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特許7069194エスカレータまたは動く歩道の支持構造の3Dモデルを生成する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】エスカレータまたは動く歩道の支持構造の3Dモデルを生成する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B66B23/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019546379
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018054121
(87)【国際公開番号】W WO2018153846
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】17158053.3
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エーダー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ノバツェク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バーゲンライトナー,ゲオルク
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-176090(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199850(WO,A1)
【文献】特開2000-159470(JP,A)
【文献】特開2017-001819(JP,A)
【文献】特開2006-199434(JP,A)
【文献】特開2016-098114(JP,A)
【文献】特開2004-277176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101695983(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ(1)または動く歩道の支持構造(2)の構造部材(26)の3Dモデルを生成する方法であって、
エスカレータ(1)または動く歩道は、回転する走行経路(5)に沿って移動可能な多数のトレッドユニット(7)を有する搬送手段(13)を備え、
該方法は、
搬送手段(13)上に画像記録装置(43)を固定するステップと、
測定される構造部材(26)へのトレッドユニット下の視覚的アクセスを可能にするために、トレッドユニット(7)の内の少なくとも1つを取り除くステップと、
画像記録を記録する前に、エスカレータ(1)または動く歩道上の走行経路(5)内の少なくとも1カ所に少なくとも1つの基準マーク(55)を動かないように固定するステップであって、この基準マークを画像記録装置(43)にとって明確に識別可能とするステップと、
搬送手段(13)を、走行経路(5)の少なくとも部分的領域に亘って固定されている画像記録装置(43)と共に回転的に移動させるステップと、
走行経路(5)に沿った多数の位置で画像記録装置(43)を使用して測定すべき構造部材(26)の画像記録を記録するステップと、
記録された画像記録に基づいて、画像と共に記録された少なくとも1つの基準マーク(55)の助けを借りて、支持構造(2)の構造部材(26)の少なくとも部分的領域において3Dモデルの生成を行うステップと、
を備える方法。
【請求項2】
3Dモデルを生成するステップにおいて、画像と共に記録された基準マーク(55)を考慮に入れて1つの全体的な記録を形成するために、多数の画像記録が組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3Dモデルを生成するステップにおいて、画像記録の歪みが、画像と共に記録された基準マーク(55)によって補正される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
生成された3Dモデルが、画像と共に記録された基準マーク(55)によって較正される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
画像記録は、搬送手段(13)の連続動作中に記録される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
搬送手段(13)の動作が、画像記録の記録中に一時的に中断される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
画像記録装置(43)は、画像記録の記録を搬送手段(13)の動作と合わせるために、エスカレータ(1)または動く歩道の制御部(24)と信号を交換する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
トレッドユニット(7)は、少なくとも搬送領域(19)において乗客が踏むことが可能であり、画像記録装置(43)は、搬送領域(19)の一端を検出し、その際に搬送手段(19)の動作を終了するためにエスカレータ(1)または動く歩道の制御部(24)に信号送信するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エスカレータ(1)または動く歩道の支持構造(2)の構造部材(26)を測定する方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって支持構造(2)の構造部材(26)の3Dモデルを生成するステップと、
3Dモデルによって構造部材(26)を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
エスカレータ(1)または動く歩道を最新化する方法であって、
請求項9に記載の方法を用いて支持構造(2)の構造部材(26)を測定することによって、エスカレータ(1)または動く歩道の支持構造(2)内の寸法を確認するステップと、
エスカレータ(1)または動く歩道から、支持構造(2)に取り付けられた古い部材を取り外すステップと、
エスカレータ(1)または動く歩道の新しい部材を支持構造(2)に取り付けるステップであって、支持構造(2)上の新しい部材の位置決めが、支持構造(2)内の以前に確認された寸法を考慮に入れて行われるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
エスカレータ(1)または動く歩道の支持構造(2)の構造部材(26)の3Dモデルを生成する装置(41)であって、エスカレータ(1)または動く歩道は、回転する走行経路(5)に沿って移動可能な多数のトレッドユニット(7)を具備する搬送手段(13)を備え、トレッドユニット(7)は、走行経路(5)に沿って前後に配置されており、少なくとも搬送領域(19)において、トレッドユニット(7)は乗客が踏むことが可能であり、トレッドユニットは、測定されることとなる構造部材(26)の上方に配置され、
該装置(41)は、
測定されることになる構造部材(26)の画像記録を記録するように構成された、画像記録装置(43)と、
搬送手段(13)上に画像記録装置(43)を固定するように配置された、固定手段(45)と、を備え、
該装置は、走行経路(5)内の少なくとも1カ所のエスカレータ(1)または動く歩道上に動かないように固定することができる、少なくとも1つの明確に識別可能な基準マーク(55)と、画像記録と共に記録された基準マーク(55)の助けを借りて、画像記録装置(43)によって記録された画像記録に基づいて、支持構造(2)の構造部材(26)の少なくとも部分的領域の3Dモデルを生成するように構成された計算手段(47)と、をさらに備えることを特徴とする装置(41)。
【請求項12】
画像記録装置(43)は3D画像記録を記録するための3D画像記録装置である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
画像記録の記録を搬送手段(13)の動作と合わせるために、画像記録装置(43)とエスカレータ(1)または動く歩道の制御部(24)との間で信号を交換するように構成された、信号交換手段(57)をさらに備える、請求項11または12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータまたは動く歩道の支持構造の構造部材の3Dモデルを生成するため、ならびに構造部材を測定するための方法および装置に関し、特にエスカレータまたは動く歩道を最新化する工程で使用できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータまたは動く歩道の形態の移動設備は、2つの固定された場所の間で人々を搬送する目的のため、建物内で使用される。ローリング階段とも称されるエスカレータの場合、2つの場所は異なるレベルにあり、人々は明らかな傾斜を有する搬送経路に沿って搬送される一方、動く歩道の場合には2つの場所は同じレベルにあるかまたは2つのほんのわずかに異なるレベルにあり、人々はわずかな傾斜しかない搬送経路に沿って水平に搬送される。以下では、エスカレータおよび動く歩道は、より一般的な用語「移動設備」としてまとめられる。
【0003】
移動設備は一般に、回転する移動経路に沿った多数の可動トレッドユニットを有する搬送手段を含む。トレッドユニットは、少なくともいわゆる搬送領域内で外側からアクセス可能であり、到着する乗客が進入領域を通して搬送領域のトレッドユニットの1つに乗ることができ、次いで搬送経路に沿って搬送され、反対側の出口領域で最終的に再び離れることができるようになっている。搬送手段の搬送領域は送り領域とも称されることがあり、搬送手段は送り領域の下の、戻り領域と称される領域で回転して戻るときには、ここでは当然ながら、乗客が使用することは不可能である。エスカレータでは、トレッドユニットは通常踏段と称され、動く歩道では、トレッドユニットは概してパレットと称される。トレッドユニットは一般に、走行経路に沿って前後に配置され、チェーンまたはベルトに各々取り付けられ、これによって階段ベルトまたはパレットベルトを形成する。したがって階段ベルトまたはパレットベルトによって形成された搬送手段は、移動設備の静止部分に対して移動可能な、移動設備の一部として理解することができる。移動設備はまた、階段ベルトまたはパレットベルトの側面に沿って縦方向に伸びる回転式手すりを、標準として備える。ユーザはこれらを掴むことができ、このため回転式手すりもまた搬送手段の一部となり得る。
【0004】
搬送手段に加えて、移動設備は支持構造を有し、その助けを借りて移動設備は建物内に固定されることが可能であり、これを介して移動設備の重量が建物に伝達される。支持構造は枠組として構成されている。このような枠組は、複数の構造部材で構成されている。このような構造部材は、とりわけ、横支柱、縦支柱、斜め支柱、アダプタ部品などであり得る。枠組は、一方ではこれが建物の支持構造に据え付けられ、他方では搬送手段の部材が枠組に取り付けられるように、設計および構成される。したがって、枠組によって形成される構造の幾何学的および構造的設計は、収容する建物内の幾何学的および構造的限界条件および、具体的には搬送手段のような移動設備の他の部材の対応する現実の両方を考慮すべきである。
【0005】
エスカレータまたは動く歩道が一定時間動作した後、これを最新化することが必要となり得る。これは、例えば、移動設備の摩耗した部材の交換を伴うことがある。その代わりに、または追加で、移動設備の部材は、例えば元の移動設備の性能、快適性、または寿命を改善するために、より新しい設計の、対応する部材に置き換えられてもよい。
【0006】
既存の移動設備の最新化の代替として、全体が同様に交換されてもよい。明らかに、このシナリオでは、既存の移動設備を最新化する代わりに、工場内で標準として交換用移動設備を製造する方が、費用効率が高い可能性がある。しかしながら、交換用移動設備を使用場所まで輸送することによって生じる追加の支出および費用が発生する可能性がある。具体的には、建物の壁および/またはその他の障害物を少なくとも部分的に除去する必要があり得るため、既存の建物内に非常に大きい部材として交換用移動設備を設置した結果として、かなりの支出を被る可能性がある。
【0007】
移動設備の最新化は通常、移動設備の既存の支持構造、具体的には既存の枠組、すなわち具体的には最新化すべき移動設備の部材を、最初に取り外すことを伴う。具体的には、搬送手段の一部または全ての部材、すなわち階段ベルトまたはパレットベルトおよび/または駆動ユニットおよび/または方向転換ユニットが、取り外される。その後、新しい部材の設置のために移動設備の残りの支持構造が準備され、すなわち、具体的には、支持構造に新しい部材を引き続き設置できるようにするために、洗浄されて適切なアダプタプレートまたはアダプタモジュールが取り付けられる。
【0008】
国際公開第2004/035452A1号パンフレットは、既存のエスカレータを最新化する方法を記載している。欧州特許第16175491.6号明細書もまた、既存のエスカレータまたは既存の動く歩道を最新化する方法を記載している。
【0009】
従来、既存の移動設備を最新化することは、例えばアダプタプレートおよびアダプタモジュールによって、後の段階で交換用部材を受け取ることができるように、交換すべき部材を取り外し、その後残りの枠組を正確に測定することを伴う。この測定は従来、後の段階で十分な精度を持って、必要に応じて交換用部材の設置、ならびにアダプタプレートおよびアダプタモジュールの構築または調整の準備をするために、専門家、例えば交換用部材およびそれらの設置要件の両方について深い知識を持ち、残りの支持構造のどの寸法を測定する必要があるかを知っている専門家によって、実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2004/035452号
【文献】欧州特許第16175491.6号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熟練者に必要な専門知識、ならびに熟練者が現場で移動設備を検査および測定する必要性のため、この測定作業は高額な上に時間もかかっていた。
【0012】
とりわけ、具体的には最新化対策の観点から、支持構造またはエスカレータまたは動く歩道を、その構造部材に関して少ない人員および/または財政費用で測定できるように支援する方法または装置の要求があり得る。具体的には、資格のある熟練者が現場で移動設備を測定する必要が無く、移動設備の支持構造の構造部材を測定できるようにする方法または装置の要求があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような要求は、独立請求項のうちの1つによる方法または装置によって満たすことができる。有利な実施形態は、従属請求項ならびに以下の説明において定義される。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、エスカレータまたは動く歩道の支持構造の構造部材の3Dモデルを生成する方法が提案される。エスカレータまたは動く歩道は、多数のトレッドユニットを有する搬送手段を備え、トレッドユニットは、走行経路に沿って前後に配置されている。本方法は、以下のステップを備える。(a)画像記録装置を搬送手段に固定するステップ、(b)その下の構造部材への視覚的アクセスを可能にするために、トレッドユニットのうちの少なくとも1つを取り外すステップ、(c)画像記録装置で画像記録を取る前に、走行経路内の少なくとも1つの場所でエスカレータまたは動く歩道上に少なくとも1つの基準マークを動かないように取り付けるステップであって、基準マークは画像記録装置にとって明確に識別可能であるステップ、(d)走行経路の少なくとも部分的な領域に亘って画像記録装置と共に搬送手段を回転的に移動させるステップ、e)走行経路に沿ったいくつかの位置から画像記録装置によって測定すべき構造部材の画像記録を取得するステップ、(f)記録された画像記録に基づいて、これと併せて記録された少なくとも1つの基準マークの助けを借りて、支持構造の構造部材の少なくとも部分的な領域において3Dモデルを生成するステップ。これらのステップは、示された順序でも他の順序でも実行することが可能である。具体的には、ステップ(b)はステップ(a)の前に実行されてもよい。ステップ(d)、(e)、(f)は順次、または同時に実行してもよい。
【0015】
この明細書に関して、用語「3Dモデル」は、仮想3Dモデルを意味すると理解される。より正確には、この3Dモデルは、可能な限り、デジタル化された形態における記録された構造の縮尺通りの三次元的再現であり、3Dモデルの個々の点は、三次元の座標および/またはベクトル座標によって、仮想空間内で定義される。このような仮想3Dモデルは、例えば、3D-CADシステムへ転送することが可能である。3D-CADシステム(三次元コンピュータ支援設計システム)は、3Dモデルの表面および縁部の距離および位置を測定する可能性を提供する。好ましくは、取り付けるべき新しい部材もまた3D-CADシステムによって構築されている。次いでこれらは、アダプタ部品が3Dモデルの仮想環境内に直接構築できるように、3Dモデル内に仮想的に挿入されて最適に位置決めされることが可能である。これらのアダプタ部品は、安定した信頼性の高い位置的に正確な方法で、古い既存の枠組を、取り付けるべき新しい部材に接続できるようにする。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、エスカレータまたは動く歩道の支持構造の構造部材を測定する方法が提案される。本方法は、本発明の第1の態様の実施形態による方法によって支持構造の構造部材の3Dモデルを生成するステップと、3Dモデルによって構造部材を測定するステップと、を備える。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、エスカレータまたは動く歩道を最新化する方法が提案される。本方法は、以下のステップを備える。(i)本発明の第2の態様の実施形態による方法を用いて支持構造の構造部材を測定することによって、エスカレータまたは動く歩道の支持構造内の寸法を確認するステップ、(ii)支持構造に取り付けられたエスカレータまたは動く歩道から古い部材を取り外すステップ、(iii)エスカレータまたは動く歩道の新しい部材を支持構造へ取り付けるステップであって、支持構造上の新しい構造部材の位置決めが、支持構造内の以前に確認された寸法を考慮に入れて行われる、ステップ。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、エスカレータまたは動く歩道の支持構造の構造部材の3Dモデルを生成する装置が提案される。エスカレータまたは動く歩道は、本発明の第1の態様の実施形態に関連して上述されたものと同一または類似のものに構築される。本装置は、画像記録装置、固定手段、および計算手段を備える。画像記録装置は、測定すべき構造部材の画像記録を取得するように構成されている。固定手段は、搬送手段上に画像記録装置を固定するように適合されている。計算手段は、画像記録装置によって取得された画像記録に基づいて、少なくとも支持構造の構造部材の部分的な領域から3Dモデルを生成するように構成されている。したがって、本装置は、本発明の第1または第2の態様の実施形態による方法を実行するように、またはこのような方法で使用されるように、特に構成されてもよい。
【0019】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、とりわけ、本発明を限定することなく、以下に説明される考えおよび所見に基づくと見なされることが可能である。
【0020】
冒頭で述べたように、従来の最新化対策では、これまで、搬送手段の交換用部材を適切に準備して、残りの支持構造内にこれらを取り付けられるようにするために、移動設備の支持構造の残りの構造部材を、膨大な費用で専門の熟練者によって測定する必要があった。
【0021】
ここで提案される方法を使用すると、または、ここで提案される装置を使用すると、著しく簡素化された、および/または部分的に自動化された方法で、移動設備の支持構造の測定を実行することが可能となる。
【0022】
簡単に要約すると、この3Dモデルを測定できるようにするために、画像記録の助けを借りて、移動設備の支持構造の構造部材の3Dモデル、すなわち可能な限り縮尺通りの三次元的再現を、具体的にはデジタル化された形態で、生成することが提案される。画像記録は、移動設備の搬送手段に取り付けられた画像記録装置によって記録される。具体的には、多数の画像記録が記録されるが、画像記録が記録される位置は互いに異なるものとする。この目的のために、搬送手段に固定された画像記録装置は、搬送手段の走行経路の少なくとも部分的領域に亘って動かされる。この目的のために、搬送手段は回転的に動かされ、画像記録はそれぞれ走行経路に沿った異なる位置で記録される。次いで、異なる視野角から取得された複数の画像記録から、所望の3Dモデルが生成できる。
【0023】
提案される方法の一部として、画像記録装置は、移動設備の搬送手段に異なる方法で固定されることが可能である。例えば、トレッドユニットまたはパレットの内の1つに画像記録装置を取り付けることが可能である。これを行うために、一方では画像記録装置と協働するように、すなわち、例えば画像記録装置の足に固定されるように適合され、他方ではトレッドユニットと協働する、すなわち、例えばトレッドユニットの溝内に固定される、特別に形成された結合装置が使用できる。代わりに、または追加で、画像記録装置は、搬送手段の他の部材に固定されることが可能である。例えば、階段ベルトまたはパレットベルトへの固定が考えられる。具体的には、階段ベルトまたはパレットベルト内のコンベヤチェーンおよび/または接続軸への固定が考えられる。回転式手すりの内の一方または両方の手すりに画像記録装置を固定することもまた可能である。
【0024】
画像記録装置を搬送手段に取り付けることによって、画像記録装置は、搬送手段に対して静止状態で固定されることが可能であり、すなわち画像記録装置の視線方向は搬送手段が移動した場合にのみ変化し、画像記録装置の視線の向きは、搬送手段の移動方向がその向きに対して変化する場合にのみ変化する。搬送手段への画像記録装置の、このような堅固な固定は実施しやすい。具体的には、画像記録装置自体はその視線方向および/または視線の向きを積極的に変更できなくてもよいが、移動設備の走行経路の部分的領域に沿って搬送手段の助けを借りて静止画像記録装置を移動させるだけで十分であろう。さらに、搬送手段上の画像記録装置の堅固な固定は、画像記録装置によって記録された画像記録の評価および、さらなる処理を簡素化し得る。
【0025】
画像記録装置を走行経路に沿って連続的に移動させることにより、移動設備の支持構造の異なる部分的領域の画像記録を記録することができる。測定すべき支持構造およびその構造部材の少なくとも一部は搬送手段のトレッドユニットの下に配置されているので、測定しなければならないその下の構造部材への視覚的アクセスを得るために、トレッドユニットのうちの少なくとも1つ、好ましくは2つまたは3つのトレッドユニットが一時的に取り外される。トレッドユニットは、専門知識のない者でも比較的容易に取り外すことができる。これによって搬送手段内に形成された開口部の結果として、画像記録装置はその下の構造部材の画像記録を記録することができる。
【0026】
搬送手段が画像記録装置およびそこに形成された開口部と共に、移動設備の走行経路に沿って連続的に移動するとき、画像記録の記録を、異なる位置から、したがって異なる視線方向で、取得することができる。全ての構造部材を画像記録として完全にマッピングまたは記録することは必須ではなく、むしろ最新化される移動設備の支持構造のこれらの領域を3Dモデルで記録するだけでよい。この場合、とりわけ、単に搬送手段の走行経路の一部の上で画像記録装置を移動させれば十分であり得る。しかしながら、本質的に走行経路の送り領域全体に沿って画像記録装置を移動させることが有利であると想定される。
【0027】
一実施形態によれば、三次元画像記録を記録するように設計された3D装置である画像記録装置を採用することが提案される。
【0028】
言い換えると、画像記録装置は、その視野の二次元投影を記録する目的のためだけではなく、具体的には、本明細書で提案される方法に関して、その視野を三次元的にマッピングするために設計されてもよい。三次元画像記録は、物体間の横方向距離および空間内のこれらの奥行き、すなわち、これらの画像記録装置までの距離の両方に基づく情報を含む。好ましくは、3D画像記録装置は、縮尺通りの三次元画像記録を記録することができる。次いで3Dモデルは、走行経路に沿った異なる位置で記録された三次元画像記録から、比較的容易に生成することができる。
【0029】
画像記録装置は、例えばレーザースキャナであってもよい。このようなレーザースキャナはレーザービームを放出し、その視野を通って連続的に移動(走査)する。反射して戻るレーザービームの一部が、そこから生成される視野内の環境の画像で検出される。レーザースキャナの場合、視野内のレーザースキャナに対する物体の距離に関する情報が、さらに確認される。この目的のために、例えば、後方反射された部分の検出までの放出されたレーザービームのランタイムを測定することができる。
【0030】
あるいは、画像記録装置は、カメラとして構成されてもよい。このようなカメラは、その視野全体におけるその環境の画像を同時に記録することができる。3Dカメラは画像記録を生成することができ、その中で各記録面について、カメラまでの距離に関する情報も確認される。これは、とりわけランタイム測定を使用して行うことができる。したがって、このようなカメラはTOFカメラ(time-of-flight、飛行時間)と呼ばれることがある。
【0031】
明らかに、3D画像記録から所望の3Dモデルを生成することは有利であること、すなわち、使用される画像記録装置は3DレーザースキャナまたはTOFカメラなどの3D画像記録装置であることが、指摘される。しかしながら、原則として、異なる視線方向から、すなわち異なる位置から取得された2D画像記録から3Dモデルを生成することも、可能であると考えられる。この目的のために、2D画像記録から生成された3Dモデルは、例えば立体視技術によって確認することができる。
【0032】
上述の方法で生成された3Dモデルはその後、そこで再現された支持構造の構造部材を測定するために使用することができる。これを行うために、3Dモデルは、例えばCADシステム(コンピュータ支援設計)において生成および/または処理することができる。
【0033】
3Dモデルの測定は、移動設備から離れた場所で有利に行うことができる。これは、3Dモデルの測定の分野における費用のかかる当業者が移動設備の場所まで移動する必要がないという利点を有することができる。
【0034】
言い換えると、補助的な非熟練者が移動設備内の踏段の1つを一時的に取り外し、例えば形成された開口部のため現在隣接する踏段であって、その後移動動作を実行する踏段に画像記録装置を固定するだけでよく、このときに、固定された画像記録装置が異なる位置からの画像記録を記録できるように、移動設備の搬送手段が短時間だけ動かされる。これらの動作を実行するために、補助スタッフは、非常に基本的な技術的ノウハウのみを必要とする。具体的には、補助スタッフは、既存の移動設備の測定のいかなる専門知識も有する必要がない。画像記録装置の助けを借りて生成された画像記録、またはそこから生成された3Dモデルはその後、例えばデータネットワークを介して測定専門家のCADシステムへ送信することができる。この測定専門家は、移動設備を現場で直接検査する必要はないが、生成された3Dモデルを使用するだけで、十分な精度で支持構造の構造部材を測定することができる。
【0035】
上記でさらに述べたように、画像記録を記録する前に、画像記録装置にとって明確に識別可能な基準マークが走行経路内の場所でエスカレータまたは動く歩道に動かないように取り付けられ、または画像記録装置にとって明確に識別可能な多数の基準マークが走行経路に沿った異なる場所でエスカレータまたは動く歩道に取り付けられる。
【0036】
言い換えると、画像記録を取り始める前に、移動設備は、例えば、より単純および/または正確な方法で記録された画像記録から所望の3Dモデルを引き続き生成可能とするために、および/またはこれをより良く評価できるために、1つ以上の基準マークを取り付けることによって適切に準備できる。3Dモデルを生成しているとき、基準マークはその後、例えば配向のため、基準を形成するためなどに、使用することが可能である。
【0037】
基準マークは、粘着式または取り付けが簡単なマーカの形態であってもよい。基準マークには、パターン、バーコードなどが設けられてもよい。パターンまたはバーコードは、互いに明確に区別できるように、互いに異なっていてもよい。基準マークはまた、例えばターゲットと類似の、中心マークとして設計されてもよい。
【0038】
基準マークは、移動設備に沿った所定の位置に取り付けられてもよい。あるいは、基準マークは、移動設備のランダムな位置に取り付けられてもよい。具体的には、基準マークは、測定すべき欄干および/または構造部材の部分に取り付けられてもよい。互いに対する基準マークの位置は、必要に応じて正確に測定することができる。重要なのは、互いに対する基準マークの位置または距離だけであり、移動設備上の基準マークの絶対位置はほとんどまたは全く関係無い。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、3Dモデルを生成するとき、画像記録と共に記録された基準マークを考慮に入れて、1つの全体画像を形成するために多数の画像記録を組み合わせることができる。
【0040】
言い換えると、移動設備に以前に取り付けられた基準マークは、その後、そこから3Dモデルが生成される1つの全体的な記録を形成するために個別に記録された多数の画像記録を組み合わせるために利用することが可能である。走行経路に沿って移動設備上にこのようにして基準マークを配置すること、および/または、記録された各画像記録もまた少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの基準マークを備えるように、適切な位置で走行経路に沿って画像記録を記録することは、有利であり得る。具体的には、基準マークが異なる方法で各々設計され、したがって互いに区別される場合、画像記録に沿って記録された基準マークに基づいて明確に確認されることが可能であり、画像記録の位置において画像記録が記録されており、いかにしてこれを他の画像記録と組み合わることが可能であるか、確認される。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、3Dモデルの生成中に、画像記録と共に記録された基準マークを使用して、画像記録中の歪みを補正することが可能である。
【0042】
したがって、前述の実施形態と同じようにして、基準マークは3Dモデルを生成する目的のために利用することが可能である。基準マークの既知の位置および/または既知の距離を考慮に入れて、例えば画像記録装置の光学的誤差に起因する歪みが画像記録内で発生したか否かに関して検出することが可能である。具体的には、記録された画像記録に基づいて、構造部材の実際の寸法および幾何形状に関する結論を導き、したがって構造部材の実際の幾何形状から歪みの形態の仮想記録誤差を区別することが、重要であろう。例えば、支柱またはバーとして元々形成された構造部材は、時間の経過と共に、変形するか、または形状が曲がる可能性がある。次いで、画像記録は、曲がった構造部材を明らかにする。一方、構造部材は以前のようにまっすぐであり、光学的歪みのため画像記録で曲がって見えるだけかも知れない。以前に取り付けられた基準マークの助けを借りると、これらの仮想歪みは実際の歪みと区別できる。これらの歪みを除去するために適切な計算を実行し、これによって生成された3Dモデルの縮尺の精度および遵守を改善することができる。
【0043】
本発明のさらなる可能な実施形態では、生成された3Dモデルは、画像記録と共に記録された基準マークによって較正することが可能である。
【0044】
言い換えると、既知のまたは正確に測定された位置に取り付けられた基準マークは、生成された3Dモデルを較正するために使用することができる。このような較正済み3Dモデルでは、構造部材の寸法または構造部材間の距離は、具体的には、このような寸法または距離が3Dモデルの助けを借りて正確に測定され得るように、縮尺通りに再現される。
【0045】
一実施形態によれば、画像記録は、搬送手段の連続移動中に記録されることが可能である。
【0046】
別の言い方をすれば、搬送手段は、例えば、これが第1の極限位置から第2の極限位置まで、例えば搬送領域の開始から搬送領域の終わりまで、連続的に移動するように、これに固定された画像記録装置と共に連続回転的に移動させることが可能である。2つの極限位置の間の走行経路に沿って走行している間、画像記録装置は異なる位置から多数の画像記録を記録することができる。移動期間が短く保たれ、および/または移動設備の制御が単純なまま維持され得るように、搬送手段が停止されることは必須ではない。
【0047】
あるいは、一実施形態によれば、搬送手段の移動は、画像記録が行われている間、一時的に中断することができる。
【0048】
言い換えると、画像記録装置は、第1の位置から第2の位置まで搬送手段によって再び移動させることが可能である。しかしながら、これは、搬送手段を移動させる動作が1回以上短時間だけ中断する、すなわち画像記録装置が静止中に画像記録を記録できるように搬送手段が短時間だけ停止することを意味する。例えば画像記録装置の振動または動揺によるぶれが回避されるので、画像記録の品質は、一般に、これによって向上させることができる。
【0049】
一実施形態によれば、画像記録装置は、画像記録の記録を搬送手段の移動動作と合わせるために、エスカレータまたは動く歩道の制御部と信号を交換してもよい。
【0050】
別の言い方をすれば、画像記録装置および移動設備の制御部は、画像記録装置が例えば搬送手段の現在の移動状態に応じて画像記録を取得できるように、互いに通信してもよい。例えば、画像記録装置は、移動設備の制御部から受信した信号に基づいて特定の位置に到達した時点を検出することができ、次いでこの位置から、画像記録を記録することができる。その代わりに、または追加で、画像記録装置は、信号伝送によって、画像記録を取得するために移動設備の制御部を短時間だけ停止させることができる。画像記録装置および移動設備の制御部は、例えば予め設置されるケーブル接続を介して、または代わりに、例えば無線ラジオリンクを介して、異なる方法で互いに通信することができる。
【0051】
一実施形態によれば、画像記録装置は、搬送領域の一端を検出し、その際に搬送手段の動作を停止させるためにエスカレータおよび動く歩道の制御部に信号を送信するように構成してもよい。
【0052】
言い換えると、画像記録装置は、例えば、搬送領域の一端に接近しているときに取得された画像記録によって検出することができる。次いで移動設備の制御部と通信している画像記録装置は、移動設備を停止するように制御部に指示することができる。
【0053】
したがって、画像記録動作は、例えば、画像記録装置が搬送手段に正しく固定されるとすぐに人によって開始することが可能であり、同時に、または搬送手段の制御に続いて、走行経路に沿って画像記録装置を搬送するために、搬送手段の制御部はそれに応じてトリガーすることができる。画像記録装置が、例えば走行経路または搬送領域の反対端に到達するか、またはこれに接近しているとき、画像記録装置は、これを自律的に移動設備の制御部に伝達し、搬送動作を停止するように指示することができる。次いで画像記録装置は、搬送手段から再び取り外すことが可能である。これは、プロセス全体を簡素化する方法である。具体的には、これは移動設備の一部との衝突を通した画像記録装置への損傷を回避する方法である。
【0054】
本発明の可能な特徴および利点のいくつかは、異なる実施形態に関連して本明細書に説明されていることが指摘される。具体的には、いくつかの特徴は本発明の方法に関連して説明されており、他の特徴は本発明の装置に関連して説明されている。専門家は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴が適切な方法で組み合わせられ、適合され、交換され得ることを認識するだろう。
【0055】
ここで本発明の実施形態は添付図面を参照して説明されるが、図面も説明も本発明を限定すると解釈するべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の実施形態による、エスカレータの支持構造の構造部材の3Dモデルを生成する装置を有するエスカレータを示す。
図2】エスカレータ用の枠組の形態の支持構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図は概略的描写に過ぎず、縮尺通りではない。同一の参照符号は、異なる図において同一のまたは同一に機能する特徴を示す。
【0058】
図1は、その助けを借りて人々を2つのレベルE1、E2の間で輸送することができる、エスカレータ1の例示的な側面図を示す。図2は、このようなエスカレータ1用の枠組の形態の支持構造2の斜視図を示す。図2に示される支持構造2は、具体的には図1に示されるエスカレータ1の部材を収容し、建物内にこれらを固定してその重量を建物に伝達するのに適している。支持構造2およびその構造部材26は、説明目的のみのために図2に示されており、図1では破線矢印によって位置のみが示されているが、これらは図1の明瞭さを妨げないために詳細には示されない。
【0059】
エスカレータ1は、閉じたリングを形成する2つのコンベヤチェーン3を備える。2つのコンベヤチェーン3は、複数のチェーンリンクで構成されている。2つのコンベヤチェーン3は、走行経路5に沿って移動方向に移動することができる。広い領域に亘って、2つのコンベヤチェーン3は互いに対して平行に伸び、一方では移動方向を横切る方向に離間している。レベルE1、E2に接する末端領域では、コンベヤチェーン3は方向転換ホイール15、17によって方向転換される。
【0060】
階段状の多数のトレッドユニット7が、2つのコンベヤチェーン3の間に延在している。その横方向端部の近くでは、各トレッドユニット7がコンベヤチェーン3の内の1つにそれぞれ取り付けられており、したがって走行経路5に沿って移動方向に移動することができる。コンベヤチェーン3上を案内されるトレッドユニット7は輸送ベルト9を形成し、その上でトレッドユニット7は、走行経路5に沿って前後に配置されており、少なくとも1つの搬送領域19において乗客が踏むことができる。コンベヤチェーン3を動かすことができるようにするために、エスカレータ1は、駆動装置25と、これを制御する制御部24とを備えている(制御部は図1では概略的にのみ示されている)。輸送ベルト9は、駆動装置25および方向転換ホイール15、17と共に搬送手段13を形成し、そのトレッドユニット9は、動かないように建物に堅く固定された支持構造2に対して移動することができる。
【0061】
明瞭さのため、支持構造2は図1に示されていないが、図2には個別に示されている。支持構造2は枠組として構成されており、これは縦支柱27、横支柱29、斜め支柱31、垂直支柱33、追加部品35などのような、複数の構造部材26で構成されている。構造部材26は、例えば溶接、ねじ、クリンチ、またはリベット接続によって、互いに堅く接続されている。支持構造2は、取り付け点37、39で、建物の対応する耐荷重部4(図1参照)に取り付けられることが可能である。
【0062】
搬送手段13の様々な部材が支持構造2に接続され、これらによって支持されている。この目的のために、搬送手段の部材は、例えばアダプタプレートなどによって、1つ以上の構造部材に取り付けることが可能である。
【0063】
エスカレータ1はまた、欄干11の上に配置された手すり23も有しており、これは一般にコンベヤチェーン3と共に駆動され、それによって輸送ベルト9と同期して移動する。
【0064】
エスカレータ1が一定期間動作した後、最新の技術基準で最新式にするためにエスカレータ1は最新化されてもよい。これは、摩耗した部品のみを交換する必要がある、通常の検査および保守作業よりも多額の支出を伴う。最新化が行われるとき、安全要素および電気機器を最新の要件および安全基準に適合させる必要があることは希ではない。
【0065】
最新化対策の一部として、交換すべき部材は、従来、完全に取り外され、支持構造2の残りの部材は手作業で正確に測定されなければならなかったが、装置41を使用する代替方法がここで説明される。この装置41は、エスカレータ1の支持構造2の構造部材26の3Dモデルを生成するように設計されており、これはその後、測定目的のために利用することができる。
【0066】
図1に概略的に示されるように、装置41は画像記録装置43を備える。画像記録装置43は、固定手段の助けを借りて搬送手段13に固定されている。さらに、装置41は計算手段47を備えている。
【0067】
最新化手順の一部として、最新化すべきエスカレータ1上のトレッドユニット7の1つまたはいくつかは、人手によって予め取り外されてもよい。一般的に言えば、この作業が例えば補助スタッフによって実行され得るように、これは専門知識の無い人物によって行われてもよい。状況によっては、例えば欄干基部のカバープレートなどのカバーもまた取り外してもよい。これにより、輸送ベルト9の開口部49が露出する。この開口部49を通じて、その下の構造2の部分への視覚的アクセスが可能になる。
【0068】
その後、画像記録装置43は、固定手段45の助けを借りて搬送手段13に固定される。画像記録装置43は、具体的には、その視認範囲が開口部49およびその下の支持構造2に向けられるように、搬送手段13に固定されることが可能である。最初に、画像記録装置43は、搬送領域19の一端の近く、例えば低い方のレベルE1への入口の近傍に配置してもよい。
【0069】
図示される例では、固定手段45は足51の形態で設計されており、これは一方では画像記録装置43を支持するように設計され、他方ではトレッドユニット7の内の1つに取り付けられるように設計されている。足51は例えば、トレッドユニット7の溝内に係合させてもよい。
【0070】
あるいは、固定手段45は、トレッドユニット7のうちの1つとではなく、輸送ベルト9の他の部材、例えばコンベヤチェーン3またはこれに連結する軸と協働するように設計されてもよい。固定手段を、手すりまたはこの上に回転的に配置された手すりベルトに取り付けることもまた可能である。
【0071】
トレッドユニット7の取り外しを通して開口部49が生成され、画像記録装置43が搬送手段13に取り付けられると直ちに、画像記録装置43は搬送領域19内の走行経路5に沿って連続的に移動することができる。この配置により、画像記録装置43の視認範囲は、開口部49を通してその下の構造部材26に向けられて、その画像記録を取得することができる。
【0072】
好ましくは、画像記録装置43は、その視認範囲内の支持構造2の三次元画像を取得するように設計してもよい。この目的のために、画像記録装置43は例えば、3DレーザースキャナまたはTOFカメラ53として構成してもよい。
【0073】
可能な限り支持構造2全体に沿って画像記録を取得するために、搬送手段13に固定された画像記録装置43は、搬送領域内の走行経路5に沿って連続的に輸送ベルト9と共に移動し、その過程において異なる位置から多数の画像記録を取得することが可能である。
【0074】
画像記録に関連するデータまたは信号はその後、計算手段47に送信することが可能である。計算手段47は、画像記録装置43上に直接設けられてもよく、またはその中に組み込まれていてもよい。この場合、3Dモデルは、計算手段47を備えた画像記録装置43内で直接生成することができる。その後、生成された3Dモデルは、そこで評価するために、必要に応じてコントロールセンターに送信してもよい。
【0075】
あるいは計算手段47は、図1に例として示されるように、個別のユニットとして提供してもよい。このような個別の計算手段47は、例えばエスカレータ1の近傍に配置され、例えば無線データリンクを介して画像記録装置43と通信してもよい。あるいは計算手段47は、例えば建物の外、または別の町にあるコントロールセンターなど、より離れた場所に配置してもよい。この場合、画像記録装置43のデータおよび信号は、例えば有線または無線ネットワークを介して計算手段47へ送信することができる。
【0076】
画像記録装置43から得られた画像記録データは、計算手段47内でエスカレータ1の支持構造2の三次元モデルを生成するために使用してもよい。次いで、個々の構造部材26の寸法および/またはこれらの互いに対する位置および向きを、この3Dモデルを使用して正確に測定することができる。
【0077】
このようにして得られた測定データに基づいて、古い部材が取り外されたら、専門家は搬送手段13の古い部材を新しい部材に置き換えるための準備をすることができる。具体的には、新しい部材またはこれらを設置するためのアダプタ部品などを残りの支持構造2内に現場で迅速に問題なく取り付けられるようにするために、これらは適切に寸法設定または構成することができる。
【0078】
画像記録の記録、および多数の記録された画像記録に基づく3Dモデルの生成を簡素化または改善できるようにするために、多数の明確に識別可能な基準マーク55は、好ましくは、搬送領域19内の走行経路5に沿った記録作業に先立って配置されてもよい。基準マーク55は、例えば、一意に割り当てられたコード、例えばバーコードまたはQRコード(登録商標)を有するステッカーとして設けてもよい。
【0079】
基準マークは、少なくともこれが特定の記録位置に配置されていれば、画像記録装置43の視野内に収まるように配置してもよい。記録位置は、各画像記録が少なくとも1つの基準マーク45、好ましくは少なくとも2つの基準マーク55を含むように選択することが可能である。
【0080】
基準マーク55を記録に含めることで、後に個々の画像記録から全体像を生成および/または較正すること、および/または較正によって、例えば記録誤差によって生じたいかなる歪みも除去することが容易になる。
【0081】
場合によっては、画像記録装置43は、さらに信号交換ユニット57の助けを借りてエスカレータ1の制御部24と通信するように設計してもよい。例えば、制御部24は、画像記録装置43が静止時に特定の位置で動揺を伴わずに画像記録を記録できるように、画像記録装置43がこれらの位置に到達する度にエスカレータ1の駆動装置25を停止するように指示することが可能である。さらに、画像記録装置43は、画像記録装置43が搬送領域19を通過して、例えばその反対端に接近するとすぐに、駆動装置23の動作を停止するように、制御部24に指示することができる。
【0082】
最後に、「備える(comprising)」、「含む(including)」などの用語は他のいずれの要素またはステップも除外せず、「a」または「1つの(one)」などの用語は複数を除外しないことが指摘される。さらに、上記の例示的な実施形態を参照して説明された特徴またはステップはまた、他の上述の例示的な実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用され得ることが指摘される。請求項内の参照符号は、制限と見なされるべきではない。
図1
図2