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特許7069172選択的に偏向可能な先端を有する血管内デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】選択的に偏向可能な先端を有する血管内デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20220510BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61M25/09 514
A61M25/092 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019532744
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2017068056
(87)【国際公開番号】W WO2018119334
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/438,407
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/848,878
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515246317
【氏名又は名称】サイエンティア・バスキュラー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】リッパート,ジョン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,エドワード・ジェイ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0188928(US,A1)
【文献】特開2010-029736(JP,A)
【文献】特表2005-534407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09-25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内デバイスであって、
細長い中空近位セクションと、
前記近位セクションに接合されるとともに前記近位セクションから遠位に延びて、前記デバイスの近位端から前記デバイスの遠位端まで延びる連続的な内腔を形成する細長い中空遠位セクションと、
前記近位端から前記遠位端まで延び、前記遠位端に接合されるとともに、適用された伸張または圧縮に応答して前記内腔内で平行移動可能である内側部材と
を備え、
少なくとも前記遠位セクションは、前記内側部材への伸張または圧縮の適用に応答して前記遠位端の偏向を可能にする微細加工された切込パターンを備え、
前記切込パターンは、ツービーム構成を含み、
前記ツービーム構成は、前記遠位セクションの周囲の周りに対称的に間隔を空けたビーム対を含
前記切込パターンの少なくとも一部は、好ましい曲げ方向を生成するように単一の側に実質的に並べられた複数のビームを有するワンビーム構成であり、
前記複数の実質的に並んだビームは、前記遠位端に隣接した前記遠位セクションのうちの最も遠位のセクションで配設される、
血管内デバイス。
【請求項2】
前記遠位端に接合されるポリマー先端をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ポリマー先端は、接着剤材料から形成され、前記内側部材は、前記接着剤材料を介して前記遠位端に接合される、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記近位セクションは、ステンレス鋼管である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記遠位セクションは、ニッケルチタン合金から形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記内側部材は、ステンレス鋼から形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記内側部材は、より近位のセクションでより幅広い断面直径とより遠位のセクションでより狭い断面直径とを有する研磨されたステンレス鋼コアである、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、「Intravascular Device Having a Selectively Deflectable Tip(選択的に偏向可能な先端を有する血管内デバイス)」という名称の2017年12月20日に出願した米国特許出願第15/848,878号、および「Steerable Intravascular
Devices(操向可能な血管内デバイス)」という名称の2016年12月22日に出願した米国仮特許出願第62/438,407号の優先権および利益を主張する。前述した出願全部は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]ガイドワイヤおよびカテーテルなどの介入的デバイスは、人体内深くにて繊細な処置を行うために医療分野においてしばしば利用される。典型的には、カテーテルは、患者の腿血管、橈骨血管、頸動脈血管、または頸静脈血管に挿入され、必要に応じて心臓、脳、または他の目標の解剖学的構造まで患者の血管系を通じてナビゲートされる。しばしば、ガイドワイヤは、まず目標の解剖学的構造へ送られ、続いて1つまたは複数のカテーテルは、ガイドワイヤによって通され、目標の解剖学的構造へ送られる。配置された後で、カテーテルは、薬物、ステント、塞栓性デバイス、放射線不透過性染料、または患者を所望のやり方で治療するための他のデバイスもしくは物質を送達するために使用できる。他の状況では、マイクロカテーテルおよびガイドワイヤは、ガイドワイヤがマイクロカテーテル内にある間に、目標の解剖学的構造に向かって同時に送られ、次いでガイドワイヤは、マイクロカテーテル内で平行移動することによって解剖学的構造の中にさらに通される。
【0003】
[0003]多くの応用において、そのような血管内デバイスは、目標の解剖学的構造に到達するために、血管系通路の曲がりくねった曲げ部および湾曲を通じて曲げられなければならない。そのような介入的デバイスは、そのような曲がりくねった経路をナビゲートするために、特にその遠位端のより近くで十分な可撓性を必要とする。しかしながら、他の設計面も考慮されなければならない。例えば、介入的デバイスは、十分なトルク能力(すなわち、近位端で印加されたトルクを遠位端までずっと伝達する能力)、押す能力(すなわち、曲がっているおよび結合している中間部分ではなく、遠位端への軸方向の押圧を伝達する能力)、および意図した医療機能を実行するための構造的完全性を与えることもできなければならない。
【0004】
[0004]多くの血管内処置は、血管内デバイスを神経血管系の部分に向けて送ることを含む。これらの処置は、デバイスが頸動脈サイフォンおよび他の曲がりくねった径を通じて案内されることを必要とする。そのような操作は、困難である場合がある。いくつかの例では、これらの困難のために、処置が完了できない、またははるかに費用と時間がかかるものとなる。デバイスの精確な制御が必要とされる。しかしながら、含まれる血管構造の固有の構造のために、カテーテルを目標の治療部位に適切に配置させることは困難であり得る。
【0005】
[0005]いくつかの状況では、デバイスの遠位先端を紡錘状動脈瘤に通すことが必要である場合があり、これは、よりさらなる困難を示し得る。デバイスを通常の血管系に通すとき、血管壁は、前方で概して経路を閉じ込め、デバイスの遠位先端の可能な移動を制限する。対照的に、紡錘状動脈瘤を通過するとき、デバイスの遠位先端は、動脈瘤の近位開口部と遠位開口部の間の開放した3次元空間を通じてナビゲートしなければならない。動脈
瘤内で閉じ込められる空間は比較的少ないため、遠位先端を遠位開口部に適切に位置合わせするのは極端に困難であり得る。
【0006】
[0006]典型的には、操作者は、血管内デバイスを押す/引っ張ることで遠位先端を前後に移動させることができ、トルクを加えて遠位先端を回転させることができる。しかしながら、これらの操作の組み合わせでは、動脈瘤の遠位開口部などの目標の解剖学的構造まで遠位先端を適切に位置合わせすることができず、この処置は、深刻に遅れ、または不可能になり得る。したがって、向上したナビゲーション能力を与える血管内デバイスの必要性が長い間感じられ続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]ガイドワイヤデバイスなどの血管内デバイスは、中空近位セクションと、近位セクションに接合されるとともに近位セクションから遠位に延びてデバイスの近位端からデバイスの遠位端まで延びる連続的な内腔を形成する中空遠位セクションとを備える。内側部材は、近位端から遠位端まで延び、遠位端に接合される。内側部材は、適用された伸張に応答して内腔内で平行移動可能である。少なくとも遠位セクションは、内側部材への伸張の適用に応答して遠位端の偏向を可能にする微細加工された切込パターンを備える。
【0008】
[0008]好ましい実施形態では、遠位セクションの切込パターンは、ワンビーム構成またはツービーム構成を備えるが、他の実施形態は、スリービーム構成または4つ以上のビームの構成を含んでもよい。一実施形態では、遠位セクションは、好ましい曲げ方向を形成するように単一の側に実質的に並べられた複数のビームを有するワンビームセクションを備える。例えば、実質的に並べられたビームは、遠位端に隣接したデバイスの遠位セクションのうちの最も遠位に配設され得る。有益なことに、この配置は、内側部材に伸張が適用されるときに、デバイスの遠位端の確実で予測可能な偏向を与えることができる。
【0009】
[0009]血管内デバイスは、任意の適切な医療グレードの材料で構成することができる。いくつかの実施形態は、ステンレス鋼管として形成された近位セクション、ニッケルチタン合金で形成される遠位セクション、およびステンレス鋼で形成される内側部材のうちの少なくとも1つを含む。内側部材は、より近位のセクションでより幅広い断面直径とより遠位のセクションでより狭い断面直径とを有する研磨されたステンレス鋼コアであり得る。
【0010】
[0010]本明細書中に説明される血管内デバイスは、血管系の中へ通ることを要求する任意の医療処置において利用され得る。いくつかの実施形態は、神経血管系の中へ深く通ることを要求する処置などの難しいナビゲーションの課題を有する処置において、および/または紡錘状動脈瘤を通じてナビゲートしようとするとき、特に有益である。例えば、近位開口部から遠位開口部まで紡錘状動脈瘤を通じてナビゲートしようと試みるとき、遠位側に到達するように動脈瘤の開放した3次元空間を通じて操ることは難しいものであり得る。デバイスのナビゲーションについてのさらなる制御を有することで、操作者は、動脈瘤を通り、血管系をナビゲートし続けることが可能になり得る。さらなる移動は、特に、定められた遠位セクションの切込パターンの結果としての予測可能な応答と組み合わされたとき、手順の成功と不成功との間の差となり得る。
【0011】
[0011]従来のガイドワイヤデバイスを使用するとき、操作者は、典型的には、患者の血管系をナビゲートするためにデバイスを押す/引く、およびデバイスを回転させることに限定される。動脈瘤を通過させるときなどのいくつかの状況では、ナビゲーションについての限られた制御は、所望のやり方で遠位先端を位置合わせすることを極端に難しくさせ得る。本明細書中に説明される特徴によってもたらされるさらなるナビゲーションの制御は、患者の解剖学的構造に対して適切な向きにデバイスを移動させるための別の選択肢を
もたらす。単なる押し/引きの移動および回転の移動がデバイスを適切にガイドするのに十分でないある種の応用では、先端を選択的に偏向させるさらなる選択肢が、デバイスが目標に到達することを可能にするようにナビゲーションの妨げを乗り越えるのに十分であり得る。
【0012】
[0012]本発明の上記および他の利点および特徴が得られ得るやり方を説明するために、簡潔に上述された本発明のより多くの特定の説明は、添付図面に示されるその特定の実施形態を参照して与えられる。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明の範囲の限定であるとみなされるべきではないことを理解し、本発明は、添付図面を用いることによってさらなる特異性および詳細で記述および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]図1Aは、選択的偏向を与える特徴を有するガイドワイヤデバイスの例示的な実施形態を示す。図1Bは、選択的偏向を与える特徴を有するガイドワイヤデバイスの例示的な実施形態を示す。
図2】[0014]図2Aは、ビームが好ましい曲げ方向を形成するように単一の側に実質的に並べられているワンビーム構成を含むガイドワイヤデバイスの他の実施形態を示す図である。図2Bは、ビームが好ましい曲げ方向を形成するように単一の側に実質的に並べられているワンビーム構成を含むガイドワイヤデバイスの他の実施形態を示す図である。
図3】[0015]マイクロカテーテル内に入れられた図2Aおよび図2Bのデバイスを示す図である。
図4A】[0016]血管内デバイス内で所望の曲げ特性を与えるように様々な組み合わせで利用され得る様々なビーム構成を示す図である。
図4B】血管内デバイス内で所望の曲げ特性を与えるように様々な組み合わせで利用され得る様々なビーム構成を示す図である。
図4C】血管内デバイス内で所望の曲げ特性を与えるように様々な組み合わせで利用され得る様々なビーム構成を示す図である。
図4D】血管内デバイス内で所望の曲げ特性を与えるように様々な組み合わせで利用され得る様々なビーム構成を示す図である。
図5】[0017]ビームのらせん配置を有する切込パターンを示す図である。
図6】[0018]比較のために分散カットパターンを示すとともに典型的ならせんパターンを示すグラフである。
図7】[0019]不完全ランプカットパターンを示すグラフである。
図8】[0020]比較のためにのこぎり歯状カットパターンを示すとともに典型的ならせんパターンを示すグラフである。
図9】[0021]異なるサイズの回転オフセットジャンプにより生じる間隔の人為構造の差を示す回転オフセットの差を示す図である。
図10】異なるサイズの回転オフセットジャンプにより生じる間隔の人為構造の差を示す回転オフセットの差を示す図である。
図11A】[0022]血管内デバイスの遠位セクションにおいて所望の曲げ特性を与えるように利用され得る様々なスパイラルカットパターンを示す図である。
図11B】血管内デバイスの遠位セクションにおいて所望の曲げ特性を与えるように利用され得る様々なスパイラルカットパターンを示す図である。
図11C】血管内デバイスの遠位セクションにおいて所望の曲げ特性を与えるように利用され得る様々なスパイラルカットパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.イントロダクション
[0023]本開示は、向上したナビゲーション能力を与える特徴を有する血管内デバイスに関する。詳細には、血管構造を通じたデバイスのさらなるナビゲーション制御を可能にする選択的に偏向可能な先端を備える実施形態が、本明細書中に記載されている。以下の説明では、ガイドワイヤデバイスの文脈で多くの例が与えられる。しかしながら、この概念は、マイクロカテーテル応用に容易に適用することが可能であると理解されよう。したがって、本明細書中に説明される概念および特徴は、血管内デバイスの任意の特定の形態に限定されるように意図されていない。
【0015】
[0024]さらに、以下の例の多くは、神経血管法において動脈瘤を通過する特定の文脈で説明されているが、説明される実施形態は、そのような応用にのみ限定されるものではないことが理解されよう。したがって、本明細書中に説明される血管内デバイスの実施形態は、本デバイスの向上したナビゲーション能力が有利であり得る他の応用に利用されてもよい。
II.偏向可能な先端部品
[0025]図1Aおよび図1Bは、例示的なガイドワイヤデバイス100の遠位領域を示す。デバイス100は、近位セクション102と遠位セクション104とを備え、これらは共に細長い中空部材を形成する。デバイス100は、近位端(図示せず)から延びる内側部材106も、近位セクション102を通じおよび遠位セクション104を通じ、遠位先端108に取り付けられるように備える。遠位先端は、ポリマー接着剤として形成されることが好ましいが、さらにまたは代替として、他の実施形態は、はんだ付け、溶接、固定具、または他の適切な取り付け手段を利用してもよい。
【0016】
[0026]図1Bに示すように、内側部材106は、近位および遠位セクション102、104によって形成された内腔内で平行移動可能であり、内側部材106に伸張または圧縮を適用することによって、遠位セクションを偏向させるようになっている。伸張または圧縮は、ユーザそれぞれによるデバイスの近位端での内側部材106の引張りまたは押圧、および/または内側部材106に動作可能に接続されたコントロール(例えば、ダイヤル、ボタン、スライダ)の操作の結果として適用される。
【0017】
[0027]ガイドワイヤデバイスを組み立てるために様々な材料が利用され得る。好ましい一実施形態では、近位セクション102はステンレス鋼ハイポチューブとして形成され、遠位セクション104はニッケルチタン合金として形成され、内側部材106はステンレス鋼ワイヤとして形成される。
【0018】
[0028]例示した実施形態では、内側部材106は、その長さに沿ってほぼ均一な直径のワイヤとして形成されている。そのような実施形態では、好ましくは、ワイヤは、十分な構造的完全性および強度を与えるが、遠位端でデバイスの十分な可撓性を与えるのに十分小さい直径を有する。このワイヤは、例えば、約0.00508mm(約0.0002インチ)から約0.127mm(約0.005インチ)、または0.0762mm(約0.003インチ)の直径を有することができる。
【0019】
[0029]代替の実施形態では、内側部材106は、より近位のセクションでより幅広い直径を有するとともに遠位端でより狭い直径へ先細になる(例えば、遠位端で約0.00508mm(約0.002インチ)へ先細になる)研磨されたコアとして形成される。そのような実施形態は、有益なことに、デバイスの遠位端で良好な可撓性を与えつつ、デバイスのより近位のセクションで完全性を維持するためにより多くの構造を与える。例えば、内側部材106は、デバイスのより近位のセクション内のその長さのほとんどについて0.1524mm(約0.006インチ)から0.254mm(約0.010インチ)の直径を有することができ、内側部材106が遠位端に次第に近づくにつれて直径を減少させる一連の1つまたは複数の先細セクションを伴う。
【0020】
[0030]デバイスの周壁を通じて延びる引張りワイヤを備える従来の操向可能なガイドシース/カテーテルとは対照的に、本明細書中に説明されるデバイスの内側部材106は、デバイスの内部内腔を通じて延びる。これは、神経血管系の中深くへの通過に適したデバイスなどのずっとより小さいデバイスの遠位端の選択的な偏向/操向を可能にする。これらの比較的小さい直径で、そのようなデバイスの周壁の厚さ内で引張りワイヤを用意することは実際的でないまたは不可能である。
【0021】
[0031]図1Aおよび図1Bに示した実施形態は、有益なことに、患者の曲がりくねった血管系をナビゲートするのに役立つように、ガイドワイヤデバイス100の先端が選択的に偏向されることを可能にする。遠位セクション104は、選択的方向曲げを実現するように微細加工され得る。このようにして、内側部材に平行移動(伸張または圧縮)が適用されるとき、デバイスの遠位セクション104に生じる予期した結果として得られる一貫した偏向が存在する。
【0022】
[0032]内側部材の伸張の調整に対する所望の応答を与えるために、様々な異なる遠位セクション構成が利用され得る。図4Aから図11Cに関連して以下に説明される切込パターンは、特定のユーザの好みおよび/または適用必要性に適合する曲げ応答を遠位セクションに与えるように任意の組み合わせで利用され得る。例えば、微細加工による切削プロセスの後に遠位セクションの一方の側にビームの大部分を残すことにより、好ましい曲げ方向を遠位セクションに与える。好ましい曲げ切込パターンを有するセクションおよび均一な曲げセクションの様々な配置は、様々な複合曲線、螺旋形状、鉤状形状などの形成になり得る。いくつかの実施形態では、近位セクションは、1つまたは複数のカットパターンで微細加工することもできる。典型的には、近位セクションは、遠位セクションよりも大きい相対剛性を有するように構成される。
【0023】
[0033]図2Aおよび図2Bは、遠位セクション204の「背骨」を形成するためにビーム210を単一の側に配置したワンビーム構成を有する遠位セクション204を備えたガイドワイヤデバイス200の実施形態を断面で示す。この配置は、ビーム210の反対側に開いた穿孔212を残す。図示するように、ガイドワイヤデバイス200は、図1Aおよび図1Bの実施形態と同様に構成され、近位セクション202、内側部材206、および遠位端208を備える。
【0024】
[0034]図2Bに示すように、伸張が内側部材206に適用されるとき、遠位セクション204は、開いた穿孔212が並んだ側から遠くに離れるように並んだビーム210によって形成される背骨に向かって偏向する。穿孔212によってもたらされる空間および増加した可撓性により、遠位セクション204が図示した方向に選択的に曲がることを可能にする。有益なことに、これらの特徴は、内側部材206が作動させられるときに遠位先端の確実な偏向を可能にする。対照的に、並んだ穿孔を有さないデバイスは、あまり予測可能に偏向することができず、および/または硬すぎて容易かつ選択的に偏向することができない。
【0025】
[0035]図2Aおよび図2Bに示す実施形態は、現在好ましい一実施形態を示すが、他の実施形態は、不定間隔をおいて配置された(非配列の)ビーム配置を含んでもよい。例えば、いくつかのカットパターンは、ビームが実質的に並んでいなくても、遠位セクション204の有効な偏向をもたらすために十分可撓性であるビーム配置という結果になり得る。
【0026】
[0036]代替の実施形態は、内側部材への伸張の適用によって、遠位先端を曲げさせるのではなく、伸ばすおよび/または堅くする効果をもたらすように、ガイドワイヤデバイス
の遠位先端を予め成形することを含む。例えば、ガイドワイヤデバイスは、図2Bにおけるように、予め湾曲された形状に向かって付勢されるように形成されてもよい。次いで、内側部材206は、遠位セクション204を図2Aにおけるような比較的真っすぐな位置に向かって移動させるように操作することができる。
【0027】
[0037]図3は、ガイドワイヤデバイス200がマイクロカテーテル201とともに利用される実施を示す。図示するように、ガイドワイヤデバイス200は、マイクロカテーテル201内に配置される。ガイドワイヤデバイス200の選択的に偏向可能な部分を、曲げられることが望まれるマイクロカテーテル201の部分と一致するように平行移動させることによって、およびガイドワイヤデバイス200の内側部材を操作することによって、結果として得られるガイドワイヤデバイス200の遠位セクションの偏向は、マイクロカテーテル201に対して平行移動できる。
【0028】
[0038]有益なことに、このタイプの操作は、操作者にさらなるナビゲーションの選択肢と能力を与え得る。例えば、近位開口部から遠位開口部まで動脈瘤を通じてナビゲートしようとするとき、遠位側に到達するように動脈瘤の開放した3次元空間を通じて操ることは難しいものであり得る。デバイスのナビゲーションについてのさらなる制御を有することによって、操作者が動脈瘤を通り抜け、血管系をナビゲートし続けることを可能にすることができる。さらなる移動は、定められた遠位セクション切込パターンの結果として予測可能な応答と特に組み合わせられるとき、手順の成功と不成功との間の差となり得る。
【0029】
[0039]従来のガイドワイヤデバイスを使用するとき、典型的には、操作者は、患者の血管系をナビゲートするためにデバイスを押す/引く、およびデバイスを回転させることに限定される。動脈瘤を通過させるときなどのいくつかの状況では、ナビゲーションについての限られた制御は、所望のやり方で遠位先端を位置合わせすることを極端に難しくさせ得る。本明細書中に説明される特徴によってもたらされるさらなるナビゲーションの制御は、患者の解剖学的構造に対して適切な向きにデバイスを移動させるための別の選択肢をもたらす。単なる押し/引きの移動および回転の移動がデバイスを適切にガイドするのに十分でないある種の応用では、先端を選択的に偏向させるさらなる選択肢が、デバイスが目標に到達することを可能にするようにナビゲーションの妨げを乗り越えるのに十分であり得る。
【0030】
[0040]本明細書中に説明される血管内デバイスは、目標の解剖学的エリアに到達するように患者の解剖学的構造をナビゲートするのに必要な任意の長さであり得る。典型的には、血管内デバイスは、約150から350cmの範囲の長さを有するが、本明細書中に説明される原理は、より短い長さまたはより長い長さを有するデバイスにも容易に適用され得る。
III.例示的なカットパターン
A.ビーム構成
[0041]本明細書中に説明される実施形態は、良好なトルク能力を維持しつつデバイスの可撓性を増大させるように配置された穿孔を形成するカットパターンを備えることができる。本明細書中に説明されるカットパターンは、デバイスに沿った所与の長手方向位置におけるカットの各セットから生じる結果として得られる長手方向ビームの個数によって定められる異なる構成を有してもよい。例えば、「ツービーム」構成では、デバイスの長さに沿った各カット位置は、一対の対向したカットを含み、一対の対向した軸方向延在ビームという結果になる。典型的には、結果として得られるビーム対の内の2つのビームは、カテーテルの周囲のまわりに対称的に間隔をおいて配置される(すなわち、約180度離間している)が、他の実施形態では、それらは、異なって周方向に間隔をおいて配置されてもよい。同様に、スリービーム構成における3つ組のビームは、典型的には、周囲のまわりに約120度で対称的に間隔をおいて配置され、フォービーム構成におけるビームの
セットは、典型的には、周囲のまわりに約90度などで間隔をおいて配置されるが、他の実施形態は、異なる周方向の間隔を含んでもよい。
【0031】
[0042]全ての他の製造パラメータ(例えば、同様の材料、カット深さ、カット間隔など)は等しく、より大きい個数のビームを有する構成は、あまり可撓性にならないが、トルクを伝達するより大きい能力を有する。各実施形態は、複数のセクションを備え、それぞれは、デバイスの長さにわたって異なるそれぞれの可撓性特性および所望の可撓性勾配を与えるように異なるビーム構成を有する。同時に、特定のビーム構成を有する特定のセクションは、特定のセクション自体内に可撓性勾配を与えるように配置されるカットを含むことができる。例えば、カット間の長手方向間隔は、デバイスの遠位端のより近くのエリアで次第に小さくなり得る。このようにして、デバイスは、内側断面の可撓性勾配と内部断面の可撓性勾配の両方を含むことによってデバイスの長さにわたって所望の可撓性プロファイルを与えるように構成され得る。
【0032】
[0043]図4Aから図4Dは、本明細書中に説明されるデバイスにおいて利用され得るカットパターンの様々な実施形態を示す。図4Aは「ツービーム」構成を示し、図4Bは「スリービーム」構成を示し、図4Cおよび図4Dは異なるバージョンの「ワンビーム」構成を示す。他の実施形態は、カット位置ごとに4つ以上の結果として得られるビームの構成を含んでもよい(例えば、「フォービーム」カットパターン、「ファイブビーム」カットパターンなど)。全ての他の製造パラメータは等しく、各カット位置における結果として得られるビームの個数が大きいほど、可撓性はより低く、セクションのトルク能力はより高い。
【0033】
[0044]図4Aに示すように、細長いセクション300は、複数の軸方向延在ビーム302と周方向延在リング304とを備える。細長いセクション300は、2つの周方向に対向したビーム302が隣接したリング304の各対間に配設されるので、ツービームカットパターンを有する。典型的には、各カット対における対向したカットは、等しい深さを有し、結果として得られるビーム対の各ビームを対称的に周方向に間隔をおいて配置させる。他の実施形態は、対向したカットが異なる深さであるカット対を備えてもよい。カット対ごとの対向したカットの深さの間の差が大きいほど、結果として得られるビーム対のビームは周方向に共により近くなり、したがってツービームカットは、ワンビームカットに対して機能的により同様になる。
【0034】
[0045]例示した実施形態は、部材の軸に沿って対ごとに90度だけ角度オフセットされたビーム対の分布を示す。代替の実施形態では、角度オフセットは、90度よりも多くてもよく、または90度よりも少なくてもよい。例えば、角度オフセットは、(いずれの方向にも)約5、15、30、45、60、75、80、または85度であってもよく、または複数の異なるオフセット値を含んでもよい。
【0035】
[0046]いくつかの実施形態では、角度オフセットは、連続するビーム対ごとに適用される。他の実施形態では、角度オフセットは、連続する「セグメント」ごとに適用され、各セグメントは、2つ以上のビーム対を含む。本明細書に使用されるとき、「セグメント」は、カテーテルセクションの繰り返し構造単位である。いくつかの実施形態では、単一のセグメントは、2つの隣接したリング304(1つの近位リングおよび1つの遠位リング)間に配設された第1の対の対向したビーム302と、遠位リングから延びるとともに第1の対の対向したビーム302から約90度だけ回転オフセットされた第2の対の対向したビームとして定めることができる。したがって、そのようなセグメントを有するとともにセグメントごとに5度の回転オフセットを有する実施形態は、0度の位置における第1のビーム対、90度における第2のビーム対、5度における第3のビーム対、95度における第4のビーム対などを有する。
【0036】
[0047]図4Bは、スリービーム構成で配置された複数のビーム402およびリング404を有する細長いセクション400を示す。この実施形態では、各カット位置における各3つ組のビームは、対称的に周方向に120度だけ間隔をおいて配置される。60度の角度オフセットが、連続するカット位置ごとに適用される。上記のツービーム構成と同様に、3つ組のビームは、対称的に間隔をおいて配置される必要はない。同様に、60度より大きいまたは60度よりも小さい角度オフセットが使用されてもよく、それは、連続するカット位置ごとにまたは連続するセグメントごとに適用されてもよい。スリービーム構成では、例えば、セグメントは、2つの隣接したリング404(1つの近位リングおよび1つの遠位リング)間に配設された第1の3つ組のビーム402と、遠位リングから延びるとともに第1の3つ組402から約60度だけ回転オフセットされた第2の3つ組のビームとして定義され得る。
【0037】
[0048]図4Cは、ワンビーム構成で配置された一連のビーム502およびリング504を有する細長いセクション500を示す。180度の角度オフセットが、連続するカット位置ごとに適用される。上記の他の構成と同様に、180度よりも大きいまたは180度よりも小さい角度オフセットが使用されてもよく、それは、連続するカット位置ごとにまたは連続するセグメントごとに適用されてもよい。ワンビーム構成では、例えば、セグメントは、2つの隣接したリング504(1つの近位リングおよび1つの遠位リング)間に配設された第1のビーム502と、遠位リングから延びるとともに第1のビーム502から約180度だけ回転オフセットされた第2のビームとして定義され得る。
【0038】
[0049]図4Dは、ワンビーム構成で配置された一連のビーム602およびリング604を有する細長いセクション600の他の実施形態を示す。この実施形態では、カットは、ビーム602が角度オフセットを有するのではなくセクション長さの一方の側に沿って並べられるように設けられる。有益なことに、そのような実施形態は、優先的曲げを一方向に(すなわち、並んだビーム602に向かって)与えることができる。
【0039】
[0050]図5は、好ましい曲げ方向を最小にすることが意図された典型的ならせんカットパターンの実施形態を示す。図示するように、回転オフセットが、らせんパターンを形成するように細長い部材900の連続するセグメントごとに適用される。図5は、各カットが、隣接したリング904の各セット間に単一のビーム902を残すらせんワンビームカットパターンを示す。連続するビームは、約180度だけオフセットされるものとして示されているが、各連続する対は、「セグメント」の一部であり、各連続するセグメントは、約5度の回転オフセットを有するものとして示される。回転オフセットは、図5に示すように、セグメントごとに適用されてもよく、または代替として連続するカットごとに適用されてもよい。このタイプのらせん配置は、異なるカット構成を有する実施形態に使用することもできる。例えば、ツービーム構成は、連続するセグメントごとにまたは連続するカット対ごとに適用される回転オフセットを有するらせん配置を有してもよい。
B.分散パターン
[0051]いくつかの実施形態は、非らせんおよび非直線カットパターンから生じる分散ビーム配置を有するセクションを含むこともできる。このタイプのパターンは、好ましい曲げ方向を有効になくすまたは最小にする。図6は、分散パターンの一例と従来のらせんパターンをグラフで比較する。図示するように、らせんカットパターンは、細長い部材の長さに沿ってセグメントごとに一定の回転オフセットを適用する。分散カットパターンは、らせんパターンに頼らずに曲げ軸を有効に分散させる回転オフセットを適用する。
【0040】
[0052]図6にグラフで示されるらせんおよび分散パターンは、ツービーム構成を有するデバイスについてである。典型的なツービーム構成は各ビーム対を約180度だけ離間させるので、所与の位置におけるビーム対は、180度だけ回転オフセットされたビーム対
と区別できない。したがって、ビーム対についての可能な回転位置は、0から180度の範囲として示され、ゼロ度および180度の位置は互いに等しい。他の分散パターンの実施形態は、異なる回転間隔を示し得る。例えば、ワンビーム構成は、典型的には、完全な利用可能な360度の回転空間にわたって分散し、典型的には、スリービームパターンは、120度対称を示し、したがって、120度の回転空間にわたって分散される。
【0041】
[0053]図6に示す分散パターンは、「非らせん」である。らせんは、次のように、表面が平面に展開される場合に直線になる円錐または円筒の表面上の曲線のとして一般に定義される。図5に示したらせんカットパターンを一例として用いると、細長い部材900の長さに沿ったセグメントの構成をたどる任意の湾曲した線は、細長い部材900が切り開かれ、平面に「展開」される場合、直線を形成する。対照的に、図6に示す分散パターンでは、直線を形成するビーム/セグメントの配置をたどる線は存在しない。
【0042】
[0054]スタートのビーム対がゼロ度位置に任意の割り当てられる場合、できるだけ迅速に(すなわち、できるだけ少ないカットで)利用可能な180度の回転空間にわたってビーム位置の直径方向分散を最大化するために、連続するビーム対は、回転オフセットされる。しかしながら、例示した実施形態では、(図9および図10に関連して以下にさらに説明される)固定間隔の人為構造の形成を防ぐために、回転オフセット制限も適用される。
【0043】
[0055]回転オフセット制限は、ビーム対ごとまたはセグメントごとの許容できる回転「ジャンプ」に関する制限を定める。セグメントごとに約10から30度の値を有する回転オフセット制限、または90度±その値だけ連続するビーム対を回転させる回転オフセット制限は、過度に固定間隔の人為構造を引き起こさずに曲げの有効な分散を与えるために示されている。例えば、回転オフセット制限は、約60から120度、または約70から110度、または約80から100度の範囲内の値までビーム対ごとに回転を規制することができる。他の実施形態は、特定の製品および/または応用の必要に応じて、他の回転オフセット制限を利用してもよく、または回転オフセット制限を省略することさえもできる。例えば、結果として得られる間隔の人為構造が特定の応用について許容できる場合、回転オフセット制限は、30度よりも大きい値まで高められてもよい。
【0044】
[0056]図6に示す例示的な分散カットパターンは、30度の回転オフセット制限を利用する。図示するように、第1のビーム対は任意の0度に位置に配置され、第2のビーム対は90度に配置される。利用可能な180度空間内の残りの最大間隙は、0から90度の間、および90から180度の間である(ただし、0および180度は同じ位置を表す)。45度などのこれらの間隙のうちの1つの中点の近くに次のビーム対を配置することは、デバイスの曲げ軸を最もよく分散させる。しかしながら、次のビーム対を45度に配置することは、30度の回転オフセット制限を破る。したがって、次のビーム対が、回転オフセット制限を破ることなく、残りの間隙の中点に近くなるように配置される。この例では、第3のビーム対は、30度に配置される。第4のビーム対は、120度に配置され、これは第3のビーム対から90度である。
【0045】
[0057]この特定の例では、1つおきのビーム対が、先のビーム対から90度オフセットされる。代替の実施形態は、必ずしもこの特定のパターンに従う必要はない。例えば、例示した実施形態がセグメントごとに適用されるオフセットを変化させる例である場合、他の実施形態は、ビーム対ごとに可変オフセットを適用してもよい。
【0046】
[0058]図6の分散の例を続けると、最大の残っている位置的な間隙は、現在、30から90度の間、および120から180度の間にある。第5および第6のビーム対は、それぞれ60および120度に配置される。残りの位置的な間隙は、現在、30度ごと(すな
わち、0から30度の間、30から60度の間、60から90度の間など)に位置する。パターンが続くとき、残りの角度位置は、回転オフセット制限を破ることなくビーム対をできるだけ速く径方向に間隔をおいて配置するやり方で満たされる。
【0047】
[0059]例示した例では、利用可能な角度位置は、10度の粒状度で与えられる。言い換えれば、全ての角度位置は、各10度の増加が満たされているとき満たされたとみなされ得る。したがって、例示したパターンは、リセッティング前に、約10度の位置ごとに配置されたビーム対を備えることができる。そのような配置は、10度の「位置的な粒状」を有するものとして本明細書中で呼ばれる。代替の実施形態は、例えば、0.1、0.5、1、3、5、10、15、18、20、25、または30度の粒状度などの異なる位置的な粒状度を利用してもよい。
【0048】
[0060]例示した正確な位置決めは調整されてもよく、図6に示すパターンが唯一の例示であると理解されよう。例えば、位置的な間隙は、回転ジャンプが予め決定された回転オフセット制限内にある限り、異なる特定のシーケンスを用いて満たされてもよい。好ましくは、回転位置間の間隙を満たすとき、次のビーム対は、回転オフセット制限を破ることなく、最大の残りの位置的な間隙のほぼ中心の近くであるように配置される。例えば、0度の位置と30度の位置の間に間隙が存在する場合、セグメントは、10から20度の位置に配置され得る。
【0049】
[0061]さらに、代替の実施形態は、10度よりも大きいまたは10度よりも小さい位置を満たす位置的な粒状度を利用してもよい。パターンをリセッティングする前により少ないセグメントが使用される場合、各適切な位置のサイズ範囲は、より大きくなり、パターンをリセッティングする前により多くのセグメントが使用される場合、サイズの範囲は、より小さくなる。いくつかの実施形態は、180度の径方向空間内の満たされた角度位置の利用可能性がリセットされる前に、約6から36個のビーム対、または約10から18個のビーム対を含むことができる。他の実施形態は、利用可能な位置がリセットされる前に多くのより多いビーム対を含むことができる。予め決定された位置的な粒状度が低くされるにつれて、全ての利用可能な角度位置を満たすのに必要なビーム対の個数は上昇する。したがって、1度の位置的な粒状度を有するデバイスは、180個の利用可能な角度位置を満たすために180個のビーム対を使用する。
【0050】
[0062]また、選択された分散パターンの予め決定されたパラメータ(例えば、位置的な粒状度および回転オフセット制限)に従って利用可能な角度位置を満たす複数のやり方があるので、リセッティング後に、分散カットパターンは、全く同じにそれ自体を繰り返す必要はない。したがって、本明細書に使用されるとき、用語「リセット」、「リセッティング」などは、それがビーム対によって満たされた後、180度の径方向空間内の角度位置の利用可能性をリセットすることを指し、この用語は、細長い部材の次のセクションに沿った角度位置の続くリフィリングが以前のパターンを正確に繰り返すことを必ずしも示唆しない。実際には、少なくともいくつかの実施形態では、分散パターンの全長は、繰り返しでなくてもよい。
【0051】
[0063]前述の原理がワンビーム配置を有する実施形態、スリービーム配置を有する実施形態、または4つ以上のビーム配置を有する実施形態に適用することもできると理解されよう。上述した同じ原理が、満たすべき角度位置の範囲が360度まで広がることを除いて、ワンビームの実施形態に適用可能である。同様に、同じ原理が、典型的には満たすべき角度位置の範囲が120度まで広がることを除いて、一般に、スリービームの実施形態に適用可能である。
C.不完全ランプパターン
[0064]図7は、一連の目的をもって設計された不完全を有する他のらせんパターンを意
図的に混乱させることによって形成された非らせんカットパターンの他の実施形態をグラフで示す。このタイプのカットパターンは、本明細書中で「不完全ランプ」パターンと呼ばれる。有益なことに、不完全ランプパターンの意図的な逸脱は、真のらせん配置に固有の好ましいねじれおよび湾曲の残存物を減少または防ぐように働く。図示するように、セグメントは、3つの連続するビーム対またはセグメントが同じ回転オフセットに従って間隔をおいて配置されないように配置される。言い換えると、3つのビーム対またはセグメントは、円筒形の長い部材が平面に展開された場合に、直線を形成するように配置されない。
【0052】
[0065]図7の不完全ランプパターンとは対照的に、真のらせんパターンは、典型的には、一定の値で各連続するセグメントまたは各連続するビーム対を回転オフセットすることによって形成される。例えば、ツービーム構造における真のらせんパターンは、5度、85度、95度の一定の値、または90度の倍数でないいくつかの他の一定の値だけ各連続するカット対を回転オフセットすることによって形成することができる。
【0053】
[0066]不完全ランプカットパターンでは、修正値は、定数ではなく変数に意図的になされる。例えば、図7におけるように、不完全ランプパターンは、各連続するビーム対を一定の値±可変修正値だけ回転オフセットすることによって形成することができる。一定の値±可変修正値を含む回転オフセットは、本明細書中では「不完全回転オフセット」と呼ばれる。
【0054】
[0067]可変修正値は、5から15度の範囲であり得る。他の実施形態では、可変修正値は、2.5から30度の範囲の範囲であり得、または結果として得られるデバイスの意図した目的に適したいくつかの他の範囲であり得る。好ましくは、可変修正値は、それが適用されるセグメントまたはビーム対ごとにランダムに選択され、ランダム選択の上限および下限は、修正値の範囲(例えば、5から15度)によって定められる。典型的には、オフセットの一定の値の部分は、ワンビームパターンにおいて180度、ツービームパターンにおいて90度、スリービームパターンにおいて60度などである。
【0055】
[0068]代替の実施形態は、異なるサイズのセグメント間および/または異なる内部オフセットを有するセグメント間で不完全ランプパターンを適用することができる。例えば、いくつかの実施形態は、3つ以上の対のビーム(および3つ以上の対応するリング)、および/または90度とは異なる内部オフセットを有するセグメントを含むことができる。さらに、例示した例は、対向したカットの各対が2つの周方向に対向したビームになるツービームカットパターンを示すが、分散オフセットパターンは、ワンビームカットパターン、スリービームカットパターン、および隣接したリング間に4つ以上のビームを有するパターンに適用することもできることを理解されよう。
D.のこぎり歯状パターン
[0069]図8は、本明細書中で「のこぎり歯状」パターンと呼ばれる非らせんカットパターンの他の実施形態を示す。本明細書中に説明される他の非らせんカットパターンと同様に、有益なことに、のこぎり歯状カットパターンは、らせんパターンに固有の好ましい湾曲方向も制限しつつ、好ましい曲げ軸を避けることができる。らせんパターンとは対照的に、のこぎり歯状カットパターンは、回転オフセットの方向を周期的に逆にさせる。
【0056】
[0070]図8ののこぎり歯状パターンとらせんパターンの両方は、隣接したセグメント間で約10度の角度オフセットを有し、各セグメント内の各カット対は、90度だけオフセットされる。らせんパターンは、細長い部材の周囲のまわりの複数の回転によって同じ方向にこれらのオフセット値を単に続けるのに対して、のこぎり歯状パターンは、方向を逆にする前に第1の頂点位置に到達し、第2の頂点位置に向かって続く。第2の頂点位置に到達すると、次いで、のこぎり歯状パターンは、再び逆になり、第1の頂点に向けて戻り
続ける。次いで、パターンは、細長い部材の所望の長さに沿って繰り返す。
【0057】
[0071]例えば、第1の頂点位置は、約90度(すなわち、セグメントの第1のカット対について90度、およびセグメントの第2のカット対について180度)に設定される。第1の頂点位置に到達すると、パターンは、第2の頂点位置に向かって逆になる。この実施形態では、第2の頂点位置は、約0度(すなわち、セグメントの第1のカット対について0度、およびセグメントの第2のカット対について90度)に設定される。代替の実施形態は、他の頂点位置を含んでもよい。任意のゼロ度開始位置が与えられる場合、第1の頂点位置は、ワンビーム構成において360度未満、ツービーム構成において180度未満、スリービーム構成において120度未満などである。好ましくは、第1の頂点位置は、ワンビーム構成について約180度、ツービーム構成について90度、スリービーム構成について60度などである。
【0058】
[0072]上述したように、セグメントごとの角度オフセットは、図8ののこぎり歯状パターンにおいて約10度である。のこぎり歯状カットパターンの他の実施形態では、角度オフセットは、約5度から約30度などの10度より大きいまたは10度よりも小さいものであり得る。さらに、または代替として、頂点間のカットパターンの部分は、可変オフセットを含み得る。例えば、頂点間の1つまたは複数の部分は、図7に関連して上述したような不完全な回転オフセットを含むことができる。
【0059】
[0073]代替の実施形態は、異なるサイズのセグメント間および/または異なる内部オフセットを有するセグメント間でのこぎり歯状パターンを適用することができる。例えば、いくつかの実施形態は、3つ以上の対のビーム(および3つ以上の対応するリング)および/または90度とは異なる内部オフセットを有するセグメントを含むことができる。さらに、対向したカットの各対が2つの周方向に対向したビームになるツービームカットパターンを示すが、分散オフセットパターンは、ワンビームカットパターン、スリービームカットパターン、および隣接したリング間に4つ以上のビームを有するパターンに適用することもできることを理解されよう。
E.間隔の人為構造
[0074]図9は、回転オフセット制限が適用されない場合に生じ得る望ましくない間隔の人為構造の一例を示す。図9は、第1のセグメント750aおよび第2のセグメント750bを有する細長い部材700のセクションを示す。第1のセグメント750aは、第1の対のビーム730a(それらのうちのたった1つがこの図に見える)と、第1の対から90度だけオフセットされている第2の対のビーム730bおよび730cとを備える。第2のセグメント750bは、第1の対のビーム730dおよび730eと、第1の対から90度だけオフセットされている第2の対のビーム730fおよび730gとを備える。対内の各ビームは、その対応するビームから180度だけ周方向に間隔をおいて配置される。第2のセグメント750bは、第1のセグメント750aから45度だけオフセットされ、これは、第1の対のビーム730dおよび730eを第1の対のビーム730aから45度だけずらして配置し、第2の対のビーム730fおよび730fを第2の対のビーム730bおよび730cから45度だけずらして配置する。
【0060】
[0075]第1のセグメント750aから第2のセグメント750bへのそのような45度のオフセットの適用は、まず、それが第1のセグメント750aの曲げ軸の中間に第2のセグメント750bの曲げ軸を配置するので、望ましいと考えられ得る。しかしながら、45度のジャンプは、細長い部材700の部分に過度に固定の人為構造を残し得るセグメント間のビーム間隔という結果にもなる。図示した部材700では、ビーム730dは、ビーム730bから45度だけ間隔をおいて配置されるのに過ぎないのに対して、ビーム730eは、ビーム730bから135度だけ間隔をおいて配置される。同様に、ビーム730eは、ビーム730cから45度だけ間隔をおいて配置されるのに過ぎないのに対
して、ビーム730dは、ビーム730cから135度だけ間隔をおいて配置される。この不釣り合いな間隔は、より小さい間隔を有する細長い部材700の領域が過度に固定であり得るおよび/またはより大きい間隔を有す領域が過度に可撓性であるので望ましくないものであり得る。
【0061】
[0076]対照的に、セグメントごとに適用される回転オフセットのより限られたジャンプは、セグメント間のビーム間隔の食い違いを最小にする。例えば、図10は、第1のセグメント850aと第2のセグメント850bの間に適用される約20度のより限られた回転オフセットを有する細長い部材800のセクションを示す。図9の細長い部材700におけるように、第1のセグメント850aは、第1の対のビーム830aと、第2の対のビーム830bおよび830cとを備え、第2のセグメント850bは、第1の対のビーム830dおよび830eと、第2の対のビーム830fおよび830gとを備える。しかしながら、第2のセグメント850bは、第1のセグメント850aからより限られた20度だけオフセットされているので、ビーム830b、830c、830d、および830eの間の間隔の食い違いは、あまり顕著でない。ビーム830dは、ビーム830bから70度広げられ、ビーム830eはビーム830bから110度広げられる。同様に、ビーム830eは、ビーム830cから70度広げられ、ビーム830dは、ビーム830cから110度広げられる。したがって、間隔の食い違いは、セグメント間に依然として存在するが、それは、適切な回転オフセット制限を与えることによって適切な度に制御され得る。
F.スパイラルパターン
[0077]図11Aから図11Cは、デバイスの1つまたは複数のセクションに含まれ得る「スパイラル」カットパターンの実施形態を示す。図11Aに示すように、デバイスのセクション170は、外側体を与えるように切削され、結果としてらせん状に向けられたコイル部材174となっており、結果として得られるコイルのピッチは、穿孔のサイズを規定する。典型的には、スパイラルカットパターンは、あまりトルク能力を与えないが、ワンビームパターンよりも可撓性を与える。したがって、大部分の応用では、スパイラルセクションは、トルク能力の関心が特に重要であるデバイスのより近位のセクションであまり有益でないが、より遠位のセクションにおいて、特に、可撓性の関心がより重要となるデバイスの遠位端においてまたはその近くで、有益である。
【0062】
[0078]好ましい実施形態では、スパイラルカットセクション170は、細長いデバイスの1つまたは複数の隣接したセクションを有する一体の材料部品を形成する。例えば、別個のコイル部材をデバイスの別のセクションに取り付ける溶接、接着、または他の方法ではなく(これは、不利なことに、潜在的な故障点を導入し、製造困難性を増加させる)、スパイラルパターンは、セクションに対して行われる切削操作から生じる。このようにして、単一の材料部品は、1つまたは複数のスパイラルカットパターンに加えて、異なるカット配置の1つまたは複数のセクションを含むように微細加工され得る。
【0063】
[0079]図11Aに示す実施形態は、スパイラルパターンの隣接したコイル部材174の間に残存するとともにこれらを接続する一連のブリッジ172も備える。そのようなブリッジ172は、そのようなブリッジを省く同様のスパイラルパターンに対して、セクション170の可撓性を幾分制限するように機能し得る。図11Bは、例えば、中空の細長い部材104に含まれ得る別のスパイラルカットセクション180を示す。セクション180のスパイラルカットパターンは、コイル部材184間のブリッジを省き、したがって図11Aに示すスパイラルセクション170よりも比較的大きい可撓性を有する(材料、ピッチ、直径、壁圧、および他の関連した要因は、さもなければ実質的に等しいと仮定する)。ブリッジ172は、1つまたは複数の方向に可撓性バイアスを与えるように配置することもできる。
【0064】
[0080]図11Aに示す実施形態などのブリッジ172を有する実施形態では、ブリッジ172は、デバイスのスパイラル形状の周りに45、60、75、90、105、120、135、150、165、または180度ごとに間隔をおいて配置され得る。より大きい間隔は、連続するブリッジ間に設けることもできる。例えば、360度の倍数が、より大きい間隔の配置も与えるために、前述の角度間隔値のいずれかに加えられてもよい。より小さい間隔は、概して可撓性をより大きい程度に制限し、一方、より大きい間隔は、概してより多き相対的可撓性を与える。いくつかの実施形態では、ブリッジ172の間隔は、セクション170の長さにわたって変わってもよい。例えば、ブリッジ172間の間隔は、遠位可撓性を次第に増大させるために、セクションの遠位端に向かって次第により大きくなり得る。
【0065】
[0081]さらに、または代替として、スパイラルカットパターンは、所望の可撓性の特性を与えるようにその長さに沿って変えることができる。図11Cは、スパイラルカット間の間隔はカットがセクションの遠位端に近くなるにつれて次第に狭くなるように特注されているセクション190の実施形態を断面図で示す。図示するように、コイル部材194のうち2つの間の寸法191は、より近位に位置するコイル部材192の間の寸法193よりもより遠位領域でより小さくなる。例示した実施形態では、寸法195によって示されるカット幅は、ほぼ一定である。代替の実施形態では、カット幅195は、代替として、寸法191および193によって示されるコイル部材サイズの徐々の変化に対してまたはこれに加えて調整されてもよい。他の実施形態は、次第に変化する特徴を省いてもよく、あるいは次第に変化する特徴を含む1つまたは複数の他のセクション、またはほぼ一定のコイル次元を有する1つまたは複数のセクションを備えてもよい。
【0066】
[0082]典型的には、デバイス材料、デバイスサイズ、カット幅(および結果として得られる軸方向のビームサイズ)、カット間隔、(および結果として得られる軸方向のリングサイズ)、およびカット深さ(および結果として得られる周方向のビーム幅)が同じであると仮定すると、ブリッジを省くスパイラルカットパターンは、ブリッジを備えるスパイラルカットパターンよりも大きい可撓性を与え、これはワンビームカットパターンよりも大きい可撓性を与え、これはツービームカットパターンよりも大きい可撓性を与え、これはスリービームパターンよりも大きい可撓性を与えるなどである。
【0067】
[0083]本明細書中に使用されるとき、用語「約(approximately)」、「約(about)」、および「ほぼ、実質的に(substantially)」は、所望の機能をさらに実行するまたは所望の結果を実現する示した量または条件に近い量または条件を表す。例えば、用語「約(approximately)」、「約(about)」、および「ほぼ、実質的に(substantially)」は、示した量または条件から10%未満だけ、または5%未満だけ、または1%未満だけ、または0,1%未満、または0.01%未満だけ逸脱する量または条件を指し得る。
【0068】
[0084]本明細書中に示されるおよび/または説明される任意の実施形態に関連して説明された要素は、本明細書中に示されるおよび/または説明される任意の他の実施形態に関連して説明された要素と組み合わされてもよい。例えば、図4Aから図11Cの様々なカットパターンのいずれかに関連して説明された任意の要素は、図1から図3の偏向可能な先端デバイスのいずれかに関連して説明された任意の要素と組み合わせ可能であり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C