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  • 特許-アーク炉底部構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】アーク炉底部構造体
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/24 20060101AFI20220510BHJP
   F27D 1/12 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F27B3/24
F27D1/12 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018563718
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 FI2017050422
(87)【国際公開番号】W WO2017212116
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】20165473
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】バアナネン、 エエロ
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203960299(CN,U)
【文献】中国実用新案第203956083(CN,U)
【文献】特表2003-501612(JP,A)
【文献】中国実用新案第203956088(CN,U)
【文献】米国特許第04197900(US,A)
【文献】米国特許第04870655(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-3/28
F27D 1/00-1/18
F27D 7/00-15/02
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部構造体の外側表面温度を、アーク炉の少なくとも実質的に下部について、前記アーク炉の周囲温度の実質的に近くに維持するアーク炉底部構造体であって、該底部構造体は、冷却対象となり側方から見て相互に異なる高さに位置する少なくとも2つの独立した構造部を含み、
該少なくとも2つの独立した構造部は個々に分かれた板状部材に構成され、
前記構造部を構成する板状部材のうち下側部材は前記アーク炉の外側に据え付けられている支持枠上に取り付けられ、
前記板状部材の少なくとも1つは、前記アーク炉の底部構造部の、側方から見て該底部構造体の中段に設けられ、
前記個々に分かれた板状部材は、互いに間隔をあけて取り付けられ
該底部構造体の異なる高さにある構造部は互いに対する中間領域を形成し、該中間領域に冷却媒体が移送されることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のアーク炉底部構造体において、前記アーク炉のジャケットは、該底部構造体への冷却媒体の移送に用いる、少なくとも1つの流入口および少なくとも1つの流出口を備えていることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項3】
請求項に記載のアーク炉底部構造体において、流入口および流出口の数はともに同一であることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアーク炉底部構造体において、前記流入口は、前記冷却媒体を供給し前記底部構造部の各部材間の冷却媒体の量を調整する要素を備えていることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項5】
請求項1に記載のアーク炉底部構造体において、前記異なる高さの構造部間に形成された前記中間領域内では、少なくとも1つの冷却要素が取り付けられていて、該冷却要素内に前記冷却媒体が移送されることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項6】
請求項に記載のアーク炉底部構造体において、前記中間領域内および前記冷却要素内に送られる前記冷却媒体は、同一の相であることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【請求項7】
請求項に記載のアーク炉底部構造体において、前記中間領域内および前記冷却要素内に送られる前記冷却媒体は、異なる相であることを特徴とするアーク炉底部構造体。
【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、アーク炉の少なくとも下部における外部表面の温度をアーク炉の周囲温度の実質的に近くに維持するアーク炉底部構造体に関するものである。
【0002】
フェロクロムやステンレス鋼などの金属成分を溶解するアーク炉を用いるとき、アーク炉の内部温度は約1,500~1,700℃である。このとき、アーク炉のジャケット、そして特にアーク炉の底部には、大きな熱負荷がかかる。特に、いかなる状況でも、溶解した金属が抑え切れずに炉外に流れ出てしまい溶解した金属がアーク炉の底部を損傷させることがないように、アーク炉の底部は裏張りされ、これによって労働安全における危険性が軽減される。アーク炉の底部は特別な裏張りをする必要がある。他方、労働安全に基づけば、アーク炉自体および特にアーク炉底部の表面温度を管理して、アーク炉周囲の温度にできるだけ近づける調整をすることも重要である。アーク炉の垂直壁の冷却は通常、水流を壁の少なくとも1つの部分に対して垂直に送出することによって実行され、水流は垂直壁に沿って下方に流れる。水流を利用して、アーク炉の垂直壁の表面温度を所望の値に調整するよう処理する。アーク炉の底部はそれぞれの水流によっては冷却処理されない。なぜならば、アーク炉の底部自体は実質的に水平に据え付けられるからである。
【0003】
米国特許第4,870,655号は、炉底と同一の形状を採り炉底に直接取り付けられる冷却要素によって、炉底の冷却を実行する電気アーク炉に関する。この種の冷却要素は、熱膨張を見込んでいないので、熱膨張により生じ得る擾乱の影響を受けやすい。
【0004】
米国特許第3,723,632号および米国特許第6,693,949号も、炉底と実質的に同一の形状を採り炉底に直接取り付けられるアーク炉の冷却要素を記載している。熱膨張は、このような形状の冷却パネルの問題点でもある。
【0005】
本発明は、従来技術の不利益を取り除き、改善されたアーク炉底部構造体を実現することを目的とする。これによれば、底部構造体の外部表面温度を、アーク炉の実質的に少なくとも下部について、アーク炉の周囲温度の実質的に近くに維持することができる。本発明の本質的な特徴は、添付した特許請求の範囲に記載されている。
【0006】
本発明によれば、アーク炉底部構造体は、少なくとも二部材による構造をとる。この構造の各部材は、相互に離れて取り付けられていて、側方からは異なる高さに、すなわち上段および下段に見える。アーク炉底部構造体が2つよりも多くの構造部材を有する場合には、構造部材は側方から見て異なる高さに取り付けられ、したがって底部構造体の部材は上段、中段および下段に取り付けられている。説明の通り、中段の面は、底部構造体に応じて1つまたはそれより多くてもよい。二部材底部構造を用いて、側方から見て異なる高さに取り付けられた底部構造部材間にある空間に冷却媒体を移送することによって、底部構造体を冷却する。冷却媒体を用いることによって、少なくとも側方から見て下側にある底部構造部材の外部表面温度は、アーク炉周囲の温度に実質的に近づくよう調整される。
【0007】
アーク炉自体は重い構造体であるので、アーク炉および底部構造体は下側をアーク炉の外部にある少なくとも1つの支持構造体に支持される。アーク炉の少なくとも二段式の底部構造体では、少なくとも二部材による支持枠、すなわち主支持枠および副支持枠を含むアーク炉の支持構造体を利用する。アーク炉の支持構造体の支持枠は、主支持枠は下段に、また副支持枠は上段に取り付けられるように、側方から見て異なる高さに設置される。
【0008】
本発明によると、アーク炉の二部材底部構造の下側部材は、主支持枠上に取り付けられていて、主支持枠に向かって側方向に自由に移動することができる。底部構造体の下側部材は、アーク炉のジャケットに、有利にはフランジ継手を用いて機械的に取り付けられている。ゆえに、この種の構造体によれば、支持枠と底部構造体の下側部材の間における熱膨張を許容することができる。
【0009】
副支持枠は、アーク炉内部におけるアーク炉底部構造体の下側部材と底部構造体の上側部材の間に取り付けられていて、副支持枠の梁は、底部構造体の下側部材および底部構造体の上側部材のどちらからも隔てられている。副支持枠の梁は、棒状の物体などの機械的結合装置によって相互に取り付けられていて、これによって側方向における梁間の相互距離は実質的に同一に維持される。しかしながら、同時に、かかる取付けにより長手方向における熱膨張が許容される。ゆえに、副支持枠の梁は自らの位置を側方向において維持する。副支持枠の上方には、側方から見て底部構造体の中段に個々に分かれた板状部材である構造部材を形成し、個々に分かれた部材は副支持枠に支持される。アーク炉底部構造体のさまざまな箇所で均質ではない熱膨張が発生するので、中間部にある個々の部材は、互いに間隔をあけて取り付けられている。これによって、熱膨張に起因するアーク炉内で生じ得る構造体の損傷を防ぐ。アーク炉底部構造体の下側部材と底部構造体の上側部材の間には、実質的に水平面状の空間が形成され、空間に移送される冷却媒体によって冷却される。アーク炉底部構造体の下側部材と底部構造体の上側部材の間にある空間は、少なくとも1つの冷却要素を備えていてもよく、冷却要素内に冷却媒体を移送することができる。
【0010】
冷却媒体を底部構造体の下側部材および底部構造体の上側部材の間にある空間内に移送することを可能にするため、ならびに、冷却媒体を底部構造体の下側部材および底部構造体の上側部材の間にある空間から除去するために、アーク炉のジャケットは、冷却媒体を供給する少なくとも1つの流入口、および底部構造体の下側部材と底部構造体の上側部材の間にある空間から冷却媒体を除去する少なくとも1つの流出口を備えている。本発明に係る底部構造体にある流入口と流出口の数は同一である。しかしながら、流入口および流出口の数自体はアーク炉の寸法に応じて変更してもよい。冷却媒体をアーク炉の側部から中間部にかけての間で集束させるために、少なくとも冷却媒体の流入口は、冷却媒体の配給要素を備えていて、さらに、有利には調整要素も備えている。この場合に冷却媒体は、定量的に配給されることに加えて、有利にはアーク炉底部構造体の異なる部分、すなわち側部や中間部で集束できるようになる。少なくとも1つの冷却要素を底部構造体の下側部材および底部構造体の上側部材の間にある空間内で用いると、冷却要素内で影響を及ぼす冷却媒体は、有利にはアーク炉のジャケットに設けられた開口部に連結された冷却管を介して送られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、以下において添付の図面を参照して詳細に説明される。
図1】好適な一実施例を側方から見た概略的な部分断面図として示す。
図2】好適な別の実施例を側方から見た概略的な部分断面図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1によれば、アーク炉1はその下側が支持枠2によって支持される。支持枠2は、少なくとも部分的にアーク炉1の外側に据え付けられている。アーク炉1の下側部材3は、その下側がアーク炉外側にある支持枠2に取り付けられていて、さらに、結合部材4を用いて、アーク炉1の垂直壁の外側表面に取り付けられた炉ジャケット6に取り付けられている。底部構造体の下側部材3の上方かつアーク炉底部構造体の上側部材7の下方にあるアーク炉1の内側には、中間領域8が設けられ、中間領域にアーク炉1の副内部支持枠9が取り付けられている。
【0013】
本発明によれば、アーク炉底部構造体を冷却する際に冷却媒体として働く冷却空気は、炉ジャケット6に設けられた供給口10を介して中間領域8内に移送される。流入口10は、冷却空気を配給して底部構造体の各部材間の冷却空気量を調整する要素14を備えている。冷却空気は、中間領域8からアーク炉ジャケット6内に設けられた流出口11を介して除去される。
【0014】
図2で示す本発明の実施例によれば、図1のアーク炉の底部構造体の冷却は、底部構造体の中間領域8内に取り付けられた冷却要素12を用いて実行される。ここでは、冷却媒体はアーク炉の外部から冷却要素12に移送され、さらに、冷却要素12から、冷却要素から離れて位置する端部で連結された連結管13を介して、一方ではアーク炉の炉ジャケット6の外側に位置する冷却媒体源(より詳細な説明はせず)に、他方ではアーク炉の炉ジャケット6の外側に位置する冷却媒体の除去設備(より詳細な説明はせず)に導かれる。冷却要素12内の冷却媒体として、空気などの気体または水などの液体が用いられる。
【0015】
本発明の一実施例として、図1および図2の実施例を組み合わせて用いてもよい。有利には、一例として、炉ジャケット6に設けられた開口部を介して中間領域8に冷却媒体として用いられる冷却空気を供給し、中間領域8内に取り付けられた冷却要素12の中に同一の冷却媒体の液体、例えば水を移送する。冷却要素12および中間領域8の両方に、同一または同類の冷却媒体を異なる相、例えば気相または液相のいずれかで用いてもよい。
図1
図2