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特許7068953室外熱交換器およびこれを用いたヒートポンプ式冷凍サイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】室外熱交換器およびこれを用いたヒートポンプ式冷凍サイクル
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20220510BHJP
   F28F 27/02 20060101ALI20220510BHJP
   F28F 9/26 20060101ALI20220510BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20220510BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F25B39/00 N
F28F27/02 C
F28F9/26
F25B43/00 A
B60H1/32 613E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018139376
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020016385
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 理
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-012823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00-39/04
F28F 27/02
F28F 9/26
F25B 43/00
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房および暖房に利用されるヒートポンプ式冷凍サイクルの室外熱交換器であって、
第1熱交換部と、第1熱交換部の下方に設けられた第2熱交換部と、第1熱交換部の上方に設けられた第3熱交換部とを備え、各熱交換部が入口ヘッダおよび出口ヘッダを有し、第2熱交換部の入口ヘッダが第1熱交換部の出口ヘッダよりも下方に位置するとともに、第3熱交換部の入口ヘッダが第1熱交換部の出口ヘッダよりも上方に位置し、第2熱交換部の入口ヘッダと第3熱交換部の入口ヘッダとが上下方向にのびる中空状気液分離部により通じさせられるとともに、第1熱交換部の出口ヘッダと気液分離部とが通じさせられており
第1熱交換部の入口ヘッダに冷媒入口が設けられ、第2熱交換部の出口ヘッダに冷房時の冷媒出口が設けられ、第3熱交換部の出口ヘッダに暖房時の冷媒出口が設けられており、
第1熱交換部の出口ヘッダから流出して気液分離部に流入した冷媒が、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒が第2熱交換部の入口ヘッダに入り、気相冷媒が第3熱交換部の入口ヘッダに入るようになされている室外熱交換器
【請求項2】
第1熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第1ヘッダタンクと、両第1ヘッダタンク間に設けられかつ両第1ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第1熱交換パスとを有し、第2熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第2ヘッダタンクと、両第2ヘッダタンク間に設けられかつ両第2ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第2熱交換パスとを有し、第3熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第3ヘッダタンクと、両第3ヘッダタンク間に設けられかつ両第3ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第3熱交換パスとを有し、
第1熱交換部の一方の第1ヘッダタンクに出口ヘッダが設けられ、第2熱交換部における第1熱交換部の出口ヘッダが設けられた第1ヘッダタンクと同じ側に配置された第2ヘッダタンクに入口ヘッダが設けられ、第3熱交換部における第1熱交換部の出口ヘッダが設けられた第1ヘッダタンクと同じ側に配置された第3ヘッダタンクに入口ヘッダが設けられている請求項1記載の室外熱交換器
【請求項3】
左右いずれか一端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1熱交換部の第1熱交換パスが通じる第1筒状体と、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第2熱交換部の第2熱交換パスおよび第3熱交換部の第3熱交換パスが通じる第2筒状体とが、第2筒状体が第1筒状体よりも左右方向外側に位置するように配置され、左右いずれか他端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1~第3熱交換部の第1~第3熱交換パスが通じる第3筒状体が配置され、第2筒状体および第3筒状体の上端が第1筒状体の上端よりも上方に位置するとともに、第2筒状体および第3筒状体の下端が第1筒状体の下端よりも下方に位置し、
第1筒状体に第1熱交換部の出口ヘッダを有する第1ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第1筒状体の下端よりも下方に位置する部分に第2熱交換部の入口ヘッダを有する第2ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第1筒状体の上端よりも上方に位置する部分に第3熱交換部の入口ヘッダを有する第3ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第2熱交換部の第2ヘッダタンクと第3熱交換部の第3ヘッダタンクとの間の部分に気液分離部が設けられており、第3筒状体に、第1熱交換部の他方の第1ヘッダタンク、第2熱交換部の出口ヘッダを有する第2ヘッダタンクおよび第3熱交換部の出口ヘッダを有する第3ヘッダタンクが設けられている請求項2記載の室外熱交換器
【請求項4】
圧縮機、車室外であるエンジンルームに配置され、かつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器、冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を減圧する第1減圧器、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から放熱して凝縮させる暖房時冷媒凝縮器、および暖房時に暖房時冷媒凝縮器を通過した冷媒を減圧する第2減圧器を備えており、室外熱交換器が、請求項1~3のうちのいずれかに記載の室外熱交換器からなり、
冷房運転モードにおいて、圧縮機で圧縮された冷媒が、室外熱交換器の第1熱交換部の入口ヘッダの冷媒入口を通って第1熱交換部内に流入するとともに第1熱交換部内を流れる間に放熱し、放熱した冷媒が出口ヘッダから流出して気液分離部に流入して気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒が第2熱交換部の入口ヘッダに入り、第2熱交換部を流れる間に過冷却されて出口ヘッダに入り、冷房時の冷媒出口から流出して第1減圧器を経てエバポレータに送られるようになっており、
暖房運転モードにおいて、圧縮機で圧縮された冷媒が暖房時冷媒凝縮器に送られて暖房時冷媒凝縮器を通過する間に放熱し、放熱した冷媒が第2減圧器で減圧された後に室外熱交換器の第1熱交換部の入口ヘッダを通って第1熱交換部内に流入するとともに第1熱交換部を流れる間に外気から熱を奪って蒸発し、外気から熱を奪った冷媒が出口ヘッダから流出して気液分離部内入り、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、気相冷媒が第3熱交換部の入口ヘッダ内に入り、第3熱交換部を流れる間に外気からさらに熱を奪って蒸発して出口ヘッダに入り、暖房時の冷媒出口から流出するようになっているヒートポンプ式冷凍サイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばカーエアコンを構成するヒートポンプ式冷凍サイクルの室外熱交換器として用いられる室外熱交換器に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1図3の上下、左右を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
ハイブリッド自動車や、電気自動車などの比較的廃熱の少ない車両のカーエアコンを構成するヒートポンプ式冷凍サイクルとして、圧縮機、車室外に配置され、かつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器、冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を減圧する第1減圧器、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ、エンジンルーム内に配置され、かつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒からエンジン冷却液に熱を放熱して凝縮させるとともに加熱したエンジン冷却液を車室内の暖房に利用する中間熱交換器、暖房時に中間熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2減圧器、およびエンジンルーム内に配置され、かつ冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を気液分離して液相冷媒を第1減圧器に送るとともに暖房時に室外熱交換器を通過した冷媒を気液分離して気相冷媒を圧縮機に送る気液分離/受液装置を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のヒートポンプ式冷凍サイクルにおいては、気液分離/受液装置を必要とするので、部品点数が増えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-171284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、ヒートポンプ式冷凍サイクルの室外熱交換器として使用した場合に、部品点数の少ないヒートポンプ式冷凍サイクルを実現しうる室外熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)冷房および暖房に利用されるヒートポンプ式冷凍サイクルの室外熱交換器であって、
第1熱交換部と、第1熱交換部の下方に設けられた第2熱交換部と、第1熱交換部の上方に設けられた第3熱交換部とを備え、各熱交換部が入口ヘッダおよび出口ヘッダを有し、第2熱交換部の入口ヘッダが第1熱交換部の出口ヘッダよりも下方に位置するとともに、第3熱交換部の入口ヘッダが第1熱交換部の出口ヘッダよりも上方に位置し、第2熱交換部の入口ヘッダと第3熱交換部の入口ヘッダとが上下方向にのびる中空状気液分離部により通じさせられるとともに、第1熱交換部の出口ヘッダと気液分離部とが通じさせられており
第1熱交換部の入口ヘッダに冷媒入口が設けられ、第2熱交換部の出口ヘッダに冷房時の冷媒出口が設けられ、第3熱交換部の出口ヘッダに暖房時の冷媒出口が設けられており、
第1熱交換部の出口ヘッダから流出して気液分離部に流入した冷媒が、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒が第2熱交換部の入口ヘッダに入り、気相冷媒が第3熱交換部の入口ヘッダに入るようになされている室外熱交換器
【0009】
2)第1熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第1ヘッダタンクと、両第1ヘッダタンク間に設けられかつ両第1ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第1熱交換パスとを有し、第2熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第2ヘッダタンクと、両第2ヘッダタンク間に設けられかつ両第2ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第2熱交換パスとを有し、第3熱交換部が、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第3ヘッダタンクと、両第3ヘッダタンク間に設けられかつ両第3ヘッダタンク間で冷媒を流す少なくとも1つの第3熱交換パスとを有し、
第1熱交換部の一方の第1ヘッダタンクに出口ヘッダが設けられ、第2熱交換部における第1熱交換部の出口ヘッダが設けられた第1ヘッダタンクと同じ側に配置された第2ヘッダタンクに入口ヘッダが設けられ、第3熱交換部における第1熱交換部の出口ヘッダが設けられた第1ヘッダタンクと同じ側に配置された第3ヘッダタンクに入口ヘッダが設けられている上記1)記載の室外熱交換器
【0010】
3)左右いずれか一端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1熱交換部の第1熱交換パスが通じる第1筒状体と、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第2熱交換部の第2熱交換パスおよび第3熱交換部の第3熱交換パスが通じる第2筒状体とが、第2筒状体が第1筒状体よりも左右方向外側に位置するように配置され、左右いずれか他端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1~第3熱交換部の第1~第3熱交換パスが通じる第3筒状体が配置され、第2筒状体および第3筒状体の上端が第1筒状体の上端よりも上方に位置するとともに、第2筒状体および第3筒状体の下端が第1筒状体の下端よりも下方に位置し、
第1筒状体に第1熱交換部の出口ヘッダを有する第1ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第1筒状体の下端よりも下方に位置する部分に第2熱交換部の入口ヘッダを有する第2ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第1筒状体の上端よりも上方に位置する部分に第3熱交換部の入口ヘッダを有する第3ヘッダタンクが設けられ、第2筒状体における第2熱交換部の第2ヘッダタンクと第3熱交換部の第3ヘッダタンクとの間の部分に気液分離部が設けられており、第3筒状体に、第1熱交換部の他方の第1ヘッダタンク、第2熱交換部の出口ヘッダを有する第2ヘッダタンクおよび第3熱交換部の出口ヘッダを有する第3ヘッダタンクが設けられている上記2)記載の室外熱交換器
【0011】
4)圧縮機、車室外であるエンジンルームに配置され、かつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器、冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を減圧する第1減圧器、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から放熱して凝縮させる暖房時冷媒凝縮器、および暖房時に暖房時冷媒凝縮器を通過した冷媒を減圧する第2減圧器を備えており、室外熱交換器が、請求項1~3のうちのいずれかに記載の室外熱交換器からなり、
冷房運転モードにおいて、圧縮機で圧縮された冷媒が、室外熱交換器の第1熱交換部の入口ヘッダの冷媒入口を通って第1熱交換部内に流入するとともに第1熱交換部内を流れる間に放熱し、放熱した冷媒が出口ヘッダから流出して気液分離部に流入して気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒が第2熱交換部の入口ヘッダに入り、第2熱交換部を流れる間に過冷却されて出口ヘッダに入り、冷房時の冷媒出口から流出して第1減圧器を経てエバポレータに送られるようになっており、
暖房運転モードにおいて、圧縮機で圧縮された冷媒が暖房時冷媒凝縮器に送られて暖房時冷媒凝縮器を通過する間に放熱し、放熱した冷媒が第2減圧器で減圧された後に室外熱交換器の第1熱交換部の入口ヘッダを通って第1熱交換部内に流入するとともに第1熱交換部を流れる間に外気から熱を奪って蒸発し、外気から熱を奪った冷媒が出口ヘッダから流出して気液分離部内入り、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、気相冷媒が第3熱交換部の入口ヘッダ内に入り、第3熱交換部を流れる間に外気からさらに熱を奪って蒸発して出口ヘッダに入り、暖房時の冷媒出口から流出するようになっているヒートポンプ式冷凍サイクル
【発明の効果】
【0012】
上記1)~3)の室外熱交換器によれば、ヒートポンプ式冷凍サイクルに使用した場合、冷房時には、圧縮機で圧縮された高温高圧の気相冷媒が第1熱交換部の入口ヘッダ内に流入し、第1熱交換部において外気により冷却されて凝縮させられた状態で出口ヘッダ内に入る。第1熱交換部の出口ヘッダ内に入った冷媒は、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒が第2熱交換部の入口ヘッダに入って貯められる。第2熱交換部の入口ヘッダ内に貯められた液相冷媒は、第2熱交換部において外気により過冷却された後に出口ヘッダに入り、冷房時冷媒減圧器を経て車室内のエバポレータに送られ、その後圧縮機に送られる。
【0013】
一方、暖房時には、圧縮機で圧縮された高温高圧の液相冷媒が、暖房時冷媒凝縮器により冷却されて凝縮させられるとともに暖房時冷媒減圧器により減圧された状態で第1熱交換部の入口ヘッダ内に入り、第1熱交換部において屋外空気に放熱することにより蒸発させられて出口ヘッダ内に入る。第1熱交換部の出口ヘッダ内に入った冷媒は、気液分離部において重力により液相冷媒と気相冷媒とに分離され、気相冷媒が第3熱交換部の入口ヘッダに入る。第3熱交換部の入口ヘッダ内に入った冷媒は、第3熱交換部において外気に放熱した後に出口ヘッダ内に入り、気相冷媒のみが圧縮機に送られる。
【0014】
上述したように、上記1)の室外熱交換器が気液分離機能および受液機能を有しているので、この室外熱交換器を用いたヒートポンプ式冷凍サイクルにおいては、特許文献1記載のヒートポンプ式冷凍サイクルのように気液分離/受液装置を必要とせず、部品点数が少なくなる。しかも、配管等のレイアウトもシンプルになるという効果がある。
【0015】
上記2)および3)の室外熱交換器によれば、上記1)の室外熱交換器を比較的簡単に具体化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明による室外熱交換器が室外熱交換器に適用されたカーエアコン用のヒートポンプ式冷凍サイクルを示す概略図である。
図2図1のヒートポンプ式冷凍サイクルの冷房運転モードを示す概略図である。
図3図1のヒートポンプ式冷凍サイクルの暖房運転時のモードを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1はこの発明による室外熱交換器を室外熱交換器に適用したカーエアコン用のヒートポンプ式冷凍サイクルを概略的に示し、図2図1のヒートポンプ式冷凍サイクルの冷房運転時の状態を示し、図3図1のヒートポンプ式冷凍サイクルの暖房運転時の状態を示す。
【0019】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0020】
図1において、ハイブリッド自動車や、電気自動車のカーエアコンに適用されるヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、冷媒を循環させる冷媒循環路(2)、およびヒートポンプ式冷凍サイクル(1)を冷房運転モードと暖房運転モードとに切り替える図示しない制御装置を備えている。
【0021】
冷媒循環路(2)には、圧縮機(3)、車室外であるエンジンルームに配置され、かつ冷房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器(4)、冷房時に室外熱交換器(4)を通過した冷媒を減圧する第1減圧器としての第1膨張弁(5)、車室内に配置されかつ冷房時に第1膨張弁(5)で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(6)、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から放熱して凝縮させる暖房時冷媒凝縮器(7)、および暖房時に暖房時冷媒凝縮器(7)を通過した冷媒を減圧する第2減圧器としての第2膨張弁(8)が設けられている。エバポレータ(6)および暖房時冷媒凝縮器(7)は、送風機(図示略)により車室内に送られる空気が通る通路を有するハウジング(9)内に、エバポレータ(6)が風上側に位置するように配置されている。
【0022】
冷媒循環路(2)は、室外熱交換器(4)における冷房時の冷媒出口(4a)とエバポレータ(6)の冷媒入口(6a)とを通じさせる第1管路(11)、エバポレータ(6)の冷媒出口(6b)と圧縮機(3)とを通じさせる第2管路(12)、圧縮機(3)と暖房時冷媒凝縮器(7)の冷媒入口(7a)とを通じさせる第3管路(13)、暖房時冷媒凝縮器(7)の冷媒出口(7b)と室外熱交換器(4)の冷媒入口(4b)とを通じさせる第4管路(14)、および室外熱交換器(4)における暖房時の冷媒出口(4c)と第1管路(11)の中間部とを通じさせる第5管路(15)とを有する。
【0023】
冷媒循環路(2)の第1管路(11)における第5管路(15)の合流点よりもエバポレータ(6)側には、冷房時に冷媒が流れる冷房時冷媒管路(16)、および暖房時に冷媒が流れる暖房時冷媒管路(17)が並列状に設けられている。第4管路(14)には、冷房時に冷媒が流れる冷房時冷媒管路(18)、および暖房時に冷媒が流れる暖房時冷媒管路(19)が並列状に設けられている。
【0024】
第1膨張弁(5)は冷媒循環路(2)の第1管路(11)の冷房時冷媒管路(16)に設けられ、第2膨張弁(8)は冷媒循環路(2)の第4管路(14)の暖房時冷媒管路(19)に設けられている。
【0025】
冷媒循環路(2)における第1管路(11)への第5管路(15)の合流点に、冷媒の流れ方向を制御する第1三方弁(21)が設けられ、第1管路(11)における冷房時冷媒管路(16)と暖房時冷媒管路(17)との分岐点に、冷媒の流れ方向を制御する第2三方弁(22)が設けられ、第4管路(14)における冷房時冷媒管路(18)と暖房時冷媒管路(19)との分岐点に、冷媒の流れ方向を制御する第3三方弁(23)が設けられている。第1~第3三方弁(21)(22)(23)は制御装置に接続されており、制御装置により第1~第3三方弁(21)(22)(23)が操作されることによって冷媒の流れが適宜切り替えられる。
【0026】
以下、室外熱交換器(4)について、詳細に説明する。
【0027】
室外熱交換器(4)は、第1熱交換部(25)、第1熱交換部(25)の下方に設けられた第2熱交換部(26)、第1熱交換部(25)の上方に設けられた第3熱交換部(27)、ならびに第1熱交換部(25)と第2熱交換部(26)および第3熱交換部(27)とに跨って設けられた中空状気液分離部(28)からなる。各熱交換部(25)(26)(27)は、それぞれ入口ヘッダ(29)(30)(31)および出口ヘッダ(32)(33)(34)を有し、第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)が第1熱交換部(25)の出口ヘッダ(32)よりも下方に位置するとともに、第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)が第1熱交換部(25)の出口ヘッダ(32)よりも上方に位置している。気液分離部(28)は上下方向にのびる中空状であり、第1熱交換部(25)の出口ヘッダ(32)が気液分離部(28)に通じるとともに、第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)と第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)とが気液分離部(28)により通じさせられている。
【0028】
第1熱交換部(25)は、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第1ヘッダタンク(35)と、両第1ヘッダタンク(35)間に設けられかつ両第1ヘッダタンク(35)間で冷媒を流す少なくとも1つ、ここでは3つの第1熱交換パス(P1)とを有している。第1熱交換部(25)の右側第1ヘッダタンク(35)内が、上端の第1熱交換パス(P1)と中間の第1熱交換パス(P1)との間に設けられた仕切部材(36)により上下方向に並んだ2つの区画に仕切られるとともに、同じく左側第1ヘッダタンク(35)内が、中間の第1熱交換パス(P1)と下端の第1熱交換パス(P1)との間に設けられた仕切部材(36)により上下方向に並んだ2つの区画に仕切られている。右側第1ヘッダタンク(35)の仕切部材(36)よりも上方の区画が入口ヘッダ(29)となっているとともに、左側第1ヘッダタンク(35)の仕切部材(36)よりも下方の区画が出口ヘッダ(32)となっている。また、右側第1ヘッダタンク(35)の仕切部材(36)よりも下方の区画および左側第1ヘッダタンク(35)の仕切部材(36)よりも上方の区画が中間ヘッダ(37)となっている。
【0029】
第2熱交換部(26)は、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第2ヘッダタンク(38)と、両第2ヘッダタンク(38)間に設けられかつ両第2ヘッダタンク(38)間で冷媒を流す少なくとも1つ、ここでは1つの第2熱交換パス(P2)とを有している。第2熱交換部(26)の左側第2ヘッダタンク(38)全体が入口ヘッダ(30)となっているとともに右側第2ヘッダタンク(38)全体が出口ヘッダ(33)となっている。
【0030】
第3熱交換部(27)は、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された1対の第3ヘッダタンク(39)と、両第3ヘッダタンク(39)間に設けられかつ両第3ヘッダタンク(39)間で冷媒を流す少なくとも1つ、ここでは1つの第3熱交換パス(P3)とを有する。第3熱交換部(27)の左側第3ヘッダタンク(39)全体が入口ヘッダ(31)となっているとともに右側第3ヘッダタンク(39)全体が出口ヘッダ(34)となっている。
【0031】
図示は省略したが、各熱交換部(25)(26)(27)の熱交換パス(P1)(P2)(P3)は、長手方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されたアルミニウム製コルゲートフィンとを有する。
【0032】
気液分離部(28)は、第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)と第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)との間に設けられている。第1熱交換部(25)の出口ヘッダ(32)と気液分離部(28)とは連通部材(40)を介して通じさせられている。
【0033】
室外熱交換器(4)の左端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1熱交換部(25)の全第1熱交換パス(P1)の熱交換管が通じる第1筒状体(41)と、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第2熱交換部(26)の第2熱交換パス(P2)の熱交換管および第3熱交換部(27)の第3熱交換パス(P3)の熱交換管が通じる第2筒状体(42)とが、第2筒状体(42)が第1筒状体(41)よりも左右方向外側に位置するように配置されている。
【0034】
室外熱交換器(4)の右端側に、長手方向を上下方向に向けるとともに上下両端が閉鎖され、かつ第1~第3熱交換部(25)(26)(27)の第1~第3熱交換パス(P1)(P2)(P3)の熱交換管が通じる第3筒状体(43)が配置されている。
【0035】
第2筒状体(42)および第3筒状体(43)の上下両端はほぼ同一高さ位置にある。また、第2筒状体(42)および第3筒状体(43)の上端が第1筒状体(41)の上端よりも上方に位置するとともに、第2筒状体(42)および第3筒状体(43)の下端が第1筒状体(41)の下端よりも下方に位置している。
【0036】
第1筒状体(41)に第1熱交換部(25)の出口ヘッダ(32)を有する左側第1ヘッダタンク(35)が設けられている。
【0037】
第2筒状体(42)における第1筒状体(41)の下端よりも下方に位置する部分に第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)を有する左側第2ヘッダタンク(38)が設けられ、第2筒状体(42)における第1筒状体(41)の上端よりも上方に位置する部分に第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)を有する左側第3ヘッダタンク(39)が設けられ、第2筒状体(42)における第2熱交換部(26)の左側第2ヘッダタンク(38)と第3熱交換部(27)の左側第3ヘッダタンク(39)との間の部分に気液分離部(28)が設けられている。第2筒状体(42)内は全体に1つの空間となっており、当該空間に第2熱交換部(26)の左側第2ヘッダタンク(38)、第3熱交換部(27)の左側第3ヘッダタンク(39)および気液分離部(28)が互いに通じるように設けられている。連通部材(40)は、第1筒状体(41)と第2筒状体(42)との間に配置されている。
【0038】
第3筒状体(43)における第1筒状体(41)の上下両端間に位置する部分に第1熱交換部(25)の入口ヘッダ(29)および右側中間ヘッダ(37)を有する右側第1ヘッダタンク(35)が設けられている。第3筒状体(43)における第1筒状体(41)の下端よりも下方に位置する部分に第2熱交換部(26)の出口ヘッダ(33)を有する右側第2ヘッダタンク(38)が設けられ、第3筒状体(43)における第1筒状体(41)の上端よりも上方に位置する部分に第3熱交換部(27)の出口ヘッダ(34)を有する右側第3ヘッダタンク(39)が設けられている。右側第1ヘッダタンク(35)、右側第2ヘッダタンク(38)および右側第3ヘッダタンク(39)は、第3筒状体(43)を、下端の第1熱交換パス(P1)と第2熱交換パス(P2)との間の高さ位置、および上端の第1熱交換パス(P1)と第3熱交換パス(P3)との間の高さ位置に配置された分割部材(44)を用いて分割することにより設けられている。
【0039】
上述した構成のヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、制御装置により3つの三方弁(21)(22)(23)が操作されて冷媒の流れ方向が制御されることによって、冷房運転モードと暖房運転モードとに切り替えられる。
【0040】
冷房運転モードにおいては、図2に実線で示すように、冷媒は、冷媒循環路(2)の冷房時冷媒管路(16)を含む第1管路(11)、第2管路(12)、第3管路(13)、冷房時冷媒管路(18)を含む第4管路(14)を流れ、図2に破線で示すように、両暖房時冷媒管路(17)(19)および第5管路(15)には冷媒は流れない。
【0041】
冷房運転モードにおいて、圧縮機(3)で圧縮された冷媒は、暖房時冷媒凝縮器(7)を通過して室外熱交換器(4)の第1熱交換部(25)の入口ヘッダ(29)内に入る。第1熱交換部(25)の入口ヘッダ(29)内に入った冷媒は、すべての第1熱交換パス(P1)を通って外気に放熱して出口ヘッダ(32)に入り、連通部材(40)を通って気液分離部(28)内に入る。
【0042】
気液分離部(28)内に流入した冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相冷媒は重力により第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)内に溜まり、気相冷媒は気液分離部(28)の上部および第3熱交換部(27)に溜まる。第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)内に溜まった液相冷媒は、第2熱交換パス(P2)を通る間に過冷却されて出口ヘッダ(33)に入る。第2熱交換部(26)の出口ヘッダ(33)内に入った液相冷媒は、冷房時冷媒管路(16)を含む第1管路(11)を通りかつ第1膨張弁(5)で減圧された後にエバポレータ(6)に送られ、車室内に送られる空気から熱を奪って蒸発し、その後第2管路(12)を通って圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)において熱を奪われた空気は車室内に送られて冷房に供される。
【0043】
暖房運転モードにおいては、図3実線で示すように、冷媒循環路(2)の第5管路(15)、暖房時冷媒管路(17)を含む第1管路(11)、第2管路(12)、第3管路(13)および暖房時冷媒管路(19)を含む第4管路(14)を冷媒が流れ、図3に破線で示すように、冷媒循環路(2)の第1管路(11)における第1三方弁(21)よりも室外熱交換器(4)側の部分、および両冷房時冷媒管路(16)(18)には冷媒は流れない。
【0044】
暖房運転モードにおいて、圧縮機(3)で圧縮された冷媒は暖房時冷媒凝縮器(7)に送られ、暖房時冷媒凝縮器(7)を通過する際に車室内に送られる空気に放熱する。暖房時冷媒凝縮器(7)おいて熱を受熱した空気は車室内に送られて暖房に供される。
【0045】
暖房時冷媒凝縮器(7)を通過した冷媒は、暖房時冷媒管路(19)を含む第4管路(14)を通り、第2膨張弁(8)で減圧された後に室外熱交換器(4)の第1熱交換部(25)の入口ヘッダ(29)内に入る。第1熱交換部(25)の入口ヘッダ(29)内に入った冷媒は、すべての第1熱交換パス(P1)を通る間に外気から熱を奪って蒸発して出口ヘッダ(32)に入り、連通部材(40)を通って気液分離部(28)内に入る。
【0046】
気液分離部(28)内に流入した冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相冷媒は重力により第2熱交換部(26)の入口ヘッダ(30)内に溜まり、気相冷媒は気液分離部(28)の上部および第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)内に溜まる。第3熱交換部(27)の入口ヘッダ(31)内に溜まった気相冷媒は、第3熱交換パス(P3)を通る間にさらに外気から熱を奪って蒸発し、第3熱交換部(27)の出口ヘッダ(34)に入る。第3熱交換部(27)の出口ヘッダ(34)内に入った気相冷媒は、第5管路(15)、暖房時冷媒管路(17)を含む第1管路(11)を通り、エバポレータ(6)を通過して圧縮機(3)に戻される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明による室外熱交換器は、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や電気自動車のカーエアコンを構成するヒートポンプ式冷凍サイクルの室外熱交換器に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
(1):ヒートポンプ式冷凍サイクル
(2):冷媒循環路
(4):室外熱交換器
(25):第1熱交換部
(26):第2熱交換部
(27):第3熱交換部
(28):気液分離部
(29)(30)(31):入口ヘッダ
(32)(33)(34):出口ヘッダ
(35):第1ヘッダタンク
(38):第2ヘッダタンク
(39):第3ヘッダタンク
(41):第1筒状体
(42):第2筒状体
(43):第3筒状体
(P1):第1熱交換パス
(P2):第2熱交換パス
(P3):第3熱交換パス
図1
図2
図3