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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20220510BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02P9/04 M
B60R16/033 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018112719
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019216543
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良樹
(72)【発明者】
【氏名】虻川 卓憲
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189114(JP,A)
【文献】特開2015-013493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(200)と、前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う発電機(20)と、電気負荷(14)と、蓄電池(11,12)と、前記発電機に対して、前記電気負荷及び前記蓄電池が並列に接続された電気経路において前記発電機との接続点(N2)よりも前記蓄電池の側に設けられるスイッチ(SW1,SW2)と、を備えた車載電源システム(100)に適用される制御装置(50)において、
前記発電機の発電電圧を取得する発電電圧取得部(51)と、
前記電気負荷の要求電圧を取得する要求電圧取得部(52)と、
前記スイッチを制御する電源制御部(53)と、を備え、
前記電源制御部は、前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行っている場合、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記発電機と前記蓄電池との間の通電及び通電遮断を切り替えるように前記スイッチを制御するものであり、
前記蓄電池には、第1蓄電池(11)と、前記第1蓄電池よりも内部抵抗が高い第2蓄電池(12)があり、
前記スイッチには、前記接続点(N2)よりも前記第1蓄電池の側に設けられる第1スイッチ(SW1)と、前記接続点(N2)よりも前記第2蓄電池の側に設けられる第2スイッチ(SW2)と、があり、
前記電源制御部は、
前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う場合、少なくとも前記発電機と前記第1蓄電池との間を通電させるように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御し、
前記発電機と前記第1蓄電池との間を通電させている場合に、前記発電電圧が前記要求電圧よりも小さい場合、前記発電機と前記第1蓄電池との間における通電を遮断させるとともに、前記発電機と前記第2蓄電池との間を通電させるように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御する制御装置。
【請求項2】
内燃機関(200)と、前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う発電機(20)と、電気負荷(14)と、蓄電池(11,12)と、前記発電機に対して、前記電気負荷及び前記蓄電池が並列に接続された電気経路において前記発電機との接続点(N2)よりも前記蓄電池の側に設けられるスイッチ(SW1,SW2)と、を備えた車載電源システム(100)に適用される制御装置(50)において、
前記発電機の発電電圧を取得する発電電圧取得部(51)と、
前記電気負荷の要求電圧を取得する要求電圧取得部(52)と、
前記スイッチを制御する電源制御部(53)と、を備え、
前記電源制御部は、前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行っている場合、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記発電機と前記蓄電池との間の通電及び通電遮断を切り替えるように前記スイッチを制御するものであり、
前記蓄電池には、第1蓄電池(11)と、前記第1蓄電池よりも内部抵抗が高い第2蓄電池(12)があり、
前記スイッチには、前記接続点(N2)よりも前記第1蓄電池の側に設けられる第1スイッチ(SW1)があり、
前記電気経路において、前記発電機と前記第2蓄電池との間は、常時通電可能に構成されており、
前記電源制御部は、
前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う場合、前記発電機と前記第1蓄電池との間を通電させるように前記第1スイッチを制御し、
前記発電機と前記第1蓄電池との間を通電させている場合に、前記発電電圧が要求電圧よりも小さい場合、前記発電機と前記第1蓄電池との間における通電を遮断させるように前記第1スイッチを制御する制御装置。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記発電電圧が前記要求電圧よりも小さい場合において、前記発電機の発電電圧が所定の電圧値以下であって、かつ、発電電流が所定の電流値以下である場合に、前記スイッチの切り替えを許可する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記発電電圧が前記要求電圧よりも小さい場合であって、前記発電機からの発電電圧が所定の電圧値よりも大きい場合、又は発電電流が所定の電流値よりも大きい場合、前記内燃機関の出力トルクを低下させることを指示する指示部を備える請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の出力トルク及び回転速度により特定される燃料消費効率に基づき、前記出力トルクのうち、前記発電機により利用される発電トルクを制御する発電機制御部を備える請求項1~のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の出力トルク及び回転速度により特定される燃料消費効率に基づき、前記出力トルクのうち、前記発電機により利用される発電トルクを制御する発電機制御部を備え、
前記発電電圧取得部は、前記発電機制御部により発電トルクが決定された後、発電トルクの変化前に、発電トルクの変化後の発電電圧を推定し、推定した発電電圧を取得し、
前記電源制御部は、発電トルクの変化前に、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記スイッチを制御し、
前記発電機制御部は、前記電源制御部による前記スイッチが制御された後、決定された発電トルクとなるように、前記発電トルクを制御する請求項1~のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
内燃機関(200)と、前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う発電機(20)と、電気負荷(14)と、蓄電池(11,12)と、前記発電機に対して、前記電気負荷及び前記蓄電池が並列に接続された電気経路において前記発電機との接続点(N2)よりも前記蓄電池の側に設けられるスイッチ(SW1,SW2)と、を備えた車載電源システム(100)に適用される制御装置(50)において、
前記発電機の発電電圧を取得する発電電圧取得部(51)と、
前記電気負荷の要求電圧を取得する要求電圧取得部(52)と、
前記スイッチを制御する電源制御部(53)と、
前記内燃機関の出力トルク及び回転速度により特定される燃料消費効率に基づき、前記出力トルクのうち、前記発電機により利用される発電トルクを制御する発電機制御部と、を備え、
前記電源制御部は、前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行っている場合、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記発電機と前記蓄電池との間の通電及び通電遮断を切り替えるように前記スイッチを制御するものであり、
前記発電電圧取得部は、前記発電機制御部により発電トルクが決定された後、発電トルクの変化前に、発電トルクの変化後の発電電圧を推定し、推定した発電電圧を取得し、
前記電源制御部は、発電トルクの変化前に、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記スイッチを制御し、
前記発電機制御部は、前記電源制御部による前記スイッチが制御された後、決定された発電トルクとなるように、前記発電トルクを制御する制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を有する車載電源システムに適用される制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両において、内燃機関が出力するトルクの一部を発電機に供給して発電を行い、発電電力を車両の電気負荷(電装系)に供給することが一般的に行われている(例えば特許文献1)。特許文献1では、発電電流、内燃機関の回転数、出力トルクなどに応じて発電機の出力を調整することにより、内燃機関の燃費を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-46525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載される電気負荷には、所定の要求電圧を印加させる必要がある電気負荷が存在する。このような電気負荷としては、例えば、印加電圧に応じて回転数が変化することに起因して、送風の風量が変化するブロワモータがある。このような電気負荷が存在する場合、例えば、特許文献1に記載されている技術のように、内燃機関の燃費を優先させて、出力トルクを低下させると、発電電圧が要求電圧に満たなくなり、電気負荷の動作が不安定となるといった問題がある。例えば、ブロワモータでは、所望の風量で送風することができなくなる。昇圧回路を設けて、発電電圧の昇圧を行うことも可能であるが、この場合、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電気負荷に適切な電圧印加を可能とする制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、内燃機関と、前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行う発電機と、電気負荷と、蓄電池と、前記発電機に対して、前記電気負荷及び前記蓄電池が並列接続された電気経路において前記発電機との接続点よりも前記蓄電池側に設けられるスイッチと、を備えた車載電源システムに適用される制御装置において、前記発電機の発電電圧を取得する発電電圧取得部と、前記電気負荷の要求電圧を取得する要求電圧取得部と、前記スイッチを制御する電源制御部と、を備え、前記電源制御部は、前記発電機が前記内燃機関の出力トルクを利用して発電を行っている場合、前記発電電圧と前記要求電圧との比較に基づき、前記発電機と前記蓄電池との間の通電及び通電遮断を切り替えるように前記スイッチを制御することとした。
【0007】
発電機に対して電気負荷と蓄電池とが並列に接続されている電気回路において、発電機に対して電気負荷と蓄電池とが共に通電している場合、発電機と蓄電池との間の通電が遮断されている場合と比較して、電気回路における合成抵抗が異なる。すなわち、発電電流が同じであっても、蓄電池への通電及び通電遮断を制御することにより、発電電圧を変化させることができる。そこで、発電電圧と要求電圧との比較に基づき、発電機と蓄電池との間の通電及び通電遮断を切り替えて、発電電圧を適切に変化させることとした。これにより、昇圧回路等を設けなくても、電気負荷への印加電圧を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車載電源システムを示す電気回路図。
図2】エンジンの性能曲線を示す図。
図3】スイッチの接続状態の変化を示す回路図。
図4】電源制御処理を示すフローチャート。
図5】発電電圧の変化を示すタイムチャート。
図6】本実施形態を採用した場合における発電電圧の変化を示すタイムチャート。
図7】第2実施形態における車載電源システムを示す電気回路図。
図8】第2実施形態におけるスイッチの接続状態の変化を示す回路図。
図9】別例における電源制御処理を示すフローチャート。
図10】別例における車載電源システムを示す電気回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、内燃機関としてのエンジン200を駆動源として走行する車両において、当該車両の各種機器に電力を供給する車載電源システム100に適用される制御装置を具体化するものとしている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、車載電源システム100は、第1蓄電池としてのリチウムイオン蓄電池11と、第2蓄電池としての鉛蓄電池12と、を有する2電源システムであり、各蓄電池11,12からは各種電気負荷への給電が可能となっている。
【0011】
鉛蓄電池12は周知の汎用蓄電池である。これに対し、リチウムイオン蓄電池11は、鉛蓄電池12に比べて、充放電における電力損失が少なく、出力密度、及びエネルギ密度の高い高密度蓄電池である。リチウムイオン蓄電池11は、鉛蓄電池12に比べて充放電時のエネルギ効率が高い蓄電池であるとよい。また、鉛蓄電池12は、リチウムイオン蓄電池11よりも蓄電容量が大きい蓄電池である。また、リチウムイオン蓄電池11は、鉛蓄電池12と比較して、内部抵抗の小さい蓄電池である。なお、エネルギ効率が高い場合、一般的に内部抵抗が小さくなる傾向がある。また、リチウムイオン蓄電池11は、それぞれ複数の単電池を有してなる組電池として構成されている。これら各蓄電池11,12の定格電圧はいずれも同じであり、例えば12Vである。
【0012】
図示による具体的な説明は割愛するが、リチウムイオン蓄電池11は、収容ケースに収容されて基板一体の電池ユニットUとして構成されている。図1では、電池ユニットUを破線で囲んで示す。電池ユニットUは、外部端子P1,P2を有しており、このうち外部端子P1に、鉛蓄電池12、スタータ13、ブロワモータ14、及びオルタネータ20が接続され、外部端子P2に電気負荷15が接続されている。
【0013】
スタータ13は、エンジン200を始動させる際に用いられる。スタータ13は、例えば、モータによるピニオンギアの回転駆動と、ピニオンギアの押出しとを独立して制御可能なタンデム式のものである。
【0014】
電気負荷15には、供給電力の電圧が一定、又は所定範囲内で変動することが要求される定電圧負荷が含まれる。定電圧負荷は被保護負荷ともいえる。定電圧負荷の具体例としては、ナビゲーション装置やオーディオ装置、メータ装置、エンジンECU等の各種ECUが挙げられる。この場合、供給電力の電圧変動が抑えられることで、上記各装置において不要なリセット等が生じることが抑制され、安定動作が実現可能となっている。電気負荷15として、電動ステアリング装置やブレーキ装置等の走行系アクチュエータが含まれていてもよい。また、電気負荷15には、定電圧負荷以外の一般的な電気負荷が含まれていてもよい。例えば、シートヒータやリヤウインドウのデフロスタ用ヒータ等が挙げられる。なお、電気負荷15へ供給される電圧は、各蓄電池11,12の定格電圧以下である。
【0015】
ブロワモータ14は、送風のために用いられるモータである。ブロワモータ14は、図示しないブロワファンに連結されており、オルタネータ20又は蓄電池11,12から供給された電力に基づき駆動する。ブロワモータ14の回転数は、ブロワモータ14に印加される電圧に依存し、印加電圧によって、回転数が増減する。そして、ブロワモータ14の回転数が増減すると、それに伴い風量も小さくなる。このため、ブロワモータ14は、所定の要求電圧を印加させる必要がある電気負荷に相当する。ブロワモータ14を適切に動かすために必要な電圧は、駆動状態によって異なる。つまり、ブロワモータ14がオンオフされているか否か、及び風量などによって異なる。なお、ブロワモータ14を適切に動かすために必要な電圧の最大値は、蓄電池11,12の定格電圧(12V)よりも高く、14Vとなっている。
【0016】
発電機としてのオルタネータ20は、エンジン200のエンジン出力軸と機械的に連結されている。オルタネータ20は、エンジン出力軸の駆動エネルギによる発電(燃料発電)を行う発電機能を備えている。また、オルタネータ20は、車軸の回転エネルギ(車両の運動エネルギ)による発電(回生発電)を実行可能に構成されていてもよい。なお、発電機として、オルタネータ20の代わりに、回転電機を採用してもよい。回転電機としては、例えば、3相交流モータや電力変換装置としてのインバータを有するモータ機能付き発電機、具体的には、機電一体型のISG(Integrated Starter Generator)を採用してもよい。
【0017】
次に、電池ユニットUについて説明する。電池ユニットUには、ユニット内電気経路として、各外部端子P1,P2を繋ぐ電気経路L1と、電気経路L1上の接続点N1とリチウムイオン蓄電池11とを繋ぐ電気経路L2とが設けられている。このうち電気経路L1に第2スイッチとしてのスイッチSW2が設けられ、電気経路L2に第1スイッチとしてのスイッチSW1が設けられている。
【0018】
図1に示すように、車載電源システム100では、オルタネータ20に対して、鉛蓄電池12と、ブロワモータ14と、リチウムイオン蓄電池11とが並列に接続されている。また、鉛蓄電池12と、ブロワモータ14と、リチウムイオン蓄電池11とが並列に接続されている電気経路L3において、オルタネータ20が接続される接続点N2よりもリチウムイオン蓄電池11の側に、スイッチSW1,SW2が設けられている。また、オルタネータ20は、鉛蓄電池12に対して常時通電可能に構成されており、オルタネータ20と鉛蓄電池12との間の通電が遮断されることはない。つまり、オルタネータ20と鉛蓄電池12との間にスイッチが設けられていない。同様に、オルタネータ20は、ブロワモータ14に対して常時通電可能に構成されており、オルタネータ20とブロワモータ14との間の通電が遮断されることはない。また、鉛蓄電池12は、ブロワモータ14に対して常時通電可能に構成されており、鉛蓄電池12とブロワモータ14との間の通電が遮断されることはない。
【0019】
また、車載電源システム100は、制御装置としてのECU50を備えている。ECU50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。このECU50は、各種情報を取得可能に構成されている。例えば、ECU50は、アクセル操作量を検出するアクセルセンサや、ブレーキペダルのブレーキ操作量を検出するブレーキセンサなど、各種センサからドライバ操作情報を取得(入力)する。また、ECU50は、車速センサなどの各種センサから、車両に関する情報(車速など)を取得する。また、ECU50は、各蓄電池11,12の蓄電状態(SOC:State Of Charge)を取得する。
【0020】
また、ECU50は、オルタネータ20の発電電圧を検出する電圧検出回路21aから検出された発電電圧を取得する。本実施形態において、電圧検出回路21aの一端は、鉛蓄電池12とオルタネータ20との間に接続され、他端は接地されている。つまり、電圧検出回路21aは、電気経路L3上における電圧を検出し、また、鉛蓄電池12の端子電圧を検出しているともいえる。なお、オルタネータ20の発電電圧を検出することができるのであれば、電圧検出回路21aをどこに接続してもよい。例えば、電気経路L3上のいずれかに接続してもよい。
【0021】
また、ECU50は、オルタネータ20の発電電流を検出する電流検出回路21bから検出された発電電流を取得する。電流検出回路21bは、スイッチSW2と並列となるように接続されており、スイッチSW2を通過する電流、すなわち電気経路L1を流れる電流が検出されるようになっている。なお、オルタネータ20の発電電流を検出することができるのであれば、電流検出回路21bをどこに接続してもよい。例えば、スイッチSW2がオン状態である場合のみ検出するのであれば、スイッチSW1に並列に接続してもよい。
【0022】
そして、ECU50は、取得した各種情報に基づき、各種制御を実行する。例えば、ECU50は、各蓄電池11,12のSOCに基づき、スイッチSW1~SW2の状態(オン、オフ)について制御する。また、例えば、ECU50は、取得した発電電圧及び発電電流などに基づいて、オルタネータ20を制御する。また、ECU50は、車速やドライバ操作情報などに基づいて、エンジン200を制御する。
【0023】
エンジン200を制御する際、ECU50は、エンジン効率を考慮して、エンジン200の運転時におけるエンジン動作点を調整可能としている。具体的には、ECU50は、エンジン動作点が、エンジン効率特性において最高効率点を含む所定の高効率領域に対していずれにあるかに基づいて、エンジン200の出力トルクの増減を行う。
【0024】
ここで、図2にはエンジン効率特性のマップを示している。図2では、エンジン回転速度(rpm)と、エンジン200の出力トルク(Nm)と、をパラメータとして、エンジン200の性能曲線(トルク曲線)が定められる。それとともに、図2では、各領域でのエンジン効率の大きさが定められており、エンジン効率を同じにする領域が等高線にて示されている。なお、エンジン効率特性は等燃費曲線を表した特性でもある。このうち、最高効率点を含む領域として高効率領域F0が規定されており、その高効率領域F0から遠ざかるほど、エンジン効率が低下するような関係が定められている。
【0025】
例えば、エンジン動作点が高効率領域F0よりも低速側の点Aである場合には、出力トルクの増加が実施されることで、エンジン動作点が高効率領域F0に近づき、高効率領域F0内でエンジン200を運転させることが可能となる。出力トルクを増加させる際、余剰となる出力トルク(車両走行等に利用されない出力トルク)は、オルタネータ20の発電に利用される。すなわち、ECU50は、オルタネータ20を制御することにより、オルタネータ20による負荷を増加させて、発電電流を増加させる。
【0026】
この発電電力は、蓄電池11,12に充電される、若しくは電気負荷15等に供給されるため、余剰となる出力トルクは、無駄にならない。したがって、ECU50は、エンジン動作点が高効率領域F0よりも低速側の点Aである場合には、出力トルクの増加を実施し、エンジン200を高効率(低燃費)で運転させる。なお、以下では、エンジン200の出力トルクのうち、オルタネータ20の発電に利用される出力トルクを発電トルクと示し、それ以外の出力トルク、例えば、車両走行に必要とされるトルク等をまとめて駆動トルクと示す。
【0027】
一方、エンジン動作点が高効率領域F0よりも高速側の点Bである場合には、出力トルクの減少が実施されることで、エンジン動作点が高効率領域F0に近づき、高効率領域F0内でエンジン200を運転させることが可能となる。出力トルクを減少させる場合、駆動トルクを減少させることはできないため、発電トルクを減少させることとなる。つまり、ECU50は、オルタネータ20を制御することにより、オルタネータ20による負荷を減少させて、発電電流を減少させる。
【0028】
したがって、エンジン動作点が高効率領域F0よりも高速側の点Bである場合には、発電トルクがゼロに至るまで、出力トルクの減少を実施し、エンジン動作点が高効率領域F0に近づかせるように制御することがエンジン効率の観点においては望ましい。なお、発電トルクがゼロに達した場合には、駆動トルクに影響するため、それ以上出力トルクを減少させない(減少させることができない)。
【0029】
以上により、本実施形態において、ECU50は、エンジン200の出力トルク及びエンジン回転速度により特定される燃料消費効率(燃費効率、すなわち、エンジン効率)に基づき、出力トルクを制御する内燃機関制御部54を備えるといえる。また、ECU50は、エンジン200の出力トルク及びエンジン回転速度により特定される燃料消費効率に基づき、出力トルクのうち、オルタネータ20により利用される発電トルクを制御する発電機制御部を備えるといえる。
【0030】
ところで、発電電力が減少した場合、若しくは発電されない場合であっても、蓄電池11,12から電気負荷15などに電力が供給される。このため、蓄電池11,12の放電電圧(定格電圧)以下の電圧しか必要としない電気負荷15やスタータ13であれば、問題なく駆動させることができる。
【0031】
しかしながら、蓄電池11,12の放電電圧よりも大きな電圧を要求する電気負荷が存在し、当該電気負荷が駆動している場合、問題となる。例えば、ブロワモータ14が駆動している場合に、その駆動状態により、適切に駆動させるために必要な必要電圧が蓄電池11,12の放電電圧よりも大きい場合がある。この場合、ブロワモータ14の必要電圧を考慮せずに、エンジン効率のみを優先して出力トルクを減少させると、発電電圧が必要電圧を下回って、ブロワモータ14の動作が不安定となり、ドライバに不快感を与える可能性がある。
【0032】
より詳しく説明すると、出力トルクの減少に伴い発電トルクを減少させた場合、オルタネータ20の発電電流が減少する。一方、発電電流が減少しても、接続状態などを変更しない限り、短期間で、車載電源システム100の電気回路における合成抵抗及び蓄電池11,12の放電電圧は変化しない。このため、発電電流が減少することにより、ブロワモータ14への印加電圧(すなわち、発電電圧)が減少することとなる。なお、車載電源システム100の電気回路における合成抵抗は、蓄電池11,12の内部抵抗、ブロワモータ14等の各電気負荷における抵抗により決定される。ブロワモータ14への印加電圧(つまり、発電電圧)が、必要電圧を下回ると、前述したように、風量が弱くなるなど、ブロワモータ14の動作が不安定となり、ドライバに不快感を与える可能性がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、オルタネータ20への必要電圧を満たしつつ、エンジン効率を向上させるため、ECU50に以下のような機能を備えることとした。すなわち、ECU50は、図1に示すように、発電電圧取得部51、要求電圧取得部52、及び電源制御部53としての機能を備える。各種機能は、CPUが、各種メモリ等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する。なお、これらの機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。以下、これらの機能について詳しく説明する。
【0034】
発電電圧取得部51としてのECU50は、オルタネータ20の発電電圧を取得する。より詳しくは、ECU50は、エンジン効率に基づいて出力トルクを決定した後、決定した出力トルクに変更する前に、発電電圧を推定する。そして、ECU50は、推定された発電電圧を取得する。
【0035】
発電電圧の推定方法について説明する。電圧検出回路21aにより検出された現時点(出力トルク変化前)における発電電圧と、出力トルクのうち、発電トルクの変化量をパラメータとして、マップ演算等により、推定すればよい。発電トルクの変化量は、現時点の出力トルクからエンジン効率に基づいて決定された出力トルクを減算することにより、算出される。また、発電電圧の履歴に基づき、発電電圧を推定してもよい。また、発電電圧の推定方法は、これら以外の任意の方法でよい。例えば、これらのパラメータに他のパラメータを加えて、又は他のパラメータに基づいて推定してもよい。具体的には、電流検出回路21bにより検出された発電電流、蓄電池11,12のSOC、ブロワモータ14や電気負荷15の駆動状態、スイッチSW1,SW2のオンオフ状態等の他のパラメータを利用して、発電電圧を推定してもよい。また、各種パラメータに基づき、電気回路の合成抵抗などを算出して、推定してもよい。
【0036】
要求電圧取得部52としてのECU50は、ブロワモータ14から、ブロワモータ14の駆動状態に関する情報を取得する。ブロワモータ14の駆動状態とは、例えば、ブロワモータ14のオンオフ、及び設定された風量等のことである。ECU50は、ブロワモータ14の駆動状態に基づき、マップ演算等を行い、要求電圧を取得する。なお、ECU50は、ブロワモータ14から、ブロワモータ14の要求電圧そのものを取得してもよい。
【0037】
要求電圧は、ブロワモータ14を適切に駆動させるために必要な必要電圧と一致させてもよいし、余裕(マージン)をもって必要電圧よりも高い電圧としてもよい。
【0038】
電源制御部53としてのECU50は、オルタネータ20が発電している場合、発電電圧取得部51により取得された発電電圧と要求電圧取得部52により取得された要求電圧とを比較する。そして、ECU50は、発電電圧と要求電圧との比較に基づき、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間の通電及び通電遮断を切り替えるように、スイッチSW1を制御する。より詳しくは、ECU50は、オルタネータ20が発電を開始する場合、図3(a)に示すように、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させるようにスイッチSW1,SW2を制御する。つまり、スイッチSW1,SW2をオン状態とする。
【0039】
そして、ECU50は、発電中、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させている場合に、発電電圧が要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断するようにスイッチSW1を制御する。つまり、図3(b)に示すように、スイッチSW2をオン状態とする一方、スイッチSW1をオフ状態とする。なお、図示しないが、スイッチSW2をオフ状態とする一方、スイッチSW1をオン状態としてもよい。
【0040】
本実施形態において、ECU50は、発電トルクの変化に基づき発電電圧を推定し、推定した発電電圧と要求電圧とを比較している。このため、ECU50は、発電トルクの変化に伴い、発電電圧が要求電圧より小さくなると予測される場合に、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断するように、スイッチSW1を制御していることとなる。
【0041】
これにより、オルタネータ20から、内部抵抗が低いリチウムイオン蓄電池11への通電が遮断される。一方、オルタネータ20と鉛蓄電池12との間は常時通電可能であるため、オルタネータ20から内部抵抗が高い鉛蓄電池12へ通電は、維持される。
【0042】
この状態に移行することにより、オルタネータ20から各蓄電池11,12への通電が行われている場合と比較して、電気回路における合成抵抗が大きくなる。そして、発電電流が同じである場合、電気回路における合成抵抗が大きくなると、発電電圧は上昇する。よって、スイッチSW1,SW2の状態を切り替えて、電気回路における合成抵抗が大きくすることにより、発電トルクを減少させて発電電流を低下させる場合であっても、発電電圧の低下を抑制することができる。つまり、発電電圧が、要求電圧よりも小さくなることを抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態において、ECU50は、オルタネータ20の発電を開始する場合、原則として、リチウムイオン蓄電池11への充電を行う。ただし、SOC(蓄電状態)が閾値(例えば、80%)以上である場合等、リチウムイオン蓄電池11を充電できない場合には、リチウムイオン蓄電池11への通電を行わなくてもよい。
【0044】
また、本実施形態において、ECU50は、ブロワモータ14が駆動状態(オン状態)である場合には、エンジン200の出力トルクを利用してオルタネータ20に発電(燃料発電)を行わせることとしている。この場合、ECU50は、発電中、発電トルクが所定トルク以下とならないように、発電トルクを制御する。所定トルクは、オルタネータ20からリチウムイオン蓄電池11への通電が遮断された場合であっても、発電電圧が要求電圧以上となるようなトルクであることが望ましい。
【0045】
ここで、ECU50により実行される電源制御処理について図4に示すフローチャートを用いてより詳しく説明する。電源制御処理は、発電中、所定の周期ごとに実行される。
【0046】
ECU50は、エンジン効率(燃費効率)を考慮して、エンジン動作点が高効率領域F0に近づくように、出力トルクを決定する(ステップS101)。ステップS101についてより詳しく説明する。ECU50は、ステップS101において、エンジン200のエンジン回転速度と出力トルクとを取得し、それらのパラメータとしてエンジン動作点を特定する。そして、ECU50は、特定したエンジン動作点が高効率領域F0よりも低速側の点Aである場合には、出力トルクを所定量だけ増加させることを決定する。つまり、発電トルクを所定量だけ増加させることを決定する。
【0047】
一方、ECU50は、特定したエンジン動作点が高効率領域F0よりも高速側の点Bである場合には、出力トルクのうち、発電トルクを所定量だけ減少させることを決定する。出力トルクを減少させる場合、発電トルクが所定トルク以下とならないように、出力トルクを決定する。出力トルクを減少させる場合、発電トルクが所定トルク以下となる場合には、出力トルクを維持することを決定する(減少させない)。また、ECU50は、特定したエンジン動作点が高効率領域F0内である場合には、出力トルクを維持することを決定する。
【0048】
次に、ECU50は、ステップS101において決定された出力トルクが、現在(すなわち、今回の電源制御処理前)における出力トルクに対して、増加するものであるか否かを判定する(ステップS102)。つまり、発電トルクが増加するものであるか否かを判定する。
【0049】
この判定結果が肯定の場合、ECU50は、ステップS101で決定された出力トルクとなるように、エンジン200を制御する(ステップS103)。つまり、出力トルクを増加させる。また、ECU50は、発電トルクが増加するように(エンジン負荷が増えるように)、オルタネータ20を制御する。これにより、オルタネータ20への発電トルクが増加し、発電電流が多くなる。発電電流が多くなる場合、蓄電池11,12を充電するために利用されるため、増加した発電電流が無駄になることはない。そして、ECU50は、電源制御処理を終了する。なお、発電電流が多くなる場合、発電電圧は上昇することとなるが、必要に応じてオルタネータ20の励磁電流等を制御することにより、発電電圧の上昇を抑制してもよい。
【0050】
一方、ステップS102の判定結果が否定の場合、ECU50は、ステップS101において決定された出力トルクが、現在における出力トルクに対して、減少するものであるか否かを判定する(ステップS104)。つまり、発電トルクが減少するものであるか否かを判定する。
【0051】
この判定結果が肯定の場合、ECU50は、発電電圧が要求電圧以上であるか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105について詳しく説明する。ECU50は、ステップS105において、ブロワモータ14の駆動状態に基づき、要求電圧を特定し、特定した要求電圧を取得する。また、ECU50は、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧を入力する。そして、ECU50は、前述したように、検出された発電電圧や、決定された出力トルク等に基づき、当該出力トルクに変化した後における発電電圧を推定して、推定した発電電圧を取得する。そして、ECU50は、取得(推定)した発電電圧が、取得(特定)した要求電圧以上であるか否かを判定する。つまり、ステップS105では、出力トルク(発電トルク)の変化後における発電電圧を推定し、出力トルク変化後において、発電電圧が要求電圧以上であるか否かを判定している。
【0052】
この判定結果が肯定の場合、ECU50は、ステップS101で決定した出力トルクとなるように、エンジン200を制御する(ステップS106)。また、発電トルクを減少させるようにオルタネータ20を制御する。これにより、発電電流を減少させる。この場合、発電トルクを減少させても、発電電圧が要求電圧を下回ることはないと判定されているため、ブロワモータ14の動作が不安定となることがない。そして、ECU50は、電源制御処理を終了する。
【0053】
一方、ステップS105の判定結果が否定の場合、ECU50は、リチウムイオン蓄電池11が充電中であるか否かを判定する(ステップS107)。具体的には、ECU50は、スイッチSW1,SW2の状態に基づいて、オルタネータ20からリチウムイオン蓄電池11への通電が行われているか否かを判定する。すなわち、ECU50は、スイッチSW1及びスイッチSW2が共にオン状態であるか否かを判定する。
【0054】
この判定結果が肯定の場合、ECU50は、スイッチSW1,SW2が切り替え可能であるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108の処理について詳しく説明する。発電電圧が所定の電圧値よりも高い場合、又は発電電流が所定の電流値よりも大きい場合に、図5に示すように、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間の通電を遮断すると、電気回路上に、瞬間的に大きな電圧(サージ電圧)が発生する。瞬間的に大きな電圧が発生すると、電気回路を構成する回路素子に異常が発生する可能性がある。例えば、スイッチSW1,SW2の電圧耐性を超えるような電圧が瞬間的に生じた場合、スイッチSW1,SW2が故障する可能性がある。
【0055】
そこで、ステップS108において、ECU50は、電圧検出回路21aから取得した発電電圧が所定の電圧値以下であって、かつ、電流検出回路21bから取得した発電電流が所定の電流値以下であるか否かを判定する。この判定結果が肯定の場合、ECU50は、リチウムイオン蓄電池11への通電遮断を許可する。つまり、スイッチSW1をオフ状態に切り替えることを許可する。一方、この判定結果が否定の場合、ECU50は、リチウムイオン蓄電池11への通電遮断を禁止する。つまり、スイッチSW1をオフ状態に切り替えることを禁止する。これにより、瞬間的に回路素子や電気負荷の電圧耐性を超えるような大きな発電電圧が生じることを抑制し、回路素子や電気負荷(ECU、オーディオ装置、ナビゲーション装置等)が故障することを抑制する。
【0056】
ステップS108の判定結果が否定の場合、ECU50は、一時的に発電トルクを減少させるため、エンジン200の出力トルクを減少させる(ステップS109)。その際、ECU50は、発電トルクが減少するように、オルタネータ20を制御する。そして、ECU50は、再びステップS108の処理を実行する。すなわち、発電電圧が所定の電圧値以下となって、かつ、発電電流が所定の電流値以下となるまで、エンジン200の出力トルクを減少させて、発電トルクを減少させる。
【0057】
ステップS108の判定結果が肯定の場合、ECU50は、リチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断するように、スイッチSW1を制御する(ステップS110)。これにより、内部抵抗が低いリチウムイオン蓄電池11への通電が遮断される。一方、オルタネータ20から内部抵抗が高い鉛蓄電池12への通電は維持されるため、オルタネータ20から蓄電池11,12への通電が行われている場合と比較して、電気回路における合成抵抗が大きくなる。つまり、発電電圧が上昇する。
【0058】
次に、ECU50は、リチウムイオン蓄電池11への通電が遮断された状態で、ステップS101で決定された出力トルクに変更した場合に、発電電圧が要求電圧以上であるか否かを判定する(ステップS111)。ステップS111について詳しく説明する。ECU50は、リチウムイオン蓄電池11への通電が遮断された状態において、ステップS101で決定された出力トルクと、スイッチSW1をオフした後に検出された発電電圧に基づき、前述同様、出力トルクを変化させた後における発電電圧を推定し、取得する。なお、スイッチSW1をオフしたことに基づく発電電圧の上昇量、及び出力トルクの低下に基づく発電電圧の低下量を推定し、スイッチSW1をオフする前に検出された発電電圧に基づいて、出力トルクの変化後の発電電圧を推定してもよい。そして、ECU50は、取得(推定)した発電電圧が、取得した要求電圧以上であるか否かを判定する。
【0059】
ステップS111の判定結果が肯定の場合、ECU50は、ステップS106に移行し、決定した出力トルクとなるように、エンジン200を制御する。
【0060】
一方、ステップS111又はステップS107の判定結果が否定の場合、ECU50は、現状の出力トルクを維持させ、そのまま電源制御処理を終了する。すなわち、出力トルクを下げることはない。また、ステップS104の判定結果が否定の場合、すなわち、出力トルクが変化しない場合、ECU50は、そのまま電源制御処理を終了する。
【0061】
上記電源制御処理を実行した場合における作用について図6に基づいて説明する。図6において、時点T0では、蓄電池11,12に対して充電していることを前提として説明する。また、時点T0では、図3(a)に示すように、スイッチSW1,SW2がオン状態となっており、オルタネータ20と各蓄電池11,12との間がそれぞれ通電している状態であることを前提として説明する。
【0062】
時点T0から車速(すなわち、エンジン回転速度)が上昇し、時点T1に達すると、エンジン効率の観点に基づき、出力トルクの低下が決定される。出力トルクの低下が決定されると、それに伴い、発電トルクが減少する。これにより、オルタネータ20の発電電流が低下することとなる。
【0063】
しかしながら、時点T1において、図3(b)に示すように、スイッチSW1がオフされ、内部抵抗の低いリチウムイオン蓄電池11への通電が遮断される(充電が停止される)。一方、内部抵抗の高い鉛蓄電池12への通電は維持されるため、電気回路における合成抵抗が上昇する。これにより、時点T1において、発電トルクの低下に伴い発電電流が低下しても、発電電圧が低下することを抑制することができる。よって、ブロワモータ14への印加電圧が要求電圧を下回ることを抑制できる。すなわち、風量が一定となる。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0065】
オルタネータ20及びブロワモータ14が電気的に接続されている電気回路において、内部抵抗を有する蓄電池11,12の通電及び通電遮断を制御することにより、電気回路における合成抵抗を変化させることができる。つまり、昇圧回路等を用いなくても、スイッチSW1,SW2を切り替えることにより、発電電圧を上昇させることが可能となる。そこで、ECU50は、出力トルクを利用して発電を行っている場合、発電電圧と要求電圧との比較に基づき、オルタネータ20と蓄電池11,12との間の通電及び通電遮断を切り替えるように、スイッチSW1,SW2を制御するようにした。これにより、昇圧回路等を設けなくても、電気負荷への印加電圧を適切に制御することが可能となる。つまり、エンジン効率を考慮して、出力トルクを減少させた場合であっても、スイッチSW1,SW2を制御することにより、発電電圧の低下を抑制することができる。これにより、ブロワモータ14へ適切に電圧を印加することができ、動作が不安定となることを抑制できる。
【0066】
また、ECU50は、出力トルクを利用して発電を行う場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させるようにスイッチSW1,SW2を制御する。そして、ECU50は、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させている場合に、発電電圧が要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断させるように、スイッチSW1,SW2を制御する。このように、発電電圧が要求電圧以上である場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させている。そして、各蓄電池11,12が共に接続されている場合、内部抵抗の低いリチウムイオン蓄電池11へより大きな電流が流れる。つまり、充電量が多くなる。そして、内部抵抗が低いリチウムイオン蓄電池11は、鉛蓄電池12と比較して、エネルギ効率がよい蓄電池である。したがって、このように制御することにより、発電電圧が要求電圧以上である場合、効率よく充電を行うことができる。
【0067】
発電電圧が所定の電圧値よりも大きい場合、又は発電電流が所定の電流値よりも大きい場合、スイッチを切り替えると、切り替え時に瞬間的に大きな電圧(サージ電圧)が生じ、スイッチ等に異常が発生する可能性がある。そこで、ステップS108において示すように、ECU50は、発電電圧が所定の電圧値以下であって、かつ、発電電流が所定の電流値以下である場合に、スイッチSW1,SW2の切り替えを許可することとした。これにより、スイッチSW1,SW2等の回路素子の異常を抑制できる。
【0068】
そして、ECU50は、発電電圧が所定の電圧値よりも大きい場合、又は発電電流が所定の電流値よりも大きい場合、ステップS109において、エンジン200の出力トルクを低下させることを指示する。このため、一時的に発電トルクを減少させることにより、発電電圧を所定の電圧値以下とし、かつ、発電電流が所定の電流値以下として、スイッチSW1,SW2を適切に切り替え、その後に、発電電圧を高くすることが可能となる。
【0069】
ECU50は、エンジン効率を考慮して、エンジン200の出力トルク及びエンジン回転速度により特定されるエンジン動作点を調整すべく、出力トルクを制御する。これにより、ブロワモータ14への要求電圧を満たしつつ、燃費効率を向上させることができる。
【0070】
ECU50は、出力トルクを変化させる前、決定された出力トルク等に基づいて、発電電圧を推定し、推定した発電電圧と要求電圧との比較に基づき、スイッチSW1,SW2を制御する。つまり、ECU50は、出力トルクの変化に伴い、発電電圧が要求電圧より小さくなると予測される場合に、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断するように、スイッチSW1,SW2を制御している。そして、ECU50は、スイッチSW1,SW2の制御が行われた後、決定された出力トルクとなるようにエンジン200を制御している。すなわち、出力トルクを減少させて発電電圧が要求電圧よりも小さくなる前に、発電電圧を上昇させている。このため、発電電圧が要求電圧を一時的に下回ることを抑制することができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の制御装置について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。第2実施形態では、図7に示すように、外部端子P2にブロワモータ14及びオルタネータ20を接続している。
【0072】
また、第2実施形態において、ECU50は、オルタネータ20の発電を開始する場合、オルタネータ20からリチウムイオン蓄電池11への通電を行う一方、オルタネータ20から鉛蓄電池12への通電を遮断するように、スイッチSW1,SW2を制御する。つまり、図8(a)に示すように、スイッチSW2をオフ状態にする一方、スイッチSW1をオン状態にする。
【0073】
また、第2実施形態のステップS110において、ECU50は、オルタネータ20から鉛蓄電池12への通電を行う一方、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断するようにスイッチSW1、SW2を制御する。つまり、図8(b)に示すように、スイッチSW2をオン状態にする一方、スイッチSW1をオフ状態にする。
【0074】
これにより、内部抵抗が低いリチウムイオン蓄電池11への通電を遮断する一方で、内部抵抗が高い鉛蓄電池12へ通電を開始することができる。つまり、オルタネータ20からリチウムイオン蓄電池11への通電が行われている場合と比較して、電気回路における合成抵抗を大きくして、発電電圧を上昇させることができる。
【0075】
第2実施形態では、以下のような優れた効果を得ることができる。
【0076】
第2実施形態において、ECU50は、出力トルクを利用して発電を行う場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間を通電させるようにスイッチSW1,SW2を制御する。発電電圧が要求電圧以上である場合、エネルギ効率がよいリチウムイオン蓄電池11だけを対象として充電を行うため、各蓄電池11,12に対して充電を行う場合と比較して、効率をよくすることができる。
【0077】
そして、ECU50は、発電電圧が要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ20とリチウムイオン蓄電池11との間における通電を遮断させるとともに、オルタネータ20と鉛蓄電池12との間を通電させるようにスイッチSW1,SW2を制御する。このため、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、エンジン効率に基づき出力トルクを減少させても、ブロワモータ14の要求電圧を満たすように発電電圧の電圧低下を抑制できる。また、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0078】
なお、第2実施形態において、オルタネータ20の発電を開始する場合、各蓄電池11,12に充電するようにしてもよい。つまり、スイッチSW1,SW2を共にオン状態にしてもよい。
【0079】
(他の実施形態)
上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0080】
・上記実施形態において、ECU50は、出力トルクが変化した後の発電電圧を推定し、推定した発電電圧と要求電圧とを比較した。この別例として、出力トルクを実際に変化させた後、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧を取得し、当該発電電圧と要求電圧との比較に基づき、スイッチSW1,SW2を制御してもよい。
【0081】
図9に基づき詳しく説明する。図9に、この別例における電源制御処理のフローチャートを示す。まず、ECU50は、ステップS101と同様に、エンジン効率に基づき、出力トルクを決定する(ステップS201)。そして、ECU50は、決定された出力トルクとなるように、エンジン200を制御する(ステップS202)。
【0082】
次に、ECU50は、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧を取得し、取得した発電電圧が、要求電圧以上であるか否かを判定する(ステップS203)。なお、要求電圧の取得方法は、上記実施形態と同様である。
【0083】
ステップS203の判定結果が肯定の場合、ECU50は、別例における電源制御処理を終了する。一方、この判定結果が否定の場合、ECU50は、ステップS204~S208の処理を実施する。ステップS204~208の処理は、ステップS107~S111は同様であるため、説明を省略する。
【0084】
また、ステップS204又はステップS208の判定結果が否定の場合、つまり、リチウムイオン蓄電池11への通電遮断を行っても発電電圧が要求電圧よりも小さい場合、ECU50は、出力トルクの増加(上昇)を指示する(ステップS209)。また、ECU50は、発電トルクが増加するように、オルタネータ20を制御する。これにより、エンジン効率を考慮して出力トルクを減少させ、一時的に発電電圧が要求電圧よりも小さくなったとしても、出力トルクを増加させて、早期に発電電圧を上昇させ、要求電圧以上とすることができる。このため、ブロワモータ14に対して適切な電圧を印加することができる。このため、ECU50は、指示部としての機能を備える。
【0085】
・上記実施形態では、出力トルクを減少させる場合に、ECU50は、発電電圧と要求電圧との比較に基づき、スイッチSW1,SW2を制御していた。この別例として、出力トルクを変化させるか否かに関わらず、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧と要求電圧とを比較し、発電電圧が要求電圧より小さくなった場合に、リチウムイオン蓄電池11の通電を遮断するように、スイッチSW1,SW2を制御してもよい。これにより、ブロワモータ14の駆動状態により、要求電圧が変化し、要求電圧が発電電圧よりも大きくなったとしても、ECU50は、スイッチSW1,SW2を切り替えることにより、発電電圧を上昇させ、ブロワモータ14に適切な電圧を印加させることができる。
【0086】
・上記実施形態において、ECU50に、発電電圧が要求電圧よりも大きい場合、要求電圧に応じて発電電圧を調整すべく、オルタネータ20への励磁電流を調整する発電機制御部を備えてもよい。これにより、要求電圧に応じた発電電圧を常に印加することができる。
【0087】
・上記実施形態において、所定の要求電圧を印加させる必要がある電気負荷として、ブロワモータ14以外の装置を採用してもよい。例えば、ヘッドライトなど、電圧によって輝度が変化する照明装置であってもよい。また、例えば、空調装置であってもよい。
【0088】
・上記実施形態において、ECU50の機能を、複数のECUに分けて備えさせてもよい。例えば、発電電圧取得部51、要求電圧取得部52及び電源制御部53を別のECUに備えてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、ECU50は、ブロワモータ14が駆動状態(オン状態)である場合に、オルタネータ20に発電(燃料発電)を行わせていたが、要求電圧に基づき、発電を行わせてもよい。例えば、要求電圧が、蓄電池11,12の放電電圧(又は定格電圧)以上である場合に、発電を行わせるようにしてもよい。
【0090】
・上記実施形態において、発電トルクの下限が、オルタネータ20からリチウムイオン蓄電池11への通電が遮断された状態において、発電電圧が要求電圧以上となるようなトルクである場合、ステップS111及びステップS208における処理を省略してもよい。つまり、リチウムイオン蓄電池11への通電が遮断された状態であれば、必ず発電電圧が要求電圧以上となることが事前に定められている場合、通電遮断後に、発電電圧と要求電圧とを比較しなくてもよい。
【0091】
・上記実施形態において、電池ユニットUの構成を変更してもよい。例えば、図10に示すように、電気経路L1,L2に並列となる電気経路L4を設け、電気経路L4にスイッチSW3,SW4を設けてもよい。そして、スイッチSW3とスイッチSW4との間に接続された外部端子P3に電気負荷15を接続し、外部端子P1にスタータ13、鉛蓄電池12及びブロワモータ14を接続し、外部端子P2にオルタネータ20等の発電機を接続してもよい。これにより、蓄電池11,12を選択的に充放電することができる。
【0092】
・上記実施形態のステップS105,S111において、トルク変化後の発電電圧を推定し、推定した発電電圧を比較していたが、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧を要求電圧に対して比較してもよい。この場合、必要電圧よりも高い電圧を要求電圧として設定することが望ましい。これにより、発電電圧が要求電圧よりも小さくなっても、発電電圧が必要電圧よりも小さくなることを抑制し、ブロワモータ14の動作が不安定となることを抑制できる。
【0093】
・上記実施形態では、発電電圧を推定したが、推定しなくてもよい。この場合、ステップS105,S111,S203,S208において、ECU50は、電圧検出回路21aにより検出された発電電圧と、要求電圧とを比較すればよい。
【0094】
・上記実施形態において、電気負荷15を、外部端子P2の側の電気経路に接続していたが、外部端子P1の側の電気経路に接続してもよい。
【符号の説明】
【0095】
11…リチウムイオン蓄電池、12…鉛蓄電池、20…オルタネータ、50…ECU、51…発電電圧取得部、52…要求電圧取得部、53…電源制御部、100…車載電源システム、200…エンジン、N2…接続点、SW1…スイッチ、SW2…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10