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特許7068946ポリマーセメント組成物、硬化物及びコンクリート構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ポリマーセメント組成物、硬化物及びコンクリート構造体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/06 20060101AFI20220510BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 41/48 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C04B28/06
C04B28/04
C04B24/26 A
C04B24/26 C
C04B24/26 D
C04B24/26 G
C04B41/48
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018122928
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020001962
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】宇部興産建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】松野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 将典
(72)【発明者】
【氏名】貫田 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-128599(JP,A)
【文献】特開2007-230805(JP,A)
【文献】特開平08-102312(JP,A)
【文献】特開平06-321593(JP,A)
【文献】特開平03-040978(JP,A)
【文献】特開2010-058997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/06
C04B 28/04
C04B 24/26
C04B 41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントを含有する水硬性成分、細骨材及び樹脂エマルションを含むポリマーセメント組成物であって、
前記樹脂エマルションが、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有し、
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が-45~-5℃であり、
前記ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が3000~30000であり、
前記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン、及びプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位を有し、
前記ポリオレフィン系樹脂の融点が70~135℃であり、
前記水硬性成分の含有量が樹脂固形分100質量部に対して30~130質量部であり、
前記ポリオレフィン系樹脂の含有量が樹脂固形分全量を基準として5~40質量%である、ポリマーセメント組成物。
【請求項2】
前記水硬性成分がポルトランドセメントを更に含有する、請求項1に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリマーセメント組成物の硬化物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリマーセメント組成物の硬化物を表面の少なくとも一部に備える、コンクリート構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーセメント組成物、硬化物及びコンクリート構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを保護する目的で、ポリマーセメント系材料をコンクリートの表面に被覆する工法(表面被覆工法)が知られている。特許文献1では、特定のガラス転移温度を有するアクリル系ポリマーが添加されたセメントモルタル材料が開示されている。
【0003】
特許文献2では、ポリマーセメントモルタル組成物を塗布及び乾燥した後に、シリコーン変性アクリル共重合体及びアクリル樹脂を含有する塗料を塗工する布基礎表面仕上げ工法が開示されている。特許文献3では、アルミナセメント、エマルション及びワックスサスペンションを含むポリマーセメント組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-143824号
【文献】特開2004-225375号
【文献】特開2005-220009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアクリル系樹脂を含むセメントモルタル材料等は、当該材料を用いて形成された硬化物の表面に、大気中の粉塵等の微粒子を含む雨、及び降雨時の泥はね等によって汚れが付着すると、その汚れを簡単には洗い流すことができず、施工当初の色合いを保つことが困難である。
【0006】
本発明は、耐汚染性に優れる硬化物を形成することが可能なポリマーセメント組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、耐汚染性に優れる硬化物を備えるコンクリート構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、アルミナセメントを含有する水硬性成分、細骨材及び樹脂エマルションを含むポリマーセメント組成物であって、上記樹脂エマルションが、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有し、上記アクリル系樹脂のガラス転移温度が-45~-5℃であり、上記ポリオレフィン系樹脂の融点が70~135℃であり、上記水硬性成分の含有量が樹脂固形分100質量部に対して30~130質量部であり、上記ポリオレフィン系樹脂の含有量が樹脂固形分全量を基準として5~40質量%である、組成物を提供する。
【0008】
上記ポリマーセメント組成物は、アルミナセメント及び細骨材に対して、特定のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂、及び特定の融点を有するポリオレフィン系樹脂を特定の割合で含有する樹脂エマルションを混合したものであり、このような組成とすることによって、アクリル系樹脂を含みながらも、形成される硬化物を耐汚染性に優れたものとすることができる。
【0009】
上記ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が3000~30000であってよい。ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることによって、得られる硬化物の表面の耐汚染性をより向上させることができる。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂が、エチレン、プロピレン、イソブテン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン及びクロロプレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位を有してもよい。ポリオレフィン系樹脂が上記構造単位を有することによって、上記ポリマーセメント組成物の硬化物の耐汚染性をより向上させることができる。
【0011】
上記水硬性成分が、ポルトランドセメントを更に含有してもよい。ポルトランドセメントを含有することによって、ポリマーセメント組成物の速硬性と適度な可使時間とをより高水準で両立することができる。
【0012】
本発明の一側面は、上述のポリマーセメント組成物の硬化物を提供する。
【0013】
上記硬化物は、上述のポリマーセメント組成物を用いて形成されることから、耐汚染性に優れる。
【0014】
本発明の一側面は、上述のポリマーセメント組成物の硬化物を表面の少なくとも一部に備えるコンクリート構造体を提供する。
【0015】
上記コンクリート構造体は、上述のポリマーセメント組成物を用いて形成される硬化物を構造体表面の少なくとも一部に備えることから、大気中に浮遊する粉塵等の微粒子を含む雨に接触したり、降雨時に生じる泥はねに接触したりしても、汚れが付きづらく、また、汚れが付着したとしても、洗浄によって容易に汚れを除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐汚染性に優れる硬化物を形成することが可能なポリマーセメント組成物を提供することができる。本発明によればまた、耐汚染性に優れる硬化物を備えるコンクリート構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0018】
ポリマーセメント組成物の一実施形態は、アルミナセメントを含有する水硬性成分、細骨材及び樹脂エマルションを含む。上記樹脂エマルションが、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含み、上記アクリル系樹脂のガラス転移温度が-45~-5℃であり、上記ポリオレフィン系樹脂の融点が70~135℃である。本実施形態のポリマーセメント組成物は、上記水硬性成分の含有量が樹脂固形分100質量部に対して30~130質量部であり、上記ポリオレフィン系樹脂の含有量が樹脂固形分全量を基準として5~40質量%である。
【0019】
上記ポリマーセメント組成物は、アルミナセメント及び細骨材に対して、特定のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂、及び特定の融点を有するポリオレフィン系樹脂を特定割合で含有する樹脂エマルションを混合したものであり、このような組成とすることによって、アクリル系樹脂を含みながらも、形成される硬化物を耐汚染性に優れたものとすることができる。
【0020】
水硬性成分(以下、(A)成分ということもある)はアルミナセメントを含有する。水硬性成分は、アルミナセメントのみからなってもよく、またアルミナセメントの他に、例えば、ポルトランドセメント及び石膏等を更に含有してもよい。水硬性成分は、ポルトランドセメントを更に含有することが好ましい。水硬性成分が、ポルトランドセメントを含有することによって、ポリマーセメント組成物の速硬性と適度な可使時間とをより高水準で両立することができる。
【0021】
アルミナセメントは、潜在的に急硬性を有しており、硬化後は耐化学薬品性、及び耐火性に優れた硬化物を与える。アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られており、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)である。アルミナセメントは、強度及び着色性の面からはCA成分が多く、且つ鉄アルミン酸四カルシウム(CAF)等の成分が少ないアルミナセメントを用いてもよい。アルミナセメントは、市販されているものを使用してもよい。アルミナセメントの化学成分の質量割合は、JIS R 5202に準拠して決定することができる。
【0022】
アルミナセメントのブレーン比表面積は、例えば、2000~5000cm/g、2500~4500cm/g、又は3000~4000cm/gであってよい。アルミナセメントのブレーン比表面積が上記範囲内であることによって、ポリマーセメント組成物の速硬性と適度な可使時間とを両立することができる。アルミナセメントのブレーン比表面積は、例えば、分級及び破砕等によって調整することができる。本明細書におけるセメントの「ブレーン比表面積」は、JIS R 2521:1995に準拠して決定することができる。
【0023】
アルミナセメントの平均粒子径は、例えば、1~35μm、5~30μm、7~25μm又は10~22μmであってよい。アルミナセメントの平均粒子径が上記範囲内であることによって、速硬性と適度な可使時間とを両立することができる。本明細書における「平均粒子径」は、レーザー回折法によって測定され、体積累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合の体積累積が50%となる粒子径に対応する値を意味する。レーザー回折法による測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業製、製品名:LMS-30)を用いることができる。
【0024】
アルミナセメントの粒子径は、例えば、1~150μm、1~96μm又は1~90μmであってよい。アルミナセメントにおいて粒子径が上記範囲内である粒子群(例えば、1~96μmである粒子群)の割合が、アルミナセメント全量を基準として、50質量%以上であってよく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。アルミナセメントにおいて粒子径が上記範囲内である粒子群の割合が50質量%以上であることによって、速硬性と適度な可使時間とを両立することができる。本明細書における「粒子径」は、レーザー回折法によって測定される値を意味する。また所定の粒子径を有する化合物の割合は、レーザー回折法によって測定される粒度分布から決定することができる。
【0025】
ポルトランドセメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、及び白色ポルトランドセメント、並びに、上記ポルトランドセメントの少なくとも一部を、高炉スラグ、フライアッシュ、及びシリカフューム等で置換した混合セメント等を用いることができる。ポルトランドセメントは、上記の中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポルトランドセメントは、市販されているものを使用してもよい。ポルトランドセメントの化学成分の質量割合は、JIS R 5202に準じて決定することができる。
【0026】
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、例えば、2000~5000cm/g、2500~4500cm/g、又は3000~4000cm/gであってよい。ポルトランドセメントのブレーン比表面積が上記範囲内であることによって、ポリマーセメント組成物の速硬性と適度な可使時間とを両立することができる。ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、例えば、分級及び破砕等によって調整することができる。
【0027】
ポルトランドセメントの平均粒子径は、例えば、1~45μm、5~30μm、10~25μm又は10~20μmであってよい。ポルトランドセメントの平均粒子径が上記範囲内であることによって、速硬性と適度な可使時間とを両立することができる。ポルトランドセメントは、粒子径が1~45μmである粒子群が主成分であるものを用いてもよい。
【0028】
石膏としては、例えば、無水石膏、半水石膏、及び二水石膏等が挙げられる。石膏はその種類を問わず、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。石膏は、市販されているものを使用してもよい。石膏は、ポリマーセメント組成物と水とを混練して得られるスラリーが硬化した後の寸法安定性を保持することができる。
【0029】
石膏のブレーン比表面積は、例えば、3000~7000cm/g、3500~6500cm/g、4000~6000cm/g、又は4000~5500cm/gであってよい。石膏のブレーン比表面積が上記範囲内であることによって、ポリマーセメント組成物の寸法安定性を保持することができる。石膏のブレーン比表面積は、例えば、分級及び破砕等によって調整することができる。
【0030】
石膏の平均粒子径は、例えば、1~100μm、1~50μm、1~30μm、1~15μm又は1~10μmであってよい。石膏の平均粒子径が上記範囲内であることによって、寸法安定性を保持することができる。石膏は、粒子径が1~100μmである粒子群が主成分であるものを用いてもよい。
【0031】
(A)成分の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、30~130質量部である。(A)成分の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、例えば、30~100質量部、35~90質量部、40~85質量部、又は50~80質量部であってよい。(A)成分におけるアルミナセメントの含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、20~130質量部であり、30~100質量部、35~90質量部、又は40~83質量部であってよい。アルミナセメントの含有量が上記範囲内であることによって、ポリマーセメント組成物を施工した後の乾燥を促進させ、得られる硬化物の耐水性及び強度をより高水準で両立することができる。
【0032】
(A)成分が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏を含有する場合、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計を100質量%として、例えば、アルミナセメントの含有量が5~90質量%、ポルトランドセメントの含有量が5~90質量%及び石膏の含有量が5~50質量%からなる組成であってよく、アルミナセメントの含有量が10~80質量%、ポルトランドセメントの含有量が10~85質量%及び石膏の含有量が6~45質量%からなる組成であってよく、アルミナセメントの含有量が15~70質量%、ポルトランドセメントの含有量が15~70質量%及び石膏の含有量が8~35質量%からなる組成であってよく、又はアルミナセメントの含有量が35~50質量%、ポルトランドセメントの含有量が30~55質量%及び石膏の含有量が10~25質量%からなる組成であってよい。(A)成分が上記組成であることによって、ポリマーセメント組成物の速硬性がより優れる。また(A)成分が上記組成であることによって、低収縮性又は低膨張性を有し、硬化中の体積変化が少ない硬化物を得られ易い。
【0033】
細骨材(以下、(B)成分ということもある)は、例えば、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂等が挙げられる。細骨材は上記の中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。細骨材は、珪砂を含有することが好ましい。細骨材の粒径は、例えば、1000μm以下、32~600μm、53~425μm、又は53~300μmであってよい。細骨材の粒径は、JIS Z 8801で規定される呼び寸法の異なる数個の篩を用いて測定することができる。
【0034】
樹脂エマルション(以下、(C)成分ということもある)は、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する。樹脂エマルションとは、樹脂が分散媒に分散した分散液である。分散媒は、例えば、水であってよい。樹脂エマルションにおける樹脂の固形分量は、樹脂エマルション100質量部中に、例えば、好ましくは25~80質量部、より好ましくは30~70質量部、更に好ましくは40~60質量部であってよい。樹脂エマルションにおける樹脂の固形分量が上記範囲内であることによって、樹脂エマルションの粘度上昇に伴う作業性の低下を抑制することができ、且つポリマーセメント組成物の硬化性をより十分なものとすることができる。
【0035】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は-45~-5℃である。アクリル系樹脂のガラス転移温度は、例えば、-40~-5℃、-40~-10℃、又は-35~-15℃であってよい。アクリル系樹脂のガラス転移温度が上記範囲内であることによって、得られる硬化膜の下地追従性をより十分なものとすることができる。ガラス転移温度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0036】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構造単位を有する樹脂である。本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。本明細書において「(メタ)アクリル酸誘導体」は、(メタ)アクリル酸のエステル等の酸誘導体を意味する。(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸誘導体と共重合可能なモノマーに由来する構造単位を有してもよい。(メタ)アクリル酸誘導体と共重合可能なモノマーは、例えば、エチレン、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸誘導体の重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、及びスチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体等が挙げられる。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂の融点(Tm)は70~135℃である。ポリオレフィン系樹脂の融点は、好ましくは70~125℃、より好ましくは70~110℃、更に好ましくは80~100℃、特に好ましくは85~100℃であってよい。ポリオレフィン系樹脂の融点が上記範囲内であることによって、耐汚染性をより十分なものとすることができる。融点は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂固形分全量を基準として、5~40質量%である。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂固形分全量を基準として、好ましくは10~40質量%、より好ましくは10~30質量%であってよい。ポリオレフィン系樹脂の含有量が上記範囲内であることによって、得られる硬化物の耐汚染性をより十分なものとすることができる。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3000~30000、より好ましくは3000~27000、更に好ましくは3000~20000、更により好ましくは3000~15000、更によりまた好ましくは5000~15000、特に好ましくは6000~10000であってよい。ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることによって、得られる硬化物の耐汚染性をより向上させることができる。重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン及びクロロプレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーに由来する構造単位を有してもよい。ポリオレフィン系樹脂は、好ましくは、エチレンに由来する構造単位を有する樹脂(ポリエチレン系樹脂)である。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリ酢酸ビニル、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体、ポリスチレン、スチレンとブタジエンとの共重合体、ポリクロロプレン、及びアクリロニトリルとブタジエンとの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはポリエチレンを含有する。
【0042】
アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は、市販されているものを用いてもよく、合成したものを用いてもよい。アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は、例えば、乳化剤及び重合開始剤の存在下で、モノマーを水又は含水溶媒中で乳化重合する方法等によって合成してもよい。
【0043】
乳化剤は、例えば、界面活性剤、及び保護コロイド等が挙げられる。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び高分子界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。保護コロイドは、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0044】
重合開始剤は、例えば、水溶性過酸化物、油溶性過酸化物及びこれらの塩が挙げられる。水溶性過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、及び過硫酸等の酸とアンモニウムとの塩を用いることができる。水溶性過酸化物は、より具体的には、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。油溶性過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、L-ブチルハイドロパーオキサイド、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等を用いることができる。
【0045】
ポリマーセメント組成物は、上記(A)成分、上記(B)成分及び上記(C)成分に加えてその他の成分を含んでもよい。その他の成分は、例えば、消泡剤、増粘剤、凝結調整剤、及び流動化剤等を含有してもよい。
【0046】
消泡剤は、例えば、シリコーン系消泡剤、アルコール系消泡剤、及びポリエーテル系消泡剤等の合成物質、並びに、植物由来の天然物質等が挙げられる。これらの物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリマーセメント組成物が消泡剤を含むことによって、コンクリート表面に上記組成物の塗膜を形成する際に生じる気泡の発生を抑制し、得られる硬化物における欠陥の発生をより抑制することができる。
【0047】
増粘剤は、例えば、セルロース系増粘剤が挙げられる。セルロース系増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤等を用いることができる。ポリマーセメント組成物が増粘剤を含むことによって、組成物中を混合した後に成分の分離が生じることを抑制することができる。ポリマーセメント組成物が増粘剤を含むことによって、コンクリート表面に上記組成物の塗膜を形成した際の表面の平滑性をより向上させることができる。
【0048】
凝結調整剤は、セメントの水和反応を促進させる凝結促進剤、及びセメントの水和反応を遅延させる凝結抑制剤等が挙げられる。凝結促進剤としては、例えば、凝結促進効果を有する塩化物、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、アルミン酸塩、及び有機酸塩等を用いることができる。これらの化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
上述のポリマーセメント組成物は、例えば、以下の製造方法によって製造することができる。ポリマーセメント組成物の製造方法の一実施形態は、樹脂エマルションに、アルミナセメントを含有する水硬性成分及び細骨材を含む混合物を、上記水硬性成分の配合量が樹脂固形分100質量部に対して30~130質量部となるように配合する工程を有する。上記混合物には、必要に応じて、例えば、消泡剤、増粘剤、凝結調整剤、及び流動化剤等を予め含有させてもよい。
【0050】
上記樹脂エマルションは、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含み、上記アクリル系樹脂のガラス転移温度が-45~-5℃であり、上記ポリオレフィン系樹脂の融点が70~135℃である。また上記ポリオレフィン系樹脂の含有量は樹脂固形分全量を基準として5~40質量%となるように、アクリル系樹脂と配合される。
【0051】
樹脂エマルションと、水硬性成分及び細骨材を含む混合物とは、例えば、撹拌機を用いて混合してもよい。撹拌機は、例えば、固液撹拌機等を挙げることができる。撹拌の際に、水等の溶剤を添加することもできるが、相分離を抑制して均一性のより高いポリマーセメント組成物を得る観点、及び得られる硬化物の物性低下を抑制する観点から、外部からの溶剤の配合量は低減することが好ましい。
【0052】
上述のポリマーセメント組成物は、基材(例えば、コンクリート構造体等)の表面に、耐汚染性に優れる硬化物を形成するために用いることができる。
【0053】
硬化物の一実施形態は、上述のポリマーセメント組成物の硬化物である。硬化物の形態は、例えば、膜(硬化膜)であってよい。硬化物の厚さは、例えば、0.5~20mmであってよく、好ましくは0.5~15mm、より好ましくは0.5~10mm、更に好ましくは0.5~5mmであってよい。上記硬化物の厚さが上記の範囲内であると、下地追従性と、耐汚染性とをより十分なものとすることができる。
【0054】
上記硬化物は、例えば、ベランダ、屋上、屋根、柱、及び水槽等に用いる防水材、仕上げ材、並びに下地調整材等に用いることができる。上記ポリマーセメント組成物は、例えば、コンクリートからなる構造体等の防水用途に用いることができ、コンクリート等の表面(被施工物表面)に施工して用いることができる。
【0055】
コンクリート構造体の一実施形態は、上述のポリマーセメント組成物の硬化物を表面の少なくとも一部に備える。コンクリート構造体は、表面の少なくとも一部に上述のポリマーセメント組成物を硬化して形成される硬化物を備えることから、耐汚染性に優れ、施工当初の色合い等を長期に保持することができる。コンクリート構造体は、表面の全部に上述のポリマーセメント組成物の硬化物を備えていてもよい。
【0056】
コンクリート構造体は、例えば、以下の方法で製造することができる。コンクリート構造体の製造方法は、例えば、対象となる構造物上に上述のポリマーセメント組成物からなる組成物層を設け、上記組成物層を硬化させる工程を有する方法であってよい。上記製造方法は、例えば、上述のポリマーセメント組成物を対象となる構造物に適用させる前に、上記構造物の表面にプライマー、不陸調整材、ガスバリア塗料、補強用塗料、及びパテからなる群より選ばれる少なくとも1種を塗布する工程を更に有していてもよい。
【0057】
上記組成物層の厚さは、硬化後の厚さ(硬化物の厚さ)に応じて調整することができ、例えば、0.5~20mmであってよく、好ましくは0.5~15mm、より好ましくは0.5~10mm、更に好ましくは0.5~5mmであってよい。上記組成物層の厚さが上記の範囲内であると、より十分な下地追従性を有する硬化膜を形成することができ、得られるコンクリート構造体の耐汚染性をより十分なものとすることができる。
【0058】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【実施例
【0059】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例及び比較例における評価は下記の方法にしたがって行った。
【0061】
<ガラス転移温度>
樹脂のガラス転移温度(Tg)はDSCによって測定した。まず、ガラス板上に樹脂エマルションを適量滴下した後、60℃で16時間乾燥し乾燥塗膜を形成した。得られた乾燥塗膜から、質量が9.5~10.5mgの範囲となるようにサンプルを採取した。示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所社製、製品名:DSC-50)を用い、サンプルのガラス転移温度を測定した。
【0062】
DSCの測定条件は、室温から150℃に10分間で昇温し、150℃を10分間保持して樹脂の熱履歴を消去した。その後に、-100℃まで温度を低下(急冷、1stクーリング)させ、再度150℃まで昇温速度:15℃/分で昇温し(1stヒーティング)、1回目のTg測定を行った。150℃から1stヒーティングで測定したTg未満の温度まで降温速度:15℃/分で降温し(2ndクーリング)、2回目のTg測定を行った。2回目のTg測定で得られたTgの値を、サンプルのガラス転移温度とした。
【0063】
なお、測定対象である樹脂の組成が既知である場合は、下記の計算式にしたがって求められるガラス転移温度の推定値Tを利用してDSCの測定温度域を予め決定してもよい。すなわち、150℃で10分間保持した後に、測定対象である樹脂のガラス転移温度の推定値Tより50℃低い温度まで温度を低下させ、その他は上記と同様にして、測定対象である樹脂のTgを測定してもよい。
【0064】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂を構成する構造単位を与えるモノマー種及び組成比を特定し、当該モノマーの単独重合体のTgを用いて、下記式(1)から推定値Tを算出することができる。推定値T(単位:K)として算出されることから、摂氏度(単位:℃)に換算して使用することができる。下記式(1)は、n個のモノマー種の共重合体である樹脂を想定した式となっている。なお、上記単独重合体のTgは、例えば、Polymer Handbook 第4版等に記載されたデータを使用することができる。例えば、ポリスチレンのTgは100℃であり、ポリ(n-ブチルアクリレート)のTgは-52℃であり、ポリ(n-エチルヘキシルアクリレート)のTgは-70℃である。
【0065】
1/T=(C/Tg)+(C/Tg)+・・・+(C/Tg) …(1)
上記式(1)において、Tは、測定対象である樹脂のガラス転移温度の推定値(単位:K)を示す。上記式(1)において、CはモノマーAの重量分率を示し、CはモノマーBの重量分率を示し、CはモノマーNの重量分率を示す。上記式(1)において、TgはモノマーAの単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を示し、TgはモノマーBの単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を示し、TgはモノマーNの単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を示す。なお、(C+C+・・・+C)=1とする。
【0066】
<融点>
樹脂の融点(Tm)はDSCを用いて測定した。まず、樹脂エマルションを適量ガラス瓶に採り、室温で窒素ガスを用いて16時間乾燥させ乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜から、質量が9.5~10.5mgの範囲となるようにサンプルを採取し、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、製品名:X-DSC7000)を用いて、30~200℃に10分間で昇温する条件で、Tmを測定した。
【0067】
<重量平均分子量>
樹脂の重量平均分子量(Mw)はGPC(Agilent社製、製品名:PL-GPC)を用いたゲル浸透クロマトグラフによって測定した。まず、樹脂エマルションを適量ガラス瓶に採り、室温で窒素ガスを用いて16時間乾燥させ乾燥塗膜を得た。得られた乾燥塗膜から一部を採取し、23℃、濃度が1mg/mlになるようにオルトジクロロベンゼン(ODCB)に溶解し、更に0.5μm焼結フィルターを用いてろ過することによって測定サンプルを調製した。
【0068】
上記で調製した測定サンプル200μlを、GPCカラム(Agilent社製、製品名:PLgel Olexis、2本を直列して用いた)に注入し、ODCBを溶媒として、温度:145℃、流速:1.0ml/分の条件で重量平均分子量の測定を行った。GPCによる測定は54分間行った。GPCカラムによって分離された溶液中のポリマー濃度は、示差屈折計(RI)で測定した。検量線は標準ポリスチレンを用いて作成し、樹脂の重量平均分子量はポリスチレン換算分子量として得た。データ処理は、測定装置に付属のソフトを用いて行った。装置付属のデータ処理ソフトを用いて、上記測定で得られたGPCクロマトグラムにベースラインを引き、ピーク面積を算出することで重量平均分子量(Mw)が計算される。
【0069】
<耐汚染性評価(色差ΔE)>
3mm厚スレート板(120mm×200mm)に、ポリマーセメント組成物を、1.5kg/mの量となるようにコテで塗布した。ポリマーセメント組成物をスレート板上に塗布した後、温度:20±3℃、相対湿度:65±5%RHの条件下で7日間養生し、試験体を調製した。耐汚染性試験の前に、ハンディ型色彩計(日本電色工業株式会社製、製品名:NR-12B)(光源:C/2°)を用いて、明度L 、色相a 、及び色相b を測定した。得られたL 値、a 値、及びb 値を試験前の明度及び色相とした。
【0070】
次に、カーボンブラック(JIS Z 8901で規定される試験用粉体1 12種)を水に分散させ、濃度が1.05g/Lのスラリーを調製した。上記で得られた試験体を水平に対して45℃の傾斜となるように設置し、その後試験体の表面の上端から上記スラリー150mlを流した(スラリーの接触)。その後、試験体を、温度:23℃、相対湿度:50%RHの条件に設定した恒温槽に入れて10分間乾燥させた。乾燥後、試験体を恒温槽から取出し、水平に対して45℃の傾斜となるように設置し、試験体の表面の上端から水150mlを流した(水洗)。その後、再び、温度:23℃、相対湿度:50%RHの条件に設定した恒温槽に入れて10分間乾燥させた。
【0071】
上述の試験体に対するスラリーの接触、乾燥、水洗及び乾燥の操作を1サイクルとして、同様の操作を合計3サイクル実施した。3サイクルの操作を実施した後、ハンディ型色彩計を用いて、試験体表面の明度及び色相を測定し、それぞれL 値、a 値、及びb 値とした。
【0072】
試験前と試験後の色差ΔEは、以下の式(2)を用いて算出した。ΔE値が小さいほど、耐汚染性試験後の塗膜表面の汚れの度合いが小さいことを示す。
ΔE=[(L -L +(a -a +(b -b 1/2 …(2)
【0073】
(実施例1)
〔アクリル系樹脂の調製〕
容器に、イオン交換水を400質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムル E-118B)を54質量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(第一工業製薬株式会社製、商品名:DKS NL-250)を42質量部、スチレンを475質量部、n-ブチルアクリレートを462質量部、2-エチルヘキシルアクリレートを463質量部、2-ヒドロキシメタクリレートを49質量部及びメタクリル酸を7質量部秤量し、単量体を含む乳化混合液を調製した。
【0074】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水を620質量部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE-118B)を5.4質量部仕込み、反応容器内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら容器内部の温度が80℃になるまで加温した。
【0075】
次に、先に調整した乳化混合液全量の2質量%分と、5質量%濃度の過硫酸ナトリウム水溶液14質量部とを上記反応容器に添加した。その後、約20分間、初期重合を行った。同温で、乳化混合液の残部と、5重量%濃度の過硫酸ナトリウム水溶液70質量部とを同時に重合溶液中に滴下しながら、4時間、重合反応を行った。滴下終了後、さらに1時間、80℃を保ったまま撹拌を持続し、その後、有機過酸化物と還元剤を用いて、80℃で、未反応モノマーの重合を完結させ、共重合体のエマルションを得た。
【0076】
重合の完結後、重合溶液の温度を室温まで下げ、消泡剤、防腐剤、光安定剤及び紫外線吸収剤を添加して、アクリル系樹脂エマルションであるスチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(固形分濃度:55質量%、ガラス転移温度(Tg):-25℃)を得た。
【0077】
[樹脂エマルションの調製]
容器に、表1に示す原料及び仕込み比(固形分の質量比)となるように、上述の手順で得たスチレン/アクリル共重合樹脂エマルション(樹脂a1)と、以下に述べる樹脂b1とを測りとり、均一になるまで混合することによって、樹脂エマルションを調製した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1中、原料は以下のものを用いた。
[ポリオレフィン系樹脂]
(i)樹脂b1[ポリエチレン樹脂エマルション(固形分濃度:30質量%、融点:99.8℃、重量平均分子量:7283)]
(ii)樹脂b2[ポリエチレン樹脂エマルション(固形分濃度:35質量%、融点:127.3℃、重量平均分子量:27205)]
[その他の樹脂]
(i)樹脂b3[ポリプロピレン樹脂エマルション(固形分濃度:35質量%、融点:144.4℃、重量平均分子量:24651)]
【0080】
[ポリマーセメント組成物の調製]
撹拌容器に、樹脂エマルションが樹脂固形分換算で250gとなるように計量し、表2に示す原料及び仕込み比(樹脂固形分100質量部に対する各成分の質量部)となるように、水硬性成分、細骨材を配合し、3分間撹拌及び混合することで、ポリマーセメント組成物を調製した。得られたポリマーセメントを用いて、耐汚染性評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
(実施例2~5及び比較例1~2)
表2に示すとおりに原料及び仕込み比(質量比)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーセメント組成物を調製した。得られたポリマーセメント組成物について耐汚染性評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
表2中、水硬性成分及び細骨材は、以下のものを用いた。
【0084】
[水硬性成分]
(i)アルミナセメント[ケルネオス社製、ブレーン比表面積:3520cm/g、平均粒子径:13.0μm、粒子径が1~96μmである粒子の割合:100質量%、組成比(SiO:0.18質量%、Al:68.67質量%、Fe:0.14質量%、CaO:29.12質量%、MgO:0.20質量%、SO:0.27質量%)]
(ii)ポルトランドセメント[白色ポルトランドセメント、太平洋セメント株式会社製、ブレーン比表面積:3320cm/g、平均粒子径:16.0μm、粒子径が1~45μmである粒子の割合:91.9質量%、組成比(SiO:22.74質量%、Al:4.64質量%、Fe:0.19質量%、CaO:65.25質量%、MgO:0.77質量%、SO:2.54質量%)]
(iii)石膏[II型無水石膏、セントラル硝子株式会社製、ブレーン比表面積4880cm/g、平均粒子径:4.2μm、粒子径が1~96μmである粒子の割合:100質量%]
【0085】
[細骨材]
珪砂[粒径が212μmより大きい粒子の割合:0.02質量%、粒径が150μmより大きく212μm以下である粒子の割合:17.29質量%、粒径が106μmより大きく150μm以下である粒子の割合:47.80質量%、粒径が75μmより大きく106μm以下である粒子の割合:25.95質量%、粒径が75μm以下である粒子の割合:8.94質量%]
【0086】
表2に示した評価結果から分かるように、アルミナセメントを含む水硬性成分及び細骨材の混合物に対して、特定のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂、及び特定の融点を有するポリオレフィン系樹脂を特定量で含有する樹脂エマルションを混合した実施例1~5のポリマーセメント組成物を用いることで、耐汚染性に優れた硬化物を形成することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のポリマーセメント組成物は、耐汚染性に優れた硬化物を形成することが可能であり、例えば、ベランダ、屋上、屋根、柱、及び水槽等に用いる防水材、仕上げ材、並びに下地調整材等に有用である。