(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】望ましくない細胞増殖に関係する疾患の処置のための薬剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220510BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220510BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P15/00
G01N33/53 P
(21)【出願番号】P 2018526815
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2016079031
(87)【国際公開番号】W WO2017089614
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-21
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518177010
【氏名又は名称】ファンダシオ プリヴァダ インスティタット ディンベスティガシオ オンコロジカ デ バル ヘブロン
(73)【特許権者】
【識別番号】313013955
【氏名又は名称】インスティテュシオ・カタラナ・デ・レセルカ・イ・エスチュディス・アヴァンカス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオアネ スアレズ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ソト シモン,アテネア
(72)【発明者】
【氏名】サラ ホジマン,アダ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー ルアーノ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】チガンカス,ヴァネサ
(72)【発明者】
【氏名】アニド フォルゲイラ,ジュディト
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/040243(WO,A1)
【文献】Blood, (2007), 110, [13], p.4319-4330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
A61P 35/00
G01N 33/53
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血病抑制因子(LIF)の発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる抗白血病抑制因子(LIF)抗体を含む、卵巣癌の処置のための医薬組成物
であって、前記卵巣癌がLIFを発現するものである、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記卵巣癌が、対照サンプルよりも少なくとも5%大きいLIF発現レベルを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記LIF発現レベルが、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、あるいは免疫沈降又はELISAに関連付けられた質量分析によって定量化される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記LIF発現レベルが、免疫組織化学的検査又は免疫組織蛍光によって定量化され、LIFスコア又はHスコアの値として測定される、請求項2又は3記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記卵巣癌が、0以上のLIFスコア又は0以上のHスコアを有していることを特徴とし、且つ、基準値が、0以上のLIFスコア又は0以上のHスコアである、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
卵巣癌を患う患者のためにカスタマイズされた治療を設計するインビトロでの方法であって、
(i) 前記患者からのサンプルにおけるLIF発現レベルを定量化する工程、及び
(ii) 前記レベルを基準値と比較する工程
を含み、前記患者からの前記サンプルにおけるLIF発現レベルが基準値以上である場合、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる抗LIF抗体が、前記患者への投与に選択される、前記方法。
【請求項7】
LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる抗LIF抗体で処置される卵巣癌を患う患者を選択するインビトロでの方法であって、
(i) 前記患者からのサンプルにおけるLIF発現レベルを定量化する工程、及び
(ii) 前記レベルを基準値と比較する工程
を含み、前記患者からの前記サンプルにおけるLIF発現レベルが基準値以上である場合、前記患者は、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる抗LIF抗体による処置を受けるために選択される、前記方法。
【請求項8】
前記サンプルが、組織サンプル又は生物流体である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記組織サンプルが腫瘍サンプルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記生物流体が、血液、血清又は血漿である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記LIF発現レベルが、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、あるいは免疫沈降又はELISAに関連付けられた質量分析によって定量化される、請求項6~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記LIF発現レベルが、免疫組織化学的検査又は免疫組織蛍光によって定量化され、LIFスコア又はHスコアの値として測定される、請求項6~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記卵巣癌が、0以上のLIFスコア又は0以上のHスコアを有していることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記基準値が、0以上のLIFスコア又は0以上のHスコアである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記抗LIF抗体が、LIF中和抗体である、請求項1~5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療の分野、およびより具体的には、LIFの阻害剤の使用による癌治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、現在、主として以下の3つのタイプの治療の1つ又は組み合わせで処置される:手術;放射線;および化学療法。手術は、病変組織の塊での除去を伴う。手術は、特定の部位、例えば、乳房、結腸、および皮膚に位置する腫瘍を除去するのに時に有効であるが、背骨などの他の領域に位置する腫瘍の処置に用いることはできず、白血病などの播種性の腫瘍性疾患の処置にも用いることはできない。放射線療法は、暴露された細胞に対する死滅または損傷を引き起こすイオン化放射線への生体組織の暴露を伴う。放射線療法からの副作用は急性且つ一時的なものであり得るが、不可逆的なものもあり得る。化学療法は、細胞複製または細胞代謝の破壊を伴う。それは、乳房、肺、および睾丸の癌の処置において最も頻繁に使用される。腫瘍疾患の処置に使用される全身化学療法の有害作用は、癌の処置を受けている患者によって最も恐れられている。これらの有害作用のうち、吐き気および嘔吐が最も一般的なものである。他の有害な副作用は、血球減少、感染、悪液質、骨髄の救急治療または放射線療法を含む高用量の化学療法を受けている患者内の粘膜炎;脱毛症(抜け毛);心因掻痒、蕁麻疹、および血管浮腫などの皮膚の合併症;神経学的合併症;肺および心臓の合併症;および生殖および内分泌の合併症。化学療法誘発性の副作用は、患者の生活の質に著しい影響を与え、患者の処置とのコンプライアンスに劇的に影響を及ぼし得る。そのため、改善された処置の方法が必要とされている。
【0003】
LIFは、様々な生物活性に関係し、異なる細胞型に効果がある、インターロイキン6(IL-6)タイプのサイトカインである。ヒトLIFは、202のアミノ酸のポリペプチドである。LIFが、TGFpによって媒介されたJAK-STATカスケードの活性化に関係し、それ故、細胞増殖プロセスを誘発すること、および神経膠腫における腫瘍幹細胞(癌幹細胞)の増加にも関係することが記述されてきた。この事実に基づいて、LIF阻害剤が、高いLIF発現レベルを示す神経膠腫の処置に有用であり、その活性が、細胞を阻害する神経膠腫の増殖を阻害するLIFの能力によって媒介されていることが示された。
【発明の概要】
【0004】
本発明の著者は、LIFの阻害剤が、卵巣癌、肺癌および大腸癌の進行を効率的に低減することができることを発見した。特に、本発明の著者は、抗LIF中和抗体が、腫瘍におけるLIFの発現レベルに応じた方法で同所性のモデルにおいてNSCLCの腫瘍増殖を低減することができることを観察した。同様に、抗LIF中和抗体は卵巣癌の同所性のモデルおよび大腸癌において腫瘍増殖を阻害することが示された。
【0005】
したがって、第1の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌の処置における使用のための、白血病抑制因子(LIF)の発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌を患う患者のためにカスタマイズされた治療を設計するインビトロでの方法に関し、該方法は、
(i)前記患者からのサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、および
(ii)前記レベルを基準値と比較する工程を含み、
ここで、前記患者からの前記サンプルにおけるLIFのレベルが基準値以上である場合、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤が、前記患者への投与に選択される。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤で処置される卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌を患う患者を選択するインビトロでの方法に関し、該方法は、
(i)前記患者からのサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、および
(ii)前記レベルを基準値と比較する工程を含み、
ここで、前記患者からの前記サンプルにおけるレベルLIFが基準値以上である場合、前記患者は、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤による処置を受けるために選択される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、異なる癌細胞型におけるLIF発現を示す。
【
図2】
図2は、神経膠芽腫、NSCLC、卵巣および膵臓の腫瘍におけるLIF発現の異質性を示す。
【
図4】
図4は、抗LIF抗体の腫瘍増殖に対する阻害効果が、腫瘍におけるLIFのレベルに左右されることを示す。
【
図5】
図5は、抗LIF抗体がインビボでのNSCLC腫瘍退縮を促進することを示す。
【
図6】
図6は、NSCLC腫瘍における抗LIF抗体の治療効果がLIFレベルに左右されることを示す。
【
図7】
図7は、LIF経路がNSCLC腫瘍増殖にとって重要であることを示す。
【
図8】
図8は、抗LIF抗体が、神経膠芽腫の異種移植モデル(U251)における腫瘍増殖を阻害することを示す。
【
図9】
図9は、神経膠芽腫における腫瘍増殖がLIFレベルに左右されることを示す。
【
図10】
図10は、抗LIF抗体が、卵巣の同所性の免疫適格性モデル(ID8)における腫瘍増殖を阻害することを示す。
【
図11】
図11は、卵巣の腫瘍成長がID8モデルにおけるLIFレベルに左右されることを示す。
【
図12】
図12は、抗LIF抗体が、大腸癌の免疫適格性モデル(CT26)における腫瘍増殖を阻害することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<定義>
語句「活性を遮断する薬剤(agent blocking activity)」または「活性を遮断することができる薬剤(agent capable of blocking activity)」は、本明細書で使用されるように、遺伝子によってコードされたタンパク質がその機能(活性)を実行するのを防ぐ、即ち、LIFがJAK-STATシグナル伝達経路の活性化を誘発することを防ぐことができる阻害物質または化合物に関する。LIFをコード化する遺伝子によってコードされたタンパク質がその機能を実行するのを防ぐことができる典型的な阻害剤は、例えば、タンパク質の阻害ペプチド、その機能の実行に不可欠な及びLIFの活性を中和する、即ち、LIFへの結合に応じて受容体によってシグナル伝達をブロックすることができるタンパク質のエピトープに対して特異的に、またはLIF受容体に向けられた抗体などである。
【0010】
語句「発現を阻害する薬剤(agent inhibiting the expression)」、「発現の阻害剤(inhibitor of the expression)」、または「発現を阻害することができる薬剤(agent capable of inhibiting the expression)」は、本明細書で使用されるように、遺伝子、特にLIFをコードする遺伝子の転写及び/又は翻訳を防ぐか又はブロックすることができる、即ち、前記遺伝子の発現を防ぐか又はブロックすることができる阻害物質または化合物に関する。実例として、本発明に従った適切なLIFの発現の阻害剤は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒RNAまたは特異的なリボザイム、デコイ活性(decoy activity)を有する、即ち、遺伝子の発現にとって重要な因子(一般にタンパク質性)に特異的に結合する能力を有するRNAなどである。
【0011】
用語「抗体」、「免疫グロブリン」などは、分析物(抗原)に特異的に結合し、それを認識する、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされたポリペプチドまたは免疫グロブリン遺伝子、またはそれらのフラグメントを指す。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミューの定常領域遺伝子の他に、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、これは順に、それぞれ、免疫グロブリンクラスのIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを定義している。典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造ユニットは、2対のポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50-70kD)を有している。各鎖のN末端は、主として抗原認識の要因である約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を画定している。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ指す。各重鎖のC末端は、一緒にジスルフィド結合され、抗体の定常領域を形成する。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体は、異なる「クラス」に割り当てられ得る。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちの幾つかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分割され得る。(約25kDaまたは約214のアミノ酸の)全長免疫グロブリン「軽鎖」は、NH2末端に約1-10のアミノ酸の可変領域およびCOOH末端にカッパまたはラムダの定常領域を含む。(約50kDaまたは約446のアミノ酸の)全長免疫グロブリン「重鎖」は、同様に、(約116のアミノ酸の)可変領域および(約330のアミノ酸の)前述の重鎖の定常領域またはクラスの1つ、例えばガンマを含む。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知である。
【0012】
用語「癌」、「腫瘍」、「腫瘍疾患」または「新生物」は、本明細書で使用されるように、未制御の細胞増殖を伴う及び悪性腫瘍悪とも呼ばれる疾患の広いグループを指す。該用語は、通常、抑制されない細胞分裂(または生存またはアポトーシス耐性の増加)、および他の隣接組織に浸潤する(浸潤)、リンパ管および血管を通って細胞が普通は位置付けられない身体の他の領域に広がる(転移)、血流に循環する、およびその後、身体のどこかの正常組織に浸潤する、前記細胞の能力を特徴とする疾患に適用される。癌は、通常、以下の特性の幾つかを共有する:増殖性のシグナル伝達を保持すること、成長抑制因子を回避すること、細胞死に抵抗すること、複製による不死化を可能にすること、血管新生を誘発すること、および浸潤および最終的に転移を活性化すること。癌は、近くの身体部分に浸潤し、リンパ系または血流を通ってより離れた身体部分にも広がり得る。癌は、腫瘍細胞が類似している細胞の型によって分類され、それ故、その型は腫瘍の起源であると推定される。癌という用語は、限定することなく、肺癌、肉腫、悪性黒色腫、胸膜中皮腫、膀胱癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、肝細胞腫、乳癌、大腸癌、腎臓癌、食道癌、副腎癌、耳下腺癌、頭頚部癌、子宮癌、子宮内膜癌、肝臓癌、中皮腫、多発性骨髄腫、白血病、およびリンパ腫を含む。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、癌は、大腸癌、肺癌および卵巣癌から成る群から選択される。「結腸癌」、「直腸癌」、または「腸癌」として知られている用語「大腸癌」は、結腸または直腸における、あるいは虫垂における抑制されない細胞増殖からの癌を指す。
該用語は、腺癌、カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)または肉腫を指すために使用される。本明細書で使用されるように、大腸癌という用語は、ステージI、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIC、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、ステージIVAまたはステージIVBの大腸癌を指す。さらに、本明細書で使用されるように、大腸癌は、原発性大腸腫瘍および二次大腸腫瘍、即ち、身体のどこかの原発性癌からの転移に起因する大腸腫瘍の両方を指す。
【0014】
用語「肺癌」は、呼吸上皮の細胞から生じる癌に関し、2つの広いカテゴリーに分類され得る。肺癌という用語は、本明細書で使用されるように、小細胞肺癌(SCLC)、または腺癌、扁平上皮癌、および大細胞癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)を指す。特定の実施形態では、肺癌はNSCLCである。本明細書で使用されるように、肺癌という用語は、ステージIA、ステージIB、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIIA、ステージIIIBまたはステージIVの肺癌を指す。さらに、本明細書で使用されるように、肺癌は、原発性肺腫瘍および二次肺癌、即ち、身体のどこかの原発性癌からの転移に起因する肺癌の両方を指す。
【0015】
用語「卵巣癌」は、卵巣から生じる癌性増殖に関する。本明細書で使用されるように、卵巣癌は、タイプIの癌(子宮内膜癌、粘液性癌、および明細胞癌)およびタイプIIの癌(漿液性癌および癌肉腫)の両方を指すために使用される。本明細書で使用されるように、卵巣癌は、表面上皮-間質腫瘍(腺癌)、乳頭状漿液嚢胞腺癌、「境界型(Borderline)」腺癌、腺癌、子宮内膜性腫瘍、漿液性嚢胞腺癌、乳頭状癌、粘液性嚢胞腺癌、明細胞卵巣腫瘍、粘液性腺癌、嚢胞腺癌、性索間質腫瘍、ミュラー管腫瘍、胚細胞腫、奇形腫、未分化胚細胞腫、類表皮(扁平上皮癌)またはブレンナー腫瘍を指す。本明細書で使用されるように、卵巣癌は、ステージI、ステージII、ステージIIIまたはステージIVの卵巣癌を指す。さらに、本明細書で使用されるように、卵巣癌は、原発性卵巣腫瘍および二次卵巣癌、即ち、身体のどこかの原発性癌からの転移に起因する卵巣癌の両方を指す。
【0016】
用語「Hスコア」は、本明細書で使用されるように、免疫組織化学的検査を使用する染色による与えられたタンパク質の発現レベルを定義するパラメーターに関する。免疫組織化学的検査では、腫瘍細胞はそれぞれ、染色なしの0から最も強い染色の3+までの範囲の強度レベルを与えられ、2は中程度に染色する細胞を指し、1は弱く染色する細胞を指す。その後、Hスコアは以下の式を使用して決定される:
Hスコア=3×強く染色する細胞のパーセンテージ+2×中程度に染色する細胞のパーセンテージ+1×弱く染色する細胞のパーセンテージ
【0017】
したがって、Hスコアの値は、細胞が染色を示さない0からサンプル中の細胞の100%が強い染色を示す300までの範囲であり得る。
【0018】
「LIF」としても知られる用語「白血病抑制因子」は、分化を阻害することによって細胞増殖に影響を与えるインターロイキン6クラスのサイトカインに関する。それは、骨髄性白血病細胞の最終分化を誘発することができ、それ故、連続した増殖を防ぐことができる。ヒトLIFタンパク質配列は、受入番号P15018(2014年5月16日時点でのバージョン)下でUniProtデータベースに入れられている。LIFタンパク質をコードするヒト遺伝子は、遺伝子ID(Gene ID):3976(2015年10月4日時点でのバージョン)下でNBCIデータベースに入れられている。好ましい実施形態では、LIFは、UniProtデータベース(2015年11月11日の入力)において受入番号P15018-1でるポリペプチドに対応している、202のアミノ酸のヒトアイソフォーム1を指す。別の実施形態では、LIFは、88のアミノ酸のヒトLIFアイソフォーム2を指す。別の実施形態では、LIFは、ヒトLIFアイソフォーム1と2の組み合わせを指す。
【0019】
用語「LIFスコア」は、本明細書で使用されるように、試験サンプルにおいてLIF発現レベルを定量化するために使用されるパラメーターに関する。サンプルにおけるLIFスコアは、免疫組織化学的検査を使用してサンプルを抗LIF特異抗体で染色することによって決定される。免疫組織化学的検査では、腫瘍細胞はそれぞれ、染色なしの0から最も強い染色の3+までの範囲の強度レベルを与えられ、2は中程度に染色する細胞を指し、1は弱く染色する細胞を指す。その後、LIFスコアは、LIFに対する強い完全な染色(3+)を有する細胞のパーセンテージ(0%から100%まで)として決定される。したがって、LIFスコアは、0(サンプル中の細胞が3+染色を有していないとき)~100(サンプルの細胞の100%が3+染色を有しているとき)の範囲の値を有することができる。サンプルにおけるLIFスコアは、直接LIF発現レベルについての指標を提供するために使用され得るか、あるいはLIF発現レベルが、基準値に対して上昇されるか、低下されるか、あるいは変化を示さないかについての指標を提供するために、基準LIFスコア値と比較され得る。
【0020】
本明細書において使用される用語「基準値」は、被験体から採集されたサンプルより得られた数値またはデータを評価するための基準として使用される、あらかじめ決められた基準に関する。基準値または基準レベルは、絶対値、相対値、上限あるいは下限を有する数値、ある範囲の数値、平均値、中央値、平均値(mean value)、あるいは特定の対照値またはベースライン値と比較した数値で有り得る。基準値は、例えば、試験されている被験体からのサンプルより得た、ただしより早い時点で得られた数値などの、個々のサンプル値に基づき得る。基準値は、暦年齢の一致した集団の被験体集団からなどの、多くのサンプルに基づき得るか、あるいは試験されるサンプルを含むあるいは除外するサンプルのプールに基づくことが可能である。
【0021】
本明細書において使用される用語「サンプル」あるいは「生体サンプル」は、被験体から分離された生体物質を指す。生体サンプルは、RNAまたはタンパク質レベルを検知するのに適した生体物質を含む。特定の実施形態では、サンプルは、研究下の被験体からの、例えばDNA、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、RNA、ヘテロ核RNA(hnRNA)、mRNAなどの遺伝物質を含む。サンプルは、例えば血液、唾液、血漿、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、糞便、外科的検体、腫瘍生検あるいは非腫瘍生検から得た組織検体、およびパラフィンに包埋された組織サンプルなどの、適切な組織あるいは生物流体から分離され得る。一実施形態では、サンプルは腫瘍細胞を含むサンプルである。サンプルを分離する方法は、当業者に周知である。特に、生検によりサンプルを得る方法には、グロスアポーショニングオブアマス(gross apportioning of a mass)、マイクロダイセクション、あるいは他の既知の技術の細胞分離法が含まれる。サンプルの保存と処理を単純化するために、サンプルは、ホルマリン固定およびパラフィン包埋され得るか、あるいは、迅速な凍結を可能にする高度に低温な培地に浸すことで、まず冷凍され、次にOCT-Compoundなどの冷凍固化性培地に包埋され得る。本発明の特定の実施形態では、サンプルは組織サンプルまたは生物流体である。本発明のより特定された実施形態では、生物流体は、血液、血清あるいは血漿から成る群から選択される。本発明の特定の実施形態では、サンプルは腫瘍サンプルである。
【0022】
用語「被験体」、「個体」、「動物」または「患者」は、治療が望まれる被験体、とりわけ哺乳類の被験体を含む。哺乳類の被験体には、ヒト、家庭動物、家畜、および、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、メウシなどの動物園またはペットの動物を含む。本発明の好ましい実施形態では、被験体は哺乳動物である。本発明のより好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0023】
本明細書において使用される用語「処置」は、例えば癌などの、本明細書に記載の臨床状態に対する感受性を、消滅、予防、回復、および/または減少させる目的の、任意の種類の治療を含む。好ましい実施形態では、処置という用語は、予防的処置(つまり、本明細書に明示される臨床状態、障害あるいは疾患の感受性を減らすための治療)に関する。したがって、本明細書において使用される「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などは、望ましい薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指し、ヒトを含む哺乳動物における病理学的疾病または障害のすべての処置を含む。この効果は、障害またはその症状を完全にまたは部分的に予防する点で予防的であり得、および/または、障害および/またはその障害に起因する副作用の部分的または完全な治癒という点で治療的で有り得る。すなわち、「処置」には、(1)被験体に障害が生じるまたは再発するのを予防すること、(2)障害の進行を妨げるなどの障害の阻害、(3)宿主がもはや障害またはその症状に苦しまないようにするために、例えば、欠けている、紛失した、あるいは欠陥のある機能を、回復または修復することによって、あるいは非効果的なプロセスを刺激することによって、障害またはその症状の後退を引き起こすなど、障害または少なくともそれに関連する症状を止める、あるいは消滅させること、あるいは、(4)障害またはそれに関連する症状を和らげ、緩和し、あるいは改善することを含み、ここで改善は、少なくともパラメーターの規模の減少を指すために、広い意味で使用される。
【0024】
癌の処置に使用される、LIF発現を阻害する、あるいはLIF活性を遮断する薬剤
本発明の発明者は、LIF阻害剤が卵巣癌、肺癌および大腸癌の処置に有用であることを発見している。
【0025】
したがって、第1の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌の処置に使用される、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤に関する。代替的に、本発明は、癌の処置のための方法に関するものであり、前記癌は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択され、該方法は、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる治療上有効な量の薬剤を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。代替的に、本発明は、癌の処置のための薬剤の製造における、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤の使用に関するものであり、前記癌は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される。
【0026】
別の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌の再発を防ぐために使用される、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤に関する。好ましい実施形態では、腫瘍が外科的に切除された患者における再発が予防される。
【0027】
別の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌の転移を防ぐために使用される、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤に関する。
【0028】
別の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌における、癌幹細胞の増殖を防ぐまたは癌幹細胞のプールを減らすために使用される、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤に関する。
【0029】
別の態様では、本発明は、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌における、癌幹細胞の増殖を防ぐまたは癌幹細胞のプールを減らすために使用される、あるいは、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌の再発を防ぐために使用される、あるいは、卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択された癌の転移の予防に使用される、LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤に関し、該薬剤は、JAK/STAT経路の活性化およびSTAT3のリン酸化の阻害によって作用する。
【0030】
LIFの発現を阻害することができる、および/またはLIFの活性を遮断することができる薬剤は、LIFをコードする遺伝子の転写および翻訳を予防または阻害することができる、または、上記遺伝子によってコードされたタンパク質が機能(活性)化することをブロックすることができる、つまり、LIFがJAK-STATシグナル経路の活性化を誘導することを防ぐことができる、物質あるいは化合物を含む。
【0031】
化合物がLIFの阻害剤であるかを判定するためのアッセイは、最先端技術において周知である。これらのアッセイは、ニューロスフェアおよび/または腫瘍細胞における、IL-6型のサイトカインによるSTAT-3リン酸化の測定を制限なく含む(WO2010/115868)。
【0032】
例示として、本発明における使用に適したLIF発現の阻害剤は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒RNA、あるいは特定のリボザイム、デコイ活性、つまり遺伝子の発現にとって重要な因子(一般的にタンパク質)に特異的に結合する能力を有したRNA、などを含む。同様に、LIFタンパク質がその機能を実行することを予防することができる阻害剤は、例えば、タンパク質の阻害ペプチド、その機能を実行するのに必須のタンパク質のエピトープを特異的に対象とする、あるいはLIF受容体を対象とする抗体などを含む。
【0033】
したがって、本発明の特定の実施形態では、本発明に従って使用されるLIF阻害剤は、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特定のリボザイム、抗体、ポリペプチド、およびLIF阻害剤から成る群から選択される。
【0034】
特定の実施形態では、LIF発現を阻害することができる、本発明に従って使用される薬剤は、LIFに特異的なsiRNA、LIFに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的なリボザイムから成る群から選択される。特定の実施形態では、LIF活性を遮断することができる、本発明に従って使用される薬剤は、LIFに特異的な抗体、LIFに特異的なポリペプチド、LIFに特異的なオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的に結合するLIF受容体の阻害剤から成る群から選択される。より具体的には、LIFの活性を遮断することができる、本発明に従って使用される薬剤は、抗体、好ましくはLIF中和抗体である。
【0035】
siRNA
小型干渉RNAすなわちsiRNAは、RNA干渉を用いて標的遺伝子の発現を阻害することができる薬剤である。siRNAは化学的に合成可能であり、あるいはインビトロ転写を用いて得ることができ、あるいは標的細胞のインビボで合成することができる。siRNAは典型的には、長さ15から40のヌクレオチドの二本鎖RNAから成り、および、1から6のヌクレオチドの3’および/または5’張出領域を含み得る。張出領域の長さはsiRNA分子の全長に無関係である。siRNAは、標的メッセンジャーの劣化あるいは転写後の無症状化によって作用する。
【0036】
siRNAは、siRNAを形成する逆平行鎖がループまたはヘアピン型の領域によって結合されているという特徴をもつshRNA(短いヘアピン型のRNA)を含む。これらのsiRNAは、短いアンチセンス配列(19から25のヌクレオチド)の化合物であり、その配列の後に5から9のヌクレオチドのループが続き、さらにセンス鎖が続く。shRNAは、プラスミドまたはウイルス、特にレトロウイルス、およびより具体的にはレトロウイルスによってコードされ得、RNAポリメラーゼIIIのU6プロモーターなどのプロモーターの制御下に有り得る。本発明のsiRNAは、LIFをコードする遺伝子のmRNA、またはタンパク質をコードするゲノム配列と本質的に同種である。「本質的に同種」は、siRNAがRNA干渉によって標的mRNAの劣化を引き起こすことができるように、標的mRNAに対して十分に相補的である、あるいは類似する配列を有する、と理解される。前記の干渉を引き起こすのにふさわしいsiRNAは、RNAによって形成されたSiRNAを含み、また、以下のような異なる化学的修飾を含むSiRNAを含む:
―ホスホロチオエート結合などの、自然に見つけられたものとはヌクレオチド間の結合が異なるsiRNA。
―RNA鎖と、フルオロフォアなどの機能性の試薬との抱合体。
―RNA鎖の末端の修飾、特に位置2’におけるヒドロキシルの異なる官能基を用いた修飾による3’末端の修飾。
―2’-O-メチルリボース p 2’-O-フルオロリボースなどの、位置2’のO-アルキル化された残基などの修飾された糖を有するヌクレオチド。
―ハロゲン化された塩基(例えば、5-ブロモウラシルおよび5-ヨ-ドウラシル)、アルキル化された塩基(例えば7-メチルグアノシン)などの、修飾された塩基を有するヌクレオチド。
【0037】
siRNA設計のための基底として採取されるヌクレオチド配列の領域は制限されないが、コード配列領域(開始コドンと終止コドンとの間)を含み得る、あるいは代替的に5’または3’の非翻訳領域、好ましくは長さ25から50のヌクレオチド、および開始コドンに対して位置3’の任意の位置を含むことができる。siRNAを設計する一つの方法は、Nが、IL-6型サイトカインをコードする配列中の任意のヌクレオチドで有り得るAA(N19)TTモチーフの特定、およびG/C含量の高いものを選択することを含む。上記モチーフが見つからない場合、Nが任意のヌクレオチドで有り得るNA(N21)モチーフを特定することが可能である。
【0038】
市販で入手可能なLIFのための典型的、非制限的siRNAは、Santa Cruz Biotechnology(reference sc-37222)からのヒトLIF siRNA、およびThermo Fisher Scientific(reference AM16708)からのヒトLIF siRNAを含む。
【0039】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明のさらなる態様は、発現を阻害するための、例えば、活性が阻害されるLIFをコードする核酸の転写および/または翻訳を阻害するための単離された「アンチセンス」核酸の使用に関する。
【0040】
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、細胞中で転写された時、LIFをコードする細胞mRNAの少なくとも1つの部分に対して相補的であるRNAを産生する、発現プラスミドとして送達され得る。代替的に、アンチセンス構築物はオリゴヌクレオチドプローブであり、それはエクスビボで生成され、および細胞に導入された時に、mRNAおよび/または標的核酸のゲノム配列とハイブリダイズすることによって発現の阻害を生じさせる。そのようなオリゴヌクレオチドプローブは好ましくは、内因性ヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに耐性があり、したがってインビボで安定している、修飾されたオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用される典型的な核酸分子は、ホスホルアミデート、ホスホチオナート、およびメチルホスホナートDNAアナログである。アンチセンス療法において有用なオリゴマーを構築するための一般的なアプローチは当技術分野において周知である。
【0041】
アンチセンスDNAに関しては、例えば標的遺伝子の-10から+10の間の、翻訳開始部位に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチド領域が好ましい。アンチセンスアプローチは、標的ポリペプチドをコードするmRNAに対して相補的なオリゴヌクレオチド(DNAとRNAのいずれか)の設計を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNA転写産物に結合し、翻訳を予防するだろう。絶対的な相補性は必要ではないが、好ましい。二本鎖のアンチセンス核酸の場合、したがって二本鎖DNAの一本鎖が分析され得る、あるいは三本鎖DNAの構成が分析され得る。ハイブリダイズの能力は、相補性の度合およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存するだろう。一般的に、核酸ハイブリダイズが長ければ長いほど、より多くのRNA対合エラーを含むこともあり、および依然として安定した二本鎖(あるいは場合に応じて三本鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズされた複合体の融点を判定する標準的な手順を使用して、対合エラーの許容可能な度合を判定することができる。mRNAの5’末端、例えばAUG開始コドンまでの、あるいはそれを含む非翻訳5’配列uに対して相補的なオリゴヌクレオチドは、翻訳を阻害するために可能な限り効率的に機能しなければならない。しかしながら、mRNAの非翻訳3’配列に相補的な配列はさらに、mRNAの翻訳の阻害に有効であることが最近示された。したがって、遺伝子の、非翻訳、非コード5’または3’領域のいずれかに対して相補的であるオリゴヌクレオチドは、該mRNAの翻訳を阻害するためにアンチセンスアプローチにおいて使用され得る。mRNAの非翻訳5’領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、AUG開始コドンの補体を含んでいるべきである。mRNAのコード化領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、翻訳の阻害剤としての効果はより小さいが、本発明に従って使用されてもよい。5’、3’、あるいはmRNAのコード化領域とハイブリダイズするように設計された場合、アンチセンス核酸は少なくとも6ヌクレオチドの長さを有するべきであり、好ましくは約100未満、より好ましくは50、25、17、あるいは10ヌクレオチド未満の長さを有するべきである。
【0042】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖あるいは二本鎖のDNA、RNA、またはそれらのキメラ混合体、修飾された誘導体、あるいは変形体で有り得る。オリゴヌクレオチドは、例えば分子の安定性やハイブリダイゼーション等を改善するために、ベース基、糖基、あるいはリン酸骨格で修飾し得る。オリゴヌクレオチドは、(例えば宿主細胞受容体の方へ向けるための)ペプチド、あるいは、細胞膜を通過する輸送をより容易にする、または血液脳関門を通過して輸送させるための薬剤、ハイブリダイゼーション触発切断剤、挿入剤などの、他の結合基を含み得る。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション触発架橋剤、担体剤、ハイブリダイゼーション触発切断剤などの他の分子に結合し得る。
【0043】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-( 2-カルボキシヒドロキシエチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン(mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および、2,6-ジアミノプリン、を含むがこれらに限定されない群から選択される、少なくとも一つの修飾塩基基を含み得る。
【0044】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含むがこれらに限定されない群から選択される少なくとも1つの修飾糖基を含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、中性ペプチドに類似の骨格を含みうる。そのような分子はペプチド核酸(PNA)オリゴマーと呼ばれる。PNAオリゴマーの利点は、DNAの中性骨格に起因する培地のイオン力とは実質的に無関係な方法で、相補的DNAに結合する能力である。さらに別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタールまたはそのアナログからなる群から選択される少なくとも1つの修飾リン酸骨格を含む。
【0045】
さらに別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアルファアノマー(alpha-anomeric)オリゴヌクレオチドである。アルファアノマーオリゴヌクレオチドは、補足的RNAを備えた特定の二本鎖のハイブリッドを形成し、ここで、典型的な逆平行配向とは対照的に、鎖は互いに平行である。オリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルリボヌクレオチドまたはRNA-DNAキメラアナログである。
【0046】
標的mRNA配列のコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができる一方、非翻訳転写領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドも使用することができる。
【0047】
場合によっては、内因性mRNAの翻訳を抑制するのに十分なアンチセンスの細胞内濃度に達することが困難な場合がある。したがって、好ましいアプローチでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に置かれた組換えDNA構築物を使用する。標的細胞をトランスフェクトするためのこのような構築物を使用することにより、結果として、薬物の潜在的標的内因性転写産物と相補的な塩基対を形成し、それ故翻訳を妨げる、十分な量の一本鎖RNAの転写をもたらす。例えば、ベクターが細胞に捕捉され、アンチセンスRNAの転写を指示するように、ベクターを導入することができる。そのようなベクターはエピソームのままであっても、または、染色体に組み込まれていてもよいが、所望のアンチセンスRNAを生成するよう転写されることができる。そのようなベクターは、当技術分野で標準的な組換えDNAテクノロジーの方法によって構築することができる。ベクターは、ウイルスプラスミド、または、哺乳動物細胞における複製および発現のために使用される当該分野で公知の他のプラスミドであり得る。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞に作用する、当該技術で公知のプロモーターによるものであることがある。このようなプロモーターは、誘導的または構成的であり得る。このようなプロモーターには、SV40初期領域のプロモーター、ラウス肉腫ウイルスの3’長反復末端に含まれるプロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン遺伝子調節配列などが含まれるが、これらに限定されない。任意のタイプのプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを使用して、組換えDNA構築物を調製することができ、これは組織の部位に直接導入することができる。
【0048】
あるいは、標的遺伝子の発現は、体内の標的細胞における遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成するために、遺伝子の調節領域(すなわち、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的デオキシリボヌクレオチド配列を向けることにより阻害することができる。
【0049】
あるいは、三重らせんの形成のために選択することができる潜在的な標的配列を増加させ、「ヘアピン形状」と呼ばれる核酸分子を作製することができる。ヘアピン形状の分子は、交互の5’-3’、3’-5’形態で合成され、結果として二本鎖の一つの鎖と第一の塩基対を形成し、次に他の鎖と形成し、二本鎖の一つの鎖中のかなり大きな部分のプリンまたはピリミジンが存在する必要性をなくす。
【0050】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンスモルホリンである。モルホリンは、天然の核酸構造の再設計の産物である合成分子である。典型的には25塩基長で、それらは標準的な核酸塩基対合により相補的RNA配列に結合する。
【0051】
LIF特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、Kamohara et al.(Int J Oncol、2007、30:977-983)およびCheng et al.(Biol Reprod、2004 1 70:1270-1276)に記載されている。
【0052】
DNA酵素
本発明の別の態様は、LIFをコードする遺伝子の発現を阻害するためのDNA酵素の使用に関する。DNA酵素は、アンチセンス技術とリボザイム技術の両方の機構的特徴のいくつかを組み込んでいる。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に特定の標的核酸配列を認識するが、リボザイムのように触媒性であり標的核酸を特異的に切断するように設計される。
【0053】
現在、2つのタイプのDNA酵素があり、両方がSantoroおよびJoyceによって同定されている(例えば、米国特許第6,110,462号参照)。DNA酵素10-23は、2つのアームを連結するループ構造を含む。2つのアームは、特定の標的核酸配列を認識することによって特異性を提供し、一方、ループ構造は生理学的条件において触媒機能を提供する。
【0054】
リボザイム
標的mRNAの転写産物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子はまた、活性が阻害されるLIFをコードするmRNAの翻訳を妨げるために使用され得る。リボザイムは、特異的RNA切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイム分子の組成は、好ましくは、標的mRNAに相補的な1つ以上の配列と、mRNAまたは機能的に等価な配列を切断する原因となる公知の配列と、を含む(例えば米国特許第5,093,246号を参照、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0055】
mRNAを部位特異的認識配列に切断するリボザイムを用いて標的mRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッドリボザイム(hammerhead ribozymes)の使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAの領域と相補的塩基対を形成する隣接領域によって指示される位置でmRNAを切断する。好ましくは、標的mRNAは、以下の2つの塩基配列を有する:5’-UG-3’。ハンマーヘッドリボザイムの配列は、インビボ切断の有効性を高めるために、転移RNA(tRNA)などの安定RNAに埋め込まれ得る。特に、RNAポリメラーゼIIIによって媒介されるtRNAとの融合リボザイムの発現は、当技術分野において周知である。典型的には、標的cDNA配列中にハンマーヘッドリボザイムの潜在的な切断部位が多数存在する。リボザイムは、好ましくは、切断認識部位が標的mRNAの5’末端の近くに位置し、効力を高め、非機能性mRNA転写産物の細胞内蓄積を最小にするように操作される。更に、例えば標的の短い形態および長い形態の、e末端アミノ酸ドメインの様々な部分をコードする標的配列に位置する切断認識部位の使用は、標的のいずれかの形態への選択的な配向を可能にし、したがって、標的遺伝子産物の形態に対して選択的に作用する。
【0056】
遺伝子に対して向けられたリボザイムは、2つの領域に相補的なハイブリダイゼーション領域、ヒトRAPBOタンパク質のいずれかに提示される配列のmRNAなどの、各々が標的mRNAの少なくとも5つ、好ましくはそれぞれ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の連続長のヌクレオチド、を必ず含む。更に、リボザイムは、コード化標的mRNAを自己触媒的に切断する非常に特異的なエンドヌクレアーゼ活性を有する。本発明は、治療薬の候補標的遺伝子などの標的遺伝子をコードするコード化mRNAとハイブリダイズし、したがって、機能的ポリペプチド産物を合成するために翻訳されることができなくなるように、コード化mRNAとハイブリダイズしそれを切断する、リボザイムに及ぶ。
【0057】
本発明の組成物に使用されるリボザイムには、Tetrahymena thermophila(IVSまたはL-19 IVS RNAとして知られている)において自然に見つかるようなエンドリボヌクレアーゼRNA(以下、「Cech型リボザイム」という)も含まれる。リボザイムは、(例えば、安定性、誘導などを改善するために)修飾オリゴヌクレオチドによって形成することができ、インビボで標的遺伝子を発現する細胞に送達されるべきである。好ましい送達のための方法は、pol IIIまたはpol IIの強力な構成的プロモーターの制御下でリボザイムを「コードする」DNA構築物を使用する工程を含み、その結果、トランスフェクトされた細胞は、内因性標的メッセンジャーを破壊し、翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生する。リボザイムは触媒的であり/他のアンチセンス分子と異なっているので、効果的であるためにはより低い細胞内濃度が必要である。
【0058】
阻害ペプチド
本明細書に使用されるように、「阻害ペプチド」という用語は、LIFに結合し、上記で説明したようにその活性を阻害する、すなわち、LIFがJAK-STATシグナル伝達経路の活性化を誘導することを妨げることができるペプチドに関する。
【0059】
本発明における使用に適した阻害ペプチドの例は、Whiteらに記載されているようなLIFのペグ化変異体である(J.Biol.Chem., 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104:19357-19362)。
【0060】
LIF受容体結合の阻害剤
サイトカイン受容体結合の阻害剤は、IL-6型サイトカインに対する親和性を示し、したがって、サイトカインを封鎖し、その生理的受容体への結合を防止することができる化合物である。阻害ポリペプチドは、好ましくはIL-6型サイトカイン受容体の可溶性形態(いわゆるデコイ受容体(decoy receptors))である。LIFの特定の場合において、LIF受容体またはLIF結合タンパク質(LBP)の可溶性変異体、すなわち天然に存在するアルファLIF受容体の可溶性形態を使用することが可能であり、関節軟骨外植片におけるプロテオグリカンの代謝に及ぼすLIFの影響を効果的に防止することができることが判明している(Bell et al., 1997, J. Rheumatol. 24:2394)。
【0061】
阻害抗体
「阻害抗体」および「中和抗体」は、LIF、またはLIFの受容体に結合することができ、LIFがJAK-STATシグナル伝達経路の活性化を誘導することを妨げる任意の抗体を定義するために交換可能に使用される。抗体は、当業者に公知の方法のいずれかを用いて調製することができる。したがって、ポリクローナル抗体は、阻害されるタンパク質を用いた動物の免疫化によって調製される。モノクローナル抗体は、Kohler、Milstein et al.(Nature、1975、256:495)に記載された方法を使用して調整されることができる。しかし、当分野で公知の他の方法も、等しく適している。LIF結合能力、または前記サイトカインの受容体に結合する能力を有する抗体が同定されると、このタンパク質の活性を阻害することができるものは、上記の阻害剤の同定のためのアッセイを用いて選択される(Metz、2007、上記の通り)。
【0062】
したがって、より具体的な実施形態では、抗体は、LIFに特異的な阻害抗体またはLIF受容体をブロックする抗体である。
【0063】
LIFに特異的な典型的な抗体は、Kim et al.(J. Immunol.Meth.,156:9-17、1992)、Alphonso et al., (J. Leukocyte Biology(Abstracts of 28th National Meeting of the Society for Leukocyte Biology, vol. O, no. SP.2 (1991) (NY, N.E., p.49) (Mabs D4.16.9, D25.1.4, and D62.3.2)に記載されている。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明に従って使用するための抗体は、全長ヒトLIFを認識するが、アミノ酸1~160に対応するLIFフラグメントを認識しない抗体である。別の実施形態では、本発明に従って使用するための抗体は、ヒトLIFのアミノ酸160~202に対応する領域に含まれるヒトLIFのエピトープを認識する抗体である。さらに別の実施形態では、本発明に従って使用するための抗体は、以下から選択される領域に含まれるエピトープを認識する抗体である:ヒトのLIFの、アミノ酸160~180に対応する領域、アミノ酸170~190に対応する領域、アミノ酸180~200に対応する領域、アミノ酸182~202に対応する領域。さらに別の実施形態では、本発明に従って使用するための抗体は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM ACC3054)のVall d’Hebron Institute of Oncologyによって2010年4月1日に寄託されたハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体によるヒトLIFへの結合において競合的に阻害される抗体である。さらに別の実施形態では、本発明に従って使用するための抗体は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Inhoffenstr.7B, 38124 Braunschweig, Germany)のVall d’Hebron Institute of Oncologyによって2010年4月1日に寄託されたハイブリドーマ細胞株DSM ACC3054によって産生される抗体、またはその抗原結合フラグメント、そのヒト化形態、またはそのキメラ形態である。
【0065】
本発明では、用語「抗体」は広く解釈されるべきであり、これは、本発明の文脈においてLIFまたはその受容体である対象の抗原を特異的に認識することができる限り、ポリクローナル、モノクローナル、多特異的抗体およびそのフラグメント(F(ab’)2、Fab)などを含む。本発明の文脈において使用され得る抗体の例は、非限定的な例として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体などである。
【0066】
ポリクローナル抗体は、もともと、抗原で免疫された動物の血清中で産生された抗体分子の異種混合物である。これらはまた、例えば、対象の抗原の単一エピトープのペプチドを用いたカラムクロマトグラフィーによる、異種混合物から得られた単一特異的ポリクローナル抗体を含む。
【0067】
モノクローナル抗体は、抗原の単一エピトープに特異的な抗体の均質な集団である。これらのモノクローナル抗体は、既に記載された従来技術および当業者のためのルーチンによって調製することができる。
【0068】
キメラ抗体は、異なる動物種由来の抗体のクローニングまたは組換えによって構築されたモノクローナル抗体である。本発明の典型的であるが非制限的な構成では、キメラ抗体は、キメラ抗体はモノクローナル抗体の一部であり、一般的には抗原認識および結合のための部位を含む可変フラグメント(Fv)と、ヒト抗体に対応する他の部分であり、一般的には定常領域および隣接する定常領域を含む部分と、を含む。
【0069】
完全ヒト抗体は、ヒト免疫系を用いて、またはヒト免疫細胞のインビトロ免疫化(これは、アジュバント、および純粋または非純粋な抗原を伴うまたは伴わない遺伝的および従来の免疫化の両方を含む;または、免疫系への抗原の曝露の方法によって)、または、ヒト免疫細胞から産生された天然/合成ライブラリによって、トランスジェニック動物において産生された抗体(複数可)である。これらの抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子がクローニングされ、標的抗原(本発明では、前記抗原はLIFまたはその受容体である)で免疫化されたトランスジェニック動物(例えば、マウス)から得られ、選択され得る。これらの抗体は、ファージディスプレイに提示されたヒト一本鎖可変フラグメント(scFv)または抗原結合フラグメント(Fab)を選択し、続いてヒト抗体にクローニングおよび移植することによって、または抗体ライブラリを生成するために、両方の鎖の可変フラグメントをクローニングし、続いてそれらの組合せ/突然変異によって生成されたライブラリの、当業者に公知の他の産生およびディスプレイ方法によって、得ることができる。
【0070】
ヒト化抗体は、それ自体の超可変相補性決定領域(CDR)の交換においてヒト化抗体中のマウスモノクローナル抗体の超可変CDRのクローニングと移植によって構築されたモノクローナル抗体である。
【0071】
加えて、本発明の文脈において、用語「抗体」は、タンパク質から、あるいは組み換え技術によって得られた、グリコシル化あるいは非グリコシル化抗体フラグメントと同様に、変更されたグリコシル化パターンを備えた変異体を含み、これは、(i)結合ペプチドによって互いに結合した抗体の可変ゾーン(scFv)、(ii)システインによって、または結合ペプチドおよびジスルフィド結合によって、軽鎖へ結合した重鎖(Fd)のCHI定常部を備える可変ゾーン(scFab)、(iii)単一重鎖などの新しい変異体、あるいは、(iv)生体流体中でより類似させ、免疫原性(ヒト化)を弱め、あるいはより安定させる目的で、抗体フラグメントに対して行われた任意の修飾からなることがあり、これは、本発明の文脈において、LIFがその機能(活性)を実行し、つまり、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化を引き起こすのを防ぐ能力を有している。
【0072】
当業者であれば理解するであろうが、抗体は、タンパク質を得るために従来の遺伝子操作または組み換え技術、抗体産生技術、生体流体または組織からの抽出と精製の技術、あるいは当業者に広く知られているタンパク質および抗体をえるための他の従来の技術によって入手可能である。抗体の産生のための技術の例示的な非限定例は以下のとおりである:ヒト免疫グロブリン遺伝子用トランスジェニック動物を含む動物の免疫技術、ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生、天然のものであり得るか、合成のものであり得るか、あるいは所望の抗原に対して免疫化された有機体に由来し得る抗体ライブラリであって、かつ非常に多種多様なディスプレイ方法(ファージディスプレイ、リボソームディスプレイなど)によって選択することができる抗体ライブラリによる産生、および、その後の、様々なサイズ、組成、および構造の組み換え抗体の産生のために設計されたベクターにおいて抗体を再設計して発現させることができる遺伝子工学的技術による産生。
【0073】
特別の実施形態では、卵巣、肺、あるいは大腸の癌の処置で使用される本発明の薬剤はLIFに特異的な抗体、より好ましくはLIF中和抗体である。LIF中和抗体は市販で入手可能であり、限定されないが、R&D Systemsのヤギポリクローナル抗ヒト抗LIF抗体(カタログ番号AF-250-SPとAF-250-NA)を含む。
【0074】
LIFの活性を阻害する他の化合物
【0075】
IL-6タイプのサイトカインの発現を阻害する能力を備えた他の化合物は、アプタマーとシュピーゲルマー(spiegelmers)を含み、これらは、その生物学的活性の修飾に起因するタンパク質に特異的に結合する一本鎖または二本鎖のDまたはL核酸である。アプタマーとシュピーゲルマーは、15~80のヌクレオチド、好ましくは20~50のヌクレオチド長さを有する。
【0076】
LIFの阻害的活性を有するポリペプチド
【0077】
具体的には、本発明の文脈で役に立つことがあるLIFのアンタゴニストは、以下のとおりである:同じ受容体結合部位に対して親和性の低下を示すか、受容体の鎖の一方にのみ結合することができる、受容体結合部位中で突然変異を提示するLIF変異体。上記変異体の例としては以下が挙げられる:
(i)Hudson et al.により記載された変異体(J .Biol.Chem., 1996, 271 : 11971- 11978)、
(ii)Q29A、G124R、およびN128Aの群から選択される1つ以上の突然変異を有し、LIF受容体とgp130に対する親和性の低下を示す、WO2005030803に記載されるLIF変異体。LIFの高効能アンタゴニストは、Fairlie/ W.D. et al. (J.Biol.Chem., 2004,279:2125-2134)によって記載されたMH35-BD/Q29A+G124Rを含む変異体である、
(iii)受容体結合領域、特に、 ヒトLIFの番号付けに対して位置25-38、150-160、あるいは161-180で1つ以上の置換基を有することを特徴とするW09601319に記載される変異体。
(iv)Metz;S.et al.により記載されるように(J.Biol.Chem.,2008,283:5985-5995)、LIF受容体の細胞外領域の一部とgpl30リガンド結合ドメインを含む融合タンパク質などの、一次構造に基づいて、およびLIFに結合してLIFが細胞表面上のその天然の受容体と相互作用するのを防ぐ能力を有する、LIF受容体の溶解可能な変異体。本発明は、LIFの発現を阻害することができ、および/または、癌の処置で使用されるLIFの活性を遮断することができる薬剤に関し、上記癌は、卵巣癌、肺癌、および大腸癌から選択される。特定の実施形態では、上記癌(卵巣、肺、大腸癌)は、基準値に対するLIFレベルを増加させることを特徴とする。
【0078】
1つの実施形態では、LIFの発現を阻害することができ、および/または、本発明に従って使用されるLIFの活性を遮断することができる薬剤は患者の治療に使用され、患者の腫瘍は基準値に対するLIFレベルを増加させたことを特徴とする。
【0079】
1つの実施形態では、LIFの発現を阻害することができ、および/または、本発明に従って使用されるLIFの活性を遮断することができる薬剤は、基準値に対するLIFレベルを増加させた自らの腫瘍に基づいて選択された患者の治療に使用される。
【0080】
1つの実施形態では、LIFの発現を阻害することができ、および/または、本発明に従って使用されるLIFの活性を遮断することができる薬剤は患者の治療に使用され、治療の前に、基準値に対するLIFレベルを増加させた腫瘍の患者の選択が先行される。患者の選択は、以下に詳細に定義される本発明のLIF阻害剤に基づいて治療のために癌患者を選択する方法によって実行可能である。
【0081】
当業者であれば理解するように、サンプル中のLIFの発現レベルの定量化は、mRNAレベルの決定あるいはタンパク質レベルの決定として行うことができる。LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量化は、上記遺伝子(mRNA)の転写、あるいは、代替的に、上記遺伝子の相補的DNA(cDNA)に起因するRNAから行なうことができる。さらに、抽出の1工程はRNAの合計を得るために必要になりえる。それは従来の技術によって行なうことができる。実際に、LIFをコードする遺伝子によってコードされるmRNA、あるいはその対応するcDNAのレベルを検知および定量化するために、本発明の文脈内でどんな従来の方法も使用することができる。非限定的な例示によって、上記遺伝子によりコードされたmRNAのレベルは、従来の方法、例えば、電気泳動および着色などの、mRNAの増幅と上記mRNAの増幅の生成物の定量化を含む方法を用いることによって、あるいは、代替的に、ノーザンブロットによって、および、所望のあるいはその対応するcDNAのmRNAに特異的なプローブ、SIヌクレアーゼ、RT-LCR、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイなどによるマッピング、好ましくは、プローブとプライマーの適切なセットを使用する定量的なリアルタイムPCRによって、定量化可能である。同様に、LIFをコードする遺伝子によってコードされた上記mRNAに対応するcDNAのレベルも、従来の技術を使用することによって定量化可能であり、この場合、本発明の方法は、対応するmRNAの逆転写(RT)と、その後の増幅と、上記cDNAの増幅の生成物の定量化とによる、対応するcDNAの合成の工程を含む。発現レベルを定量化する従来の方法は、例えば、Sambrook et al, 2001.“Molecular cloning:a Laboratory Manual”, 3”d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.E., Vol. 1-3で見られる。したがって、特定の実施形態では、LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量化は、上記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、上記mRNAのフラグメント、上記遺伝子の相補的DNA(cDNA)、上記cDNAのフラグメント、あるいはこれらの混合物の定量化を含む。
【0082】
別の特定の実施形態では、LIFをコードする遺伝子の発現レベルの定量化は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって行われる。
【0083】
加えて、上記LIFをコードする遺伝子によってコードされたタンパク質、すなわち、LIFタンパク質の発現レベルも定量化することができる。当業者によって理解されるように、タンパク質の発現レベルは任意の従来の方法によって定量化することができる。非限定的な例示として、タンパク質のレベルは、上記タンパク質と(あるいは、抗原決定基を含むそのフラグメントと)結合する能力を備えた抗体を用いて定量化することができ、および、形成された複合体がその後定量化される。こうしたアッセイに使用される抗体は標識されることもあれば、標識されないこともある。使用することができるマーカーの例示的な例としては、放射性同位体、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、酵素基質あるいは補助因子、酵素阻害剤、粒子、染料などが挙げられる。非標識抗体(一次抗体)と標識抗体(第2の抗体)を使用する本発明で使用することができる様々な既知のアッセイがあり、こうした技術は、ウェスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、RIA(放射性免疫測定法)、競争的なEIA(競合的酵素免疫測定法)、DAS-ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学的免疫組織化学法、特異的な抗体を含むタンパク質のバイオチップあるいはマイクロアレイの仕様に基づく技術、あるいは、尿試験紙などのフォーマットでのコロイド沈澱反応に基づくアッセイを含む。タンパク質を検知および定量化する他の方法は、親和性クロマトグラフィー技術、リガンド結合アッセイなどを含む。別の特定の実施形態では、タンパク質のレベルの定量化は、ウェスタンブロット、免疫組織化学、あるいはELISAによって行われる。
【0084】
好ましい実施形態では、サンプル中のLIFのレベルは免疫組織化学によって判定される。より好ましい実施形態では、免疫組織化学によるLIFレベルの判定は、以下の工程を含む:
-室温において一晩中4%ホルマリンでサンプル固定化、
-パラフィンにサンプルを埋め込む、
-60°C、O/Nでスライドをインキュベート、
-脱パラフィンと再水和:キシレン+EtOH(100%、90%、70%、およびH20)、-抗原回収:DAKO溶液pH6(115°/3’)、
-サンプルを室温(約20’)に冷ます、
-ペルオキシダーゼ:10’処置(希釈1:10)、
-TBS-T 1x(pH7.6)3x5’で洗浄、
-TBS-T 1x中の3%BSAで、30’で室温にて1時間遮断、
-TBST 1x(pH7.6)3x5’で洗浄、
-抗LIF抗体LIF(HP AO 18844(Atlas)1:200(緑の希釈剤(diluyent)、DAKO)を加え、湿度の高いチャンバー内で一晩中4°で維持、
-TBST 1x(pH7.6)3x5’で洗浄、
-室温で20’の第2の抗体を加える(envision、Dako)
-TBST 1x(pH7.6)3x5’で洗浄、
-成長:成長前の最大で20’-ヘマトキシリン(20-30’’)で逆染色、
-脱水:EtOH(70%、90%、100%)+キシレン-スライドを取り付ける
【0085】
別の好ましい実施形態では、高い発現レベルは一般にサンプル中の上記タンパク質のより高い比活性をもたらすため、LIFの発現レベルの判定は上記タンパク質の活性の決定によって実行することができる。LIFの活性を判定するためのアッセイは、化合物がLIFの阻害剤であるかどうかを判断するためのアッセイの文脈で先に記載されている。
【0086】
卵巣癌、肺癌、および大腸癌から選択される癌の処置で使用される本発明に係る薬剤の特定の実施形態では、上記癌はLIFレベルを増加させることを特徴とする。
【0087】
1つの実施形態では、LIFレベルの増加は絶対値によって定義される。好ましい実施形態において、LIFレベルの判定がタンパク質レベルで実行されるとき、LIFレベルは、LIFスコアの値として、あるいはH-スコアの値として測定される。
【0088】
LIFスコアは、LIFについて強力な完全染色(3+)を備える細胞の割合(0%から100%まで)として定義される。例えば、5のLIFスコアは、腫瘍細胞の5%が強力な完全染色を示すことを意味する。対照サンプルは、健康な個体、あるいは、癌に苦しんでいない、とりわけ、卵巣癌、肺癌、あるいは大腸癌に苦しんでいない個体からのサンプルに対応して、約0、1、2、3、4、あるいは5のLIFスコアを示す。より具体的な実施形態では、高いレベルのLIFを有することを特徴とする癌は、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、あるいは100のLIFスコアを有することを特徴とする。別の実施形態では、高いLIFレベルは、所定のLIFスコアを超えるあらゆるLIFスコアとして定義される。より具体的な実施形態では、高いレベルのLIFを有することを特徴とする癌は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、あるいは、99を超えるLIFスコアを有することを特徴とする。
【0089】
用語「H-スコア」は、試験サンプル中のLIF発現レベルを定量化するために使用される特別の値スケールに関する。所定のサンプルのHスコアに基づいて、LIFレベルが高いかそうでないかを結論付けることができる。対照サンプルは、健康な個体、あるいは、癌に苦しんでいない、とりわけ、卵巣癌、肺癌、あるいは大腸癌に苦しんでいない個体からのサンプルに、あるいは、癌患者からの健康な(非腫瘍)サンプルに対応して、0のHスコアを示す。卵巣癌、肺癌、および大腸癌から選択される癌の処置において使用される本発明の薬剤の特定の実施形態において、癌は基準値に関してLIFのレベルを上昇させることを特徴とし、LIFのレベルは免疫組織化学または免疫組織蛍光によって定量化され、上記レベルはHスコアの値として測定される。より具体的な実施形態では、高いレベルのLIFを有することを特徴とする癌は、少なくとも1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、あるいは300のHスコアを有することを特徴とする。
【0090】
別の実施形態では、癌は、上記レベルが基準値よりも高いときにLIFレベルを増加させるものとして定義される。この場合、LIF発現レベルは、その基準値よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上高いときに、基準値よりも増大したか、または高いとみなされる。したがって、基準値に関してLIFの増加したレベルは、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上だけ、基準値とみなされるLIFのレベルよりも大きいLIFのレベルに関する。
【0091】
用語は「減少したレベル」あるいは「低レベル」とは、LIFの発現レベルと関連して、基準値よりも低いサンプル中のLIFの発現の任意のレベルに関する。したがって、LIF発現レベルは、その基準値よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、またはそれよりも低いときに、基準値よりも減少したか、あるいは低いとみなされる。
【0092】
「同様のレベル」あるいは「等しいレベル」とは、発現レベルと関連して、対照サンプルまたは基準値におけるその発現のレベルに類似するサンプル中のLIFの発現の任意のレベルに関する。したがって、上記レベルは、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、あるいは0.5%未満だけ異なるとき、基準値のそのレベルに類似するとみなされる。
【0093】
用語「基準値」又は「基準レベル」は、卵巣癌、肺癌、又は大腸癌の処置における本発明に係る使用のためにLIF発現を阻害し及び/又はLIF活性を遮断する薬剤の文脈において使用されるように、試験サンプル中のLIFのレベルの判定のための基準として使用される予め定めた標準と理解される。基準値又は基準レベルは、絶対値、相対値、上限又は下限を持つ値、値の範囲、平均値、中央値、平均値(mean value)、又は特定の対照或いはベースライン値と比較した値であり得る。基準値は、例えば、試験されている被験体のサンプルから得た値など、個々のサンプル値に基づき得るが、それは初期の時点の値である。基準値は、暦年齢対応群の被験体の集団からなどの多数のサンプル、或いは、試験されるサンプルを含むか除外するサンプルのプール(pool)に基づき得る。
【0094】
特定の実施形態において、基準値は、臨床的観点から十分に立証された患者から、及び、疾患の無い患者、特に癌に悩んでいない患者、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩んでいない患者から得たサンプルにおけるLIF発現値に相当する。基準レベルが、臨床的観点から十分に立証された患者から、及び癌に悩んでいない患者から得たサンプルにおけるLIF発現値に相当すると、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0095】
代替的に、基準値は、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩み且つ抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者のサンプルから得たLIF発現値に相当する。
【0096】
基準レベルが、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩み且つ抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者のサンプルにおけるLIF発現値に相当すると、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0097】
代替的に、基準値は、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩み、好ましくは抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者から得た健康な或いは非腫瘍性の組織から得られるLIF発現値に相当する。好ましくは、健康な組織は、腫瘍が進行した組織である。
【0098】
基準レベルが、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩み、好ましくは抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者から得た健康な或いは非腫瘍性の組織から得られるLIF発現値に相当すると、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0099】
特定の実施形態において、基準値は、臨床的観点から十分に立証され、及び、疾患を提示しない、特に癌に悩んでいない、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩んでいない患者の群から得たサンプルのプールから判定される平均(average or mean)LIF発現値に相当する。この場合、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0100】
代替的に、基準値は、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩まず且つ抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者の群から得たサンプルのプールから判定される平均LIF発現値に相当する。この場合、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0101】
代替的に、基準値は、癌、具体的には卵巣癌、肺癌、又は大腸癌に悩まず、好ましくは抗LIF処置に応答しないことを特徴とした患者から得た健康な組織又は非腫瘍性組織のサンプルのプールから判定される平均LIF発現値に相当する。
【0102】
この場合、LIFのレベルの増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、或いはそれ以上に基準値よりも大きなLIFのレベルに関連する。
【0103】
前記サンプルにおいて、発現レベルは、例えば基準集団における平均発現レベルの判定によって判定され得る。基準値の判定において、患者の年齢、性別、身体状態などのサンプルのタイプの幾つかの特徴を考慮に入れることが必要となる。例えば、基準サンプルは、集団が統計的に有意となるように、少なくとも2、少なくとも10、少なくとも100から少なくとも1000を超える個体の群の同一の量から得ることができる。
【0104】
基準値が得られるサンプルは通常、患者におけるLIFレベルを判定するために使用される同じタイプのサンプルであることが理解される。例えば、患者におけるLIFレベルの判定が腫瘍からの生検において実行される場合、基準値は同じ組織の非腫瘍性サンプルから得られる。場合によっては、非腫瘍性組織は、非腫瘍性組織を含んでいる生検のそのような部分を得ることにより、同じ腫瘍生検から得られる場合もある。
【0105】
上述のように、サンプルにおけるLIFの発現レベルの定量化は、mRNAレベルの判定或いはタンパク質レベルの判定として実行することができる。好ましい実施形態において、サンプルにおけるLIFの発現レベルはタンパク質レベルとして判定される。より好ましい実施形態において、LIFのタンパク質レベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、免疫沈降又はELISAに関連づけられた質量分析によって判定される。より特定の実施形態において、LIFのレベルは、免疫組織化学的検査又は免疫組織蛍光によって定量化される。
【0106】
本発明に係るサンプルの例示的であり限定されない例として、組織のサンプルと同様に、血液、血清、血漿、脳脊髄液、腹水、便、尿、及び唾液などの異なるタイプの体液が挙げられる。体液のサンプルは、組織のサンプルのように従来の方法により得ることができ;一例として、前記組織のサンプルは、外科的切除により得られた生検のサンプルであり得る。好ましくは、LIFの判定のために使用されるサンプルは、判定が相対的に行われる場合に基準値を判定するために使用される同じタイプのサンプルである。一例として、LIFレベルの判定が外科的切除後に得られた腫瘍のサンプルにおいて実行される場合、基準値は、LIFでの処置に応答しなかった患者から得られた腫瘍のサンプルでもある。サンプルが生物流体の場合、基準サンプルは、同じタイプの生物流体、例えば血液、血清、血漿、脳脊髄液においても判定される。
【0107】
本発明に係る使用のための薬剤の特定の実施形態において、癌は、卵巣癌、肺癌、及び大腸癌から選択される。より特定の実施形態において、癌は肺癌、具体的には非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0108】
別の実施形態において、癌が大腸癌の場合、患者は、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎に悩んでおらず、或いはそれに悩んではいなかった。
【0109】
別の実施形態において、癌が大腸癌の場合、患者は悪液質に悩んでいない。本明細書で使用されるように、用語「悪液質」は、食事により元に戻すことができず且つ極端な衰弱、感染への耐性の減少、及び治療を耐えることができなくなる状態を引き起こす、身体全体にわたる貯蔵脂肪と筋肉量の両方の重大な損失により引き起こされる、体重の系統的な損失を指す。
【0110】
別の実施形態において、癌が大腸癌の場合、癌は化学療法抵抗性ではない。本明細書で使用されるように、用語「化学療法抵抗性」は、その細胞が抗癌治療にもかかわらず生存し且つ増大することが可能な癌を指す。化学療法抵抗性は、癌細胞にそれらの耐性を与える遺伝的特徴などの癌細胞の固有の特性により、同様に、変更された膜輸送、増強されたDNA修複、アポトーシス経路欠損、標的分子の変化、酵素不活性化などのタンパク質及び経路の機構を含む様々な機構により引き起こされ得る、薬物曝露後の獲得耐性によっても引き起こされ得る。1つの実施形態において、癌細胞は、代謝拮抗薬、好ましくはピリミジンアナログ及び最も好ましくは5-フルオロウラシルでの処置に対する耐性が無い、
【0111】
1つの実施形態において、癌細胞は、トポイソメラーゼII阻害剤での置に対する耐性が無い。好ましくは、トポイソメラーゼII阻害剤は、エトポシド、アドリアマイシン、又はドキソルビシンである。
【0112】
癌患者のためにカスタマイズされた治療の設計のための本発明の方法
別の態様において、本発明は、卵巣癌、肺癌、及び大腸癌から選択される癌に悩む患者のためにカスタマイズされた治療を設計するインビトロの方法に関し、該方法は:
前記患者のサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、及び
前記レベルを基準値と比較する工程
を含み、
ここで、前記患者の前記サンプルにおけるLIFのレベルが基準値以上である場合、LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤が、前記患者への投与のために選択される。
【0113】
本明細書で使用されるように、用語「カスタマイズされた治療」は、「個別化された治療」としても知られており、おそらく有効であり且つ副作用をあまり引き起こさない処置を伴う患者の一致に関連する。本発明の文脈において、患者は癌患者であり、治療は、LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤に基づく治療である。
【0114】
故に、癌に悩む患者のためにカスタマイズされた治療を設計する本発明の方法の第1の工程において、癌は卵巣癌、肺癌、及び大腸癌から選択され、癌に悩む前記患者のサンプルにおけるLIFのレベルは定量化される。LIFレベルの定量化は、本発明の治療方法の文脈において上述のように実行される。
【0115】
特定の実施形態において、カスタマイズされた治療が設計されることになっている患者は、肺癌患者、具体的には非小細胞肺癌(NSCLC)に悩む肺癌患者である。
【0116】
別の実施形態において、カスタマイズされた治療が設計されることになっている患者は、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎に悩んでいない、或いはそれに悩んではいなかった、大腸癌患者である。別の実施形態において、カスタマイズされた治療が設計されることになっている患者は、悪液質に悩んでいない大腸癌患者である。
【0117】
別の実施形態において、カスタマイズされた治療が設計されることになっている患者は、癌が大腸癌であり且つ癌が化学療法抵抗性でない、大腸癌患者である。1つの実施形態において、癌細胞は、代謝拮抗薬、好ましくはピリミジンアナログ及び最も好ましくは5-フルオロウラシルでの処置に対する耐性が無い。別の実施形態において、癌細胞は、トポイソメラーゼII阻害剤での処置に対する耐性が無い。好ましくは、トポイソメラーゼII阻害剤は、エトポシド、アドリアマイシン、又はドキソルビシンである。
【0118】
LIFのレベルを判定するための本発明に係る適切なサンプルは、以前に同様に言及され、且つ本明細書に組み込まれている。特定の実施形態において、サンプルは組織サンプル又は生物流体である。より特定の実施形態において、組織サンプルは腫瘍サンプルである。より特定の実施形態において、生体流体は血液、血清、又は血漿である。
【0119】
LIF発現レベルを定量化する方法は、以前に本発明の使用のための薬剤の文脈において記載されており、本明細書に組み込まれている。
【0120】
特定の実施形態において、LIFのレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、免疫沈降又はELISAに関連づけられた質量分析によって定量化される。より好ましくは、LIFのレベルは、免疫組織化学的検査又は免疫組織蛍光によって定量化される。
【0121】
癌に悩む患者のためにカスタマイズされた治療を設計する本発明の方法の第2の工程において、前記癌は卵巣癌、肺癌、及び大腸癌から選択され、患者のサンプルにおいて定量化されたLIFのレベルは基準値と比較され、ここで、癌に悩む被験体のサンプルにおけるLIFのレベルがゼロ以上である場合、LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤が、前記患者への投与のために選択される。
【0122】
癌に悩む患者のためにカスタマイズされた治療を設計する本発明の方法に係る基準値は、本発明の治療方法におけるものと同じ方法で判定される。本発明に係る基準値は、以前に本発明の癌の処置における使用のための薬剤の文脈において記載されており、本明細書に組み込まれている。
【0123】
特定の実施形態において、LIFのレベルは、LIFスコアの値、又はHスコアの値として測定される。より特定の実施形態において、LIFのレベルは、免疫組織化学的検査又は免疫組織蛍光によって定量化され、且つLIFスコア又はHスコアの値として測定される。
【0124】
LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤は、本発明で上述され、本明細書に組み込まれている。特定の実施形態において、薬剤は、LIFに特異的なsiRNA、LIFに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、及びLIFに特異的なリボザイムから成る群から選択される。特定の代替的な実施形態において、LIFに特異的な抗体、LIFに特異的なポリペプチド、LIFに特異的なオリゴヌクレオチド、及びLIFに特異的なLIF受容体結合の阻害剤から成る群から選択される。より特定の実施形態において、LIFに特異的な抗体は、LIF中和抗体である。
【0125】
LIF阻害剤に基づく処置のための癌患者の選択のための本発明の方法
更なる態様において、本発明は、LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤で処置される、卵巣癌、肺癌、及び大腸癌から選択される癌に悩む患者を選択するインビトロの方法に関し、該方法は:
前記患者の腫瘍サンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、及び
前記レベルを基準値と比較する工程
を含み、
ここで、前記患者の前記腫瘍サンプルにおけるLIFのレベルが基準値以上である場合、前記患者は、LIFの発現を阻害し及び/又はその活性を遮断することができる薬剤での処置を受けるために選択される。
【0126】
LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤で処置される、卵巣癌、肺癌、および大腸癌を患う患者を選択するための本発明の方法の第1の工程は、前記患者からのサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程を含む。
【0127】
特定の実施形態では、分析される患者は、肺癌患者、より具体的には非小細胞肺癌(NSCLC)を患う肺癌患者である。別の実施形態では、患者は卵巣癌患者である。別の実施形態では、患者は大腸癌患者である。
【0128】
別の実施形態において、分析される患者は、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎を患っていない又はそれを患ったことがない大腸癌患者である。
【0129】
別の実施形態では、分析される患者は、悪液質を患っていない大腸癌患者である。
【0130】
別の実施形態では、分析される患者は、癌が大腸癌であり、かつ癌が化学療法抵抗性ではない大腸癌患者である。1つの実施形態では、癌細胞は、代謝拮抗薬、好ましくはピリミジンアナログ、および、最も好ましくは5-フルオロウラシルによる治療に対して耐性がない。別の実施形態では、癌細胞はトポイソメラーゼII阻害剤を用いる治療に対して耐性がない。好ましくは、トポイソメラーゼII阻害剤はエトポシドあるいはアドリアマイシンあるいはドキソルビシンである。
【0131】
LIFのレベルを判定するための本発明にかかる適切なサンプルは、先に同様に言及され、かつ本明細書に組み込まれている。特定の実施形態では、サンプルは組織サンプルあるいは生物流体である。さらに具体的な実施形態では、組織サンプルは腫瘍サンプルである。さらに具体的な実施形態では、生物流体は、血液、血清、または、血漿、あるいはCSFサンプルである。
【0132】
LIF発現レベルを定量化するための方法は、本発明の使用のための薬剤の文脈において先に記載されており、かつ、本明細書に組み込まれている。
【0133】
特定の実施形態では、LIFのレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、免疫沈降またはELISAに関連付けられた質量分析によって定量化される。より好ましくは、LIFのレベルは免疫組織化学的検査または免疫組織蛍光によって定量化される。
【0134】
LIFの発現を阻害可能な、および/またはLIFの活性を遮断可能な薬剤をもちいて処置される、卵巣癌、肺癌、および大腸癌から選択される癌に苦しむ患者を選択するための本発明の方法の第2の工程は、第1の工程で測定されたレベルと基準値とを比較する工程を含む。LIFの発現を阻害可能なおよび/またはLIFの活性を遮断可能な薬剤を用いる処置のための、患者を選択する本発明の方法にかかる基準値は、本発明の処置方法と同一方法にて測定される。本発明にかかる基準値は、本発明の癌の処置で使用される薬剤の内容において予め記載され、本明細書に取り込まれる。
【0135】
特定の一実施形態では、LIFのレベルは、LIFスコアの値、またはHスコアの値として測定される。より特定の実施形態では、LIFのレベルは免疫組織化学的検査または免疫組織蛍光法を用いて定量化され、LIFスコアまたはHスコアの値として測定される。
【0136】
LIFの発現を阻害可能なおよび/またはLIFの活性を遮断可能な薬剤は、本発明において上記されており、本明細書に取り込まれる。特定の実施形態では、薬剤は、LIFに特異的なsiRNA、LIFに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的なリボザイムから成る群から選択される。特定の代替的な実施形態では、LIFに特異的な抗体、LIFに特異的なポリペプチド、LIFに特異的なオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的なLIF受容体結合の阻害剤から成る群から選択される。より特定の実施形態では、LIFに特異的な抗体はLIF中和抗体である。
【0137】
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌の処置における使用のための、白血病抑制因子(LIF)の発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤。
(2)前記癌が、高いLIFレベルを有していることを特徴とする、(1)に記載の薬剤。
(3)卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌を患う患者のためにカスタマイズされた治療を設計するインビトロでの方法であって、該方法が、
(i)前記患者からのサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、および
(ii)前記レベルを基準値と比較する工程を含み、
ここで、前記患者からの前記サンプルにおけるLIFのレベルが基準値以上である場合、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤が、前記患者への投与に選択される、方法。
(4)LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤で処置される卵巣癌、肺癌および大腸癌から選択される癌を患う患者を選択するインビトロでの方法であって、該方法が、
(i)前記患者からのサンプルにおけるLIFのレベルを定量化する工程、および
(ii)前記レベルを基準値と比較する工程を含み、
ここで、前記患者からの前記サンプルにおけるLIFのレベルが基準値以上である場合、前記患者は、LIFの発現を阻害することができる及び/又はその活性を遮断することができる薬剤による処置を受けるために選択される、方法。
(5)サンプルが、組織サンプルまたは生物流体である、(3)または(4)に記載の方法。
(6)組織サンプルが腫瘍サンプルである、(5)に記載の方法。
(7)生物流体が、血液、血清または血漿である、(5)に記載の方法。
(8)LIFのレベルが、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学的検査、免疫組織蛍光、質量分析、あるいは免疫沈降またはELISAに関連付けられた質量分析によって定量化される、(1)または(2)に記載の薬剤あるいは(3)乃至(7)のいずれかに記載の方法。
(9)LIFのレベルが、免疫組織化学的検査または免疫組織蛍光によって定量化され、LIFスコアまたはHスコアの値として測定される、(8)に記載の薬剤あるいは(5)に記載の方法。
(10)癌が、0以上のLIFスコアまたは0以上のHスコアを有していることを特徴とする、(9)に記載の薬剤。
(11)基準値が、0以上のLIFスコアまたは0以上のHスコアである、(10)に記載の薬剤。
(12)LIFの発現を阻害することができる薬剤が、LIFに特異的なsiRNA、LIFに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的なリボザイムから成る群からに選択される、(1)または(2)に記載の薬剤あるいは(3)乃至(9)および(11)のいずれかに記載の方法。
(13)LIFの活性を遮断することができる薬剤が、LIFに特異的な抗体、LIFに特異的なポリペプチド、LIFに特異的なオリゴヌクレオチド、およびLIFに特異的なLIF受容体結合の阻害剤から成る群から選択される、(1)または(2)に記載の薬剤あるいは(3)乃至(9)および(11)のいずれかに記載の方法。
(14)LIFに特異的な前記抗体が、LIF中和抗体である、(13)に記載の薬剤あるいは(13)に記載の方法。
(15)肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、(1)または(2)に記載の薬剤あるいは(3)乃至(9)および(11)乃至(14)のいずれかに記載の方法。
本発明は、単に例示的で本発明の範囲を限定するものではないものとして解釈される次の例を用いて、以下に詳細に記載される。
【実施例】
【0138】
<癌におけるLIFの異種混合の横断的な発現(Heterogeneous transversal expression)>
癌におけるLIFのレベルを評価するために、様々な腫瘍タイプからのサンプルをパラフィン内に埋め込み、抗LIF抗体を用いる免疫組織化学的検査(IHC)によって染色した。LIF発現を、Hスコア法を使用する免疫組織化学的検査によって定量化し、グラフで表した。
【0139】
LIF発現における幅広い変異性が全ての指標で見つかった。重要なことに、極めて高いレベルのLIFタンパク質を発現させる腫瘍が、膠芽腫(GBM)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、および膵癌(
図1および2)を含む分析される20の癌の指標にわたって観察された。
【0140】
<神経膠腫サンプルにおけるLIFスコアの測定>
対照(
図3A)および腫瘍(
図3B)サンプルを、切除後直ちに、室温で最大48時間にわたって、10%緩衝ホルマリン溶液中で固定して、脱水し、真空下でパラフィンに埋め込こんだ。壊死病巣から離れた代表的な組織の領域を、ヘマトキシリン-エオジン染色部分上で特定した。免疫組織化学的検査によるLIFタンパク質のレベルの測定を、以下のように実行した:
1.o/N、RTで、4%ホルマリン中でサンプルを固定、
2.サンプルをパラフィン内に埋め込む、
3.60℃、O/Nでスライドをインキュベート、
4.脱パラフィンと再水和:キシレン+EtOH(100%->90%ー>70%->H20)
5.抗原回収:DAKO溶液 pH6(115°/3’)。サンプルを室温(RT)(約20’)まで冷やす
6.ペルオキシダーゼ:10’処置(希釈1:10)
7.TBS-T 1x(pH 7.6)3x5’で洗浄
8.TBS-T1x中の3%BSAで、30’-1h,RTで遮断
9.TBS-T 1x(pH 7,6)3x5’で洗浄
10.一次抗体を多湿のチャンバーにおいて4°、O/Nで維持
LIF(HPA018844, Atlas)1:200(green diluyent,DAKO)
11.TBS-T 1x(pH7.6)3x5’で洗浄
12.二次抗体をRT、20’(envision,Dako)で維持
13.TBS-T 1x(pH7,6)3x5’で洗浄
14.成長:成長前に最大20’
15.ヘマトキシリン(20-30”)で逆染色
16.脱水:EtOH(70%->90%->100%)+キシレン
17.スライドを取り付ける
【0141】
LIFプロテインスコアの定量分析のために、染色された腫瘍細胞のパーセンテージおよび強度を、光学顕微鏡法を使用して、組織切片上で、代表的な高倍率視野(x400)で評価した。濃い十分な染色を有する細胞のパーセンテージ(0%から100%まで)として、結果を表現した。
図3を参照のこと。
【0142】
観察することができるように、対照サンプルのLIFスコアは0であるが、神経膠腫サンプルはLIFスコアを変動させ、該スコアは0(サンプル3)、10(サンプル2)、または25(サンプル1)に及ぶ。
【0143】
<腫瘍増殖に対する抗LIF抗体阻害の効果は、前記腫瘍におけるLIFのレベルに依存する>
GBMの患者から採取された細胞を、生物発光をインビボでモニタリングするためのホタルルシフェラーゼ遺伝子にしっかり感染させた。100,000の細胞を、9週齢のNOD/SCIDマウス(Charles River Laboratories)の右脳半球の線条体へと定位的に播種した(前頂部に対して前方に1mm、および側方に1.8mm;実質内に2.5mm)。
【0144】
週に二度、15mg/kgの抗LIF抗体でマウスの腹腔内を処理し、または処理せず、そして、腫瘍増殖を生物発光によりモニタリングした。生物発光イメージングのために、マウスに、1-2%のイソフルラン麻酔を吸入させた状態で、0.2mLの15mg/mL D-ルシフェリンのi.p.注入を受けさせた。非常に高感度な冷却CCDカメラから成るIVIS system 2000 series(Xenogen Corp., Alameda, CA, USA)を使用して、生物発光シグナルをモニタリングした。Living Imageソフトウェア(Xenogen Corp.)を使用して、画像データにグリッドを据え、各箱型の領域内の合計の生物発光シグナルを統合した。関心領域(ROI)における光子束の放出(photon flux emission)(光子/秒)の合計を使用して、データを分析した。
【0145】
処置の一ヶ月後、マウスを安楽死させ、マウスの脳を摘出した。脳のサンプルを、切除後直ちに、最大48時間にわたって、室温で、10%緩衝ホルマリン溶液中で固定し、脱水し、真空下でパラフィンに埋め込こんだ。壊死病巣から離れた代表的な腫瘍の領域を、ヘマトキシリン-エオジン染色部分上で特定した。抗LIF抗体を使用し、サンプルを染色しLIFタンパク質の値を測定した。
【0146】
LIFプロテインスコアの定量分析のために、染色された腫瘍細胞のパーセンテージおよび強度を、光学顕微鏡法を使用して、組織切片上で、代表的な高倍率視野(x400)で評価した。濃い十分な染色を有する細胞のパーセンテージ(0%から100%まで)として、結果を表現した。
図4Aを参照のこと。
【0147】
その結果は、低いLIFレベルを示す腫瘍は抗LIF治療法に応答しない(
図4B)が、少なくとも10以上のLIFスコア(細胞の10%が濃く完全に着色されている)の腫瘍は、抗LIF抗体の処置に対して高感度であることを示す(
図4Aを参照)。
【0148】
<抗LIF抗体は、非小細胞肺癌(NSCLC)における腫瘍増殖の阻害を促進する>
高いLIFレベルのマウスの非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株KLN205は、インビボ生物発光モニタリングのためのホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するレンチウイルスに、安定して感染した。マウスモデルを発現させるために、免疫適格性の同系のマウスの肺へと、KLN205細胞を同所的に播種した。
図5を参照のこと。
【0149】
一旦、腫瘍が指数関数的な増殖期へと入ってから、週に二度、15mg/kgの抗LIF抗体でマウスの腹腔内を処理し、または処理せず、そして、腫瘍増殖を生物発光によりモニタリングした。生物発光イメージングのために、マウスに、1-2%のイソフルラン麻酔を吸入させた状態で、0.2mLの15mg/mL D-ルシフェリンの腹腔内注入を受けさせた。非常に高感度な冷却CCDカメラから成るIVIS system 2000 series(Xenogen Corp., Alameda, CA, USA)を使用して、生物発光シグナルをモニタリングした。Living Imageソフトウェア(Xenogen Corp.)を使用して、画像データにグリッドを据えし、各箱型の領域内の合計の生物発光シグナルを統合した。関心領域(ROI)における光子束の放出(光子/秒)の合計を使用して、データを分析した。その結果によって、3回用量の抗LIF抗体のみが腫瘍縮小を促進するのに十分であったことが実証される。
図5Aを参照のこと。
【0150】
マウスを安楽死させ、マウスの肺を摘出した。肺のサンプルを、切除後直ちに、最大48時間にわたって、室温で、10%緩衝ホルマリン溶液中で固定し、脱水し、真空下でパラフィンに埋め込こんだ。壊死病巣から離れた代表的な腫瘍の領域を、ヘマトキシリン-エオジン染色部分上で特定した。ホスホ-STAT3(p-STAT3)、Ki67、および切断型カスパーゼ3(CC3)に特異的な抗体を使用して、サンプルを染色し、pSTAT3(LIF経路の読み出し)、Ki67(増殖マーカー)、およびCC3(アポトーシスマーカー)のレベルを測定した。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(中パネル)。CC3+細胞のパーセントを算出した。データは平均±SEM(右パネル)として提示される。結果は、抗LIF抗体を用いる処置によって、LIF経路が阻害され(pSTAT3レベル)、細胞増殖が減少し(Ki67)、一方でアポトーシスが増加する(CC3染色)ことを示す。
図5Bを参照のこと。
【0151】
インビボでの腫瘍増殖に対する効果が、LIF経路に対する抗LIF抗体の特定の効果によることを確認するために、細胞を、KLN205細胞において、LIFに対するショートヘアピン(shLIF)、またはsh対照を発現するレンチウイルスに感染させた。mRNAレベル(リアルタイムPCR)およびタンパク質レベル(ELISA)によって分析されるように、shLIFレンチウイルスに感染したKLN205細胞におけるLIFのレベルはより低かった。
図6を参照のこと。
【0152】
ショートヘアピンを発現するKLN205細胞を、同系のマウスの肺に播種し、CCDカメラを用いて腫瘍増殖をモニタリングした。shLIFに感染した細胞からKLN205腫瘍はsh対照に感染した腫瘍よりも小さく、このことが腫瘍形成活性はLIFに依存することを示している。腫瘍がIHCによって染色されたとき、shLIFに感染した腫瘍におけるLIFのレベルがより低かったことが確認された。加えて、KLN205 shLIF腫瘍を有するマウスが週に二度、15mg/kgの抗LIF抗体で処置されたときには、腫瘍のさらなる低下は観察されなかった。結果により、抗LIF抗体が明確にLIFを標的としていること、および、抗LIF抗体により観察された治療効果が抗LIF抗体のオフターゲット効果によるものではなかったということ、が示される。播種の前に、LIF転写産物レベルをqRT-PCR解析によって測定し、分泌されたLIFタンパク質のレベルをELISAによって測定した。データは平均±SDとして提示される。LIFに対する免疫組織化学的検査も横隔膜腫瘍において実施した。これらの結果によって、shLIFに感染した細胞におけるLIFの発現が減少したことが確認される。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(右パネル)。
図6を参照のこと。
【0153】
さらなる実験を実施し、NSCLCモデルにおけるLIFの役割、および抗LIF抗体の治療効果を確認した。この実験2において、LIFを標的とする独立したショートヘアピンを使用した。両方のショートヘアピンは、LIF mRNAのレベルを効率的に減少させた。播種の前に、LIF転写産物レベルをqRT-PCR解析によって測定し、分泌されたLIFタンパク質のレベルをELISAによって測定した。データは平均±SDとして提示される。
図7を参照のこと。2つの独立したshLIFまたはsh対照のレンチウイルスに感染したKLN205細胞を、同系のマウスの肺に播種した。sh対照を発現する腫瘍を播種されたマウスが週に二度、15mg/kgの抗LIF抗体で処置されたとき、腫瘍増殖の明らかな減少が観察され、これによって抗LIF抗体に対する治療効果が確認された。
図7を参照のこと。
【0154】
加えて、両方のshLIFに感染した細胞を有する腫瘍はより小さな腫瘍を産生し、これによって腫瘍増殖がLIF経路に依存することが確認された。LIFに対する免疫組織化学的検査も横隔膜腫瘍において実施された。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(右パネル)。
【0155】
<抗LIF抗体は、神経膠芽腫の腫瘍増殖阻害を促進させる>
ホタルルシフェラーゼ遺伝子に感染したIHCによって測定されるような高レベルのLIFを有するU251 GBM細胞を、9週齢のNOD/SCIDマウス(Charles River Laboratories)の右脳半球の線条体へと定位的に播種した(前頂部に対して前方に1mm、および側方に1.8mm;実質内に2.5mm)。これらのマウスは免疫不全であるが、活性マクロファージを持つ。
【0156】
細胞播種後の7日、週に二度、15mg/kgの抗LIF抗体でマウスの腹腔内を処理し、そして腫瘍増殖を生物発光(bioluminiscence)によりモニタリングした。抗LIF抗体による処置によって、腫瘍増殖が阻害された。
図8を参照のこと。
【0157】
インビボでの腫瘍増殖に対する効果がLIF経路に依存していたことを確認するために、U251を、LIFに対するショートヘアピン(shLIF)、またはショートヘアピン対照を発現するレンチウイルスに感染させた。mRNAレベル(リアルタイムPCR)およびタンパク質レベル(ELISA)によって分析されるように、shLIFレンチウイルスに感染したU251の細胞におけるLIFのレベルはより低かった。CCDカメラを用いて腫瘍増殖をモニタリングし、その結果によって、shLIFに感染した細胞からのU251腫瘍がより小さく、それによって腫瘍形成活性がLIFに依存することが示されることが実証される。加えて、IHCによって、shLIFを有する腫瘍が、IHCによる、より低いレベルのLIFタンパク質発現を有していたことを確認した。
図9を参照のこと。
【0158】
<抗LIF抗体は、卵巣癌における腫瘍増殖の阻害を促進する>
高いLIFレベルを持つ細胞株ID8からのマウスの卵巣癌細胞を、免疫適格性の同系のマウスの腹膜へと播種した。
【0159】
15mg/kgの抗LIF抗体で、週に二度、マウスの腹腔内を処置し、腹水症の基準として、および腫瘍増殖の代替マーカーとして、マウスの腰部を測定した。抗LIF抗体で処置されたマウスの腹部の周囲は減少しており、抗LIF抗体が腫瘍増殖を阻害したことを示された。
図10Aを参照のこと。
【0160】
マウスを安楽死させ、マウスの腫瘍を摘出した。腫瘍のサンプルを、切除後直ちに、最大48時間にわたって、室温で、10%緩衝ホルマリン溶液中で固定し、脱水し、真空下でパラフィンに埋め込こんだ。壊死病巣から離れた代表的な腫瘍の領域を、ヘマトキシリン-エオジン染色部分上で特定した。p-STAT3、Ki67、および切断型カスパーゼ3(CC3)に特異的な抗体を使用してサンプルを染色し、かつpSTAT3(LIF経路の読み出し)、Ki67(増殖マーカー)、およびCC3(アポトーシスマーカー)のレベルを測定し、これを全てのモデルにおいて実施した。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(中パネル)。CC3+細胞のパーセントを算出した。データは平均±SEM(右パネル)として提示される。結果は、インビボでの抗LIF抗体を用いる処置によって、LIF経路が阻害され(pSTAT3レベル)、細胞増殖が減少し(Ki67)、一方でアポトーシスが増加する(CC3染色)ことを示す。
図10Bを参照のこと。
【0161】
インビボでの腫瘍増殖に対する効果がLIF経路に依存していたことを確認するために、ID8を、LIFに対する2つの独立したショートヘアピン(shLIF)、またはショートヘアピン対照を発現するレンチウイルスに感染させた。shLIFに感染したID8の細胞におけるLIFのレベルはより低かった。播種の前に、LIF転写産物レベルをqRT-PCR解析によって測定し、分泌されたLIFタンパク質のレベルをELISAによって測定した。データは平均±SDとして提示される。腹水症、および代替マーカーまたは腫瘍増殖の測定値として腹部周囲を測定した。結果によって、shLIFに感染した細胞からのID8腫瘍がより小さく、それによって腫瘍形成活性がLIFに依存することが示されることが実証される。LIFに対する免疫組織化学的検査も腫瘍において実施し、ショートヘアピンに感染した細胞におけるLIFレベルがより低いことを確認した。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(右パネル)。
図11を参照のこと。
【0162】
<抗LIF抗体は、大腸癌における腫瘍増殖の阻害を促進する>
同系のマウスの右脇腹の皮下へとマウス大腸癌細胞CT26を播種した。5日目に、腹腔内に与えられる、週に二度15mg/kgの抗LIF抗体の処置を開始した。カリパス測定によって腫瘍増殖を評価した。式Π/6×大径×(小径)2によって腫瘍体積(mm3)を算出した。結果は平均±s.dとして提示される。抗LIF抗体による処置により、腫瘍増殖が弱まった。
【0163】
マウスを安楽死させ、マウスの腫瘍を摘出し、代表的な腫瘍の写真を撮った。
図12Aを参照のこと。マウスを安楽死させ、マウスの腫瘍を摘出した。腫瘍のサンプルを、切除後直ちに、最大48時間にわたって、室温で、10%緩衝ホルマリン溶液中で固定し、脱水し、真空下でパラフィンに埋め込こんだ。壊死病巣から離れた代表的な腫瘍の領域を、ヘマトキシリン-エオジン染色部分上で特定した。pSTAT3、Ki67、および切断型カスパーゼ3(CC3)に特異的な抗体を使用して、サンプルを染色し、pSTAT3(LIF経路の読み出し)、Ki67(増殖マーカー)、およびCC3(アポトーシスマーカー)のレベルを測定し、これを全てのモデルで実施した。代表的な画像を示す。スケールバー、20μm(中パネル)。CC3+細胞のパーセントを算出した。データは平均±SEM(右パネル)として提示される。結果は、インビボでのMSC-1処置によって、LIF経路が阻害されpSTAT3レベル)、増殖が減少し、一方でアポトーシスが増加する(CC3染色)ことを示す。
図12Bを参照のこと。