(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】がん免疫治療における胃腸の免疫関連有害事象の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220510BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220510BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220510BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220510BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220510BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P1/04
A61P1/12
A61P35/00
A61P37/02
A61K45/00
A61K38/02
(21)【出願番号】P 2018549788
(86)(22)【出願日】2017-03-24
(86)【国際出願番号】 US2017024033
(87)【国際公開番号】W WO2017165778
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-24
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287639
【氏名又は名称】ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク,レイチェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウェスティン,エリック エイチ.
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】European Journal of Cancer,2016年01月05日,54,p.139-148
【文献】J Clin Oncol.,2006年,24,p.2283-2289
【文献】United European Gastroenterology Journal,2014年,2(5),p.333-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん免疫治療を受けている
ヒト対象における胃腸免疫関連有害事象(gi-irAE)を治療するための組成物であって、治療有効量の抗α4β7インテグリン抗体を含み、前記抗体は、
配列番号1の重鎖可変領域と、配列番号2または配列番号3の軽鎖可変領域とを含
み、前記ヒト対象はメラノーマを有し、前記がん免疫治療はニボルマブ及びイピリムマブを含む、前記組成物。
【請求項2】
前記抗α4β7インテグリン抗体がベドリズマブである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、約1.25~8.0mg/kg、例えば、約1.25~4.25mg/kg、1.75~3.75mg/kg、2.25~3.25mg/kg、または2.86mg/kgの用量で投与され;いくつかの実施形態では、前記抗α4β7インテグリン抗体が、約5.0~8.0mg/kg、5.5~7.5mg/kg、6.0~7.0mg/kg、または6.43mg/kgの用量で投与される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記
ニボルマブによる治療が、約0.5~6.0mg/kgの用量で、例えば、0.5~2.0mg/kg、0.5~1.5mg/kg、0.75~1.25mg/kg、1.0mg/kg;1.5~6.0mg/kg、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、または3.0mg/kgの用量で施される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
イピリムマブが、約1.5~10.0mg/kg、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、または3.0mg/kgの用量で投与される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項6】
前記
ヒト対象が、ヒト成人
である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記
メラノーマ
が、切除不能または転移性メラノーマ
である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、約10μg/ml、またはそれ以上、例えば、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50μg/ml、またはそれ以上の血清濃度を達成するように投与され、
前記抗α4β7インテグリン抗体が、2回またはそれ以上投与され、前記投与が同一用量であるか、または、前記投与が、例えば、200mgの初回単位用量を伴い、450mgのその後の用量を伴う漸増用量であり、かつ/あるいは
前記抗α4β7インテグリン抗体が、約108、150、165、200、216、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700または750mgの単位用量で、ヒト対象に投与される、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗α4β7インテグリン抗体の各用量が450mgであるか、
前記抗α4β7インテグリン抗体の各用量が300mgであるか、または
前記抗α4β7インテグリン抗体の各用量が600mgである、
請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、前記がん免疫治療の前に少なくとも1回投与される、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗α4β7インテグリン抗体の少なくとも1回の投与後に、
ニボルマブが、2週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与されるか、あるいは
イピリムマブが、3週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与され、それと同時に
ニボルマブが、例えば約1mg/kgの用量で投与されるか、あるいは
イピリムマブが、3週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与され、それと同時に
ニボルマブが、例えば約1mg/kgの用量で投与され、
イピリムマブの4回の投与後に、さらなる
イピリムマブは投与されず、
ニボルマブが、2週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、少なくとも4回投与され、2回目用量が、前記初回投与から約2週間後に投与され、3回目用量が、前記初回投与から約4週間後に投与され、4回目用量が、前記初回投与から約12週間後に投与される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、gi-irAEの症状の発現の前に、予防的に投与されるか、または
前記抗α4β7インテグリン抗体が、gi-irAEの症状に応じて投与される、
請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、
前記がん免疫治療のために、予防的または治療的に投与される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗α4β7インテグリン抗体が、
前記がん免疫治療のために、gi-irAEの症状に応じて投与される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項16】
がん免疫治療を受けているが、前記抗α4β7インテグリン抗体を受けていない適切な対照と比べて、前記対象が、向上したコンプライアンス(例えば、治療中断、中止または投薬量の減少の発生率の低下;より高い治療完了率、より長い治療期間)、前記がん免疫治療の有効性の有意な減少がないこと、前記がん免疫治療の有効性の増加、gi-irAEのグレードの低下、gi-irAEの持続時間の短縮、gi-irAEの発症の遅延、コルチコステロイド、抗生物質、非コルチコステロイド免疫抑制薬、下部内視鏡検査、入院、またはこれらの組み合わせの使用の減少もしくは解消;またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を呈する、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月24日に出願された米国仮出願第62/312,671号の利益を主張する。前述の出願の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がん免疫治療を受けている対象における胃腸免疫関連有害事象(gi-irAE)を改善する方法に関する。例示的なgi-irAEとしては、大腸炎及び下痢が含まれ、がん免疫治療は、抗CTLA4及び/または抗PD-1抗体などの単剤または併用治療を含むことができる。
【背景技術】
【0003】
がん免疫は、がんとの闘いにおいて成長を遂げかつ有望な分野である。一部分には、免疫抑制腫瘍微小環境に対抗することにより、対象の免疫系をがんに敵対させることによって、がん免疫は、全身的な化学療法または放射線療法の負の副作用の多くを伴うことなく有効な治療を提供する。これにもかかわらず、がん免疫は、大腸炎及び下痢を含む重大なgi-irAeを生じ得る。例えば、抗CTLA4及び抗PD-1抗体によるがん免疫治療を受けている対象の40%またはそれ以上が、治療の中断または中止を経験する場合があり、したがって、がん免疫治療の恩恵の多くを無効にしている。したがって、がん免疫治療などの免疫治療を受けている対象において、大腸炎及び下痢などのgi-irAEを軽減する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、とりわけ、がん免疫治療などの免疫治療を受けている対象において、大腸炎及び下痢などのgi-irAEを軽減させる方法を提供する。本発明は、抗α4β7インテグリン抗体などのMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドが、がん免疫治療を受けている対象において有利にgi-irAEを軽減することができるという本出願者の発見に、少なくとも部分的に基づいている。コルチコステロイドまたは抗腫瘍壊死因子(TNF)剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、またはエタネルセプト)などの全身性作用を有するgi-irAEを軽減するための他の様式とは対照的に、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、免疫療法の有効性を大幅に低下させることなく、より良好な安全性プロファイルでgi-irAEを軽減することができる。
【0005】
以下でさらに議論するように、gi-irAEは、炎症性腸疾患(IBD)などの自発性及び/または慢性自己免疫疾患とは対照的であり、共通の作用機序によって媒介されることが知られていない急性病態である。したがって、自発性自己免疫性IBDのため治療がgi-irAEのために作用することは必ずしも期待されない。抗CTLA4及び/または抗PD1治療によるものなどの免疫治療によって誘発された大腸炎についての動物モデルの情報はない。gi-irAEの管理におけるコルチコステロイドまたはインフリキシマブの有効性は、無作為化臨床試験では確認されていない。インフリキシマブはIBDの治療薬として登録されているが、これはまた慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、プラーク乾癬、及び強直性脊椎炎を含む広範な治療スペクトラムも含む。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、がん免疫治療を受けている哺乳動物対象において胃腸免疫関連有害事象(gi-irAE)を治療する方法を提供する。これらの方法は、対象へのMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する治療有効量のポリペプチドを投与する工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、がん免疫治療を施す工程を含むことができる。当然ながら、第2の医療用途(例えば、薬剤として)及び本発明によって提供される方法に対応するMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドの目標とされた使用を含む、対応する医療用途も同様に包含される。集合的に、これらの方法、薬剤及び使用は、「本発明によって提供される方法」として称され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、がん免疫治療は、4-1BB、B7H3、B7H4、CCR2、CD27、CD40、CD40L、CD244、CSF1R、CTLA4、CXCR4、GITR、IDO、ICOS、KIR(例えば、KIR2DL1またはKIR2DL3)、NKG2A、NKG2D、OX40、RAFキナーゼ、PD-1、PDL-1、PDL-2、TIM-3、VISTA、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上の標的の調節物質による治療を含む。より特定の実施形態では、治療は、T細胞共受容体、より具体的には、阻害性受容体、さらにより具体的には、阻害受容体がCTLA4、PD-1、またはCTLA4及びPD-1である標的の調節物質を含む。ある特定の実施形態では、がん免疫治療は、CCR2、CTLA4、RAFキナーゼ、またはPD-1(単独で、または、例えば、CTLA4、CCR2、及びRAFキナーゼの1つ以上と一緒に)を調節することを含まない。
【0008】
ある特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、α4β7インテグリンへの結合に対してベドリズマブと競合する抗α4β7インテグリン抗体などの抗α4β7インテグリン抗体であり、より具体的には、この抗体がベドリズマブのエピトープ特異性を有し、より具体的には、この抗体がベドリズマブの相補性決定領域(CDR)を含み、さらにより具体的には、この抗体がベドリズマブである。より具体的な実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、約1.25~8.0mg/kgの用量で投与される。ある特定の具体的な実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、約1.25~4.25mg/kg、1.75~3.75mg/kg、2.25~3.25mg/kg、例えば、約2.86mg/kg、例えば、約2.8mg/kgまたは約2.9mg/kgの用量で投与される。他の特定の実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、約5.0~8.0mg/kg、5.5~7.5mg/kg、6.0~7.0mg/kg、例えば、約6.43mg/kg、例えば、約6.4mg/kgまたは約6.5mg/kgの用量で投与される。ある特定の実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、約108、150、165、200、216、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750mg、またはそれ以上の単位用量でヒト対象に投与される。抗α4β7インテグリン抗体は、例えば、所定の終了点なしでの使用を含む、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回の投与、またはそれ以上の回数の投与について、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週毎、またはそれ以上長い期間毎に1回などの様々なスケジュールで、前述の用量のいずれかで投与することができる。複数回の投与を用いるある特定の実施形態では、投与は、同一用量で、または異なる用量であってもよく、例えば、200mgの用量の初回単位用量で、その後450mgの用量で漸増されてもよい。いくつかの実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、約10μg/ml以上の、例えば、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、93、または100μg/mlの血清濃度(例えば、血清トラフ濃度)を達成するために、例えば、少なくとも20週間の期間、投与される。特定の実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、15μg/mlを上回る血清トラフ濃度を達成するために、少なくとも20週間投与される。
【0009】
ある特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、がん免疫治療の前に少なくとも1回投与される。
【0010】
いくつかの特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、少なくとも4回投与され、第2の用量は初回投与の約2週間後に投与され、第3の用量は、初回投与の約4週間後に投与され、そして第4の用量は初回投与の約12週間後に投与される。
【0011】
ある特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、gi-irAEの1つ以上の症状の出現前に、免疫療法、例えば、がん免疫治療で治療される患者に一次予防として投与される。他の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、がん免疫治療後のgi-irAEの1つ以上の症状に応じて、治療設定において投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は、PD-1への結合に対してニボルマブと競合する抗PD-1抗体などの抗PD-1抗体を用いた治療を受けており(または、ある特定の具体的な実施形態では、投与されている)、またはより具体的には、この抗体はニボルマブのエピトープ特異性を有し、またはより具体的には、この抗体はニボルマブの相補性決定領域(CDR)を含み、またはさらに具体的には、この抗体はニボルマブである。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体治療は、約0.5~6.0mg/kgの用量である。具体的な実施形態では、用量は、約0.5~2.0mg/kg、0.5~1.5mg/kg、0.75~1.25mg/kg、例えば、約1.0mg/kgである。他の具体的な実施形態では、用量は、約1.5~6.0mg/kg、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、例えば、約3.0mg/kgである。別の実施形態では、抗PD-1抗体治療は、一定用量、例えば、約200mg、220mg、240mg、250mg、260mg、または280mgである。抗PD-1抗体は、例えば、所定の終了点なしでの使用を含む、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回の投与、またはそれ以上の回数の投与について、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週毎、またはそれ以上長い期間毎に1回などの様々なスケジュールで、前述の用量のいずれかで投与することができる。具体的な実施形態では、抗PD-1抗体は、約1mg/kgの用量で、2週間毎に1回または3週間毎に1回投与される。具体的な実施形態では、抗PD-1抗体は、約3mg/kgの用量で、2週間毎に1回投与される。
【0013】
ある特定の実施形態では、対象は、CTLA4への結合に対してイピリムマブと競合する抗CTLA4抗体などの抗CTLA4抗体を用いた治療を受けており(または、ある特定の実施形態では、投与されており)、またはより具体的には、この抗体はイピリムマブのエピトープ特異性を有し、さらに具体的には、この抗体はイピリムマブの相補性決定領域(CDR)を含み、及びさらにより具体的には、この抗体がイピリムマブである。具体的な実施形態では、抗CTLA4抗体は、約1.5~10.0mg/kg(例えば、約10mg/kgまで)、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、または約3.0mg/kgである。抗CTLA4抗体は、例えば、所定の終了点なしでの使用を含む、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回の投与、またはそれ以上の回数の投与について、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週毎、またはそれ以上長い期間毎に1回などの様々なスケジュールで、前述の用量のいずれかで投与することができる。具体的な実施形態では、抗CTLA4抗体は、約1mg/kgの用量で、3週間毎に1回、6週間毎に1回、または12週間毎に1回投与される。
【0014】
特定の実施形態では、本発明によって提供される方法によって治療される対象は、ヒト、例えばヒト成人である。
【0015】
ある特定の実施形態では、本発明によって提供される方法によって治療される対象は、メラノーマ(切除不能または転移性メラノーマを含む)、非小細胞肺癌(扁平上皮と非扁平上皮癌の両方)、腎細胞癌、頭頚部癌、膀胱癌、小細胞肺癌、結腸直腸癌(転移性のものを含む)、前立腺癌(転移性ホルモン不応性前立腺癌を含む)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫から選択されるがんを有する。いくつかの実施形態では、本発明によって提供される方法によって治療される対象は、メラノーマ(切除不能または転移性メラノーマを含む)、非小細胞肺癌(扁平上皮と非扁平上皮癌の両方)、腎細胞癌、頭頚部癌、膀胱癌、小細胞肺癌、前立腺癌(転移性ホルモン不応性前立腺癌を含む)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫から選択されるがんを有する。より具体的な実施形態では、対象はメラノーマまたは非小細胞肺癌を有する。ある特定の具体的な実施形態では、対象は、切除不能または転移性メラノーマを含むメラノーマを有する。他の具体的な実施形態では、対象は、扁平上皮及び非扁平上皮非小細胞肺癌の両方を含む非小細胞肺癌を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドの少なくとも1回の投与に続いて、対象は、例えば、約3mg/kgの用量で2週間毎に投与される抗PD-1抗体などの、PD-1拮抗薬を用いた治療を受けている。他の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドの少なくとも1回の投与に続いて、対象は、抗CTLA4抗体などのCTLA4拮抗薬を用いた治療を受けており、例えば、約1mg/kgの用量でのPD-1拮抗薬と同時に、3週間毎に、例えば、約3mg/kgの用量で投与される。さらに他の実施形態では、対象は、例えば、抗CTLA4抗体などのCTLA4拮抗薬を用いた治療を受けており、(例えば、約1mg/kgの用量での抗PD-1抗体などの)PD-1拮抗薬と同時に、例えば、約3mg/kgの用量で3週間毎に投与され、ここでは、CTLA4拮抗薬の4回の投与に続いて、さらなるCTLA4拮抗薬は投与されず、抗PD-1抗体などのPD-1拮抗薬は2週間毎に(例えば、約3mg/kgの用量で)投与される。他の具体的な実施形態では、抗PD-1抗体及び抗CTLA4抗体の両方が、約1mg/kgの用量で3週間毎に1回投与される。いくつかの特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約1mg/kgの用量で2週間毎に1回投与され、抗CTLA4抗体は、約1mg/kgの用量で6週間毎に1回投与される。他の特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約3mg/kgの用量で2週間毎に1回投与され、抗CTLA4抗体は、約1mg/kgの用量で12週間毎に1回投与される。さらに他の特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、約3mg/kgの用量で2週間毎に1回投与され、抗CTLA4抗体は、約1mg/kgの用量で6週間毎に1回投与される。本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、イピリムマブなどの抗CTLA4抗体は、アジュバント用量で、例えば約10mg/kgで、例えば、3週間毎に、例えば、4回の用量に対して投与することができる。本明細書に記載の実施形態のいずれでは、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体、または抗PD-1抗体及び抗CTLA4抗体の両方は、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドが投与される同じ日に投与されてもよい。
【0017】
ある特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドを投与される対象は、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドではないがん免疫治療を受けている適切な対照と比較して、対象は下記のうちの1つ以上を呈する:向上したコンプライアンス(例えば、治療中断、中止、または投薬量減少の発生率の低下、より高い治療完了率、より長い治療期間)例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50%、またはそれ以上向上したコンプライアンス;がん免疫治療の有効性の有意な減少がないこと(例えば、有効性の30、25、20、15、10、または5%未満の減少;あるいはいくつかの実施形態では、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%、もしくはそれ以上の有効性の増加のような有効性の増加);gi-irAEのグレードの低下(例えば、少なくとも1、2、3、4、または5グレードの平均グレードの低下;あるいは所定のグレード(NCI CTCAE4.03によって決定されるグレード)の頻度の減少)、gi-irAEの持続時間の短縮(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、または50%短縮した持続時間、例えば1、2、3、4、5、または6週間;1、2、3、4、5、または6ヶ月間、もしくはそれ以上長い期間の短縮)、gi-irAEの発症の遅延(1、2、3、4、5、または6週間、1、2、3、4、5、または6ヶ月間、もしくはそれ以上長い期間の遅延)、コルチコステロイド(経口または全身)、抗生物質(経口または非経口)、非コルチコステロイド免疫抑制薬(例えば、抗TNF-α剤)、下部内視鏡検査、入院、またはこれらの組み合わせの使用の減少もしくは解消(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、または99%減少);またはこれらの組み合わせ。
【0018】
関連する態様では、本発明はまた、例えば、(例えば、がん対象、例えば、がん免疫治療を受けている対象において)gi-irAEを治療または予防するためのポリペプチドの使用説明書と共にMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する有効量のポリペプチドを収容する容器を含む、本発明により提供される方法のいずれかを実行するために有用なキットも提供する。いくつかの実施形態では、このキットは、例えば、抗PD-1抗体及び/または抗CTLA4抗体などの本明細書に記載のがん免疫治療の成分をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によって提供される方法と一致する治療の投薬スケジュールの図式描写である。抗CTLA4抗体(イピリムマブ)抗PD-1抗体(ニボルマブ)併用治療と共に、抗α4β7抗体(ベドリズマブ)の投与が図示されている。
【
図2】本発明によって提供される方法と一致する治療の代替的な投薬スケジュールの図式描写である。抗α4β7抗体(ベドリズマブ)の投与が、抗CTLA4抗体(イピリムマブ)抗PD-1抗体(ニボルマブ)併用治療と共に描写されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、とりわけ、PD-1拮抗薬、CTLA4拮抗薬、またはPD-1拮抗薬及びCTLA4拮抗薬の両方を用いた治療などのがん免疫治療を受けている哺乳動物対象における大腸炎及び下痢などの胃腸免疫関連有害事象(gi-irAE)のための治療を提供する。これらの治療は、治療有効量の、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドを対象に投与することを包含する。「治療」は、治療的処置、すなわち、すでにgi-irAEを有するものに対するもの、ならびにgi-irAEの出現前に対象にMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドが投与される場合の予防的処置の両方を指す。治療的及び予防的処置の両方は、有害事象の重篤度の不在または軽減をもたらす治療を指すgi-irAEの「予防」をもたらすことができる。対象の集団において、治療が典型的に、ある特定のパーセンテージの有害事象、またはある特定のパーセンテージの重篤な有害事象をもたらすが、それよりも予防目的のために施される治療が、より低い有害事象のパーセンテージ(すなわち、より低いまたは軽減された有害事象のリスク)もしくはより低い重篤な有害事象のパーセンテージ(すなわち、より低いまたは軽減された有害事象が重篤なリスク)をもたらす場合、その集団はgi-irAEが予防される対象を含む。
【0021】
「免疫関連有害事象」(irAE)は、がん免疫治療などの免疫治療の本来の標的効果(on-target effect)によって誘発されるか、または悪化される望ましくない障害である。例示的なirAEとしては、大腸炎、下痢、皮膚炎、肝炎、内分泌障害、ブドウ膜炎、腎炎、及びこれらの組み合わせが挙げられる。IrAEは重篤であり、治療の遅延、中断または中止をもたらす可能性がある。特定の実施形態では、免疫関連有害事象は「胃腸免疫関連有害事象」(gi-irAE)であり、これは胃腸系のirAEであり、すなわち、がん免疫治療などの免疫治療の本来の標的効果によって誘発されるか、または悪化される胃腸系の望ましくない急性障害である。これにより、gi-irAEは、感染因子(例えば、ウイルス、細菌、真菌、または原生生物)、もしくは自発性及び/または慢性自己免疫疾患、例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病などの炎症性腸疾患によって引き起こされる胃腸障害と対比される。具体的なgi-irAEとしては、大腸炎、回腸炎及び下痢が挙げられる。いくつかの実施形態では、既存の感染性因子または自発性自己免疫疾患もしくはIBD、例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病は、がん免疫治療によって著しく悪化することになり、これらの実施形態ではgi-irAEである。ある特定の具体的な実施形態では、gi-irAEは、PD-1拮抗薬とCTLA4拮抗薬との併用などのがん免疫治療によって誘発される。
【0022】
「免疫療法(複数可)」は、例えば、1つ以上の生物製剤(抗体、治療用タンパク質、または改変細胞、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞などの細胞を含む)、1つ以上の小分子、またはこれらの組み合わせによる、病態を改善するために免疫系を活性化する治療的介入である。免疫治療としては、免疫系活性化因子(免疫系の正調節因子)を作動させること、免疫系抑制因子(例えば、チェックポイント阻害因子)を拮抗させること、または免疫系活性化因子を刺激して免疫系抑制因子を拮抗させることが挙げられる。「がん免疫治療」は、免疫系を活性化する、例えば、免疫系を逃れる腫瘍をもたらし得る免疫抑制性腫瘍微小環境に対抗するための抗がん免疫治療である。例示的ながん免疫治療としては、抗PD-1抗体などのPD-1(OMIM 600244、ヒト遺伝子ID 5133、Homologene3681)拮抗薬、抗CTLA4抗体などのCTLA4(OMIM123890、ヒト遺伝子ID1493、Homologene3820)拮抗薬、またはPD-1拮抗薬及びCTLA4拮抗薬の両方を用いた治療が挙げられる。他のがん免疫治療としては、CCR2拮抗薬(例えば、プロザリズマブ及び関連する抗体などの抗CCR2抗体)、pan-RAFキナーゼ阻害剤(すなわち、BRAF(wt)及び/またはBRAFV600イソ型よりもそれ以上阻害するキナーゼ阻害剤、例えば、国際公開第2009/006389号、国際公開第2015/148828号、国際公開第2010/064722号を参照されたい;例えば、毎週約300~約600mgの用量で投与することができるMLN2480、CAS 1096708-71-2)、ならびにPD-1拮抗薬及び/またはCTLA4拮抗薬との組み合わせを含む、これらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、がん免疫治療は、手術、化学療法、及び放射線などの他の抗がん治療と組み合わせることができる。
【0023】
「MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド」は、α4β7インテグリンとMAdCAM(OMIM102670、ヒトGeneID8174)との間の相互作用を阻害する。これらのポリペプチドには、α4インテグリン(OMIM192975、ヒトGeneID3676、Homologene37364)、β7インテグリン(OMIM147559、ヒトGeneID3695、Homologene20247)、またはα4β7インテグリン複合体を含むインテグリンタンパク質複合体に結合する抗体が挙げられる。MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害して、α4β7インテグリン活性を阻害するポリペプチドを投与することが、「抗α4β7インテグリン療法」である。ある特定の具体的な実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドは、抗α4β7インテグリン抗体であり、例えば、ベドリズマブまたは関連する抗体、もしくはその抗原結合断片などの、α4またはβ7にだけに、他方の存在下で結合する抗体などである。他の実施形態では、抗α4β7インテグリン抗体は、AMG181(α4β7に特異的、例えば、米国特許第8444981号を参照)であり、エトロリズマブ(β7に特異的、CAS1044758-60-2、KEGG D09901、PubChem 24490613;例えば、米国特許第7528236号を参照)、ナタリズマブ(α4に特異的、TYSABRI(登録商標)、CAS189261-10-7、KEGG D06886、PubChem 49661786、例えば、米国特許第5840299号を参照)、上記のいずれかの関連する抗体、上記のいずれかの抗原結合断片、またはこれらの組み合わせである。抗α4β7インテグリン抗体を用いる治療法は、米国特許出願公開第2005/0095238号、国際公開第2012151248号、及び国際公開第2012151247号に記載されている。
【0024】
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害し、本発明に一致して使用することができる他のポリペプチドとしては、抗MAdCAM抗体(例えば、米国特許第8,277,808号、PF-00547659または国際公開第2005/067620号に記載の抗体を参照);可溶性インテグリンサブユニットを含む、Fc融合物などの融合タンパク質を含む、可溶性α4インテグリン、可溶性β7インテグリン、または可溶性α4β7インテグリン複合体などの可溶性インテグリンサブユニット(例えば、膜貫通ドメインを欠くか、または膜貫通及び細胞内ドメインを欠くα4及び/またはβ7を含む複合体);及び、例えば、米国特許第7,803,904号に記載されているような、MAdCAM-FcキメラなどのMAdCAMを含む融合タンパク質を含む、可溶性MAdCAM(例えば、膜貫通ドメインを欠くか、または膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを欠く)が挙げられる。
【0025】
本発明によって提供される方法は、ある特定の実施形態では、抗体の使用を必然的に伴う。「抗体」は、免疫グロブリンまたはその一部を指し、供給源、種起源、製造方法、及び特性に無関係に、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。非限定的な例として、「抗体」という用語は、ヒト、オランウータン、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、及びニワトリ抗体を含む。本用語は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、非特異性、ヒト化、ラクダ化、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異型、及びCDR移植(grafted)抗体を含むが、これらに限定されない。本発明の目的のために、特に明記しない限り、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、VHH(ナノボディとしても称される)などの抗体断片、及び抗原結合機能を保持する他の抗体断片もまた含まれる。「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部または全てに特異的に結合するか、または相補的な領域を含む抗体の部分を指す。抗原が大きい場合、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合し得る。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体の抗原結合ドメインとの特異的相互作用を担う抗原分子の一部分である。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメイン(例えば、VHドメインからなる、いわゆるFd抗体断片)によって提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むことができる。抗体可変領域は、抗体の特異性を一緒に決定する相補性決定領域(CDR)を含む。ラクダ及びラマ(Camelidae,camelids)由来の抗体には、重鎖のみによって形成され、軽鎖を欠いている独自の種類の抗体を含む。このような抗体の抗原結合部位は、VHHとして称される単一のドメインである。このトポロジーを有するように生じさせ、または操作された抗体は、「ラクダ化抗体」または「ナノボディ」と呼ばれている。例えば、参照により組み込まれる、米国特許第5,800,988号及び同第6,005,079号ならびに国際公開第94/04678号及び国際公開第94/25591号を参照されたい。特定の実施形態では、本発明によって提供される方法において使用するための抗体は、ヒト、ヒト化またはキメラである。本発明によって提供される方法において使用するための抗体は、異なる実施形態では、ヒト:IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、それらのキメラを含む、異なるフレームワーク領域を使用することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本出願で論じた特定の抗体、または関連する抗体は、本発明によって提供される方法において使用される。参照抗体の(「関連する抗原結合断片」を包含する)「関連する抗体」である抗体は、標的抗原への結合に対して参照抗体と競合するか(例えば、いくつかの実施形態では、同じ、重複する、または隣接するエピトープに対する競合)、参照抗体のエピトープ特異性を有するか、参照抗体の相補性決定領域(CDR)を含むか(いくつかの実施形態では、CDR全体に1、2、3、4、または5個までの保存的アミノ酸置換、または各CDRに1つまたは2つまでの保存的置換が存在し得る)、または参照抗体の可変重鎖及び可変軽鎖ドメインを含む(または、可変ドメインに対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99%、またはそれ以上のアミノ酸同一性を有することができ、任意のアミノ酸変化がフレームワーク領域にあり、及び保存的または非保存的であり得る)、抗体(及びその抗原結合断片)を包含する。いくつかの実施形態では、保存的置換はBLASTpのデフォルトパラメータによって決定され、一方、他の実施形態では、保存的突然変異はクラス置換の範囲内にあり、これらのクラスは脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、ヒドロキシルまたは硫黄/セレン含有(セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン)、環状(プロリン)、芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、塩基性(ヒスチジン、リジン、アルギニン)、及び酸性ならびにアミド(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)である。当業者であれば、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が、実質的に生物学的活性を変化させないことを認識する(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。加えて、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を妨害する可能性が低い。これにより、例えば、ベドリズマブに関連する抗体は、異なる実施形態では、例えば、α4β7インテグリンへの結合に対してベドリズマブと競合する、ベドリズマブのエピトープ特異性を有する、ベドリズマブの相補性決定領域(CDR)を含むか、またはベドリズマブの可変重鎖及び可変軽鎖ドメインを含み得る。
【0027】
本発明によって提供される方法のいくつかの実施形態では、抗体は、免疫グロブリン以外のスキャフォールドに基づく抗原結合分子で置き換えることができる。例えば、当該分野において既知の非免疫グロブリンスキャフォールドとしては、小モジュラー免疫薬(例えば、米国特許出願公開第20080181892号及び同第20080227958号を参照されたい)、テトラネクチン、フィブロネクチンドメイン(例えば、AdNectinsであり、2007年4月12日に公開された米国特許出願公開第2007/0082365号を参照されたい)、プロテインA、リポカリン(例えば、米国特許第7,118,915号を参照されたい)、アンキリンリピート、及びチオレドキシンが挙げられる。非免疫グロブリンスキャフォールドに基づく分子は、一般的に、ファージディスプレイ法(例えば、Hoogenboom,Method Mol.Biol.178:1-37(2002)を参照されたい)、リボソームディスプレイ法(例えば、Hanes et al.,FEBS Lett.450:105-110(1999)及びHe and Taussig,J.Immunol.Methods 297:73-82(2005)を参照されたい)、または高親和性結合配列を特定するための当技術分野において既知の他の技術(Binz et al.,Nat.Biotech.23:1257-68(2005)、Rothe et al.,FASEB J.20:1599-1610(2006)、及び米国特許第7,270,950号、同第6,518,018号、ならびに同第6,281,344号もまた参照されたい)によるライブラリのインビトロ選択によって生成される。
【0028】
がん免疫治療
ある特定の実施形態では、がん免疫治療は、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブなどのPD-1拮抗薬による、抗CTLA4抗体、例えば、イピリムマブまたはトレミリムマブなどのCTLA4拮抗薬による、もしくはPD-1拮抗薬及びCTLA4拮抗薬の両方による治療を含む。他のがん免疫治療は、CCR2(ヒトGeneID 729230)拮抗薬(例えば、抗CCR2抗体)、pan-RAFキナーゼ阻害剤(例えば、MLN2480、CAS1096708-71-2)、及びPD-1拮抗薬及び/またはCTLA4拮抗薬の併用を含む、これらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、がん免疫治療は、手術、化学療法及び放射線などの他の抗がん治療と併用することができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、がん免疫治療は、T細胞共受容体を調節することを含むことができる。いくつかの実施形態では、これは、可溶性媒介物質(例えば、CD28、41BB、OX40、CD27、GITR、CD137、HVEMまたはこれらの組み合わせ)を含む1つ以上の活性化受容体または免疫調節物質を刺激すること、可溶性媒介物質(例えば、CTLA4、BTLA-4、PD-1、PDL-1、PDL-2、IDO、LAG3、ICOS、VISTA、TIM3、CSF-1Rまたはこれらの組み合わせ)を含む1つ以上の阻害性受容体または免疫調節物質、もしくはこれらの組み合わせを拮抗させること、例えば、1つ以上の活性化受容体を作動させること、1つ以上の阻害性受容体を拮抗させることを包含する。いくつかの実施形態では、がん免疫治療は、B7及びCD28関連(例えば、PDL-1、B7H3、B7H4、PD-1、CTLA4、またはこれらの組み合わせ)、TNF/TNFR関連(例えば、VISTA、CD40、CD40L、4-1BB、OX40、CD27、GITR、またはこれらの組み合わせ)、抑制骨髄(例えば、CSF1R)、可溶性媒介物質(例えば、IDO、CXCR4、またはこれらの組み合わせ)、NK細胞(例えば、KIR’s、NKG2A/D、CD244、またはこれらの組み合わせ)、Igスーパーファミリー(例えば、LAG3、TIM3、またはこれらの組み合わせ)、及び上記の組み合わせなどの標的クラスを調節することを含む。これにより、特定の実施形態では、がん免疫治療は、4-1BB(ヒトGeneID3604)、B7H3(ヒトGeneID80381)、B7H4(ヒトGeneID 79679)、CD27(ヒトGeneID 939)、CD40(ヒトGeneID 958)、CD40L(ヒトGeneID 959)、CD244(ヒトGeneID 51744)、CSF1R(ヒトGeneID 1436)、CTLA4、CXCR4(ヒトGeneID 7852)、GITR(ヒトGeneID 8784)、IDO(ヒトGeneID 3620)、ICOS(ヒトGeneID 29851)、KIR’s(KIR2DL1ヒトGeneID 3802、KIR2DL3ヒトGeneID 3804)、NKG2A(ヒトGeneID 3821)、NKG2D(ヒトGeneID22914)、OX40(ヒトGeneID 7293)、PD-1、PDL-1(ヒトGeneID 29126)、PD-L2(ヒトGeneID80380)、TIM-3(ヒトGeneID 84868)、VISTA(ヒトGeneID 64115)、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上の調節物質を提供すること、例えば、単一の標的のための1つ以上の調節物質、または2つ以上の標的のための1つ以上の調節物質を提供することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、例えば、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドが指示される本発明に一致するがん免疫治療は、OX40作動薬、CD27作動薬、GITR作動薬、4-1BB作動薬、またはCD40作動薬などの免疫活性化を作動させるがん免疫治療、及びPD-1またはPD-L1拮抗薬、ICOS拮抗薬、LAG3拮抗薬、IDO1拮抗薬、またはTIM3拮抗薬などの1つ以上の負のチェックポイントを拮抗させるもの、または例えばGITR作動薬とPD1拮抗薬の組み合わせなどの上記のいずれかの組み合わせを含むことができる。そのような分子は、例えば、OX40(CD134)、CD27、CD40などの細胞表面受容体のための、抗体または抗体関連物質などの大きなもの、または細胞内標的もしくは酵素標的のための、IDO1などの小さなものとすることができる。
【0031】
ある特定の実施形態では、例えば、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドが指示される本発明に一致するがん免疫治療は、CTLA4拮抗薬(イピリムマブなど)と、PD-1拮抗薬(例えば、ニボルマブ)、OX40作動薬(MEDI6469抗体であり、Powderly et al.,J.Clin.Oncol.33,2015(suppl;abstr TPS3091),Eggermont and Robert,Nat.Rev.Clin.Oncol.11:181-2(2014)を参照されたい)、CD27作動薬(例えば、バルリルマブ、CELLDEX Therapeuticsであり、例えば、Ramakrishna et al.,J.Immunother.Cancer3:27(2015)、米国特許第9169325号を参照されたい)、KIR拮抗薬(例えば、リリルマブであり、例えば、CAS:1000676-41-4、KEGG:D10444、PubChem:172232537を参照されたい)、またはIDO拮抗薬(例えば、INCB024360(エパカドスタット)であり、例えば、PubChem914471-09-3を参照されたい)との組み合わせ;PD-1拮抗薬(例えば、ニボルマブ)と、CTLA4拮抗薬(例えば、イピリムマブ)または41BB作動薬(例えば、PF05082566)との組み合わせ;もしくは前述の組み合わせから選択される。
【0032】
ある特定の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体は、gi-irAEの1つ以上の症状の出現前に、がん免疫治療を用いて治療される患者に一次予防として投与される。他の実施形態では、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体は、がん免疫治療の後または治療中に、gi-irAEの1つ以上の症状に応じて治療設定において投与される。予防または治療のために、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体を使用するか否かの決定は、がん免疫治療単独の挙動から生じ得る。例えば、がん免疫治療が患者の30%未満でgi-irAEを引き起こす場合、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体は、治療設定で投与される。がん免疫治療が患者の30%~50%でgi-irAEを引き起こす場合、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体は、予防設定または治療設定のいずれかで投与される。がん免疫治療が患者の50%より多くでgi-irAEを引き起こす場合、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体は、予防設定で投与される。
【0033】
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体が、予防設定で、または任意に治療設定で投与され得るがん免疫治療の例は、イピリムマブまたはトレミリムマブなどの抗CTLA4抗体などの、CTLA4拮抗薬を含むがん免疫治療である。例えば、例えば、メラノーマ、非小細胞肺癌または頭頚部癌におけるCTLA4拮抗薬とPD1拮抗薬との組み合わせ;例えば、転移性結腸直腸癌などの固形腫瘍癌における、トレメリムマブなどのCTLA4拮抗薬と、MEDI6469抗体などのOX40作動薬との組み合わせ;例えば、固形腫瘍癌またはリンパ腫における、CTLA4拮抗薬と、リリルマブなどのKIR拮抗薬との組み合わせ;例えば、メラノーマにおける、イピリムマブなどのCTLA4拮抗薬と、バルリルマブなどのCD27作動薬との組み合わせ;例えば、メラノーマにおける、イピリムマブなどのCTLA4拮抗薬と、INCB024360(エパカドスタット)などのIDO拮抗薬との組み合わせ;または、例えば、EGFR突然変異型非小細胞肺癌における、トレメリムマブなどのCTLA4拮抗薬と、エルロチニブまたはゲフィチニブなどの上皮増殖因子受容体(EGFR)拮抗薬との組み合わせは、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体を使用することができ、予防設定で、または任意に治療設定で投与される。
【0034】
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体が治療設定で投与されるがん免疫治療の例は、PD-1拮抗薬、例えばニボルマブまたはペンブロリズマブなどの抗PD-1抗体を含むがん免疫治療である。例えば、頭頚部癌(例えば、HNSCC)などの固形腫瘍癌における、ニボルマブなどのPD-1拮抗薬と、リリルマブなどのKIR拮抗薬との併用;頭頚部癌、卵巣癌、結腸直腸癌、腎細胞癌または膠芽細胞腫などの固形腫瘍癌における、ニボルマブなどのPD-1拮抗薬と、バルリルマブなどのCD27作動薬との併用;または、例えば、腎細胞癌及び小細胞肺癌などの固形腫瘍癌における、ペンブロリズマブなどのPD-1拮抗薬と、PF-05082566(ウトミルマブ)などの4-1BB作動薬との併用は、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体を使用することができ、治療設定で投与される。MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド、例えば、ベドリズマブのCDRを含む抗体が治療設定で投与されるがん免疫治療の追加の例は、薬剤、例えば、TIM3、4-1BB、B7H3、B7H4、CCR2、CD27、CD40、CD40L、CD244、CSF1R、CXCR4、GITR、IDO、ICOS、KIR(例えば、KIR2DL1またはKIR2DL3)、NKG2A、NKG2D、OX40、RAFキナーゼ、またはVISTAを標的とする単剤を含むがん免疫治療である。例えば、ニボルマブなどのPD-1拮抗薬と、GITR活性化因子との併用は、例えば、卵巣癌の治療に使用されてもよい。
【0035】
PD-1拮抗薬
プログラム死1タンパク質(PD-1)は、免疫調節及び末梢性寛容の維持において重要な役割を果たすことが認識されている。PD-1はナイーブT細胞、B細胞及びNKT細胞で適度に発現され、リンパ球、単球及び骨髄細胞上でのT/B細胞受容体シグナル伝達によって上方制御される(Sharpe,A.H,et al.(2007)Nature Immunology;8:239-245)。
【0036】
「PD-1拮抗薬」は、T細胞、がん細胞、マクロファージ及び抗原提示細胞(APC)などの相互作用する細胞型の表面上に発現されるPD-1及びその同族のリガンド(例えば、PD-L1及び/またはPD-L2)との相互作用を調節する(特定の実施形態では、遮断または阻害する)任意の化合物または生物学的分子を意味する。PD-1(ヒトGeneID 29126)及びそのリガンドの代替名または同義語としては、PD-1についてはPDCD1、PD1、CD279及びSLEB2が挙げられ、PD-LlについてはPDCD1L1、PD-L1、B7H1、B7-4、CD274及びB7-Hが挙げられ、PD-L2についてはPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc及びPD273が挙げられる。ヒト対象が処置される本発明の治療方法、薬剤及び使用のいずれにおいても、PD-1拮抗薬は、ヒトPD-LlのヒトPD-1への結合を阻害または遮断し、好ましくはヒトPD-Ll及びPD-L2のヒトPD-1への結合を阻害または遮断する。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP005009で見ることができる。ヒトPD-Ll及びPD-L2アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP_054862及びNP_079515にそれぞれ見ることができる。
【0037】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいずれかにおいて有用なPD-1拮抗薬は、PD-1またはPD-L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD-1またはヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)、またはその抗原結合断片を含む。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってもよく、ヒト定常領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒト定常領域はIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域からなる群から選択され、いくつかの実施形態では、ヒト定常領域はIgG1またはIgG4定常領域である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’-SH、F(ab’)2、scFv及びFv断片からなる群から選択される。PD-1拮抗薬を投与してPD-1活性を阻害することは、「抗PD-1治療」である。
【0038】
ヒトPD-1に結合し、本発明の治療方法、薬剤及び使用に有用なmAbの例は、米国特許第7521051号、米国特許第8779105号、米国特許第8008449号、米国特許第8900587号、米国特許第8952136号、米国特許第8354509号、米国特許第8735553号、米国特許第9102728号、米国特許第8993731号、米国特許第9102727号、米国特許第9181342号、米国特許第8927697号、米国特許第8945561号、米国特許第748802号、米国特許第7322582号、米国特許第7524498号及び米国特許第9205148号に記載されている。本発明の治療方法、薬剤及び使用にPD-1拮抗薬として有用な特異的抗ヒトPD-1mAbとしては、商標名KEYTRUDA(登録商標)で米国において市販されている、ペムブロリズマブ(旧MK-3475及びラムブロリズマブであり、CAS:1374853-91-4、KEGG:D10574を参照されたい)、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,pages161-162(2013)に記載の構造を有するヒト化IgG4 mAbまたは関連する抗体、商標名OPDIVO(登録商標)で米国において市販されている、ニボルマブ(旧ONO-4538、MDX1106またはBMS-936558であり、CAS:946414-94-4、KEGG:D10316、PubChem:163312346を参照されたい)、WHO Drug Information,Vol.27,No.1,pages 68-69(2013)に記載の構造を有するヒトIgG4 mAbまたは関連する抗体、ピディリズマブ(CT-011、hBATまたはhBAT-1としても知られており、CAS:1036730-42-3、PubChem:172232483、KEGG:D10390を参照されたい)、WHO Drug Information,Vol.26,No.4,page434(2012)に記載の構造を有するヒトIgG4 mAbまたは関連する抗体、及び国際公開第2008/156712号に記載されているヒト化抗体h409A11、h409A16及びh409A17または関連する抗体、PDR-100、SHR-1210、REGN-2810、MEDI-0680、BGB-108、PF-06801591が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ヒトPD-L1に結合し、本発明の治療方法、医薬及び使用において有用なmAbの例は、国際公開第2013/019906号、国際公開第2010/077634号、及び米国特許第8383796号に記載されている。本発明の治療方法、薬剤及び使用におけるPD-1拮抗薬として有用な特異的抗ヒトPD-L1mAbとしては、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、BMS-936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アベルマブ(MSB0010718C)及び国際公開第2013/019906号の配列番号24及び配列番号21それぞれの重鎖及び軽鎖可変領域を含むか、またはこれらの可変ドメインのCDRを含む抗体が挙げられる。
【0040】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいずれかにおいて有用な他のPD-1拮抗薬としては、PD-1またはPD-L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD-1またはヒトPD-L1、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含有する融合タンパク質に特異的に結合するイムノアドヘシンが挙げられる。PD-1に特異的に結合するイムノアドヘシン分子の例は、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されている。本発明の治療方法、薬剤及び使用においてPD-1拮抗薬として有用な特異的融合タンパク質には、PD-L2-FC融合タンパク質であり、ヒトPD-1に結合するAMP-224(B7-DCIgとしても知られている)が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、PDR-001、SHR-1210、AMP-224、REGN-2810、MEDI-0680、BGB-108、PF-06801591、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びBMS-936559、ならびにAMP-224から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、PDR-001、SHR-1210、AMP-224、REGN-2810、MEDI-0680、BGB-108、及びPF-06801591、ならびにAMP-224から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、ペムブロリズマブ及びニボルマブから選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬はニボルマブである。
【0045】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬はペムブロリズマブである。
【0046】
いくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びBMS-936559から選択される。
【0047】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、ニボルマブの抗原結合断片を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0048】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、PD-1拮抗薬は、本発明の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、ペムブロリズマブの抗原結合断片を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0049】
本発明の治療方法、薬剤及び使用の他の実施形態では、PD-1拮抗薬は、ヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、(a)本明細書に記載の抗体またはその変異体の重鎖可変領域、及び(b)本明細書に記載の抗体またはその変異体の軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、変異体の重鎖可変領域配列は、フレームワーク領域(すなわち、CDRの外側)に17個までの保存的アミノ酸置換を有することを除いて、参照配列と同一であり、好ましくはフレームワーク領域に10、9、8、7、6または5個未満の保存的アミノ酸置換を有する。ある特定の実施形態では、変異体の軽鎖可変領域配列は、フレームワーク領域(すなわち、CDRの外側)に5個までの保存的アミノ酸置換を有することを除いて、参照配列と同一であり、好ましくはフレームワーク領域に4、3、または2個未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0050】
CTLA4拮抗薬
ヒトCTLA4(CYTOTOXIC T LYMPHOCYTE-ASSOCIATED4、別名、CD152)は、活性化T細胞上で発現される免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質である。ヒト型CTLA4遺伝子は、1980年代後半及び1990年代初頭にクローン化された。CTLA4の配列及び相同体は周知であり、容易に入手可能である。例えば、参照により組み込まれる、OMIM123890、ヒト遺伝子ID1493、参照配列のHomologene3820を参照されたい。可溶性CTLA4は、少なくとも部分的にCD28介在性T細胞活性化を阻止するように作用し、これにより、CTLA4を阻害することにより、とりわけ、T細胞活性化を抑制し、免疫系を活性化することができ、次に、がん細胞を攻撃することができる。CTLA4を阻害する1つの方法は、抗CTLA4抗体またはその抗原結合断片を用いることである。CTLA4活性を阻害するためのCTLA4拮抗薬の使用は、「抗CTLA4療法」である。CTLA4拮抗薬は、抗CTLA4抗体を含む。
【0051】
特定の実施形態では、本発明により提供される方法で使用するための抗CTLA4抗体は、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb Companyによって登録された商標名YERVOY(登録商標)で販売されている)または関連する抗体もしくはその抗原結合断片である。米国特許第6,984,720号及び同第7,605,238号は、イピリムマブの配列を提供し、これらは参照により組み込まれる。CAS477202-00-9、PubChem47206447、及びKegg D04603もまた参照されたい。
【0052】
本発明により提供される方法における抗CTLA4治療のための他の抗体としては、米国特許第6,682,736号及び同第8,883,984号(Pfizer、Amgen:トレメリムマブ/チシリムマブについて記載している)に記載されているもの及び関連する抗体;米国特許第7,034,121号(Genetics Institute)に記載されているもの及び関連する抗体;米国特許出願公開第20030086930A1号に記載されているもの及び関連する抗体;特許出願公開第WO2006029219A2号に記載されているもの及び関連する抗体;B7リガンドに対するCTLA4の結合を阻害することなくT細胞応答を増加させる米国特許第8,263,073号に記載されているもの及び関連する抗体;可溶性形態のCTLA4に特異的な米国特許第8,697,845号に記載されているもの及び関連する抗体;ヒト化された米国特許出願公開第20140105914号に記載されているもの及び関連する抗体;国際公開第2016015675号に記載されているもの及び関連抗体が挙げられる。上記の刊行物は、本発明によって提供される方法において有用な抗CTLA4抗体、ならびに抗体と互いの組み合わせ及び刊行物に記載されている組み合わせレジメンの説明のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
参照により組み込まれる米国特許第9,084,776号は、本発明と一致して使用するために適合され得る、すなわち、抗PD-1療法/抗CTLA4併用療法からのgi-irAEを改善するためのMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する1つ以上のポリペプチドを投与することにより適合され得るがん治療のための抗PD-1抗体をCTLA4抗体と併せて使用する併用方法を記載している。米国特許第8,685,394号に記載される化学療法剤と共に抗CTLA4抗体を使用する併用方法はまた、本発明において使用するために、任意に、例えば、抗PD-1治療によるものも含まれ得る、例えば、抗CTLA4併用治療からのgi-irAEを改善するために、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する1つ以上のポリペプチドを投与することにより適合させることができる。また、米国特許第8,226,946号に記載されている抗CTLA4抗体と光活性化療法と併用する方法は、本発明により提供される方法に同様に適合させることができ、例えば、光活性化治療は、抗CTLA4治療及び/または抗PD-1治療と組み合わせることができ、そしてMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する1つ以上のポリペプチドが提供され、gi-irAEを改善される。米国特許出願公開第20100330093号明細書は、様々なCTLA4抗体とチモシンペプチドとの組み合わせを記載しており、これらの抗体及び関連する抗体は、単独で、または本発明と一致するチモシンペプチドと併用して使用することができる。米国特許第8,475,790号に記載されている抗CTLA4抗体と抗CD137(作動薬)との併用療法もまた、本発明によって提供される方法によって、例えば、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する1つ以上のポリペプチドを投与して、この併用からのgi-irAEを改善することによって増強させることもできる。本発明によって提供される方法から、例えば、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害してgi-irAEを改善する1つ以上のポリペプチドを投与することによって恩恵を被ることができる追加の抗CTLA4治療併用療法は、米国特許第20130156768A1号(抗CTLA4治療及びBRAF阻害剤を用いた併用療法を記載している);国際公開第2013019620A2号(抗CTLA4治療、BRAF阻害剤、及びMEK阻害剤得尾用いた併用治療を記載している);米国特許第20150283234A1号(抗CTLA4治療及び抗KIR治療の併用);米国特許第20140323533A1号(チューブリン調節物質と併用される抗CTLA4);国際公開第2015058048A1号(VEGF拮抗薬との併用を記載している);米国特許第20150328311号(MEDI4736との併用を記載している);国際公開第2015125159A1号(IL-2RP作動薬との併用、任意に抗PD-1治療との併用を記載している)に記載されている。
【0054】
米国特許第9,062,111号に記載されている抗CTLA4治療投薬スケジュールは、対象からの抗CTLA4抗体のクリアランスを減少させる米国特許出願公開第20150079100A1号に記載されている方法と同様に、本発明によって提供される方法において使用することができ、参照により組み込まれる。
【0055】
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチド
細胞表面分子「α4β7インテグリン」または「α4β7」は、α4鎖(CD49D、ITGA4)及びβ7鎖(ITGB7)のヘテロ二量体である。各鎖は、代替的なインテグリン鎖を有するヘテロ二量体を形成して、α4β1またはαEβ7を形成することができる。ヒトα4及びα7遺伝子((GenBank(国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information),Bethesda,MD)RefSeq登録番号がそれぞれNM_000885及びNM_000889)は、Bリンパ球及びTリンパ球、具体的にはメモリーCD4+リンパ球によって発現される。多くのインテグリンに特有であるα4β7は、休止状態または活性化状態のいずれかで存在することができる。α4β7インテグリンのリガンドとしては、血管細胞接着分子(VCAM)、フィブロネクチン、及び粘膜アドレシン(MAdCAM(例えば、MAdCAM-1))が挙げられる。α4β7インテグリンは、腸間膜リンパ節及び消化管粘膜の内皮に発現される粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)との接着相互作用を通して、リンパ球のGI粘膜及び腸管関連リンパ組織(GALT)への移動を媒介する。
【0056】
上記のように、抗α4β7抗体、抗MAdCAM抗体、可溶性インテグリンサブユニット(Fc融合などの融合タンパク質を含む)、及び可溶性MAdCAM(Fc融合タンパク質などの融合タンパク質を含む)が含まれる様々なポリペプチドが、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害することができる。これらのポリペプチドのいずれかのMAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するための使用は、「抗α4β7治療」である。
【0057】
抗α4β7インテグリン抗体
本発明によって提供される方法において使用するための抗α4β7抗体は、ある特定の実施形態では、α4鎖上のエピトープ(例えば、ヒト化MAb21.6(Bendig et al.、米国特許第5,840,299号)、β7鎖上のエピトープ(例えば、FIB504またはヒト化誘導体(例えば、Fong et al.、米国特許第7,528,236号))、またはα4鎖とβ7鎖との会合によって形成される組み合わせエピトープに結合することができる。一態様では、抗体はα4β7インテグリン複合体に特異的であり、例えば、抗体はα4β7複合体上の組み合わせエピトープに結合するが、鎖が互いに会合していない限り、α4鎖またはβ7鎖上のエピトープに結合しない。α4インテグリンとβ7インテグリンとの会合は、例えば、エピトープを共に含む両方の鎖上に存在する近接残基をもたらすか、適切なインテグリンパートナーの非存在下またはインテグリン活性化の非存在下では抗体結合にアクセスできないエピトープ結合部位を、一方の鎖、例えばα4インテグリン鎖またはβ7インテグリン鎖上に立体配座的に露出させることによって、組み合わせエピトープを作り出すことができる。別の態様では、抗α4β7抗体は、α4インテグリン鎖とβ7インテグリン鎖の両方に結合し、これにより、α4β7インテグリン複合体に特異的である。α4β7インテグリン複合体に特異的なこのような抗体は、α4β7に結合するがα4β1に結合することができず、及び/または、例えば、αEβ7に結合することができない。別の態様では、抗α4β7抗体は、Act-1抗体と同じまたは実質的に同じエピトープに結合する(Lazarovits,A.I.et al.,J.Immunol.,133(4):1857-1862 (1984)、Schweighoffer et al.,J.Immunol.,151(2):717-729,1993、Bednarczyk et al.,J.Biol.Chem.,269(11):8348-8354,1994)。ネズミAct-1モノクローナル抗体を産生するマウスACT-1ハイブリドーマ細胞株は、Millennium Pharmaceuticals,Inc.,40Landsdowne Street,Cambridge,MA 02139,U.S.A.に代わって、American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA.20110-2209,U.S.A.において、受託番号PTA-3663として、2001年8月22日にブダペスト条約の規定の下で寄託された。別の態様では、抗α4β7抗体は、米国特許出願公開第2010/0254975号に提供されるCDRを使用するヒト抗体またはα4β7結合タンパク質である。
【0058】
一態様では、抗α4β7抗体は、そのリガンド(例えば、粘膜アドレシン、例えば、MAdCAM(例えば、MAdCAM-1)、フィブロネクチン及び/または血管アドレナリン(VCAM))の1つ以上へのα4β7の結合を阻害する。霊長類MAdCAMは、PTC出願国際公開第96/24673号に記載されており、その教示全体が、この参照により本明細書に組み込まれる。別の態様では、抗α4β7抗体は、VCAMの結合を阻害することなく、MAdCAM(例えば、MAdCAM-1)及び/またはフィブロネクチンへのα4β7の結合を阻害する。
【0059】
ベドリズマブ及び関連抗体
ある特定の実施形態では、本発明によって提供される方法で使用するための抗α4β7抗体は、ベドリズマブ(CAS登録番号943609-66-3、American Chemical Society)または関連抗体である。いくつかの特定の実施形態では、抗α4β7抗体は、上で論じたマウスAct-1抗体のヒト化バージョンである。一般的に、ヒト化抗α4β7抗体は、マウスのAct-1抗体の3つの重鎖相補性決定領域(CDR、CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5、及びCDR3、配列番号6)と好適なヒト重鎖フレームワーク領域とを含有する重鎖を含有し、マウスのAct-1抗体の3つの軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8、及びCDR3、配列番号9)と好適なヒト軽鎖フレームワーク領域とを含有する軽鎖も含有するであろう。ヒト化Act-1抗体は、アミノ酸置換を伴うか、または伴わないコンセンサスフレームワーク領域を含む、任意の好適なヒトフレームワーク領域を含有することができる。例えば、フレームワークアミノ酸のうちの1つ以上は、マウスAct-1抗体中の対応する位置におけるアミノ酸などの別のアミノ酸に置き換えることができる。ヒト定常領域またはその一部は、存在するならば、対立遺伝子変異型を含む、ヒト抗体のκまたはλ軽鎖、及び/またはγ(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(例えば、α1、α2)、δまたはε重鎖に由来することができる。特定の定常領域(例えば、IgG1)、その変異型またはその一部は、エフェクター機能に適合させるために選択することができる。例えば変異した定常領域(変異型)は、Fc受容体への結合及び/または補体に結合する能力を最小化するために、融合タンパク質に組み込むことができる(例えば、Winter et al.,GB 2,209,757B;Morrison et al.,WO89/07142;Morgan et al.,WO94/29351,Dec.22,1994を参照されたい)。Act-1抗体のヒト化バージョンは、PCT公開第WO98/06248号及び同第WO07/61679号に記載されており、これらのそれぞれの教示全体が、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
他の特定の実施形態では、本発明によって提供される方法で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、ベドリズマブの重鎖可変領域(例えば、配列番号1のアミノ酸20~140を含む)と、ベドリズマブまたは変異型配列の軽鎖可変領域(例えば、配列番号2のアミノ酸20~131または配列番号3のアミノ酸1~112を含む)とを含む。必要に応じて、好適なヒト定常領域(複数可)が存在することができる。例えば、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖と、配列番号3のアミノ酸1~219を含む軽鎖とを含むことができる。別の例では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖とを含むことができる。ヒト残基に切り替えられた2つのマウス残基を有するベドリズマブのヒト化軽鎖は、LDP-02の軽鎖よりもヒトに近い(配列番号2を3と比べて)。加えて、LDP-02は、いくらか疎水性の柔軟なアラニン114及び親水性部位(アスパラギン酸115)を有し、これらは、ベドリズマブでは、それぞれ、わずかに親水性のヒドロキシル含有スレオニン及び疎水性の潜在的に内向きのバリン残基に置き換えられている。
【0061】
抗体配列へのさらなる置換は、例えば、重鎖及び軽鎖フレームワーク領域に対する突然変異、例えば、ヒトGM607 CLカッパ軽鎖可変領域の残基2上のイソロイシンのバリンへの突然変異;ヒトGM607 CLカッパ軽鎖可変領域の残基4上のメチオニンのバリンへの突然変異;ヒト21/28 CL重鎖可変領域の残基24上のアラニンのグリシンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基38でのアルギニンのリシンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基40でのアラニンのアルギニンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基48上のメチオニンのイソロイシンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基69上のイソロイシンのロイシンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基71上のアルギニンのバリンへの突然変異;21/28 CL重鎖可変領域の残基73上のスレオニンのイソロイシンへの突然変異;またはこれらの任意の組み合わせ;及び重鎖CDRのマウスAct-1抗体のCDR(CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5、及びCDR3、配列番号6)による置き換え、ならびに軽鎖CDRのマウスAct-1抗体の軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8、及びCDR3、配列番号9)による置き換えとすることができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供される方法で使用するための抗α4β7ヒト化抗体は、配列番号1のアミノ酸20~140と少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する(例えば、100%同一の)重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸20~131または配列番号3のアミノ酸1~112と少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する(例えば、これらの参照配列のいずれかと100%同一の)軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗α4β7ヒト化抗体は、前述の参照配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のアミノ酸置換を有してもよい。いくつかの実施形態では、任意のアミノ酸置換は、保存的置換である。他の実施形態では、アミノ酸置換は、非保存的である。ある特定の実施形態では、アミノ酸置換は、フレームワーク領域内にある。他の実施形態では、置換はCDR内にあることができ、これらの実施形態では、置換は保存的であることが好ましい。アミノ酸配列同一性は、デフォルトパラメータを使用するLasergeneシステム(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)またはBLASTpなどの好適な配列アライメントアルゴリズムを用いて決定することができる。ある特定の実施形態では、本発明によって提供される方法で使用するための抗α4β7抗体は、ベドリズマブ(アメリカ化学会CAS登録番号943609-66-3)である。
【0063】
ベドリズマブ及び関連抗体は、静脈内注射、皮下注射、または注入のうちの1つ以上によってなど、任意の好適な方法によって、本発明によって提供される方法で投与されてもよい。静脈内注射に好適な製剤で、凍結乾燥形態で調製され得るものが、参照により組み込まれる、米国特許出願公開第20140377251号に記載されている。例えば、皮下注射に好適な液体製剤は、参照により組み込まれる、米国特許出願公開第20140341885号に記載されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、50mg、100mg、108mg、165mg、200mg、216mg、300mg、450mg、500mg、またはそれ以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、例えば、皮下で、0.05mg/kg、0.10mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、または0.5mg/kgの用量で、108mg、200mg、216mg、450mg、160mg、または165mgの用量で投与される。ベドリズマブは、1日1回、1週間に1回、1ヶ月に1回、または1年に1回投与されてもよい。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、0週目、2週目及び6週目に投与され、その後4週毎にまたは8週毎に投与される。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、1回以上投与され、その後、少なくとも1ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年後に、ベドリズマブは1回以上投与される。いくつかの実施形態では、200、300、または450mgのベドリズマブは、0週目、2週目、及び6週目に静脈内注入によって投与されてもよく、その後4週間の間隔で、または8週間の間隔で投与されてよい。いくつかの実施形態では、200、300、または450mgのベドリズマブは、0週目、2週目、及び6週目に静脈内注入によって投与されてもよく、その後2週間の間隔で、3週間の間隔で、または4週間の間隔で、108、165、または216mgのベドリズマブは、皮下投与されてもよい。いくつかの実施形態では、200、450、または600mgのベドリズマブが、0週目、2週目、及び4週目に静脈内注入によって投与されてもよく、その後、最終用量が、約75、80、85、90、95、または100日目に、例えば、約85~約90日目の間に、約75~約90日目の間に、または約85~約100日目の間に投与される。
【0065】
gi-irAEの治療及び予防
本発明は、とりわけ、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害することによって、対象においてgi-irAEを治療する(または、例えば、gi-irAEを治療することによりがんを治療する)方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明によって提供される方法により治療される対象は、がん免疫治療(例えば、PD-1拮抗薬による、CTLA4拮抗薬による、またはPD-1拮抗薬とCTLA4拮抗薬との両方による)を受けているが、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドによる治療を受けていない好適な対照と比較すると、対象は下記のうちの1つ以上を呈する:向上したコンプライアンス(例えば、治療中断、投薬量減少、または中止の発生率の低下;より高い治療完了率、より長い治療期間)例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50%、またはそれ以上向上したコンプライアンス;がん免疫治療の有効性の有意な減少がないこと(例えば、有効性の30、25、20、15、10、または5%未満の減少;あるいはいくつかの実施形態では、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%、もしくはそれ以上の有効性の増加のような有効性の増加);gi-irAEのグレードの低下(例えば、少なくとも1、2、3、4、または5グレードの平均グレードの低下;あるいは大腸炎または下痢などのgi-irAEの特定のグレードを有する対象の20、30、40、50、60、70、80、90、または100%、もしくはそれ以上の頻度の減少)、gi-irAEの持続時間の短縮(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、または50%短縮した持続時間、例えば1、2、3、4、5、または6週間、1、2、3、4、5、または6ヶ月間、もしくはそれ以上長い期間の短縮)、gi-irAEの発症の遅延(1、2、3、4、5、または6週間、1、2、3、4、5、または6ヶ月間、もしくはそれ以上長い期間の遅延)、コルチコステロイド(経口または全身)、抗生物質(経口または非経口)、非コルチコステロイド免疫抑制薬、下部内視鏡検査、入院、またはこれらの組み合わせの使用の減少もしくは解消(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、または99%減少);あるいは前述のいずれかの組み合わせ。
【0066】
チェックポイント阻害薬(CTLA-4及び/またはPD-1)を投与されている2774人の患者による最近のメタ解析において、下痢の頻度は11%~51%であって、大腸炎は、1%~16%であった。全グレードの下痢の相対危険度(RR)は1.64(95%CI:1.19~2.26;p=0.002)であった。大腸炎に関しては、これは10.35(95%CI:5.78~18.53;p<0.00001)であった。イピリムマブに関連する下痢を評価する別のメタ解析(N=1571)では、全グレードの下痢の全体的な発生率は、41.6%(95%CI:33.6%~50.0%)であった。この解析において、グレード≧3の下痢の全体的な発生率は8.4%(95%CI:5.5%~12.7%)であった。全グレードの下痢に対するイピリムマブのRRは、1.63(95%CI:1.37~1.97;p<0.001)であり、グレード≧3の下痢については、2.19(95%CI:1.11~4.34;p=0.025)である。イピリムマブによるグレード2/3の大腸炎の発症までの期間中央値は、6.5週間である。ニボルマブとイピリムマブとの併用で治療されたメラノーマを有する患者における最近の第三相臨床試験では、下痢の発生率は44%であって、グレード3/4で9%であった。大腸炎は、患者の12%で診断され、グレード3/4で8%であった。小腸結腸炎は、PD-1阻害剤と比べてCTLA-4阻害により頻繁に関連する。本発明によって提供される方法は、これらの合併症を全部または一部において改善することができる。
【0067】
グレードに関わりなく、イピリムマブを投与されている(単独療法または併用療法で)irAEを有する患者のほぼ半分が、治療の中断及び免疫調節薬(インフリキシマブを伴う/伴わない全身性コルチコステロイド)を必要とした。治療中断/中止に至るこれらのirAEの半分は、下痢/大腸炎である。大腸炎/下痢の管理のための現在のガイドラインは、≧グレード2である場合、治療を中断し、グレード2が5日間を超えて継続する場合は、プレドニゾンを開始するか、またはグレード3以上である場合、プレドニゾンを即時開始するよう指示している。治療は、症状が改善され、ステロイドが1ヶ月をかけて徐々に減った後にだけ再開することができる。この全てが、治療のコンプライアンスにおける主な難しさを生み出している。症状が寛解しない場合の現在の1~2mg/kgでの全身性ステロイド、それに続くインフリキシマブは、臨床試験の裏付けなしに経験的に使用されている。炎症性腸疾患(IBD)を治療することが示されているコルチコステロイドであるブデソニドのみが、イピリムマブ誘発大腸炎を予防するためのランダム化臨床試験において評価されているが、否定的な結果であった。重ねて、本発明によって提供される方法は、既存の医療介入の合併症の多くを伴うことなく、これらの合併症を全部または一部において改善することができる。
【0068】
MAdCAM-α4β7インテグリンの結合の阻害剤は、その活性をGI管及び腸管リンパ組織に制限し、gi-irAEの予防におけるその使用は、1)T細胞の腫瘍への移動または腫瘍微小環境内のT細胞サブ集団に及ぼす悪影響を有さず、そして2)治療関連gi-irAEを軽減して、チェックポイント阻害剤の併用療法を受けている、進行性メラノーマなどのがんを有する患者において優れた安全性プロファイルを伴う臨床的有用性をもたらすであろう。例えば、いくつかの実施形態では、本発明によって提供される方法により治療される対象は、下痢または大腸炎の減少を示し、もしくはいくつかの実施形態ではグレード3または4がなく(グレード3大腸炎、グレード4(または3~5日間にわたって持続もしくは悪化するグレード3)大腸炎または下痢がなく)、グレード1~2の下痢のみがあり、あるいはいかなるグレード2が発症する場合でも、この症状は、例えば、プレドニゾンまたは抗TNF-α治療を付加することなく、全身性下痢止め治療によって解消するか、あるいは下痢または大腸炎の減少を示し、もしくはいくつかの実施形態では、グレード1または2の症状がない。他の実施形態では、グレード4の下痢が観察されないか、またはグレード4の下痢の軽減が観察され、より具体的には、グレード3の下痢が観察されないか、またはグレード3の下痢の軽減が観察され、さらにより具体的には、グレード2の下痢が観察されないか、またはグレード2の下痢の軽減が観察され、またはさらにより具体的には、グレード1の下痢が観察されないか、またはグレード1の下痢の軽減が観察される。さらに他の実施形態では、グレード4の大腸炎が観察されないか、またはグレード4の大腸炎の軽減が観察され、より具体的には、グレード3の大腸炎が観察されないか、またはグレード3の大腸炎の軽減が観察され、さらにより具体的には、グレード2の大腸炎が観察されないか、またはグレード2の大腸炎の軽減が観察され、またはさらにより具体的には、グレード1の大腸炎が観察されないか、またはグレード1の大腸炎の軽減が観察される。さらに他の実施形態では、他の実施形態では、グレード4の大腸炎もしくは下痢が観察されないか、またはグレード4の大腸炎もしくは下痢の軽減が観察され、より具体的には、グレード3の大腸炎もしくは下痢が観察されないか、またはグレード3の大腸炎もしくは下痢の軽減が観察され、さらにより具体的には、グレード2の大腸炎もしくは下痢が観察されないか、またはグレード2の大腸炎もしくは下痢の軽減が観察され、またはさらにより具体的には、グレード1の大腸炎もしくは下痢が観察されないか、またはグレード1の大腸炎もしくは下痢の軽減が観察される。他の実施形態では、本発明によって提供される方法は、通常、0.5~2mg/kg/日のプレドニゾン等価物が、日和見感染のために提案された予防的抗生物質と共に指示される(一旦グレード1またはそれ以下が達成されると、ステロイドを1か月間徐々に減少させ続ける)、>5日間持続するか、または再発するグレード2の症状頻度を軽減、または解消し、すなわち、本発明によって提供される方法は、コルチコステロイド及び/または予防的抗生物質の必要性を軽減または解消する。さらに他の実施形態では、本発明によって提供される方法は、治療の中止、及び1~2mg/kg/日のプレドニゾン等価物の用量でのコルチコステロイドの投与、及び/または日和見感染のための予防的抗生物質、及び/または下部内視鏡検査、及び/または入院などの介入を必要とするグレード3の症状の頻度を軽減または解消し、すなわち、本発明によって提供される方法は、コルチコステロイド、及び/または予防的抗生物質、及び/または下部内視鏡検査、及び/または入院の必要性を軽減または解消する。さらに他の実施形態では、本発明によって提供される方法は、治療の中止、及び1~2mg/kg/日のプレドニゾン等価物の用量でのコルチコステロイドの投与、及び/または日和見感染のための予防的抗生物質、及び/または下部内視鏡検査、及び/または非コルチコステロイド免疫抑制薬、及び/または入院などの介入を必要とするグレード4の症状の頻度を軽減または解消し、すなわち、本発明によって提供される方法は、コルチコステロイド、及び/または予防的抗生物質、及び/または下部内視鏡検査、及び/または非コルチコステロイド免疫抑制薬、及び/または入院の必要性を軽減または解消する。ある特定の実施形態では、本発明によって提供される方法は、gi-irAEの発症を遅延し、例えば、大腸炎及び/または下痢の発生が、典型的な5~10週目の発生最盛期を超えて遅延され(約8週目の発生最盛期)、例えば、本発明によって提供される方法は、gi-irAEの発症を、2、4、5、6、8、10週間またはそれ以上遅延し、より具体的には、例えば起こり得るgi-irAEの発症、及びgi-irAEの頻度及び/または重症度を、例えば、1、2、3、4、5、または6週間;1、2、3、4、5、または6ヶ月間、もしくはそれ以上長く、遅延及び軽減する。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、以下の等級付けを適用する:グレード1(下痢についてはベースラインに対して1日当たり<4回の排便、大腸炎については、無症状で、臨床的または診断的所見のみ);グレード2(下痢についてはベースラインに対して1日当たり4~6回の排便、<24時間のIV輸液の指示、日常生活動作[ADL]を妨害しない程度、大腸炎については、腹部痛、血便);グレード3(下痢については、ベースラインに対して、一日当たり≧7回の排便、≧24時間のIV輸液、日常生活動作(ADL)を妨害する程度、大腸炎については、重度の腹部痛、医学的介入が指示され、腹膜兆候);グレード4(大腸炎については、生命にかかわる程度、穿孔)。ある特定の実施形態では、大腸炎または下痢などのgi-irAEのグレードは、NCI CTCAE4.03によって決定される。
【実施例】
【0070】
実施例1
進行性メラノーマを有する患者において、標準的治療の免疫チェックポイント阻害剤と併用したベドリズマブの治験治療の安全性、忍容性、及び薬力学を評価するために、第1b相試験を行う。最大で約52人の対象を登録する。およそ12人の対象を、用量漸増治療に割り当てた(最大で46人の対象まで拡大)。2~15の部位が対象を裏付ける。
【0071】
対象は、AJCC病期分類システムに従って、組織学的に確認された切除不能なステージIIIまたはIVのメラノーマを有し、かつ0~1のECOGパフォーマンスステータスを有する、男性または女性のいずれかの成人である。対象は、適切な骨髄予備能及び腎機能ならびに肝機能を有する。活動性の自己免疫疾患だとわかっているか、またはその疑いがある対象、またはコルチコステロイド(>10mgのプレドニゾンもしくは等価物)または他の免疫抑制薬による全身的治療を、試験薬投与の14日以内に受けている対象は除外され、同様に、抗PD-1、抗PDL-1、抗PDL-2、または抗CTLA4抗体によって以前に治療された対象も除外する。
【0072】
ベドリズマブを、200または450mgの用量で1、3、5、及び13週目にIVによって投与する。ニボルマブを、標準治療である3mg/kgの用量、Q2W(2週間に1回)でIV投与する。
イピリムマブと併せてのニボルマブについての標準治療を、以下の通りに施す。ニボルマブ(1mg/kg)及びイピリムマブ(3mg/kg)の両方を、IV、Q3W(3週間に1回)で4回分用量を投与し、その後ニボルマブ(3mg/kg)を、疾患憎悪または許容不能な毒性が認められるまでIV Q2W投与する。治療期間は、最長で50週間であり、評価期間は12ヶ月間である。
図1は、この投薬スケジュールの図形的描写を提供する。
【0073】
この試験についての主要評価項目は、治療中に発生した有害事象(TEAE、例えば、大腸炎または下痢)(重度のTEAEを含める)の頻度及び重症度である。この試験についての副次的評価項目は、治験担当者によって評価される客観的奏効率(ORR)を含める疾患奏効の尺度、奏効期間(DOR)、及びRECISTガイドラインv1.1を用いる治験担当者の評価に基づく無憎悪生存期間(PFS)ならびに全生存期間(OS)である。連続腫瘍生検もまた採集し、限定されないが、免疫組織化学法及び遺伝子発現プロファイリングが含まれる方法を用いる、免疫細胞の浸潤の変化または他の推定バイオマーカーの定量化を、単剤治療後及び併用治療後に完了する。
【0074】
実施例2
進行性メラノーマを有する患者において、標準的治療の免疫チェックポイント阻害剤と併用したベドリズマブの治験治療の安全性、忍容性、及び薬力学を評価するために、改定された第1b相試験を行う。最大で約52人の対象を登録する。およそ12人の対象を、用量漸増治療に割り当てた(最大で46人の対象まで拡大)。2~15の部位が対象を裏付ける。
【0075】
対象は、AJCC病期分類システムに従って、組織学的に確認された切除不能なステージIIIまたはIVのメラノーマを有し、かつ0~1のECOGパフォーマンスステータスを有する、男性または女性のいずれかの成人である。対象は、適切な骨髄予備能及び腎機能ならびに肝機能を有する。活動性の自己免疫疾患だとわかっているか、またはその疑いがある対象、またはコルチコステロイド(>10mgのプレドニゾンもしくは等価物)または他の免疫抑制薬による全身的治療を、試験薬投与の投与の14日以内に受けている対象は除外され、同様に、抗PD-1、抗PDL-1、抗PDL-2、または抗CTLA4抗体によって以前に治療された対象も除外する。
【0076】
ベドリズマブを、200または450mgの用量で1、3、5、及び13週目にIVによって投与する。ニボルマブ(1mg/kg)及びイピリムマブ(1mg/kg)の両方を、IV、Q3W(3週間に1回)で4回分用量を投与し、その後ニボルマブ(3mg/kgまたは240kgの一定用量)を、疾患憎悪または許容不能な毒性が認められるまで、13週目の初め、85日目にQ2WでIV投与する。治療期間は、最長で50週間であり、評価期間は12ヶ月間である。
図2は、この投薬スケジュールの図形的描写を提供する。
【0077】
この試験についての主要評価項目は、治療中に発生した有害事象(TEAE、例えば、大腸炎または下痢)(重度のTEAEを含める)の頻度及び重症度である。この試験についての副次的評価項目は、治験担当者によって評価される客観的奏効率(ORR)を含める疾患奏効の尺度、奏効期間(DOR)、及びRECISTガイドラインv1.1を用いる治験担当者の評価に基づく無憎悪生存期間(PFS)ならびに全生存期間である。治療後の糞便試料中の微生物叢組成物及び便中カルプロテクチンの変化を治療前と比較し、治療前及び治療後のC反応性タンパク質の血清レベルの変化を測定する。
【0078】
本出願におけるいくつかのパラメータを記述する全ての数値範囲、例えば、「約」、「少なくとも」、「~未満」、及び「~を超える」に関して、この記述はまた列挙された値と境を接する任意の範囲を必ず包含することを理解されたい。したがって、例えば、「少なくとも1、2、3、4、または5」という記述はまた、とりわけ、1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5、及び4~5などの範囲も記述する。
【0079】
本明細書に引用される全ての特許、出願、または非特許文献及び参照配列情報などの他の参考文献に関して、これらが全ての目的に対して、ならびに記載される提案に対して、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれることを理解されたい。参照により組み込まれた文書と本出願との間に何らかの矛盾が存在する場合、本出願に従う。例えば、ゲノム遺伝子座、ゲノム配列、機能注解、対立遺伝子変異型、及び参照mRNA(例えば、エクソン境界または応答要素を含む)及びタンパク質配列(保存ドメイン構造など)、Homologene、OMIMを含む、GeneIDまたは他の登録番号(典型的には、参照国立生物科学情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI)登録番号を参照)などの本出願に開示された参照遺伝子配列に関連する全ての情報、ならびに化学参考文献(例えば、PubChem compound、PubChem substance、またはその中の注解、例えば構造及びアッセイなどを含めるPubChem Bioassayエントリー)は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本出願で使用される見出しは、便宜上のものにすぎず、本出願の解釈に影響を与えるものではない。
【0081】
本発明によって提供される態様のそれぞれの好ましい特徴は、本発明の他の態様の全てに必要な変更を加えて適用可能であり、限定されるものではないが、独立請求項によって例示され、実際に実施した例を含む、本発明の特定の実施形態及び態様の個々の特徴(例えば、数値範囲及び例示的な実施形態を含む要素)の組み合わせ及び順列も包含する。例えば、実際に実施した例において例示した特定の実験パラメータは、本発明から逸脱することなく特許請求された発明で少しずつ使用するように適合することができる。例えば、開示されている材料については、これらの化合物の種々の個別かつ集合的な組み合わせ及び順列のそれぞれに具体的な言及が明示的に開示されないことがあるとしても、それぞれは、本明細書に具体的に想定され、記述される。したがって、要素A、B、及びCの部類が開示され、ならびに要素D、E、及びFの部類と要素A-Dの組み合わせの例が開示されるならば、このときは、それぞれが個別に記載されない場合であっても、それぞれは個別かつ集合的に想定される。したがって、この例では、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fのそれぞれが具体的に想定され、A、B、及びC;D、E、及びF;ならびに組み合わせA-Dの例の開示から開示されていると見なされるべきである。同様に、これらの任意の部分集合または組み合わせも、具体的に想定かつ開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eの部分群が具体的に想定され、A、B、及びC;D、E、及びF;ならびに組み合わせA-Dの例の開示から開示されていると見なされるべきである。この概念は、物質の組成物及び組成物の製造または使用方法のステップの要素を含む、本出願の全ての態様に適用する。
本発明の前述の態様は、本明細書の教示に従う当業者によって認識されるように、これらが従来技術に比べて新規かつ進歩性のある限りにおいて任意の組み合わせまたは順列で特許請求することができ、したがって、要素が当業者に既知の1つ以上の参考文献に記載されている限りにおいて、これらは、とりわけ、特徴または特徴の組み合わせの消極的な条件もしくは請求放棄によって特許請求される発明から除外されてもよい。
【0082】
非公式配列表
>配列番号1
>ヒト化抗α4β7Igの重鎖;斜字体の配列はリーダー配列であり;下線を施した配列はCDRである。
【表1】
>配列番号2
ヒト化抗α4β7Igの軽鎖;斜字体の配列はリーダー配列であり;下線を施した配列はCDRであり、太字の下線を施した斜字体の配列は、可変領域の終わりである。
【表2】
>配列番号3
LDP-02の成熟ヒト化軽鎖;下線を施した配列はCDRであり、太字の下線を施した斜字体の配列は、可変領域の終わりである。
【表3】
【表4】
本発明は次の実施態様を含む。
[1]
がん免疫治療を受けている哺乳動物対象における胃腸免疫関連有害事象(gi-irAE)の治療方法であって、治療有効量の、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドを前記対象に投与することを含む、前記方法。
[2]
前記がん免疫治療が、4-1BB、B7H3、B7H4、CCR2、CD27、CD40、CD40L、CD244、CSF1R、CTLA4、CXCR4、GITR、IDO、KIR2DL1、KIR2DL3、NKG2A、NKG2D、OX40、TIM3,RAFキナーゼ、PD-1、PDL-1、VISTA、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上の標的の調節物質による治療を含む、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記治療が、T細胞補助受容体である標的の調節物質を含み、より具体的には、前記T細胞補助受容体が、阻害受容体であり、より具体的には、前記阻害受容体が、CTLA4、PD-1、またはCTLA4とPD-1とである、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、α4β7インテグリンへの結合でベドリズマブと競合する抗α4β7インテグリンなどの、抗α4β7インテグリン抗体であり、より具体的には、前記抗体が、ベドリズマブのエピトープ特異性を有し、より具体的には、前記抗体が、ベドリズマブの相補性決定領域(CDR)を含み、さらにより具体的には、前記抗体が、ベドリズマブである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
ベドリズマブの前記相補性決定領域(CDR)を含む前記抗体が、配列番号1の重鎖可変領域と、配列番号2または配列番号3の軽鎖可変領域とを含む、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記抗α4β7インテグリン抗体が、約1.25~8.0mg/kg、例えば、約1.25~4.25mg/kg、1.75~3.75mg/kg、2.25~3.25mg/kg、または2.86mg/kgの用量で投与され;いくつかの実施形態では、前記抗α4β7インテグリン抗体が、約5.0~8.0mg/kg、5.5~7.5mg/kg、6.0~7.0mg/kg、または6.43mg/kgの用量で投与される、上記[4]に記載の方法。
[7]
前記対象が、抗PD-1抗体による治療を受けており、前記抗PD-1抗体が、PD-1への結合でニボルマブと競合し、より具体的には、前記抗体が、ニボルマブのエピトープ特異性を有し、より具体的には、前記抗体が、ニボルマブの相補性決定領域(CDR)を含み、さらにより具体的には、前記抗体が、ニボルマブである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記抗PD-1抗体治療が、約0.5~6.0mg/kgの用量で、例えば、0.5~2.0mg/kg、0.5~1.5mg/kg、0.75~1.25mg/kg、1.0mg/kg;1.5~6.0mg/kg、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、または3.0mg/kgの用量で施される、上記[7]に記載の方法。
[9]
前記対象が、抗CTLA4抗体による治療を受けており、前記抗CTLA4抗体が、CTLA4への結合でイピリムマブと競合し、より具体的には、前記抗体が、イピリムマブのエピトープ特異性を有し、より具体的には、前記抗体が、イピリムマブの相補性決定領域(CDR)を含み、さらにより具体的には、前記抗体が、イピリムマブである、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
前記抗CTLA4抗体が、約1.5~10.0mg/kg、2.0~5.0mg/kg、2.0~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg、または3.0mg/kgの用量で投与される、上記[9]に記載の方法。
[11]
前記対象が、ヒト成人などのヒトである、上記[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記対象が、メラノーマ(切除不能または転移性メラノーマを含む)、非小細胞肺癌(扁平上皮癌及び非扁平上皮癌の両方)、腎細胞癌、頭頸部癌、膀胱癌、小細胞肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌(転移性癌を含む)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、及び前立腺癌(転移性ホルモン不応性前立腺癌を含む)から選択されるがんを有する、上記[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
前記対象が、メラノーマ、肺癌またはリンパ腫を有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[14]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、抗α4β7インテグリン抗体であり、約10μg/ml、またはそれ以上、例えば、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50μg/ml、またはそれ以上の血清濃度を達成するように投与される、上記[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、抗α4β7インテグリン抗体であり、2回またはそれ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回投与され;例えば、前記投与が同一用量であってもよく、または、例えば、200mgの用量の初回単位用量を伴い、450mgのその後の用量を伴う漸増用量であってもよい、上記[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、抗α4β7インテグリン抗体であり、約108、150、165、200、216、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750mg、またはそれ以上の単位用量で、ヒト対象に投与される、上記[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドの各用量が、450mgである、上記[16]に記載の方法。
[18]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドの各用量が、600mgである、上記[16]に記載の方法。
[19]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、前記がん免疫治療の前に少なくとも1回投与される、上記[1]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドの少なくとも1回の投与後に、
抗PD-1抗体であるPD-1拮抗薬が、2週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与され、あるいは
抗CTLA4抗体が、3週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与され、それと同時に前記PD-1拮抗薬が、例えば約1mg/kgの用量で投与され、あるいは
抗CTLA4抗体が、3週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与され、それと同時にPD-1拮抗薬が、例えば約1mg/kgの用量で投与され、前記抗CTLA4抗体の4回の投与後に、さらなる抗CTLA4抗体は投与されず、前記PD-1拮抗薬が、2週間毎に、例えば約3mg/kgの用量で投与される、上記[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、少なくとも4回投与され、2回目用量が、前記初回投与から約2週間後に投与され、3回目用量が、前記初回投与から約4週間後に投与され、4回目用量が、前記初回投与から約12週間後に投与される、上記[1]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、gi-irAEの症状の発現の前に、予防的に投与される、上記[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、gi-irAEの症状に応じて投与される、上記[1]~[21]のいずれかに記載の方法。
[24]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、CTLA4拮抗薬、CTLA4拮抗薬とPD1拮抗薬との併用、CTLA4拮抗薬とOX40作動薬との併用、CTLA4拮抗薬とKIR拮抗薬との併用、CTLA4拮抗薬とCD27作動薬との併用、CTLA4拮抗薬とIDO拮抗薬との併用、及びCTLA4拮抗薬と上皮増殖因子受容体(EGFR)拮抗薬との併用からなる群から選択されるがん免疫治療のために予防的または治療的に投与される、上記[22]に記載の方法。
[25]
前記CTLA4拮抗薬が、イピリムマブまたはトレミリムマブである、上記[24]に記載の方法。
[26]
前記OX40作動薬が、MEDI6469抗体である、上記[24]に記載の方法。
[27]
前記IDO拮抗薬が、INCB024360(エパカドスタット)である、上記[24]に記載の方法。
[28]
前記EGFR拮抗薬が、エルロチニブまたはゲフィチニブである、上記[24]に記載の方法。
[29]
前記がん免疫治療の前記がん対象が、メラノーマ、非小細胞肺癌、頭頸部癌、結腸直腸癌及びリンパ腫からなる群から選択される、上記[24]に記載の方法。
[30]
MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害する前記ポリペプチドが、TIM3拮抗薬、PD-1拮抗薬、PD-1拮抗薬とKIR拮抗薬との併用、PD-1拮抗薬とCD27作動薬との併用、及びPD-1拮抗薬と4-1BB作動薬との併用からなる群から選択されるがん免疫治療のために、gi-irAEの症状に応じて投与される、上記[23]に記載の方法。
[31]
前記PD-1拮抗薬が、ニボルマブまたはペムブロリズマブである、上記[30]に記載の方法。
[32]
前記KIR拮抗薬が、リリルマブである、上記[24]または[30]に記載の方法。
[33]
前記CD27作動薬が、バルリルマブである、上記[24]または[30]に記載の方法。
[34]
前記4-1BB作動薬が、PF-05082566またはウトミルマブである、上記[30]に記載の方法。
[35]
前記がん免疫治療の前記がん対象が、頭頸部癌、卵巣癌、結腸直腸癌、腎細胞癌及び神経膠芽腫からなる群から選択される、上記[24]に記載の方法。
[36]
がん免疫治療を受けているが、MAdCAM-α4β7インテグリン結合を阻害するポリペプチドによる治療を受けていない適切な対照と比べて、前記対象が、向上したコンプライアンス(例えば、治療中断、中止、投薬量の減少の発生率の低下;より高い治療完了率、より長い治療期間)、前記がん免疫治療の有効性の有意な減少がないこと、前記がん免疫治療の有効性の増加、gi-irAEのグレードの低下、gi-irAEの持続時間の短縮、gi-irAEの発症の遅延、コルチコステロイド、抗生物質、非コルチコステロイド免疫抑制薬、下部内視鏡検査、入院、またはこれらの組み合わせの使用の減少もしくは解消;またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を呈する、上記[1]~[35]のいずれかに記載の方法。
【配列表】