組織が維持され、当該組成物はカップ内に留まった。
破壊:組成物のゲル状組織が崩れ、当該組成物はカップからこぼれ落ちた。
【0020】
(2)粘度
調製した組成物の粘度をビスコテスタVT-04F(リオン株式会社製)により測定した。具体的には、品温10℃以下の測定試料170mLを測定用の3号カップに入れて、ロータNo.3を用いて測定した。測定においては、ロータNo.3の上面が3mm程度測定試料の上面に浸る状態で、ロータの回転数62.5rpm(固定)測定を開始し、約5~10秒後に安定した粘度表示を読み取った。
【0021】
(3)篩上保持率
調製した組成物を、4メッシュ(目開き4.75mm)の篩上に静かに乗せて30秒間静置し、当該篩上に残った試料の質量を計測し、篩上に保持された試料の割合を求めた。
【0022】
(4)撹拌時の液状化
調製した組成物を、ティースプーンで20回撹拌し、撹拌時の状態を次のような基準で評価した。
◎:滑らかに撹拌することができ、10回目までの撹拌によりスープ様の液状になった。
○:10回目程度の撹拌でゲル状組織が崩れ、以降の撹拌によりスープ様の液状になった。
×:20回撹拌しても、クラッシュゼリー状の粒々が残っており、滑らかに撹拌することができず、スープ様の液状にならなかった。
【0023】
(5)食味食感
調製したゲル状組成物を喫食し、口当たり及びのど越しを、次のような基準で評価した。
◎:口当たりがサラサラとしており、糊っぽさ(付着する感覚)を感じず、のど越しがよい。
○:口当たり及びのど越しにやや糊っぽさを感じた。
×:口に含むと粒状物が残っていた。口当たり及びのど越しに糊っぽさを感じた。
【0024】
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0025】
第1のゲル化剤又は第2のゲル化剤を単独で使用しただけでは、ゲル状とならず、撹拌して初めて液状になるようなゲル状組成物を調製することはできなかった(比1~3)。
一方、第1のゲル化剤及び第2のゲル化剤を併せて使用すれば、それぞれ単独ではゲルを形成しないような濃度ではあっても、両成分の配合量を適宜調整することにより、カップに充填した状態で約80°~約90°傾けて約10秒間保持した場合でも、その全体のゲル状組織を維持することができ、かつ回転式粘度計により測定される粘度が800mPa・s以下であるようなゲル状組成物を調製することができた。このようにして調製された各実施例のゲル状組成物は、良好な保形性を有し、蓋付き容器に充填した後に搖動させても、当該容器の蓋に付着することがなかった。また、各実施例のゲル状組成物は、撹拌すると液状になるという特異な性質を有しており、このため、口どけの良い滑らかな食味食感を有していた。なお、各実施例のゲル状組成物は、静置した状態でゲル状を長期間保持し、撹拌して一度液状になるとゲル状には戻らなかった。
これに対して、第1のゲル化剤及び第2のゲル化剤を併せて使用しても、前記の傾斜試験において「破壊」したゲル状組成物は、輸送中に搖動した場合に容器の蓋の裏に付着し得るものであった(比4)。また、前記の粘度が高すぎる場合は、撹拌すると液状になるという性質と、口どけの良い滑らかな食味食感を達成することはできなかった(比5、6)。
【0026】
〔実施例6~10並びに比較例7〕
寒天と、ローカストビーンガム(LBガム)又はキサンタンガムと、水とを、以下の表2に記載の量で混合して、実施例6~10(実6~10)並びに比較例7(比7)の組成物を調製した。調製した組成物の物性及び特性を、実施例1などと同様にして評価した。
【0027】
評価結果を表2に示す。
【表2】
【0028】
第1のゲル化剤として、カラギーナンに代えて寒天を採用しても、第2のゲル化剤を併せて使用すれば、それぞれ単独ではゲルを形成しないような濃度ではあっても、両成分の配合量を適宜調整することで、傾斜試験で全体のゲル状組織を維持することができ、かつ回転式粘度計により測定される粘度が800mPa・s以下であるようなゲル状組成物を調製することができた。このようにして調製された各実施例のゲル状組成物は、実施例1などと同様に、良好な保形性を有しており、また、撹拌すると液状になるという特異な性質を有し、口どけの良い滑らかな食味食感を有していた。なお、各実施例のゲル状組成物は、静置した状態でゲル状を長期間保持し、撹拌して一度液状になるとゲル状には戻らなかった。
また、比較例7のゲル状組成物は、傾斜試験において「破壊」し、求める保形性を有しないものであった。実施例10のゲル状組成物は、やや食味食感が劣ったものの、良好な保形性を有し、かつ撹拌すると液状になる性質を有するものであった。
【0029】
〔実施例11~14並びに比較例8〕
ジェランガムと、ローカストビーンガム(LBガム)又はキサンタンガムと、水とを、以下の表2に記載の量で混合して、実施例11~14(実11~14)並びに比較例8(比8)の組成物を調製した。調製した組成物の物性及び特性を、実施例1などと同様にして評価した。
【0030】
評価結果を表3に示す。
【表3】
【0031】
第1のゲル化剤として、カラギーナンに代えてジェランガムを採用しても、第2のゲル化剤を併せて使用すれば、それぞれ単独ではゲルを形成しないような濃度ではあっても、両成分の配合量を適宜調整することで、傾斜試験で全体のゲル状組織を維持することができ、かつ回転式粘度計により測定される粘度が800mPa・s以下であるようなゲル状組成物を調製することができた。このようにして調製された各実施例のゲル状組成物は、実施例1などと同様に、良好な保形性を有しており、また、撹拌すると液状になるという特異な性質を有し、口どけの良い滑らかな食味食感を有していた。なお、各実施例のゲル状組成物は、静置した状態でゲル状を長期間保持し、撹拌して一度液状になるとゲル状には戻らなかった。
一方、比較例8のゲル状組成物は、傾斜試験において「破壊」し、求める保形性を有しないものであった。実施例14のゲル状組成物は、やや食味食感が劣ったものの、良好な保形性有し、かつ撹拌すると液状になる性質を有するものであった。
【0032】
以上より、カラギーナン、寒天、及びジェランガムからなる群から選択される1種以上の第1のゲル化剤と、ローカストビーンガム及び/又はキサンタンガムである第2のゲル化剤とを組み合わせて使用すれば、撹拌すると液状になるゲル状組成物を調製できることが分かった。