(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】傾斜式背もたれ付きビークルシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20220510BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/64
(21)【出願番号】P 2019542712
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 FR2018050288
(87)【国際公開番号】W WO2018146412
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513181621
【氏名又は名称】エクスプリシート
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ジャコブ・サーダ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・サイヤール
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・エルミル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・テヘドール
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-136337(JP,U)
【文献】特開2010-208481(JP,A)
【文献】特開2003-267108(JP,A)
【文献】特開2006-336376(JP,A)
【文献】特開2013-103674(JP,A)
【文献】米国特許第04145081(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/00-7/74
B64D 11/06
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークルのキャビンの床に固定されるよう意図されたビークルシートであって、
- 固定フレームであって、前記固定フレーム自体が、脚部及び少なくとも1つのシート基部を備える、固定フレームと、
- 前記固定フレームに固定された、1つ以上のシート基部と同じ数の1つ以上の背もたれであって、
前記固定フレームの左右方向(Y)に沿って水平方向よりも鉛直方向に
より近く置かれた少なくとも2つの直立部(20,50)を備える、背もたれと、
を備え、
前記直立部(20,50)が、対応する背もたれの後面上での衝撃の影響を受けて上方にはめ込み解除されるように上方への並進で前記固定フレームに対して解放可能な方式で、下端部(30)によって前記固定フレーム内にはめ込まれ、はめ込み解除された後に前方に回動することができるように前記固定フレームの少なくとも1つの固定軸周りで回転可能に取り付けられていることを特徴とするシート。
【請求項2】
決定された力以下では前記直立部(20,50)を並進させることをブロックするために、各直立部(20
,50)と前記固定フレームとの間に少なくとも1つの機械的なフューズを備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
各直立部の回動が、少なくとも1つの可撓性要素であって、第1の下端部によって、はめ込み部(32)上で前記固定フレームに固定され、第2の端部によって、前記直立部(20,50)の前記下端部(30)の真上で前記直立部(20,50)にスライド可能に固定される、可撓性要素により行われ、前記固定フレームに対して回動した後に、前記固定フレームにはめ込まれた前記直立部(20,50)を戻すことを可能にすることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記少なくとも1つの要素(34)の前記第2の端部が、前記直立部(20,50)を囲むスライド挟持部(36)を備えていることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項5】
前記可撓性要素が、可撓性ストリップ(34)から形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項6】
前記可撓性要素が、板バネ(60)から形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項7】
前記可撓性要素が、2つの可撓性ロッド(70A、70B)から形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項8】
前記可撓性要素が、トーションバネから形成され、前記トーションバネ自体が、ロッド(80)から形成され、前記ロッド(80)が、上端部(82)によって前記直立部の前記下端部(30)を囲み、下端部(84)によって前記はめ込み部(32)を囲むことを特徴とする請求項3に記載のシート。
【請求項9】
各直立部(20,50)の回動が、前記固定フレームに固定された少なくとも1つの機械的な回転軸(22)と、前記直立部(20,50)の長手方向における前記直立部(20
,50)のスロット(21)と、により行われ、前記機械的な回転軸(22)が前記スロット内でスライドすることができることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの機械的なフューズが、接着剤により実施されることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの機械的なフューズが、特にプラスチック又は金属から作られた少なくとも1つのリベットにより実施されることを特徴とする請求項2に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビークル、特に航空機に設けられたシートに関し、これらシートは、しばしば、複数のシーターであり、検討されるシートの直接背後に置かれたシートに座った乗客にとって最大の安全性を保証することができなければならず、事故、墜落又は緊急着陸の場合に、前記乗客の頭部、腕及び足は、乗客の直接前方に置かれたシートに対して落とされる可能性がある。
【背景技術】
【0002】
輸送手段、特に航空機のシートは、輸送される乗客の安全性を保障するために徹底的な試験をパスしなければならない。試験は、所定の列の乗客が、航空機のフライト方向においてすぐ前方に位置した列によって後に停止させられる可能性があると仮定して、特に、緊急着陸の間に乗客に生じたけがを評価しなければならない。
【0003】
構造に課される他の試験と、単一の列での静的及び動的試験と、のすべては、試験の終了時に傷があってはならない床に乗客を接続する力の経路により、比較的剛性を有するシートを要求する。さらに、エネルギーを減衰させるアクティブ又はパッシブなプロセスが、引き起こされてはならない。墜落した場合に乗客に生じる衝撃を評価するいわゆる“2列”試験のみが、エネルギー減衰プロセスの作動をもたらすことができる。
【0004】
試験の原理が、
図1A及び
図1Bに示されている。乗客1は、後列のシート2に座らされており、強力な加速(16g、すなわち地球の表面での重力よりも16倍大きい)が、乗客を前方に投げ出し、これにより、緊急着陸をシミュレートする。この加速は、矢印によって表されている。
【0005】
非常に剛性を有するシート構造の場合、このタイプの状況では、
図1Bに示されるように複数の衝撃が予測される。
【0006】
メインの衝撃は、乗客1の頭部が前方の列のシート3の背もたれの後部に衝突することによって受けるものである。この衝撃のために、頭部損害基準11(又はHIC)は、乗客1が受けるけがの重大性を定量化することを可能にする。この基準は、以下の式によって規定される。
【数1】
【0007】
この式では、t1及びt2は、2つの時間的限界であり、時間は、秒で表現され、a(t)は、g(g=9.81m・s-2)で表現される、正しい時間にわたる頭部11の加速である。試験が成功したとみなされるためには、この基準は、1000よりも小さくなければならない。
【0008】
二次的な衝撃は、シート3の低い構造5に接触する脛骨12の衝撃と結び付けられ、第2の基準は、マネキンの大腿骨において測定された圧縮により規定され、これは10kNの力を超えてはならない。
【0009】
最後に、最後の衝撃は、背もたれ4の後部に接触する手13又は手首の衝撃であり、この衝撃は、一般的に、低い強度からなり、所定のアクティブ又はパッシブな安全部品の始動要素としてのみ考慮され得る。
【0010】
乗客1にとってのけがを最小化するために、シート3は、可能な限り変形可能であるか、又は低い剛性を有しなければならない。変形可能であることは、頭部11とシート3との接触面を増大することを可能にし、かつ衝撃の間に頭部11が受ける圧力を最小化することを可能にし、低い剛性は、固定された接触面での力の伝達を制限する。
【0011】
変形可能であることと、低い剛性と、のこれらの制約は、静的試験及び動的試験の要件を満たすために要求される特性に相反する。逆に、構造は、圧迫中に最小限で変形できなければならず、試験後には可能な限りその初期位置に戻らなければならない。
【0012】
図2A及び
図2Bを参照すると、現在の解決法は、シートの背もたれをリクライニングさせるための機構においてパッシブ安全部品、主にシリンダ又はバネ6を使用することにある。直線シリンダ又はシンプルなバネ6が、シートのシート基部内に収納され、衝撃がある場合に作動され、後方の乗客の頭部の勢いを優しくそぐことを可能にする。
【0013】
パッシブ部品が定量化されるための重要な基準は、試験後には背もたれ2が小さい力でその初期位置に戻されることが可能でなければならないことである。シリンダ又はバネ6及び回転軸7を有する解決法は、この目的を達成することを容易に可能にする。回転は、可溶性要素によりブロックされるか、又は力の所定のレベル(ラチェット)を超えて始動させられ、バネ又はシリンダ6は、背もたれ2の前方への移動を減衰させることを可能にし、回転軸7は、試験後に背もたれをその初期位置にガイドする。
【0014】
従って、システムは、衝撃の間のみ作動されることができ、乗客の頭部の勢いをそぎ、試験後に背もたれ2が定位置に(可逆的に)戻されることを可能にしなければならない。
【0015】
この解決法は、実施しやすいが、リクライニングしないシートの場合には比較的複雑なままである。これは、回転軸7及びシリンダ又はバネ6が、後に墜落した場合にのみ使用され、シートの背もたれ2を後方に向かってリクライニングさせるために協働して使用しないためである。
【0016】
図3A及び
図3Bを参照すると、リクライニング可能でない背もたれ10を有するシートの場合には、質量を軽くする問題が、背もたれ10の回転システムを最小化させることに集中しており、実体軸8(
図3A)は、非常に頑丈であるが、墜落した場合以外には役に立たない質量を形成する。回転軸9(
図3B)の直径の減少は、墜落した場合には塑性ねじれのリスクにつながる。背もたれ10の各側の2つの回転軸は、その後、整列させられず、背もたれ10を定位置に戻すことは、規格によって認められた力よりも大きい相当な力を要求する可能性がある。
【0017】
このデバイスの利益を理解するために、背もたれが、通常、静的試験では空間のすべての方向、すなわち、前/後(軸x)、左/右(軸y)及び上/下(軸z)においてストレスを加えられることを思い出す。
【0018】
シンプルかつ頑丈な回転軸(通常の解決法)は、前/後方向(Y軸周りの回転)において背もたれを弱化させる。可溶性要素は、回転の抵抗に対抗し、静的試験においてかけられるモーメント(回転軸上で約600N・mである、背もたれの頂部で90kg)に耐えることができなければならず、これがサイズを非常に制限することにつながる。
【0019】
背もたれの各側での軸の不整列の任意のリスクを回避するボールジョイント接続は、前/後方向(Y軸周りの回転)及び右/左方向(Y軸に従う並進)において背もたれを弱化させる。可溶性要素は、作動前にY軸周りにおいてほぼ600N・mを支持することができるべきである。
【0020】
従って、背もたれ10のいずれかの側でのシンプルな回転軸は、もろすぎて航空機シート上で負う制約のすべてを満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
墜落後に定位置に背もたれを戻すことを可能にする軽量システムを得るために、本発明のコンセプトは、ピボット及びスライドを組み合わせることにあり、これにより、軸に与えられる力を減少させるために回転が求められる場合にモーメントを調節し、背もたれの各側での回転軸の不整列を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
従って、本発明のメインの目的は、ビークルのキャビンの床に固定されるよう意図された、ビークル用のシートであって、
- 固定フレームであって、固定フレーム自体が、脚部及び少なくとも1つのシート基部を備える、固定フレームと、
- 固定フレームに固定された、1つ以上のシート基部と同じ数の1つ以上の背もたれであって、決定された方向(Y)に沿って水平方向よりも鉛直方向に置かれた少なくとも2つの直立部を備える、背もたれと、
を備えるシートである。
【0023】
本発明によれば、直立部が、対応する背もたれの後面上での衝撃の影響を受けて上方にはめ込み解除されることができるように上方への並進で固定フレームに対して解放可能な方式で、下端部によってフレーム内にはめ込まれ、はめ込み解除された後に前方に回動することができるように固定フレームの少なくとも1つの固定軸周りで回転可能に取り付けられており、これは、検討されるシートの背後に固定されたシート上に位置した乗客の頭部に衝撃が生じた場合、航空機の場合には不時着の場合である。
【0024】
好ましくは、シートは、決定された力以下では直立部を並進させることをブロックするために、各直立部と固定フレームとの間に少なくとも1つの機械的なフューズを備えている。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、各直立部の回動が、少なくとも1つの可撓性要素であって、第1の下端部によって、はめ込み部上で固定フレームに固定され、第2の端部によって、直立部の下端部の真上で直立部にスライド可能に固定される、可撓性要素により行われ、固定フレームに対して回動した後に、固定フレームにはめ込まれた直立部を戻すことを可能にする。
【0026】
スライドは、前記少なくとも1つの要素の第2の端部に固定されたスライド挟持部により行われる。
【0027】
固定要素の第1の実施形態では、固定要素は、可撓性ストリップから形成されている。
【0028】
この固定要素の第2の実施形態では、固定要素は、板バネから形成されている。
【0029】
この固定要素の第3の実施形態では、固定要素は、2つの可撓性ロッドから形成されている。
【0030】
この固定要素の第4の実施形態では、固定要素は、上端部によって直立部を囲みかつ下端部によってはめ込み部を囲むロッドから形成されたトーションバネから形成されている。
【0031】
本発明の第2の実施形態では、各直立部の回動は、固定フレームに固定された少なくとも1つの機械的な回転軸と、直立部の長手方向における直立部のスロット、により行われ、機械的な回転軸はスロット内でスライドすることができる。
【0032】
前記少なくとも1つの機械的なフューズは、接着剤、又は特にプラスチックもしくは金属材料から作られた少なくとも1つのリベットにより実施され得る。
【0033】
本発明及び本発明のさまざまな特徴は、本発明の2つの実施形態の以下の説明を読むとよりよく理解される。異なる図が添付される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】本発明が解決するよう意図された問題を想起させる図である。
【
図1B】本発明が解決するよう意図された問題を想起させる図である。
【
図2A】従来技術によるデバイスの例示的な図である。
【
図2B】従来技術によるデバイスの例示的な図である。
【
図4A】本発明によるコンセプトの例示的な図である。
【
図4B】本発明によるコンセプトの例示的な図である。
【
図5A】本発明によるシートの第1の実施形態の理論的な図である。
【
図5B】本発明によるシートの第1の実施形態の理論的な図である。
【
図6】本発明によるシートの第2の実施形態の理論的な図である。
【
図7】
図5A及び
図5Bの実施形態の機構の場所とともに本発明によるシートを示す。
【
図8A】本発明によるシートの位置の部分的な拡大図である。
【
図8B】本発明によるシートの位置の部分的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図4A及び
図4Bを参照すると、シートの原理は、図式的に、スライド部24を使用し、スライド部24は、背もたれの直立部20の下部において長手方向に、かつ使用位置においてその全体的に鉛直の軸の方向に置かれている。シートの固定フレーム23と一体的でありかつスロット21の幅よりも若干小さい直径からなる回転軸22は、スロット21を通る。従って、理論的には、背もたれの直立部20は、シートの固定フレーム23に対して、全体的に鉛直の方向(軸Z)にスライドすることができる。これは、
図4Aに示されている。
【0036】
図4Bは、理論的にこれらの
図4A及び
図4Bに示されるシートの背後に置かれたシート自体上に位置した乗客の体の衝撃後の本発明によるシートの状態を示す。背もたれの直立部20は、シートの固定フレーム23に関して固定された回転軸22に対して背もたれがスライドすることにより、上方への若干の並進を受けている。その後、この上方への若干の並進後に、背もたれの直立部20は、前方に、すなわち
図4Bにおいて左に向かって傾斜する。
【0037】
シートの固定構造23に対する背もたれの直立部20の固定は、解放可能なはめ込み部、すなわちきつく嵌合しないはめ込み部を介してなされる。実際には、このタイプのシートの好ましい実施形態は、シートの固定構造が、きつく嵌合するスリーブによって組み立てられる管状要素から形成されることにある。本発明によるシートの場合、シートの固定フレーム23での背もたれの直立部20の嵌合は、きつくない。これに起因して、背もたれの直立部20の後面上で衝撃が生じると、はめ込みは大きい長さにわたって行われないので、背もたれは、とりわけ、背もたれの直立部20をシートの固定部分23に対してそのきつくないはめ込み部から出させる振動を引き起こす。このはめ込み部から解放されると、背もたれ20は、背もたれ20の後面の下での衝撃の力の影響を受けて、自然に傾斜する。
【0038】
この回転軸22/スロット21の接続は、スロット、すなわちスライド部を形成するこの組立体の所定の部分にわたって前/後の抵抗を組み合わせることを可能にし、これより先に容易な回転が、これらの運動を間接的に引き起こした墜落後に、背もたれ20をそのはめ込み部内に容易に戻すことをもたらす。これらの図に図示されない可溶性要素は、この場合、頂部の方への保持部からなり、作動前に、背もたれの直立部20が並進させられることを防止する。全体的に鉛直の軸(軸Z)に沿った背もたれの直立部20の上方への誘導は、通常の試験においてむしろ弱められ、約30kg(300N)まで制限され得る。約300Nで壊れなければならない可溶性要素は、プラスチック又は金属から作られたシンプルなリベットであることができるが、回転軸周りでの600N・mで壊れる可溶性要素は、比較的重いシステムにつながる。
【0039】
図5A及び
図5Bを参照すると、従って、シートの直立部の下端部30は、シートの固定構造上での固定はめ込み部32内に解放可能な方式ではめ込まれる。はめ込み部32に対する直立部20の、すなわち直立部20の下端部30の理論的な回転は、はめ込み部32の外面上に固定された可撓性ストリップ34により行われる。可撓性ストリップ34の上部には、直立部20の下端部30をスライド可能に囲むスライド挟持部36が固定され、
図5Bに示されるように、シートの後面、すなわち直立部20上での衝撃後に、その下端部30は、上方への並進を介して、そのはめ込み部32内でのそのはめ込み位置から解放される。
【0040】
直立部20及びその下端部30のこの上昇は、スライド挟持部36がこの下端部30に固定されておらず、調節された方式で下端部30を囲むという事実により可能となる。
【0041】
下端部30が、そのはめ込み部32から出ると、直立部20は、はめ込み部32に固定されかつスライド挟持部36と一体的な可撓性ストリップ34の可撓性により、シートの背後に位置した乗客の頭部の衝撃の圧力の影響を受けて回動する。墜落又は緊急着陸後にシートの固定フレームのはめ込み部32に対して直立部20が出た後に、スライド挟持部36及び可撓性ストリップ34により、各直立部は、そのそれぞれのはめ込み部32内に戻され得る。
【0042】
これらの
図5A及び
図5Bでは、機械的なフューズが示されない。
【0043】
図6を参照すると、並進及び回転のこの動作の第2の検討される実施形態は、はめ込み部32に固定された機械的な回転軸40であって、直立部の下端部30をスライド可能に囲むスライド挟持部36が固定された、回転軸40により行われ得る。
【0044】
スライド挟持部36は、プラスチック又は金属材料から作られることができ、そのメイン機能は、機械的な回転軸40の力以外の力を吸収することなく、ガイドすることである。
【0045】
機械的な回転軸40は、墜落中にその軸から移動してはならず、かつ試験後に直立部20をその初期位置に戻すことを可能にしなければならないので、好ましくは金属である。ストリップ34は、金属であってもよい。ストリップ34は、1回又は小数回の試験のために、ストリップのメイン軸に対して垂直な軸に沿った回転を得ることを可能にする。この実施形態の利点は、垂直な仮想軸が、試験後に、直立部がそのはめ込み部において所定位置に戻る間にいかなる特定の困難性も引き起こすことなく若干軸外にあることができることである。さらに、仮想の回転軸の鉛直方向(軸X)位置は、固定されておらず、従って力を最小化する。
【0046】
これら2つの実施形態では、前/後の力は、ピボット接続による回転と、背もたれの直立部におけるそれらのはめ込み部に対するシンプルな相対的なスライドにつながる上/下の力と、に変換される。
【0047】
図7を参照すると、2シーター式シート51上には、3つの直立部50がその中で使用されるので、3つの機構が必要とされる。従って、それら直立部の下端部30は、上で説明されたように解放可能な方式でそれらのはめ込み部32内にはめ込まれる。この
図7では、3つのスライド挟持部36も示されている。
【0048】
図8A及び
図8Bは、墜落、緊急着陸又はシンプルな試験の前及び後の2つの位置においてこの実施形態をより詳細に示す。
図8Aでは、各直立部50は、その下端部30をシート51の固定はめ込み部32内にはめ込むことによって固定される。ストリップ34は、はめ込み部32に常に固定されている。
【0049】
図8Bを参照すると、シートの背もたれの後面上に生じた衝撃後に、各直立部50は、可撓性ストリップ34の上端部に固定されたスライド挟持部36のスライドにより、そのそれぞれのはめ込み部32から解放され、可撓性ストリップ34自体は、その下端部によってはめ込み部32に固定されている。従って、各直立部50の回転は行われ得る。可撓性ストリップ34は、衝撃、事故、墜落、緊急着陸又は試験後に、各直立部50をそのそれぞれのはめ込み部32内に戻すことを可能にすることが理解される。
【0050】
可撓性ストリップ34は、概して、他の可撓性要素と置換され得る。
【0051】
図9A及び
図9Bを参照すると、可撓性要素は、板バネ60から形成され、板バネ60は、下端部62を介してはめ込み部32に固定され、上端部64を介して直立部の端部30に固定され得る。この板バネ60は、スライド挟持部36が形成するループの内部を通る。従って、直立部30はスライドすることができる。
【0052】
別の実施形態では、可撓性要素は、2つの可撓性ロッド70A及び70Bから形成され、
図9A及び
図9Bの板バネ60と同様な方式で取り付けられている。
【0053】
この可撓性要素は、可撓性ロッド80から形成されたトーションバネの形態で実施され得、可撓性ロッド80の上端部82は、直立部の下端部30をスライド可能に囲む。このロッド80は、下端部84によってはめ込み部32を囲む。ねじれ効果は、特に、ロッド80の下端部84をはめ込み部32に接続する曲げ部86で生じる。トーションバネのこの解決法は、弾性ゾーンで曲がることによって動作せず、バネ効果を介して動作し、これが、試験又は事故後にシステムをその所定位置に自動的に置くことができることを可能にする。
【0054】
この並進/ピボットシステムは、本実施形態での目的のために新たな運動学をもたらさず、単に、回転軸上でのねじれにおける有効なストレスを減少させる。
【0055】
並進/ピボット接続は、スライド接続部の所定の部分にわたる前/後の抵抗と、非常に容易な回転と、を組み合わせることを可能にし、墜落後に背もたれを定位置に容易に戻すことをもたらす。可溶性要素は、この場合、上方への保持部であり、作動前に、ピボットが、背もたれが効果的に回転することができるゾーン内にあることを防止し、軸zに従う誘導は、通常の試験において弱められ、約30kg(300N)まで制限され得る。
【符号の説明】
【0056】
20,50 直立部、21 スロット、22 回転軸、23 固定フレーム、30 下端部、32 はめ込み部、34 可撓性ストリップ、36 スライド挟持部、60 板バネ、62 第1の下端部、64 第2の端部、70A、70B 可撓性ロッド、80 ロッド、82 上端部、84 下端部、Y 方向