(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】マイクロメカニカル共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/24 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H03H9/24 A
(21)【出願番号】P 2018568200
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 FI2017050486
(87)【国際公開番号】W WO2018002439
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-24
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517438158
【氏名又は名称】テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコラ、アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】ペッコ、パヌ
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/051025(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/203741(WO,A1)
【文献】特開2015-201887(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020172(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185280(WO,A1)
【文献】米国特許第09299910(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さと、前記長さに垂直な幅とを有する共振器素子を備える、圧電作動するマイクロメカニカル共振器であって、
前記共振器素子は、半導体材料から作られたベース層を有する第1の層構造と、前記第1の層構造の上の第2の層構造とを備え、前記第2の層構造は、圧電層及び電極層を備え、前記第1の層構造の線形周波数温度係数(TCF)の符号と圧電性の前記第2の層構造の線形TCFの符号とは、反対であり、
前記共振器素子の前記長さは、前記半導体材料の[100]結晶方向に沿って延伸し、
前記共振器素子は、1.8~2.2の範囲の長さ対幅のアスペクト比を有し、前記共振器素子の幅-伸長(WE)共振モード及び剪断共振モードが
結合して、望ましい混合共振モード及び望ましくない混合共振モード
を形成し、前記望ましい混合共振モードは、前記WE共振モードの線形TCFより高い線形TCFを有し、
前記共振器素子は、2つ以上のアンカーを有する支持構造に吊られ、前記望ましくない混合共振モードを抑制するために、前記2つ以上のアンカーの各々は、
a)前記共振器素子の前記望ましい混合共振モードに対して節点として作用し、前記共振器素子の前記望ましくない混合共振モードに対して反節点として作用する、前記共振器素子の幅方向側面の第1の位置であって、前記第1の位置は、前記共振器素子の前記幅を第1の部分と第2の部分とに分割して、前記第2の部分と全幅との間の比は、0.10~0.28の範囲にある、第1の位置、又は
b)前記共振器素子の前記望ましい混合共振モードに対して節点として作用し、前記共振器素子の前記望ましくない混合共振モードに対して反節点として作用する、前記共振器素子の長さ方向側面の第2の位置であって、前記第2の位置は、前記共振器素子の前記長さを第1の部分と第2の部分とに分割して、前記第2の部分と全長との間の比は、0.36~0.50の範囲にある、第2の位置
に取り付けられていることを特徴とする、マイクロメカニカル共振器。
【請求項2】
前記2つ以上のアンカーは、1対以上のアンカーを備え、各対の前記アンカーは、前記共振器素子の幅方向及び長さ方向に垂直であり、前記共振器素子の重心を通過する軸の周りで2回回転対称にある、請求項1に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項3】
前記半導体材料はシリコンである、請求項1又は2に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項4】
前記シリコンはn型ドーパントでドープされている、請求項3に記載のマイクロメカニカル共振器。
【請求項5】
前記シリコンのドーピング濃度は、2×10
19cm
-3より大きい、請求項4に記載のマイクロメカニカル共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロメカニカル(微小機械)共振器に関し、より詳細にはこのような共振器の周波数の温度係数(TCF)を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、機械共振器は石英結晶をベースとしている。石英ベースの共振器手法は、高い周波数安定性を提供することができる。シリコンのような半導体材料をベースとするマイクロメカニカル共振器は、石英ベースの共振器に代替物として登場している。マイクロメカニカル共振器は、石英ベースの共振器を超える幾つかの利点を有する。例えば、マイクロメカニカル共振器は、より小さくすることができ、より低い価格で製造されることができる。しかし、石英ベースの共振器と同程度の周波数安定性を達成することは困難だが魅力的であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の目的は、上記の欠点を軽減するようにマイクロメカニカル共振器構造を提供することである。本発明の目的は、独立請求項に記載されることを特徴とする共振器構造によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に開示される。
【0004】
圧電作動マイクロメカニカル共振器は、半導体ベース層構造の上に圧電層構造を備えてもよい。圧電層構造は、共振器素子の有効線形TCFに負の寄与をもたらしてもよい。負の寄与は、シリコンベース層構造の正の寄与より高い大きさを有してもよい。結果として、共振器素子の線形TCFは、ゼロ線形TCFが望ましい場合に負となってもよい。
【0005】
負のTCFを補償するために、特定の長さ対幅のアスペクト比が共振器素子に対して選択されてもよい。結果として、共振器素子は、2つの識別可能な混合共振モード分岐、すなわち、第1の低周波数混合共振モード分岐及び第2の高周波数の混合共振モード分岐に結合する、2つの異なるタイプの共振モード、すなわち、幅-伸長(WE)モード及び剪断モードで共振する。2つの異なるタイプの共振モードが互いに結合する場合、温度特性(TCF)及び圧電結合強度の強さのようなそれらの特性は、両方とも混合モード分岐で表される。
【0006】
共振器素子の固定(アンカー)位置を注意深く選択することによって、第1の混合モードが明らかに支配的になるように、第2の混合モード分岐を抑制することが可能である。第1の混合モードは、純粋なWEモードのみより正の線形TCFを有するので、圧電層構造によって誘起される負のTCF成分が補償されることができ、共振器素子の有効線形TCFがゼロに調整されることができる。
【0007】
この結果、本開示による圧電作動シリコン共振器は、より小さい構成要素サイズの利点及びより低い価格で、石英結晶と同じレベルの電気的性能を提供することができる。電気的特性が、石英結晶の特性と非常に類似し、この結果、ピン間の互換性が、達成されることができる。
【0008】
以下において、本発明が、添付(付属)の図面を参照して好ましい実施形態によってより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示による例示的な複合共振器構造を示す。
【
図3a】共振器素子の2つの混合モードの例示的な空間モード形状を示す。
【
図3b】共振器素子の2つの混合モードの例示的な空間モード形状を示す。
【
図4】本開示による共振器におけるアンカーのための例示的な第1及び第2の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、マイクロメカニカル共振器を説明する。共振器は、長さと、長さに垂直な幅とを有する共振器素子を備えてもよい。長さは幅より長い。共に、長さ及び幅は共振器素子の平面を画定する。共振器素子は、共振器素子の平面において延伸するプレートの形態であってもよく、すなわち、共振器は、プレート共振器であってもよい。
【0011】
共振器素子は、シリコンのような半導体材料から作られたベース層を備える第1の層構造を備えてもよい。共振器素子の長さは、半導体材料の[100]結晶方向に沿って延伸してもよい。シリコン材料は、正の線形TCFを有してもよい。
【0012】
シリコンは、リンのようなn型ドーパントでドープされてもよい。シリコンのドーピング濃度は、2×1019cmー3より大きく、好ましくは1×1020cm-3より大きい。このような高濃度ドーピングで、共振器素子のシリコン材料の2次(すなわち2位)TCF特性が改善されることができる。弱く又は中程度にドープされたシリコン(キャリア濃度<1×1019cmー3)の場合、線形(すなわち1次)TCFは、約-30ppm/℃であり得、2次TCFは、明らかに負であり得る。2×1019cmー3を超えるドーピングでは、線形TCFをゼロにし、明らかに正の値を有するようにすることができる。同じことがまた2次TCFに当てはまる。例えば、シリコン材料の線形TCF項(TCF1)は約+10ppm/℃であってもよく、一方、2次TCF項(TCF2)は、約+10ppb/℃2(10×10―9/℃2)であってもよい。
【0013】
共振器素子は、圧電的に作動してもよい。共振器素子は、圧電作動を実施するために、第1の層構造の上に第2の層構造を備える複合構造であってもよい。第2の層構造は、第1の層構造の上に積層された圧電材料及び電極材料を備えてもよい。
図1は、本開示による例示的な複合共振器構造を示す。
図1においては、シリコン層ベースが第1の層構造10を形成する。第2の層構造11は、第1の層構造10の上に圧電材料12及び電極材料13によって形成される。この例示的な共振器構造においては、シリコン層は、圧電作動に必要な底部電極として機能する。第2の層構造は、例えば、別個の底部電極層又は二酸化シリコン層のような追加の材料層を備えてもよい。
【0014】
第2の層構造の層、典型的には圧電材料のための窒化アルミニウム(AlN)、及び上部電極材料のためのアルミニウム(Al)又はモリブデン(Mo)は、負の線形TCFを有してもよい。共振器のために平行ばね質量近似を使用することによって、周波数f及びTCFのための以下の質量加重平均が、個々の層特性f
i、TCF
i、及びm
iの関数として計算されてもよい。
【数1】
【0015】
式(1)において、第1の層構造及び第2の層構造の線形温度係数が反対の符号を有し得る場合、複合共振器の全周波数対温度特性は、裸の高ドープシリコン共振器の正の線形TCFから変更される。
【0016】
更に、共振モードが、共振器素子の有効TCFに寄与してもよい。例えば、幅-伸長モードが、共振器素子のTCFに正の線形TCF項を導入してもよい。
【0017】
できるだけ平坦な周波数対温度特性を得るために、線形(及び2次)TCFへの正の寄与を追加の材料からの負の寄与と一致させることを試みることが望ましいであろう。これに関連して、「平坦な」温度特性は、線形TCF項の大きさ(すなわち絶対値)が最小化される、すなわち、それが望ましい最小値、好ましくはゼロに調整されるTCF特性を参照する。
【0018】
しかし、場合によっては、ゼロ線形TCFは、上記の処置では直接達成され得ない。例えば、幅-伸長(WE)共振モード(例えば約20MHz)は良好な電気的性能(この結果、良好な雑音性能)を有するので、圧電作動プレート共振器を該モードにおいて共振させることが望ましいであろう。共振器は、第1の層構造がシリコン(Si)ベース層を備え、圧電アクチュエータを実施する第2の層が窒化アルミニウム(AlN)層及びモリブデン(Mo)層を備える複合構造の形態であってもよい。共振器のために充分な電気的性能を達成するために、Si/AlN/Mo積層の厚さは、15/0.8/0.3マイクロメートル(μm)であってもよい。この程度の積層の厚さでは、シリコン材料からのWEモードの正のTCF寄与は、AlN及びMo部分からの負のTCF寄与を補償するために充分に高くはなく、複合共振器は、負の線形TCFを有し得る。
【0019】
共振器構造における線形TCF項の大きさを最小化するために、半導体材料の正の寄与が充分でない場合であっても、「混合」(すなわち「ハイブリッド」)共振モードが使用されてもよい。混合モードは、本質的により正のTCFを有し、この結果、複合共振器のゼロ線形TCFが達成されることができる。本開示に関連して、「混合」モード又は「ハイブリッド」モードは、2つの異なる純粋な共振モード間の結合に起因する結合共振モードであると見なされてもよい。これに関連して、「純粋な」又は「きれいな」共振モードという用語は、唯一の共振モードタイプの特性を有する共振モード(すなわち、単にWEモード又は剪断モード)を参照する。結合の結果として、2つの混合モード分岐、すなわち、第1の混合モード及び第2の混合モードが形成される。これらのモード分岐の特性は、共振器素子の面内特性に応答して変化する。「面内特性」という用語は、共振器素子の長さ及び幅、並びに長さと幅との間のアスペクト比を参照する。最初に2より小さいアスペクト比では、第1の混合モードは純粋なWEモードとして開始し、第2の混合モードは純粋な剪断モードとして開始する。アスペクト比が増加すると、第1の混合モードは純粋な剪断モードに変わり、第2の混合モードは純粋なWEモードに変わる。アスペクト比の特定の範囲においては、すなわち、混合ゾーンにおいては、混合モード分岐は、純粋なモードの特性間にある特性を有する。最も重要なことは、純粋な共鳴モードの温度特性(TCF)及び圧電結合強度の強さが混合される。
【0020】
図2a~
図2cは、共振モード間の結合の例示的な図を示す。図は、数値有限要素シミュレーションに基づく。
図2aは、純粋なWEモードと剪断モードとの間の結合に起因する2つの混合モード分岐、すなわち、第1の混合モードm
1及び第2の混合モードm
2を示す。
図2aにおいては、2つの混合モード分岐の周波数は、共振器素子の長さ対幅のアスペクト比の関数として示される。混合モードは太線で示される。他の幾つかのモードは破線で背景に示される。第1の混合モードm
1は、純粋なWEモード(太い実線として示される)として開始し、純粋な剪断モード(太い破線として示される)に変わる。対照的に、第2の混合モードm
2は、剪断モード(太い破線として示される)として開始し、純粋なWEモード(太い実線として示される)に変わる。
図2aはまた、アスペクト比2(すなわち、長さ:幅=2:1)の周りに混合ゾーンAを示す。混合ゾーンにおいては、両方の純粋なモードが混合モードの特性に寄与する。
【0021】
図2bは、アスペクト比の関数としての
図2aの第1の混合モードm
1及び第2の混合モードm
2の線形TCF項を示す。シミュレーションにおいては、シリコン(Si)部分からの寄与のみが考慮され、すなわち、AlN及びMo部分からのTCFへの影響は無視される。第1の混合モードm
1は、最初は純粋なWEモードの線形TCFに対応する線形TCFを有し、第2の混合モードm
2は、剪断モードの線形TCFに対応する線形TCFを有する。そして、混合ゾーンAにおいて、純粋な剪断モードのTCF特性が、第1の混合モードm
1に結合され、純粋なWEモードのTCF特性が、第2の混合モードm
2に結合される。結果として、第1の混合モードは、純粋なWEモードが有するものより混合ゾーンにおいて著しく高い線形TCF(約+3ppm/℃高い)を有する。代わりに、第2の混合モードは、純粋な剪断モードが有するものより低い線形TCFを有する。
【0022】
図2cは、アスペクト比の関数としての
図2aの第1の混合モードm
1と第2の混合モードm
2との結合強度を示す。結合強度は、圧電構造で生成された圧電作動への混合モードの結合を表す。純粋な剪断モードの特性を有する混合モード分岐の部分(
図2cにおいて太い破線部分として示される)は、圧電作動を使用して弱く結合されるだけである。しかし、混合ゾーンAにおいては、両方の混合モード分岐は、比較的強い結合を有する。約2:1のアスペクト比においては、両方の分岐の結合はほぼ等しく、純粋なWEモードの約50%である。電気機械抵抗R
mに関して、典型的な値は、純粋なWEモード及び第1(又は第2)の混合モードに対して、それぞれ50オーム及び100オームであってもよい。
【0023】
共振器素子に対する長さ対幅のアスペクト比(長さがより長い寸法である)を1.8~2.2の範囲、好ましくは2.0にすることによって、共振器素子の線形TCFが増加し得る。2つの混合モードのうちの低周波数モードである第1の混合モードでは、1つは、3ppm/℃高い線形TCFのための結合の50%をトレードオフする可能性を有する。共振器素子の面内寸法は、例えば320×160μmであってもよい。しかし、他の面内寸法がまた使用されてもよい。
【0024】
発振器が正しい共振にロックするために、共振モードの純粋なスペクトルを有するように共振器を有することが望ましいであろう。言い換えれば、寄生の共振モードを回避することが望ましいであろう。上記で説明された混合モードが発振器において利用される場合、この要求は、困難だが魅力的である可能性を有する。不要な第2の混合モードを抑制することが要求されるであろう。
【0025】
望ましい第1の混合モード及び望ましくない第2の混合モードの空間モード形状は、非常に異なる。最適化されたアンカリングで、不要なモードは、音響損失を増加させる(この結果、共振器の品質係数を減少させる)ことによって抑制されることができる。望ましい第1の混合モードは、周囲に振動モードの2つの節点を有し、一方、それらの位置における不要な第2の混合モードのモード形状は、比較的大きい変位を有する。これに関連して、節点は、振動振幅がゼロ又は無視できる、共振器の周辺(例えば側面)の位置である。対照的に、反節点は、振動振幅が大きい位置、すなわち、大きい変位を受ける位置である。
【0026】
図3a及び
図3bは、共振器素子30の2つの混合モードの例示的な空間モード形状を示す。全変位(共振器素子の側面に垂直及び/又は平行)は等高線で示される。より太い実線は大きい変位を示し、より細い破線はより小さい変位を示す。
図3a及び
図3bにおいては、等高線は共振器素子30の4分の1だけに示される。しかし、対称のために、対応する変位が他の4分の3に存在する。共振器素子の点線の輪郭31a及び31bは、2つの混合モードのモード形状を更に視覚化する。
【0027】
図3aは、望ましい第1の混合モードの空間モード形状を示す。
図3aにおいては、最小の変位を有する共振器素子30の側面における2つの位置32及び33が示される。
図3bは、望ましくない第2の混合モードの空間モード形状を示す。望ましくない第2の混合モードにおいては、共振器素子の側面における2つの位置32及び33は大きい変位を示す。
【0028】
望ましいモードに対しては節点として作用するが、望ましくないモードに対しては反節点として作用する位置に共振器を固定することによって、望ましいモードを、不要なモードよりはるかに低い損失を有するようにすることができる。言い換えれば、アンカーは、望ましいモードに対しては節点であるが望ましくないモードに対しては反節点である位置において位置決めされてもよい。共振器を複数の位置において固定することによって、他の寄生のモードが抑制され得、よりきれいなスペクトルが生成され得る。
【0029】
本開示による共振器素子は、2つ以上のアンカーを有する支持構造に吊られてもよい。2つ以上のアンカーの各々は、第1の位置又は第2の位置に取り付けられてもよい。
図4は、本開示による共振器におけるアンカーのための例示的な第1及び第2の位置を示す。
【0030】
第1の位置は、共振器素子のより短い幅方向側面にある。第1の位置は、共振器素子の幅を大きい部分と小さい部分とに分割する。小さい部分と全幅との間の比は、0.10~0.28の範囲にあってもよい。
図4においては、共振器素子40は、長さl
1及び幅w
1を有する。共振器素子40のより短い幅方向側面42における第1のアンカー41は、共振器素子40の幅w
1を2つの幅部分w
2及びw
3に分割する。より短い幅部分と幅w
1との間の比は、0.10~0.28の範囲である。
【0031】
第2の位置は、共振器のより長い長さ方向側面にある。第2の位置は、共振器素子の長さを大きい部分と小さい部分とに分割する。小さい部分と全長との間の比は、0.36~0.50の範囲であってもよい。
図4においては、共振器素子は、そのより長い長さ方向側面44において第2のアンカー43を備える。第2のアンカー43は、共振器素子40の長さl
1を2つの長さ部分l
2及びl
3に分割する。より短い長さ部分l
2と長さl
1との間の比は、0.36~0.50の範囲である。
【0032】
2つ以上のアンカーは、1対以上のアンカーを備え、各対のアンカーは、共振器素子において2回回転対称にある。
図5は、アンカーのための8つの可能な位置を示す。アンカー対51a及びアンカー対51dは、共振器素子のより長い長さ方向側面の上記で説明された第1の位置に位置付けられる。それらは全て、共振器素子の長さを大きい部分と小さい部分とに個々に分割して、小さい部分と全長との間の比は、0.36~0.50の範囲にある。更に、
図5は、アンカー対51b及びアンカー対51cが、共振器素子のより短い幅方向側面の上記で説明された第1の位置に位置付けられることを示す。それらは全て、共振器素子の幅を大きい部分と小さい部分とに個々に分割して、小さい部分と全幅との間の比は、0.10~0.28の範囲にある。
【0033】
アンカーを、例えば、共振器を基板に接続する直線状又はT字形テザーにすることができる。
図6a及び
図6bは、例示的なアンカーを示す。
図6aにおいては、直線状アンカー61aは、共振器素子62aを支持構造63aに繋ぐ。
図6bにおいては、T字形アンカー61bは、共振器素子62bを支持構造63bに繋ぐ。
【0034】
上述されたように、ゼロ線形挙動は、第1の混合モードを採用することによって達成されることができる。第1の混合モードは僅かに劣化した電気的性能(純粋なWEモードの結合強度の~50%)のみ与え、同時にTCF=0の性能を可能にする。第1の混合モードでは、産業用温度範囲(-40℃~+85℃)において+/-10ppm以内の周波数変化が達成されることができる。
【0035】
本発明の概念が様々な方法で実施されることができることは当業者にとって明らかである。本発明及びその実施形態は、上記で説明された例に限定されず、特許請求の範囲の範囲内で変更してもよい。