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特許7069163熱電対の短絡を診断する診断素子を備えた温度トランスミッタ及びトランスミッタアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】熱電対の短絡を診断する診断素子を備えた温度トランスミッタ及びトランスミッタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/026 20210101AFI20220510BHJP
【FI】
G01K7/026
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019529877
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017064426
(87)【国際公開番号】W WO2018118392
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-06-03
(31)【優先権主張番号】15/388,316
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515231553
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフ、コーリー、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】パシュケ、ランディ、ケネス
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0250999(US,A1)
【文献】特開2013-69618(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3070446(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/02-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部で互いに接続された第1の導体と第2の導体とを備え、前記第1の導体および前記第2の導体の少なくとも一方は、単位長さ当たりの第1の抵抗を有する第1の部分と、単位長さ当たりの第2の抵抗を有する第2の部分とを含み、前記第1の部分と前記第2の部分とは互いに同じ金属から一体的に形成される、熱電対と、
前記熱電対の抵抗を決定し、決定された前記抵抗に基づいて、前記第1の導体と前記第2の導体とに熱接合の前に互いに短絡状態が発生したかどうかの指標を提供する診断素子を備える温度トランスミッタと、
を含み、前記第2の部分は、前記第1の部分より前記接合部に近く、単位長さ当たりの前記第2の抵抗は、単位長さ当たりの前記第1の抵抗よりも大きい、温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項2】
前記診断素子が、第1の時間における前記熱電対のベースライン抵抗と、前記第1の時間よりも後の第2の時間における測定された抵抗とを決定する、請求項1に記載の温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の部分の単位長さ当たりの前記第2の抵抗は、前記第2の部分に対する抵抗を生成し、前記診断素子は、前記第2の部分の抵抗を差し引いた前記ベースライン抵抗よりも小さいことを決定することにより、前記第1の導体と前記第2の導体とに互いに前記短絡状態が発生したことの前記指標を提供する、請求項2に記載の温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項4】
前記診断素子は、経時的に複数の測定された抵抗を決定し、前記診断素子は、前記複数の測定された抵抗を使用して、前記測定された抵抗の傾向線を決定し、前記傾向線に基づいて、前記第1の導体と前記第2の導体とに互いに前記短絡状態が発生したかどうかの前記指標を提供する、請求項1に記載の温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項5】
前記診断素子が、さらに、
前記熱電対から決定された複数の温度値を経時的に受信し、
経時的に複数の測定された抵抗を決定し、
前記複数の温度値および前記複数の測定された抵抗を使用して、前記第1の導体および前記第2の導体に互いに前記短絡状態が発生したかどうかの前記指標を提供する、
請求項1に記載の温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項6】
前記診断素子は、前記複数の温度値の変化を前記複数の測定された抵抗の変化と相関させることによって、前記第1の導体と前記第2の導体とに互いに前記短絡状態が発生したかどうかの前記指標を提供する、請求項5に記載の温度トランスミッタアセンブリ。
【請求項7】
前記複数の温度値はそれぞれ、前記診断素子が測定された抵抗を決定するとき以外の時間に決定される、請求項6に記載の温度トランスミッタアセンブリ
【請求項8】
熱電対の両端間の測定電圧に基づいて前記熱電対の一部の温度を計算する温度計算素子と、前記熱電対の測定された抵抗を決定し、前記熱電対の導体に前記熱電対の熱接合の前に互いに短絡状態が発生したかどうかを決定するために前記測定された抵抗および前記温度を使用する短絡診断素子と、を実行させるように構成されたデジタルプロセッサと、
前記熱電対の前記導体に互いに前記短絡状態が発生したことを通信する通信インターフェースと、
を含み、前記熱電対は接合部で互いに接続された第1の導体と第2の導体とを備え、前記第1の導体および前記第2の導体の少なくとも一方は、単位長さ当たりの第1の抵抗を有する第1の部分と、単位長さ当たりの第2の抵抗を有する第2の部分とを含み、前記第1の部分と前記第2の部分とは互いに同じ金属から一体的に形成され、前記第2の部分は、前記第1の部分より前記接合部に近く、単位長さ当たりの前記第2の抵抗は、単位長さ当たりの前記第1の抵抗よりも大きく、
前記デジタルプロセッサが、前記熱電対の両端間で測定された複数の電圧に基づいて前記熱電対の複数の温度を計算し、前記短絡診断素子が、前記熱電対の前記温度の低下を示す前記複数の温度に応じて前記測定された抵抗を決定するように、前記温度計算素子を実行するようにさらに構成される、温度トランスミッタ
【請求項9】
記短絡診断素子は、前記複数の温度が前記熱電対の温度の低下を示す前に、前記熱電対のベースライン抵抗を確定する、請求項に記載の温度トランスミッタ
【請求項10】
記短絡診断素子は、前記ベースライン抵抗と、前記熱電対の前記一部の温度の低下を示す前記複数の温度に応じて測定された前記抵抗との間の差を決定することによって、前記熱電対の導体に互いに前記短絡状態が発生したかどうかを決定する、請求項に記載の温度トランスミッタ
【請求項11】
記短絡診断素子は、前記ベースライン抵抗と前記測定された前記抵抗との間の差が、前記熱電対の前記一部の温度の低下を仮定して、予想される変化を超えたときに、前記熱電対の前記導体に互いに前記短絡状態が発生したと決定する、請求項10に記載の温度トランスミッタ
【請求項12】
記熱電対の前記ベースライン抵抗は、前記熱電対の第1の導体の第1の部分の抵抗と、前記熱電対の前記第1の導体の第2の部分の抵抗とを含み、前記第1の部分は、単位長さ当たりの第1の抵抗を有し、前記第2の部分は、単位長さ当たりの第2のより大きい抵抗を有する、請求項11に記載の温度トランスミッタ
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱電対は、接合部で互いに接合され、接合部から離間した2つの自由端を有する2つの導体からなる温度センサである。導体は、自由端と接合部との間に温度勾配が印加されると、自由端間に電圧が現れるように、異なる金属で作られる。電圧の大きさは、温度勾配の大きさに対応する。その結果、自由端の電圧および温度を用いて、接合部の温度を決定することができる。
【0002】
熱電対の導体が自由端と接合部との間で互いに接触すると、熱電対に短絡が生じ、新しい接合部が形成される。これが起こると、熱電対の自由端で生成される電圧は、短絡によって生成される新しい接合部の温度に対応し、熱電対の元の接合部の温度には対応しない。このため、短絡の位置と元の接合の位置との間に温度差がある場合、電圧から生成される温度計算は、元の接合の温度を正確に反映しない。
【0003】
プロセス制御環境では、熱電対は、広範囲のプロセス温度に耐えることができるので、プロセス流体の温度を測定するために使用されることが多い。典型的には、熱電対の自由端は温度トランスミッタの内部に接続され、温度トランスミッタは、熱電対の自由端間の電圧を測定し、自由端におけるトランスミッタ内の温度を測定し、トランスミッタ内の温度および熱電対の両端間の電圧を使用して、接合部における温度を計算する。次いで、この接合温度は、プロセス環境内に配置された1つまたは複数の他のプロセスデバイスに、または有線または無線接続を介して制御室に伝達される。
【発明の概要】
【0004】
温度トランスミッタアセンブリは、熱電対および温度トランスミッタを含む。熱電対は、接合部で互いに接続された第1の導体および第2の導体を有する。温度トランスミッタは、熱電対の抵抗を決定し、決定された抵抗に基づいて、第1の導体と第2の導体とが接合部の前で互いに短絡されているかどうかの指標を提供する診断素子を有する。
【0005】
さらなる実施形態では、温度トランスミッタは、デジタルプロセッサおよび通信インターフェースを含む。デジタルプロセッサは、熱電対の両端間の測定された電圧と、熱電対の測定された抵抗を決定し、熱電対の導体が熱電対の熱による接触の前に互いに短絡したかどうかを決定するために測定された抵抗および温度を使用する短絡診断素子とに基づいて、熱電対の一部の温度を計算する温度計算を実行するように構成される。通信インタフェースは、熱電対の導体が互いに短絡したことを別のプロセスデバイスに通信する。
【0006】
さらに別の実施形態では、温度トランスミッタは、熱電対の接合部の温度値を提供するために、熱電対の点間で測定された電圧に基づいて温度計算を実行するプロセッサと、熱電対の抵抗を決定し、決定された抵抗に基づいて、第1の導体と第2の導体とが接合部の前に互いに短絡されているかどうかの指標を提供する診断素子とを含む。
【0007】
この概要および要約は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。概要および要約は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の助けとして使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】温度センサを有するプロセス制御システムの平面図を提供する。
図2】熱電対の一例を示す。
図3】短絡状態にある図2の熱電対を示す。
図4】一実施形態による温度トランスミッタ内の要素のブロック図を示す。
図5】時間の関数としての抵抗のグラフを提供する。
図6図5の時間グラフと整列した時間の関数としての測定された熱電対温度のグラフを提供する。
図7】第2の実施形態による熱電対の例を提供する。
図8】短絡状態にある図7の熱電対を示す。
図9】熱電対の第3の実施形態の例を提供する。
図10】短絡状態にある図9の熱電対を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、プロセス制御システム100の一部の平面図であり、いくつかの要素を断面で示している。システム100は、保護シース108内に取り付けられた熱電対106からなる熱電対アセンブリ104上に取り付けられた温度トランスミッタ102を含む。温度トランスミッタ102および熱電対アセンブリ104は、一緒になって、温度トランスミッタアセンブリを形成する。保護シース108は、プロセス導管114の対応する取付フランジ112に取り付けられた取付フランジ110にねじ込まれる。熱電対106は、異なる金属から作られ、しばしば「熱」接点と呼ばれる接合部120で接合される2つの導体116および118を含む。導体116および118は、温度トランスミッタ102内の1つまたは複数のプリント回路基板126上の電気部品に電気的に接続された自由端122および124を有する。導体116および118は、温度トランスミッタ102がプロセス導管114に直接取り付けられることを可能にするのに十分な長さであるように示されているが、他の実施形態では、導体116および118は、温度トランスミッタ102がプロセス導管114から離れて取り付けられることを可能にするために、同じそれぞれの材料の延長ワイヤを使用して延長され得る。延長ワイヤが使用される場合、導体116および118の自由端122および124は、依然として温度トランスミッタ102内に位置すると考えられ、自由端から熱接点までの導体の全長(延長ワイヤと考えられるか否かにかかわらず)は、導体116および118を形成すると考えられる。プリント回路基板126上の通信インタフェースは、2線式プロセスループ132を介して制御室130と通信する。2線式プロセス制御ループが図1に示されているが、通信インターフェースは、他の有線および無線接続を使用して交互に通信する。さらに、図1では、温度トランスミッタ102は制御室130と通信するように示されているが、他の実施形態では、温度トランスミッタ102は、制御室130と通信することに加えて、またはその代わりに、他のプロセス制御デバイスと通信する。
【0010】
図2は、自由端122、124を有し、接合部120で接合されている導体116、118を示す熱電対106の拡大図である。図3は、短絡状態にある熱電対106を示しており、導体118及び116は、高温接合部120と自由端124及び122との間の点300で接触している。点300の位置は、点300における接触の結果として、熱電対106のケーシング内または延長ワイヤ(もしあれば)に沿っていてもよく、自由端122と124との間に提供される電圧は、高温接合部120における温度の代わりに、点300における温度を反映する。
【0011】
図4は、熱電対導体116と118との間の接触点の温度を決定し、温度を制御室または他のプロセスデバイスに伝達し、図3に示す短絡状態のような短絡状態が熱電対106に存在するときを検出するために使用することができる、温度トランスミッタ102の1つまたは複数のプリント回路基板126上の様々な電子部品を示すブロック図を提供する。
【0012】
合部120の温度を決定するための温度トランスミッタ102内の電子機器は、デジタルプロセッサ400、電圧増幅器402、RTDセンサ414、およびRTD測定回路416を含む。電圧増幅器402は、熱電対106の自由端124および122に接続され、増幅された熱電対電圧408を、デジタルプロセッサ400によって実行される温度計算素子410に提供する。RTD測定回路416は、RTDセンサ414に電流を流し、RTDセンサ414の抵抗を決定する。RTD測定回路416は、RTDセンサ414の決定された抵抗を使用して、RTDセンサ414の温度を識別し、その温度を温度計算素子410に提供する。温度計算素子410は、RTDセンサ414の温度を熱電対106の自由端122および124の温度として使用し、しばしば熱電対の基準温度と呼ばれる。この基準温度および増幅された熱電対電圧408を使用して、温度計算素子410は、熱電対導体116と118との間の接触点の温度412を決定する。温度412は、通信インターフェース418に提供され、通信インターフェース418は、2線式プロセス制御ループおよび無線通信を含む任意のタイプの所望の通信チャネルを使用して、1つ以上の他の処理デバイスまたは制御室に温度412を送信する。
【0013】
熱電対診断素子406は、熱電対106に短絡状態が存在するときを識別するために、デジタルプロセッサ400によって実行される。熱電対診断素子406は、以下でさらに説明する1つまたは複数の診断試験460、462、464、および466を利用する。これらの診断試験の各々は、部分的には、熱電対回路に短絡が生じたときに、熱電対回路に沿った抵抗が変化するという事実に依拠する。具体的には、熱電対に短絡がなければ、熱電対106の自由端122に印加される電流は、導体116(任意の延長ワイヤを含む)の全長に沿って、接合部120を通って、導体118(任意の延長ワイヤを含む)の全長に沿って戻る。導体116および118は、単位長さ当たりのそれぞれの抵抗を有するので、電流に対する全抵抗は、導体116の全長(任意の延長ワイヤの長さを含む)×単位長さ当たりの導体116の抵抗+導体118の全長(任意の延長ワイヤを含む)×単位長さ当たりの導体118の抵抗に等しい。しかし、熱電対に短絡が存在する場合、印加された電流は、導体116に沿って短絡の位置に流れ、次いで導体118に沿って自由端124に戻る。この第2の経路は第1の経路よりも短いので、短絡が熱電対に存在するときの全抵抗は、短絡が存在しないときよりも小さい。
【0014】
熱電対の抵抗を測定するために、熱電対診断素子406は、電流源404を使用して、熱電対106に電流を印加する。熱電対の抵抗のために、この電流は、増幅された熱電対電圧408を生成するために電圧増幅器402によって増幅される電圧を自由端122と124との間に生成する。電流源によって印加される電流の量は、次に、熱電対106の抵抗を決定するために、増幅された熱電対電圧408と共に使用される。
【0015】
電流源404から印加された電流は、自由端122および124の両端間の電圧を変化させるので、いくつかの実施形態は、熱電対診断素子406が熱電対106に電流を印加しているときに、増幅された熱電対電圧408を使用して温度412を計算しない。そのような一実施形態では、熱電対診断素子406は、抵抗診断が実行されている間、温度計算素子410を一時停止させる値を設定または通過させる。
【0016】
一実施形態によれば、熱電対診断素子406が、熱電対106内に短絡が発生したと決定した場合、熱電対診断素子406は、通信インターフェース418を介して、制御室または他のプロセスデバイスに短絡の指標を送信する。一実施形態によれば、この指標は、熱電対に短絡があることを伝える警告メッセージである。
【0017】
<抵抗閾値試験460>
熱電対診断試験の1つは、熱電対106の抵抗を定期的に測定し、熱電対106の抵抗が閾値未満に低下したときに短絡を識別することによって、熱電対106の短絡を検出する抵抗閾値試験460である。抵抗閾値試験460は、デジタルプロセッサ400に関連するメモリに記憶されているベースライン抵抗422を測定することによって開始する。規則的な間隔で、抵抗閾値試験460は、温度計算素子410を中断して、熱電対106の新しい抵抗値を測定する。次に、抵抗閾値試験460は、ベースライン抵抗と測定された抵抗との間の差を計算し、その差がガードバンド値よりも大きいかどうかを決定する。ガードバンド426の値は、短絡が存在しないときでさえ生じ得る熱電対抵抗の変動に適応するように選択される。ベースライン抵抗422と測定抵抗との間の差がガードバンド426よりも大きい場合、熱電対診断素子406は、熱電対導体が通信インターフェース418に短絡されているという指標を提供し、通信インターフェース418は、その指標を制御室または他のプロセスデバイスに伝達する。
【0018】
<抵抗傾向試験462>
第2の熱電対診断試験は、抵抗傾向試験462である。抵抗傾向試験462は、熱電対抵抗を定期的に測定し、最後のn個の測定値を記憶する。次に、最後のn個の抵抗測定値から傾向線を決定し、その線の勾配を調べて、熱電対が短絡したことを示す指標を出すのに十分に負であるかどうかを決定する。勾配が十分に負である場合、熱電対診断素子406は、熱電対導体が通信インターフェース418に短絡したという指標を提供し、次いで、通信インターフェース418は、制御室および/または他のプロセスデバイスに指標を提供する。
【0019】
<温度および熱電対抵抗の使用>
抵抗閾値試験460および抵抗傾向試験462は両方とも、熱電対抵抗の定期的な試験を必要とする。これは、温度計算素子410を中断し、したがって、高温接合部温度412の送達を遅らせる可能性があるので、望ましくない。また、抵抗測定中に電流源404を駆動するために追加の電力を必要とするため、望ましくない。
【0020】
さらに、誤った短絡警報を発することを回避するために、抵抗閾値試験460で使用されるガードバンド426および抵抗傾向試験462で使用される負の勾配のサイズは、短絡警報が発せられる前に熱電対の抵抗の実質的な低減を必要とするように設定される。これは、試験によっていくつかの短絡状態が見逃される可能性があるので、望ましくない。
【0021】
これらの問題を克服するために、以下に説明する温度および抵抗閾値試験464ならびに温度および抵抗傾向試験466は、温度値412および熱電対抵抗値の組合せを使用して、いつ短絡状態が熱電対106に存在するかを識別する。
【0022】
図5は、時間tsで短絡状態が発生したときの時間504に応じた熱電対抵抗501のグラフを示す。短絡状態の前に、熱電対はベースライン抵抗500を有し、短絡の後に、熱電対の抵抗は測定された抵抗502まで低下する。図6は、時間602の関数としての熱電対温度412のグラフを提供し、時間602は、図5のグラフの時間504と整列される。図6に示すように、短絡状態中に熱電対106の抵抗が低下すると、測定温度も初期温度604からより低い温度606に低下する。熱電対短絡中の温度の変化と熱電対抵抗の変化との間のこの相関関係は、第1の導体と第2の導体とがいつ短絡されるかを決定する精度を改善するために、熱電対診断素子406の試験464および466で使用される。
【0023】
<温度および抵抗閾値試験464>
温度および抵抗閾値試験464の一実施形態では、熱電対106の抵抗の過度の試験は、抵抗が測定されるときにトリガするために温度412を使用することによって回避される。熱電対のベースライン抵抗は、電流源404および増幅された熱電対電圧408を使用して最初に決定され、デジタルプロセッサ400によってベースライン抵抗422として記憶される。次に、温度および抵抗閾値試験464は、温度412を監視し、熱電対によって提供される温度が指定された期間にわたって閾値量を超えて低下しない限り、熱電対106の抵抗を再測定しない。温度が閾値量を超えて低下すると、温度および抵抗閾値試験464は、電流源404を作動させ、増幅された熱電対電圧408を使用して、熱電対106の抵抗を測定する。次いで、ベースライン抵抗422と測定された抵抗との間の差が閾値と比較される。差が閾値を超える場合、熱電対導体が短絡したという指示が、熱電対診断素子406によって通信インターフェース418に出され、通信インターフェース418は、その指標を制御室および/または他のプロセスデバイスに送信する。
【0024】
一実施形態によれば、抵抗閾値は、熱電対のより低い温度に部分的に基づく。熱電対106がより低い温度に曝されると、短絡が存在しない場合であっても、熱電対106の抵抗は低下する。この温度依存抵抗降下を閾値に含めることによって、熱電対の温度変化のみに起因する抵抗変化は、熱電対に短絡が存在するという指標を引き起こさない。
【0025】
温度および抵抗閾値試験464の他の実施形態では、熱電対106の抵抗が定期的に測定され、各測定について、測定された抵抗とベースライン抵抗422との間のそれぞれの差が閾値と比較される。さらに、温度値412の履歴が記憶される。抵抗の差が閾値を超えると、温度値412の履歴を調べて、抵抗が閾値量を超えて低下したのと同時に温度が低下したかどうかを決定する。温度が低下しなかった場合、抵抗の低下は無視される。温度が抵抗の低下と同時に低下した場合、熱電対診断素子406によって熱電対短絡の指標が出され、通信インターフェース418によって制御室および/または他のプロセスデバイスに送信される。したがって、そのような実施形態では、熱電対温度は、短絡が生じたことを検証するために使用される。
【0026】
<温度および抵抗傾向試験466>
熱電対の温度および抵抗を閾値と比較する代わりに、温度および抵抗傾向試験466は、熱電対の温度および抵抗の傾向線を決定し、それらの線の勾配を使用して、いつ熱電対に短絡が発生したかを識別する。具体的には、温度および抵抗傾向試験466は、熱電対106の抵抗を定期的に測定し、熱電対温度412を定期的に記憶する。一実施形態では、新しい測定温度412毎に、試験466は、最後の5つの温度412のような最後のn個の温度412に適合する、図6の傾向線608のような温度傾向線を決定する。次に、トレンド線の勾配を調べて、熱電対に短絡があることを示すのに十分に負であるかどうかを決定する。温度トレンド線の勾配が十分に負である場合、最後の5つの抵抗値などの最後のm個の抵抗値を使用して、図5のトレンド線508などの抵抗のトレンド線が決定される。次に、抵抗値の傾向線の勾配を調べて、熱電対に短絡があることを示すのに十分に負であるかどうかを決定する。抵抗傾向線の勾配が十分に負である場合、熱電対診断素子406は、熱電対に短絡があるという指標を発し、通信インターフェース418は、この指標を制御室および/または他のプロセスデバイスに送信する。
【0027】
別の実施形態では、新たに測定された各熱電対抵抗を用いて、試験466は、最後の5つの測定された抵抗のような最後のn個の測定された抵抗に適合する抵抗傾向線を決定する。次に、トレンド線の勾配を調べて、熱電対に短絡があることを示すのに十分に負であるかどうかを決定する。抵抗傾向線の勾配が十分に負である場合、熱電対温度412の傾向線は、最後の5つの温度値などの最後のm個の温度値を使用して決定される。次に、温度値の傾向線の勾配を調べて、熱電対に短絡があることを示すのに十分に負であるかどうかを決定する。温度傾向線の勾配が十分に負である場合、熱電対診断素子406は、熱電対短絡の指標を発し、通信インターフェース418は、その指標を制御室および/または他のプロセスデバイスに送信する。
【0028】
さらに別の実施形態では、トレンドラインと閾値との組み合わせを使用して、熱電対106に短絡が存在するかどうかを決定する。例えば、測定された熱電対抵抗とベースライン抵抗422との間の差を閾値と比較することができ、閾値を超えると、熱電対温度の傾向線を決定することができる。次に、温度傾向線の勾配を調べて、熱電対の短絡を示すのに十分に負であるかどうかを決定することができる。あるいは、時間の経過に伴う熱電対温度の低下を閾値と比較することができ、温度の低下が閾値を超えると、熱電対抵抗の傾向線を決定することができる。抵抗傾向線の勾配が十分に負である場合、熱電対診断素子406は、熱電対の短絡の指標を出す。
【0029】
<インライン熱電対抵抗>
上述した各試験において、熱電対抵抗の変化は、熱電対に短絡が発生したときを識別するために使用される。抵抗の変化の大きさは、熱電対導体の単位長さ当たりの抵抗と、短絡が起こる点と接合部120との間の導体の長さとの関数である。この長さが短い場合、結果として生じる抵抗の変化は、検出するには小さすぎる可能性がある。
【0030】
上記の試験の動作を改善するために、いくつかの実施形態は、短絡が発生したときに抵抗のより大きな降下があるように、抵抗素子を熱電対106に組み込む。
【0031】
図7は、抵抗素子を含み、図4の熱電対106の代わりに使用することができる熱電対706の第1の実施形態を提供する。熱電対706は、接合部720で互いに接合され、自由端722および724を有する2つの導体716および718を含む。導体716は、2つの部分、すなわち、第1の部分730と、抵抗素子として作用する第2の部分732とを含むように示されている。第1の部分730は、熱電対の単位長さ当たりの第1の抵抗を有し、第2の部分732は、熱電対の単位長さ当たりの第2の抵抗を有し、単位長さ当たりの第2の抵抗は、単位長さ当たりの第1の抵抗よりも大きい。単位長さ当たりの抵抗は、熱電対の長さに対してであり、導体の長さに対してではないことに留意されたい。熱電対の単位長さ当たりの抵抗は、熱電対に沿った2つの点を選択し、直線に沿った2つの点の間の距離を測定し、2つの点の間の導体に沿った抵抗を距離で割ることによって測定される。これは、2点間の導体の長さを決定し、この長さで抵抗を割ることによって測定される導体の単位長さ当たりの抵抗とは異なる。
【0032】
一実施形態によれば、熱電対の単位長さ当たりの異なる抵抗は、第2の部分732が第1の部分730よりも小さい断面を有するように第2の部分732を構成することによって達成される。第2の実施形態によれば、熱電対の単位長さ当たりの異なる抵抗は、第2の部分732を曲げるかまたは巻くことによって達成され、その結果、第2の部分732内の熱電対の単位長さ当たりの導体の長さは、第1の部分730よりも長い。
【0033】
一実施形態によれば、高抵抗部分732は、通常の抵抗部分730と接合部720との間にある。特に、第2の部分732は、図8に示すように、短絡が温度計算素子410によって計算された温度412を変化させる点800より下になるように、熱電対706内に配置される。他の実施形態では、第2の部分732は、接合部720に可能な限り近接して配置される。いくつかの実施形態では、高抵抗部分732は、導体716上の高抵抗部分を局所化するように、通常抵抗部分730よりも短い。
【0034】
図8に示すように、短絡状態が点800に存在するとき、高抵抗部分732は、熱電対診断素子406によって測定される自由端722と724との間の抵抗をもはや増加させない。部分732は、熱電対706の他の部分よりも高い抵抗を有するので、部分732による抵抗の除去は、図5に示すよりも大きな抵抗の変化を生じさせる。この抵抗の大きな変化は、上述した試験460、462、464、466の全ての動作を改善する。
【0035】
一実施形態によれば、試験460および464で使用される閾値抵抗変化は、熱電対診断素子406が熱電対に短絡があるという指標を生成するために、熱電対抵抗が少なくとも高抵抗部分732の抵抗量だけ変化しなければならないように設定される。そのような実施形態では、熱電対診断素子406は、測定された抵抗が、ベースライン抵抗から高抵抗部分732の抵抗を引いた値未満である場合に、熱電対の短絡の指標を提供する。
【0036】
図9および図10は、図4の熱電対106の代わりに使用することができる2つのインライン抵抗素子832および842を有する別の熱電対806を示す。熱電対806は、自由端822および824を有し、接合部820で互いに接合された2つの導体816および818から形成される。熱電対806では、2つの高抵抗部分832および842が熱電対に含まれ、各導体816および818上に1つの高抵抗部分がある。したがって、導体816は、熱電対の単位長さ当たりの第1の抵抗を有する第1の部分836と、熱電対の単位長さ当たりの第2の抵抗を有する第2の部分832とからなり、単位長さ当たりの第2の抵抗は、単位長さ当たりの第1の抵抗よりも大きい。同様に、導体818は、熱電対の単位長さ当たりの第3の抵抗を有する第1の部分840と、熱電対の単位長さ当たりの第4の抵抗を有し、単位長さ当たりの第4の抵抗が単位長さ当たりの第3の抵抗よりも大きい第2の部分842とからなる。図9および図10に示すように、高抵抗部分832および842は、通常抵抗部分836、840と接合部820との間に配置される。一実施形態によれば、高抵抗部分832および842は、点1000と接合部820との間の位置であり、点1000は、自由端822と824との間の電圧が短い事象の間に変化し、それによって測定温度412に変化を生じさせる点を表す。他の実施形態では、高抵抗部分832および842は、接合820に可能な限り近接して配置される。いくつかの実施形態では、高抵抗部分832および842は、導体816および818上の高抵抗部分を局所化するように、通常抵抗部分836および840よりも短い。
【0037】
両方の導体に高抵抗部分を含めることによって、短絡事象が発生したときの抵抗の降下が大きくなり、抵抗のみを使用して、または上述の試験460、462、464、および466のいずれかを使用して温度の変化と組み合わせて抵抗を使用して短絡事象を識別することがより容易になる。
【0038】
一実施形態によれば、試験460および464で使用される閾値抵抗変化は、熱電対診断素子406が熱電対に短絡があるという指標を生成するために、熱電対抵抗が少なくとも高抵抗部分832および834の抵抗量だけ変化しなければならないように設定される。そのような実施形態では、熱電対診断素子406は、測定された抵抗が、ベースライン抵抗マイナス高抵抗部分832の抵抗と高抵抗部分834の抵抗との合計よりも小さいときに、熱電対の短絡の指標を提供する。
【0039】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、様々な変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく形状および細部になされてもよいことは認識できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10