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特許7069011間葉幹細胞由来のエクソソームおよびその使用
<図1A>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】間葉幹細胞由来のエクソソームおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20220510BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K45/00
A61K9/14
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/00
A61P37/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018522514
(86)(22)【出願日】2016-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2016076462
(87)【国際公開番号】W WO2017076924
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】14/929,578
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507421463
【氏名又は名称】タイジェニックス、ソシエダッド、アノニマ、ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】TIGENIX S.A.U.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】オルガ、デ、ラ、ロサ
(72)【発明者】
【氏名】エルウテーリオ、ロンバルド
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフリート、ダレマン
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、ガルシア、カサド
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ、ブラスケス、デュラン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ、ミゲル、サンチェス、マルガリョ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513906(JP,A)
【文献】特表2005-506964(JP,A)
【文献】特表2011-513217(JP,A)
【文献】特表2014-502628(JP,A)
【文献】REBECA BLAZQUEZ,IMMUNOMODULATORY POTENTIAL OF HUMAN ADIPOSE MESENCHYMAL STEM CELLS DERIVED EXOSOMES,FRONTIERS IN IMMUNOLOGY,スイス,2014年10月04日,VOL:5,PAGE(S):1 - 9,http://dx.doi.org/10.3389/fimmu.2014.00556,ON IN VITRO STIMULATED T CELLS
【文献】Hepatobiliary Surgery and Nutrition, 2014, Vol.3, No.6, pp.386-406
【文献】VERONICA ALVAREZ,ESTUDIO COMPARATIVO DEL AISLAMIENTO DE EXOSOMAS DERIVADOS DE CELULAS MADRE MESENQUIMALES,ACTA BIOQUIMICA CLINICA LATINOAMERICANA,2015年09月01日,VOL:49, NR:3,PAGE(S):311 - 320,http://www.redalyc.org/pdf/535/53542622004.pdf,HUMANAS PARA USO CLINICO
【文献】北里医学, 2013, Vol.43, pp.9-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 9/00- 9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織由来幹細胞(ASC)に由来するエクソソーム集団を含んでなる、免疫介在性炎症性疾患の治療方法における使用のための組成物であって、
前記治療対象の患者が、TGF-β阻害剤を含む療法による治療中であるか、またはその治療を受けていた患者であり、
前記エクソソーム集団が、
a.該エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも3kDaの平均分子量を有し、かつ
b.該エクソソームの少なくとも20%が、150~300nmの平均直径を有し、かつ
c.該集団からのエクソソームがTSP-1を含んでなり、かつ
3kDaカットオフ膜を用いて細胞を含まないMSC馴化培地を濾過して残留物を回収することを含む方法により得られ
前記組成物。
【請求項2】
前記集団におけるエクソソームが、低いレベルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記ASCがヒトに由来する、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記免疫介在性炎症性疾患が、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)およびクローン病からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記ASCが同種異系である、請求項またはに記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記組成物が全身にまたは局所的に投与される、請求項のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が、直腸、鼻、口腔、膣、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内もしくは頭蓋内の経路を介して、または埋め込み型リザーバーを介して投与される、請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも1つの追加的治療薬と組み合わせて投与される、請求項のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉幹細胞由来のエクソソーム、同様に免疫介在性炎症性疾患の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソソームはほとんどの細胞種が分泌する小さな膜質小胞である。これらの小胞は細胞と細胞の伝達に関与し、それらの中身は、RNA、脂質およびタンパク質からなる。これらのタンパク質(即ち、CD9、CD63またはCD81)のうちのいくつかは至るところで発現されるが、細胞源によっては、細胞型特異的タンパク質がそれらの機能の原因であると見出されることがある。異なる細胞および有機体からのエクソソームの、タンパク質、脂質およびRNA発現は、ExoCartaデータベースで広範囲に記載されている。
【0003】
エクソソームは、in vitro培養細胞から超遠心分離によって容易に単離することができるが、文献では種々の単離試験計画が記載されてきた。これらのすべての試験計画は、研究の具体的な種類に基づいて互いに異なっていて、発見、診断または準備の研究のための手順として分けられる。エクソソームの臨床級での生産については、大規模生産を行うための安全な技術が絶対的な前提条件である。
【0004】
前臨床のセッティングでは、特にマウスのモデルでは、エクソソームは、感染、アレルギー、同様に自己免疫疾患などの様々な疾患の治療のために適用されてきた。これらの小胞の免疫調節能に関して、最初のin vivo研究は、Pecheらが行い、骨髄の樹状細胞由来エクソソームが使用された(Peche H. et al., Transplantation 2003, 76: 1503-10; Peche H. et al., Am. J. Transplant. 2006, 6:1541-50)。前臨床研究と比較して、エクソソームを使用して行われた臨床試験はほんのわずかであった。最初の臨床試験のうちのいくつかは、樹状細胞由来エクソソームおよび腹水由来エクソソームを使用して癌患者に行われ、安全性、忍容性および効能が実証された。
【0005】
現在では、MSC由来エクソソーム(Exo-MSC)の治療的有効性は、心疾患の治療のためのマウスモデルで成功裡に適用された。この意味では、異なる幹細胞サブセットで説明される血管新生効果がこの治療効果の原因かもしれない。
【0006】
MSC由来エクソソームと他の出所に由来するエクソソームとの間では、形態学的特徴、単離および保管条件の点から差異はない。同定に関しては、exo-MSCは、CD9とCD81などのエクソソームの共通表面マーカーだけでなく、MSCの膜上に発現するCD29、CD44およびCD73を含むいくつかの接着分子も発現する。
【0007】
証拠は蓄積され、MSC移植の効果は、部分的にパラクリン効果によって媒介されていると考えられるということが確立された。確かに、心筋梗塞の関係では、パラクリン機序の全体的な薬効が、50~80%を占めることが実験的に定量化された。MSCからの終結因子を用いる利点がいくつか記載されてきた。例えば、移植した細胞は、死滅するかもしれないし、または損傷した組織の部位内へ完全にたどり着かないかもしれない一方で、生物学的因子を制御した用量で局所投与することができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の発案者らは、ヒト脂肪間葉幹細胞から単離されたエクソソーム集団が免疫疾患の治療に有用となるような免疫調節特性を有し、具体的にはそれらはT細胞の分化および活性で阻害効果を発揮し(図3および4)、in vitro増殖T細胞の増殖を低減させ(図2)かつIFN-γ放出を低減させる(図5)ことを見出した。
【0009】
したがって、第一の態様では、本発明は、以下を特徴とする、間葉幹細胞(MSC)由来エクソソームに関する:
-分子量が少なくとも約3kDaであり、かつ/または
-直径が約150~約300nmであり、かつ/または
-トロンボスポンジン-1(TSP-1)を含んでなり、かつ/または
-低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0010】
第二の態様では、本発明は、以下を特徴とする、MSC由来の単離されたエクソソーム集団に関する:
-エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、かつ/または
-エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有し、かつ/または
-当該集団からのエクソソームがTSP-1を含んでなり、かつ/または
-エクソソームが低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0011】
第三の態様では、本発明は、以下を含んでなる、MSC由来の単離されたエクソソーム集団の調製方法に関する:
a)3kDaカットオフ膜を用いて細胞を含まないMSC馴化培地を濾過して残留物(retentate)を回収すること、または
b)細胞を含まないMSC馴化培地を、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度で遠心分離してペレットを回収すること。
【0012】
第四の態様では、本発明は、第三の態様の方法によって得られた、単離されたMSC由来のエクソソーム集団に関する。
【0013】
第五の態様では、本発明は、TGF-β阻害剤と組み合わせた、四つの態様のうち第二の態様による単離されたエクソソーム集団を含んでなる組成物に関する。
【0014】
第六の態様では、本発明は、第一の態様のエクソソームまたは本発明の第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団を含んでなる、医薬組成物に関する。
【0015】
第七の態様では、本発明は、免疫介在性炎症性疾患を、当該疾患に罹患した対象において治療する方法であって、当該対象に、治療上効果的な量の、第一の態様のエクソソーム、本発明の第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団、第五の態様による本発明による単離されたエクソソーム集団およびTGF-β阻害剤を含んでなる医薬組成物あるいは本発明の第六の態様による医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】A)exo-hASCの頻度粒度分布グラフ。エクソソームサンプルにナノ粒子追跡分析を行い、粒度分布および粒子濃度(nD6)を定量化した。ナノ粒子追跡分析の代表的グラフが示されている。 B)exo-hASC中に同定されたタンパク質。サンプルはSDSポリアクリルアミドゲルによって分離した。タンパク質はクーマシィーブルーで視認され、バンドは切断して切断して分解した。結果として生じたペプチドは、LC-MS/MSによって分析した。タンパク質同定はSEQUESTおよびSwissProtデータベースを用いて行なった。
図2in vitro刺激PBLsの増殖能はexo-hASCによって縮小される。PBLは、単独で培養か、異なる濃度(PBL100万個当たりにエクソソーム4、8および16mg)で、異なるバッチのexo-hASC(nD8)と共培養した。6日目で、PBLを回収し、Tリンパ球サブセットを、抗-CD3、抗-CD4および抗-CD8で染色した。CFSE標識細胞の蛍光プロファイルから、8個の分裂を同定できた。各細胞分裂周期(#として示す)中の集団全体のパーセンテージを示す、CD4T細胞およびCD8T細胞の詳細な図(A)およびヒストグラムの図(B)が提供されている。異なる細胞分裂周期でのリンパ球サブセットの統計的比較も提供されている(C)。水平の棒は、グループ間の統計的有意差(p±0.05で有意)を表わす。
図3exo-hASCの存在下で共培養したin vitro刺激T細胞上の CD45RAおよびCCR7の発現パーセンテージ。6日目で、in vitro刺激PBLを、CD8およびCD4T細胞サブセットのCD45RAおよびCCR7について分析した。異なるドナーからの細胞16mg/10個での異なる2つのexo-hASCをこれらの実験で使用した(Exos#1およびExos#2)。グラフでは、対照と称された標準化された定量的発現(exo-hASC不在下でのin vitro刺激T細胞)を示す。棒に示された値は、独立に行なった3つの実験の平均±SDを表わす。水平棒は、刺激PBLのグループ間の統計的有意差(p±0.1で有意)を表わす。
図4exo-hASC存在下で共培養されたin vitro刺激T細胞のCD45RAおよびCCR7共発現。6日目に、in vitro刺激PBLを、CD45RAおよびCCR7の共発現のために分析した。CD45RAアイソフォームおよびCCR7は、T細胞の4つのサブセットを識別した:最終分化RAT細胞(TEMRA、CD45RACCR7)、未感作T細胞(NAIVE、CCR7CD45RA)ならびに2つのメモリーサブセット:エフェクターメモリー(EM、CD45RACCR7)およびセントラルメモリー(CM、CD45RACCR7)。これらの実験では異なるドナーからの異なる2つのエクソソーム(Exos#1およびExos#2)を使用した。示された値は、3つの独立に行なった実験の平均±SDを表わす。
図5exo-hASCはin vitro刺激T細胞中のIFN-γ生成を阻害する。これらの実験では異なるドナーからの異なる2つのエクソソーム(Exos#1およびExos#2)を使用した。グラフは、3つの独立に行なった実験の平均±SDを表わす。各条件の図の点のプロットは下記各グラフで示され、四分円中の数字は、ゲーティングされたCD4(A)およびCD8T細胞(B)中のIFN-γパーセンテージを示す(p±0.05で有意)。
図6異なる方法で単離したエクソソーム中の総タンパク質濃度の測定。総タンパク質濃度はBradford法で決定した。吸収値はウシ血清アルブミンの標準曲線から推定した。アステリスクは、グループ間の統計的有意差を示す(p≦0.05)。
図7サンプル中の粒度決定。グラフおよび表では、測定のグラフ的な図および統計的な図が示されている。アステリスクは、グループ間の統計的有意差を示す(p≦0.05)。
図8異なるサンプルからの粒度の代表図。粒子のサイズはNanoSightで決定した。X軸の目盛は、1区分につき100nmを指す。Y軸の目盛は、1ml当たりの粒子で表現した粒子濃度を表わす。
図9異なるサンプルからの粒度数の決定。エクソソームが富化した画分中の粒子の数をNanoSightで決定した。
図10】TGF-β1ELISAによる異なるエクソソームの分析。異なるドナーのエクソソームの平均および標準偏差をExohASC(n=3)、およびexoMenSC(n=4)について示した。サンプルはTGF-β1 ELISAによって酸処理した後に分析し、かつLAP ELISAによる酸処理をすることなく分析した。
【発明の具体的説明】
【0017】
エクソソーム
第一の態様では、本発明は、間葉幹細胞(MSC)由来のエクソソームに関し、以降第一の態様のエクソソームは以下を特徴とする:
-分子量が少なくとも約3kDaであり、かつ/または
-直径が約150~約300nmであり、かつ/または
-トロンボスポンジン-1(TSP-1)を含んでなり、かつ/または
-低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0018】
「エクソソーム」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞由来の膜質小胞を指す。エクソソームはほとんどの細胞種から放出され、多くの体液で見つけることができる。第一の態様のエクソソームは間葉幹細胞に由来する。
【0019】
「間葉幹細胞」または「MSC」という用語は、本明細書で使用する場合、とりわけ、結合組織、骨髄間質、脂肪細胞、真皮および筋肉ならびに月経組織を含む、大規模な発現型の変種を有する後代細胞を生成する自己再生能力および分化能力を有する、中胚葉由来の多能性の体性幹細胞を指す。MSCは、一般にマーカーCD19、CD45、CD14およびHLA-DRに陰性であって、マーカーCD105、CD106、CD90およびCD73には陽性であることを特徴とする細胞マーカー発現プロファイルを有している。
【0020】
本発明で使用するMSCは、(i)抗原提示細胞に特定のマーカーを発現しないこと、(ii)構造的に、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)を発現しないこと、(iii)IFN-ガンマで刺激した後にIDOを発現すること、(iv)少なくとも2つの細胞系譜に分化する能力を示すことを特徴とすることが好ましい。あるいは、本発明で使用するMSCは、一式のマーカーの存在または不在により特徴づけられることが好ましく、即ち、それら細胞は(i)CD9、CD10、CD13、CD29、CD44、CD49a、CD51、CD54、CD55、CD58、CD59、CD90またはCD105を発現すること、および(ii)CD11b、CD14、CD15、CD16、CD31、CD34、CD45、CD49f、CD102、CD104、CD106またはCD133を発現しないことを特徴とする。
【0021】
MSCは任意の組織種から単離してもよい。一般に、MSCは、骨髄、脂肪組織、臍帯、末梢血または月経組織から単離するだろう。特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞である。
【0022】
「脂肪組織由来幹細胞」または「ASC」という用語は、本明細書で使用する場合、脂肪組織由来のMSCを指す。ASCは、当技術で既知の方法によって、例えば、下記の「ヒト脂肪間葉幹細胞単離および増殖」に記載の方法によって脂肪組織から単離することができる。「脂肪組織」とは、任意の脂肪組織を意味する。脂肪組織は、例えば皮下部分、大網部分/内臓部分、乳房部分、生殖腺部分、周辺臓器(periorgan)部分または他の脂肪組織部分に由来する褐色脂肪組織または白色脂肪組織であってもよい。好ましくは、脂肪組織は皮下白色脂肪組織である。脂肪組織は初代細胞培養物または不死化細胞株を含んでなり得る。脂肪組織は脂肪組織を有する任意の有機体からでもよい。いくつかの実施態様では、脂肪組織は哺乳類であり、さらなる実施態様では、脂肪組織はヒトである。脂肪組織の便利な源は脂肪吸引外科手術である。しかしながら、脂肪組織源も脂肪組織の単離方法も、本発明にとっては重大でないことが理解されよう。特別の実施態様では、対象の脂肪吸引物(lipoaspirate)からASCを単離する。
【0023】
「月経組織」という用語は、本明細書で使用する場合、子宮の内壁に由来する粘膜であって、月経中に膣から放出されるものであり、通常、月経直前に存在するままの子宮組織部分、膣の粘液内層からの細胞および膣のフローラを構築する細菌からなるものである。月経組織からのMSCの単離方法は、当技術で周知である(例えば、Rossignioli et al., Biomed Res Int. 2013; 2013: 901821; Xu et al., Stem Cells International, 2016, 2016: 3573846; Alcayaga-Miranda et al., Stem Cell Research & Therapy, 20156:32を参照のこと)。
【0024】
MSCは任意の動物に由来し得、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットまたはマウス)および霊長類(例えば、サルまたはヒト)を含む。特別の実施態様では、MSCはヒトである。
【0025】
第一の態様のエクソソームは、次の特徴の1つ以上を特徴とする:
-分子量が少なくとも約3kDaであり、かつ/または
-直径が約150~約300nmであり、かつ/または
-トロンボスポンジン-1(TSP-1)を含んでなり、かつ/または
-低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、指定値の若干の変動、好ましくは指定値の10パーセント以内を意味する。しかしながら、「約」という用語は、例えば、使用する実験技術に応じて、変動のより高い許容性を意味することができる。当該所定値の変動は当業者であれば理解するものであり、本発明の範囲内である。さらに、より簡潔な説明を提供するために、本明細書で示す定量的表現のうちのいくつかは「約」という用語で修飾されていない。「約」という用語が明示的に使用されているか否かにかかわらず、本明細書に示された全ての量は、実際の所与の値を指すことを意味し、実験および/または測定の条件によるそのような所与の値への同等値および近似値を含む、当業者により合理的に推測されるであろうそのような所与の値の近似値を意味すると理解される。
【0027】
(a)少なくとも約3kDaの分子量
本明細書で使用する場合、「分子量」という用語は、分子中の全ての原子の原子量の合計を指す。したがって、第一の態様のエクソソームの分子量は、当該エクソソーム中に含まれてなる分子中の全ての原子の原子量の合計である。エクソソームの分子量は、特定のカットオフを有する膜を用いて決定することができる。当業者であれば理解するように、エクソソームを含有しているサンプルが3kDaカットオフ膜を通過した場合、結果として生じる残留物中に存在するエクソソームの分子量は3kDa以上となり、一方で溶出液に存在するエクソソームの分子量は3kDa未満となるだろう。特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームの分子量は少なくとも約3kDa、例えば少なくとも約5kDa、少なくとも約10kDa、少なくとも約20kDa、少なくとも約30kDa、少なくとも約40kDa、少なくとも約50kDa、少なくとも約75kDa、少なくとも約100kDaである。
【0028】
(b)約150~約300nmの直径
「直径」という用語は、本明細書で使用する場合、エクソソームの最大寸法を指し、エクソソームは必ずしも球状ではないと理解する。直径は、顕微鏡検査法技術(例えば、透過型電子顕微鏡)または光散乱法技術などのナノ粒子度を測定するための従来技術を使用して便利に測定してもよい。特定の実施態様では、第一の態様のエクソソームの直径は、国際公開第03/093801号に記載されているように、光散乱およびブラウン(Browian)運動の両方の分析に基づく、ナノ粒子追跡分析(Nanoparticle Tracking Analysis:NTA)を使用して測定することができる。
【0029】
特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームの直径は、約223~約300nmである。より特別な実施態様では、直径は約170~約283nmである。より特別な実施態様では、直径は約150および約193.5nmである。
【0030】
(c)トロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在
「トロンボスポンジン-1」または「TSP-1」または「THBS1」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞から細胞へのおよび細胞からマトリックスへの相互作用を媒介する糖タンパク質を指す。ヒトでは、それは遺伝子THBS1によってコードされる。ApoC-Iは任意の起源(例えば、ヒト、ウシ、マウス、ウマ、イヌ等)からのものでよい。特別な実施態様では、TSP-1は、UniProtアクセッション番号P07996号(2015年9月16日公開)のヒトタンパク質である。
【0031】
エクソソーム中のTSP-1の存在は、サンプル中の特定のタンパク質を検出することができる任意の方法によって決定することができる。非制限的な例証として、TSP-1の存在は、TSP-1(または抗原決定基を含有しているそのフラグメント)に特異的に結合することができる抗体を使用することを含んでなる技術によって、または代替的に、例えば質量分析に基づく技術など抗体の使用を含んでならない技術によって決定することができる。抗体は、モノクローナル、ポリクローナルでも、またはそれらのフラグメント、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)およびヒト化抗体であってもよい。同様に、抗体は標識付けされていてもよい。本明細書で使用することができるマーカーの例証となる非独占的な例としては、放射性同位体、酵素、蛍光色素分子、化学発光試薬、酵素補助因子または酵素基質、酵素阻害物質、粒子または染料が挙げられる。エクソソーム中のTSP-1の存在を決定するためには種々様々の既知の試験を使用することができ、例えば、非標識抗体(一次抗体)と標識抗体(二次抗体)の組合せ適用、ウェスタンブロット法または免疫ブロット法、ELISA(酵素免疫測定吸着法)、RIA(放射免疫測定)、競合EIA(酵素免疫測定)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、2次元ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、免疫細胞化学的技術、免疫組織化学的技術、免疫比濁法、免疫蛍光法、バイオチップまたは特定の抗体を含有しているタンパク質マイクロアレイ、あるいは試薬ストリップなどの形態でのコロイド析出に基づくアッセイおよび抗体結合量子ドットに基づくアッセイの使用に基づく技術である。
【0032】
(d)低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-β
潜在TGF-βレベルという用語は、本明細書で使用する場合、TGF-βホモ二量体に加えてプロペプチド部位を含有しているTGF-β前駆体分子の複合体である小型潜在複合体(Small Latent Complex:SLC)、TGF-β遺伝子生成物のN末端領域に由来するタンパク質である潜在関連ペプチド(Latency Associated Peptide:LAP)のいずれかのレベルを指す。別の実施態様では、潜在TGF-βレベルという用語は、小型潜在複合体(SLC)と潜在TGF-β-結合タンパク質(Latent TGF-β-Binding Protein :LTBP)、好ましくはLTBP-1、LTBP-2、LTBP-3およびLTBP-4を含んでなる複合体である大型潜在複合体(Large Latent Complex:LLC)を指す。TGF-βのLTBPへの結合は、ジスルフィド結合により、それによってその受容体に結合することが防止されて不活性が維持される。
【0033】
一つの実施態様では、エクソソームが脂肪組織に由来するMSCに由来する場合、それらのTGF-β含量は好ましくは、エクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.001~0.5μgであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.005~0.025μgであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.01~0.02μgである。
【0034】
別の実施態様では、エクソソームは月経組織由来のMSCに由来し、TGF-β含量は、エクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.1~1μgであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.2~0.8μgであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.3~0.7μgまたは0.4~0.6μgである。
【0035】
一つの実施態様では、エクソソームが脂肪組織に由来するMSCに由来する場合、それらの潜在TGF-β含量は好ましくは、エクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.0001~0.01μgであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.0005~0.005μgであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.001~0.002μgである。
【0036】
別の実施態様では、エクソソームは月経組織由来のMSCに由来し、潜在TGF-β含量は、エクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.001~0.5μgであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.005~0.025μgであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.01~0.02μgである。
【0037】
特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームは分子量を少なくとも約3 kDaとし、直径を約150~約300nmとする。
【0038】
別の特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームは、分子量を少なくとも約3kDaとし、かつTSP-1を含んでなる。
【0039】
別の特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームは、直径を約150~約300nmとし、かつTSP-1を含んでなる。
【0040】
別の特別の実施態様では、第一の態様のエクソソームは、分子量を少なくとも約3kDaとし、直径を約150~約300nmとし、かつTSP-1を含んでなる。
【0041】
単離されたエクソソーム集団
第二の態様では、本発明は、以下を特徴とする、MSC由来の単離されたエクソソーム集団に関する:
-エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、かつ/または
-エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有し、かつ/または
-当該集団からのエクソソームがTSP-1を含んでなり、かつ/または
-エクソソームが低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0042】
「エクソソーム」、「MSC」、「分子量」、「直径」、「約」「TSP-1」、「低いレベルのTGF-β」または「低いレベルの潜在TGF-β」という用語は第一の態様のエクソソームに関して前に定義されている。
【0043】
特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞(ASC)であり、好ましくはヒトADSCである。別の実施態様では、MSCは月経組織、好ましくはヒト月経組織に由来する。
【0044】
「エクソソーム集団」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも2つのエクソソームによって形成されたセット、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも500個または少なくとも1000個以上のエクソソームによって形成されたセットを指す。
【0045】
「単離されたエクソソーム集団」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトまたは動物の身体から単離したエクソソームの集団であって、in vivoまたはin vitroで当該エクソソーム集団と関係している1つ以上のエクソソーム集団を実質的に含まないエクソソームの集団を指す。特別の実施態様では、「単離されたエクソソーム集団」は、細胞または細胞残屑を実質的に含まない(例えば、当該エクソソーム集団が派生する細胞からを実質的に含まない)。
【0046】
第二の態様の単離されたエクソソーム集団は、以下の特徴の1つ以上を特徴とする:
-エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、かつ/または
-エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有し、かつ/または
-当該集団からのエクソソームがTSP-1を含んでなり、かつ/または
-低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを含有する。
【0047】
1.エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する
「平均分子量」という用語は、本明細書で使用する場合、エクソソームの集団の50%がこの分子量未満となるように定義した分子量の半分の値を指す。
【0048】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%が、少なくとも3kDa、例えば少なくとも約3kDa、例えば少なくとも約10kDa、少なくとも約20kDa、少なくとも約30kDa、少なくとも約40kDa、少なくとも約50kDa、少なくとも約75kDa、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0049】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0050】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0051】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0052】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0053】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有するを有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0054】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0055】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が、少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が。少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0056】
2.エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有する
「平均分子直径」という用語は、本明細書で使用する場合、エクソソームの集団の50%がこの直径未満となるように定義した分子量の半分の値を指す。
【0057】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%が、約150~約300nm、より具体的には約223~約300nm、一層より具体的には約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0058】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0059】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0060】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0061】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0062】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0063】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約223~約300nmのの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約150~約193.5nmのの平均直径を有する。
【0064】
特別の実施態様では、第二の態様のエクソソームの集団の少なくとも20%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団の少なくとも20%が、約150~約300nmのの平均直径を有する。
【0065】
(3)トロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在
「トロンボスポンジン-1」または「TSP-1」または「THBS1」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞から細胞へのおよび細胞からマトリックスへの相互作用を媒介する糖タンパク質を指す。ApoC-Iは任意の起源でよく、例えば、ヒト、ウシ、マウス、ウマ、イヌ等でよい。特別な実施態様では、TSP-1は、UniProtアクセッション番号P07996号(2015年9月16日公開)のヒトタンパク質である。
【0066】
エクソソーム中のTSP-1の存在は、サンプル中の特定のタンパク質を検出することができる任意の方法によって決定することができる。非制限的な例証として、TSP-1の存在は、TSP-1(または抗原決定基を含有しているそのフラグメント)に特異的に結合することができる抗体を使用することを含んでなる技術によって、または代替的に、例えば質量分析に基づく技術など抗体の使用を含んでならない技術によって決定することができる。抗体は、モノクローナル、ポリクローナルでも、またはそれらのフラグメント、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体およびヒト化抗体であってもよい。同様に、抗体は標識付けされていてもよい。本明細書で使用することができるマーカーの例証となる非独占的な例としては、放射性同位体、酵素、蛍光色素分子、化学発光試薬、酵素補助因子または酵素基質、酵素阻害物質、粒子または染料が挙げられる。エクソソーム中のTSP-1の存在を決定するためには種々様々の既知の試験を使用することができ、例えば、非標識抗体(一次抗体)と標識抗体(二次抗体)の組合せ適用、ウェスタンブロット法または免疫ブロット法、ELISA(酵素免疫測定吸着法)、RIA(放射免疫測定)、競合EIA(酵素免疫測定)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、2次元ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、免疫細胞化学的技術、免疫組織化学的技術、免疫比濁法、免疫蛍光法、バイオチップまたは特定の抗体を含有しているタンパク質マイクロアレイ、あるいは試薬ストリップなどの形態でのコロイド析出に基づくアッセイおよび抗体結合量子ドットに基づくアッセイの使用に基づく技術である。
【0067】
(4)低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-β
潜在TGF-βレベルという用語は、本明細書で使用する場合、TGF-βホモ二量体に加えてプロペプチド部位を含有しているTGF-β前駆体分子の複合体である小型潜在複合体(SLC)、TGF-β遺伝子生成物のN末端領域に由来するタンパク質である潜在関連ペプチド(LAP)のいずれかのレベルを指す。別の実施態様では、潜在TGF-βレベルという用語は、小型潜在複合体(SLC)と潜在TGF-β-結合タンパク質(LTBP)、好ましくはLTBP-1、LTBP-2、LTBP-3およびLTBP-4を含んでなる複合体である大型潜在複合体(LLC)を指す。TGF-βのLTBPへの結合は、ジスルフィド結合により、それによってその受容体に結合することが防止されて不活性が維持される。
【0068】
一つの実施態様では、TGF-βは、TGFβ-1、TGFβ-2またはTGFβ-3あるいはそれらの任意の組合せであってもよい。
【0069】
一つの実施態様では、エクソソームが脂肪組織に由来するMSCに由来する場合、それらのTGF-β含量は好ましくは、エクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.001~0.5ngであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.005~0.025ngであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.075~0.2ngである。
【0070】
別の実施態様では、エクソソームは月経組織由来のMSCに由来し、TGF-β含量は、エクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.1~1ngであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.2~0.8ngであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりにTGF-βが0.3~0.7ngまたはエクソソーム1ng当たりにTGF-βが0.4~0.6μgである。
【0071】
一つの実施態様では、エクソソームが脂肪組織に由来するMSCに由来する場合、それらの潜在TGF-β含量は好ましくは、エクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.0001~0.01ngであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.0005~0.01ngであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.001~0.005μgである。
【0072】
別の実施態様では、エクソソームは月経組織由来のMSCに由来し、潜在TGF-β含量は、エクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.001~0.5ngであり、より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.005~0.025ngであり、一層より好ましくはエクソソーム1μg当たりに潜在TGF-βが0.01~0.02ngである。
【0073】
一つの実施態様では、TGF-βまたは潜在TGF-βの含量は、場合によっては、エクソソームタンパク質1μg当たりに、TGF-βまたは潜在TGF-βのナノグラムで提供される。別の実施態様では、場合によっては、エクソソームの合計重量1μg当たり(即ち、タンパク質および脂質を含む)に、TGF-βまたは潜在TGF-βのナノグラムで提供される。
【0074】
別の特別の実施態様では、第二の態様のエクソソームの集団の少なくとも20%は、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団はTSP-1を含んでなる。
【0075】
別の特別の実施態様では第二の態様のエクソソームの集団の少なくとも20%は約150~約300nmの平均直径を有し、TSP-1を含んでなる。
【0076】
別の特別の実施態様では、第二の態様のエクソソームの集団の少なくとも20%は、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団の少なくとも20%は、約150~約300nmの平均直径を有し、エクソソームの集団は、TSP-1を含んでなる。
【0077】
MSCに由来する単離されたエクソソーム集団の調製方法およびそれから得られたエクソソーム集団
第三の態様では、本発明は、以下を含んでなる、MSC由来の単離されたエクソソーム集団の調製方法に関する:
a)3kDaカットオフ膜を用いて細胞を含まないMSC馴化培地を濾過して残留物を回収すること、または
b)細胞を含まないMSC馴化培地を、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度で遠心分離してペレットを回収すること。
【0078】
「単離されたエクソソーム集団」および「MSC」という用語は、本発明の第一の態様のエクソソームに関連して前に定義されている。
【0079】
特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞(ASC)である。別の態様では、MSCは月経組織由来のMSCである。
【0080】
特別の実施態様では、MSCはヒトである。
【0081】
第三の態様の方法は、3kDaカットオフ膜を使用した、細胞を含まないMSC馴化培地を濾過する第一工程を含んでなる。
【0082】
「細胞を含まないMSC馴化培地」という用語は、本明細書で使用する場合、培養物中のMSCと接触させた、細胞を実質的に含まない培地を指す。「培地」または「培養培地」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞を取り囲む環境の成分を含む、生細胞の培養に使用する任意の物質または調製物を指す。培地は、MSCを培養するために十分な任意の培地でよく、例えば、抗生物質(例えば、ペニシリン100単位/mlおよびストレプトマイシン100μg/ml)との、または抗生物質なしのダルベッコ改変イーグル培地)(DMEM)およびグルタミン2mMでよく、2%~20%ウシ胎児血清(FBS)を補給してもよい。特別の実施態様では、MSC馴化培地は、ウシ胎児血清、ウシ血清(BS)、子ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FCS)、新生子ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)を含む任意の血清種を含んでならない。別の特別の実施態様では、MSC馴化培地はインシュリン-トランスフェリン-セレニウムを含んでなる。より特別な実施態様では、MSC馴化培地はインシュリン-トランスフェリン-セレニウムを1%含有しているDMEMである。
【0083】
特別の実施態様では、MSC馴化培地は、MSC培養物と少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日以上接触させたものである。より特別な実施態様では、MSC馴化培地は3日または4日MSCと接触させたものである。
【0084】
細胞を含まないMSC馴化培地は、細胞のない培養培地を回収することを可能にする、任意の当業者にとって周知の方法によって得ることができる。例えば、培地は、MSCの単層培養物から回収することができる。
【0085】
特別の実施態様では、細胞を含まないMSC馴化培地は、MSC培養物から培地を回収し、当該培地を遠心分離機にかけて、細胞および残骸を除去して上澄みを回収することによって得られる。より特別な実施態様では、細胞および残骸は、培地を2連続で1000×gおよび5000×gでそれぞれ遠心分離にかけることによって除去される。一層より特別な実施態様では、これらの遠心分離は4℃で行なわれる。さらにより特別な実施態様では、第一の遠心分離は約10分続き、第二の遠心分離は約20分続く。
【0086】
第三の態様の方法の第一工程は、3kDaカットオフ膜を用いて細胞を含まないMSC馴化培地を濾過して残留物を回収することを含んでなる。「濾過する」という用語は、本明細書で使用する場合、MSC馴化培地を、膜に通過させることを意味する。「3kDaカットオフ膜」という用語は、本明細書で使用する場合、3kDa未満の粒子を通過させるが、3kDa以上の粒子の通過を防止する直径の孔を有する材料の多孔性平面シートを指す。MSC馴化培地は、3kDaカットオフ膜で、任意の適当な技術、例えば、3kDaカットオフ膜を備えた遠心チューブ上で培地を遠心分離機にかけることによって、濾過することができる。膜は任意の好適な材料、例えばセルロースでもよい。
【0087】
「残留物」という用語は、本明細書で使用する場合、3kDaカットオフ膜を通過することができない培地の部分を指す。
【0088】
第三の態様の方法の第二工程は、細胞を含まないMSC馴化培地を、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度で遠心分離してペレットを回収することを含んでなる。
【0089】
「遠心分離機にかける」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞を含まないMSC馴化培地を遠心力にかけて、当該培地の成分を、当該遠心力を与えてそれらの異なる挙動に基づき分離させることを指す。「エクソソームを沈殿させるのに十分な速度」は、エクソソームのサイズに応じて当業者が決定できる。特別の実施態様では、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度は100.000g~1.000.000gであり、したがって、遠心分離は超遠心分離である。より特別な実施態様では、遠心分離は100000×gで行なわれる。特別の実施態様では、遠心分離は30分~12時間続けられる。より特別な実施態様では、遠心分離は2時間~10時間続けられる。一層より特別な実施態様では、遠心分離は約6時間続けられる。
【0090】
第四の態様では、本発明は、第三の態様の方法によって得られたMSC由来の単離されたエクソソーム集団に関する。
【0091】
特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞(ASC)である。
【0092】
特別の実施態様では、MSCはヒトである。
【0093】
本発明によるエクソソーム含有組成物およびその使用
第五の態様では、本発明は、本発明の第二または第四の態様によるエクソソーム集団およびTGF-β阻害剤を含んでなる組成物に関する。
【0094】
「エクソソーム」、「単離されたエクソソーム集団」、「MSC」、「分子量」、「平均分子量」、「直径」、「平均直径」、「約」および「TSP-1」という用語は、本発明の第一の態様のエクソソームに関して前に定義されていて、本明細書で定義するエクソソーム含有組成物に等しく適用可能である。
【0095】
「TGF-β阻害剤」という用語は、本明細書で使用する場合、TGF-βとその受容体との間の相互作用に起因するシグナル変換を防止することができる任意の化合物として理解される。本発明によって使用することができるTGF-β阻害剤は、TGF-βのその受容体への競合的結合またはアロステリック結合を防止する化合物、TGF-βに結合する化合物およびTGF-βの細胞間シグナリングを阻害する化合物を含む。TGF-β阻害剤の阻害能を決定する適切なアッセイは、Mv-1-Lu細胞増殖アッセイでの阻害剤を使用することによるTGF-β生物活性のin vitro阻害、同様にCCl4に誘発された急性肝損傷モデルを使用する阻害剤によてうTGF-β生物活性のin vivo阻害(国際公開第200519244号)を含む。TGF-βアンタゴニストに関する詳細については、Wojtowicz-Praga (2003)も参照のこと。
【0096】
一つの実施態様(TGF)では、TGF-β阻害剤は特定のTGF-β1阻害剤、特定のTGF-β2阻害剤または特定のTGF-β3阻害剤である。別の実施態様では、特定のTGF-β阻害剤は、TGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3を含むすべてのTGF-βアイソフォームを阻害することができる。
【0097】
TGF-β阻害剤は、TGF-βとその受容体との間の相互作用に起因するシグナル変換を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%(即ち、無し)防止することができる。
【0098】
本発明で使用する好適なTGF-β阻害剤は限定することなく、表1中に定義されるものである:
【0099】
【表1】
【0100】
「多形体」という用語は、本明細書で使用する場合、X線回折図形、IRスペクトル、相転移点などによって説明される、特定の物理的性質を有する、物質の特定の結晶状態を指す。異なる多形体は、結晶充填(充填多型性)の差または同一の分子の異なる配座異性体間の充填の差(立体配座の多型性)に起因し得る。
【0101】
好ましい実施態様では、TGF-β阻害剤は、X線粉末回折図形(Cu放射、λ=1.54056Å)によって特徴づけられた結晶性LY2157299一水和物であって、9.05でのピークならびに11.02、11.95および14.84(2θ+/・0.1°)を含んでなる群から選択される1つ以上のピークを含んでなる。
【0102】
好ましい実施態様では、TGF-β阻害剤は、X線粉末回折図形(Cu放射、λ=1.54056Å)によってさらに特徴づけられた結晶のLY2157299一水和物であって、9.05でのピーク(2θ+/・0.1°)を含んでなる。
【0103】
別の好ましい実施態様では、TGF-β阻害剤は、化学シフトが108.8、115.6、122.6および171.0(+/-0.2)ppmである、固形状13Cの核磁気共鳴によって特徴づけられた結晶性LY2157299一水和物である。
【0104】
本明細書で使用する場合、「溶媒和物」という用語は、非共有結合の分子間力によって結合している、化学量論量または非化学量論量の、水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2-プロパノールなどの溶媒をさらに含む化合物を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物の代わりに「水和物」という用語を使用する。
【0105】
本発明は、そのようなポリペプチドと特異的に結合し、かつTGF-βのシグナル伝達活性を中和する抗体および抗体フラグメントをさらに提供する。典型的な中和抗体にはポリクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体由来のヒト化抗体、およびヒトモノクローナル抗体が含まれる。具体的な抗体フラグメントとしてはF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFvおよび最小の認識単位が挙げられる。
【0106】
本発明の組成物の単離されたエクソソーム集団を形成する部分は、次の1つ以上の特徴によって特徴づけられる:
-エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、かつ/または
-エクソソームの少なくとも20%が約150~約300nmのの平均直径を有し、かつ/または
-当該集団からのエクソソームがTSP-1を含んでなり、かつ/または
-エクソソームが低いレべルのTGF-βおよび/または潜在TGF-βを示す。
【0107】
特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞(ASC)である。別の実施態様では、MSCは月経組織に由来する。別の特別の実施態様では、MSCはヒトである。
【0108】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%が、少なくとも3kDa、例えば少なくとも約3kDa、例えば少なくとも約10kDa、少なくとも約20kDa、少なくとも約30kDa、少なくとも約40kDa、少なくとも約50kDa、少なくとも約75kDa、少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0109】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0110】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0111】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0112】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%の平均分子量を有するが少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0113】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0114】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0115】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約10kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約20kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約30kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約40kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約50kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約75kDaの平均分子量を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも99%が少なくとも約100kDaの平均分子量を有する。
【0116】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも95%が、約150~約300nm、より具体的には約223~約300nm、一層より具体的には約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0117】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも20%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0118】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも40%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0119】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも60%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0120】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも80%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0121】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも90%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0122】
特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約150~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約223~約300nmの平均直径を有する。別の特別の実施態様では、エクソソームの少なくとも95%が、約150~約193.5nmの平均直径を有する。
【0123】
特別の実施態様では、本発明による組成物のエクソソームの少なくとも20%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団の少なくとも20%が、約150~約300nmの平均直径を有する。
【0124】
特別の実施態様では、本発明による組成物のエクソソームの少なくとも20%が少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団はTSP-1を含んでなる。
【0125】
別の特別の実施態様では、本発明による組成物のエクソソームの少なくとも20%は平均直径を約150~約300nmとし、TSP-1を含んでなる。
【0126】
別の特別の実施態様では、本発明による組成物のエクソソームの少なくとも20%は、少なくとも約3kDaの平均分子量を有し、エクソソームの集団の少なくとも20%は約150~約300nmの平均直径を有し、エクソソームの集団はTSP-1を含んでなる。
【0127】
好ましい実施態様では、TGF-β阻害剤は表1に示された阻害剤を含んでなる群から選択される。
【0128】
別の実施態様では、本発明の組成物の単離されたエクソソーム集団を形成する部分は、以下の工程を含んでなる方法によって得られたものであることを特徴とする:
a)3kDaカットオフ膜を用いて細胞を含まないMSC馴化培地を濾過して残留物を回収する工程、または
b)細胞を含まないMSC馴化培地を、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度で遠心分離してペレットを回収する工程。
【0129】
特別の実施態様では、MSCは脂肪組織由来幹細胞(ASC)である。特別の実施態様では、MSCは月経組織に由来するMSCである。別の特別の実施態様では、MSCはヒトである。
【0130】
特別の実施態様では、MSC馴化培地は、ウシ胎児血清、ウシ血清(BS)、子ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FCS)、新生子ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清(RS)を含む任意の血清種を含んでならない。別の特別の実施態様では、MSC馴化培地はインシュリン-トランスフェリン-セレニウムを含んでなる。より特別な実施態様では、MSC馴化培地はインシュリン-トランスフェリン-セレニウムを1%含有しているDMEMである。特別の実施態様では、MSC馴化培地は、MSC培養物と少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日以上接触させたものである。より特別な実施態様では、MSC馴化培地は3日または4日MSCと接触させたものである。細胞を含まないMSC馴化培地は、細胞のない培養培地を回収することを可能にする、任意の当業者にとって周知の方法によって得ることができる。例えば、培地は、MSCの単層培養物から回収することができる。
【0131】
特別の実施態様では、細胞を含まないMSC馴化培地は、MSC培養物から培地を回収し、当該培地を遠心分離機にかけて、細胞および残骸を除去して上澄みを回収することによって得られる。より特別な実施態様では、細胞および残骸は、培地を2連続で1000×gおよび5000×gでそれぞれ遠心分離にかけることによって除去される。一層より特別な実施態様では、これらの遠心分離は4℃で行なわれる。さらにより特別な実施態様では、第一の遠心分離は約10分続き、第二の遠心分離は約20分続く。
【0132】
特別の実施態様では、エクソソームを沈殿させるのに十分な速度は100.000g~1.000.000gであり、したがって、遠心分離は超遠心分離である。より特別な実施態様では、遠心分離は100000×gで行なわれる。特別の実施態様では、遠心分離は30分~12時間続けられる。より特別な実施態様では、遠心分離は2時間~10時間続けられる。一層より特別な実施態様では、遠心分離は約6時間続けられる。
【0133】
本発明の医薬組成物
第六の態様では、本発明は、医薬組成物、以下では、本発明の第一の態様によるエクソソーム、本発明の第二または第四の態様による単離されたエクソソーム集団または本発明の第五目の態様による組成物を含んでなる本発明の医薬組成物に関する。
【0134】
「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、治療上有効量の本発明による薬品(即ち、第一の態様のエクソソームまたは第二もしくは第四の態様の単離されたエクソソーム集団)および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなる組成物を指す。
【0135】
本明細書で互換的に使用される「薬学的に許容可能な賦形剤」または「薬学的に許容可能な担体」、「薬学的に許容可能な希釈剤」または「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、任意の従来的な種類の、毒性のない固体、半固体または液体のフィラー、希釈剤、封入材料または製剤助剤を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用された用量および濃度で受領者にとって本質的に毒性が無く、処方物の他の成分と相溶性を有する。好適な担体には、限定することなく、水、デキストロース、グリセロール、食塩水、エタノールおよびそれらの組合せが含まれる。担体は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または処方物の効果を増強するアジュバントなどの追加の薬剤が含まれていてもよい。
【0136】
当業者であれば、本発明の医薬組成物中の賦形剤の性質が投与経路に大いに依存するだろうことを認識するだろう。経口(または局所)使用のために製剤化した医薬組成物の場合には、本発明による医薬組成物は、通常1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と混合した本発明の医薬組成物を含んでいる。これらの添加剤は、例えば、スクロース、ソルビトール、砂糖、マンニトール、微結晶セルロース、バレイショデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性のフィラーまたは希釈剤;崩壊剤(crumbling agent)および崩壊剤(disintegrant)、例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、バレイショデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギネートまたはアルギン酸およびキトサン;結合剤、例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、α澱粉、微結晶セルロース、アルミニウムマグネシウムシリケート、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、酢酸ポリビニルまたはポリエチレングリコールおよびキトサン;流動促進剤および接着防止剤を含む平滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油または滑石であってもよい。
【0137】
特に好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、直腸、鼻、口腔、膣、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内もしくは頭蓋内の経路を介した投与、または埋め込み型リザーバーを介した投与のために製剤化される。
【0138】
本発明による医薬組成物は、例えば溶液、懸濁液および乳液などの注入可能物(injectable)として調製することができる。
【0139】
本発明の免疫介在炎症性疾患の治療方法
第七の態様では、本発明は、免疫介在性炎症性疾患を、当該疾患に罹患した対象において治療する方法であって、当該対象に、治療上効果的な量の、第一の態様のエクソソーム、第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団、第五の態様による組成物あるいは第六の態様による医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。また、本発明は、免疫介在性炎症性疾患の治療方法で使用するための、第一の態様のエクソソーム、第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団、第五の態様による組成物あるいは第六の態様による医薬組成物にも関する。また、本発明は、免疫介在性炎症性疾患を治療するための医薬の調製のための、第一の態様のエクソソーム、第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団、第五の態様による組成物あるいは第六の態様による医薬組成物にも関する。
【0140】
「治療方法」という用語は、本明細書で使用する場合、免疫介在性炎症性疾患に罹患した対象の、当該疾患に関連する1つ以上の症状を防止、緩和または除外することを含む、健康を保護するための、第一の態様のエクソソーム、第二または第四の態様の単離されたエクソソーム集団、第五の態様による医薬組成物の投与を意味する。
【0141】
「免疫介在性炎症性疾患」または「IMID」という用語は、本明細書で使用する場合、決定的な病因を欠くが、炎症に結びつく共通の炎症性経路を特徴とし、かつ正常な免疫反応の脱制御に起因するかまたはそれによって引き起こされる、病態または疾患の任意の群を指す。炎症は、多くの内科的障害および自己免疫障害を介在し、かつそれらの一次要因ともなるので、本発明の文脈内では、免疫介在性炎症性疾患という用語は自己免疫障害および炎症性疾患を包含することを意図している。
【0142】
「自己免疫障害」という用語は、本明細書で使用する場合、対象の細胞、組織および/または器官の損傷を特徴とする病態であって、当該対象の、それ自身の細胞、組織および/または器官への免疫反応によって引き起こされた病態を指す。本発明の方法または医薬組成物で治療することができる自己免疫疾患の実例としては、限定することなく、円形脱毛症、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(chronic fatigue immune dysfunction syndrome:CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、円盤状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症(essential mixed cryoglobulinemia)、線維筋痛線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenia purpura:ITP)、IgA神経病、若年性関節炎、扁平苔癬、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病または免疫介在糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、進行性全身硬化症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、スティッフマン症候群、全身性エリトマトーデス、紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎血管炎などの血管炎、尋常性白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症、抗糸球体基底膜疾患(anti-glomerular gasement membrane disease)、抗リン脂質抗体症候群、神経系の自己免疫疾患、家族性地中海熱、ランバート-イートン筋無力症候群、交感性眼炎、多内分泌症、乾癬等が挙げられる。
【0143】
「炎症性疾患」という用語は、本明細書で使用する場合、炎症(例えば、慢性炎症)を特徴とする対象の病態を指す。炎症性障害の非限定的な実例としては、限定することなく、セリアック病、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性骨溶解、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性障害、敗血症性ショック、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、炎症性血管炎(例えば、結節性多発動脈炎、ウェーグナー肉芽腫症、高安動脈炎、側頭動脈炎およびリンパ腫様肉芽腫)、外傷後血管形成術(例えば、血管形成後の再狭窄)、未分化脊椎関節障害、未分化関節障害、関節炎、炎症性骨溶解、慢性肝炎、ウイルス感染または細菌感染に起因する慢性炎症、および敗血症などの急性炎症が挙げられる。
【0144】
特別の実施態様では、免疫介在性炎症性疾患は、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)およびクローン病からなる群から選択される。
【0145】
「関節リウマチ」または「RA」という用語は、本明細書で使用する場合、持続性の関節の滑膜炎を引き起こし、それらの進行性の破壊を引き起こし、異なる程度の変形および機能障害を発生させることを特徴とする、全身性の自己免疫炎症性病変を指す。プロセスは、体液因子および細胞因子、特にCD4 T細胞の介在から始まり、それらは分子を介在して炎症を発生させ、末梢血液細胞を活性化させて、滑膜細胞の増殖および活性を引き起こし、関節軟骨、軟骨下骨、腱および靱帯に侵入して破壊する。
【0146】
「炎症性腸疾患」または「IBD」という用語は、潰瘍性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置腸管大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット病および不定の大腸炎を含む、結腸と小腸の炎症性病態の群を指す。
【0147】
「クローン病」という用語は、本明細書で使用する場合、口から肛門までの胃腸管の任意の部分に影響し得る炎症性腸疾患の任意の種類を指し、種々様々の症状がもたらされる。それは主として腹痛、下痢(炎症が最悪である場合には出血を伴う)、嘔吐(連続的な場合もある)または体重低下を引き起こすだけでなく、貧血、皮疹、関節炎、目の炎症、疲労および集中力欠如などの、胃腸管外の合併症を引き起こすかもしれない。クローン病は、遺伝的に感受性な個体の環境因子、免疫因子および細菌因子との間の相互作用によって引き起こされる。これは、身体の免疫系が胃腸管を攻撃するという慢性の炎症性障害をもたらす。クローン病が免疫関連疾患である一方、自己免疫疾患ではないようである(免疫系が身体自体によって引き起こされていないという点で)。
【0148】
「対象」という用語は前に定義されたものである。「当該疾患に罹患している対象」という用語は、その疾患の診察を受けた対象を意味する。
【0149】
エクソソームの由来であるMSCは、自己由来でも同種異系由来でも異種由来でもよい。本明細書で使用する場合、「自己由来」という用語は、MSCのドナーと当該MSC由来のエクソソーム(または単離されたエクソソーム集団)の受領者が同一の対象であることを意味する。「同種異系由来」という用語は、MSCのドナーと当該MSC由来のエクソソーム(または単離されたエクソソーム集団)の受領者が異なる対象であることを意味する。「異種由来」という用語は、MSCのドナーと当該MSC由来のエクソソーム(または単離されたエクソソーム集団)の受領者が異なる種の対象であることを意味する。特別の実施態様では、エクソソームの由来であるMSCは同種異系由来である。
【0150】
特別の実施態様では、エクソソームまたは単離されたエクソソーム集団は全身にまたは局所的に投与する。「全身に」という用語は、本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物を、非局所的な方法で対象に投与してもよいことを意味する。本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物の全身投与は、対象の身体にわたる、いくつかの器官または組織に達してもよく、または対象の特定の器官または組織に達してもよい。「局所的に投与する」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物が、特定の部位、またはその近辺で対象に投与してもよいことを意味する。より特別な実施態様では、エクソソームまたは単離されたエクソソーム集団は、直腸、鼻、口腔、膣、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内もしくは頭蓋内の経路を介して、または埋め込み型リザーバーを介して投与される。
【0151】
特別の実施態様では、エクソソームまたは単離されたエクソソーム集団は少なくとも1つの追加的治療薬と組み合わせて投与される。「治療薬」という用語は、本明細書で使用する場合、疾患の治療に有用な薬品を指す。特別の実施態様では、追加的治療薬は、前述の免疫介在性炎症性疾患の治療のための既知の薬であり、例えば、限定することなく、コルチコステロイドまたは非ステロイド性抗炎症化合物などである。
【0152】
「共に投与される」という発現は、本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物が、任意の順序で、追加的治療薬(例えば、炎症に関連する疾患の治療で有用な治療薬)と共同でまたは別々に、同時に(simultaneously)、同じ時点で(at the same time)または連続的に投与してもよいことを意味する。例えば、本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物の投与を最初に行い、続けて、1つ以上の追加的治療薬を投与してもよく;あるいは本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物の投与を最後に行い、その前に1つ以上の追加的治療薬を投与してもよく;あるいは本発明のエクソソーム、単離したエクソソーム集団または医薬組成物の投与を、1つ以上の追加的治療薬の投与と同時に行ってもよい。
【0153】
一つの実施態様では、本発明による方法を使用して治療を受ける患者は、TGF-β阻害剤を含んでなる療法の治療を受けているか、または受けていた患者である。
【0154】
以下の単なる例証であり、本発明を全く制限しない例を通じて本発明を説明する。
【実施例
【0155】
例1
材料と方法
ヒト脂肪間葉幹細胞の単離および増殖
ヒト脂肪間葉幹細胞(hASC)を、健康な成人ドナーからのヒト脂肪組織から得られた脂肪吸引物から単離した。脂肪吸引物をPBSで洗浄し、PBS中で、I型コラゲナーゼで分解した。分解したサンプルを、10%ウシ胎児血清(FBS)で洗浄し、塩化アンモニウム160mMで処理し、培地(10%FBS含有DMEM)中で懸濁し、40μmナイロンメッシュで濾過した。細胞は組織培養フラスコ上に播種し、37℃および5%COで増殖させ、7日ごとに培地を交換した。培養物が90%の密集度に達した際に、細胞を新しい培養フラスコに移した。さらに、CD14、CD31、CD34、CD45に対して陰性であり、CD29、CD59、CD90およびCD105に対して陽性であった特定の表面積マーカーを用いてフローサイトメトリーによりhASCを試験した(提示データなし)。研究では2人の健康なドナーからの細胞系を使用した。生物学的試料は適切な研究倫理委員会の後援下でインフォームド・コンセントを行った後に得た。
【0156】
hASCからのエクソソームの単離および精製
175cmフラスコの中で培養したhASCから、hASCからのエクソソーム(exo-hASC)が富化した画分を得た。細胞が80%の密集度に達した際に、培地(10%FBS含有DMEM)をエクソソーム単離培地(1%インシュリン-トランスフェリン-セレニウム含有DMEM)と取り替えた。3~4日ごとにhASC上澄みを回収した。4℃にて100,000×g(10分)と5000×g(20分)での2回の連続した遠心分離を行い、上澄みからエクソソームを単離し、細胞および残骸を除去し、続けて6時間100,000×gで超遠心分離を行ってエクソソームを沈殿させた。ペレットをPBS250μL中で再懸濁し、-20℃にて保管した。in vitro実験の前にエクソソームの量をブラッドフォードアッセイで定量化し、ナノ粒子追跡分析により特徴づけた。
【0157】
exo-hASCの特徴化
精製されたエクソソームの濃度およびサイズは、粒径にブラウン運動の割合を関連づけるナノ粒子追跡分析(NanoSight Ltd、Amesbury、UK)によって測定した。ナノ粒子追跡分析ソフトウェアパッケージバージョン2.2を用いて結果を分析した。三通のサンプルは滅菌濾過PBS中で1:10に希釈して分析した。
【0158】
ブラッドフォードアッセイ
ブラッドフォードアッセイでのタンパク質定量化によってエクソソーム濃度を間接的に測定した。タンパク質濃度の定量化を行うために、RTで、エクソソームサンプル20μLをブラッドフォード試薬180μL(Bio Rad Laboratories、Hercules、CA)でインキュベートした。595nmにて5分後に吸収度を読み取り、タンパク質濃度をウシ血清アルブミンの標準濃度曲線から推定した。
【0159】
タンパク質の半定量的(Semicuantitative)同定
・タンパク質単離:
-Bonzon-Kulichenkoら、Mol. Cell Proteomics 2011, 10(1):M110.003335に記載の方法を使用するタンパク質消化。簡潔には次の通りである:タンパク質50μgを、バッファー(5%SDS、10%グリセロール、25mMTris-Cl、10mM DTTまたはpH6.8の0.01%ブロモフェノールブルー)75μl中に再懸濁させる。
-サンプルをSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-poliacrilamide gel)によって分離した。タンパク質はクーマシィーブルーで視認され、切断して分解させた(37℃、pH8.8の50mMアンモニウム重炭酸塩中5:1タンパク質:トリプシン(w/w)の比にてトリプシン60ng/μlおよび10%(v/v)アセトニトリルおよび0.01%(w/v)5-シクロヘキシル-1-ペンチル-β-D マルトシド)
・結果として生じたペプチドは、システムEasy-nLC 1000と四重極(quadruple)Orbitrapハイブリッド質量分析計(QExactive、Thermo Scientific、San Jose、CA)を使用して、LC-MS/MSによって分析された。
・タンパク質の同定は、SEQUEST(Protein Discoverer 1.3.0.339、Thermo Scientific)およびSwissprot(Uniprot、2012-5公開)データベースを使用して行なった。
・Navarro Pら、J Proteome Res. 2009, 8(4):1792-6に記載のように、SEQUEST結果を確認した。
【0160】
リンパ球単離および保管
健康なドナーからの末梢血リンパ球(PBL)をHistopaque-1077(Sigma、St. Louis、MO、USA)で遠心分離して、PBSで2度洗浄することによって得た。PBLは冷凍して、液体窒素中に保管した。in vitro実験については、細胞のアリコートを37℃で溶かし、10mLのRPMI1640に添加し、1500rpmで遠心分離機に5分間かけてDMSOを除去した。ペレットを10%FBSで補給したRPMI1640中に再懸濁した。
【0161】
エクソソームでのT細胞と共培養物のin vitro刺激
in vitro刺激PBLに対するexo-hASCの免疫調節効果を決定するために、精製されたPBLを2×10個、96ウェルプレート(ウェル1個あたりに200μl)に播種した。PBLを刺激するために、T細胞活性/増殖キット(Miltenyi Biotec inc、San Diego、CA、USA)を使用し、抗CD2/抗CD3/抗CD28でコーティングしたマイクロビーズ5μLを各ウェルに添加した。最後に、異なる濃度(PBL 4μg/10、8μg/10および16μg/10)のエクソソームをウェルに添加した。PBLを6日間培養した。陰性の対照(非刺激PBL)および陽性の対照(エクソソームなしでの刺激PBL)を、すべての実験で使用した。
【0162】
CFSE増殖アッセイ
T細胞の増殖挙動を、カルボキシフルオレセンスクシンイミジルエステル(carboxyfluorescein succinimidyl ester :CFSE)希釈によって定量化した。CFSE染色は、播種前に行い、最終濃度10μMでのCFSE細胞増殖キット(Invitrogen、Eugene、OR)を37℃にて10分間用いて、続けて培養培地での即時のクエンチングを行った。6日後に、exo-hASCの存在下または不在下でのin vitro刺激PBLについて、フローサイトメトリーによってCFSE希釈の試験を行った。
【0163】
in vitro刺激PBLの分化/活性マーカー発現分析
in vitro刺激PBLのフローサイトメトリーのために、上下にピペットで移すことにより、6日後に細胞をウェルから回収した。細胞を、CD3(SK7)、CD4(SK3)、CD8(SK1)、CCR7(3D12)、CD45RA(L48)(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)に対して、蛍光標識されたヒトモノクローナル抗体で染色した。マーカー発現分析は次のように行なった:細胞2×10個を、2%FBS含有PBSの存在下で、適当な濃度のモノクローナル抗体で4℃にて30分間培養した。細胞を洗浄し、PBS中で再懸濁した。10のイベントを習得した後に、FAC-Scaliburサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)でフローサイトメトリーを行なった。第一に前方および側面の散乱特徴を用いて細胞を選択し、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を用いて蛍光性を分析した。アイソタイプが一致した陰性対照抗体をすべての実験で使用した。相対蛍光強度の平均は、平均蛍光強度(MFI)を、その陰性対照のMFIで割ることによって計算した。
【0164】
細胞間ガンマ-インターフェロンアッセイ
IFN-γアッセイのために、PBLを、PBL 16μg/10個でexo-hASCの存在下にて6日間、T細胞活性/増殖キット(Miltenyi Biotec inc、San Diego、CA、USA)でin vitro刺激した。その後、PBLをBD GolgiStopで6時間インキュベートした。PBLを、PerCP標識付された抗CD4(SK3)およびAPC標識抗CD8(SK1)で染色し、BD Cytofix/Cytoperm固定/透過化キットを使用して、固定し透過させた。最後に、細胞をPE標識抗IFN-γ抗体(全ての試薬はBD Biosciences、San Jose、CA、USAからのものである)で染色した。ゲートされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+細胞上のIFN-γ発現の頻度を測定することによってフローサイトメトリーによる分析を行った。
【0165】
統計的分析
パラメーター分布での変数についてはスチューデントt-試験を用いてデータを統計的に分析した。増殖アッセイについては、ポストホックボンフェローニ(post hoc Bonferroni)試験でのANOVAを行なった。p値が≦0.10または≦0.05であると、統計的に有意と考えられた。統計的決定はすべてSPSS-21ソフトウェア(SPSS、Chicago、IL、USA)を使用して行なった。
【0166】
結果
exo-hASCの粒度分布および濃度
エクソソームが富化した画分を超遠心分離によってhASCから回収した。エクソソームのタンパク質濃度をブラッドフォードアッセイで決定した。各エクソソームサンプルにつきナノ粒子追跡分析を独立に3回行ない、粒度分布および粒子濃度を定量化した。第一に、全タンパク質濃度からin vitroアッセイのためのエクソソームが定量化できた。第二に、ナノ粒子追跡分析から、放出小胞の特徴化ができた。単離された小胞のサイズは223~300nmの範囲であり、平均サイズおよび標準偏差は246.8±25.05nmであった。exo-hASCの代表的な結果は、頻度粒度分布グラフ(図1A)として表示される。エクソソーム(n=6)の濃度はナノ粒子追跡分析によって決定し、1ミリリットル当たりの粒子は8.4~9.7(×10)個の範囲であり、平均濃度として1ミリリットル当たりの粒子は9.1±0.5(×10)個であった。最後に、エクソソーム中のペプチド含量は四重極(quadruple)Orbitrapハイブリッド質量分析計(Q-Exactive、Thermo Scientific、San Jose、CA)に接続したEasy-nLC 1000システムを用いてLC-MS/MSによって分析した。タンパク質の同定はヒトSwissProtデータベースを使用して、SEQUEST(Protein Discoverer 1.3.0.339、Thermo Scientific)で実施した。TSP1ペプチドは同定されたタンパク質合計110個の中で2番目に豊富であった(図1B)。
【0167】
exo-hASCの存在下で共培養された細胞の存在下で共培養されたin vitro刺激T細胞の増殖能
exo-hASCの生物活性を評価するために、リンパ球サブセットの増殖速度に対するそれらの効果を決定した。そのために、合計2×10個のPBLを「材料および方法」で記載したように、抗CD2/抗CD3/抗CD28で刺激し、異なる濃度(4μg/10個、8μg/10個および16μg/10個のPBL)のexo-hASCと6日間共培養した。増殖能をCFSE希釈によって決定した。非刺激PBLを陰性対照として使用し、エクソソームなしの刺激PBLは陽性対照を構成した。予想通りに、非刺激PBLの増殖速度は非常に低度(提示データなし)であり、かつ最大の増殖速度はエクソソームのない刺激PBLによって到達された。CFSE蛍光により合計8つの細胞分裂が検出された。図2A中に示されたように、in vitro刺激リンパ球を、異なる濃度のexo-hASCの存在下で培養した場合、増殖速度は、CD4+およびCD8+T細胞の両方で比例して減少した。大部分の細胞は、少ない細胞分裂を示した一方で、多くの細胞分裂に達した細胞の割合は低かった。各分裂周期の細胞の割合を示す詳細な図は、図2Aで提供されている。各分裂周期の細胞の割合を示す代表的なヒストグラム(図2B)および詳細な図も提供されている(図2C)。
【0168】
ここでは、エクソソームの増加する濃度がどのようにして8世代から7世代までのCD4およびCD8の両方の増殖を阻止しているのかを理解することができる。さらに、エクソソームは、初期の分裂周期4、5および6の細胞を保持し、ここでの細胞の割合はエクソソームの存在下で著しくより高く、一方で分裂周期7および8では、高い用量のエクソソームを使用した場合、細胞の割合は著しく減少した。最初の2つの分裂周期では、エクソソームの存在下または不在下の両方でT細胞を非常に低い割合で含み、これは、ポリクローナル刺激の効果がこれらの2つの分裂周期の後に開始されたことを示すが、エクソソームの存在は、依然としてこれらの最初の2つの分裂周期で細胞を著しく保持していた(ただし、これは10%未満のT細胞の一群で起こっていた)。統計的分析はCD4+およびCD8+T細胞のいずれかで異なる分裂周期にて有意差を示した。最後に、非刺激T細胞中の低CFSET細胞の頻度として、CD4+およびCD8+T細胞に対して刺激指数を計算した。抗CD2/抗CD3/抗CD28で刺激したCD4+およびCD8+T細胞の刺激指数はそれぞれ692.3と655.6であった。しかしながら、PBLをエクソソームの存在下で刺激した場合、染色指数は、CD8+T細胞(4μg、8μgおよび16μgで、519.75±60.97、488.03±107.32、437.4±79.25)と同様にCD4+T細胞(4μg、8μgおよび16μgで、589.93±39.31、585±80.27、529.14±58.88)で著しく減少した。
【0169】
exo-hASCの存在下で共培養されたin vitro刺激T細胞のT細胞サブセット分布
CD45RAアイソフォームおよびケモカイン受容体CCR7は、CD4+およびCD8+T細胞の分化ステージを同定するために一般に使用される表面マーカーである。リンパ球サブセットに対するexo-hASCの効果を研究するために、PBL16μg/10個で、exo-hASC(異なる2つのドナーから)の存在下で、合計2×10個の刺激PBLを培養した。6日目に、CD45RAおよびCCR7に対する市販の抗体を使用してフローサイトメトリーを行なった。CD45RAおよびCCR7の量的発現は、対照(exo-hASCの不在下でのin vitro刺激T細胞)を参照して標準化した。結果では、陽性対照(刺激PBL)で、CD4+およびCD8+T細胞の両方にてCD45RA+およびCCR7+細胞が著しく減少したことが示された。しかしながら、in vitro刺激PBLでのCD45RAおよびCCR7の損失は、exo-hASCの存在で部分的に補填された(図3)。
【0170】
LanzavecchiaおよびSallustoが提案したモデルでは、CD45RAおよびCCR7発現の組合せ分析により、CD8+T細胞内で4つの異なるステージが定義され、それは即ち次のものである: 未感作(CD45RACCR7)、セントラルメモリー(CD45RACCR7)ならびに少なくとも2つのエフェクターメモリー細胞のサブセット:エフェクターメモリー細胞(CD45RACCR7)および最終分化エフェクターメモリー細胞(CD45RACCR7)(Geginat J, Lanzavecchia A and Sallusto F. Blood (2003) 101:4260-6)。
この分布に対するexo-hASCの効果を研究するために、CD4+およびCD8+T細胞のサブセットに対するフローサイトメトリーによってCD45RAおよびCCR7の共発現を分析した。図4に示されるように、未感作細胞の割合はexo-hASCの存在によって著しく変更されなかったが、exo-hASCの存在下で培養したin vitro刺激CD8+T細胞では最終分化エフェクターメモリー細胞(CD45RA CCR7)が著しく減少したことが観察された。CD4+T細胞の場合には、exo-hASCにより、エフェクターメモリー細胞(CD45RA CCR7)の割合が減少し、セントラルメモリー細胞(CD45RA CCR7)の割合が著しく増加した。
【0171】
これらの結果から、exo-hASCが抗CD3/CD2/CD28刺激の介在を受けたin vitro分化を妨げることが証拠づけられた。実際に、CD8+およびCD4+T細胞の場合には、exo-hASCは最終分化発現型およびエフェクターメモリー発現型それぞれへの分化に阻害作用を有している。
【0172】
ヒト脂肪間葉幹細胞由来エクソソームの存在下で共培養されたin vitro刺激T細胞でのIFN-γ生産
IFN-γは、一定の活性条件下での免疫細胞によって分泌された炎症反応促進性サイトカインである。IFN-γ分泌とT細胞活性のレベルとの間には直接の相関がある。T細胞の分泌されたIFN-γに対するエクソソームの効果を決定するために、exo-hASCの存在下および不在下でPBLを6日間培養し、IFN-γの細胞間レベルを、CD4+およびCD8+T細胞のサブセットで決定した。我々の結果からは、両方のT細胞のサブセット中でPBLをエクソソームで培養した場合、陽性対照と比較して、6日目に細胞間IFN-γの割合が減少したことを示した。しかしながら、この減少は、ゲートされたCD4+T細胞でのみ統計的に有意であった(図5)。これらの結果から、exo-hASCがリンパ球の分化発現型だけでなくそれらのIFN-γ分泌も害することが実証された。
【0173】
免疫介在性炎症性障害からの保護にはIFN-γが重大であることを考慮すると、局所的免疫抑制の理想的なビヒクルとしてexo-hASCを使用することができると仮定することができる。さらに、個々の細胞の生存度、ホーミングまたは移植が害される細胞療法とは対照的に、制御することができ、かつ空間と時間によって定義することができる投薬計画での、良好に特徴化されたexo-hASCの用法は利点と考えられ得る。さらに、MSCの臨床効果のために重要な問題である同種異系由来細胞のCD8+T細胞およびNK細胞への感受性を報告している著者も数人いる。exo-hASCの場合には、これらの微小胞は細胞介在溶解による影響を受けず、これはそれらの治療効果の利点である。
【0174】
例2
エクソソームは細胞の開口分泌から派生した微小胞である。それらは異なる細胞種によって分泌され、細胞培養上澄みおよび体液の両方の中で単離することができる。間葉幹細胞由来エクソソームの治療の潜在性は巨大であり、組織再生および炎症の低減を促進する。エクソソームは細胞間の関係に関係し、細胞および標的細胞によって生産されたタンパク質および脂質の交換を可能にすることが示された。エクソソームは、それら発生した細胞からのRNA、ミクロRNAおよびタンパク質を含有していて、このことは生理的プロセスでの重要なシグナリング機序となる。
【0175】
最も一般的な方法は超遠心分離であるが、エクソソームの単離には様々な方法がある。前臨床試験から非常に大きな関心が寄せられて、現在では臨床セッティングでエクソソームの新しい単離試験計画の設計が必要とされている。この研究の目的は、収率、純度およびサイズの点から、ヒトMSCからの単離の様々な方法を比較することであった。我々の結果からは、細胞培養上澄みからエクソソームを単離する中で濃縮フィルターが従来の試験計画の有望な代用となるかもしれないことが実証された。
【0176】
材料と方法
ヒト間葉幹細胞を健康な成人ドナーからのヒト脂肪組織から得られた脂肪吸引物から単離した。組織培養フラスコ上に細胞を播種し、37℃および5%COで増殖させ、3~4日ごとに培地を交換した。
【0177】
上澄みを回収するために、細胞が80%の密集度に達した際に、培養培地をエクソソーム単離培地(血清のないDMEM、1%インシュリン-トランスフェリン-セレニウム含有)と取り替えた。培養を6日行った後に、上澄みを回収して、4℃で1000×g(10分)および5000×g(20分)で遠心分離機にかけて細胞と残骸を除去した。また、上澄みを0.45μMおよび0.22μMフィルターで濾過した。最後に、エクソソームの濃縮のために、上澄みを、3kDaのMWCO(molecular weight cut off:分画分子量)の濃縮器で遠心分離にかけ、または6時間100.000×gで超遠心分離機にかけた。
【0178】
エクソソーム濃度はブラッドフォードアッセイでのタンパク質定量化によって測定した。タンパク質濃度を定量化するために、室温にてブラッドフォード試薬180μlでエクソソームサンプル20μlをインキュベートした。吸収度を595nmで読み取り、タンパク質濃度をウシ血清アルブミンの標準濃度曲線から推定した。
【0179】
精製されたエクソソームの濃度およびサイズは、粒径にブラウン運動の割合を関連づけるナノ粒子追跡分析(NanoSight)によって測定した。結果はナノ粒子追跡分析ソフトウェアパッケージを使用して分析された。三連のサンプルを1:10で、滅菌濾過PBS中に希釈して分析した。
【0180】
結果
本発明者らは、超遠心分離で65~70倍で上澄みを濃縮することができ、一方で3kDaを使用すると、上澄みを100倍に濃縮することができた。
【0181】
結果として生じた容積を使用してブラッドフォードアッセイによって総タンパク質濃度を決定した。3kDa濃縮器を使用すると、タンパク質濃度は超遠心分離による場合よりも5~8倍高かったことが観察された。3kDa濃縮器では、タンパク質濃度として490.43μg/ml±121.03がもたらされた一方で超遠心分離法では90.40μg/ml±57.16がもたらされた。
【0182】
富化した上澄みの粒径を分析した。3kDa濃縮器で分離された粒子は超遠心分離によって分離された粒子より小さかったことが観察された。3kDa濃縮器で得られた粒子の平均径は191.08nm±13.48であった一方で、超遠心分離法によって分離された粒子の平均径は246.83nm±25.06であった。
【0183】
最後に、粒子数は3kDa濃縮器を使用した場合の方が超遠心分離よりも高かった。3kDa濃縮器の使用での粒子数としては、1ml当たりの粒子が11.86×10±3.46個であった一方で、超遠心分離法での粒子数としては、1ml当たりの粒子が9.11×10±0.53個であった。
【0184】
結論
1.より小さな孔径の濃縮器フィルターを使用し、かつより遅い速度で遠心分離機を行うことで、より小さなサイズおよびより高純度であるエクソソームを大量に得ることが可能であった。
2.エクソソームを単離するための超遠心分離法では、濃度および純度がより低い結果となった。
3.濃縮フィルターを使用する好ましい態様は、診療所、病院および研究センターで一般に利用可能な従来の機器の用法に存在している。
【0185】
例3
材料と方法
ヒト脂肪間葉幹細胞の単離および増殖
ヒト脂肪間葉幹細胞(hASC)を健康な成人のドナーからのヒト脂肪組織から得られた脂肪吸引物から単離した。脂肪吸引物をPBSで洗浄し、PBS中のI型コラゲナーゼで分解した。分解したサンプルを、10%ウシ胎児血清(FBS)で洗浄し、塩化アンモニウム160mMで処理し、培地(10%FBS含有DMEM)で懸濁し、40μmナイロンメッシュで濾過した。細胞を組織培養フラスコ上に播種し、37℃および5%COで増殖させ、7日ごとに培地を交換した。培養物が90%の密集度に達した際に細胞は新しい培養フラスコに移した。さらに、CD14、CD31、CD34、CD45に陰性であって、CD29、CD59、CD90およびCD105に陽性である特定の表面積マーカーを使用してフローサイトメトリーによってhASCを試験した(提示データなし)。研究では2人の健康なドナーからの細胞系を使用した。生物学的試料は適切な研究倫理委員会の後援下でインフォームド・コンセントを行った後に得た。
【0186】
hASCからのエクソソームの単離および精製
hASCからのエクソソーム(exo-hASC)に富化した画分を175cmフラスコ中で培養されたhASCから得た。細胞が密集度80%に達した際に、培養培地(10%FBS含有DMEM)をエクソソーム単離培地(1%インシュリン-トランスフェリン-セレニウム含有DMEM)と取り替えた。3~4日ごとにhASC上澄みを回収した。エクソソームを上澄みから単離し、4℃で10分間1000×gおよび20分間5000×gで遠心分離機にかけて死滅細胞および残骸を除去した。これらの上澄みを0.45μmおよび0.20μmの無菌酢酸セルロースフィルターを使用して、連続して濾過した。最後に、事前濾過した上澄みを、4℃で1時間、Amicon(商標)Ultra Centrifugal Filters、3000 MWCO(Merck Millipore)で濃縮した。濃縮されたエクソソームは、濃縮器の上部に残り、-20℃で保管した。
【0187】
exo-hASCの特徴化
精製されたエクソソームの濃度およびサイズは、粒径にブラウン運動の割合を関連づけるナノ粒子追跡分析(NanoSight Ltd, Amesbury, UK)によって測定した。結果はナノ粒子追跡分析ソフトウェアパッケージバージョン2.2を使用して分析された。三連のサンプルを1:10で、滅菌濾過PBS中に希釈して分析した。
【0188】
menSC(月経組織)からのエクソソームの単離および精製
menSCからのエクソソーム(exo-menSC)に富化した画分を175cmフラスコ中で培養されたhASCから得た。menSCを月経組織から得た。細胞が密集度80%に達した際に、培養培地(10%FBS含有DMEM)をエクソソーム単離培地(1%インシュリン-トランスフェリン-セレニウム含有DMEM)と取り替えた。3~4日ごとにmenSC上澄みを回収した。エクソソームを上澄みから単離し、4℃で10分間1000×gおよび20分間5000×gで遠心分離機にかけて死滅細胞および残骸を除去した。これらの上澄みを0.45μmおよび0.20μmの無菌酢酸セルロースフィルターを使用して、連続して濾過した。最後に、事前濾過した上澄みを、4℃で1時間、Amicon(商標)Ultra Centrifugal Filters、3000 MWCO(Merck Millipore)で濃縮した。濃縮されたエクソソームは、濃縮器の上部に残り、-20℃で保管した。
【0189】
exo-menSCの特徴化
精製されたエクソソームの濃度およびサイズは、粒径にブラウン運動の割合を関連づけるナノ粒子追跡分析(NanoSight Ltd, Amesbury, UK)によって測定した。結果はナノ粒子追跡分析ソフトウェアパッケージバージョン2.2を使用して分析された。三連のサンプルを1:10で、滅菌濾過PBS中に希釈して分析した。
【0190】
ブラッドフォードアッセイ
ブラッドフォードアッセイでのタンパク質定量化によってエクソソーム濃度を間接的に測定した。タンパク質濃度の定量化を行うために、RTで、エクソソームサンプル20μLをブラッドフォード試薬180μL(Bio Rad Laboratories、Hercules、CA)でインキュベートした。595nmにて5分後に吸収度を読み取り、タンパク質濃度をウシ血清アルブミンの標準濃度曲線から推定した。
【0191】
TGFベータ濃度
活性かつ潜在のTGFβ形態をELISAキットおよび次の製造会社による指示を使用して測定した: Legend MaxTM Free active TGF-β1 (Cat番号437707) およびLegend MaxTM Latent TGF-β (Cat番号432907)。
【0192】
結果
異なるドナーのeASCS(ASCドナー10、ASCドナー13、ASCドナー14)から得たエクソソームおよび、異なるドナーのmenSC(menSC01、menSC02、menSC03およびmenSC04)から得られたエクソソームをTGF-βの測定のために選択した。下表で示されるように、全てのサンプル中に活性TGF-βおよび潜在TGF-βの両方が検出された。ExohASCよりもExoMenSCでのTGF-βレベルの方がはるかに高かった。
【0193】
【表2】
【0194】
exo-hASC(exo-menSCと一意的に比較)で見出された低いレベルのTGF-βによれば、これらの結果は、exo-hASCの免疫調節活性がTGF-βとは異なる他のパラクリン放出分子によって介在されたであろうということを示し得る。対照的に、exo-menSCの免疫調節活性の効果(未公開の結果)はエクソソームに関連したTGF-βによって介在されたであろう。
【0195】
エクソソームに結び付くTGF-βの関係する阻害効果を決定するためにin vitro活性化リンパ球と一緒にエクソソームを使用したTGF-β遮断実験を行うだろう。これらの実験では、抗TGF-β遮断抗体(MA1-24734、クローン9016.2)を1μg/mlでエクソソームの存在下で共培養したin vitro刺激T細胞に添加するだろう。
【0196】
免疫細胞にとって匹敵する調節役であるが、調節のためにTGF-βを重要なパラクリン因子として使用しないエクソソームを有しているという利点は、エクソソームの調節作用を必要とするが、TGF-β阻害剤での治療中である患者にとって利点と見なすことができるかもしれない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10