IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロケット フレールの特許一覧

特許7069114エアゾール容器を製造するための半結晶性熱可塑性ポリエステル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】エアゾール容器を製造するための半結晶性熱可塑性ポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/672 20060101AFI20220510BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20220510BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20220510BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C08G63/672
C08G63/183
C08G63/199
B65D65/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019505378
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 FR2017052168
(87)【国際公開番号】W WO2018024987
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】1657492
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ アムドロ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504650(JP,A)
【文献】特開2011-063751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/672
C08G 63/183
C08G 63/199
B65D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器を製造するための半結晶性熱可塑性ポリエステルの使用であって、前記ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)がイソソルビドであり、
前記脂環式ジオール(B)がシクロヘキサンジメタノールであり、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.05超、0.30未満であり;
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満であり、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は70mL/gより大きく、
前記ポリエステルを10℃/分の加熱速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)法によって測定したときに、融点が210~295℃であり、ガラス転移温度が85~120℃である、使用。
【請求項2】
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して1%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記エアゾール容器は、1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を
含むことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
半結晶性熱可塑性ポリエステルであって、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)がイソソルビドであり、
前記脂環式ジオール(B)がシクロヘキサンジメタノールであり、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.05超、0.30未満である、半結晶性熱可塑性ポリエステルを含むエアゾール容器であって、
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満であり、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は70mL/gより大きく、
前記ポリエステルを10℃/分の加熱速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)法によって測定したときに、融点が210~295℃であり、ガラス転移温度が85~120℃である、エアゾール容器。
【請求項6】
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して1%未満であることを特徴とする、請求項に記載のエアゾール容器。
【請求項7】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項5または請求項に記載のエアゾール容器。
【請求項8】
1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項~請求項のいずれか一項に記載のエアゾール容器。
【請求項9】
エアゾール容器の製造方法であって、
- 半結晶性熱可塑性ポリエステルであって、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含み、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)がイソソルビドであり、前記脂環式ジオール(B)がシクロヘキサンジメタノールであり、(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.05超、0.30未満である、半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供する工程であって、前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満であり、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は70mL/gより大きく、前記ポリエステルを10℃/分の加熱速度を使用する示差走査熱量測定(DSC)法によって測定したときに、融点が210~295℃であり、ガラス転移温度が85~120℃である、工程;
- 前記先行する工程で得られた前記半結晶性熱可塑性ポリエステルから前記エアゾール容器を調製する工程
を含む製造方法。
【請求項10】
前記調製は、射出延伸ブロー成形法によって実施されることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量は前記ポリエステルの全モノマー単位に対して1%未満であることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項~請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記エアゾール容器は、1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項~請求項12のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾールプラスチックの分野に関し、エアゾール容器を製造するための、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位を含む半結晶性熱可塑性ポリエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、物品の大量生産に欠かせない。実際、それらの熱可塑性の性質により、この材料をあらゆる種類の物品に高速での変換が可能になる。
【0003】
ある熱可塑性芳香族ポリエステルは、材料の製造に直接使用が可能になる熱的性質を有する。それらは、脂肪族ジオールと芳香族二酸単位を含む。これらの芳香族ポリエステルのうち、例えばフィルムの製造に使用され、エチレングリコールとテレフタル酸単位を含むポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0004】
しかし、特定の用途または特定の使用条件下では、ある種の性質、特に衝撃強度あるいは耐熱性の改善が必要である。これが、グリコール変性PET(PETg)が開発された理由である。それらは一般に、エチレングリコールとテレフタル酸単位に加えて、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)単位を含むポリエステルである。このジオールをPETに導入することにより、特にPETgが非晶質である場合、その性質を意図する用途に適合させること、例えばその衝撃強度またはその光学的性質の改善が可能になる。
【0005】
他の変性PETも、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位、特にイソソルビド(PEIT)をポリエステルに導入することによって開発されている。これらの変性ポリエステルは、未変性PETまたはCHDMを含むPETgよりもガラス転移温度が高い。加えて、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、例えば、デンプン等の再生可能資源から得られるという利点がある
【0006】
これらのPEITの1つの問題は、衝撃強度がそれでもなお不十分なことである。加えて、ガラス転移温度は、特定のプラスチック性物品の製造には不十分である。
【0007】
従来より、ポリエステルの衝撃強度の改善のために、結晶化度が低いポリエステルの使用が知られている。イソソルビド系ポリエステルに関しては米国特許出願公開第2012/0177854号明細書に記載されており、そこには、テレフタル酸単位と、1~60モル%のイソソルビドと5~99%の1,4-シクロヘキサンジメタノールとを含むジオール単位を含む、衝撃強度が改善されたポリエステルが記載されている。この出願の導入部で示されるように、コモノマーの添加により、この場合には1,4-シクロヘキサンジメタノールの添加により、結晶性が排除されたポリマーを得ることが目的である。実施例において、様々なポリ(エチレン-コ-1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PECIT)の製造と、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PCIT)の例が記載されている。
【0008】
また、PECIT型ポリマーは商業的開発の対象となってきたが、これはPCITの場合には当てはまらないことにも留意されたい。実際、イソソルビドは第二級ジオールとしての反応性が低いため、これまで、その製造は複雑であると考えられていた。したがって、Yoonら(Synthesis and Characteristics of a Biobased High-Tg Terpolyester of Isosorbide,Ethylene Glycol,and 1,4-Cyclohexan
e Dimethanol:Effect of Ethylene Glycol as a Chain Linker on Polymerization,Macromolecules,2013,46,7219-7231)は、PCITの合成が、PECITの合成よりも達成が難しいことを示した。この論文は、PECITの生産速度に及ぼすエチレングリコール含有量の影響の研究を記載する。
【0009】
Yoonらの文献において、非晶質PCIT(ジオールの合計に対して約29%のイソソルビドと71%のCHDMを含む)を製造し、その合成と性質をPECIT型ポリマーと比較している。第7222ページの合成の項の第1パラグラフを参照すると、合成時に高温を使用すると成形されたポリマーの熱分解が誘発され、このような分解は特にイソソルビド等の脂肪族環式ジオールの存在に関連している。したがって、Yoonらは、重縮合温度が270℃に制限される方法を使用した。Yoonらは、重合時間を増やしても、この方法で十分な粘度のポリエステルを得ることは不可能なことを観察した。したがって、エチレングリコールを添加しないと、合成時間を長くしてもポリエステルの粘度は制限されたままである。
【0010】
したがって、PETになされた改質にもかかわらず、特に守らなければならない制約および仕様が要求されるエアゾール容器の分野において、改善された性質を有する新規のポリエステルに対する要求が依然としてある。
【0011】
エアゾール分野において、容器に使用される金属をプラスチック、特にPETでの置き換えが頻繁に提案されてきた。
【0012】
残念ながら、現在、プラスチック製、特にPET製のエアゾール容器はクリープする傾向があり、充填、保管または試験段階で加えられた圧力下で漏出または破裂する可能性がる。
【0013】
さらに、製造中に材料の内部応力が開放されてより弱い領域を作り、最終的に容器に亀裂が生じる場合がある。この現象は、一般に「応力亀裂」として知られており、エアゾール容器の製造にとって不利である。
【0014】
それにもかかわらず、エアゾール容器の製造にPETを適用するために解決策が提案されている。
【0015】
例えば、出願米国特許出願公開第2013/0037580A1号明細書は熱結晶化した首部を有するプラスチックエアゾール容器を提案し、この首部は一組のエーロゾルバルブと一体化した本体部を有する拡張された歪み配向エアゾール容器とを受けるようになっている。したがって、熱結晶化したネックは、エアゾール容器のより優れた強度を得ることを可能にする。
【0016】
出願国際公開第2007/051229号パンフレットは、カラーによって容器を強化することを提案し、したがってエアゾール製品または加圧製品を分配するための容器を記載している。この容器は、PETで形成された本体部、本体部に接着されたカラーおよびカラーに接着された分配バルブを含む。カラーは、本体部の首部の周り開口部をまたぐように本体にスナップ留めまたはネジ止めすることができ、それによってその周りに成形リムを形成する。
【0017】
解決策の存在にもかかわらず、後者は、費用の大幅な増加と追加工程を招き、競争力のある代替品を提案するには不十分であり、PETは、依然としてエアゾール容器の製造に最適ではない。実際、提案された解決策は、ポリエステル自体には関係しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、エアゾール容器の製造に有利に使用するための、特に改良された性質を有する新規の熱可塑性ポリエステルを含む新規のプラスチックを提供する必要が依然としてある。
【0019】
さらに、現在、ヨーロッパ規格は、不十分な耐熱性および不十分なガラス転移温度のため、PETがエアゾール容器の製造には適していないという多数の抜本的な試験を含む。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、エチレングリコールはイソソルビドの配合に必須であることがこれまで知られていたが、あらゆる予想に反して、この要件はイソソルビドをベースとし、エチレングリコールを含まない半結晶性熱可塑性ポリエステルによって達成可能であることを発見したことは本出願人の功績である。
【0021】
実際、特定の粘度および特定の単位の比率により、本発明に従って使用される半結晶性熱可塑性ポリエステルは、特に高いガラス転移温度により、エアゾール容器の製造における使用のために特に有利であることが証明される。
【0022】
したがって、本発明による熱可塑性ポリエステルの使用は、特に耐圧性および耐熱性に関して、得られる最終特性を改善しながら、製造されたエアゾール容器中の応力の低減を可能にする。
【0023】
本発明の第1の主題は、エアゾール容器を製造するための半結晶性熱可塑性ポリエステルの使用であって、前記ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.05超、0.30未満であり;
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満であり、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は70mL/gより大きい、使用に関する。
【0024】
本発明の第2の主題は、上記の半結晶性熱可塑性ポリエステルをベースとするエアゾール容器を製造する方法に関する。
【0025】
最後に、本発明の第3の主題は、上記の半結晶性熱可塑性ポリエステルを含むエアゾールに関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
したがって、本発明の主題は、エアゾール容器を製造するための半結晶性熱可塑性ポリエステルの使用であって、前記ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.05超、0.30未満であり、および溶液中の還元粘度は、70mL/gより大きい、使用である。
【0027】
半結晶性熱可塑性ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または少量を含む。
【0028】
「少量のモル量の非環式脂肪族ジオール単位」は、特に5%未満のモル量の非環式脂肪族ジオール単位を意味するように意図される。本発明によれば、このモル量は、非環式脂肪族ジオール単位の合計の比率を表し、これらの単位はポリエステルの全モノマー単位に対して同一でも異なっていてもよい。
【0029】
「(A)/[(A)+(B)]モル比は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比を意味するように意図される。
【0030】
非環式脂肪族ジオールは、直鎖状または分枝鎖状の非環式脂肪族ジオールであってもよい。飽和または不飽和の非環式脂肪族ジオールであってもよい。エチレングリコールの他に、飽和直鎖状非環式脂肪族ジオールは、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールおよび/または1,10-デカンジオールであってもよい。飽和分枝鎖状非環式脂肪族ジオールの例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、プロピレングリコールおよび/またはネオペンチルグリコールが挙げられる。不飽和脂肪族ジオールの例としては、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオールが挙げられる。
【0031】
非環式脂肪族ジオール単位のこのモル量は、有利には1%未満である。好ましくは、ポリエステルは非環式脂肪族ジオール単位を含まず、より好ましくはエチレングリコールを含まない。
【0032】
驚くべきことに、合成に使用される非環式脂肪族ジオール、つまりエチレングリコールの量が少なくても、溶液中での高い還元粘度と、特にイソソルビドが良好に組み込まれた非晶質熱可塑性ポリエステルが得られる。1つの理論によって縛られることなく、これはエチレングリコールの反応速度が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの反応速度よりもはるかに速いという事実によって説明され、これは後者のポリエステルへの組み込みを大きく制限する。したがって、得られるポリエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの低い集積度、つまりガラス転移温度が比較的低い。
【0033】
モノマー(A)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、かつイソソルビド、イソマンニド、イソヨージドまたはその混合物であってもよい。好ましくは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドである。
【0034】
イソソルビド、イソマンニドおよびイソイジドは、それぞれソルビトール、マンニトールおよびイジトールの脱水によって得られる。イソソルビドに関しては、商品名Polysorb(登録商標)Pの名前で、本出願人によって販売されている。
【0035】
脂環式ジオール(B)は、脂肪族環式ジオールとも呼ばれる。それは、特に1,4-シ
クロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたはこれらのジオールの混合物から選択できるジオールである。好ましくは、脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0036】
脂環式ジオール(B)は、シス配置、トランス配置、またはシスおよびトランス配置のジオールの混合物であってもよい。
【0037】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比、すなわち(A)/[(A)+(B)]は、0.05超、0.30未満である。有利には、この比率は、0.1超、0.28未満であり、より特に、この比率は、0.15超、0.25未満である。
【0038】
エアゾール容器の製造に特に適切である半結晶性熱可塑性ポリエステルは、
・モル量が2.5~14モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・モル量が31~42.5モル%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B);
・モル量が45~55モル%の範囲のテレフタル酸単位(C)
を含む。
【0039】
ポリエステル中の異なる単位の量は、1H NMRにより、またはポリエステルの完全加水分解またはメタノリシスから生じるモノマーの混合物のクロマトグラフィー分析により、好ましくは1H NMRにより決定できる。
【0040】
当業者は、ポリエステルの単位のそれぞれの量を決定する分析条件を容易に見つけることができる。例えば、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)のNMRスペクトルから、1,4-シクロヘキサンジメタノールに関連する化学シフトは0.9~2.4ppmおよび4.0~4.5ppmであり、テレフタレート環に関連する化学シフトは7.8~8.4ppmであり、イソソルビドに関連する化学シフトは4.1~5.8ppmである。それぞれのシグナルの積分により、ポリエステルのそれぞれの単位の量の決定が可能になる。
【0041】
本発明に従って使用される半結晶性熱可塑性ポリエステルは、融点が210~295℃、例えば240~285℃の範囲である。
【0042】
さらに、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、ガラス転移温度が85~120℃、例えば90~115℃の範囲である。
【0043】
ガラス転移温度および融点は、従来法、特に10℃/分の加熱速度を使用する示差走査型熱量測定(DSC)法によって測定される。実験プロトコルの詳細は、以下の実施例に詳細に記載されている。
【0044】
有利には、半結晶性熱可塑性ポリエステルの融解熱が10J/g超、好ましくは20J/g超の場合、この融解熱の測定は、このポリエステルの試料を170℃で16時間加熱処理し、次いで試料を10℃/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価する。
【0045】
本発明に従って使用される半結晶性熱可塑性ポリエステルは、特に明度Lが40より大きい。有利には、明度Lは、55より大きく、好ましくは60より大きく、最も好ま
しくは65より大きく、例えば70より大きい。パラメーターLは、CIELabモデルにより分光測光器を使用して決定できる。
【0046】
最終的に、前記半結晶性熱可塑性ポリエステルの溶液中の還元粘度は、50mL/gより大きく90mL/g未満であり、この粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノールとオルト-ジクロロベンゼンの等質量混合物中、25℃でウベローデ毛管粘度計を使用して測定できる。
【0047】
溶液中の還元粘度を測定するこの試験は、溶媒の選択と使用されるポリマーの濃度により、下記方法に従って調製された粘性ポリマーの粘度の測定に完全に適している。
【0048】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリエステルの半結晶性は、170℃において16時間の熱処理後、X線回折線または示差走査型熱量測定(DSC)分析における吸熱溶融ピークの存在によって特徴付けられる。
【0049】
上記で定義される半結晶性熱可塑性のポリエステルは、エアゾール容器の製造のための多くの利点を有する。
【0050】
実際に、特に0.05超、0.30未満の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比により、および溶液中の還元粘度が70mL/gより大きく、好ましくは130mL/g未満であることにより、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、より良好な耐熱性とより良好なガラス転移温度を有し、それにより、半結晶性熱可塑性ポリエステルから製造されたエアゾール容器は、応力亀裂現象を減少させながら、より良好な耐圧性を有することが可能となる。
【0051】
本発明の目的のために、エアゾール容器は、本質的にプラスチックからなる容器であり、例えばボトル、フラスコまたはタンクであってもよい。容器は、好ましくはタンクである。エアゾール容器は、その後、そのようなエアゾール製造を可能にする。
【0052】
本発明によるエアゾール容器は、半結晶性熱可塑性ポリエステルの重合後に溶融状態から直接製造できる。
【0053】
一代替形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、エアゾール容器の製造に使用される前に、ペレットまたは顆粒等の取り扱いが容易な形態で包装できる。好ましくは、半結晶性熱可塑性ポリエステルは、顆粒の形態で包装され、前記顆粒は、有利には、エアゾール容器の形態に変換される前に乾燥される。乾燥は、残留水分が300ppm未満、好ましくは200ppm未満、例えば約134ppmの顆粒を得るように実施される。
【0054】
エアゾール容器の製造は、当業者に既知の技術に従って実施できる。例えば、製造は、押出二軸延伸ブロー成形または射出延伸ブロー成形(ISBM)によって実施してもよい。
【0055】
製造は、好ましくは、射出延伸ブロー成形によって実施される。この方法に従って半結晶性熱可塑性ポリエステルを射出して、プレフォームが形成される。プレフォームの首部はすでにその最終的な形状を有し、ブロー成形操作中に将来の容器を保持するために使用される部分を構成する。必要に応じて、プレフォームを再加熱し、所望の形状を有するブロー成形金型に封入する。金型は、下部表面上に刻印を有する2つの半殻によって形成さ
れ、それにより将来の容器に特定の表面外観を与えることを可能にする。
【0056】
プレフォームが金型に導入されると、延伸ロッドが材料を軸方向に延伸し、数バールの圧力でプレブロー成形が実施される。最終ブロー成形は、圧縮空気の射出によって実施される。したがって、ポリマー鎖は、将来の容器の長手軸に沿って放射状に方向付けられ、ポリエステルは、金型と接触しながら冷却され、それによりその最終形状に容器を固定する。この二軸配向により、改善された機械的特性を有するエアゾール容器が得られる。
【0057】
製造されたエアゾール容器の形態と体積は、ブロー成形に使用される金型の特徴に依存する。体積に関して、それは、数cm~数dm、特に50cm~1500cm、好ましくは100cm~1000cm、さらにより特に100cm~500cm、例えば300cmの範囲で変動し得る。
【0058】
特定の一実施形態によれば、上記で定義された半結晶性熱可塑性ポリエステルは、エアゾール容器の製造のための1種以上の追加のポリマーと組み合わせて使用される。
【0059】
追加のポリマーは、ポリアミド、本発明によるポリエステル以外のポリエステル、ポリスチレン、スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、アクリルコポリマー、ポリ(エーテル-イミド)、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)等のポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフェート)、ポリ(エステル-カーボネート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスルホンエーテル、ポリエーテルケトンおよびこれらのポリマーの混合物から選択できる。
【0060】
追加のポリマーは、ポリエステルの衝撃特性の改善を可能にするポリマー、特に官能性ポリオレフィン、例えば官能化エチレンまたはプロピレンポリマーおよびコポリマー、コア-シェルコポリマーまたはブロックコポリマー等であってもよい。
【0061】
1種以上の添加剤はまた、半結晶性熱可塑性ポリエステルに特定の特性を与えるために半結晶性熱可塑性ポリエステルからのエアゾール容器の製造中に添加できる。
【0062】
したがって、添加剤の例として、乳白剤、染料および顔料から選択されてもよい。それらは、酢酸コバルトならびに以下の化合物から選択できる。:HS-325 Sandoplast(登録商標)Red BB(これは、Solvent Red 195の名称でも知られる、アゾ官能基を有する化合物である)、アントラキノンであるHS-510
Sandoplast(登録商標)Blue 2B、Polysynthren(登録商標)Blue RおよびClariant(登録商標)RSB Violet。
【0063】
添加剤は、例えば、BASFからのTinuvin(商標)範囲:例えば、tinuvin 326、tinuvin Pまたはtinuvin 234等のベンゾフェノンもしくはベンゾトリアゾール型の分子、またはBASFからのChimassorb(商標)範囲:例えば、Chimassorb 2020、Chimassorb 81もしくはChimassorb 944等のヒンダードアミン等のUV抵抗剤であってもよい。
【0064】
添加剤は、不燃剤または難燃剤、例えばハロゲン化誘導体もしくは非ハロゲン化難燃剤(例えば、Exolit(登録商標)OP等のリンベースの誘導体)、またはメラミンシアヌレートの範囲(例えば、melapur(商標):melapur 200)、または他に水酸化アルミニウムもしくは水酸化マグネシウム等でもあってもよい。
【0065】
本発明の第2の主題は、エアゾール容器を製造する方法であって、
- 上記で定義される半結晶性熱可塑性ポリエステルを提供する工程;
- 先行する工程で得られた半結晶性熱可塑性ポリエステルから前記エアゾール容器を調製する工程
を含む方法に関する。
【0066】
調製工程は、エアゾール容器の製造のために従来から実施されている当業者に公知の方法によって実施できる。
【0067】
したがって、例として、調製は、押出二軸延伸ブロー成形または射出延伸ブロー成形によって実施できる。製造は、好ましくは、射出延伸ブロー成形によって実施される。
【0068】
本発明の第3の主題は、上記の半結晶性熱可塑性ポリエステルを含むエアゾール容器に関する。上記で定義されるように、本発明によるエアゾール容器は、追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤も含んでもよい。
【0069】
エアゾール容器の製造のために特に適切である半結晶性熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、および少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含むモノマーを反応器中に導入する工程であって、モル比((A)+(B))/(C)は、1.05~1.5の範囲であり、前記モノマーは、非環式脂肪族ジオールを含有しないか、または導入された全モノマーに対して非環式脂肪族ジオール単位のモル量が5%未満である、工程;
・反応器中に触媒系を導入する工程;
・前記モノマーを重合してポリエステルを形成する工程であって、
・オリゴマー化の第1段階であって、その間に、反応媒体が265~280℃、有利には270~280℃の範囲の温度、例えば275℃で不活性雰囲気下において撹拌される、オリゴマー化の第1段階;
・オリゴマーの縮合の第2段階であって、その間に、形成されたオリゴマーが、ポリエステルを形成するように278~300℃、有利には280~290℃の範囲の温度、例えば285℃で減圧下において撹拌される、オリゴマーの縮合の第2段階
からなる工程;
・半結晶性熱可塑性ポリエステルを回収する工程
を含む合成方法によって調製できる。
【0070】
方法のこの第1の段階は、不活性雰囲気、すなわち少なくとも1種の不活性気体の雰囲気下で実施される。この不活性気体は、特に二窒素であってもよい。この第1の段階は、気体流下で実施することができ、それは、圧力下、例えば1.05~8バールの圧力で実施できる。
【0071】
好ましくは、圧力は、3~8バール、最も好ましくは5~7.5バール、例えば6.6バールである。これらの好ましい圧力条件下において、全モノマーの互いとの反応は、この段階中のモノマーの損失の制限によって促進される。
【0072】
オリゴマー化の第1の段階前にモノマーの脱酸素化の工程が好ましくは実施される。それは、例えば、モノマーが反応器中に導入されると、減圧を生じることにより、次いでそれに窒素等の不活性気体を導入することにより実施することができる。この減圧-不活性気体導入サイクルは、数回、例えば3~5回にわたって繰り返すことができる。好ましくは、試薬および特にジオールが完全に溶解するように、この減圧-窒素サイクルは、60~80℃の温度で実施される。この脱酸素化工程は、方法の終了時に得られるポリエステルの着色特性を改善する利点を有する。
【0073】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、減圧下で実施される。圧力は、段階的にランプを使用して減少させるか、あるいはランプとステップの組合せを使用した圧力減少により、この第2段階の間に連続的に減少できる。好ましくは、この第2段階の終了時に、圧力は10ミリバール未満、最も好ましくは1ミリバール未満である。
【0074】
重合工程の第1の段階は、継続時間が20分~5時間であることが好ましい。有利には、第2段階は継続時間が30分~6時間であり、この段階は、反応器が真圧下、すなわち1バール未満の圧力に置かれた瞬間から始まる。
【0075】
この方法はまた、反応器に触媒系を導入する工程を含む。この工程は、前もって、または上記の重合工程の間に実施できる。
【0076】
触媒系は、場合により不活性担体上に分散または固定された触媒または触媒の混合物を意味するように意図される。
【0077】
触媒は、繊維の製造のための本発明による使用にしたがって高粘度ポリマーを得るために適した量で使用される。
【0078】
エステル化触媒は、オリゴマー化段階で有利に使用される。このエステル化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびストロンチウムの誘導体、パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)もしくはメタンスルホン酸(MSA)等の有機触媒、またはこれらの触媒の混合物から選択できる。このような化合物の例として、米国特許出願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0026]~[0029]および国際公開第2013/062408A1号パンフレットの第5ページに記載されるものが挙げられる。
【0079】
好ましくは、亜鉛誘導体またはマンガン、スズもしくはゲルマニウム誘導体がエステル交換の第1の段階中に使用される。
【0080】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマー化の段階で触媒系に含まれる10~500ppmの金属が使用できる。
【0081】
エステル交換の終了時において、最初の工程からの触媒は、亜リン酸またはリン酸の添加により任意選択的にブロックされるか、またはスズ(IV)の場合、トリフェニルホスファイトもしくはトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、あるいは米国特許出願公開第2011/282020A1号明細書の段落番号[0034]に記載のもの等の亜リン酸塩によって還元できる。
【0082】
オリゴマーの縮合の第2段階は、任意選択的に、触媒を添加して実施できる。この触媒は、有利には、スズ誘導体、好ましくはスズ、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、ハフニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、コバルト、鉄、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウムもしくはリチウムの誘導体、またはこれらの触媒の混合物から選択される。このような化合物の例としては、例えば、欧州特許第1882712B1号明細書の段落番号[0090]~[0094]に記載されるものであってもよい。
【0083】
好ましくは、触媒は、スズ、チタン、ゲルマニウム、アルミニウムまたはアンチモン誘導体である。
【0084】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマーの縮合の段階の触媒系に含まれる10~500ppmの金属を使用できる。
【0085】
最も好ましくは、触媒系は、重合の第1の段階および第2の段階に使用される。前記系は、有利には、スズをベースとする触媒、またはスズ、チタン、ゲルマニウムおよびアルミニウムをベースとする触媒の混合物からなる。
【0086】
例として、重量による量として、導入されたモノマーの量に対して、触媒系に含まれる10~500ppmの金属を使用できる。
【0087】
本調製方法によれば、モノマーの重合の工程中、酸化防止剤が有利に使用される。これらの酸化防止剤により、得られるポリエステルの着色を減少できる。酸化防止剤は、一次および/または二次酸化防止剤であってもよい。一次酸化防止剤は、化合物Hostanox(登録商標)03、Hostanox(登録商標)010、Hostanox(登録商標)016、Ultranox(登録商標)210、Ultranox(登録商標)276、Dovernox(登録商標)10、Dovernox(登録商標)76、Dovernox(登録商標)3114、Irganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)1076等の立体障害フェノール、またはIrgamod(登録商標)195等のホスホネートであってもよい。二次酸化防止剤は、Ultranox(登録商標)626、Doverphos(登録商標)S-9228、Hostanox(登録商標)P-EPQまたはIrgafos 168等の三価リン化合物であってもよい。
【0088】
重合添加剤として、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等、望ましくないエーテル化反応を制限することが可能である少なくとも1種の化合物を反応器中に導入することも可能である。
【0089】
最後に、この合成方法は、重合工程で得られるポリエステルを回収する工程を含む。このようにして回収された半結晶性熱可塑性ポリエステルは、次いで上記のように形成できる。
【0090】
合成方法の一変形形態によれば、モル質量を増加させる工程は、半結晶性熱可塑性ポリエステルを回収する工程後に行われる。
【0091】
モル質量を増加させる工程は、後重合によって実施され、半結晶性熱可塑性ポリエステルの固相後縮合(PCS)の工程または少なくとも1種の鎖延長剤の存在下で半結晶性熱可塑性ポリエステルの反応押出工程からなってもよい。
【0092】
したがって、製造方法の一変形形態によれば、後重合工程はPCSによって実施される。
【0093】
PCSは、一般にガラス転移温度とポリマーの融点との間の温度で行われる。したがって、PCSを実施するためには、ポリマーは半結晶性であることが必要である。好ましくは、後者は融解熱が10J/gより大きく、好ましくは20J/gより大きく、この融解熱の測定は、低粘度ポリマーの試料を170℃で16時間、低溶体化熱処理し、次に試料を10K/分で加熱することにより、DSCによって融解熱を評価する。
【0094】
有利には、PCS工程は、190~280℃、好ましくは200~250℃の範囲の温度において実施され、この工程は、必ず半結晶性熱可塑性ポリエステルの融点未満の温度で実施されなければならない。
【0095】
有利には、PCS工程は190~280℃、好ましくは200~250℃の温度で実施され、この工程は、半結晶性熱可塑性ポリエステルの融点未満の温度で実施されなければならない。
【0096】
製造方法の第2の変形形態によれば、後重合工程は少なくとも1種の鎖延長剤の存在下での半結晶性熱可塑性ポリエステルの反応押出によって実施される。
【0097】
鎖延長剤は、反応押出において、半結晶性熱可塑性ポリエステルのアルコール、カルボン酸および/またはカルボン酸エステル官能基と反応できる2個の官能基を含む化合物である。鎖延長剤は、例えば、2個のイソシアネート、イソシアヌレート、ラクタム、ラクトン、カーボネート、エポキシ、オキサゾリンおよびイミド官能基を含む化合物から選択することができ、前記官能基は、同一であっても異なっていてもよい。熱可塑性ポリエステルの鎖延長は、溶融材料と反応器のガスとの間の良好な界面を確保するために、高粘性媒体を十分に分散撹拌しながら混合可能な全ての反応器で実施できる。特に、この処理工程に適している反応器は押出成形である。
【0098】
反応押出は、一軸スクリュー押出機、共回転二軸スクリュー押出機または反対回転二軸スクリュー押出機で実施できる。しかしながら、共回転押出器を使用してこの反応押出を実施することが好ましい。
【0099】
反応押出工程は、
・ポリマーを押出機に導入して、前記ポリマーを溶融する工程;
・その後、溶融ポリマーに鎖延長剤を導入する工程;
・次に、押出機でポリマーを鎖延長剤と反応させる工程;
・次に、押出工程で得られた半結晶性ポリエステルを回収する工程
によって実施されてもよい。
【0100】
押出の間、押出機内の温度はポリマーの融点よりも高くなるように調整される。押出機内の温度は、150~320℃であってもよい。
【0101】
純粋に例示的なものであり、保護の範囲を制限するものではない次の実施例により明確に理解されるであろう。
【実施例
【0102】
ポリマーの特性を、次の方法によって観察した。
【0103】
溶液中の還元粘度
溶液中の還元粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件で、ポリマーを撹拌しながら130℃で溶解した後、フェノールとオルト-ジクロロベンゼンの等質量混合物中、25℃でウベローデ毛細管粘度計を使用して評価した。
【0104】
DSC
ポリエステルの熱特性を、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定した。試料を最初に開放るつぼ中、窒素雰囲気下で10℃から320℃まで加熱し(10℃/分)、10℃まで冷却し(10℃/分)、最初の工程と同じ条件下で320℃まで再加熱する。ガラス転移温度は、第2の加熱の中点でとられた。任意の融点は、第1の加熱の吸熱ピーク(開始)で決定される。
【0105】
同様に、融解エンタルピー(曲線下面積)は、第1の加熱において決定される。
【0106】
以下に提示された説明例のために、次の試薬を使用した。
1,4-シクロヘキサンジメタノール(純度99%、シスおよびトランス異性体の混合物)
イソソルビド(純度>99.5%)、Roquette Freres社製、Polysorb(登録商標)P
テレフタル酸(純度99+%)、Acros社製
Irganox(登録商標)1010、BASF AG社製
ジブチルスズオキシド(純度98%)、Sigma-Aldrich社製
【0107】
実施例1:半結晶性熱可塑性ポリエステルの調製およびエアゾール容器の製造のための使用
A:重合
したがって、1432g(9.9モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノール、484g(3.3モル)のイソソルビド、2000g(12.0モル)のテレフタル酸、1.65gのIrganox 1010(酸化防止剤)および1.39gのジブチルスズオキシド(触媒)を7.5L反応器に加える。イソソルビド結晶から残留酸素を抽出するために、反応媒体の温度が60℃~80℃になったら4回の減圧-窒素サイクルを実施する。次に、6.6バールの圧力下で、反応混合物を275℃(4℃/分)まで加熱し、エステル化度87%が得られるまで常に撹拌した(150rpm)。エステル化度は、回収された蒸留物の質量から推測する。次いで、対数傾斜に従って圧力を90分で0.7ミリバールに下げ、温度を285℃にする。
【0108】
これらの減圧および温度条件は、初期トルクに対して12.1Nmのトルクの増加が得られるまで維持された。
【0109】
最後に、反応器の底部バルブを介してポリマーロッドをキャストし、温度を調節した水浴中で15℃まで冷却し、約15mgの顆粒の形態に切断する。
【0110】
そのようにして得られた樹脂は、溶液中の還元粘度が80.1mL/gである。
【0111】
ポリエステルのH NMR分析により、最終ポリエステルは、ジオールに対して17.0モル%のイソソルビドを含有することを示す。
【0112】
熱特性に関して、ポリエステルは、溶融エンタルピーが23.2J/gであり、ガラス転移温度が96℃の、融点が253℃である。
【0113】
次いで、顆粒を固相後縮合工程で使用する。
【0114】
この目的のために、顆粒を予め170℃の減圧下オーブンで2時間、結晶化させる。
【0115】
モル質量を増加させる工程は、窒素流下(1500L/時間)、210℃で20時間、これらの顆粒10kgに対して固相後縮合を実施した。固相後縮合後の樹脂は、溶液中の還元粘度が103.4mL/gである。
【0116】
B:射出延伸ブロー成形(ISBM)による形成
300ppm未満の残留水分量を達成するために、上記工程で得られたポリエステルの顆粒を1窒素下で40℃で乾燥させる。本実施例において、顆粒の含水量は、134ppmである。
【0117】
射出は、シャッター付きHuskyシングルキャビティプレス上で実施する。
【0118】
無水条件下で保持された顆粒を射出プレスのホッパー中に導入する。射出パラメーターを以下の表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
射出後に、得られたプレフォームは重量が23gであり、熱間充填に特有の強化首部を有する。
【0121】
そのようにして射出されたプレフォームを、次いで、エアゾール容器の最終形状を有する金型でブロー成形する。
【0122】
ブロー成形後、得られた容器は、エアゾールの製造に使用され、次いで加圧ガスが充填される。変形は観察されず、容器は、完全にその形状を維持する。さらに、容器は、水中に2%シトロネロールを含有する溶液で充填した48時間後でも応力亀裂を示さない。
【0123】
したがって、本発明による半結晶性熱可塑性ポリエステルは、エアゾール容器を製造するために特に有利であり、したがって市場にすでに存在するポリマーに対する非常に良好な代替物を構成する。
【0124】
実施例2:半結晶性熱可塑性ポリエステルの調製およびボトルの製造のための使用
A:調製
本発明による第2の半結晶性ポリエステルP2は、実施例1と同一の方法に従って調製した。種々の化合物の量は、25モル%のイソソルビドを有するポリエステルP2を得るように調整された。
【0125】
量はH NMRにより測定し、ポリエステル中のジオールの合計量に対するパーセンテージとして表される。
【0126】
ポリエステルP2の溶液中の還元粘度は、79mL/gである。
【0127】
B:射出延伸ブロー成形(ISBM)によるボトルの形成
重合工程Aで得られたポリエステルP2の顆粒を、次いで射出前に6時間にわたって150℃で乾燥し、含水量は0.129重量%である。
【0128】
射出は、シャッター付きHuskyシングルキャビティプレス上で実施する。
【0129】
無水条件下で保持された顆粒を射出プレスのホッパー中に導入する。射出パラメーターを以下の表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
射出後に得られたプレフォームは重量が23.7gであり、圧力下での充填に特有の強化首部を有する。
【0132】
次いで、0.5Lボトルを得るために、製造されたプレフォームを金型中でブロー成形した。ブロー成形のために使用される機器は、以下の一般的な特性を有する。
【0133】
【表3】
【0134】
次いで、次のパラメーターに従ってプレフォームのブロー成形を実施した。
【0135】
【表4】
【0136】
得られたボトルは均一な外観を有し、肉眼では表面の変形は観察されない。加圧が充填された後、ボトルは完全にその形状を維持し、容器は、水中に2%シトロネロールを含有する溶液で充填した48時間後でも応力亀裂を示さない。
【0137】
したがって、本発明による半結晶性熱可塑性ポリエステルは、エアゾール容器の製造に完全に適している。