(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】風力発電装置の出力制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H02P9/00 F
(21)【出願番号】P 2018126672
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】小野 広平
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0163544(US,A1)
【文献】特開2013-183491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車と、前記風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備える風力発電装置において、直流の入力電圧が印加されると交流に変換して交流電力の系統に供給し入力電圧が規定電圧よりも高いときは入力電圧に係わらずに出力を規定電力に維持する特性を持つインバータ装置と前記発電機との間に介在する出力制御装置であって、
前記発電機から入力される交流の電力を直流に変換する整流手段と、
この整流手段に対して前記インバータ装置と並列に接続された抵抗または蓄電手段からなる電力吸収手段と、
入力電圧が規定電圧よりも高いときのみ前記電力吸収手段へ電流が流れることを許容する入力電圧規制手段とを備え、
この入力電圧規制手段の前記規定電圧が前記インバータ装置の前記規定電圧よりも高い、
風力発電装置の出力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の風力発電装置の出力制御装置において、前記インバータ装置がパワーコンディショナーである風力発電装置の出力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の風力発電装置の出力制御装置において、
前記整流手段で整流された電力を昇圧し出力側が前記インバータ装置および前記入力電圧規制手段に接続される昇圧オンオフ可能な昇圧回路と、
この昇圧回路を制御する昇圧制御手段とを備え、
この昇圧制御手段は、
前記風車の回転数、発電機の回転数、発電機の発電電圧、発電機の発電電力、発電機の入力エネルギー、および風速のうちのいずれかである風車状況値を監視し、この風車状況値が、風車の動作の安全上で定められた閾値を超えるかまたは達したことを検出してブレーキ指令を出力するブレーキ開始条件判定手段と、前記ブレーキ指令に応答して前記昇圧回路に昇圧動作させる出力処理手段とを有する、
風力発電装置の出力制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の風力発電装置の出力制御装置において、前記入力電圧規制手段が、降圧回路と、この降圧回路を制御する降圧制御手段とでなる風力発電装置の出力制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の風力発電装置の出力制御装置おいて、前記パワーコンディショナーが、入力電圧と出力電力の関係が定められたテーブルに従って出力電力を制御するテーブル制御手段を有する風力発電装置の出力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風速が速くなり過ぎたときに、風車にブレーキを掛ける風力発電装置の出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風速が速くなり、風車の回転速度が速くなり過ぎると、風車の強度的な安全等のため、風車にブレーキを掛けることが必要である。
従来、風車にブレーキを掛ける形式として、例えば
図8に示すように、発電機3をリレー回路71等で三相短絡させることにより、発電機3の内部抵抗により、電気的ブレーキに必要な熱を消費することが提案されている(例えば、特許文献1,2)。発電機3は、パワーコンディショナー5を介して系統8に接続されており、発電機3とパワーコンディショナー5との間に前記リレー回路71が設けられる。
【0003】
風車にブレーキを掛ける他の形式として、
図9に示すように、発電機3の電力を抵抗72に流すことにより、電気的ブレーキに必要な熱を消費する形式がある。抵抗72の前段に降圧回路73を設ける場合ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-339856号公報
【文献】特開2008-5612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風車の前記各ブレーキ形式は、いずれも、ブレーキ動作時に、系統への供給電力が失われるという課題がある。
また、発電機3の内部抵抗で制動のための電力を消費する形式(
図8)は、発電機3に大電流が流れ、信頼性を損ねる恐れがある。
前記抵抗72で電力消費する形式の場合(
図9)は、電力消費のための抵抗72に大きなものが必要であり、ブレーキシステムのコストが高い。
【0006】
この発明は、上記課題を解消するものであり、その目的は、風車のブレーキ動作時にも系統に優先的に電力を供給でき、かつブレーキ動作のために設けられる抵抗等の電力吸収手段が小さなもので済み、低コストの構成で風車のブレーキ動作を行わせることができる風力発電装置の出力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の風力発電装置の出力制御装置4は、風車1と、前記風車1の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機3とを備える風力発電装置において、直流の入力電圧V1が印加されると交流に変換して交流電力の系統8に供給し入力電圧V1が規定電圧V10よりも高いときは入力電圧V1に係わらずに出力を規定電力に維持する特性を持つインバータ装置5と前記発電機3との間に介在する出力制御装置4であって、
前記発電機3から入力される交流の電力を直流に変換する整流手段22と、
この整流手段22に対して前記インバータ装置5と並列に接続された抵抗または蓄電手段からなる電力吸収手段32と、
入力電圧V2が規定電圧V20よりも高いときのみ前記電力吸収手段32へ電流が流れることを許容する入力電圧規制手段31とを備え、
この入力電圧規制手段31の前記規定電圧V20が前記インバータ装置5の前記規定電圧V10よりも高い。
【0008】
この構成によると、風車1の回転により発電機3で発電されて整流手段22で直流とされた電力は、インバータ装置5に入力され、ここで系統8に供給可能な交流に変換されて系統8に供給される。インバータ装置5は、入力電圧V1が規定電圧V10よりも高いときは入力電圧V1に係わらずに出力を規定電力に維持する特性を持ち、風速が増速して発電機3の発電電圧がある程度高くなると、インバータ装置5から系統8へは規定電力が供給されることになる。常時は、この発電電圧の範囲で運転される。
【0009】
風速がさらに増し、風車1の回転速度が安全上で好ましくない程度まで上がると、発電機3で発電された電圧が、入力電圧規制手段31の規定電圧V20以上になる。この状態になると、発電電力の一部が、抵抗または蓄電手段からなる電力吸収手段32に流れ、発電機3の負荷が増大する。そのため、風車1にブレーキ力が作用し、風車1の回転速度を安全が確保できる速度に保持し、あるいは停止し、風車1の強度的な安全が得られる。この電力吸収手段32に電力が流れ、風車1の制動が行われる間も、インバータ装置5の規定電圧V10は入力電圧規制手段31の規定電圧V20よりも低いため、インバータ装置5から系統8へ電力が供給される。また、制動時もインバータ装置5に電力が流れるため、制動時に電力吸収手段32のみに電力消費させる構成に比べて、抵抗等の電力吸収手段32が小さなもので済み、低コストの構成で風車1のブレーキ動作を行わせることができる。
【0010】
このように、入力電圧規制手段31を設けることで、入力電圧V2が規定電圧V20よりも高いときのみ電力吸収手段32に電力が流れるようにし、またこの規定電圧V20をインバータ装置5の規定電圧V10よりも高くして、優先的にブレーキ時の電力をインバータ装置5に供給するようにしたため、風車1のブレーキ動作時であっても系統8への電力供給を保つことが可能となる。また、ブレーキ動作のために設けられる抵抗等の電力吸収手段32が小さなもので済み、低コストの構成で風車1のブレーキ動作を行わせることができる。
【0011】
なお、この明細書において、「インバータ装置5」は、直流を交流に変換する機能を有するコントローラを言い、パワーコンディショナーおよびバッテリーチャージコントローラーを含む。バッテリーチャージコントローラーは、通常でバッテリーに供給する独立電源システムで使用される。
この発明において、前記「インバータ装置5」として、パワーコンディショナーを用いてもよい。この明細書において、「パワーコンディショナー」とは、直流で入力される発電電力を系統8に供給できる交流電力に変換する装置を言う。
現在、一般に小形風車1で使用されているパワーコンディショナーなどのインバータ装置5は、入力電圧に応じて系統8に供給可能な電力を規定するテーブル制御方式が主流であり、電圧が上昇するにつれて電力を多く取る設定を行っている。そのため、前記の「入力電圧V1が規定電圧V10よりも高いときは入力電圧V1に係わらずに出力を規定電力に維持する」と言う特性は、一般的なパワーコンディショナーが持つ特性であり、特殊な構成のインバータ装置5は不要である。
なお、市販品のインバータ装置には、マップではなく規定電圧を供給すると系統側に電力を供給するものがある。保護機能については、そのインバータ装置も同様であり、電力が大きい場合は、出力電力は変わらないが入力の電圧を上げる。よって、このようなインバータ装置も使用可能である。
【0012】
この発明において、前記整流手段22で整流された電力を昇圧し出力側が前記インバータ装置5および前記入力電圧規制手段31に接続される昇圧オンオフ可能な昇圧回路21と、この昇圧回路21を制御する昇圧制御手段23とを備え、
この昇圧制御手段23は、
前記風車1の回転数、発電機3の回転数、発電機3の発電電圧、発電機3の発電電力、発電機の入力エネルギー、および風速のうちのいずれかである風車状況値を監視し、この風車状況値が、風車1の動作の安全上で定められた閾値を超えるかまたは達したことを検出してブレーキ指令を出力するブレーキ開始条件判定手段29と、前記ブレーキ指令に応答して前記昇圧回路21に昇圧動作させる出力処理手段28とを有していてもよい。
【0013】
この構成の場合、風速が風車1の安全上で好ましくない程度まで速くなって、風車1の回転数、発電機3の回転数、発電機3の発電電圧、発電機3の発電電力、発電機の入力エネルギー、および風速のうちのいずれかが閾値を超えるかまたは達すると、ブレーキ開始条件判定手段29がブレーキ指令を出し、これに応答して出力処理手段が昇圧回路21に昇圧動作を開始させる。
風車1に速度超過でブレーキを掛けるとき、前記昇圧が行われることで、インバータ装置5から系統8に供給される電力は、インバータ装置5の前記特性のために一定であるが、電力吸収手段32に流れる電力は増大する。そのため、風車1を制動させる作用が高まり、風車1がより短時間で停止する。
【0014】
なお、ブレーキ開始条件判定手段29は、風車1の回転数、発電機3の回転数、発電機3の発電電圧、発電機3の発電電力、発電機の入力エネルギー、および風速のうち、複数種の監視を行い、いずれか一つ種類の風車状況値が閾値以上になるとブレーキ指令を出力するようにしてもよく、また複数種類の値が閾値以上にあることでブレーキ指令を出力するようにしてよい。
前記「閾値」は、風車1の回転数や発電機3の発電電圧等の個々に応じて定められる値である。
【0015】
この発明において、前記入力電圧規制手段31が、降圧回路21と、この降圧回路21を制御する降圧制御手段38とでなる構成であってもよい。
降圧回路21を用いると、入力電圧V2が規定電圧V20よりも高いときのみ電力を流す構成が、一般的な構成で得られる。
【0016】
この発明において、前記インバータ装置5が、入力電圧V1と出力電力の関係が定められたテーブルに従って出力電力を制御するテーブル制御手段5bを有していてもよい。
前述のように、現在一般的に用いられているインバータ装置5はテーブル制御形式が一般的であり、この一般的な構成のインバータ装置5をこの発明の風力発電装置の出力制御装置4に適用することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の風力発電装置の出力制御装置は、風車と、前記風車の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備える風力発電装置において、直流の入力電圧が印加されると交流に変換して交流電力の系統に供給し入力電圧が規定電圧よりも高いときは入力電圧に係わらずに出力を規定電力に維持する特性を持つインバータ装置と前記発電機との間に介在する出力制御装置であって、前記発電機から入力される交流の電力を直流に変換する整流手段と、この整流手段に対して前記インバータ装置と並列に接続された抵抗または蓄電手段からなる電力吸収手段と、入力電圧が規定電圧よりも高いときのみ前記電力吸収手段へ電流が流れることを許容する入力電圧規制手段とを備え、この入力電圧規制手段の前記規定電圧が前記インバータ装置の前記規定電圧よりも高いため、風車のブレーキ動作時にも系統に優先的に電力を供給でき、かつブレーキ動作のために設けられる抵抗等の電力吸収手段が小さなもので済み、低コストの構成で風車のブレーキ動作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の一実施形態に係る出力制御装置を備えた風力発電装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】同風力発電装置の概念構成例のブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る出力制御装置を用いた場合のテーブル制御手段における入力電圧と出力電圧の関係例を示図である。
【
図4】同出力制御装置の昇圧回路の昇圧制御の一例を示すブロック図である。
【
図5】同出力制御装置の入力電圧規制手段の電圧一定制御の一例を示すブロック図である。
【
図8】従来の風力発電装置における電気的なブレーキの一例の概念構成を示すブロック図である。
【
図9】従来の風力発電装置における電気的なブレーキの他の例の概念構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を
図1ないし
図7と共に説明する。
図1は、この出力制御装置を備えた風力発電装置の一例を示す。この風力発電装置は、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する風車1と、風車1の主軸2にカップリング(図示せず)等で連結されて風車1の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機3と、この発電機3と系統8の間に介在するインバータ装置であるパワーコンディショナー5とを備え、前記発電機3とパワーコンディショナー5との間に、この実施形態に係る出力制御装置4が介在する。
発電機3は、例えば三相同期発電機である。系統8は交流商用電力系統等の交流電力の系統である。発電機3および系統8は、三相と単相のいずれでも良く、また発電機3と系統8のいずか片方が三相、もう片方が単相であってもよいが、
図2に示す例はいずれも三相である例を示す。風車1と発電機3との間に増速機(図示せず)を備えていてもよい。
【0020】
<風車1>
風車1は、垂直軸風車および水平軸風車(プロペラ型風車)のいずれでもよいが、この例では
図6,7に一例を示す垂直軸型風車が用いられている。この垂直軸型の風車1は、主軸2の回りに上下方向に延びる複数の羽根11がアーム12を介して取付けられて回転翼13を構成し、主軸2が軸受14を介してフレーム15に支持されている。各羽根11は、羽根本体11aの上下両端にウイングレット11bが設けられている。なお、主軸2は、
図1では模式化のために水平姿勢で図示している。
【0021】
<パワーコンディショナー5>
パワーコンディショナー5は、直流で入力される発電電力を交流電力の系統8に供給可能な交流電力に変換する装置である。
図2に示すように、パワーコンディショナー5は、入力された直流電力を交流電力に変換するインバータ5aと、テーブル制御手段5bとを備え、テーブル制御手段5bの機能により、入力電圧V1が規定電圧V1
0よりも高いときは入力電圧V1に係わらずに出力を規定電力に維持する特性を持つ。テーブル制御手段5bは、この他にDC/DCコンバータ、および出力電流を系統8の位相に整合させる位相調整手段(いずれも図示せず)を有する。
【0022】
<テーブル制御手段5b>
テーブル制御手段5bは、
図3に示す入力電圧V1と出力電力の関係を定めたテーブルを有し、このテーブルに従って出力電力を制御する。同図のテーブルでは、零から規定電圧(「定格電圧」と称する場合がある)V1
0までは、入力電圧V1が高くなるに従って大きくなり、入力電圧V1が規定電圧V1
0を超えると、入力電圧V1が高くなっても出力電力が規定電力のまま一定となるように定められている。テーブル制御手段5bによる電力の制御は、インバータ5aのPWM制御等で行う。出力する交流は、単相交流であっても、三相交流であっても良いが、
図2は三相交流の場合の例を示している。
【0023】
<出力制御装置4の概要>
図1において、出力制御装置4は、発電機から入力される交流の電力を直流に変換する整流手段22と、昇圧回路21と、昇圧回路21に対してパワーコンディショナー5と並列に接続された電力吸収手段32と、入力電圧V2が規定電圧V2
0よりも高いときのみ前記電力吸収手段32へ電流が流れることを許容する入力電圧規制手段31とを備える。
【0024】
<電力吸収手段32等>
整流手段22は、この例では昇圧回路21の一部として設けられている。昇圧回路21は昇圧制御手段23によって制御される。
電力吸収手段32は、抵抗、いわゆるダンプ抵抗からなるが、蓄電池であってもよい。 入力電圧規制手段31は、降圧回路33と、この降圧回路33を制御する降圧制御手段38とで構成される。
入力電圧規制手段31の規定電圧V20は、パワーコンディショナー5の前記規定電圧V10よりも高く設定されている。例えば、パワーコンディショナー5の規定電圧V10が350Vであると、入力電圧規制手段31の規定電圧V20355Vとされ、5Vの電圧差が設定される。
【0025】
<昇圧回路21等>
図2において、整流回路22は、ダイオードを用いたブリッジ回路等で構成される。
昇圧回路31は、昇圧オンオフおよび昇圧の程度が可変の回路であり、チョッパ回路等で構成される。図示の例では、正側回路部とアース側回路部との間に、スイッチングトラジスタ等のスイッチング素子26とコンデンサ27とが並列に接続され、正側回路部におけるスイッチング素子26とコンデンサ27との間にダイオード25が設けられ、スイッチング素子26よりも上流側にインダクタンス素子45が設けられている。スイッチング素子26をPWM制御等で開閉制御することで、出力電力や入力電圧V2の制御が可能である。
【0026】
<昇圧制御手段23>
昇圧制御手段23は、ブレーキ開始条件判定手段29と、このブレーキ開始条件判定手段29から出力されるブレーキ指令aに応答して昇圧回路21に昇圧動作させる出力処理手段28とを有する、
【0027】
<ブレーキ開始条件判定手段29>
ブレーキ開始条件判定手段29は、風車1の回転数、発電機3の回転数、発電機3の発電電圧、発電機3の発電電力、発電機の入力エネルギー、および風速のうちのいずれかである風車状況値を監視し、この風車状況値が、風車1の動作の安全上で定められた閾値を超えるかまたは達したことを検出して前記ブレーキ指令aを出力する。前記閾値は、風車回転数であるか発電電圧であるか等の風車状況値の種類に応じて定められる。
ブレーキ開始条件判定手段29は、風車1または発電機3の回転数が閾値を超過したことを判定する風車/発電機回転数超過判定部29aと、発電機3の発電電圧が閾値を超過したことを判定する発電電圧超過判定部29bと、発電機3の発電電力が閾値を超過したことを判定する発電電圧超過判定部29cと、風速計(図示せず)で検出される風速が閾値を超過したことを判定する風速超過判定部29dとを有する。ブレーキ開始条件判定手段29は、前記各判定部29a~29dのいずれか1一つ、またはいずれか複数の判定部29a~29dが超過したと判定したとき、前記ブレーキ指令aを出力する。
【0028】
<出力処理手段28>
出力処理手段28は、前記ブレーキ指令aに応答して昇圧回路21に昇圧動作させるときに、主回路部である昇圧回路21の入力電圧を制御する入力電圧制御部28aと、出力電圧を制御する出力電圧制御手段28bと、入力電流を制御する入力電流伊勢虚手段28cとを有する。
【0029】
<入力電圧規制手段31>
前記電力吸収手段32に対する入力電圧規制手段31の降圧回路33は、図示の例では降圧チョッパ回路からなる。この降圧回路33は、正側回路部にスイッチングトラジスタ等のスイッチング素子34とインダクタンス素子36とが入力側から順に設けられ、これらの素子34,36間で正側回路部とアース側回路部との間にタイオード36が設けられ、インダクタンス素子36よりも出力側で正側回路部とアース側回路部との間にコンデンサ37が設けられている。スイッチング素子34をPWM制御等で開閉制御することで、入力電圧V2の制御が可能である。
【0030】
<降圧制御手段38>
降圧制御手段38は、主回路部である降圧回路33の入力電圧V2を規定電圧V20となる一定値に制御するための入力電圧指令値を出力する入力電圧一定制御手段40と、この入力電圧一定制御手段40が出力する信号を用いて前記スイッチング素子34の制御を行う出力処理手段39を有する。
【0031】
出力処理手段39は、降圧回路33の入力電圧V2を制御する入力電圧制御手段41と、出力電圧を制御する出力電圧制御手段42と、出力電流を制御する出力電流制御手段43とを有する。
【0032】
<作用の概略>
上記構成の作用を説明する。
概要を説明すると、発電機3から発生する電力をパワーコンディショナー5およびダンプ抵抗等の電力吸収手段32に供給することにより、風車1の慣性エネルギーおよび風により発生するエネルギーを消費することに必要な電気的エネルギー(電気的ブレーキ)を発生させる。
電気的ブレーキ発生中は、従来ならば発電機で消費させるかダンプ抵抗に流すことが主流であったが、ブレーキ動作時は系統に電力が供給されない問題がある。その為、この実施形態では、系統8に電力を供給しつつ、風車1側のエネルギーが大きく系統8に流しきれない場合は、抵抗等の電力吸収手段32に流すことにより、ブレーキ中であっても系統8の電力を確保するようにしている。
【0033】
<具体的作用>
具体的に作用を説明する。パワーコンディショナー5は、テーブル制御手段5bによるテーブル制御方式であり、
図3と共に前述したように、規定電圧V1
0に達するまでは入力電圧V1が上昇するにつれて電力を多く出力する。入力電圧V1が規定電圧V1
0に達すると、前記パワーコンディショナー5は、前記テーブル制御手段5bのテーブル制御の機能により入力電圧V1が上昇しても出力電力は上昇しない状態となる。
パワーコンディショナー5と並列に抵抗等の電力吸収手段32が設けられているが、この電力吸収手段32により電力吸収が可能となる電圧は、入力電圧規制手段31によって規定電圧V2
0に制限されている。この規定電圧V2
0は、パワーコンディショナー5の入力の規定電圧V1
0よりも高く設定され、優先順位が生じている。そのため、通常時は電力吸収手段32には発電電力が吸収されず、発電電力の全て(回路損失分は除く)がパワーコンディショナー5を介して系統8へ供給される。
【0034】
前記パワーコンディショナー5と電力吸収手段32の前には、発電機3の電圧を昇圧する昇圧回路21が接続されており、風車1にブレーキをかけたいタイミングで昇圧動作が可能である。
風速が増大し、ブレーキ開始条件判定手段28が、風車1か発電機3の回転数、発電電圧、発電電力、入力エネルギー、風速のいずれかが、それぞれの値に対して設定された閾値を超えたと判定すると、ブレーキ指令aを出力する。このブレーキ指令aに応答して、出力処理手段28により昇圧回路21に昇圧動作させる。
【0035】
このように、ブレーキ動作時は、昇圧回路21が昇圧動作し、先ずは、出力電圧がパワーコンディショナー5の規定電圧V10まで上昇する。V10になれば、パワーコンディショナー5から系統8に規定電力が供給される。
さらに風車1側のエネルギーがある場合は、さらに昇圧回路21により出力側の電力が上昇が上昇し、電力吸収手段32の入力規制手段31の規定電圧V20に達する。規定電圧V20に達すると、抵抗等からなる電力吸収手段32に電力が吸い込まれる。
【0036】
電力が流れる動作は、吸込み電圧の低い方から動作される為、系統8に電力を供給するパワーコンディショナー5の次に、抵抗等の電力吸収手段32の順に行われる。そのため、系統8に電力を供給することが最優先される。
また、系統8に電力を供給するパワーコンディショナー5も電気的ブレーキに使用される為、電力吸収手段32の抵抗容量を削減でき、小型化が可能である。
【0037】
図4は、
図2の昇圧制御手段23の出力処理手段による昇圧制御の一例を示す。出力電圧指令値Vref(out) に、比較部51で出力電圧検出値Vout が減算され、その演算値が出力電圧制御手段28bに入力される。出力電圧制御手段28bはPI制御(比例積分制御)を行う。この出力電圧制御手段28bの出力に、比較部52で入力電流検出値Iinが減算され、その演算値が入力電流制御手段28cに入力される。入力電流制御手段28cは、PI制御(比例積分制御)を行う。入力電流制御手段28cの出力は、PWM出力部53によってPWM(パルス幅変調)信号に変換され、昇圧回路21におけるスイッチング素子26(
図2参照)の制御入力端子に入力される。
前記出力電圧指令値Vref(out)は、前記出力制御装置4を構成するマイコン等に予め規定値として記憶された値であり、基本的には前記規定電圧V2
0以上とされる。出力電圧検出値Vout は、昇圧回路21の出力端に設けられた電流検出手段(図示せず)の検出値である。入力電流検出値Iinは、昇圧回路21の整流手段22による整流直後の部位を流れる電流を検出する電流検出手段(図示せず)の検出値である。
図2の入力電圧制御手段28aは、必要に応じて
図4の回路に加えられる。入力電圧制御手段28aは、入力電圧を目標値として制御する場合に使用される。例えば、入力電圧目標値 →0Vとして制御される。
【0038】
図5は、
図2の降圧制御手段38による電圧一定制御の一例を示す。入力電圧指令値Vref(in)に、比較部61で入力電圧検出値Vinが減算され、その演算値が入力電圧制御手段41に入力される。入力電圧制御手段41はPI制御(比例積分制御)を行う。この入力電圧制御手段28bの出力に、比較部62で出力電流検出値Ioが減算され、その演算値が出力電流制御手段43に入力される。出力電流制御手段43は、PI制御(比例積分制御)を行う。出力電流制御手段43の出力は、PWM出力部63によってPWM(パルス幅変調)信号に変換され、降圧回路21におけるスイッチング素子34(
図2参照)の制御入力端子に入力される。
前記入力電圧指令値Vref(in) は、入力一定制御手段40に設定された値である。入力電圧検出値Vin は、降圧回路33の入力端に設けられた電流検出手段(図示せず)の検出値である。出力電流検出値Ioutは、降圧回路33の整流手段22による整流直後の部位を流れる電流を検出する電流検出手段(図示せず)の検出値である。
図2の入力電圧制御手段28aは、必要に応じて
図4の回路に加えられる。
なお、
図4の例では、出力電流を制御していないが、
図5の例では、出力電流の制御も行っている。
【0039】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1…風車
3…発電機
4…出力制御装置
5…パワーコンディショナー(インバータ装置)
5a…インバータ
8…系統
5b…テーブル制御手段
21…昇圧回路
22…整流手段
28…出力処理手段
29… ブレーキ開始条件判定手段
31…入力電圧規制手段
32…電力吸収手段
33…降圧回路
38…降圧制御手段