(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220510BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 P
H05K9/00 Q
(21)【出願番号】P 2019530969
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2018025877
(87)【国際公開番号】W WO2019017226
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2019-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2017141005
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】畦▲崎▼ 崇
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 潤
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲光
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176950(JP,A)
【文献】特開2011-119369(JP,A)
【文献】特開2011-151372(JP,A)
【文献】特開2004-363139(JP,A)
【文献】特開2002-134441(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成面を有する電子部品と、基材層および粘着性樹脂層を有するとともに、前記回路形成面を保護するように前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性樹脂層側が貼り付けられた粘着性積層フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
前記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、前記電子部品をダイシングする工程(C)と、
前記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、個片化された前記電子部品に対して電磁波シールド層を形成する工程(D)と、
をこの順番に含み、
前記工程(A)、前記工程(B)、前記工程(C)および前記工程(D)において、前記粘着性積層フィルムとして同一の粘着性積層フィルムを使用
し、
前記粘着性積層フィルムは、前記基材層と前記粘着性樹脂層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有し、
前記工程(A)と前記工程(D)との間に、前記凹凸吸収性樹脂層を架橋させることで、前記凹凸吸収性樹脂層の耐熱性を向上させる工程(E)をさらに含む電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(D)の後に前記電子部品と前記粘着性積層フィルムとを剥離する工程(F)をさらに含む電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(F)では、前記粘着性積層フィルムにおける前記電子部品が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する前記電子部品間の間隔を拡大させた状態で、前記粘着性積層フィルムから前記電子部品を剥離する電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層は放射線架橋型粘着剤を含み、
前記工程(F)の前に、前記粘着性樹脂層に対して放射線を照射して前記粘着性樹脂層を架橋させる工程(G)をさらに含む電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品の前記回路形成面はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の電子装置の製造方法において、
前記バンプ電極の高さをH[μm]とし、前記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(D)では、スパッタリング法、蒸着法、スプレーコーティング法、電解メッキ法および無電解メッキ法から選択される少なくとも一種の方法を用いて前記電子部品に対して前記電磁波シールド層を形成する電子装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(D)では、少なくとも前記電子部品における前記回路形成面に対向する対向面および前記回路形成面と前記対向面とを繋ぐ側面に対して前記電磁波シールド層を形成する電子装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層を構成する樹脂がポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミドからなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程では、電子部品に電磁波シールド性を付与するために、電子部品の回路形成面を保護フィルム等で保護した状態で電子部品の表面に電磁波シールド層を形成する工程をおこなう場合がある。こうすることで、電子部品に電磁波シールド性を付与でき、電子部品から発生する電磁波ノイズを遮断することができる。これにより、電子部品が周辺の他の電子部品に悪影響を与えることを抑制することができる。
このような電子部品の電磁波シールド性に関する技術としては、例えば、特許文献1(国際公開第2010/029819号パンフレット)に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/029819号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、電磁波シールド性を有する電子装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。
まず、本発明者らは、従来の電子装置の製造方法において、
図3に示すように電子部品100の回路形成面100Aを回路形成面保護用テープ130で保護した状態で電子部品100の表面に電磁波シールド層140を形成する場合、電子部品100の側面の下端部150に電磁波シールド層140が形成されない場合があることを知見した。この場合、電子部品100の電磁波シールド性が劣ってしまう。
【0005】
本発明者らは上記知見をもとにさらに検討したところ、
図3に示すようにダイシングテープ120に貼り付けられた電子部品100を回路形成面保護用テープ130に再配列したときに、回路形成面保護用テープ130における電子部品100の側面の下端部150と接する部分(粘着性層)が盛り上がり、電子部品100の側面の下端部150を覆ってしまう場合があることを知見した。すなわち、本発明者らの検討によれば、電子部品100の側面の下端部150が回路形成面保護用テープ130の粘着性層を構成する粘着剤160によって覆われてしまうため、電子部品100の側面の下端部150に電磁波シールド層140が形成されないことが明らかになった。
【0006】
また、電磁波シールド性を有する電子装置の製造方法は、
図3に示すように電子部品100をバックグラインドテープ110に貼り付けてバックグラインド工程を行い、次いで、電子部品100をバックグラインドテープ110から剥がした後にダイシングテープ120に貼り付けてダイシング工程を行い、次いで、電子部品100をダイシングテープ120から剥がした後に回路形成面保護用テープ130に再配列して電磁波シールド層形成工程を行っていた。そのため、従来の電子装置の製造方法では、電子部品100を仮固定するためのテープを3種類使用するとともに、電子部品100を各テープに貼り付ける工程や電子部品100を各テープから剥がす工程や等があり、工程数が非常に多かった。
【0007】
すなわち、本発明者らは、電磁波シールド性を有する電子装置の製造方法には、電子部品に対して電磁波シールド層を良好に形成しながら、電子装置の製造工程を短縮するという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品に対して電磁波シールド層を良好に形成できるとともに、電子装置の製造工程を短縮することが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、バックグラインド工程、ダイシング工程および電磁波シールド層形成工程において、電子部品の回路形成面を保護するフィルムとして、同じ粘着性積層フィルムを使用することにより、電子部品を各テープに貼り付ける工程や電子部品を各テープから剥がす工程等の一部を省略でき、さらに電子部品の側面の下端部における電磁波シールド層の形成不良を抑制できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法が提供される。
【0011】
[1]
回路形成面を有する電子部品と、基材層および粘着性樹脂層を有するとともに、上記回路形成面を保護するように上記電子部品の上記回路形成面に上記粘着性樹脂層側が貼り付けられた粘着性積層フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
上記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、上記電子部品をダイシングする工程(C)と、
上記粘着性積層フィルムに貼り付けられた状態で、個片化された上記電子部品に対して電磁波シールド層を形成する工程(D)と、
をこの順番に含み、
上記工程(A)、上記工程(B)、上記工程(C)および上記工程(D)において、上記粘着性積層フィルムとして同一の粘着性積層フィルムを使用する電子装置の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性積層フィルムは、上記基材層と上記粘着性樹脂層との間に凹凸吸収性樹脂層をさらに有する電子装置の製造方法。
[3]
上記[2]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(A)と上記工程(D)との間に、上記凹凸吸収性樹脂層を架橋させることで、上記凹凸吸収性樹脂層の耐熱性を向上させる工程(E)をさらに含む電子装置の製造方法。
[4]
上記[2]または[3]に記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
[5]
上記[2]乃至[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(D)の後に上記電子部品と上記粘着性積層フィルムとを剥離する工程(F)をさらに含む電子装置の製造方法。
[7]
上記[6]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(F)では、上記粘着性積層フィルムにおける上記電子部品が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する上記電子部品間の間隔を拡大させた状態で、上記粘着性積層フィルムから上記電子部品を剥離する電子装置の製造方法。
[8]
上記[6]または[7]に記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性樹脂層は放射線架橋型粘着剤を含み、
上記工程(F)の前に、上記粘着性樹脂層に対して放射線を照射して上記粘着性樹脂層を架橋させる工程(G)をさらに含む電子装置の製造方法。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記電子部品の上記回路形成面はバンプ電極を含む電子装置の製造方法。
[10]
上記[9]に記載の電子装置の製造方法において、
上記バンプ電極の高さをH[μm]とし、上記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(D)では、スパッタリング法、蒸着法、スプレーコーティング法、電解メッキ法および無電解メッキ法から選択される少なくとも一種の方法を用いて上記電子部品に対して上記電磁波シールド層を形成する電子装置の製造方法。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(D)では、少なくとも上記電子部品における上記回路形成面に対向する対向面および上記回路形成面と上記対向面とを繋ぐ側面に対して上記電磁波シールド層を形成する電子装置の製造方法。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記基材層を構成する樹脂がポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミドからなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子部品に対して電磁波シールド層を良好に形成できるとともに、電子装置の製造工程を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
【
図1】本発明に係る電子装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【
図3】従来の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0016】
図1は、本発明に係る電子装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【0017】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)、工程(C)および工程(D)を少なくともこの順番に含み、工程(A)、工程(B)、工程(C)および工程(D)において、粘着性積層フィルム50として同一の粘着性積層フィルムを使用する。
(A)回路形成面10Aを有する電子部品10と、基材層20および粘着性樹脂層40を有するとともに、回路形成面10Aを保護するように電子部品10の回路形成面10Aに粘着性樹脂層40側が貼り付けられた粘着性積層フィルム50と、を備える構造体60を準備する工程
(B)粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面をバックグラインドする工程
(C)粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、電子部品10をダイシングする工程
(D)粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、個片化された電子部品10に対して電磁波シールド層70を形成する工程
【0018】
前述したように、本発明者の検討によれば、従来の電子装置の製造方法において、
図3に示すように電子部品100の回路形成面100Aを回路形成面保護用テープ130で保護した状態で電子部品100の表面に電磁波シールド層140を形成する場合、電子部品100の側面の下端部150に電磁波シールド層140が形成されない場合があることを知見した。この場合、電子部品100の電磁波シールド性が劣ってしまう。
【0019】
本発明者らは上記知見をもとにさらに検討したところ、
図3に示すようにダイシングテープ120に貼り付けられた電子部品100を回路形成面保護用テープ130に再配列したときに、回路形成面保護用テープ130における電子部品100の側面の下端部150と接する部分(粘着性層)が盛り上がり、電子部品100の側面の下端部150を覆ってしまう場合があることを知見した。すなわち、本発明者らの検討によれば、電子部品100の側面の下端部150が回路形成面保護用テープ130の粘着性層を構成する粘着剤160によって覆われてしまうため、電子部品100の側面の下端部150に電磁波シールド層140が形成されないことが明らかになった。
【0020】
また、電磁波シールド性を有する電子装置の製造方法は、
図3に示すように電子部品100をバックグラインドテープ110に貼り付けてバックグラインド工程を行い、次いで、電子部品100をバックグラインドテープ110から剥がした後にダイシングテープ120に貼り付けてダイシング工程を行い、次いで、電子部品100をダイシングテープ120から剥がした後に回路形成面保護用テープ130に再配列して電磁波シールド層形成工程を行っていた。そのため、従来の電子装置の製造方法では、電子部品100を仮固定するためのテープを3種類使用するとともに、電子部品100を各テープに貼り付ける工程や電子部品100を各テープから剥がす工程や等があり、工程数が非常に多かった。
【0021】
すなわち、本発明者らは、電磁波シールド性を有する電子装置の製造方法には、電子部品に対して電磁波シールド層を良好に形成しながら、電子装置の製造工程を短縮するという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0022】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、バックグラインド工程、ダイシング工程および電磁波シールド層形成工程において、電子部品10の回路形成面10Aを保護するフィルムとして、同じ粘着性積層フィルム50を使用することにより、電子部品10を各テープに貼り付ける工程や電子部品10を各テープから剥がす工程等の一部を省略でき、さらに電子部品10の側面の下端部における電磁波シールド層の形成不良を抑制できることを見出した。
バックグラインド工程、ダイシング工程および電磁波シールド層形成工程において、電子部品10の回路形成面10Aを保護するフィルムとして、同じ粘着性積層フィルム50を使用すると、
図3に示すようなダイシングテープ120に貼り付けられた電子部品100を回路形成面保護用テープ130に再配列する工程を省略することができる。そのため、電子部品10の側面の下端部が粘着性樹脂層40を構成する粘着剤によって覆われてしまうという現象が発生しない。そのため、本実施形態に係る電子装置の製造方法では、電子部品10の側面の下端部まで電磁波シールド層70を良好に形成することができる。
また、本実施形態に係る電子装置の製造方法では、バックグラインド工程、ダイシング工程および電磁波シールド層形成工程において、電子部品10の回路形成面10Aを保護するフィルムとして、同じ粘着性積層フィルム50を使用することにより、電子部品10を各テープに貼り付ける工程や電子部品10を各テープから剥がす工程等の一部を省略できる。
以上のように、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、電子部品に対して電磁波シールド層を良好に形成できるとともに、電子装置の製造工程を短縮することが可能となる。
【0023】
1.粘着性積層フィルム
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法で用いる粘着性積層フィルム50について説明する。
【0024】
<基材層>
基材層20は、粘着性積層フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層20は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層20を構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンエーテル;ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、ポリブチレンテレフタレート等のエラストマー;等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレートから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、ポリブチレンテレフタレートおよびポリイミドから選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、粘着性積層フィルム50の柔軟性や伸縮性等の特性と耐熱性とのバランスを向上させる観点から、基材層20を構成する樹脂としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレート等から選択される一種または二種以上がさらに好ましい。これにより、粘着性積層フィルム50の伸縮性や柔軟性が向上し、工程(D)の後に電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する際に粘着性積層フィルム50を面内方向に拡張させることがより一層容易になり、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離し易くなる。
【0025】
基材層20の融点は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。融点上限は特に限定されず、加工性等を鑑みて選択すればよいが、工程(F)における粘着性積層フィルム50の拡張性を良好にする観点からは、300℃以下であってもよく、また250℃以下であってよい。
このような基材層20を用いると、工程(D)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形や溶融をより一層抑制することができる。
【0026】
基材層20は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層20を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0027】
基材層20の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは25μm以上250μm以下である。
基材層20は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0028】
<凹凸吸収性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、基材層20と粘着性樹脂層40との間に凹凸吸収性樹脂層30をさらに有することが好ましい。
凹凸吸収性樹脂層30は、粘着性積層フィルム50の回路形成面10Aへの追従性を良好にし、回路形成面10Aと粘着性積層フィルム50との密着性を良好にすることを目的として設けられる層である。
ここで、本発明者らの検討によれば、電子部品の回路形成面を保護フィルムで保護した状態で電子部品の表面に電磁波シールド層を形成する際に、電磁波シールド層を形成するための導電性成分が電子部品の回路形成面に入り込んで回路に付着し、その結果、回路が電気的に短絡してしまう場合があるという課題を見出した。また、回路形成面の凹凸が大きいほど回路形成面を構成する回路が電気的に短絡しやすかった。特に、電子部品の回路形成面上に、バンプ電極が形成された電子部品を用いる場合、回路形成面を構成する回路が電気的に短絡しやすい傾向にあった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品と保護フィルムとの間の密着性が不十分である場合、電磁波シールド層を形成するための導電性成分が電子部品の回路形成面に入り込みやすく、回路の導通不良を引き起こしやすいことを知見した。
特に、回路形成面にバンプ電極等の比較的大きな凹凸が形成された電子部品を使用する場合、電子部品の回路形成面の凹凸に対する保護フィルムの追従性が不十分になりやすいため、電子部品と保護フィルムとの間の密着性が不十分になりやすい。その結果、電磁波シールド層を形成するための導電性成分が電子部品の回路形成面に浸入し易くなり、回路形成面を構成する回路の導通不良が起こりやすくなることを知見した。
本発明者らは、上記知見をもとにさらに検討を重ねた。その結果、電子部品10の回路形成面10Aを保護するフィルムとして、基材層20、凹凸吸収性樹脂層30および粘着性樹脂層40をこの順番に有する粘着性積層フィルム50を使用することにより、回路形成面10Aの電気的な短絡を抑制でき、電磁波シールド性を有する電子装置を安定的に得ることができることを見出した。
すなわち、粘着性積層フィルム50が凹凸吸収性樹脂層30をさらに有することで、粘着性積層フィルム50が電子部品10の回路形成面10Aに追従し易くなり、粘着性積層フィルム50と電子部品10の回路形成面10Aとの間の密着性を向上させることができる。これにより、電子部品10の回路形成面10Aの凹凸を追従し易くなり、粘着性積層フィルム50と電子部品10の回路形成面10Aとの間の隙間をより小さくできる。その結果、電子部品10の表面に電磁波シールド層70を形成する際に、電磁波シールド層70を形成するための導電性成分が電子部品10の回路形成面10Aに入り込むことを抑制でき、回路形成面10Aを構成する回路の電気的な短絡を抑制することができる。
【0029】
凹凸吸収性樹脂層30を構成する樹脂は、凹凸吸収性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0030】
また、凹凸吸収性樹脂層30は架橋性樹脂を含むことが好ましい。凹凸吸収性樹脂層30が架橋性樹脂を含むことにより、工程(D)の前に凹凸吸収性樹脂層30を架橋して耐熱性を向上させることが可能となり、その結果、工程(D)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形や溶融をより一層抑制することができる。
本実施形態に係る架橋性樹脂としては凹凸吸収性樹脂層30を形成でき、かつ、熱や光等の外部刺激によって架橋して耐熱性が向上する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンとを含むエチレン・α-オレフィン共重合体、高密度エチレン系樹脂、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、プロピレン(共)重合体、1-ブテン(共)重合体、4-メチルペンテン-1(共)重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体等のエチレン・無水カルボン酸系共重合体;エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体等のエチレン・エポキシ系共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・エチレン性不飽和酸共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレン・スチレン共重合体等;(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体等の不飽和カルボン酸エステル(共)重合体;エチレン・アクリル酸金属塩共重合体、エチレン・メタアクリル酸金属塩共重合体等のアイオノマー樹脂;ウレタン系樹脂;シリコーン系樹脂;アクリル酸系樹脂;メタアクリル酸系樹脂;環状オレフィン(共)重合体;α-オレフィン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル化合物;芳香族ポリエン共重合体;エチレン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;スチレン系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体;スチレン・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン・スチレン共重合体;メタアクリル酸・スチレン共重合体;エチレンテレフタレート樹脂;フッ素樹脂;ポリエステルカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー;塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー;液晶性ポリエステル;ポリ乳酸等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0031】
これらの中でも、有機過酸化物等の架橋剤による架橋が容易であることから、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーから選択される一種または二種以上を用いることが好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがより好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがさらに好ましい。
これらの中でも、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。なお本実施形態においては上述した樹脂は、単独で用いてもよいし、ブレンドして用いてもよい。
【0032】
本実施形態における架橋性樹脂として用いられる、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンとしては、通常、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0033】
凹凸吸収性樹脂層30の厚さは、電子部品10の回路形成面10Aの凹凸を埋め込むことができる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上900μm以下であることがより好ましく、30μm以上800μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上700μm以下であることが特に好ましい。
【0034】
ここで、電子部品の回路形成面がバンプ電極を含む場合は、電子部品の表面に電磁波シールド層を形成する際に、回路形成面を構成する回路が電気的に短絡しやすい傾向にある。しかし、凹凸吸収性樹脂層30をさらに有する粘着性積層フィルム50を用いることによって、回路形成面10Aにバンプ電極を含む電子部品10に対しても電気的な短絡を抑制することが可能となる。
また、電子部品10の回路形成面10Aに存在するバンプ電極の高さをH[μm]とし、凹凸吸収性樹脂層30の厚みをd[μm]としたとき、H/dが1以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。H/dが上記上限値以下であると、粘着性積層フィルム50の厚みをより薄くしつつ、凹凸吸収性をより良好にすることができる。
H/dの下限は特に限定されないが、例えば、0.01以上であり、好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。バンプ電極の高さは、一般的に2μm以上600μm以下である。
ここで、本発明者らの検討によれば、回路形成面の凹凸が大きいほど回路形成面を構成する回路が電気的に短絡しやすいことが明らかになった。そのため、バンプ電極の高さが好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらにより好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上のとき、本実施形態に係る電子装置の製造方法の効果をより一層効果的に得ることができる。
【0035】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層40は、基材層20または凹凸吸収性樹脂層30の一方の面側に設けられる層であり、粘着性積層フィルム50を電子部品10の回路形成面10Aに貼り付ける際に、電子部品10の回路形成面10Aに接触して粘着する層である。
【0036】
粘着性樹脂層40を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0037】
また、粘着性樹脂層40を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることもできる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層40は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、後述する電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する工程(F)において、粘着性樹脂層40から電子部品10を剥離し易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0039】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系重合体と、架橋性化合物(炭素-炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0040】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2-プロペニルジ-3-ブテニルシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル系重合体が、ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0041】
架橋性化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して5~900質量部が好ましく、5~100質量部がより好ましく、10~50質量部がさらに好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0042】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0043】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0044】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層40の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0045】
粘着性樹脂層40の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0046】
粘着性樹脂層40は、例えば、基材層20または凹凸吸収性樹脂層30上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0047】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。こうすることで、粘着性積層フィルム50に透明性を付与することができる。そして、粘着性積層フィルム50の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50において基材層20側から放射線を照射する際に、粘着性樹脂層40へより効果的に放射線を照射することができ、放射線照射効率を向上させることができる。なお、粘着性積層フィルム50の全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0048】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上1100μm以下であり、より好ましくは100μm以上900μm以下であり、さらに好ましくは200μm以上800μm以下である。
【0049】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、各層の間に接着層(図示せず)を設けていてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
【0050】
次に、本実施形態に係る粘着性積層フィルム50の製造方法の一例について説明する。
まず、基材層20の一方の面に凹凸吸収性樹脂層30を押出しラミネート法によって形成する。次いで、凹凸吸収性樹脂層30上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層40を形成し、粘着性積層フィルム50が得られる。
また、基材層20と凹凸吸収性樹脂層30とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層20とフィルム状の凹凸吸収性樹脂層30とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0051】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0052】
(工程(A))
はじめに、回路形成面10Aを有する電子部品10と、回路形成面10Aを保護するように電子部品10の回路形成面10Aに粘着性樹脂層40側が貼り付けられた粘着性積層フィルム50と、を備える構造体60を準備する。
【0053】
このような構造体60は、例えば、粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層40上に、回路形成面10Aを有する電子部品10を貼り付けることにより作製することができる。粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層40上に貼り付ける電子部品10は一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。
以下、構造体60の製造方法について説明する。
【0054】
はじめに、粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層40上に電子部品10を貼り付ける。
粘着性積層フィルム50に貼り付ける電子部品10としては回路形成面を有し、かつ、電磁波シールド性が求められる電子部品であれば特に限定されないが、例えば、半導体ウエハ、モールドウエハ、モールドパネル、モールドアレイパッケージ、半導体基板等が挙げられる。
また、半導体基板としては、例えば、シリコン基板、サファイア基板、ゲルマニウム基板、ゲルマニウム-ヒ素基板、ガリウム-リン基板、ガリウム-ヒ素-アルミニウム基板、ガリウム-ヒ素基板、タンタル酸リチウム基板等が挙げられる。
【0055】
また、電子部品10はどのような用途の電子部品であってもよいが、例えば、ロジック用(例えば、通信用、高周波信号処理用等)、メモリ用、センサー用、電源用の電子部品等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
電子部品10の回路形成面10Aは、例えば、電極10Bを有することにより、凹凸面となっている。
また、電極10Bは、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
電極10Bとしては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等のバンプ電極が挙げられる。すなわち、電極10Bは、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
(工程(B))
次に、粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面(以下、裏面とも呼ぶ。)をバックグラインドする。
ここで、バックグラインドするとは、電子部品10を割ったり、破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
電子部品10のバックグラインドは、公知の方法で行うことができる。例えば、研削機のチャックテーブル等に構造体60を固定し、電子部品10の裏面(回路非形成面)を研削する方法が挙げられる。
【0058】
裏面研削方式としては特に限定されないが、例えば、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式を採用することができる。それぞれ研削は、水を電子部品10と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。
【0059】
(工程(C))
次いで、粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、バックグラインドを行った電子部品10をダイシングする。電子部品10のダイシングは、公知の方法で行うことができる。
ここでいう「ダイシング」には、
(a)電子部品10に対してこの電子部品10の厚さと同じ深さの切れ込みを設けることによって電子部品10を分断し、複数の分断された電子部品10を得る操作(以下、「フルカットダイシング」ともいう。)、および、
(b)レーザー光を照射することにより、電子部品10に対し、電子部品10の切断までには至らない変質領域を設け、複数の電子部品10を得る操作(以下、「ステルスダイシング」ともいう。)が含まれる。
上記ダイシングは、ダイシングブレード(ダイシングソー)、レーザー光等を用いて公知の条件で行うことができる。
【0060】
ダイシングがフルカットダイシングである場合には、ダイシングによって電子部品10が複数の電子部品10に分断される。
一方、ダイシングがステルスダイシングである場合には、ダイシングのみによっては電子部品10が複数の電子部品10に分断されるまでには至らず、ダイシング後の粘着性積層フィルム50の拡張によって電子部品10が分断されて複数の分断された電子部品10が得られる。
【0061】
(工程(D))
次に、粘着性積層フィルム50に貼り付けられた状態で、個片化された電子部品10に対して電磁波シールド層70を形成する。
工程(D)では、例えば、
図2(D)に示すように電子部品10における回路形成面10Aに対向する対向面および回路形成面10Aと対向面とを繋ぐ側面に対して電磁波シールド層70を形成する。
【0062】
電子部品10に対して電磁波シールド層70を形成する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スパッタリング法、蒸着法、スプレーコーティング法、電解メッキ法および無電解メッキ法等が挙げられる。
【0063】
スパッタリング法としては、例えば、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、反応性スパッタリング法等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
蒸着法としては、例えば、真空蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
真空蒸着法としては、例えば、分子線エピタキシー法(MBE法)、物理気相成長法(PVD法)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
CVD法としては、例えば、熱CVD法、触媒CVD法、光CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、エピタキシャルCVD法、アトミックレイヤーCVD法、有機金属CVD法、クロライドCVD法等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの各種の乾式成膜法のなかでも、負荷温度を比較的低く抑えることができるという観点では、マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD等が好ましい。
【0065】
電磁波シールド層70を構成する材料は導電性であることが好ましい。具体的には、20℃における電気抵抗率が10000μΩ・cm以下の導電性を有することが好ましい。この電気抵抗率は、200μΩ・cm以下がより好ましく、100μΩ・cm以下が特に好ましい。
電磁波シールド層70を構成する導電性成分は特に限定されないが、金属が好ましく、例えば、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、W、Re、Ir、Pt、Au、Bi等の金属、これらの金属から選ばれる2種以上の金属を含んだ合金、酸化物(ITO(In2O3-SnO2)、ATO(SnO2-Sb)、FTO(SnO2-F)等)等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Al及びFeのうちの1種又は2種以上を含む金属膜、ITO膜、ATO膜が好ましい。
【0066】
電磁波シールド層70の膜厚は、シールド特性を発揮することができればよく、特に限定されないが、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。一方、最薄膜厚は特に限定されないが、0.5μm以上であることが好ましい。
【0067】
(工程(E))
前述した工程(D)において電磁波シールド層70を形成する際に、スパッタリング法や蒸着法により、凹凸吸収性樹脂層30が高温に加温されることがある。また電解メッキ法や無電解メッキ法においても、電磁波シールド層70をアニーリングする後工程によって、やはり凹凸吸収性樹脂層30が高温に曝されることがある。したがって、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(A)と工程(D)との間に、凹凸吸収性樹脂層30を架橋させることで、凹凸吸収性樹脂層30の耐熱性を向上させる工程(E)をさらに含むことが好ましい。これにより、工程(D)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形や溶融をより一層抑制することができる。工程(E)をおこなうタイミングは工程(A)と工程(D)との間であれば特に限定されず、どのタイミングでおこなってもよい。
【0068】
凹凸吸収性樹脂層30の架橋方法としては架橋性樹脂を架橋できる方法であれば特に限定されないが、ラジカル重合開始剤による架橋;硫黄や硫黄系化合物による架橋;紫外線や電子線、γ線等の放射線による架橋等の架橋方法が挙げられる。
ラジカル重合開始剤による架橋は、架橋性樹脂の架橋に用いられているラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。
【0069】
硫黄や硫黄系化合物を用いて凹凸吸収性樹脂層30を架橋する場合には、凹凸吸収性樹脂層30に加硫促進剤、加硫促進助剤等を配合して架橋をおこなってもよい。
また、いずれの架橋方法においても凹凸吸収性樹脂層30に架橋助剤を配合して凹凸吸収性樹脂層30の架橋をおこなってもよい。
【0070】
(工程(F))
また、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(D)の後に電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する工程(F)をさらにおこなってもよい。この工程(F)をおこなうことで、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離することができる。
電子部品10と粘着性積層フィルム50との剥離は、公知の方法で行うことができる。
【0071】
工程(F)では、粘着性積層フィルム50における電子部品10が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する電子部品10間の間隔を拡大させた状態で、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離することが好ましい。
こうすることにより、隣接する電子部品10間の間隔が拡大するため、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離し易くなる。さらに、粘着性樹脂層40の面内方向の拡張によって生じる、電子部品10と粘着性樹脂層40とのずり応力により、電子部品10と粘着性樹脂層40との粘着力が低下するため、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離し易くなる。
【0072】
(工程(G))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(F)の前に粘着性樹脂層40に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層40を架橋させることで、電子部品10に対する粘着性樹脂層40の粘着力を低下させる工程(G)をさらにおこなってもよい。工程(G)をおこなうタイミングは工程(A)と工程(F)との間であれば特に限定されず、どのタイミングでおこなってもよい。
工程(G)をおこなうことで、粘着性樹脂層40から電子部品10を容易に剥離し易くなる。また、粘着性樹脂層40を構成する粘着成分により電子部品10の表面が汚染されることを抑制することができる。
放射線は、例えば、粘着性積層フィルム50の粘着性樹脂層40側の面とは反対側の面から照射される。
【0073】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
例えば、バックグラインドする工程(B)後に、研削面(回路非形成面)に保護フィルムを張り付けてから、フィルムを硬化し、裏面保護層を形成させてもよい。
【0074】
また、工程(F)を行った後、得られた電子部品10を実装基板(プリント基板等)に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子部品の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程等をさらに行ってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0076】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0077】
この出願は、2017年7月20日に出願された日本出願特願2017-141005号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。