(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】剥離性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 127/12 20060101AFI20220510BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220510BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20220510BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220510BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220510BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220510BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C09D127/12
C09D7/65
C09D127/18
C09D7/61
C09D5/00 Z
B32B27/00 L
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2018124204
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 統史
(72)【発明者】
【氏名】田中 奈名恵
(72)【発明者】
【氏名】平松 聡
(72)【発明者】
【氏名】川淵 茜
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074201(JP,A)
【文献】特開平03-182539(JP,A)
【文献】特開2014-213576(JP,A)
【文献】特開2005-344052(JP,A)
【文献】特開2009-149824(JP,A)
【文献】国際公開第2010/126000(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203750(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039029(WO,A1)
【文献】特開2013-010822(JP,A)
【文献】特開昭61-087766(JP,A)
【文献】特開平08-092521(JP,A)
【文献】特開2020-004896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び粒子を含む剥離性コーティング組成物であって、
前記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、
HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、
変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンであり、
前記粒子は、平均粒径が2~9μmである、
上記剥離性コーティング組成物。
【請求項2】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーが少なくとも4フッ化エチレンモノマー含む含フッ素モノマーに基づく重合単位のコポリマーであり、
変性シリコーンオイルは、反応性官能基が側鎖タイプ、又は側鎖及び両末端又は片末端タイプからなる少なくともアミノ基を有する変性メチルポリシロキサンであり、
HDI系ポリイソシアネートが、イソシアヌレート型及びアダクト型のプレポリマタイプである、
請求項1に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項3】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、4フッ化エチレンモノマーをモノマー基準で60~95モル%含み、反応性官能基としてカルボン酸基及び又は水酸基を含有するビニルモノマーを含む含フッ素ポリマーである、請求項1又は2に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項4】
変性シリコーンオイルは、0.1~1.0質量%含有し、
HDI系ポリイソシアネートは、HDIイソシアヌレートとHDIアダクトが、9:1~5:5(イソシアヌレート型及びアダクト型のNCOモル比)の割合で含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項5】
粒子は、有機粒子又は無機粒子である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項6】
粒子は、コーティング組成物全質量の5~15質量%含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項7】
粒子は、無機粒子であって、ゾルゲル型のシリカである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の剥離性コーティング組成物。
【請求項8】
コーティング組成物は、チタン系触媒を含み、有機溶媒が、酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合溶媒である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の剥離性コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離性コーティング組成物に関するものである。本発明の剥離性コーティング組成物とは、自動車、航空機、車両などの金属製品及び部品、表面処理鋼材、プラスチックやガラスなどの成形品等の成形体の取扱、輸送、製造中の損傷防止、保護のため、製造工程で使用する資材として、あるいは感圧接着剤等の粘着物質に対して剥離性を示す材料として、また貯蔵、保管中の成形体の汚染、すり傷などの基体表面の一時的な表面保護目的などのため使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
一つの分野として、紙、ラミネート紙、プラスチックフィルム等の各種基材表面に剥離性層を形成させることで、感圧接着剤等の粘着物質に対して剥離性を示す材料を用いることが知られている。比較的低い加熱温度で短時間硬化を必要とされる剥離紙用途では、剥離性を示す材料として、例えば、特許文献1では、シリコーン剥離性コーティング組成物が採用され、キュア性やポットライフの良好な反応性剥離性コーティング組成物がコスト低減、コーティング材の転移、取扱性、作業性などに優れたものとして用いられている。
また、特許文献2に記載の成形体の取扱、輸送、製造工程中などの基体の表面保護としての使用では、転移、取扱性、作業性、耐久性、耐候性、剥離性、塗装性に優れたものが求められている。さらに、特許文献3のように、成形品、製品の製造において用いる離型フィルムにあっては、さらに剥離性層の耐熱性、安定性、機械的強度、防汚性、金型追従性などに優れた費用対効果の良いものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭46-26798号公報
【文献】特開2001-288399号公報
【文献】再公表2015-133634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の保護層等に用いられる剥離性層を形成する組成物では、樹脂封止時に金型と樹脂の接着を防ぐ離型性(対エポキシ)が十分でなく、加熱成形時のシートの熱安定性がシリコーンタイプでは基材フィルムからの剥がれの発生を生じさせ、破損やピンホールにより製品の汚染、封止樹脂の厚みが増した時に樹脂衝撃でフィルムの破損の発生、金型に充填したフィルムが真空引きで金型にフィットし難い、金型にフィットするとき,フィルムがカールするなどの問題があった。
従来の剥離性層を形成する組成物では、剥離性層を形成する材料が、高温で使用した後では、剥離性層表面に離型対象の樹脂の付着が見られ、高温特性の面での優れた剥離性への要求が依然として残っている。
【0005】
本発明者らはかかる問題点に鑑み鋭意検討した結果、上記従来の課題を解決するものであって、プラスチックフィルム又はシート、金属板などの基材又は、プラスチック成形体、製品又は被着体などの基体の表面にコーティング塗膜を密着形成でき、造膜性があるコーティング組成物であり、粘着物質、被着物、製造品などに対し、被着物等にコーティング組成物であるコーティング材が転移しない、あるいは残らない、優れた剥離性を示すこと、また、ポットライフなどの取扱性、作業性の良好なものとすることができること、耐熱性で安定な特性が得られる剥離性コーティング塗膜を形成できることなどの特性を有するコーティング組成物を提供するものである。
本発明は、特に、高温条件での使用後にも容易に剥離性を示すことができるものであり、主成分となるフッ素ポリマーを含有する組成物をコーティングにより剥離性層を形成できるコーティング組成物であって、反応性官能基含有フッ素モノマーの重合単位と、ビニルエステル、特に特定の非芳香族系のビニルエステル、および官能基を有する共重合モノ
マーを重合単位として含む反応性官能基含有フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートを少なくとも含み、さらに粒子を含む、剥離性コーティング組成物とすることにより本発明の前記目的を達成し得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記剥離性コーティング組成物を提供する。
[1] 反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート及び粒子を含む剥離性コーティング組成物であって、
前記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーに基づく重合単位と、水酸基含有ビニルモノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とを含むコポリマーであり、
HDI系ポリイソシアネートは、イソシアヌレート型及びアダクト型のHDI系ポリイソシアネートを含むものであり、
変性シリコーンオイルは、少なくとも塩基を有する変性メチルポリシロキサンである。[2] 反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素モノマーが少なくとも4フッ化エチレンモノマー含む含フッ素モノマーに基づく重合単位のコポリマーであり、
変性シリコーンオイルは、反応性官能基が側鎖タイプ、又は側鎖及び両末端又は片末端タイプからなる少なくともアミノ基を有する変性メチルポリシロキサンであり、
HDI系ポリイソシアネートが、イソシアヌレート型及びアダクト型のプレポリマタイプである。
[3] 反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、4フッ化エチレンモノマーをモノマー基準で60~95モル%含み、反応性官能基としてカルボン酸基及び又は水酸基を含有するビニルモノマーを含む含フッ素ポリマーである。
[4] 変性シリコーンオイルは、0.1~1.0質量%含有し、
HDI系ポリイソシアネートは、HDIイソシアヌレートとHDIアダクトが、9:1~5:5(イソシアヌレート型及びアダクト型のNCOモル比)の割合で含むものである、[5] 粒子は、平均粒径が2~10μmである。
[6] 粒子は、有機粒子又は無機粒子である。
[7] 粒子は、コーティング組成物全質量の5~15質量%含有する。
[8] 粒子は、無機粒子であって、ゾルゲル型のシリカである。
[9] 更に、チタン系触媒を含み、有機溶媒は、酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合溶媒である。
[1]-[9]のいずれかに記載の剥離性コーティング組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、形状追従性、剥離特性に劣っていた従来の剥離性コーティング組成物より優れた形状追従性、剥離特性を達成できる。形成されたコーティング膜は、各種の基材に対して良好な密着性を示す。また、生産性及び作業性の観点からの問題や、高温での塗膜の収縮不良の発生やコーティング液のポットライフが短いなどの問題が解決でき、塗膜の速乾性、貯蔵寿命やポットライフに優れた安定性のあるコーティング組成物が得られる。
剥離性コーティング組成物としての被塗物への保護効果に加え、塗膜が良好な剥離性を有するので防汚性、防貼り紙性の塗膜を形成することができる。さらに、塗膜自体に剥離性があり、塗膜を剥がすことで塗装表面の更新を簡単にできるようにすることもできる。
耐熱性、熱安定性に優れ、応用が困難であった高温域での用途へ使用範囲が拡大され、また他の各種材料との混合使用が可能になるなど多様な応用手法に対応でき、用途に適した剥離機能を付与できる。
コーティングにより剥離性層を適用できるため、厚み、両面離型層、表面梨地処理等の調整が容易となる。また、長尺タイプ、広幅タイプ等での製造が可能であり、大量生産
を可能にする。コーティングであるため、コストパフォーマンスにも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好適な剥離性コーティング組成物は、フッ素含有量が所定の範囲内にある含フッ素ポリマーを造膜性ポリマーとして含有させ、さらに剥離性付与剤を組み合わせたことを特徴とする剥離性に優れているものである。
本発明の剥離性コーティング組成物は、成形品、構造物などの基体や基材の表面への接着性、貼り紙用粘着剤に対する剥離性、及び塗工性に優れ、さらに、基材または基体、金型等への追従性、フッ素樹脂と柔軟性がでる硬化剤の配合による非膜割れ、構造物表面の美観を損ねることがないものである。
以下、本発明の工程フィルム、貼り紙防止、剥離紙などのためのコーティング組成物としての剥離性コーティング組成物について説明する。
【0009】
(剥離性コーティング組成物)
本発明の剥離性コーティング組成物は、反応性官能基含有含フッ素ポリマー、変性シリコーンオイル、少なくとも2種のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート、及び粒子を含む、剥離性コーティング組成物である。
【0010】
本発明の剥離性コーティング組成物は、その発現する特性として、剥離性、コーティング材が塗布される被塗物であるフィルム又はシート状のあるいは賦形された基材、又は、製造又は成形された基体との密着性を備えるもの、塗膜として賦形したとき膜割れが生じない、又は破れやピンホールが発生し難い適度な伸び又は塗膜面粗度を有するもの、あるいは常温・高温での滑り性を有するものなどの物性や特性を少なくとも1つ備え得る塗膜を形成することができるものであってもよい。本発明の剥離性コーティング組成物は、特に、エポキシ樹脂に対して剥離性を有するものであって、耐熱性を備えるものが好ましい。
【0011】
(反応性官能基含有含フッ素ポリマー)
本発明の反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、フッ素樹脂の共通した特性:耐熱性、難付着性、滑り性、耐薬品性などの特性を発現し得るフッ素樹脂及び変性フッ素樹脂であり、コーティング材として取扱うことができる特性を有するものであって、反応性官能主成分となるフッ素ポリマーを含有するコーティング組成物の剥離性層が形成できる剥離性コーティング組成物を提供するものである。
官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、少なくとも4フッ化エチレンモノマー単位を含み、含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーをさらに含む又は含まない重合体であり、該含フッ素ポリマーに反応性の官能基を導入したポリマーである。
【0012】
含フッ素ポリマーは、少なくとも4フッ化エチレンモノマー単位を含むもので、さらに、一般式CH2=CR1COORf1(式中、R1はHまたはCH3基、-(CH2)n-CH3(n=1~6)、フッ素含有基Rf1はであり、ここで、Rf1は炭素数1~12のポリフルオロアルキル基である(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマー)で表される重合単位のモノマーを用いることができるものであって、含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーを含む又は含まないものである。
【0013】
含フッ素モノマーに基づく重合単位のコモノマーとしては、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマーが選択され、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルモノマーのアルキル基は、その炭素数は、特に限定されないが、通常1~12以下であり、常温時の粘度と塗工性との観点から、好ましくは2~8である。アルキル基は分岐していても、直鎖状でもよく、水素がフッ素に置き換わったパーフルオロアルキル基の基本となるアルキル基としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリ
ル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。
【0014】
反応性官能基含有フッ素ポリマーを構成するモノマー内に配合される4フッ化モノマーと(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルモノマーの含有量は80~98モル%である。
含フッ素ポリマーとしては、4フッ化モノマーを60~95モル%含むものであれば、フッ素樹脂の共通した特性:耐熱性、難付着性、滑り性、耐溶剤性、耐薬品性を発現し得るフッ素樹脂及び又は変性フッ素樹脂コーティング系ポリマー材料として用いることができる。4フッ化モノマーが60モル%以下では、フッ素樹脂としての特性を十分に発揮できず、95モル%以上であると塗工性に問題が生じる。
【0015】
本発明の反応性官能基含フッ素ポリマーである、反応性官能基を導入したフッ素ポリマーとするため導入される反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、モノアミン基、ジアミン基、エポキシ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基等が挙げられる。
そして、そのような反応性官能基を有するコモノマーは、含フッ素モノマーと共重合体が形成でき、変性シリコーンオイルに合わせて適宜選択される官能基を含有するモノマーであって、含フッ素モノマーと反応し、反応性官能基含有フッ素ポリマーの製造の容易さから、反応性の官能基を備えるモノマーが選択される。
反応性が良好な入手が容易な点から水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、エポキシ基、アミノ基を備えるモノマーが好ましい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、性能を損なわない範囲内で、水酸基含有ビニルエーテル類、水酸基含有アリルエーテル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。水酸基含有ビニルエーテルとしては、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、水酸基含有アリルエーテルとしては、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、重合反応性、官能基の硬化性が優れ、いずれも用いることができる。水酸基含有ビニルモノマー単位は、含フッ素共重合体を用いて形成した塗膜の加工性、耐衝撃性、耐汚染性を改善する作用を有する。
【0017】
水酸基含有ビニルモノマー単位の下限は8モル%、好ましくは10モル%、上限は30モル%、好ましくは20モル%である。8モル%より少なくなると、この共重合体を使用して得られる塗膜が求める物性及び又は特性のものより劣るものになる。
【0018】
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル等の不飽和カルボン酸類等が挙げられる。不飽和カルボン酸類の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル等が挙げられる。それらのなかでも単独重合性の低い、単独重合体ができにくいものを選択することができ、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、いずれも用いることができる。カルボキシル基含有モノマーを用いると含フッ素ポリマーの分散性、硬化反応性などを改善し、得られる塗膜と基材との密着性を改善できる。
【0019】
カルボキシル基含有モノマー単位の割合の下限は0.1モル%、好ましくは0.4モル
%であり、上限は2.0モル%、好ましくは1.5モル%である。2.0モル%を超えると塗膜の形成のポットライフ特性の面で好ましくない。
【0020】
反応性官能基含有含フッ素ポリマーとするため用いる水酸基含有及び又はカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量は、0.2~20モル%であり、好ましくは、0.2~10モル%である。
【0021】
アミノ系基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、CH2=CH-O-(CH2)x-NH2(x=0~10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH2=CH-O-CO(CH2)x-NH2(x=1~10)で示されるアミン類;その他アミノメチルスチレン、ビニルアミン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0022】
反応性官能基含有フッ素ポリマーは、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの入手が容易な点やその反応性が良好な点から、特に、水酸基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位をコモノマーとして好ましく選択することができる。特に、好ましくは、官能基として、水酸基を有するフッ素ポリマーが好適に用いられる。
反応性官能基含有含フッ素ポリマーに用いるモノマーには、本発明の反応性官能基含有含フッ素ポリマーとして、求められるフッ素ポリマーの特性を阻害しない範囲で混合モノマーに対して、さらにモノマーを添加することができる。
【0023】
本発明の上記反応性官能基含有含フッ素ポリマーは、上記したモノマーを公知のラジカル重合、イオン重合等の重合法によって製造することができるが、方法により製造することができる。平均重合度、分散度の制御、重合操作の観点からラジカル重合を用いて得ることが好ましい。
【0024】
本発明のコーティング組成物中の反応性官能基含有含フッ素ポリマーの含有量は、組成物中の不揮発分の総量100質量%に対し、20~90質量%であることが好ましい。
【0025】
(変性シリコーンオイル)
変性シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサンの特長を活かしながら、メチル基の一部を各種有機基の置換基を導入したものである。変性シリコーンオイルは、一般的に消泡性、はっ水性、熱酸化安定性、化学的安定性、生理的不活性などジメチルシリコーンオイルの持つ特性に加え、有機物との相溶性や化学反応性、水との溶解性、乳化性やはっ水性、ペインタブル性、帯電防止性、柔軟性あるいは潤滑性を付与するため目的に適合する置換基を選択し、導入される。
変性シリコーンオイルの構造は、有機基の位置により、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの片末端に有機基を導入したもの(片末端型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)及びポリシロキサンの側鎖と両末端の両方に有機基を導入したもの(側鎖両末端複合型)があり、いずれでもよく、反応性シリコーンオイルの使用目的に応じて適宜1種又はそれ以上の構造のものを使用することもできる。
本発明では、変性シリコーンオイルとして、反応性シリコーンオイルが用いられる。シリコーンオイルに少なくとも反応性を付与する有機基として、例えば、アミノ変性(はっ水性、反応性、吸着性、潤滑性、離型性、可撓性)、エポキシ変性(反応性、吸着性、離型性、可撓性)、カルボキシ変性(反応性、潤滑性、離型性、可撓性)、カルビノール変性(反応性、離型性、酸素透過性)、メタクリル変性(反応性、吸着性、酸素透過性)、メルカプト変性(反応性、吸着性)、フェノール変性及び異種官能基変性(反応性、相溶性)が挙げられ、これらの中から選択される1種又はそれ以上の官能基で置換したものを選択できる。
反応性官能基含有フッ素ポリマーに導入する官能基と反応し得る官能基、特に、カルボン酸基、水酸基、又はアミノ基、エポキシ基を有する変性メチルポリシロキサン(側鎖型)が好ましく用いることができる。具体的には、モノアミン変性シリコーンオイル、ジアミン変性シリコーンオイル、アミノ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーン等を使用できる。
【化1】
【0026】
(硬化剤としてのポリイソシアネート)について
本発明の剥離性コーティング組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤を含むことにより、本発明の剥離性コーティング組成物を用いて剥離性塗膜を形成することができる。
上記硬化剤は、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの反応性官能基と反応して架橋するものであって、反応性官能基含有含フッ素ポリマーの反応性官能基に応じて選択される。例えば、水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用できる。
【0027】
本発明の剥離性コーティング組成物の硬化剤成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートが好適に選択され、HDI系ポリイソシアネートに基づくブロックイソシアネートを用いることにより、本発明のコーティング組成物が充分なポットライフ(可使時間)、PETとの密着性を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するもので、イソシアヌレートの三量化反応、五量化反応、七量化反応により得られるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる、イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができるビウレットを挙げることができる。
ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
【0028】
ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1-トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール-3等の3価アルコー
ル;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0029】
HDIイソシアヌレートとHDIアダクト(ウレタン変性)のプレポリマ混合組成のものが好ましく用いられる。硬化剤の含有量は、反応性官能基含有含フッ素ポリマー中の反応性官能基1当量に対して、0.1~5当量であることが好ましく、0.5~1.5当量であることがより好ましい。
【0030】
(その他の成分)
本発明のコーティング組成物は、添加剤として反応促進剤を配合することができる。反応促進剤として、例えば、有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛などがあげられる。具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズメトキシドなどの有機スズ化合物、有機酸性リン酸エステル、本発明では、特に、チタン系化合物が好ましく用いられ、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテート好ましく用いられる。
反応促進剤は1種又は2種以上を併用してもよい。反応促進剤の配合割合は反応性官能基含有含フッ素ポリマー100重量部に対して1.0×10-3~6.0×10-2重量部程度が好ましく、1.0×10-2~5.0×10-2重量部程度がより好ましい。
【0031】
(粒子)
本発明の組成物には、塗膜表面の離型性を与えるために粒子を添加することができる。粒子としては、有機粒子及び又は無機粒子等を用いることができる。
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオルエチレン、ジビニルベンゼン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン、メラミン樹脂等のような樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素等の金属塩、カオリン、クレー、タルク、亜鉛華、鉛白、ジークライト、石英、ケイソウ土、パーライト、ベントナイト等のような無機粒子が使用できる。これらの粒子は、いずれか1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、より好ましい表面粗さ、滑り性、耐ブロッキング性が得られるという観点から、無機粒子が好ましい。とりわけ、酸化チタン粒子、シリカ粒子が好ましい。また、塗膜中にボイドが形成され難いという点、また、適した表面態様が得やすいという点から、ゾルゲルタイプシリカが好ましく用いることができる。
粒子の形状としては、特に限定されず、球形、塊状不定形等が用いられる。例えば、半導体チップを樹脂で封止するとき剥離性コーティング組成物を離型層として用いた場合、離型性及び樹脂漏れを抑止する効果が高いため、球形のものが好ましい。
【0032】
粒子の平均粒径は、0.5μm~10μmが好ましい。粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば、表面に必要な大きさの凹凸が形成され、表面に付着し難くなり、表面付着物を容易に取り除くことができ、また、基板又は基体との剥離性が得られやすい。平均粒子径が10μm以下であれば、封止の際、金型によって押圧された粒子が塗膜表面に、基板
との密着性を阻害するような凸部を生じさせにくく、バリ発生を抑制できる。
粒子の平均粒子径は、コールターカウンター、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置、遠心沈降式粒度分布測定装置等で測定することができるが、ここでは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定し、平均粒子径を求めた。
粒子としては、比表面積が低い程,表面に凹凸が形成され易いが,比表面積が低すぎると分散性が悪くなるため、例えば、ゾルゲルタイプシリカであれば、粒径9μm,比表面積300m2/gのものを用いることが好ましい。
その添加量は、全質量の3~85質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましい。
ゾルゲルタイプシリカの添加など最適固形分濃度(N.V.35%)の範囲とすることにより表面に凹凸を形成し、ブロッキングを防止でき、離型性などコーティング材として優れたものが得られる。
【0033】
(その他の添加材)
本発明のコーティング組成物は、その他の添加材として、必要に応じて可塑剤、分散剤、若しくは分散安定剤、増粘剤、消泡剤、滑り性付与剤、密着向上剤、剥離力コントロール剤、顔料、レベリング剤、通常の防腐剤;pH調整剤など公知のものを加えることができる。
例えば、作業性や加工性の点から、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルカルビトールフタレート、メチルセロソルブなどの可塑剤や造膜助剤、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤若しくは分散安定剤、ノニオン系界面活性剤などの湿潤剤、保護コロイド用の水溶性高分子化合物などの増粘剤、シリコーン油、鉱油などの消泡剤、炭酸カルシウム、クレー、シリカなどの通常の充填剤などを配合してもよい。
【0034】
(コーティング塗工液)
本発明のコーティング組成物としては、たとえば有機溶媒に溶解した溶液型、水性溶媒に分散した水分散型、非水分散型ディスパージョン、粉体化した粉体型さらにこれらに硬化剤を配合した硬化型組成物などの態様で利用することができる。しかし、取扱性、作業性に優れた溶液型のコーティング塗工液の形態として用いることがより好ましい。有機溶媒溶液とする場合は、含フッ素共重合体の濃度を5~95質量%、好ましくは10~70質量%とすればよい。
【0035】
本発明のコーティング組成物は、有機溶剤を含有するもので、該有機溶剤は、処理浴安定性、各種基材に対する塗工性の向上、塗工量及び粘度の調整を目的として配合される成分であり、本発明の含フッ素ポリマーは使用する溶媒の種類や条件の制限が少なく、コーティング組成物の成分を均一に溶解できる任意量の有機溶剤が使用でき、組成物を溶媒により希釈し、塗膜形成効率、取扱性、乾燥速度などを調整する。
【0036】
(有機溶媒)
本発明の共重合体に好適に使用できる有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert-ブタノール、iso-プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などがあげられる。特に、酢酸エチル及び又は酢酸ブチル/MEKの組合せがコーティング組成物の速乾性、粘度などコーティング材料として作業性、取扱性の面で好ましいものが得られる。
【0037】
また、水分散型の組成物とする場合は、水または水と親水性溶媒との混合溶媒に、必要ならば乳化剤を用いて分散させ、濃度10~80重量%とするのが好ましい。親水性溶媒としては、たとえばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、酢酸カルビトールなどのエステル類などがあげられる。
【0038】
コーティング組成物の固形分濃度は、特に限定されず、使用方法に応じて適宜調製することができる。本発明のコーティング組成物の全質量に対する固形分濃度は、10~70質量%であり、好ましくは、20~60質量%である。特に好ましくは、25~45質量%である。
【0039】
(組成物の調製)
本発明のコーティング組成物は、たとえば有機溶媒に溶解した溶液型塗料、水性溶媒に分散した水分散型組成物、非水分散型ディスパージョン、粉体化した粉体型組成物、さらにこれらに硬化剤を配合した硬化型組成物などの態様で利用することができる。
本発明のコーティング組成物は、上記したような必要に応じて他の成分を、有機溶媒に混合、溶解または分散することにより調製することができる。
容器内でハイスピードミキサ、ホモミキサ、ペイントシェーカーなどのミキサや混合溶解機など公知の装置を使用して、上記したような水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基含有モノマーと含フッ素モノマーの含フッ素共重合ポリマー、アミノ基などの官能基を有するメチルポリシロキサンなどの変性シリコーンオイル、ゾルゲル系シリカを含フッ素ポリマーに好適な有機溶剤又は混合溶剤に添加し混合分散液とし、イソシアヌレート型とアダクト型HDI系ポリイソシアネート、チタン系触媒を加え、攪拌し、均一に分散することによりコーティング組成物を調製する。ここでは、混合、分散のためエッジタービン型の高速ディゾルバーを用いたが、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明の調製されたコーティング組成物は、紙、ラミネート紙、プラスチックフィルム等の基材表面や製品、構造体、外壁などの基体表面にコーティング組成物を塗布し、乾燥することにより塗膜を形成し、製造工程における工程フィルム及び構造体の離型性、剥離性層や保護層を形成し、貼り紙防止、材料や製品の剥離、離型性の付与、表面保護被覆層として機能するように利用できる。さらに、当該塗膜を簡単に剥がし、塗装表面の更新することができる。構造物の保護層として、貼り紙防止、材料や製品の剥離、離型性の付与、剥離容易な構造物表面被覆層として機能するように利用できる。さらに、当該塗膜を簡単に剥がし、塗装表面の更新することができる。
【0041】
本発明のコーティング組成物を塗工する場合には、本発明のコーティング組成物を直接又は適当な有機溶剤で希釈した後、公知の任意の塗布方法が適用でき、例えばグラビアロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法、ドクターブレード法、さらに薄膜の塗工には高精度のオフセットコーター、多段ロールコーター等を単独または組み合わせて適用することができ、紙、ラミネート紙、プラスチックフィルム等の基材や構造物、成形体などの基体に適用することができる。
【0042】
本発明のコーティング組成物の基材又は基体への塗布量は、塗布すべき基材又は基体の材質の種類によっても異なるが、固形分の量として0.1~5.0g/m2の範囲が好ましい。
本発明のコーティング組成物を有機溶剤で希釈して塗布し、塗膜を形成した後、コーティング塗膜を乾燥及び硬化する条件としては、80~180℃の温度で5~120秒間加熱することにより基材表面に硬化皮膜を形成することが好ましく、110℃~160℃の温度で20~60秒加熱することが好ましく、所望の剥離紙及び剥離フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明のコーティング組成物を実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(コーティング組成物の評価)
本発明の剥離性コーティング組成物の性状及びその塗膜の物性を測定し、評価するため、以下のように試験片を作製した。
得られた反応性官能基含有フッ素ポリマー含有コーティング組成物を酢酸エチルとMEKの混合溶媒により粘度10cpsになるまで希釈し、キスリバース若しくはダイレクトグラビアリバース方式のコーティング装置を用い、ラインスピード10~20m/min、硬化(乾燥)温度120~160℃、10~60秒の塗工条件でポリエチレンテレフタレートフィルム基材(帝人社製、テトロンG))厚さ38μmを用い、該基材フィルム上に少なくとも片面に乾燥塗膜の厚みが5μmになるように塗布し、加熱乾燥した。
その後、40℃、48時間エージング処理し、塗膜を完全に硬化させた。その本発明のコーティング組成物積層ポリエステルフィルムから長さ200mm×幅15mmの短冊状試験片を作製した。
そして、塗膜のコーティング組成物の性状及びその塗膜の物性を、下記各測定方法を採用し、試験片を測定し、その測定結果を表にまとめて示すとともに、コーティング組成物として適合性を評価した。
【0045】
本発明の剥離性コーティング組成物は、コーティング組成物の対エポキシ離型性、PETとの密着性、伸び、滑り性、速乾性及びブロッキング性などに関し、それぞれに適した測定方法により反応性官能基含有フッ素樹脂、変性シリコーンオイル含有量(Si含有量)、ゾル・ゲル型シリカの大きさ、濃度、触媒含有量、ポリイソシアヌレート、HDI系イソシアネートの種類及び割合が与える影響について評価した。
実施例、比較例における測定方法及び評価方法は下記のとおりである。
【0046】
[対エポキシ離型性評価]
ホットプレートの上にポリエチレンテレフタレート(PET)単体フィルムを載せ,その上に下記黒エポキシ樹脂0.5gを塗布し、そのエポキシ樹脂塗布面上に、剥離性コーティング組成物をポリエステルフィルム上に塗布した上記幅30mm×長さ150mmの試験片を剥離性コーティング組成物塗膜面を合わせ、加熱温度175℃で黒エポキシ樹脂を硬化させる。硬化後,剥離力測定には、引張剥離試験機を使用し,試験片とエポキシ樹脂の剥離力を測定する。
黒エポキシ樹脂組成物として、半導体パッケージ用エポキシ樹脂(サンユレック(株)製「EF-200」)にフィラー径20μm/55μmの球状シリカを83質量%添加したエポキシ樹脂組成物であって、ゲル化時間が175℃、90秒のものを用いた。
剥離速度100mm/min、剥離時温度23℃,175℃の条件下、JIS K7125、JIS Z 0237に準拠して剥離を行った。下記判定基準により剥離力の評価を行った。
剥離力:3:100 MN/20mm未満
2:100~200 MN/20mm
1:200 MN/20mm以上
【0047】
[PETとの密着性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に設けられた剥離性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、塗膜の密着性の評価手法としては、JIS K 5400の試験方法により行った。
試験片上の塗膜に対して、カッターナイフを用いて塗膜を貫通してポリエチレンテレフタレートフィルム基材(素地)に到達するまでの切り込みを11×11の賽の目状に入れ、塗膜の切れ目における傷の広がりの大小から、塗膜のもろさや基材への付着性の良否を評価するもので、特に、JIS Z 1552」で規定された手法によってカットした塗膜面にセロハン粘着テープをはりつけ,塗膜にテープを付着させた後,テープの端を持って塗膜面に直角に保ち,瞬間的にひきはがすセロハンテープ剥離試験が施され、はがした時の状態を観察し密着性の良否を数値化して評価した。下記判定基準により密着性評価を行った。
3:剥離無し
2:5%未満の剥離
1:5%以上の剥離
【0048】
[伸び(膜割れ防止)評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に剥離性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、JIS K 7127に準拠した方法で引張り破断伸びを測定した。測定は、幅15mm×長さ200mmの試験片を,温度180に保持した空気循環式恒温槽中に垂直につるし,30分、1時間、4時間、16時間加熱した後取り出す。 室温に30分間放置してから,引張試験機(エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機 RTG-1210)を使用して測定速度300mm/min、測定温度23℃、175℃で引張り,塗膜の割れが発生する伸度を測定し,各温度5本の平均値を求める。
フィルム成形時のMD方向(流れ方向)及びTD方向(流れに直交する方向)の各方向について、実際にフィルムに形成する塗膜の厚み5μmで行い、雰囲気温度(測定温度)は23℃とした。下記判定基準により膜割れの評価を行った。
3:200%以上まで膜割れしなかった
2:100~200%で膜割れが生じた
1:100%以下で膜割れが生じた
【0049】
[滑り性評価]:
ポリエチレンテレフタレート基材上に剥離性コーティング組成物の塗膜層を形成して積層フィルムとし、50×50mmサイズにカットし、試験片とし、ホットプレート上にステンレス板を載せ、さらに試験片を塗膜面を下に向けて載せ、その上に100gのステンレス製分銅を載せ、剥離試験機を使用して、JIS K 7125に準拠して剥離速度100mm/min、温度23℃、175℃で試験片の塗膜面とステンレスとの滑り性を測定し、動摩擦係数を求め、評価した。下記判定基準により滑り性の評価を行った。
3:0.3未満
2:0.3~1.2以上
1:1以上
【0050】
[速乾性・耐ブロッキング性評価]
ポリエチレンテレフタレート基材上に乾燥膜厚が5μmとなるようにコーティング組成物の塗膜層を形成し、乾燥温度150℃、20秒で溶剤を乾燥除去し、ロール状に巻いて40℃、48時間静置保持した。塗膜の粘着性、付着性をブロッキングの有無により定性的に評価した。下記判定基準により速乾性・耐ブロッキング性の評価を行った。
3:150℃×60秒以内でブロッキング未発生
2:150℃×60秒~120秒でブロッキング未発生
1:150℃×120秒でブロッキング
【0051】
(実施例1)
容器内に、酢酸ブチル6.2質量部と、四フッ化エチレンモノマーフッ素樹脂モノマー単位76モル%,ビニルモノマーとしてヒドロキシエチルアリルエーテル単位24モル%の水酸基含有フッ素ポリマー(ダイキン工業社製、商品名ゼッフルGK570)100質量部と、コーティング組成物は、いずれも、ゾルゲル型シリカ (平均粒径9μm、富士シリシア化学社製,商品名サイリシア380)11.5質量部を加え撹拌し、均一に混合分散を行った。
次いで、この混合分散液にアミノ変性メチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製,商品名KF865)0.3 質量部を添加し、さらに1時間撹拌を行なったのち,イソシアヌレート型HDI系ポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製,商品名スミジュールN3300)10質量部とアダクト型HDI系ポリイソシアネート(旭化成株式会社製,商品名デュラネートAE700-100)7.8質量部とチタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテートチタン系触媒を0.03質量部加え、有機溶媒として酢酸ブチルで希釈したものを加え撹拌し、得られた配合混合液をフィルター(目の開き10μm) で濾過して剥離性コーティング組成物を得た。
【0052】
実施例1-1~1-5のコーティング組成物は、反応性官能基含有フッ素ポリマーと硬化剤として添加するHDIイソシアヌレートとHDIアダクトの成分比及び濃度(質量%)を、それぞれ、表1のような組成のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。コーティング組成物に添加されるHDI系ポリイソシアネートの成分濃度が、本発明のコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれのコーティング組成物の成分、配合割合の影響及び評価は、表1に示したとおりである。
比較例1-1~1-3には、本発明の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして比較例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0053】
【0054】
実施例2-1~1-5のコーティング組成物は、添加する変性シリコーンオイルの濃度(質量%)を、それぞれ、表2のような組成のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。コーティング組成物に添加される変性シリコーンオイルとして、好ましいアミノ変性メチルポリシロキサン(側鎖型)を用いたもので、その成分濃度が、本発明のコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれのコーティング組成物の成分、配合割合の影響及び評価は、表2に示したとおりである。
比較例2-1及び2-2には、本発明の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして比較例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0055】
【0056】
実施例3-1~3-7のコーティング組成物は、添加するシリカ粒子の粒径サイズとその濃度(質量%)を、それぞれ、表3のような組成のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。コーティング組成物に添加されるシリカ粒子の大きさ及び成分濃度が、本発明のコーティング組成物の塗膜に対してどのような影響を
及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれのコーティング組成物での影響及び評価は、表3に示したとおりである。
また、比較例3-1~3-4には、剥離性フィルムとして使用されている従来技術のETFEフィルム、PETフィルム及び本発明の本発明の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして比較例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0057】
【0058】
実施例4-1~4-4のコーティング組成物は、添加する触媒の濃度(質量%)を、それぞれ、表4のような組成のものに変更する以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。コーティング組成物に添加される触媒としてチタンジイソプロポキシビスエチルアセトアセテートを好ましく用いたもので、その濃度が、本発明のコーティング組成物の塗膜形成に対してどのような影響を及ぼしているか確認するため上記実施例と同様、上記評価方法により測定、評価した。それぞれのコーティング組成物での影響及び評価は、表4に示したとおりである。
比較例4-1~4-3には、本発明の実施例としても問題ない機能、性能を有しているが、多面的に評価したとき好ましくない面が発現されるものについて評価基準から外れたものとして比較例として挙げたものであり、本発明の範囲内での相対的な比較対象を例示したものである。
【0059】
【0060】
本発明のコーティング組成物は、表1~4に示したとおり剥離性の機能を有し、基本的に離型に適合し得る性質及び物性を備えることができ、剥離性を構成するコーティング組成物の成分組成及び割合を調製することで、用途に適合した離型性等の機能を与えることができるものである。そして、離型性層をコーティングにより塗膜として適用でき、作業性に優れ、効率よく製造できるコーティング組成物を得ることができたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の剥離性コーティング組成物は、剥離性表面を形成する必要のある、工程フィルム、成形品の表面保護など産業資材としての用途の材料のみならず、家電製品、玩具など生活用品などの生活資材としての用途の材料としても利用できる。