(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】水硬性組成物用混和剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/30 20060101AFI20220510BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20220510BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220510BHJP
C08G 16/02 20060101ALI20220510BHJP
C08L 61/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C04B24/30 D
C04B24/26 B
C04B24/26 D
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C08F290/06
C08G16/02
C08L61/00
(21)【出願番号】P 2018567495
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2018004433
(87)【国際公開番号】W WO2018147378
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2017021713
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504274505
【氏名又は名称】シーカ・テクノロジー・アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】小河 俊博
(72)【発明者】
【氏名】ダンジィンガー,ミハイル ヴェルンヘル
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大郎
(72)【発明者】
【氏名】越坂 誠一
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502140(JP,A)
【文献】特表2013-503926(JP,A)
【文献】特開2003-327459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B並びに式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物Pと、
アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Qとを含有する、
水硬性組成物用混和剤。
【化1】
(式中、
R
1は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、
A
1Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
Xは水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
R
2は炭素原子数4乃至24のアルキル基、又は炭素原子数4乃至24のアルケニル基を表し、
A
2Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、
qはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
Y
1はリン酸エステル基を表し、
R
3は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、又はヘテロ環式基を表し、
rは1乃至100の数を表す。)
【請求項2】
前記単量体混合物が、更に下記式(D)で表される化合物Dを含むものである、請求項1に記載の水硬性組成物用混和剤。
【化2】
(式中、
A
3O及びA
4Oは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、
m及びnは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つm+n≧1であり、
Y
2及びY
3はそれぞれ独立して水素原子、又はリン酸エステル基を表す。)
【請求項3】
前記単量体混合物が、
前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、化合物A:化合物B:化合物D=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて含み、且つ、
前記化合物A、化合物B及び化合物Dの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=1~10:10~1の割合にて含む、
請求項2に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項4】
前記単量体混合物が、二種以上の式(A)で表される化合物Aを含みてなる、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項5】
前記単量体混合物が、二種以上の式(B)で表される化合物Bを含みてなる、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項6】
前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位がポリアルキレンポリアミンに由来するものであることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項7】
前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位がポリアミドポリアミンに由来するものであることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項8】
前記ポリアルキレンポリアミンがポリアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレンポリアミンを含むことを特徴とする、請求項6記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項9】
前記ポリアミドポリアミンがポリアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンを含むことを特徴とする、請求項7記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項10】
前記ポリアルキレンポリアミンが900乃至10,000の分子量を有することを特徴とする、請求項6又は請求項8に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項11】
前記ポリアミドポリアミンが900乃至10,000の分子量を有することを特徴とする、請求項7又は請求項9に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項12】
前記ポリカルボン酸系重合体Qが、下記一般式(1)で表される単量体及び下記一般式(2)で表される単量体を含む単量体混合物を共重合させた共重合体単位と、
前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位とを有する、請求項1乃至請求項11のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【化3】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、Xは-COO-、-CON<、又は-(CH
2)
bO-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、bは1乃至20の数を表す。)
【化4】
(式中、R
15、R
16、R
17、R
18はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、-COOR
19(R
19は、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、グリシジル基を表す。)又は、グリシジル基を表すか、あるいはR
15及びR
16、若しくはR
17及びR
18は式(2)中の>C=C<基と一緒になって酸無水物を形成する。cは1乃至20の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はアルカノールアミンを表す。)
【請求項13】
前記重縮合生成物Pと、ポリカルボン酸系重合体Qとの割合が、質量比でP:Q=1:99~99:1である、請求項1乃至請求項12のうちいずれか一項に記載の水硬性組成物用混和剤。
【請求項14】
下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B並びに式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物Pと、
アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Qとからなる、
水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せ。
【化5】
(式中、
R
1は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、
A
1Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、
pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
Xは水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
R
2は炭素原子数4乃至24のアルキル基、又は炭素原子数4乃至24のアルケニル基を表し、
A
2Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、
qはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、
Y
1はリン酸エステル基を表し、
R
3は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、又はヘテロ環式基を表し、
rは1乃至100の数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な水硬性組成物用混和剤及び水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土木建築業界において、資源の有効活用や環境負荷の低減を目的として、産業副産物であるフライアッシュや高炉スラグ微粉末などが積極的に利用されている。また、近年国内の天然骨材が枯渇しつつあり、コンクリート用の骨材として、頁岩由来の砂もしくは砂利、即ち砕砂若しくは砕石が広く使用されている。
しかしながら、未燃カーボンを多く含むフライアッシュや、岩種により亜炭分を多量に含む砕砂および砕石を、コンクリート用の水硬性粉体や骨材として使用すると、硬化後のコンクリート表面に未燃カーボンや亜炭微粉末が析出し、硬化体表面に黒色の色むら(いわゆる、黒ずみ)が生じて美観を著しく損ねる問題があった。また前述の亜炭には植物起源の有機物が含まれ、これがセメントペースト中の高アルカリ環境下で溶け出し、セメントペーストの変色の原因となり得るとする報告もある。
【0003】
従来、斯様に様々な理由で発生するモルタルやセメント硬化体の表面の黒ずみなどの問題に対して、例えば特許文献1や特許文献2に開示されたリン酸エステルからなる黒ずみ防止用添加剤などが、硬化体表面の美観を改善できるものとしてこれまでに提案されてきた。
しかし、それらの黒ずみ防止用添加剤を減水剤と混合して水硬性組成物用混和剤を調製した場合、その組み合わせによっては水難溶性のゲル状物を生成し、一液化が困難になる等、処方設計上の制約を受ける。
【0004】
一方、フライアッシュのような無機粉体をセメント組成物に多量に混合すると、凝結の遅延やブリーディング、初期強度の低下等の問題もあり、あわせて改善を求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-213082号公報
【文献】特開2007-197261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みなされたものであり、水硬性組成物中に含まれる有色微粒子が硬化体表面に析出して黒ずみが発生することを抑制するとともに、無機粉体を多く含む場合であっても凝結の遅延やブリーディング、初期強度の低下を抑制し、さらに減水性にも優れる水硬性組成物用混和剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体とフェノールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル誘導体とをモノマー成分として得られるフェノール系共重合体を含む重縮合生成物と、アミノ基及びイミノ基を有する構造単位等を有するポリカルボン酸系重合体とを併用することにより、有色微粒子を含む水硬性組成物であっても、それらが硬化体表面に析出することにより発生する黒ずみを効果的に防止できることを見出した。
さらに、これらを水硬性組成物に併用することにより、減水性に優れ、凝結の遅延やブリーディング、そして初期強度の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、下記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B並びに式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物Pと、アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Qとを含有する、水硬性組成物用混和剤に関する。
【化1】
(式中、R
1は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、A
1Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、Xは水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表し、
R
2は炭素原子数4乃至24のアルキル基、又は炭素原子数4乃至24のアルケニル基を表し、A
2Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、qはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、Y
1はリン酸エステル基を表し、
R
3は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、又はヘテロ環式基を表し、rは1乃至100の数を表す。)
【0009】
上記重縮合生成物Pにおいて、前記単量体混合物は、さらに更に下記式(D)で表される化合物Dを含むものであることが好ましい。
【化2】
(式中、A
3O及びA
4Oは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、m及びnは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つm+n≧1であり、Y
2及びY
3はそれぞれ独立して水素原子、又はリン酸エステル基を表す。)
【0010】
上記重縮合生成物Pにおいて、前記単量体混合物が、前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、化合物A:化合物B:化合物D=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて含み、且つ、前記化合物A、化合物B及び化合物Dの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=1~10:10~1の割合にて含むことが好ましい。
また上記重縮合生成物Pは、前記単量体混合物において、二種以上の式(A)で表される化合物Aを含んでいてもよく、さらに、二種以上の式(B)で表される化合物Bを含んでいてもよい。
【0011】
また上記ポリカルボン酸系重合体Qにおいて、前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位がポリアルキレンポリアミンに由来するものであることが好ましく、また、前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位がポリアミドポリアミンに由来するものであることが好ましい。
さらに前記ポリアルキレンポリアミンがポリアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレンポリアミンを含み、また前記ポリアミドポリアミンがポリアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンを含むことが好ましい。
そして前記ポリアルキレンポリアミン又は前記ポリアミドポリアミンが900乃至10,000の分子量を有することが好ましい。
【0012】
好ましい態様において、前記ポリカルボン酸系重合体Qは、下記一般式(1)で表される単量体及び下記一般式(2)で表される単量体を含む単量体混合物を共重合させた共重合体単位と、前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位とを有する重合体である。
【化3】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表し、Xは-COO-、-CON<、又は-(CH
2)
bO-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、bは1乃至20の数を表す。)
【化4】
(式中、R
15、R
16、R
17、R
18はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、-COOR
19(R
19は、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、グリシジル基を表す。)、又はグリシジル基を表すか、あるいはR
15及びR
16、若しくはR
17及びR
18は式(2)中の>C=C<基と一緒になって酸無水物を形成する。cは1乃至20の数を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はアルカノールアミンを表す。)
【0013】
本発明の水硬性組成物用混和剤において、前記重縮合生成物Pと、前記ポリカルボン酸系重合体Qとの割合が、質量比でP:Q=1:99~99:1であることが好ましい。
【0014】
また本発明は、前記式(A)で表される化合物A、式(B)で表される化合物B並びに式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物Cを含む単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物Pと、アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有するポリカルボン酸系重合体Qとからなる、水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せも対象とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、水硬性組成物において、それに含まれる炭素分、典型的には未燃カーボンの存在によって引き起こされ得る好ましくない影響を低減することができるという効果を奏する。
すなわち本発明の水硬性組成物用混和剤並びに水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、これをフライアッシュ(FA)等配合のコンクリート組成物に配合した場合においても減水性を高い状態に保つことができ、特にFA配合組成物の硬化体において未燃カーボンがコンクリートの表面に浮上することにより引き起こされる表面の黒ずみ発生を抑制でき、外観に優れる硬化体を提供できる。さらに、FAなどの無機粉体が水硬性組成物に多量に含まれる場合においても、凝結の遅延やブリーディング、初期強度の低下等の問題を抑制できる。
また本発明の水硬性組成物用混和剤においては、これらを構成する重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとの相溶性に優れることから、一液安定性に優れた混和剤を提供できるものである。また本発明の水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとの相溶性に優れることから、現場での投入時に両成分が分離を起こすことなく使用に供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<黒ずみ防止メカニズムの推察>
本発明の水硬性組成物用混和剤及びそれを調製するための組合せは、一効果として、表面に黒ずみ発生の少ない水硬性組成物硬化体が得られるという効果を奏する。
一般にコンクリート肌面に起こる黒い斑点や全体の黒ずみは、セメントや骨材、混和材等に含有される強熱減量物質や炭化物質、カーボン等の黒色微粉(以下、有色微粒子ともいう)が、流動性の高い自己充填コンクリート等で、特に振動を加えた場合に表面に移動することで発生すると考えられる。本発明の水硬性組成物用混和剤がコンクリート肌面の黒ずみの発生を抑制できる理由の詳細は不明であるが、後述する重縮合生成物Pがその疎水性部分において有色微粒子を吸着したのち、リン酸エステル誘導体(化合物B)により導入されたアニオン性基を介して吸着した有色微粒子とともに重縮合生成物Pがセメントへ吸着することで、有色微粒子をセメント表面に固定化し、結果としてコンクリート表面の黒ずみ発生を抑制しているものと考えられる。
また、重縮合生成物Pはポリカルボン酸系重合体Qとの相溶性に優れ、一液化してもそれぞれの機能が損なわれないため、水硬性組成物の分散性やその保持性、凝結時間の短縮、さらには強度増進性および材料分離抵抗性が向上するといった効果にもつながったと考えられる。
【0017】
また、コンクリートの美観を高めるために無機または有機顔料を配合した様々な色のカラーコンクリートが上市されている。このカラーコンクリートは、顔料粒子がコンクリート中に均一に分散されず、色むらが生じることがあるが、本発明の水硬性組成物用混和剤を使用することにより、顔料粒子を吸着し分散性を向上させることで、色むらのないカラーコンクリートを得ることができる。
【0018】
<有色微粒子>
上記の有色微粒子を含有する粉体としては、フライアッシュ(石炭灰)、鉄鋼スラグ、銅スラグ、シリカフューム、石粉、炭酸カルシウム、木炭その他カーボン粉末類またはこれらとのセメントブレンド物であるフライアッシュセメント、高炉セメント、シリカフュームセメント等が挙げられる。有色微粒子を有する骨材としては亜炭含有頁岩を原料とする砕砂、砕石の他、溶融スラグ砂、フェロニッケルスラグ砂等が挙げられる。本発明の水硬性組成物用混和剤が対象とする水硬性組成物は、セメント類を主成分とするセメントペースト、モルタル、コンクリート等であるが、作業量の低減効果等の観点から、コンクリートを対象としたときに特にその効果が大きい。水硬性物質の具体例としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカフュームセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、天然石膏、副成石膏等が挙げられる。また、本発明の水硬性組成物用混和剤が対象とする水硬性組成物は、有色微粒子をほとんど含有しない骨材も含有してよい。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石および硬質砂岩が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。
【0019】
<水硬性組成物用混和剤及び水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せ>
本発明の水硬性組成物用混和剤は、後述する重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとを含有する。
また本発明の水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、後述する重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとからなる。
以下、重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qについて詳述する。
【0020】
[重縮合生成物P]
本発明で使用する重縮合生成物Pは、フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(式(A)で表される化合物A)、フェノールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル誘導体(式(B)で表される化合物B)、並びに、アルデヒド類(式(C)で表される一種以上のアルデヒド化合物C)を含み、所望により、さらにヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体(式(D)で表される化合物D)を含む、単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む(すなわち前記共重合体は、前記単量体混合物の重縮合共重合体である)。
なお本発明において、「単量体混合物を重縮合させた共重合体を含む、重縮合生成物P」とは、
(1)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cの全てが重縮合した共重合体(共重合体1)を含む態様、
(2)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Dの全てが重縮合した共重合体(共重合体2)を含む態様、
(3)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cのうちの二種が重縮合した共重合体(共重合体3)を含む態様、
(4)前記単量体混合物のうち、化合物A乃至化合物Cのうちの一種又は二種と化合物Dが重縮合した共重合体(共重合体4)を含む態様、
(5)前記(1)乃至(4)のうち二種以上の共重合体を含む態様
(6)前記(1)乃至(4)のうち一種以上の共重合体に加え、未反応の化合物A~Dのうちの少なくとも一種を含む態様、
のいずれをも包含するとともに、一般に、各々の重合工程、各成分(化合物A乃至化合物D)の調製工程、例えばアルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
以下、単量体混合物に含まれる化合物A乃至化合物Dについて詳述する。
【0021】
《式(A)で表される化合物A》
化合物Aはフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体であって、下記式(A)で表される構造を有する。
【化5】
上記式中、R
1は水素原子、炭素原子数1乃至24のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアルケニル基を表し、A
1Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、pはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、Xは水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数2乃至24のアシル基を表す。
【0022】
上記化合物Aは、フェノール又はその置換体に対して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(アルキルエステル又は脂肪酸エステル)も化合物Aに包含される。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加の何れの形態であってもよい。
【0023】
すなわち上記A1Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基及びブチレンオキサイド基が挙げられる。A1Oはエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基又はブチレンオキサイド基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またpはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至300、好ましくは1乃至150の数を表し、A1Oの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
【0024】
上記R1における炭素原子数1乃至24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、イコシル基、ドコシル基(ベヘニル基)、テトラコシル基等が挙げられ、これらは分岐構造(例えばイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基等)及び/又は環状構造(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基等)を有していてもよい。
さらに炭素原子数2乃至24のアルケニル基としては、上記炭素原子数1乃至24のアルキル基における炭素原子数2乃至24のアルキル基において、炭素-炭素二重結合を一個有する基が挙げられる。具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよい。
【0025】
上記Xにおける炭素原子数1乃至10のアルキル基としては、分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよく、具体的には上記R1における炭素原子数1乃至24のアルキル基の具体例として挙げた基のうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基を挙げることができる。
また炭素原子数2乃至24のアシル基としては、飽和又は不飽和のアシル基(R’(CO)-基、R’は炭素原子数1乃至23の炭化水素基)が挙げられる。例えば炭素原子数2乃至24の、飽和のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)及びテトラコサン酸(リグノセリン酸)等のカルボン酸及び脂肪酸由来のアシル基が、モノ不飽和のアシル基としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、ジ不飽和のアシル基としては、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸由来のアシル基が、そして、トリ不飽和のアシル基としては、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。
中でも好ましいXとしては、水素原子及びアセチル基が挙げられる。
【0026】
上記式(A)で表される化合物Aは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
《式(B)で表される化合物B》
化合物Bはフェノールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル誘導体であって、下記式(B)で表される構造を有する。
【化6】
式中、R
2は炭素原子数4乃至24のアルキル基、又は炭素原子数4乃至24のアルケニル基を表し、A
2Oは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、qはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至300の数を表し、Y
1はリン酸エステル基を表す。
【0028】
上記化合物Bは、フェノール又はその置換体に対して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物のリン酸エステル誘導体である。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加の何れの形態であってもよい。
【0029】
すなわち上記A2Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基及びブチレンオキサイド基が挙げられる。A2Oは、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基又はブチレンオキサイド基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またqはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、1乃至300、好ましくは1乃至40の数を表す。
【0030】
上記R2における炭素原子数4乃至24のアルキル基、及び炭素原子数4乃至24のアルケニル基は、分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよく、その具体例としては、上記化合物A(式(A))中のR1における炭素原子数1乃至24のアルキル基及び炭素原子数2乃至24のアルケニル基の具体例として挙げた基のうち、炭素原子数4乃至24のアルキル基、及び炭素原子数4乃至24のアルケニル基を挙げることができる。
なお、化合物Bにおいて、R2を炭素原子数4乃至24のアルキル基とする(アルキル置換体とする)ことにより、水硬性組成物に水硬性粉体としてフライアッシュ(FA)を配合した場合における流動性が向上し、FA配合水硬性組成物より得られる硬化体の表面の黒ずみ発生を抑制でき、さらに、R2の炭素鎖を長くすることにより、FA配合水硬性組成物より得られる硬化体の外観をより良好なものとすることが期待できる。
【0031】
またY1はリン酸エステル基を表すことから、化合物Bはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はこれらの混合物となる。
上記リン酸エステル(モノエステル、ジエステル)の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0032】
上記式(B)で表される化合物Bは、以下の式で表される化合物を挙げることができる。
なお式中、R2、A2O、qは上記式(B)の定義されたものと同じものを表し、Phはフェニレン基を表す。またM’は、水素原子;ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属原子;カルシウム又はマグネシウム等のアルカリ土類金属原子;アンモニウム基;アルキルアンモニウム基又はアルカノールアンモニウム基等の有機アンモニウム基を表す。
またZは、式:R”-O-(A’O)s-で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル残基(式中、R”は炭素原子数1乃至24のアルキル基を表し、A’Oは炭素原子数2乃至3のオキシアルキレン基を表し、すなわちオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、sはオキシアルキレン基A’Oの平均付加モル数であって1乃至100を表す。)を表し、Zが複数存在する場合、互いに同じ基であっても異なる基であってもよい。
・リン酸モノエステル及びその塩
R2-Ph-O-[A2O]q-P(=O)(-OM’)2
・リン酸ジエステル及びその塩
[R2-Ph-O-[A2O]q-]2P(=O)(-OM’)
[R2-Ph-O-[A2O]q-](Z-)P(=O)(-OM’)
・リン酸トリエステル
[R2-Ph-O-[A2O]q-]3P(=O)
[R2-Ph-O-[A2O]q-]2(Z-)P(=O)
[R2-Ph-O-[A2O]q-](Z-)2P(=O)
【0033】
上記式(B)で表される化合物Bは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
《式(C)で表されるアルデヒド化合物C》
化合物Cはアルデヒド類であって、下記式(C)で表される構造を有する。
【化7】
上記式中、R
3は水素原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数2乃至10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、又はヘテロ環式基を表し、rは1乃至100の数を表す。
なおこれらアルキル基、アルケニル基、フェニル基、ナフチル基及びヘテロ環式基は、炭素原子数1乃至10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;スルホ基、スルホン酸塩基等のスルホン酸官能基;アセチル基等のアシル基;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基等の任意の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
上記R3における炭素原子数1乃至10のアルキル基、及び炭素原子数2乃至10のアルケニル基は、分岐構造、環状構造を有していてもよく、その具体例としては、上記化合物A(式(A))中のR1における炭素原子数1乃至24のアルキル基及び炭素原子数2乃至24のアルケニル基の具体例として挙げた基のうち、炭素原子数1乃至10のアルキル基、及び炭素原子数2乃至10のアルケニル基を挙げることができる。
さらに、ヘテロ環式基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピペリジル基、モルホリノ基等が挙げられる。
またrは、好ましくは2乃至100の数を表す。
【0036】
化合物Cは、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキシル酸、アセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプタナール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、ヘプテナール、オクテナール、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドスルホン酸、ベンズアルデヒドジスルホン酸、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、ベンジルアルデヒド[(C6H5)2C(OH)-CHO]、ナフトアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、中でも好適には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド又はこれらの二種以上の任意の混合物からなる群より選択され得る。
化合物Cは純粋な結晶若しくは粉状物質、又はそれらの水和物としての使用も可能であり、また、ホルマリン等の水溶液の形態でも使用され得、この場合、成分の計量又は混合を簡素化させることができる。
【0037】
上記式(C)で表される化合物Cは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
《式(D)で表される化合物D》
化合物Dは、ヒドロキシエチルフェノールのアルキレンオキサイド付加物又はその誘導体であって、下記式(D)で表される構造を有する。
【化8】
式中、A
3O及びA
4Oは、それぞれ独立して炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表し、m及びnはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300の数を表し且つm+n≧1である。
またY
2及びY
3はそれぞれ独立して水素原子、又はリン酸エステル基を表す。
【0039】
上記化合物Dは、ヒドロキシエチルフェノールに対して、詳細にはヒドロキシエチル基或いはフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方、或いは双方において、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物であり、また該アルキレンオキサイド付加物の誘導体(リン酸エステル)も化合物Dに包含される。
前記ヒドロキシエチルフェノールは、o-ヒドロキシエチル-フェノール、m-ヒドロキシエチル-フェノール、p-ヒドロキシエチル-フェノールのいずれであってもよい。化合物Aは、好ましくは、o-ヒドロキシエチル-フェノールに炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドが付加した化合物(及びそのエステル誘導体)である。
上記炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられ、これらアルキレンオキサイドは単独付加又は混合付加することができ、二種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはブロック付加、ランダム付加の何れの形態であってもよい。
【0040】
すなわち上記A3O及びA4Oにおける炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基及びブチレンオキサイド基が挙げられる。A3O及びA4Oは、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基又はブチレンオキサイド基のみから構成されていてもよいし、これら二種以上の基を含んでいてもよい。二種以上の基を含む場合、それらの付加形態はランダム付加、ブロック付加のいずれであってもよい。
またm及びnはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって、それぞれ独立して0乃至300、好ましくは0乃至60の数を表し且つm+n≧1である。A3O、A4Oの付加モル数を大きくすることにより、減水性の向上が期待できる。
【0041】
またY2、Y3がリン酸エステル基を表す場合、それらはリン酸モノエステル及び/又はその塩、リン酸ジエステル及び/又はその塩、若しくはリン酸トリエステル、又はこれらの混合物である。
またリン酸エステル(モノエステル、ジエステル)の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム又はマグネシウム等の第2族金属塩;アンモニウム塩;アルキルアンモニウム又はアルカノールアンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。
化合物Dの末端をアニオン化させる、すなわち、リン酸エステル誘導体とすることにより、水硬性組成物に添加した際、モルタルの練混ぜ時間を短縮できる。
【0042】
上記式(D)で表される化合物Dは、一種を単独で、また二種以上を組み合わせて使用できる。
【0043】
《単量体混合物》
本発明で使用する重縮合生成物Pに用いる上記化合物A乃至化合物C、そして所望によりさらに化合物Dを含む単量体混合物において、その混合割合は特に限定されないが、好ましくは、前記化合物A、化合物B及び化合物Dをモル比にて、化合物A:化合物B:化合物D=0.1~2:0.1~4:0~2の割合にて含み、且つ、前記化合物A、化合物B及び化合物Dの合計モル量に対して、化合物Cをモル比にて、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=1~10:10~1の割合にて含む、
より好ましくは、化合物A:化合物B:化合物D=0.5~1.5:0.5~3.5:0~1.0(モル比)であり、(化合物A+化合物B+化合物D):化合物C=2~6:10~1(モル比)である。
【0044】
《共重合体及び重縮合生成物》
本発明で使用する重縮合生成物Pは、上記化合物A乃至化合物C、そして所望によりさらに化合物Dを含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体を含みてなる。
上記共重合体を得るにあたり、化合物A乃至化合物Dの製造方法、及び共重合体を得る重合方法は特に限定されない。
また重縮合に際し、上記化合物A、化合物B及び化合物C、さらに化合物Dの添加順序や添加方法についても特に限定されず、例えば、重縮合反応前に化合物A~化合物Dの全量を一括添加する、重縮合反応前に化合物A~化合物Dのうち一部を添加し、その後残りを滴下により分割添加する、或いは、重縮合反応前に化合物A~化合物Dのうち一部を添加し、一定の反応時間経過後の残りを追加添加する、など何れであってよい。
【0045】
重縮合生成物は、例えば化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dを脱水触媒の存在下にて、無溶媒下或いは溶媒下で、反応温度:80℃~150℃、常圧~加圧下、例えば0.001~1MPa(ゲージ圧)にて重縮合させることにより得られる。
上記脱水触媒としては、塩酸、過塩素酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、フェノールスルホン酸、酢酸、硫酸、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、ニトロ安息香酸、ニトロサリチル酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ酢酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、活性白土等が挙げられ、これら脱水触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる
また溶媒下で重縮合反応を実施する場合、該溶媒としては水、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族化合物等を用いることができ、更に上記脱水触媒(酸触媒)として適用可能なもの、例えば酢酸を溶媒として用いることも可能である。
反応温度は、好ましくは95℃~130℃の温度下で実施され得、また3~25時間反応させることにより重縮合反応を完結させることができる。
重縮合反応は酸性条件にて実施することが好ましく、好ましくは反応系のpHを4以下とすることが望ましい。
【0046】
また化合物A、化合物B、化合物C及び化合物Dに加え、本発明の効果を損なわない範囲において、これら化合物と重縮合可能なその他単量体を単量体混合物に配合してもよい。
その他単量体としては、クレゾール、カテコール、レソルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、ビスフェノールA、アニリン、メチルアニリン、ヒドロキシアニリン、メトキシアニリン及び/又はサリチル酸と、1~300molのアルキレンオキシドとの付加物、フェノール、フェノキシ酢酸、メトキシフェノール、レソルシノール、クレゾール、ビスフェノールA、ノニルフェノール、アニリン、メチルアニリン、N-フェニルジエタノールアミン、N,N-ジ(カルボキシエチル)アニリン、N,N-ジ(カルボキシメチル)アニリン、フェノールスルホン酸及びアントラニル酸等を挙げることができる。
【0047】
重縮合反応の完結後、反応系中の未反応アルデヒド成分(化合物C)の含有量を低減させるため、従来公知種々の方法を採用することができる。例えば、反応系のpHをアルカリ性とし、60~140℃に加熱処理を行う方法、反応系を減圧とし(例えば、ゲージ圧:-0.1~-0.001MPa)アルデヒド成分を揮発除去する方法、更には少量の亜硫酸水素ナトリウム、エチレン尿素および/またはポリエチレンイミンを添加する方法などが挙げられる。
反応に用いた前記脱水触媒は、反応完結後に中和し、塩の形態としてろ過により除去することもできるが、触媒を除去しない態様であっても、後述する本発明の水硬性組成物用混和剤としての性能が損なわれるものではない。触媒除去の方法は、上記ろ過以外にも、相分離、透析、限外ろ過、イオン交換体の使用などが挙げられる。
なお、反応物を中和および水等により希釈することで、後述する水硬性組成物用混和剤としての使用における計量等の作業性が向上する。この際、中和に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類などが挙げられ、このうちの1種または2種にて用いられ得る。
【0048】
最終的に得られる上記共重合体は、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」と呼ぶ)、ポリエチレングリコール換算)で5,000~100,000の範囲が適当であり、より好ましくは、重量平均分子量が10,000~80,000の範囲、特に15,000~35,000の範囲であることが、優れた分散性能を発現するため望ましい。
なお前述したように本発明における「重縮合生成物」とは、化合物A乃至化合物Dを含む単量体混合物を重縮合させて得られる共重合体のみからなるものでもよいが、一般に、各々の重合工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分、副反応物も含めた成分も包含されている。
【0049】
[ポリカルボン酸系重合体Q]
本発明で使用するポリカルボン酸系重合体Qは、アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有する、ポリカルボン酸系重合体である。
該ポリカルボン酸系重合体は、水硬性組成物に対して分散剤としての役割を担い、これを使用することでスランプロスの少ないコンクリートを得ることが期待できる。
【0050】
上記ポリカルボン酸系重合体Qにおいて、アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位は、それぞれ、アミノ基及びイミノ基を有する化合物、又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物に由来する構造単位である。
そして、前記アミノ基及びイミノ基を有する化合物、又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物は、その単位構造中において一級アミンであるアミノ基及び二級アミンであるイミノ基を、場合によりさらにカルボン酸とアミノ基又はイミノ基との縮合で形成されるアミド基(必須でない)を、単位構造1モルに対し、少なくとも各々1モル以上有する化合物である。
上記化合物は、低分子化合物又は高分子化合物のいずれであってもよい。例えば、低分子化合物である場合の例としては、エチルアミン、エチレンアミン、ジエチルアミン又はアニリンなどの脂肪族、脂環式又は芳香族アミン、1-ベンゾフラン-2-イルアミン又は4-キノリルアミンなどのヘテロ環式アミン、ヘキシリデンアミン又はイソプロピリデンアミンなどの脂肪族イミン、アセトアミド、ベンズアミド又はラクタムなどの脂肪族、脂環式又は芳香族アミドの他、ヒドロキシルアミン、酸アミドなどより誘導された化合物であって、アミノ基及びイミノ基を有する化合物、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物が含まれ、さらに該化合物に対してアルキレンオキサイドなどの含酸素又は含窒素の官能基、含ハロゲン(フッ素、臭素、ヨウ素)置換基などを付加した付加物も含み得る。また、高分子化合物である場合の例としては、例えば上記低分子化合物に誘導し得る、例示した化合物の1種又は2種以上を重合させた化合物や、ポリアルキレンポリアミン、又はポリアミドポリアミンなどが挙げられる。
上記化合物の分子量は900乃至10,000であり、好ましくは900乃至3,000、より好ましくは900乃至2,000であることが望ましい。この場合、上記化合物は、具体例としては、ポリアルキレンポリアミン又はポリアミドポリアミンであり、これらはそれぞれポリアルキレンオキサイドを付加したものも含んでいてよい。
【0051】
すなわち、好適な態様において、上記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位は、好ましくはポリアルキレンポリアミンに由来する構造単位であり、該ポリアルキレンポリアミンはポリアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレンポリアミンを含むことができる。
また前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位は、好ましくはポリアミドポリアミンに由来する構造単位であり、該ポリアミドポリアミンは、ポリアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレンポリアミンを含んでいてもよい。
【0052】
上記ポリアルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、あるいはエチレン単位と窒素原子を多く含む混合体である高分子ポリエチレンポリアミンの混合物等や、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ-3-メチルプロピルイミン、ポリ-2-エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンの如き不飽和アミンの重合体等が挙げられる。更にポリアルキレンポリアミンは、エチレンイミン、プロピレンイミン、3-メチルプロピルイミン、2-エチルプロピルイミン等の環状イミン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルフタルイミド等の不飽和アミド、不飽和イミドと、これらと共重合可能な不飽和化合物との共重合体であってもよい。環状イミン、不飽和アミド、不飽和イミド等と共重合可能な不飽和化合物としては、例えばジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸やこれらの塩、エチレンスルフィドやプロピレンスルフィド等の環状スルフィド化合物、オキセタン、モノ又はビスアルキルオキセタン、モノ又はビスアルキルクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、モノ又はビスアルキルテトラフロロフラン等の環状エーテル類、1,2-ジオキソフラン、トリオキソフラン等の環状ホルマール類、N-メチルエチレンイミン等のN置換アルキルイミン等が挙げられる。
【0053】
またポリアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレンポリアミンとは、上記ポリアルキレンポリアミンの少なくとも2分子とアルキレンオキサイドの少なくとも1分子とが共重合した化合物である。こうしたポリアルキレンポリアミン-アルキレンオキサイド共重合物を構成する少なくとも2分子のポリアルキレンポリアミンは、同一の化合物であっても異なる化合物であってもよい。このアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられ、これらは混合して用いることができる。上記アルキレンオキサイドのうち、減水効果向上の面からはエチレンオキサイドが好ましい。ポリアルキレンポリアミン-アルキレンオキサイド共重合物において、ポリアルキレンポリアミン2分子あたり2分子以上のアルキレンオキサイドが共重合している場合、アルキレンオキサイドは相互に付加重合したポリオキシアルキレン鎖を形成してもよい。アルキレンオキサイドは1種のみを用いても2種以上を用いてもよく、2種以上のアルキレンオキサイドを用いてポリオキシアルキレン鎖が形成される場合、該ポリオキシアルキレン鎖を構成する2種以上のアルキレンオキサイドはブロック状に結合していてもランダムに結合していてもよい。またポリアルキレンポリアミン共重合体1分子中に、2以上のポリオキシアルキレン鎖が存在する場合、各ポリオキシアルキレン鎖は同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
またポリアミドポリアミンとしては上記ポリアルキレンポリアミンと二塩基酸、二塩基酸無水物、二塩基酸エステル、二塩基酸ジハライドなどがアミド結合を介し縮重合された化合物が挙げられる。二塩基酸としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の総炭素原子数が2乃至10の脂肪族飽和二塩基酸が、二塩基酸無水物としてはこれら上記二塩基酸の無水物が挙げられる。二塩基酸エステルとしては、例えば上記二塩基酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、モノブチルエステル、モノプロピルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジプロピルエステル等が挙げられ、二塩基酸ジハライドとしては前記二塩基酸の二塩化物、二臭素化物、二ヨウ化物等が挙げられる。
【0055】
またポリアルキレンオキサイドを付加したポリアミドポリアミンとは上記ポリアミドポリアミン1分子中のアミノ基、イミノ基、アミド基に対しアルキレンオキサイドを付加せしめた化合物を示す。このアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられ、これらは単独もしくは混合して用いることができ、2種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合にはこれらがブロック状に結合していてもランダムに結合していてもよい。
【0056】
本発明に用いるポリカルボン酸系重合体Qは、下記一般式(1)で表される単量体(以下、単量体Eと称する)及び下記一般式(2)で表される単量体(以下、単量体Fと称する)を含む単量体混合物を共重合させた共重合体単位と、前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位とを有する重合体を好適に使用できる。このような重合体は、下記一般式(1)で表される単量体E及び一般式(2)で表される単量体Fと、前記アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、又は、前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有する単量体(以下、単量体Gと称する)とを共重合させることによって得ることができる。
【0057】
下記一般式(1)に表される単量体Eにおいて、R
11、R
12、R
13、R
14はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基を表すものであり、Xは-COO-、-CON<、又は-(CH
2)
b-O-を表し、AOは炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド基を表す。aはアルキレンオキサイドの平均付加モル数であって1乃至200の数を表し、より好ましくは30乃至150の数を表す。Xが-(CH
2)
bO-である場合にはbは1乃至20の数を表す。
【化9】
【0058】
上記一般式(1)で表される単量体Eとして、より具体的には、重合活性を有するポリアルキレングリコール系単量体であり、たとえば;ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、アルキレングリコールモノアルケニルエーテル、メトキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテル、メトキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテルなどの(アルコキシ)アルキレングリコールと炭素原子数3乃至8のアルケニルエーテルより形成されるアルケニルエーテル類;メトキシポリアルキレングリコール、エトキシポリアルキレングリコール、プロポキシポリアルキレングリコールなどの炭素原子数1乃至22のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸よりなるアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;炭素原子数1乃至22のアルコキシポリアルキレングリコールとオレイン酸などの不飽和脂肪酸よりなるアルコキシアルキレングリコール不飽和脂肪酸エステル類;末端アミノ基を有するα-アルコキシ-ω-アミノ-ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸あるいは不飽和脂肪酸とから形成されるアルコキシアルキレングリコールアミド化合物類;不飽和脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物である不飽和脂肪族エーテル類;などの、重合活性基とポリアルキレングリコールとを構成単位として有する単量体である。このポリアルキレングリコールの構成は炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイドより形成されるものであってエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイドの単独或いは混合付加からなるものであり、混合付加の場合はランダム付加又はブロック付加の何れであってもよい。これら重合活性を有するポリアルキレングリコール系単量体は単独あるいは複数の組合せで用いることもできる。
【0059】
また、下記一般式(2)に表される単量体Fにおいて、R
15、R
16、R
17、R
18はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、-COOR
19(R
19は、炭素原子数1乃至22の炭化水素基、-(CH
2)
c-COOM、-COOM、グリシジル基を表す。)、又はグリシジル基を表すか、あるいは、R
15及びR
16、若しくは、R
17及びR
18は式(2)中の>C=C<基と一緒になって酸無水物を形成する。cは1乃至20の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はアルカノールアミンを表す。
【化10】
【0060】
上記一般式(2)で表される単量体Fとして、より具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸ジアルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルなどの不飽和脂肪酸及びそのエステル誘導体、メタアクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、グリシジルアリルエーテルなどのグリシジル化合物などが挙げられる。これらは酸の形態でも中和された形態でもよく、中和する際にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムイオン、アルカノールアミンなどを用いる。これら酸又は中和塩は単独でも複数の混合でもよい。
【0061】
アミノ基及びイミノ基を有する構造単位、又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位を有する単量体Gとしては、例えば前記アミノ基及びイミノ基を有する化合物、又は前記アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、又は、アクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールより形成されるエステルとの縮合物が挙げられ、具体的には特許第3235002号公報、特許第3336456号公報、特許第3740641号公報、特許第3780456号公報等にその製造方法が記載されている。
【0062】
上記単量体E、単量体F及び単量体Gの共重合比は、スランプロスの低減の点で、質量比でE:F:G=50~90:5~40:5~40の範囲(単量体E、単量体F及び単量体Gの3種の質量比の合計は100である)であれば好ましい。
共重合体の製造方法は特に限定されず、例えば、重合開始剤を用いる溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法が採用できる。
【0063】
本発明のポリカルボン酸系重合体Qは、上記単量体以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、これら単量体と共重合可能なその他単量体を共重合したものであってもよい。共重合可能な単量体成分としては以下の公知のものが挙げられる。(非)水系単量体類:スチレンなど、アニオン系単量体類:ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸リン酸エステル塩、(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩など、アミド系単量体類:アクリルアミド、アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物など、アミン系単量体:ポリアルキレンポリイミン系化合物など、ポリアルキレングリコール系単量体類:ポリアルキレングリコールと無水マレイン酸のモノ又はジエステル、ポリアルキレングリコールとイタコン酸のエステルなどである。
これらその他の単量体は、一般式(1)で表される単量体E、一般式(2)で表される単量体F、及び単量体G及びこれら以外の単量体の全合計質量に対し0~20質量%程度用いることができる。
【0064】
また本発明において、ポリカルボン酸系重合体Qに含まれるアミノ基及びイミノ基を有する構造単位、及び/又は、アミノ基、イミノ基及びアミド基を有する構造単位は、前記アミノ基及びイミノ基を有する化合物、及び/又はアミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物をグラフト結合基又は架橋基を介してポリカルボン酸系重合体Q0に結合させたものであってもよい。ここで、ポリカルボン酸系重合体Q0は、酸基、酸無水物基、グリシジル基、酸エステル基等、前記アミノ基及びイミノ基を有する化合物、及び/又はアミノ基、イミノ基及びアミド基を有する化合物と、グラフト結合又は架橋しうる官能基を有するポリカルボン酸系重合体であれば特に限定されるものではない。ポリカルボン酸系重合体Q0は、例えば前記単量体Eと単量体F、必要に応じその他単量体とを共重合することにより得られる共重合体であり、具体的には無水マレイン酸とポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルとの共重合体、無水マレイン酸とアリルアルコールアルキレンオキサイド付加物モノメチルエーテルよりなる共重合体、(メタ)アクリル酸と(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸グリシジルと(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸とスルホン基を有する単量体と(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸とリン酸基を有する単量体と(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
【0065】
本発明に用いるポリカルボン酸系共重合体Qは重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール換算)で1,000~500,000の範囲がよく、この範囲を外れると減水性が著しく低下するか、あるいは所望のスランプロス低減効果が得られない。
【0066】
なお本発明では、上述の製造手順等により製造されたポリカルボン酸系共重合体Qを含む反応液をそのまま、本発明の水硬性組成物用混和剤及び水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せに用いてよい。この場合、該液には、ポリカルボン酸系共重合体Q以外に、各々の重合工程、グラフト化工程、架橋工程、アルキレンオキサイド付加工程等で発生した未反応成分や副反応物を含み得る。
【0067】
[配合割合]
本発明の水硬性組成物用混和剤、又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せにおいて、前述の重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとの配合割合(質量比)としては、重縮合生成物P:ポリカルボン酸系重合体Q=1:99~99:1であり、好ましくは1:9~3:1、さらに好ましくは1:5~1:1である。
前記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとからなる水硬性組成物用混和剤、或いはこれらの組み合わせからなる水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、セメント質量に対して、又は混和材として炭酸カルシウムや、フライアッシュ等のポゾラン質微粉末を併用する場合には、セメントと炭酸カルシウム、フライアッシュ等の合計質量に対して、固形分換算にて、通常0.1~10質量%の範囲で用いられるが、0.1~5質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0068】
[その他添加剤]
本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、公知公用の水硬性組成物用の化学混和剤等を適宜採用して組み合せることができる。具体的には、従来公知のセメント分散剤、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、空気連行剤(AE剤)、起泡剤、消泡剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、分離低減剤、増粘剤、収縮低減剤、養生剤、撥水剤等からなる群から選択される少なくとも一種の他のコンクリート添加剤を配合することができる。
なお本発明が対象とする水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せとは、上記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qからなる一液化した水硬性組成物用混和剤、該水硬性組成物用混和剤にさらに公知のコンクリート添加剤を配合した形態、コンクリート製造時に上記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qが個々に添加される形態、コンクリート製造時に前記コンクリート添加剤を含む上記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qが個々に添加される形態、コンクリート製造時に上記重縮合生成物Pと前記コンクリート添加剤を含むポリカルボン酸系重合体Qが個々に添加される形態、及びコンクリート製造時に前記コンクリート添加剤を含む上記重縮合生成物Pと前記コンクリート添加剤を含むポリカルボン酸系重合体Qが個々に添加される形態の何れをも含む。
【0069】
例えば公知のセメント分散剤としては、特公昭59-18338号公報、特許第2628486号公報、特許第2774445号公報等に記載のポリカルボン酸系共重合体の塩があり、またナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、リグニンスルホン酸塩、グルコン酸ソーダ、糖アルコールも挙げられる。
【0070】
また空気連行剤を具体的に例示すると、アニオン系空気連行剤、ノニオン系空気連行剤、及び両性系空気連行剤が挙げられる。
凝結遅延剤を例示すると、無機質系凝結遅延剤、有機質系凝結遅延剤が挙げられる。
促進剤としては、無機系促進剤、有機系促進剤が挙げられる。
増粘剤・分離低減剤を例示すると、セルロース系水溶性高分子、ポリアクリルアミド系水溶性高分子、バイオポリマー、非イオン系増粘剤などが挙げられる。
消泡剤を例示すると非イオン系消泡剤類、シリコーン系消泡剤類、高級アルコール類、これらを主成分とした混合物などが挙げられる。
【0071】
本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、水硬性組成物において好適に使用され、特にフライアッシュをはじめ、シンダアッシュ、クリンカアッシュ、ボトムアッシュ等の石炭灰、シリカフューム、シリカダスト、溶融シリカ微粉末、高炉スラグ、火山灰、珪酸白土、珪藻土、メタカオリン、シリカゾル、沈降シリカ等のポゾラン質微粉末を含有する水硬性組成物に対して、好適に使用される。
【0072】
本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せが例えばセメント組成物に適用される場合、該セメント組成物を構成する成分は、従来慣用のコンクリート用成分であり、セメント(例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント又は高炉セメント等)、骨材(すなわち細骨材及び粗骨材)、混和材(例えばシリカフューム、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等)、膨張材及び水を挙げることができる。
また本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せ以外の混和剤で、調合時に別に添加できる混和剤としては、前記の公知公用のコンクリート添加剤、例えば空気連行剤、凝結遅延剤、促進剤、分離低減剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤等があり、これらも適宜配合し得る。それら各成分の配合割合は選択された成分の種類や使用目的に応じて適宜決定され得る。
【0073】
本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、優れた黒ずみ抑制効果、凝結時間短縮及び圧縮強度増進効果とともに、自身の一液性又は相溶性に優れるだけでなく、これらと水との相溶性にも優れる。
すなわち水/粉体比の適用範囲が広く、水/粉体比(質量%)で60~15%の種々の強度を有するコンクリートに適用可能である。
【0074】
本発明の水硬性組成物用混和剤又は水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せの使用方法は、一般のセメント分散剤等の混和剤の場合と同様であり、コンクリート混練時に原液添加するか、予め混練水に希釈して添加する。あるいはコンクリート又はモルタルを練り混ぜた後に添加し、再度均一に混練してもよい。
【実施例】
【0075】
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0076】
なお、実施例において、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。また“部”とは“質量部”を表す。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件>
カラム:OHpak SB-802.5HQ、OHpak SB-803HQ、OHpak SB-804HQ(昭和電工(株)製)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合液(体積比80/20)
検出器:示差屈折計、検量線:ポリエチレングリコール
【0077】
<重縮合生成物Pの調製>
[例1:(A)の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にジエチレングリコールモノフェニルエーテル(東邦化学工業(株)製ハイソルブDPH)を80部、96%水酸化カリウム0.2部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で150℃まで加熱した。そして、安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキサイド1700部を10時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(EOの付加モル数=90)を得た。
【0078】
[例2:(B)の調製]
<EO付加体の調製>
出発原料としてp-tert-ブチルフェノール(DIC(株)製、PTBP)、またはp-tert-オクチルフェノール(DIC(株)製、POP)を用いて、前記(A)の調製方法にならってエチレンオキサイド付加反応を行った。エチレンオキサイド付加モル数はいずれも6モルとした。
<リン酸エステル化>
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に、p-tert-ブチルフェノールのEO付加体(6モル付加体)又はp-tert-オクチルフェノールのEO付加体(6モル付加体)を3モル仕込み、窒素バブリングを行いながら50℃にて1モルの無水リン酸を4時間かけて仕込み反応させた。その後100℃にて3時間の熟成反応を行い、リン酸エステル化反応を終結させ、p-tert-ブチルフェノールEO付加体リン酸エステル及びp-tert-オクチルフェノールEO付加体リン酸エステルを得た。
【0079】
[例3:(D)の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にオルト-ヒドロキシエチルフェノール(Aldrich製試薬)を100部、96%水酸化カリウム0.3部を仕込み、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で130℃まで加熱した。そして、安全圧下で130℃を保持したままエチレンオキサイド190部を4時間で反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、オルト-ヒドロキシエチルフェノールの合計6モルEO付加体を得た。
【0080】
[調製例1:重縮合生成物(No.6)の調製]
撹拌機、温度計、還流冷却器を備えたガラス製反応容器の中に、(A)、(B)及び(D)の各原料を表1に記載のモル比にて仕込んだ。これを70℃まで昇温し、次いで98%硫酸を(A)、(B)及び(D)の合計質量に対し、1.0wt%仕込んだ。次いで(C)原料を表1に記載のモル比にて反応容器内へ一括にて仕込み、その後105℃まで昇温させた。105℃到達時、反応物のpHは2.1(1%水溶液、20℃)であった。105℃に到達してから6時間後に反応を終了し、48%苛性ソーダを仕込み、反応物の1%水溶液のpHが5.0~7.5の範囲となるように中和を行った。その後、反応物の固形分が40%となるように適量の水を加え、重縮合生成物の水溶液を得た。この重縮合生成物につき、GPC測定を行い、重量平均分子量Mwを求めた。
[調製例2~5:重縮合生成物(No.7、8、10及び11)の調製]
調製例1の手順に倣い、(A)~(D)の原料種類およびモル比を表1記載の通りに変更し、各重縮合生成物の水溶液を得た。
【0081】
【0082】
[比較調製例1:比較例1の重縮合生成物の調製]
特許第5507809号明細書に開示された以下の手順(段落[0049][本発明の重縮合物の調製B.1]に従い、比較例1の重縮合生成物を調製した。
まず1モルのポリ(エチレンオキシド)モノフェニルエーテル(1000g/モル)、2モルのフェノキシエタノールホスフェート(又は、2-フェノキシエタノールジヒドロゲンホスフェートと2-フェノキシエタノールヒドロゲンホスフェートとの混合物)、16.3モルの水、及び2モルのH2SO4を反応容器に入れて撹拌した。37%水溶液の形態にある3モルのホルムアルデヒドを、このようにして形成した溶液に滴下した。重縮合反応を、105℃、5時間で反応は完結させた。反応の終了後に、20%のNaOH水溶液を用いて反応混合物のpHを10.5にした。105℃でさらに30分間経過の後、混合物を室温にまで冷却し、水を添加することによって固形分を約30質量%に調整した。
このようにして得られた比較例1の重縮合生成物において、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定による重量平均分子量Mwは22,000であった。
【0083】
[比較調製例2:比較例2の重縮合生成物の調製]
特表2014-503667号公報に開示された以下の手順(段落[0069][実施例1.1]に従い、比較例2の重縮合生成物を調製した。
まず2-フェノキシエタノール(96%、16.92g)を、70℃に設定したジャケット及び機械インペラを備えた反応器に添加した。ポリリン酸(P2O5中で80%、9.60g)を、2-フェノキシエタノールを撹拌しながら、反応器に添加した。その混合物を80℃で30分間撹拌し、続いてポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(96%、Mn=5000g/mol、200g)を供給した。そして、その混合物を100℃まで加熱した。濃硫酸(96%、6.10g)、ホルマリン(37%、9.36g)及びパラホルムアルデヒド(94%、1.92g)を、その混合物に添加し、そしてその混合物を110~115℃まで加熱し、そして2時間撹拌した。その後、その混合物を60℃まで冷却させ、そして32質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合物をpH9.1まで中和した。
このようにして得られた比較例2の重縮合生成物において、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定による重量平均分子量Mwは22,000であった。
【0084】
<ポリカルボン酸系重合体Q>
[調製例6:ポリカルボン酸系重合体Q-1の調製]
《ポリアミドポリアミンEO付加物の調製》
撹拌器付き反応容器にジエチレントリアミン103g(1.00モル)、アジピン酸97.3g(0.67モル)を仕込み、窒素の導入による窒素雰囲気下で撹拌混合した。150℃になるまで昇温させ、縮重合に伴う反応生成物の水を除きながら、酸価が22となるまで20時間反応させた。次にハイドロキノンメチルエーテル1.1g、メタクリル酸27.5g(0.32モル)を仕込み、同温度(150℃)で10時間反応させた。これにより反応留出水の合計42gと共にポリアミドポリアミン187g(融点122℃、酸価23)を得た。
このポリアミドポリアミン全量を水272gに溶解させ温度50℃となるまで昇温した。同温度(50℃)でエチレンオキサイド220g(未反応アミノ基を含めた総アミノ残基に対し3.0モル相当)を4時間かけて逐次導入し、2時間の熟成を行った。これによりポリアミドポリアミンEO付加物(固形分60%)680gを得た。
《ポリカルボン酸系重合体Q-1の調製》
撹拌器付き反応容器に水180gを仕込み、窒素を導入し合成系内を窒素雰囲気とし温度80℃になるまで昇温した。また水150g、前記ポリアミドポリアミンEO付加物を98.2g、メタクリル酸72.0gおよび短鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(短鎖MPEGM、分子量1000)60.9g、長鎖メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(長鎖MPEGM、分子量2000)183gの混合物(メタクリル酸をNa塩とした場合の配合計算比はポリアミドポリアミンEO付加物:メタクリル酸:短鎖MPEGM:長鎖MPEGM=15質量%:23質量%:15質量%:47質量%の割合で合計100質量%)と5%チオグリコール酸水溶液66.4gとを各々2時間、また5%過硫酸ソーダ水溶液123gを3時間、合成系内へ滴下した。その後2時間熟成、冷却を行った。その後48%NaOH水溶液でpH7まで中和を行い、ポリカルボン酸系重合体Q-1を1,029g得た。このポリカルボン酸系重合体Q-1はGPC分子量測定により重量平均分子量Mwが46,000であった。
【0085】
[調製例7:ポリカルボン酸系重合体Q-2の調製]
《ポリカルボン酸系重合体Q-2の調製》
撹拌器付き反応容器に水314gを仕込み、窒素を導入し合成系内を窒素雰囲気とし温度80℃になるまで昇温した。また水61g、アクリル酸6.0gメタクリル酸18.7g、およびメトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレート(MPEGM、分子量約2000)169g、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(MPEGA、分子量約1000)169gの混合物と5%チオグリコール酸アンモニウム水溶液78.4gと、5%過硫酸アンモニウム水溶液78.4gの3液を合成系内へ2時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、前記調製例6で得られたポリアミドポリアミンEO付加物の42.7gを30分、5%過硫酸アンモニウム水溶液39.2gを1時間かけて滴下した(これらの固形分を質量比で表すとポリアミドポリアミンEO付加物/酸類(アクリル酸とメタクリル酸の合計):MPEGM:MPEGA=6質量%:8質量%:43質量%:43質量%の割合で合計100質量%)。その後2時間熟成、冷却を行いpH6になるように48%NaOH水溶液で中和し、ポリカルボン酸系重合体Q-2を1,000g得た。このポリカルボン酸系重合体Q-2はGPC分子量測定により重量平均分子量Mwが42,000であった。
【0086】
[コンクリート試験]
表2に示す配合に基づき、JIS A 1138に準拠してフレッシュコンクリートを作製した。練り混ぜ方法は、公称容量100リットルの二軸強制練りミキサを用いて、各バッチのコンクリート製造量を50リットル×1バッチとした。
まずはじめに粉体、細骨材、粗骨材、混和剤(重縮合生成物、ポリカルボン酸系重合体)を溶解した練り混ぜ水を投入して所定の時間練り混ぜを行った。No.1、2では180秒間、No.3~5では150秒間、No.6では90秒間練り混ぜを行った。
【0087】
前記の手順にて作製した各種コンクリートを、JIS A 1101およびJIS A 1150に準拠し、コンクリート配合No.1~5では経時0分においてスランプフロー、50cmフロー到達時間を測定した。コンクリート配合No.1では、フロー後のコンクリートの状態を観察した。スランプフローの測定後、試料をφ15cm×30cmのサミットモールドに採取し、60秒間テーブルバイブレーターを用いて加振したのち、試験体の上面外観を観察した(コンクリート配合No.2~5)。また、同じ試料を用いて、JIS A 1128に準拠し空気量を測定した(コンクリート配合No.1~5)。
コンクリート配合No.6では、経時0分及び30分において、JIS A 1101およびJIS A 1150に準拠してスランプの状態を測定し、JIS A 1128に準拠し空気量を測定した。さらにJIS A 1123に準拠してブリーディング量を測定し、またその割合を算出した。
またJIS A 1147に準拠してコンクリートの凝結時間を測定した(コンクリート配合No.1、2、6)。
さらに、JIS A 1132に準拠し圧縮強度試験用供試体を作製し、JIS A 1108に準拠して、1週(1W)及び4週(4W)の圧縮強度を測定した(コンクリート配合No.1~3、6)。
また硬化後、上記強度用供試体を型枠から脱型する際、供試体の上面を観察し、硬化後上部外観又はコンクリート製品外観として観察し評価した(コンクリート配合No.2~5)
なお、上記試験に用いたフレッシュコンクリートの温度は、全て20±3℃であった。
【0088】
各配合のコンクリートについて実施した結果を表3~表7に夫々示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表3~表7に示すように、本発明の水硬性組成物用混和剤を構成する重縮合生成物P(処方6~8、10、11)とポリカルボン酸系重合体Q([Q-1]、[Q-2])を用いて実施した実施例のコンクリート試験結果は、種々の配合において、本発明の対象から外れる重縮合生成物を使用した比較例のコンクリート試験結果と比べ、フレッシュ性状において50cmフロータイムが増加し、すなわち粘性の向上が確認され、特に表3(配合No.1)のフロー後外観の結果にも示されるように、分離抵抗性(外観)が高まっていることが確認された。
また実施例と比較例のコンクリート試験結果を比べると、上記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとの併用により、硬化過程の凝結時間短縮および圧縮強度の増進効果が確認され、黒ずみの抑制効果が確認された。また表4(配合No.2)、表5(配合No.3)及び表6(配合No.4、No.5)にみられるように、フレッシュ性状における加振後の上部外観においてみられた黒ずみ発生の有意差は、硬化後の上部外観においてもあらわれた。
そして上記重縮合生成物Pとポリカルボン酸系重合体Qとの併用により、スランプ保持性が向上し、空気量の安定化効果が得られ、さらに表7(配合No.6)に示されるように、ブリーディング量が大きく低減する結果が得られた。
【0096】
以上の通り、本発明の水硬性組成物用混和剤並びに水硬性組成物用混和剤を調製するための組合せは、これをフライアッシュ(FA)等配合のコンクリート組成物に配合した場合においても、減水性を高い状態に保つことができる。そしてFA配合組成物の硬化体において未燃カーボンがコンクリートの表面に浮上することにより引き起こされる表面の黒ずみ発生を抑制でき、さらに凝結の遅延やブリーディングの発生、そして初期強度の低下等の問題を抑制できる。