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特許7068964聴覚機器の自己較正方法および関連する聴覚機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】聴覚機器の自己較正方法および関連する聴覚機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H04R25/00 J
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018153673
(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2019075777
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】15/703,708
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ピエコヴィアク
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ボーリー
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-235364(JP,A)
【文献】特表2009-512375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0105751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0183012(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0202091(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0055087(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0172839(US,A1)
【文献】特開平10-126893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00-25/04
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道マイクロフォン(10)と、外部マイクロフォン(8)と、レシーバ(16)とを有する聴覚機器(2)の自己較正方法であって、
前記外部マイクロフォン(8)により入力信号を取得すること(102)と、
前記レシーバ(16)により出力信号を提供すること(104)と、
前記外耳道マイクロフォン(10)を使用して前記出力信号を測定すること(105)と、を含み、さらに、
ゲイン設定とフィードバック経路の前記測定出力信号に基づいて出力応答を予測すること(106)と、
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定すること(108)と、
前記差に基づいてゲインパラメータを制御することで前記聴覚機器を較正すること(110)と、を含み、
前記ゲインパラメータは、聴覚機器が配置された状態で鼓膜近傍で測定された音圧レベルと、聴覚機器を装着していない状態で測定された音圧レベルとの差である挿入ゲインである方法。
【請求項2】
前記入力信号を取得すること(102)は、前記入力信号の1以上の特徴を判定すること(102b)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記入力信号を取得すること(102)は、1以上の周波数帯において、前記入力信号の1以上の特徴を判定すること(102b)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出力信号を測定すること(105)は、前記出力信号の前進圧力レベルを判定することを含み、
前記外耳道マイクロフォンによって測定された音圧は、前記前進圧力レベルと反射圧力レベルに分け得る、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲインパラメータを制御することは、1以上の周波数帯でバンドゲインを調整することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲインパラメータを制御することは、前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を低減または最小化することによってゲインを判定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定すること(108)は、1以上の聴覚機器構成パラメータに基づいて実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定すること(108)は、聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定すること(108)は、1以上のアルゴリズムパラメータに基づいて実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定すること(108)は、耳形状を推定すること(108a)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記耳形状を推定すること(108a)は、1以上の外耳道パラメータを判定すること(108b)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記耳形状を推定すること(108a)は、耳を分類すること(108c)を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記1以上の外耳道パラメータは、外耳道長さ、外耳道幅、外耳道の円錐特性、耳容積、挿入深さ、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1以上の外耳道パラメータを判定すること(108b)は、裸耳ゲインの推定、ユーザ入力、音響測定、またはこれらの任意の組み合わせに基づいて実行される、請求項11、請求項11に従属する請求項12、および請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記出力応答を予測すること(106)は、前記聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される、請求項8、および請求項8に従属する請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
出力信号を提供するレシーバと(16)、
入力信号(9)を提供する外部マイクロフォン(8)と、前記出力信号を測定する外耳道マイクロフォン(10)と、を含むマイクロフォンセットと、
前記入力信号(9)に基づいて処理済み出力信号を提供するプロセッサ(14)と、を有し、
ゲイン設定と前記測定出力信号に基づいて出力応答を予測し、前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定し、前記差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成されており、
前記ゲインパラメータは、聴覚機器が配置された状態で鼓膜近傍で測定された音圧レベルと、聴覚機器を装着していない状態で測定された音圧レベルとの差である挿入ゲインである、聴覚機器(2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、聴覚機器の自己較正方法および関連する聴覚機器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、聴覚装置の較正は、何らかの平均的外耳道応答に基づいて行われる。しかし個人の耳は、平均的耳と大きく乖離している可能性がある。推奨される補聴器の較正方法として、実耳測定(real-ear measurement)に対するゲイン(gain)を検証し、必要に応じて調整することが一般的に行われている。実耳較正(real-ear calibration)は、外耳道にプローブ管を入れて行われる。しかし、この較正方法はコストや時間がかかるので、省略されることも多い。
【発明の概要】
【0003】
したがって、実耳測定システムがなくても使用可能な、自己較正可能な聴覚機器および、聴覚機器の自己較正方法が求められている。
【0004】
聴覚機器の自己較正方法が開示される。聴覚機器は、外耳道マイクロフォンと、外部マイクロフォンと、レシーバを有する。方法は、外部マイクロフォンにより入力信号を取得することと、レシーバにより出力信号を提供(送信または出力等)することと、外耳道マイクロフォンを使用して出力信号を測定することを含む。方法は、1以上のゲイン設定に基づいて出力応答を予測することと、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することを含んでいてよい。方法は、当該差に基づいてゲインパラメータを制御することで、聴覚機器を較正することを含む。
【0005】
さらに、出力信号を提供するレシーバと、入力信号を提供する外部マイクロフォンと出力信号を測定する外耳道マイクロフォンを含むマイクロフォンセットと、入力信号に基づいて処理済み出力信号を提供するプロセッサと有する聴覚機器が提供される。聴覚機器は、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、予測出力応答と測定出力信号の差を判定し、差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成される。
【0006】
さらに、入力信号を提供する外部マイクロフォンと出力信号を測定する外耳道マイクロフォンとを含むマイクロフォンセットと、入力信号を処理して、入力信号に基づいて処理済み出力信号を提供するプロセッサと、出力信号を送信するレシーバとを有する聴覚機器が提供される。聴覚機器は聴覚機器設定を制御するように構成されたコントローラを有してもよい。聴覚機器は、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、予測出力応答と測定出力信号の差を判定し、その差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成される。
【0007】
本開示の利点は、聴覚機器が装着された耳において自己較正することにより、ユーザと販売店の両方にとって有益となることを可能にすることである。本開示は、プローブ管測定を利用せずに、目標に近いゲインを実現し得る。
【0008】
聴覚機器(外耳道マイクロフォンと、外部マイクロフォンと、レシーバを有する)の自己較正方法は、外部マイクロフォンにより入力信号を取得することと、レシーバにより出力信号を提供することと、外耳道マイクロフォンを使用して出力信号を測定することと、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測することと、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することと、当該差に基づいてゲインパラメータを制御することにより聴覚機器を較正することを含む。
【0009】
任意で、入力信号を取得することは、入力信号の1以上の特徴を判定することを含む。
【0010】
任意で、入力信号を取得することは、1以上の周波数帯において、入力信号の1以上の特徴を判定することを含む
【0011】
任意で、出力信号を測定することは、出力信号の前進圧力レベルを判定することを含む。
【0012】
任意で、ゲインパラメータを制御することは、1以上の周波数帯で、バンドゲインを調整することを含む。
【0013】
任意で、ゲインパラメータを制御することは、予測出力応答と測定出力信号の差を低減または最小化し、ゲインを判定することを含む。
【0014】
任意で、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、1以上の聴覚機器構成パラメータに基づいて実行される。
【0015】
任意で、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される。
【0016】
任意で、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、1以上のアルゴリズムパラメータに基づいて実行される。
【0017】
任意で、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、耳形状を推定することを含む。
【0018】
任意で、耳形状を推定することは、1以上の外耳道パラメータを判定することを含む。
【0019】
任意で、耳形状を推定することは、耳を分類することを含む。
【0020】
任意で、1以上の外耳道パラメータは、外耳道長さ、外耳道幅、外耳道の円錐特性(conicity)、耳容積、挿入深さ、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0021】
任意で、1以上の外耳道パラメータを判定することは、裸耳ゲインの推定、ユーザ入力、音響測定、またはこれらの任意の組み合わせに基づいて実行される。
【0022】
任意で、出力応答を予測することは、聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される。
【0023】
任意で、レシーバは、聴覚機器の外耳道部内に配置される。
【0024】
任意で、入力信号を取得することは、外部装置から測定信号を取得することを含む。
【0025】
聴覚機器は、出力信号を提供するレシーバと、入力信号を提供する外部マイクロフォンと出力信号を測定する外耳道マイクロフォンを含むマイクロフォンセットと、入力信号に基づいて処理済み出力信号を提供するプロセッサを有する。聴覚機器は、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、予測出力応答と測定出力信号の差を判定し、当該差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の上述の特徴及び利点と、他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示的な実施形態の詳細な記載によって当業者には容易に明らかになるだろう。
図1】本開示に係る例示的聴覚機器を示す概略図である。
図2】聴覚機器のユーザの外耳道内に部分的に挿入された例示的聴覚機器を示す概略断面図である。
図3】本開示に係る例示的方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
適宜図面を参照しながら、各種実施形態および詳細を以下に説明する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、類似の構造または機能要素は図面全体にわたって同じ参照番号により表されるという点に留意すべきである。また、図面は実施形態の説明を容易にすることを意図するものに過ぎないことに留意すべきである。図面は、本発明の完全な説明としても、または本発明の範囲に対する制限としても意図されていない。加えて、図示した実施形態は、示されるすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態とともに記載される態様または利点は必ずしも、その実施形態に限定されず、示されていない、または明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施可能である。
【0028】
本発明者らは、挿入ゲイン(insertion-gain)および方向性キュー(directional cues)の個人差は、主に耳介によるもので、外耳道マイクロフォン(外耳道内に装着)であれば、実際そのような個人差は吸収できることを発見した。外耳道マイクロフォンでも吸収されない個人差は、外耳道の長さによる共鳴よるものであり、これは方向に依存せず、個人差としてはそう大きくはない。本開示は、このような個人的共鳴を良好に近似でき(具体的には、フィードバック経路に焦点を当てる)、それにより、挿入ゲイン推定を、大幅に改善し、より個人に合わせて実施可能とする。本開示の利点として、開示の聴覚機器では、追加の測定をすることなく(即ち、実耳測定を一切伴わず)フラットな挿入ゲインが得られる。
【0029】
聴覚機器の自己較正方法が開示される。聴覚機器は、外耳道マイクロフォンと、外部マイクロフォンと、レシーバとを有する。方法は聴覚機器により実行される。方法は、聴覚機器による自己較正に関する。方法は、外部マイクロフォンにより入力信号を取得することを含む。
【0030】
1以上の例示的方法において、外部マイクロフォンにより入力信号を取得することは、外部マイクロフォンによって入力信号を測定することを含む。例えば、外部マイクロフォンにより入力信号を取得することは、外部マイクロフォンによって入力信号を測定し、入力信号を分析することを含む。
【0031】
方法は、レシーバにより出力信号を送信することと、外耳道マイクロフォンを使用して出力信号を測定することを含む。1以上の例示的方法において、聴覚機器は1以上の外耳道マイクロフォンを有していてよく、出力信号を測定することは、1以上の外耳道マイクロフォンを使用して実行されてよい。出力信号は、特定の測定信号および/または環境信号であってよい。測定出力信号は、外耳道マイクロフォンにより測定され、入力とされる出力信号に関連するため、測定出力信号は出力信号を示す外耳道マイクロフォン入力信号とも称され得る。測定出力信号は、外耳道特性の影響を受けた出力信号とみなしてもよい。本開示は、測定出力信号(あるいはそれを示す外耳道マイクロフォン入力信号)に基づく出力信号の変化を定量化することができる。これは、耳形状の推定につながり、さらに聴覚機器の自己較正につながる。
【0032】
方法は、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することを含んでいてよい。1以上の例示的方法において、出力応答を予測することは、聴覚機器のゲイン設定、および/または聴覚機器の機器較正(工場または初期機器較正等)に基づいて実施してよい。当該機器較正は、耳のシミュレーター、および/または平均的耳に基づいて、設計/製造時に実施される。機器較正は、聴覚機器が挿入される際にフラットな挿入ゲインを実現するために、補聴器の出力に適用される修正である、フラットな挿入ゲインに対するカプラー応答(CORFIG)を含んでもよい。標準的なCORFIGは、平均的耳に基づいてもよく、したがって外耳道形状の個人差を考慮しない標準的な測定を表すものであってもよい。
【0033】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、予測出力振幅スペクトルと測定出力振幅スペクトルの差を判定することを含む。出力応答は、レシーバの出力信号を使用して予測してもよい。本開示の利点として、挿入ゲインを測定するための参照情報、即ち裸耳応答(Real Ear Unaided Response:REUR)を把握していなくても出力応答が予測できる。外耳道または外部マイクロフォンとレシーバとが互いに非常に近接している場合、近接場効果が出力応答の予測に影響し得る。物理的耳形状の推定を可能とするため、近接場効果を考慮することを本開示の利点とみなすことができる。
【0034】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、外部マイクロフォンが受信する入力信号と、外耳道マイクロフォンが受信する測定出力信号(外耳道マイクロフォンに対する入力信号を形成)を比較することを含む。レシーバおよび外耳道マイクロフォンのそれぞれの応答がわかっていれば、開放された外耳道(open ear canal)の自然応答または耳を塞ぐことによる影響を考慮できる。さらに/あるいは、外耳道マイクロフォン応答がフラットで、レシーバ応答が開放された耳の応答に近似しているものと仮定できる。開示の方法では、測定トランスデューサ応答(レシーバから外耳道マイクロフォン)が裸耳応答(REUR)を近似してもよい。
【0035】
1以上の例示的方法において、差を判定することは、外部マイクロフォンと外耳道マイクロフォンとで信号を比較し、測定トランスデューサ応答(レシーバから外耳道マイクロフォン)を差し引くことで挿入ゲインを予測することを含んでもよい。
【0036】
方法は、差に基づいてゲインパラメータを制御することで、聴覚機器を較正することを含む。ゲインパラメータは、聴覚機器が配置された状態で鼓膜近傍で測定された音圧レベルと、聴覚機器を装着していない状態で測定された音圧レベルとの差である、挿入ゲインであってもよい。
【0037】
1以上の例示的方法において、入力信号を取得することは、入力信号の1以上の特徴を判定することを含む。例えば、特徴は振幅(例えば最大振幅)および/または位相のような歪みおよび/またはスペクトルを含んでもよい。
【0038】
1以上の例示的方法において、入力信号を取得することは、1以上の周波数帯における1以上の特徴を判定することを含む。例えば、入力信号の1以上の特徴は、周波数帯ごとに独立して測定または判定される。
【0039】
1以上の例示的方法において、出力信号を測定することは、測定出力信号の前進圧力レベルを判定することを含む。外耳道マイクロフォンにより測定される音圧は、前進圧力レベルと反射圧力レベルに分けられる。
【0040】
1以上の例示的方法において、ゲインパラメータを制御することは、1以上の周波数帯で、バンドゲインを調整することを含む。
【0041】
1以上の例示的方法において、ゲインパラメータを制御することは、予測出力応答と測定出力信号の差を最小化し、ゲインを判定することを含む。
【0042】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定することは、1以上の聴覚機器構成パラメータに基づく。例えば、1以上の聴覚機器構成パラメータは、レシーバ配置、レシーバ応答、外部マイクロフォン配置、外部マイクロフォン応答、外耳道マイクロフォン配置、外耳道マイクロフォン応答、通気部(開口部)が存在するか、(存在する場合)開口部の配置、ドームおよび/または通気部のサイズ、ドームおよび/または通気部の配置、および/または想定機器挿入深さを含んでいてよい。
【0043】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定することは、聴覚機器初期較正設定に基づく。
【0044】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定することは、1以上のアルゴリズムパラメータに基づく。例えば、1以上のアルゴリズムパラメータは、スペクトル帯の相互作用、非線形性等のアルゴリズムの特徴を示してもよい。
【0045】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、耳形状を推定することを含む。耳形状は、耳の形、外耳道寸法、および/または耳または外耳道の空間的特性を示すものであってよい。1以上の例示的方法において、耳形状は、耳寸法および/または外耳道タイプを含んでいてよい。予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、予測出力応答と測定出力信号の誤差を計算することとみなしてもよい。1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、1以上の鼓膜特性等、外耳道のその他パラメータを推定することを含んでいてよい。予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、聴覚機器構成を考慮して実施されてもよい。
【0046】
1以上の例示的方法において、耳形状を推定することは、1以上の外耳道パラメータを判定することを含む。1以上の例示的方法において、1以上の外耳道パラメータは、外耳道長さ、外耳道幅、外耳道の円錐特性、耳容積、および/または外耳道マイクロフォン、および/またはレシーバの挿入深さのうちの1以上を含む。
【0047】
1以上の例示的方法において、耳形状を推定することは、外耳道を分類する等、耳を分類することを含む。例えば、1以上の分類をあらかじめ設定していてもよい。複数分類を設定することで、耳形状をより正確に推定し得る。耳または外耳道は、外耳道パラメータに基づいて分類されてよい。耳または外耳道を分類することは、現在試験中の耳または外耳道を示す外耳道タイプを特定することを含んでいてもよい。耳または外耳道を分類することは、耳形状を推定することを含むとみなされてもよい。
【0048】
1以上の例示的方法において、外耳道パラメータを判定することは、裸耳ゲインの推定、ユーザ入力、および/または音響測定に基づく。例えば、外耳道パラメータを判定することは、測定出力信号と予測出力応答の分析に基づいていてもよい。例えば、入力および出力信号(2つのマイクロフォンにより測定)を比較して外耳道パラメータを推定してもよい。予測出力応答と測定出力信号の差を判定することに関し、本発明者らは、長さによる共鳴は、外耳道マイクロフォンの出力応答のスペクトルノッチに直結することが多く、当該ノッチの周波数は、外耳道の残りの長さに応じて異なると判断した。このことにより、外耳道長さが判定できる。外耳道マイクロフォンの出力応答のノッチの周波数が識別されると、分類を使用して、当該周波数におけるノッチを引き起こすと推定される外耳道長さが判定される。この外耳道の適切な実耳挿入ゲイン(REIG)修正は、外耳道マイクロフォンと鼓膜の位置の推定スペクトル差に基づいて判定されてよい。挿入ゲインを修正するため、方法は、推定された実耳挿入ゲインの逆数を適用することを含んでいてよい(目標ゲインは0dBとする)。予測は完全ではないことが想定されるため、推定された実耳挿入ゲインの一部を控えめな修正として使用してもよい。
【0049】
1以上の例示的方法において、出力応答を予測することは、聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される。
【0050】
1以上の例示的方法において、レシーバは、聴覚機器の外耳道部内に配置される。1以上の例示的方法において、聴覚機器は外耳道マイクロフォンと外耳道レシーバを有し、外耳道マイクロフォンと外耳道レシーバが聴覚機器の外耳道部内に配置される。これら例示的方法により、ユーザに対してフラットな実耳挿入ゲイン(REIG)が実現され得る。1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、レシーバから裸耳(REUR)と、レシーバから外部マイクロフォン(L-MiE、側方マイクロフォン)との伝達関数の差を測定することを含んでもよい。REIGと、レシーバ応答そのもの(RecToEar)と、L-MiEと、裸耳伝達関数(REUR)との関係は以下のとおりに表される。
REIG=REAR-REUR
=L-MiE+RecToEar-REUR
=L-MiE-REUR+RecToEar
=RecToEar-(REUR-L-MiE)
式中、REARは、実耳装用応答(real-ear aided response)、即ちユーザの外耳道内に聴覚機器が挿入された場合の応答を表す。
【0051】
レシーバ応答を、REUR-MiEの応答に近似させることで、フラットな挿入ゲインが得られることがわかる。本開示により、機器を外耳道内に挿入するだけで、幅広いユーザに対してフラットな挿入ゲインと到来方向が実現される。したがって、追加部材が必要ない。
【0052】
1以上の例示的聴覚機器において、入力信号を取得することは、外部装置から特定の測定信号を取得することを含む。
【0053】
開示は、明確に要求された際に(例えば、聴覚機器を較正モードに設定する)、および/または機器が起動される度に、および/または継続的に実行されてもよい。
【0054】
聴覚機器が開示される。聴覚機器は、補聴器であってもよく、プロセッサは、ユーザの聴力損失を補償するように構成される。
【0055】
例えば、聴覚機器は耳かけ(BTE)型、耳あな(ITE)型、外耳道挿入(ITC)型、外耳道挿入レシーバ(RIC)型又は耳挿入レシーバ(RITE)型の聴覚機器であってもよい。聴覚機器は、両耳用補聴器であってもよい。聴覚機器は、第1イヤーピースと第2イヤーピースとを有してもよく、第1イヤーピースおよび/または第2イヤーピースは本稿開示のイヤーピースであってもよい。
【0056】
聴覚機器は、1以上の無線入力信号、例えば第1無線入力信号および/または第2無線入力信号を、アンテナ出力信号に変換するアンテナを備えていてよい。無線入力信号(複数可)は外部信号源(複数可)から発せられる。外部信号源は、スパウスマイクロフォン装置(複数可)、無線テレビ音声送信機、および/または無線送信機に対応付けられた分散型マイクロフォンアレイ等である。
【0057】
聴覚機器は、アンテナに接続され、アンテナ出力信号を送受信機入力信号に変換する送受信機を備えてもよい。異なる複数の外部信号源からの複数の無線信号が無線送受信機において多重化されて送受信機入力信号となってもよいし、無線送受信機の別々の送受信機出力端末に対する別々の送受信機入力信号となってもよい。聴覚機器は、複数アンテナを有していてよいし、さらに/あるいはアンテナは1つまたは複数のアンテナモードで動作するように構成されていてもよい。送受信機入力信号は、第1外部信号源からの第1無線信号を表す第1送受信機入力信号を含んでいてよい。
【0058】
聴覚機器は、マイクロフォンセットを有する。マイクロフォンセットは、1以上のマイクロフォンを含んでいてよい。マイクロフォンセットは、入力信号を提供する外部マイクロフォンと、レシーバが送信し外耳道マイクロフォンで受信する出力信号を測定する外耳道マイクロフォンを含む。即ち、外耳道マイクロフォンは、出力信号を外耳道マイクロフォン入力信号として測定するように構成される。
【0059】
マイクロフォンセットは、1以上の外部マイクロフォンを含んでいてよい。マイクロフォンセットは、1以上の外耳道マイクロフォンを含んでいてもよい。マイクロフォンセットは、N個のマイクロフォン信号を提供するためのN個のマイクロフォンを含んでいてよく、Nは、1~10の範囲の整数である。1つ以上の例示的な聴覚機器において、マイクロフォンの数Nは、2、3、4、5又はそれ以上である。マイクロフォンセットは、第3マイクロフォン入力信号を提供するための第3マイクロフォンを含んでいてもよい。
【0060】
1以上の例示的聴覚機器において、外耳道マイクロフォンは聴覚機器の内側に配置されていてよく(外耳道内に向けられて、鼓膜に対向)、外部マイクロフォンは聴覚機器の外側に配置されていてよい(環境音を収音)。本開示の利点として、外耳道内の応答の測定にプローブマイクではなく、これらマイクロフォンが使用される。
【0061】
本明細書において、用語「外部マイクロフォン」は、聴覚機器ユーザの外部環境の環境音のような、環境中の音声を受信、検知、検出、または取得するあらゆるマイクロフォンを指す。したがって、用語「外部マイクロフォン」中の「外部」という言葉は、聴覚機器に対する外部マイクロフォンの位置を示すものではない。外部マイクロフォンが設けられるのは、聴覚機器の内部でも外部でもよい。
【0062】
聴覚機器は、入力信号を処理して入力信号に基づく処理済み出力信号を提供するプロセッサを備えている。
【0063】
聴覚機器は、出力信号を送信するレシーバと、聴覚機器設定を制御するように構成されたコントローラを有する。聴覚機器は、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測するように構成される。聴覚機器は、予測出力応答と測定出力信号の差を判定し、その差に基づいてゲインパラメータを制御することで、聴覚機器を較正するように構成される。
【0064】
1以上の例示的聴覚機器において、聴覚機器は、プロセッサとコントローラを含む処理部を有する。
【0065】
本開示は、外耳道部(即ち、聴覚機器の、耳の外耳道に挿入される部分)と外耳道レシーバと外耳道マイクロフォンを有し、それらが外耳道内に配置されてフラットな挿入ゲインを実現すように構成される聴覚機器に関する。
【0066】
本開示は、耳内マイクロフォン・レシーバ・モジュールを備え、耳内マイクロフォン・レシーバ・モジュールが外耳道レシーバと外耳道マイクロフォンを有する聴覚機器レシーバに関する。
【0067】
図面は、模式図であり、明確性のために簡略化されており、実施形態を理解しやすくするように詳細を示す。全体的に、同一の部分または対応する部分には、同じ参照番号が使用される。
【0068】
図1は、本開示に係る例示的聴覚機器を示すブロック図である。聴覚機器2は、出力信号15を送信するレシーバ16を有する。レシーバ16は、出力信号15に基づいて、音響出力信号11を発信するように構成されてよい。
【0069】
レシーバ16は、音響出力信号11を例えば聴覚機器ユーザの鼓膜に向けて発信するように構成される。
【0070】
聴覚機器2は、第1外部信号源(図1で不図示)の第1無線入力信号5を、アンテナ出力信号に変換するアンテナ4を有していてよい。聴覚機器2は、送受信機入力信号3を提供する送受信機7を有してもよく、送受信機7はアンテナ出力信号を1以上の送受信機入力信号に変換するため、アンテナ4に接続された無線送受信機を含んでいてよい。
【0071】
聴覚機器2はマイクロフォンセットを備えている。マイクロフォンセットは、入力信号9(即ち、外部マイクロフォン入力信号)を取得する外部マイクロフォン8を含む。外部マイクロフォン8は、音響入力信号18に基づいて入力信号9を取得し、外部入力信号9を聴覚機器2の他モジュールに提供するように構成されていてよい。
【0072】
マイクロフォンセットは、レシーバ16から音響出力信号11Aを受信し、当該受信した音響出力信号11Aを入力信号とする外耳道マイクロフォン10を含む。外耳道マイクロフォン10は、レシーバ16から受信した音響出力信号11Aに基づいて、出力信号11Bを測定するように構成される。なぜなら、外耳道マイクロフォン10は、外耳道特性により変化した音響出力信号11Aに基づく出力信号11Bに基づいて外耳道マイクロフォン入力信号11Bを提供するためである。外耳道マイクロフォン10で入力として受信される音響出力信号11Aは、外耳道特性の影響を受ける。本開示で測定される出力信号11B(即ち、外耳道マイクロフォン入力信号11B)は、外耳道マイクロフォンが受信する音響出力信号11A、レシーバ16が発する音響出力信号11、レシーバ16に提供される出力信号15に関する。
【0073】
聴覚機器2は、聴覚機器設定を制御するように構成されたコントローラ12を有する。聴覚機器2は、コントローラ12に接続されて、信号を受信、処理するプロセッサ14を有する。プロセッサ14は、ユーザの聴力損失を補い、入力信号に基づいて電気的出力信号15を提供するように構成される。聴覚機器2またはプロセッサ14は、ゲイン設定に基づいて、出力応答を予測するように構成される。聴覚機器2またはプロセッサ14は、予測出力応答と測定出力信号の差を判定するように構成される。
【0074】
1以上の例示的聴覚機器において、聴覚機器2は、プロセッサ14とコントローラ12を有する処理部13を有する。処理部13は、聴力損失を補うため、聴覚機器パラメータを制御するように構成される。
【0075】
聴覚機器2は、外耳道部と、耳の開口部に向かう他の部位を有していてよい。1以上の例示的聴覚機器では、外耳道マイクロフォン10は、聴覚機器2の外耳道部内(即ち、鼓膜に対向する部位)に配置される。外部マイクロフォン8は、聴覚機器2の耳の開口部に対向する部位に配置される(環境音を収音する)。
【0076】
1以上の例示的聴覚機器において、処理部13は、聴覚機器のゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、予測出力応答と測定出力信号の差を判定するように構成される。
【0077】
1以上の例示的聴覚機器において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、外部マイクロフォンで受信した入力信号と、外耳道マイクロフォンが外耳道マイクロフォン入力信号として測定した出力信号を比較することを含む。聴覚機器2は、外耳道長さ等の耳パラメータを推定することで、予測出力応答と測定出力信号の差を判定するように構成されていてよい。長さによる共鳴は、外耳道マイクロフォン8の出力応答のスペクトルノッチに直結することが多く、当該ノッチの周波数は、外耳道の残りの長さに応じて異なる。そのため、聴覚機器2は、ノッチの周波数の識別と、周波数の分類に基づいて、外耳道長さを判定する。外耳道マイクロフォンの出力応答のノッチの周波数が識別されると、分類を使用して、当該周波数におけるノッチを引き起こすと推定される外耳道長さが判定される。聴覚機器2は、外耳道マイクロフォンと鼓膜のそれぞれの位置の間での推定スペクトル差に基づいて、外耳道の実耳挿入ゲイン(REIG)の適切な修正を判定してもよい。
【0078】
聴覚機器2は、差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成される。挿入ゲインを修正するため、聴覚機器は、推定された実耳挿入ゲインの半数を適用する等、推定された実耳挿入ゲインの逆数を適用してもよい。
【0079】
図2は、耳の外耳道20に部分的に挿入された本開示に係る聴覚機器2のような例示的聴覚機器2Aを含む、ユーザの耳の断面図である。聴覚機器2Aは、耳あな聴覚機器である。聴覚機器2Aは、ハウジング6と、レシーバ16Aと、入力信号を取得する外部マイクロフォン8Aと、外耳道マイクロフォン10Aを有する。レシーバ16Aは、聴覚機器2Aの外耳道部内に配置されるため、外耳道レシーバ16Aと称する。聴覚機器2Aは、鼓膜22に対向配置される外耳道マイクロフォン10Aと外耳道レシーバ16Aを有する。聴覚機器2Aは、ユーザの聴力損失を補うように構成されるプロセッサ14Aを有する。レシーバ16Aは、聴覚機器ユーザの鼓膜に向けて出力信号を送信するように構成される。外耳道マイクロフォン10Aは、外耳道マイクロフォン入力信号としてレシーバ16Aからの出力信号を受信するため、レシーバ16Aが発信する出力信号を測定するように構成される。外耳道マイクロフォン10Aが入力として受信する出力信号は、外耳道特性に影響される。プロセッサ14Aは、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測するように構成される。プロセッサ14Aは、予測出力応答と測定出力信号の差を判定するように構成される。1以上の例示的聴覚機器において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、外部マイクロフォンが受信する入力信号と外耳道マイクロフォンが受信する出力信号(外耳道マイクロフォンに対する入力信号を形成)を比較することを含む。
【0080】
図3は、いくつかの実施形態に係る例示的な聴覚機器の自己較正方法を示すフローチャートである。聴覚機器は、外耳道マイクロフォンと、外部マイクロフォンと、レシーバを有する。方法は、外部マイクロフォンにより入力信号を取得すること102を含む。
【0081】
1以上の方法において、外部マイクロフォンにより入力信号を取得すること102は、外部マイクロフォンにより入力信号を測定すること102a、例えば外部マイクロフォンを使用して入力信号を分析することを含む。
【0082】
方法100は、レシーバにより出力信号を送信すること104と、外耳道マイクロフォンを使用して出力信号を測定すること105を含む。1以上の例示的方法において、出力信号は、特定の測定信号および/または環境信号であってよい。
【0083】
方法100は、ゲイン設定、および/または任意で聴覚機器の機器較正(工場または初期機器較正等)に基づいて出力応答を予測すること106を含む。方法100は、予測出力応答と測定出力信号の差を判定すること108を含む。
【0084】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定すること108は、予測出力振幅スペクトルと測定出力振幅スペクトルの差を判定することを含む。出力応答を予測すること106は、レシーバが送信する出力信号を使用して実行されてよい。
【0085】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定すること108は、外部マイクロフォンが受信した入力信号と、外耳道マイクロフォンが外耳道マイクロフォン入力信号として受信した出力信号を比較することを含む。レシーバおよび外耳道マイクロフォンのそれぞれの応答がわかっていれば、開放された外耳道の自然応答または耳を塞ぐことによる影響を考慮できる。さらに/あるいは、外耳道マイクロフォン応答がフラットで、レシーバ応答が開放された耳の応答に近似しているものと仮定できる。開示の方法では、測定トランスデューサ応答(レシーバから外耳道マイクロフォン)が裸耳応答(REUR)に近似する。
【0086】
1以上の例示的方法において、差を判定すること108は、外部マイクロフォンと外耳道マイクロフォンの信号を比較し、測定トランスデューサ応答(レシーバから外耳道マイクロフォン)を差し引くことで挿入ゲインを判定することを含んでいてよい。
【0087】
方法は、差に基づいてゲインパラメータを制御することで、聴覚機器を較正すること110を含む。例えば、ゲインパラメータを制御することは、1以上の周波数帯のバンドゲインを調整することを含む。1以上の例示的方法において、ゲインパラメータを制御することは、予測出力応答と測定出力信号の差を最小化して、ゲインを判定することを含む。
【0088】
1以上の例示的方法において、入力信号を取得すること102は、例えば1以上の周波数帯内等において、入力信号の1以上の特徴を判定すること102bを含む。例えば、特徴は振幅(例えば最大振幅)および/または位相のような歪みおよび/またはスペクトルを含んでいてよい。
【0089】
1以上の例示的方法において、出力信号を測定すること105は、測定出力信号の前進圧力レベルを判定することを含む。外耳道マイクロフォンにより測定される音圧は、前進圧力レベルと反射圧力レベルに分けられる。本開示は、測定出力信号の前進圧力レベルを判定することに関する。
【0090】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定すること108は、1以上の聴覚機器構成パラメータに基づく。
【0091】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定すること108は、聴覚機器初期較正設定に基づく。
【0092】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力の差を判定すること108は、1以上のアルゴリズムパラメータに基づいていてよい。例えば、1以上のアルゴリズムパラメータは、スペクトル帯の相互作用、非線形性等のアルゴリズムの特徴を示してよい。
【0093】
1以上の例示的方法において、予測出力応答と測定出力信号の差を判定すること108は、耳形状を推定すること108aを含む。例えば、予測出力応答と測定出力信号の差を判定すること108は、1以上の鼓膜特性等、外耳道のその他パラメータを推定することを含んでいてよい。予測出力応答と測定出力信号の差を判定することは、外耳道情報(例えば、外耳道形状についてのユーザから提供される情報(例えば、大小、男女、頭囲等))および/または聴覚機器構成を考慮して実施されてよい。本開示においては、外耳道寸法を予測することは、音響測定に基づいて実施されてよい。
【0094】
1以上の例示的方法において、耳形状を推定すること108aは、外耳道パラメータを判定すること108bを含む。外耳道パラメータは、外耳道サイズ、および/または外耳道長さを含んでいてよい。
【0095】
1以上の例示的方法において、耳形状を推定すること108aは、耳を分類すること108cを含む。例えば、1以上の分類をあらかじめ設定してもよい。複数分類を設定することで、耳形状をより正確に推定し得る。耳を分類することは、外耳道パラメータに基づいて行われてよい。耳を分類することは、耳形状を推定することを含むとみなされてもよい。
【0096】
1以上の例示的方法において、外耳道パラメータを判定すること108bは、裸耳ゲインの推定、ユーザ入力、および/または音響測定に基づく。予測出力応答と測定出力信号の差を判定することに関して、本発明者らは、長さによる共鳴は、外耳道マイクロフォンの出力応答のスペクトラルノッチに直結することが多く、当該ノッチの周波数は、外耳道の残りの長さに応じて異なると判断した。このことにより、外耳道長さが判定できる。外耳道マイクロフォンの出力応答のノッチの周波数が識別されると、分類を使用して、当該周波数におけるノッチを引き起こすと推定される外耳道長さが判定される。この外耳道に対する適切な実耳挿入ゲイン(REIG)修正は、外耳道マイクロフォンと鼓膜の位置の推定スペクトル差に基づいて判定されてよい。挿入ゲインを修正するため、方法は推定された実耳挿入ゲインの逆数を適用することを含んでいてよい(目標ゲインは0dBとする)。予測は完全ではないことが想定されるため、推定された実耳挿入ゲインの一部を控えめな修正として使用してもよい。目標ゲインがフラット(全周波数に対して0dB)でない場合、予測ゲインを修正係数として使用する前に、予測ゲインから目標ゲインを差し引いてもよい。
【0097】
1以上の例示的方法において、出力応答を予測すること106は、聴覚機器初期較正設定に基づく。
【0098】
1以上の例示的方法において、入力信号を取得すること102は、外部装置から特定の測定信号を取得することを含む。
【0099】
本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」等の用語は、具体的な順序を示すものではなく、各要素の特定に使用されている。さらに、本明細書で使用される第1、第2等の用語は、何らかの順序や重要性を示すものではない。本明細書で使用される第1、第2等の用語は、要素同士の区別に用いられている。本明細書および他の書類で使用される第1、第2という用語は、あくまで参照符号として付されるものであって、特定の空間的、時間的順序を示すものではない。さらに、第1要素、第2要素と称されたということで、必ずしも他方の存在が示唆されているとは限らない。
【0100】
上記した特徴のうちの1以上は、下記項目のいずれかに従って、組み込みまたは実行されてよい。
(項目1)
外耳道マイクロフォンと、外部マイクロフォンと、レシーバとを有する聴覚機器の自己較正方法であって、前記外部マイクロフォンにより入力信号を取得することと、前記レシーバにより出力信号を提供することと、前記外耳道マイクロフォンを使用して前記出力信号を測定することと、ゲイン設定に基づいて出力応答を予測することと、前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定することと、前記差に基づいてゲインパラメータを制御することで前記聴覚機器を較正することとを含む方法。
(項目2)
前記入力信号を取得することは、前記入力信号の1以上の特徴を判定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記入力信号を取得することは、1以上の周波数帯において、前記入力信号の1以上の特徴を判定することを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記出力信号を測定することは、前記出力信号の前進圧力レベルを判定することを含む、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記ゲインパラメータを制御することは、1以上の周波数帯でバンドゲインを調整することを含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記ゲインパラメータを制御することは、前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を低減または最小化することによってゲインを判定することを含む、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定することは、1以上の聴覚機器構成パラメータに基づいて実行される、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定することは、聴覚機器初期較正設定に基づいて実行される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定することは、1以上のアルゴリズムパラメータに基づいて実行される、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定することは、耳形状を推定することを含む、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記耳形状を推定することは、1以上の外耳道パラメータを判定することを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記耳形状を推定することは、耳を分類することを含む、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
前記1以上の外耳道パラメータは、外耳道長さ、外耳道幅、外耳道の円錐特性、耳容積、挿入深さ、またはこれらの任意の組み合わせを含む、項目10から12に記載の方法。
(項目14)
外耳道パラメータを判定することは、裸耳ゲインの推定、ユーザ入力、音響測定、またはこれらの任意の組み合わせに基づく、項目10から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記出力応答を予測することは、前記聴覚機器初期較正設定に基づく、項目8に記載の方法。
(項目16)
レシーバは、聴覚機器の外耳道内に配置される、項目1から15に記載の方法。
(項目17)
入力信号を取得することは、外部機器からの測定信号を取得することを含む、項目1から16に記載の方法。
(項目18)
出力信号を提供するレシーバと、
入力信号を提供する外部マイクロフォンと、前記出力信号を測定する外耳道マイクロフォンと、を含むマイクロフォンセットと、
前記入力信号に基づいて処理済み出力信号を提供するプロセッサと、を有し、
ゲイン設定に基づいて出力応答を予測し、前記予測出力応答と前記測定出力信号の差を判定し、前記差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正するように構成されている、聴覚機器。
【0101】
特徴を示し、記載してきたが、これらの特徴は、特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図していないことが理解され、特許請求の範囲に記載された発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更及び改変が行われてよいことが当業者に明らかになるだろう。従って、明細書及び図面は、限定するという観点ではなく、実例であると考えるべきである。特許請求の範囲に記載された発明は、全ての代替例、改変及び均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0102】
2:聴覚機器
2A:聴覚機器断面視
3:送受信機入力信号
4:アンテナ
5:第1無線入力信号
6:ハウジング
7:無線送受信機
8:外部マイクロフォン
8A:外部マイクロフォン
9:外部マイクロフォンからの入力信号
10:外耳道マイクロフォン
10A:外耳道マイクロフォン
11:レシーバが発する音響出力信号
11A:外耳道マイクロフォンが受信する音響出力信号
11B:外耳道マイクロフォンから、プロセッサへの入力として提供された出力信号、即ち、測定出力信号または外耳道マイクロフォン入力信号
12:コントローラ
13:処理部
14:プロセッサ
14A:プロセッサ
15:プロセッサからレシーバへの出力信号
16:レシーバ
16A:外耳道レシーバ
18:外部マイクロフォンが取得する音響入力信号
20:外耳道
22:鼓膜
100:聴覚機器の自己較正方法
102:外部マイクロフォンにより入力信号を取得
102a:外部マイクロフォンを使用して入力信号を測定
102b:入力信号の1以上の特徴を判定
104:レシーバにより出力信号を送信
105:外耳道マイクロフォンを使用して出力信号を測定
106:ゲイン設定に基づいて出力応答を予測
108:予測出力応答と測定出力信号の差を判定
108a:耳形状を推定
108b:外耳道パラメータを判定
108c:耳を分類
110:差に基づいてゲインパラメータを制御することで聴覚機器を較正
図1
図2
図3