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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ジオポリマーベースの無機発泡体
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/02 20060101AFI20220510BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 12/04 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 14/30 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20220510BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C04B38/02 C
C04B28/26
C04B12/04
C04B14/04 Z
C04B14/28
C04B14/30
C04B20/00 B
C04B24/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019548359
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018055348
(87)【国際公開番号】W WO2018162416
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17159448.4
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Strasse 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サルナス トゥルツィンスカス
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ファイヒテンシュラーガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハルト アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ポリーヌ プティ
(72)【発明者】
【氏名】ウアス トーマス ゴンツェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ノア シュトゥアツェネッガー
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272376(US,A1)
【文献】特表平06-503798(JP,A)
【文献】特開平08-259351(JP,A)
【文献】特開平08-165175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機発泡体の製造方法であって、
(1)以下、
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む、少なくとも1つの無機バインダー混合物
(iv)水、並びに任意に
(v)少なくとも1つの添加剤
を混合するステップ、及び
(2)得られた発泡体配合物を、化学的、物理的又は機械的発泡により発泡するステップ
を含む無機発泡体の製造方法において、
少なくとも1つの両親媒性化合物は、ガレートである少なくとも1つの頭部基、並びに炭素原子2~8個を有する脂肪族基から選択される少なくとも1つの尾部基を有する両親媒性化合物を含む、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの無機粒子の群が、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの無機粒子の群が、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及びCaCO3粒子、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの無機粒子の群が、30nm~300μmの範囲のメジアン粒径D50を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量が、0.5~160μmol/m 2 である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの無機バインダーがメタカオリンである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのアルカリ活性化剤が水ガラスである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの添加剤が、充填剤、促進剤、抑制剤、レオロジー調節剤、流動化剤、繊維、界面活性剤、触媒、さらなる疎水化剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
機粒子が、少なくとも1つの無機バインダー混合物の量に対して1~25質量%の量で提供され、及び/又は
少なくとも1つの無機バインダー混合物に対する水の質量比が、0.1~2.0である、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)が、
(1a)少なくとも1つの無機粒子の群、少なくとも1つの両親媒性化合物、及び任意に少なくとも1つの添加剤を水に分散させて、水性分散液を得るステップ、並びに
(1b)水性分散液を少なくとも1つの無機バインダー混合物と混合するステップ
を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法
【請求項11】
以下、
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む、少なくとも1つの無機バインダー混合物、
(iv)水、並びに任意に
(v)少なくとも1つの添加剤
含み、
少なくとも1つの両親媒性化合物は、ガレートである少なくとも1つの頭部基、並びに炭素原子2~8個を有する脂肪族基から選択される少なくとも1つの尾部基を有する両親媒性化合物を含む、無機発泡体。
【請求項12】
請求項11に記載の無機発泡体を硬化した気泡材料。
【請求項13】
以下、
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む、少なくとも1つの無機バインダー混合物、
を成分として含む無機発泡体配合物を製造するための組成物であって、ここで、
成分(i)、(ii)及び(iii)は別々に存在し、又は
成分(i)及び(ii)は混合物として存在し、かつ成分(iii)は別に存在し、又は
成分(i)、(ii)及び(iii)は混合物として存在し、
少なくとも1つの両親媒性化合物は、ガレートである少なくとも1つの頭部基、並びに炭素原子2~8個を有する脂肪族基から選択される少なくとも1つの尾部基を有する両親媒性化合物を含む、前記組成物。
【請求項14】
断熱材、防音材もしくは吸音材の製造のための、又は断熱材、防音材もしくは吸音材としての、又は防火用のための、及び/又は低密度の建築材料としての、請求項11に記載の無機発泡体、請求項12に記載の気泡材料、及び/又は請求項13に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマーベースの粒子安定化無機発泡体を製造するための方法に、ジオポリマーベースの粒子安定化無機発泡体に、該ジオポリマーベースの粒子安定化無機発泡体を硬化及び任意に乾燥させることにより得られる気泡材料に、及びジオポリマーベースの粒子安定化無機発泡体を提供するための無機発泡体配合物を製造するための組成物に関する。
【0002】
無機発泡体は、絶縁材料として、例えば断熱材、防音材又は吸音材として、及び低密度の建築材料として使用されうる。有機ポリマーベースの発泡体と対照的に、この材料は、環境に優しく、丈夫であり、かつ不燃性である。後者は、防火の分野での適用も受け入れられてよい。発泡体は、一般に、界面活性剤又は粒子の使用により安定化されうる。界面活性剤により安定化された無機発泡体は、典型的に、連続気泡発泡体構造を有する。しかしながら、特に興味深いものは、独立気泡発泡体であり、それというのも独立気泡発泡体は、改善された機械的安定性に加えて、改善された断熱特性を有するからである。
【0003】
独立気泡発泡体構造を有する安定な無機発泡体は、気泡安定剤として無機粒子を使用することにより得られることが見出されている。典型的に、両親媒性分子の存在は、使用される粒子の界面活性を引き起こすために要求される。国際公開特許第2007/068127号(WO 2007/068127 A1)は、例えば没食子酸プロピルと組み合わせて、コロイド状粒子による湿潤発泡体の安定化を記載している。Juilleratら(F. K. Juillerat, U. T. Gonzenbach, P. Elser, A. R. Studart, L. J. Gauckler, J. Am. Ceram. Soc. 2011, 94, 77-83)は、没食子酸プロピル分子の吸着によって部分的に疎水化されるコロイド状Al23粒子によるセラミック発泡体の安定化を開示している。米国特許番号第9,540,287号(US 9,540,287 B2)は、発泡セメント状スラリーを安定化するためにセメント状粒子と組み合わせた没食子酸プロピル分子の使用を開示している。独国特許公開番号第102014103258号(DE 102014103258 A1)に従って、石膏無機発泡体は、両親媒性分子、例えばヘプチルアミンと組み合わせて無機粒子によって安定化されうる。
【0004】
特に興味深いものは、不燃性断熱材としてアルカリ活性化アルミノケイ酸塩(ジオポリマー)ベースの無機発泡体である。しかしながら、界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体は、連続気泡発泡体構造を有し、したがって、絶縁特性及び機械的安定性に関する改善の余地がある。さらに、界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体の気流抵抗特性を改善することが必要であり、それらの気流抵抗は、典型的に200kPa s/m2未満、又はさらに50kPa s/m2未満、又はある場合にはさらに10kPa s/m2未満である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、先行技術において記載されたジオポリマー発泡体と比較して改善された特性を有するジオポリマーベースの独立気泡無機発泡体を提供することであった。特に、低い乾燥密度で改善された圧縮強度と組み合わせて十分な熱伝導率を呈するジオポリマーベースの無機発泡体を提供することが目的であった。さらに、改善された気流抵抗特性を有するジオポリマーベースの不燃性無機発泡体を提供することが目的であった。
【0006】
驚くべきことに、前記目的は、以下に記載する本発明により達せられることが見出されている。特に、(i)少なくとも1つの無機粒子の群、(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、並びに(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤とを含む少なくとも1つの無機バインダー混合物を組み合わせることにより、安定なジオポリマーベースの無機発泡体が得られることを発見している。本発明による無機発泡体は、独立気泡構造、及び熱伝導率に関する有利な特性、並びに低い乾燥密度での圧縮強度を有する。さらに、本発明の驚くべき発見は、本発明の無機発泡体の気流抵抗が、界面活性剤で安定化させた無機発泡体の気流抵抗と比較して著しく改善できたことであった。
【0007】
一実施形態において、本発明は、
(1)以下、
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む、少なくとも1つの無機バインダー混合物、
(iv)水、並びに任意に
(v)少なくとも1つの添加剤
を混合するステップ、及び
(2)得られた発泡体配合物を、化学的、物理的又は機械的発泡により発泡するステップ
を含む、無機発泡体を製造するための方法に関し、ここで、少なくとも1つの両親媒性化合物は、少なくとも1つの極性頭部基及び少なくとも1つの無極性尾部基を有する両親媒性化合物を含み、少なくとも1つの頭部基は、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、アルコール、アミン、アミド、ピロリジン、ガレート及びカルボン酸(すなわち-C(O)OH基)からなる群から選択され、かつ少なくとも1つの尾部基は、炭素原子2~8個を有する脂肪族基又は芳香族基又は環状基から選択され、ここで炭素原子は、C1~C8-アルキル、第二級-OH及び第二級-NH2から選択される1つ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換されている。
【0008】
本明細書にわたって、「第二級-OH」及び「第二級-NH2」は、得られた置換された尾部基が第二級アルコール又は第二級アミンを形成することを意味するものとする。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって得られる無機発泡体に関する。
【0010】
さらなる他の実施態様において、本発明は、
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む少なくとも1つの無機バインダー混合物、
(iv)水、並びに任意に
(v)少なくとも1つの添加剤
を含む無機発泡体に関する。
【0011】
さらなる他の実施形態において、本発明は、本明細書において定義した無機発泡体を硬化及び任意に乾燥させることによって得られる気泡材料に関する。
【0012】
さらなる他の実施態様において、本発明は、成分として
(i)少なくとも1つの無機粒子の群、
(ii)少なくとも1つの両親媒性化合物、
(iii)少なくとも1つの無機バインダー混合物であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む少なくとも1つの無機バインダー混合物、
を含む無機発泡体配合物を製造するための組成物に関し、ここで、
成分(i)、(ii)及び(iii)は別々に存在するか、又は
成分(i)及び(ii)は混合物として存在し、かつ成分(iii)は別に存在するか、又は
成分(i)、(ii)及び(iii)は混合物として存在する。
【0013】
本発明をさらに図1及び2により詳述する。図1は比較目的のために提供され、連続気泡構造を有する界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体の図を示す(比較例1)。図2は、主に独立気泡構造を有する本発明による無機発泡体の図を示す(実施例1)。双方の図において、左下にあるスケールバーは2mmである。
【0014】
以下の定義は、本発明の実施形態に関連する。
【0015】
可測単位に関する「約」という用語は、該可測単位の標準偏差をいう。かかる偏差は、測定装置の精度に依存し、又は当業者により予測される統計的偏差に依存する。「約」という用語は、±15%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の偏差を意味することが理解されるべきである。
【0016】
「質量%」という用語は、特に明記しない限り、パーセントでの、水を除く全ての成分の質量の合計に対するそれぞれの成分の質量の割合をいう。したがって、少なくとも1つのアルカリ活性化剤は、その固体含有率に関して算出される。全ての水は成分(iv)として算出される。体積%という用語は、パーセントでの、全ての成分の体積の合計に対するそれぞれの成分の体積の割合をいう。
【0017】
「含む(comprising)」という用語の意味は、任意の追加の不特定の特徴として全ての具体的に言及される特徴を包含するものと解釈されるべきであり、一方で「からなる(consisting of)」という用語は、規定された特徴のみを含む。さらに、それぞれ実際の場合において、本発明の配合物の特定及び未特定の成分の割合の全ての合計は、常に100%であることを意図している。
【0018】
本発明による無機発泡体の製造方法、無機発泡体、無機発泡体を硬化及び任意に乾燥させることにより得られる気泡材料、並びに無機発泡体配合物を製造するための組成物の記載内容において、以下の定義が関連する。
【0019】
一般に、「無機発泡体配合物」及び「無機発泡体」という用語は区別される。無機発泡体配合物は、水及び任意に少なくとも1つの添加剤を添加することにより、本明細書において定義された無機発泡体配合物を製造するための適した組成物から得られてよい。そして、無機発泡体配合物は、機械的、物理的又は化学的発泡によって無機発泡体を製造するために使用されてよい。新たに製造された(すなわち硬化していない)無機発泡体は、硬化及び任意に乾燥させることによって新たに製造された無機発泡体から得られる硬化させた無機発泡体、すなわち気泡材料と区別されるべきである。特に明記しない限り、本明細書で使用される「無機発泡体」という用語は、新たに製造した無機発泡体をいい、「気泡材料」という用語は、硬化及び任意に乾燥させた無機発泡体をいう。
【0020】
無機発泡体は三相系であり、ここで1つの相は気体であり、1つの相は液体であり、かつ1つの相は固体である。したがって、無機発泡体は気体を含むことを理解すべきである。気相は、液相及び固相から得られた気泡壁により分けられる微細な気泡として存在する。気泡壁は、交点で互いに交わる縁で互いに交わり、それによりフレーム構造を形成する。無機発泡体中の気相の含有率は、20~99体積%、好ましくは50~98体積%の範囲で変動しうる。液相は、好ましくは水性相であり、その結果無機発泡体は、典型的に水も含有する。しかしながら、水は乾燥により部分的に除去されうる。無機発泡体の固相は、無機バインダーを含有する。無機発泡体は、連続気泡発泡体又は独立気泡発泡体であってよい。独立気泡発泡体において、気体は、気泡壁により完全に覆われている。典型的に、同一の密度で、独立気泡発泡体は、連続気泡発泡体よりも頑丈である。したがって、それらの改善された機械的安定性により独立気泡発泡体が好ましい。
【0021】
気泡材料は、無機発泡体を硬化及び任意に乾燥させることにより無機発泡体から得られる。
【0022】
本明細書において示される水は、純粋な脱イオンH2O、又は0.1質量%までの不純物及び/又は塩を含む水、例えば通常の水道水を示すことができる。
【0023】
発泡体中に存在する気相は、機械的、物理的又は化学的発泡により導入されてよい。気体の制限のない例は、空気、窒素、希ガス、二酸化炭素、炭化水素、水素、酸素、及びそれらの混合物を含有する。
【0024】
発泡体中に存在する気相は、それぞれ気体の存在下で機械的発泡により導入されてよい。機械的発泡は、ミキサーを使用することによって、又は振動プロセスによって、又はステータ-ロータプロセスによって実施されうる。
【0025】
気相は、物理的又は化学的発泡により発泡体に導入されてもよく、その際物理的又は化学的発泡プロセスは、気体を遊離するために適している。好ましくは、蒸発、分解又は水及び/又は酸と反応して、気体を遊離させる膨張剤を使用する。膨張剤の制限のない例は、過酸化物、例えば過酸化水素、ジベンジルペルオキシド、ペルオキソ安息香酸、ペルオキソ酢酸、アルカリ金属過酸化物、過塩素酸、ペルオキソ一硫酸、ジクミルペルオキシド又はクミルヒドロペルオキシド;イソシアネート、カーボネート及びジカーボネート、例えばCaCO3、Na2CO3及びNaHCO3、好ましくは酸、例えば鉱酸と組み合わせて使用されるもの;金属粉末、例えばアルミニウム粉末;アジド、例えばメチルアジド;ヒドラジド、例えばp-トルエンスルホニルヒドラジド;ヒドラジンである。
【0026】
化学的発泡は、触媒の使用により促進されうる。適した触媒は、好ましくはMn2+、Mn4+、Mn7+又はFe3+カチオンを含む。代わりに、酵素カタラーゼを触媒として使用してよい。適した触媒の制限のない例は、MnO2及びKMnO4である。かかる触媒は、好ましくは過酸化物膨張剤と組み合わせて使用される。
【0027】
本発明による無機発泡体の製造方法、無機発泡体、無機発泡体を硬化及び任意に乾燥させることにより得られる気泡材料、並びに無機発泡体配合物を製造するための組成物において使用される成分に関するさらなる詳細を、以下で提供する。
【0028】
本明細書において使用される「無機粒子」という用語は、好ましくは、以下からなる群から選択される無機粒子をいう:
・ 酸化物であって、純金属酸化物及び混合金属酸化物(特に、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、スピネル、セリウム-ガドリニウムオキシド、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化チタン及び酸化セリウム)を含む酸化物;
・ 水酸化物(特に、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、殊に水酸化アルミニウム);
・ 炭化物(特に炭化ケイ素、炭化ホウ素);
・ 窒化物(特に窒化ケイ素、窒化ホウ素);
・ リン酸塩(特に、リン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト);
・ 炭酸塩(特に、炭酸ニッケル、炭酸カルシウム(粉砕石灰岩又は沈降炭酸カルシウム)、炭酸マグネシウム);
・ ケイ酸塩(特に、二酸化ケイ素、シリカヒューム、フライアッシュ、石英、粉砕ガラス、スラグ、ケイ酸カルシウム、ムライト、コージエライト、粘土鉱物、例えばカオリン又はベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、ケイ藻土、殊にシリカヒューム、粘土鉱物、ケイ酸ジルコニウム、特に粘土鉱物);
・ 硫酸塩(特に硫酸カルシウム)。
【0029】
上記で例示された無機粒子(i)は、無機バインダー(iiia)、又はアルカリ活性剤(iiib)、又は追加の無機バインダー(iiic)と同一ではないことを理解すべきである。さらに、無機粒子(i)は、好ましくは、無機バインダー(iiia)とアルカリ活性化剤(iiib)とのジオポリマー形成反応に関与しない。
【0030】
好ましくは、無機粒子は、炭酸塩及び/又は酸化物から得られる。好ましい酸化物は、酸化アルミニウム(Al-Mgスピネルを含む)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム及び酸化亜鉛、特に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される、純金属酸化物及び混合金属酸化物を含む。好ましい炭酸塩は、炭酸カルシウムである。
【0031】
本明細書において使用される「無機粒子の群」という用語は、ある種類の無機粒子の場合に複数として理解されるべきである。無機粒子の少なくとも1つ、すなわち1つ以上の群が本発明に従って使用されうることも理解されるべきであり、これは、前記で定義した無機粒子の種々の混合物も可能であることを意味する。
【0032】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機粒子の群は、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
より好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機粒子の群は、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及びCaCO3粒子、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
少なくとも1つの無機粒子の群の粒径は、広範囲で変動しうる。粉末(一次粒子)について、適したメジアン粒径D50は、30nm~300μm、好ましくは100nm~250μm、より好ましくは100nm~150μm、さらにより好ましくは100nm~100μmの範囲である。さらなる実施形態において、適した粒径は、100nm~10μm、好ましくは100nm~2μmの範囲である。粒径分布はさほど重要ではないことを見出した。良好な発泡体は、狭い粒径分布及び広い粒径分布で得られる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機粒子の群は、30nm~300μmの範囲の動的光散乱により測定されたメジアン粒径D50を有する。
【0036】
「粒径(Dx)」という用語は、粒子分布の直径をいい、その際粒子のx%がより小さい直径を有する。したがって、D50粒径は、メジアン粒径である。Dx粒径は、例えばレーザー回折又は動的光散乱(DLS)法により測定されうる。本発明に従って、好ましくはISO 22412:2008による動的光散乱(DLS)が使用される。動的光散乱(DLS)(時に、準弾性光散乱(Quasi-Elastic Light Scattering)(QELS)ともいう)は、典型的にサブミクロン領域での分子及び粒子のサイズ及びサイズ分布を測定するための非侵襲的でよく確立された技術である。本発明において、液体、好ましくは水又はエタノール中で分散させた粒子が特徴付けられる。懸濁液中の粒子又は分子のブラウン運動は、レーザー光を異なる強度で散乱させる。これらの強度ゆらぎの分析は、ブラウン運動の速度、したがってStokes-Einsteinの関係を使用する粒径をもたらす。分布は、体積分布(Dv)、表面分布(Ds)、又は数分布(Dn)であってよい。本明細書の記載内容において、Dx値は、数分布をいい、その際粒子のx(数)%がより小さい直径を有する。
【0037】
「両親媒性化合物」という用語は、当業者に公知であり、無極性部分(尾部又は基Rとしても同定される)及び極性部分(頭部基としても同定される)を有する有機化合物をいう。したがって、適した両親媒性分子は、典型的に共有結合によって、頭部基に連結した尾部を含む。かかる両親媒性分子は、典型的に、1つの尾部基及び1つ頭部基を含むが、1つ以上の頭部基を含んでもよい。
【0038】
尾部は、脂肪族(直鎖又は分岐鎖)又は環状(脂環式又は芳香族)であってよく、置換基を保有しうる。かかる置換基は、例えばn≦8である-Cn2n+1、第二級-OH、第二級-NH2等である。好ましい尾部は、炭素原子2~8個の任意に置換された直鎖炭素鎖であり、より好ましくは炭素原子3~8個、4~8個又は5~8個の直鎖炭素鎖である(「第二級」の定義については前記を参照されたい)。
【0039】
尾部に連結される頭部基は、好ましくはイオン性基、イオン化可能な基及び/又は極性基である。可能な頭部基及び対応する塩の例を、以下の表1に明記する(その際尾部はRとして示す)。
【0040】
【表1】
【0041】
好ましい頭部基は、カルボン酸、ガレート、アミン及びスルホネートから選択される。特に好ましい頭部基は、カルボン酸(すなわち-C(O)OH基)及びガレートから選択される。ガレートが最も好ましい。好ましいカルボン酸はエナンチオ酸(ヘプタン酸)である。好ましいガレートは没食子酸ブチルである。好ましいアミンはヘプチルアミンである。
【0042】
好ましくは、両親媒性分子は、0.5mol/l以下の濃度で、空気-水界面の表面張力を65mN/m以下の値まで低減させる。
【0043】
好ましくは、両親媒性分子は、10μmol/lより高い臨界ミセル濃度(CMC)を有し、及び/又は1μmol/lより高い溶解度を有する。
【0044】
両親媒性化合物の少なくとも1つ、すなわち1つ以上の要素が本発明に従って使用されうることが理解されるべきであり、これは、前記で定義した両親媒性化合物の種々の混合物も可能であることを意味する。
【0045】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの両親媒性化合物は、少なくとも1つの極性頭部基及び少なくとも1つの無極性尾部基を有する両親媒性化合物を含み、
ここで、少なくとも1つの頭部基は、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、アルコール、アミン、アミド、ピロリジン、ガレート及びカルボン酸からなる群から選択され、
かつ少なくとも1つの尾部基は、炭素原子2~8個を有する脂肪族基又は芳香族基又は環状基から選択され、炭素原子は、任意に、C1~C8-アルキル、第二級-OH及び第二級-ary-NH2から選択される1つ以上の同一又は異なる置換基で置換されていてよい。
【0046】
本発明のより好ましい実施形態において、少なくとも1つの両親媒性化合物は、カルボン酸、ガレート及びアミンからなる群から選択される少なくとも1つの頭部基、並びに炭素原子2~8個を有する脂肪族基から選択される少なくとも1つの尾部基を有する両親媒性化合物を含む。
【0047】
本明細書において定義される無機粒子と、本明細書において定義される両親媒性化合物との組合せにより、疎水化無機粒子が形成されることが理解されるべきである。「疎水化無機粒子」という用語は、粒子の表面を両親媒性分子で改質させ、無機粒子の親水性を低減させた無機粒子をいう。本記載内容における表面改質は、両親媒性化合物が粒子の表面上に吸着されていることを意味する。
【0048】
好ましい実施形態において、無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、0.5~160μmol/m2、好ましくは1~100μmol/m2、より好ましくは2~70μmol/m2及び特に5~60μmol/m2である。他の好ましい実施形態において、無機粒子は、少なくとも1つの無機バインダー混合物の量に対して0.1~25質量%、好ましくは0.25~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、及び特に1~5質量%の量で提供される。
【0049】
疎水化無機粒子は、本明細書において定義された無機バインダー混合物ベースの無機発泡体を安定化するために適している。好ましい実施形態において、発泡体配合物中の無機バインダー混合物に対する水の質量比は、0.1~2.0、好ましくは0.2~1.5、より好ましくは0.3~1.2、及び特に0.3~0.9である。
【0050】
無機バインダーは、水性環境で硬化させた(水硬性)又は空気の存在下で硬化させた(気硬性)無機化合物である。例えば、ポルトランドセメントは、水硬性無機バインダーであり、一方で石膏は、気硬性バインダーである。潜在水硬性バインダーは、アルカリ活性化剤にさらされた場合にのみ水硬性になるバインダーをいう。
【0051】
本明細書の記載内容において、無機バインダー混合物(iii)であって、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiib)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ活性化剤と
を含む、無機バインダー混合物が使用される。
【0052】
高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びフライアッシュの無機バインダーは、ジオポリマーバインダーの群に属する。ジオポリマーは、例えば米国特許番号第4,349,386号(US 4,349,386)、国際公開番号第85/03699号(WO 85/03699)及び米国特許番号第4,472,199号(US 4,472,199)において記載されている。
【0053】
ジオポリマーは、主に、アルカリ水性環境下で硬化させたSiO2及び/又はAl23、例えばポリ(シアレート)、ポリ(シロキソ)、ポリ(シアレート-シロキソ)、又はポリ(シアレート-ジシロキソ)を基礎とするバインダーである。シアレートは、ケイ素-オキソ-アルミニウムの省略形である。ジオポリマー材料は、ゼオライトに類似しているが、しかし微細構造は非晶質であり、結晶質ではない。これらのバインダーは、Fe23、TiO2、CaO、MgO、NaO、又はK2Oに基づく化合物も含んでよい。純粋なジオポリマーは、一般に低いカルシウム含有率を有する。国際公開番号第2011/064005号(WO 2011/064005 A1)は、CaO12~25質量%を含み、化学的攻撃に耐性のある建築化学製品の製造を可能にする、無機バインダーシステムを記載している。さらに、ジオポリマーの制限のない例は、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、活性白土、ポゾラン、又はそれらの混合物を含む。ポゾランは、ケイ質、又はケイ質及びアルミニウム含有の化合物である。
【0054】
本発明の目的のために、「潜在水硬性バインダー」は、好ましくは、(CaO+MgO):SiO2のモル比が0.8~2.5及び特に1.0~2.0であるバインダーである。一般的に、前記潜在水硬性バインダーは、工業用及び/又は合成スラグから、特に高炉スラグ、電熱リンスラグ、鋼スラグ及びそれらの混合物から選択されてよく、「ポゾランバインダー」は、一般的に、非晶質シリカ、好ましくは沈降シリカ、ヒュームドシリカ及びマイクロシリカ、粉砕ガラス、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、フライアッシュ、好ましくは褐炭フライアッシュ及び硬質石炭フライアッシュ、天然ポゾラン、例えば凝灰岩、トラス及び火山灰、天然及び合成ゼオライト、並びにそれらの混合物から選択されてよい。
【0055】
本明細書において使用される「スラグ」という用語は、溶錬プロセスの副生成物、又は合成スラグをいう。溶錬プロセスの主な使用は、鉱石、スクラップ又は異なる金属を含む材料混合物を、所望の金属を金属層として取り出し、望ましくない金属酸化物、例えばケイ酸塩、アルミナ等をスラグとして残した形に変換することである。
【0056】
高炉スラグ(BFS)は、高炉中で鉄鉱石を溶錬する間の副生成物として形成される。他の材料は、高炉水砕スラグ(GBFS)及び微粉砕されている高炉水砕スラグである高炉スラグ微粉末(GGBFS)である。高炉水砕スラグ微粉末は、源及び処理方法に依存する粉砕の細かさ及び粒径分布の点で異なり、ここで粉砕の細かさは反応性に影響する。ブレーン値は、粉砕の細かさについてのパラメータとして使用され、典型的に200~1000m2kg-1、好ましくは300~500m2kg-1の大きさの状態を有する。より微細な粉砕は、より高い反応性をもたらす。しかし、本発明の目的のために、「高炉スラグ」という表現は、挙げられた処理、粉砕、及び品質の全てのレベルから生じる材料(すなわちBFS、GBFS及びGGBFS)を含むことを意図している。高炉スラグは、一般に、30~45質量%のCaO、約4~17質量%のMgO、約30~45質量%のSiO2及び約5~15質量%のAl23、典型的に約40質量%のCaO、約10質量%のMgO、約35質量%のSiO2及び約12質量%のAl23を含む。
【0057】
非晶質シリカは、好ましくはX線非晶質シリカ、すなわち粉末回折法では結晶性が認められないシリカである。本発明の非晶質シリカ中のSiO2の含有率は、有利には少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%である。沈降シリカは、水ガラスから出発する沈降プロセスにより工業規模で得られる。いくつかの製造プロセスからの沈降シリカは、シリカゲルとも言われる。
【0058】
マイクロシリカは、主に非晶質SiO2粉末を含む微粉末であり、ケイ素又はフェロシリコン製造の副生成物である。粒子は、直径約100nm、及び比表面積約15~約30m2-1を有する。
【0059】
ヒュームドシリカは、水素/酸素火炎中でのクロロシラン、例えば四塩化ケイ素の反応によって製造される。ヒュームドシリカは、比表面積50~600m2-1を有する粒子直径5~50nmの非晶質SiO2粉末である。
【0060】
メタカオリンは、カオリンを脱水した場合に製造される。100~200℃でカオリンは物理的に結合した水を放出するが、500~800℃では脱ヒドロキシル化が起こり、格子構造の崩壊及びメタカオリン(Al2Si27)の形成が起こる。したがって、純メタカオリンは、約54質量%のSiO2及び約46質量%のAl23を含む。
【0061】
アルミノケイ酸塩は、アルミニウム、ケイ素及び酸素を含む鉱物であり、SiO2及びAl23の含有率を参照することで表現されうる。それらはカオリン及び他の粘土鉱物の主成分である。アンダルサイト、カヤナイト、及びシリマナイトは、Al2SiO5の組成を有する天然に生じるアルミノケイ酸塩鉱物である。
【0062】
バーントシェール、特にバーントオイルシェールは、天然シェールの燃焼及び続く粉砕により、約800℃の温度で得られる。
【0063】
ジオポリマーのための適した原材料の概要は、例えばCaijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pp. 6-63において見出される。
【0064】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機バインダーは、高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機バインダーはメタカオリンである。
【0065】
前記アルカリ活性化剤は、無機バインダー、すなわちジオポリマーバインダーを活性化させて、潜在水硬性バインダーを水硬性にするアルカリ環境を確立するために要求される。
【0066】
式MOHのアルカリ金属水酸化物及びmSiO2×nM2Oのアルカリ金属ケイ酸塩からのアルカリ活性化剤を選択することが好ましく、ここで、Mはアルカリ金属、好ましくはLi、NaもしくはK、又はそれらの混合物であり、かつm:nのモル比は、≦4.0、好ましくは≦3.0、さらに好ましくは≦2.0、特に≦1.70である。
【0067】
アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは水ガラス、特に好ましくは水性水ガラス、及び特にナトリウム水ガラス又はカリウム水ガラスである。しかしながら、リチウム水ガラス又はアンモニウム水ガラス又は前記水ガラスの混合物を使用することも可能である。前記したm:n比(「係数」ともいう)は、好ましくは、成分の反応が不完全である可能性が高いため、超えてはならない。非常に小さい係数、例えば約0.2を使用することも可能である。より高い係数を有する水ガラスは、適した水性アルカリ金属水酸化物を使用することによって本発明の範囲で係数に使用前に調節されるべきである。
【0068】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのアルカリ活性化剤は水ガラスである。
【0069】
「水ガラス」という用語は、水溶性であるアルカリ金属ケイ酸塩をいう。水ガラスは、アルカリ金属炭酸塩とケイ砂(二酸化ケイ素)との反応により得られる。しかしながら、それらは、シリカと適した水性アルカリ金属水酸化物との反応の混合物から製造されてもよい。水ガラスの制限のない例は、Na2SiO3、K2SiO3及びLi2SiO3を含む。無水型に加えて、水ガラスの種々の水和物も存在する。典型的な微量不純物は、元素Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、及びTiに基づく。アルカリ金属とケイ酸塩との割合は変動しうる。この割合は、前記したmSiO2とnM2Oとのモル比に関連して定義される。割合m:nについての典型的な値は、4より小さい、3より小さい、2より小さい、又は約1.7の値である。
【0070】
有利な係数範囲でのカリウム水ガラスは、非常に吸湿性があるため主に水溶液として販売されており、有利な係数範囲でのナトリウム水ガラスも固体として市販されている。水性水ガラス溶液の固体含有率は、一般に20質量%~60質量%、好ましくは40~60質量%である。
【0071】
アルカリ活性化剤の好ましい量は、1~55質量%、特に10~50質量%である。
【0072】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機バインダー混合物(iii)は、さらに、少なくとも1つの追加の無機バインダー(iiic)、好ましくはセメント、硫酸カルシウム及び/又はフライアッシュを含む。特に好ましい実施形態において、少なくとも1つの無機バインダー混合物は、ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム、フライアッシュ及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの追加の無機バインダーを含む。追加の無機バインダー(iiic)の量は、存在する場合に、合計の無機発泡体配合物に対して、30質量%未満、好ましくは25質量%未満、より好ましくは20質量%未満である。
【0073】
セメントは、無機の、微粉砕した水硬性バインダーである。種々のタイプのセメントは、DIN EN 197-1(11/2011)に従って、カテゴリーCEM I~Vに分類される。これらの種々のセメントは、種々の腐食剤に対する安定性が互いに異なり、したがって、これらのセメントは、用途が異なる。
【0074】
CEM Iセメント(ポルトランドセメントとも言われる)は、約70質量%のCaO及びMgO、約20質量%のSiO2、約10質量%のAl23及びFe23を含む。このセメントは、石灰岩、チョーク及び粘土を粉砕及び焼付けることにより得られる。CEM IIセメントは、低い(約6~約20質量%)又は中程度の(約20~約35質量%)量の追加の成分を有するポルトランドセメントである。このセメントは、さらに、高炉スラグ、ヒュームドシリカ(最大10質量%)、天然ポゾラン、天然焼成ポゾラン、フライアッシュ、バーントシェール、又はそれらの混合物を含んでよい。CEM IIIセメント(高炉セメントとも言われる)は、スラグ36~85質量%を含んでいるポルトランドセメントから構成される。CEM IVセメント(ポゾランセメントとも言われる)は、ポルトランドセメントに次いで、ポゾラン、シリカヒューム及びフライアッシュの混合物の11~65%を含む。CEM Vセメント(複合セメントとも言われる)は、ポルトランドセメントに次いで、スラグ、又は天然ポゾラン、焼成ポゾラン、及びフライアッシュの混合物の18~50質量%を含む。さらに、種々のタイプのセメントは、追加の無機の微粉砕した鉱物化合物5質量%を含んでよい。
【0075】
フライアッシュは、特に発電所における石炭の燃焼中に生成され、種々の組成の微粒子を含む。フライアッシュの主な成分は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び酸化カルシウムである。クラスCフライアッシュ(褐炭フライアッシュ)は、国際公開番号第08/012438号(WO 08/012438)に従って、約10質量%のCaOを含み、一方でクラスFフライアッシュ(硬質炭フライアッシュ)は、8質量%未満、好ましくは4質量%未満、及び典型的には約3質量%のCaOを含む。
【0076】
「アルミン酸カルシウムセメント」という用語は、主にCaO×Al23を含むセメントをいう。それらは、例えば、酸化カルシウム(CaO)又は石灰岩(CaCO3)及びボーキサイト又はアルミン酸塩を共に溶融することによって得られてよい。アルミン酸カルシウムセメントは、約20~40質量%のCaO、約5質量%までのSiO2、約35~80質量%のAl23、及び約20質量%までのFe23を含む。アルミン酸カルシウムセメントは、DIN EN 14647(01/2006)に従って定義される。
【0077】
「スルホアルミン酸カルシウムセメント」という用語は、イーリマイト(ye'elimite)及び硫酸カルシウムを含むセメントをいう。硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4×2H2O)、硫酸カルシウム半水和物(CaSO4×1/2 H2O)及び硫酸カルシウム無水物(CaSO4)として提供されうる。天然に生じる石膏はCaSO4×2H2Oである。しかしながら、焼殺石膏は、一般式CaSO4×nH2O(0≦n<2である)に従った種々の水和状態であってよい。
【0078】
さらに、種々の添加剤を本発明に従って使用してよい。好ましい実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、pH調節剤、充填剤、促進剤、抑制剤、レオロジー調節剤、流動化剤、繊維、界面活性剤、触媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
レオロジー調節剤は、粘度及びしたがって流動挙動を調整し、粘稠度、耐久性、及び適用特性の良好なバランスを確実にする。これらの調節剤は、合成ポリマー(例えばアクリルポリマー)、セルロース、シリカ、デンプン又は粘土を基礎としうる。
【0080】
流動化剤は、分散剤として機能して、粒子分離を回避し、かつレオロジーを改善し、したがって懸濁の作業性を改善するポリマーである。流動化剤は、一般に4つのカテゴリーに分けることができる:リグノスルホン酸塩、スルホン酸メラミン、スルホン酸ナフタレン、及び櫛形ポリマー(例えば、ポリカルボキシレートエーテル、ポリ芳香族エーテル、カチオンコポリマー、及びそれらの混合物)。
【0081】
無機発泡体の硬化時間は、抑制剤/促進剤と言われる特定の化合物の添加によって延長/短縮することができる。抑制剤は、リグノスルホン酸塩、セルロース誘導体、ヒドロキシルカルボン酸、有機リン酸エステル、合成抑制剤、及び無機化合物の群に分けることができる。抑制剤の制限のない例は、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトネート、無水マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー、ホウ砂、ホウ酸及びZnOである。促進剤の制限のない例は、CaCl2、KCl、Na2SiO3、NaOH、Ca(OH)2、及びCaO×Al23、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムである。
【0082】
繊維(又は安定化繊維)を発泡プロセス中に添加して、発泡体の安定性をさらに増加させることができる。かかる繊維は、種々の材料、例えば岩石(例えば玄武岩)、ガラス、炭素、有機ポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド及びポリビニルアルコール)、セルロース、リグノセルロース、金属(例えば鉄又は鋼鉄)、及びこれらの混合物から製造されうる。有機繊維が好ましい。繊維の量は、少なくとも1つの無機バインダー混合物に対して、3質量%まで、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%、さらにより好ましくは0.1~1質量%、及び特に0.2~0.7質量%であってもよい。繊維は、好ましくは200mmまで又は120mmまで、好ましくは100mmまで、より好ましくは50mmまで、最も好ましくは25mmまで、及び特に20mmまでの長さを有し、かつ100μmまでの直径を有する。
【0083】
「充填剤」という用語は、主に、発泡体の特性を損なうことなく体積を増加させるために添加されうる材料をいう。前記充填剤は、ケイ砂又は粉末状石英、炭酸カルシウム、岩粉、低密度充填剤(例えばバーミキュライト、パーライト、珪藻土、雲母、タルク粉末、酸化マグネシウム、気泡ガラス、中空球、フォームサンド(foam sand)、粘土、ポリマー粒子)、顔料(例えば二酸化チタン)、高密度充填剤(例えば硫酸バリウム)、金属塩(例えば亜鉛塩、カルシウム塩等)、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。本明細書で適した粒度は、特に500μmまでである。平均粒度が、300μmまで、好ましくは150μmまでであることが特に好ましい。
【0084】
本明細書において定義される両親媒性化合物に加えて使用されてよい界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン性界面活性剤及びタンパク質又は合成ポリマーが含まれる。しかしながら、界面活性剤は、連続気泡発泡体を生じる傾向があるため、好ましくない。
【0085】
非イオン性界面活性剤には、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコール(主にセチル及びステアリルアルコールを含む)、並びにオレイルアルコールが含まれる。さらに例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(Brij) CH3-(CH210~16-(O-C241~25-OH、例えばオクタエチレングリコールモノドデシルエーテル又はペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリプロピレングリコールアルキルエーテルCH3-(CH210~16-(O-C361~25-OH;グリコシドアルキルエーテルCH3-(CH210~16-(O-グリコシド)1~3-OH、例えばデシルグリコシド、ラウリルグリコシド、オクチルグリコシド;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルC817-(C64)-(O-C241~25-OH、例えばTriton X-100;ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルC919-(C64)-(O-C241~25-OH、例えばノノキシノール-9;グリセロールアルキルエステル、例えばラウリル酸グリセリル;ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、例えばポリソルベート;ソルビタンアルキルエステル、例えばスパン;ココアミドMEA、ココアミドDEA;ドデシルジメチルアミンオキシド;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー、例えばポロキサマー;ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)を含む。好ましい非イオン性界面活性材は、アルキルポリグルコシドも含む。アルキルポリグルコシドは、一般に、式H-(C6105m-O-R1を有し、式中、(C6105)は、グルコース単位であり、かつR1は、C6~C22-アルキル基、好ましくはC8~C16-アルキル基、及び特にC8~C12-アルキル基であり、mは1~5である。
【0086】
アニオン性界面活性剤は、その頭部に、アニオン性官能基、例えば、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びカルボキシレートを含む。主な硫酸アルキルには、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム、SLS又はSDS)、及び関連するアルキルエーテルスルフェート、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はSLES)、及びミレス硫酸ナトリウムが含まれる。他に、ドクセート(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホネート、アルキルアリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェートが含まれる。好ましいカルボキシレートには、アルキルカルボキシレート、例えばステアリン酸ナトリウムが含まれる。より具体的な種には、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム及びカルボキシレートベースのフッ素系界面活性剤、例えばペルフルオロノナン酸エステル、ペルフルオロオクタン酸エステル(PFOA又はPFO)が含まれる。
【0087】
カチオン性界面活性剤には、pHに依存して、第一級、第二級又は第三級アミンが含まれ、第一級及び第二級アミンは、10未満のpHで正電荷になる。例えばオクテニジン二塩酸塩である。さらに、カチオン性界面活性剤には、永久電荷第四級アンモニウム塩、例えば、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)が含まれる。
【0088】
双極性イオン性(両性)界面活性剤は、同一の分子に付着したカチオン性中心とアニオン性中心の双方を有する。カチオン性の部分は、第一級、第二級もしくは第三級のアミン、又は第四級アンモニウムカチオンを基礎とする。アニオン性の部分は、より可変的であってよく、スルタインCHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)及びコカミドプロピルヒドロキシスルタインであるように、スルホネートを含みうる。ベタイン、例えばコカミドプロピルベタインは、アンモニウムを有するカルボキシレートを有する。最も一般的な生物学的双極性イオン性界面活性剤は、アミン又はアンモニウムを有するリン酸アニオン、例えばリン脂質ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを有する。タンパク質の制限のない例は、ウシ血清アルブミン、卵オバルブミン、ミルクカゼイン又はベータラクトグロブリンである。
【0089】
界面活性剤の割合は、広範囲にわたって変動しうる。界面活性剤は、2.5質量%まで、好ましくは1.5質量%までの量で存在してよい。
【0090】
添加剤として使用されてよい触媒は、化学的発泡剤と組み合わせて使用されてよい触媒である。適した触媒は、発泡剤の記載内容において、前記されており、かつ以下で挙げられる。
【0091】
本発明に従って使用される成分の量に関するさらなる詳細を以下で定義する。
【0092】
前記したように、本発明による成分の量は、好ましくは以下である。特に、
無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、0.5~160μmol/m2であり、及び/又は
無機粒子は、少なくとも1つの無機バインダー混合物の量に対して0.1~25質量%の量で提供され、及び/又は
少なくとも1つの無機バインダー混合物に対する水の質量比は、0.1~2.0である。
【0093】
例示的な一実施形態において、無機粒子表面に対する両親媒性化合物の量は、1~100μmol/m2、好ましくは2~70μmol/m2であり、及び/又は
無機粒子は、少なくとも1つの無機バインダー混合物の量に対して0.25~15質量%の量で提供され、及び/又は
無機バインダー混合物に対する水の質量比は、0.2~1.5である。
【0094】
無機バインダー混合物が、
(iiia)高炉スラグ、マイクロシリカ、メタカオリン、アルミノケイ酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機バインダーと
(iiic)ポルトランドセメント、アルミン酸カルシウムセメント、スルホアルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム、及びフライアッシュ、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの追加の無機バインダーと
を含む場合に、追加の無機バインダー(iiic)の量は、無機発泡体配合物の総量に対して、30質量%未満、好ましくは25質量%未満、及び特に20質量%未満である。
【0095】
前記で説明したように、無機粒子の少なくとも1つの群、すなわち1つ以上の群、及び両親媒性化合物の少なくとも1つ、すなわち1つ以上の要素が使用されてよいことを理解すべきである。前記量は、それぞれ本発明の方法において使用されるか、又は本発明の組成物、無機発泡体もしくは気泡材料中に存在する、両親媒性化合物及び無機粒子の総量をいう。さらに、少なくとも1つの無機バインダー混合物に関する前記量は、本発明の方法で使用されるか、又は本発明の組成物、無機発泡体もしくは気泡材料中に存在する無機バインダーの総量をいう。
【0096】
添加剤の適した量は、広範囲にわたって変動してよく、かつ添加剤のタイプにも依存する。典型的に、少なくとも1つの添加剤は、少なくとも1つの無機バインダーの量に対して、0.0003~30質量%、又は0.03~25質量%の質量比で提供される。しかしながら、充填剤は、より多い量で使用されてもよい。特に、充填剤は、無機バインダーと類似する量で存在してよい。好ましくは、充填剤と少なくとも1つの無機バインダー混合物との質量比は、2:1~1:100、好ましくは1:1~1:10であってよい。
【0097】
本発明の方法に関するさらなる詳細を以下に提供する。本発明の方法の好ましい実施形態において、ステップ(1)は、
(1a)少なくとも1つの無機粒子の群、少なくとも1つの両親媒性化合物、及び任意に少なくとも1つの添加剤を水に分散させて、水性分散液を得るステップ、並びに
(1b)水性分散液を少なくとも1つの無機バインダー混合物と混合するステップ
を含む。
【0098】
ステップ(1a)において、少なくとも1つの無機粒子の群、少なくとも1つの両親媒性化合物、及び任意に少なくとも1つの添加剤を、最初に互いに合し、そして得られた混合物を水に分散させることが好ましいと理解されるべきである。
【0099】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ステップ(2)は、得られた発泡体配合物を化学的発泡により発泡させることを含む。本発明の方法の他の好ましい実施形態において、ステップ(2)は、得られた発泡体配合物を物理的発泡により発泡させることを含む。本発明の方法のさらなる他の好ましい実施形態において、ステップ(2)は、得られた発泡体配合物を機械的発泡により発泡させることを含む。
【0100】
好ましい実施形態において、無機発泡体を製造するための方法のステップ(2)は、得られた発泡体配合物を発泡剤を用いて発泡させること、好ましくは、ステップ(1)において得られた発泡体配合物と、炭酸塩又は重炭酸塩、例えばCaCO3、Na2CO3及びNaHCO3、アルミニウム粉末、p-トルエンスルホニルヒドラジド、過酸化水素、ジベンジルペルオキシド、過塩素酸、ペルオキソ一硫酸、ジクミルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド又はこれらの混合物、より好ましくは過酸化水素とを混合することにより発泡させることを含む。より好ましい実施形態において、ステップ(2)における発泡体配合物の発泡を、発泡剤を用いて、好ましくはステップ(1)で得られた発泡体配合物と、アルミニウム粉末とを又は炭酸塩とを酸の存在下で、又は過酸化水素の水溶液とを任意に触媒の存在下で混合することにより実施する。
【0101】
より好ましい実施形態において、無機発泡体を製造するための方法のステップ(2)は、得られた発泡体配合物を、発泡剤、好ましくは前記で定義した発泡剤を用いて発泡させることを含み、ここで発泡剤は、発泡体配合物の合計量に対して0.1~10質量%の量で添加される。
【0102】
発泡プロセス、特に発泡剤として過酸化物を用いた発泡を適した触媒の添加により促進することが可能である。したがって、好ましい実施形態において、無機発泡体を製造するための方法のステップ(2)は、得られた発泡体配合物を化学的発泡剤により触媒の存在下で発泡させることを含み、ここで、好ましくは、触媒は、Mn2+、Mn4+、Mn7+又はFe3+カチオンを含むか、又は触媒は酵素カタラーゼである。より好ましくは、触媒は、MnSO4、ΜnO2、KMnO4及びこれらの混合物からなる群から選択される。触媒は、発泡体配合物の合計量に対して、0.01~5質量%、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%、及び特に0.1~0.3質量%の量で使用されてよい。
【0103】
好ましい実施形態において、化学的発泡剤は、10~60質量%、好ましくは20~60質量%、及び特に40~60質量%の過酸化水素を含む過酸化水素水溶液として提供される過酸化水素であり、ここで過酸化水素水溶液は、約50質量%の過酸化水素溶液を前提として、発泡体配合物の合計質量に対して、0.1~6質量%、好ましくは0.5~5.0質量%、及び特に1~4質量%の量で添加される。
【0104】
他の好ましい実施形態において、機械的発泡を、好ましくはミキサーを使用することによって、又は振動プロセスによって、又はステータ-ロータプロセスによって実施する。
【0105】
発泡ステップ(2)の後に、本発明による無機発泡体が得られる。好ましい実施形態において、新たに製造した無機発泡体を、ステップ2)の後に密閉容器内で硬化させる。より好ましい実施形態において、新たに製造した無機発泡体を、ステップ2)の後に密閉容器内で少なくとも12時間硬化させる。硬化を、0℃~100℃、好ましくは20℃~80℃の範囲の温度で実施してよい。
【0106】
気泡材料は、前記無機発泡体を硬化、及び任意に乾燥させることにより得られる。本発明による気泡材料は、断熱エレメント、吸音エレメント又は防火エレメントの形であってよく、ここで該エレメントは、それぞれの場合に、例えばシート又は板材であってよい。
【0107】
本発明による無機発泡体及び気泡材料は、独立気泡構造及び以下の有利な特徴を有する。
【0108】
乾燥密度は、典型的に300kg/m3未満、適切には200kg/m3未満、好ましくは150kg/m3未満、及びより好ましくは140kg/m3未満である。乾燥密度が、典型的に、界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体及びそれらをベースとする気泡材料の乾燥密度よりもわずかに低いことが有利である。
【0109】
熱伝導率(DIN EN 12667)は、好ましくは50mW/mK未満、より好ましくは45mW/mK未満、及び特に40mW/mK未満である。一般に、熱伝導率は、界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体及びそれらをベースとする気泡材料の熱伝導率よりも低い。
【0110】
圧縮強度(DIN EN 826)は、好ましくは少なくとも60kPa、好ましくは少なくとも100kPaである。曲げ強度は、好ましくは少なくとも50kPa、好ましくは少なくとも75kPaである。界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体と比較して、圧縮強度は典型的に著しく改善されており、特に圧縮強度は典型的に少なくとも2倍高い。界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体と比較して、曲げ強度は典型的に著しく改善されており、特に曲げ強度は典型的に少なくとも3倍高い。
【0111】
気流抵抗(DIN EN 29 053)は、好ましくは少なくとも100kPa s/m2、より好ましくは少なくとも150kPa s/m2、及び特に少なくとも200kPa s/m2である。気流抵抗は、界面活性剤で安定化させたジオポリマー発泡体及びそれらをベースとする気泡材料の気流抵抗よりも典型的に少なくとも50倍高いことが有利である。
【0112】
本発明を、以下の実施例によりさらに詳述する。
【0113】
実施例
比較例1
ジオポリマー発泡体を、質量パーセントでの原材料の以下の組成から製造した:
20.5質量% メタカオリン(ArgicalTMM 1200S、Imerys)
20.5質量% フライアッシュ(Microsit(登録商標)M10、BauMineral)
7.8質量% アルミン酸カルシウムセメント(Ciment Fondu(登録商標)、Kerneos)
1.2質量% 界面活性剤(アルキルポリグルコシド、Glucopon(登録商標)225 DK、BASF)
0.2質量% PAN繊維(6mm、6.7dtex)
19.5質量% 水
27.4質量% 水ガラス(“Kaliwasserglass K58”、BASF)
2.9質量% NaOH。
【0114】
液体原材料を最初にNaOHと混合した。固体原材料を液体成分に添加し、そして均質なスラリーが生じるまで撹拌した。そして、キッチンミキサーを用いて発泡体を生成した。このようにして得られた発泡体を型に注いだ。硬化反応が起こり、発泡体が凝固し始めた。ジオポリマー発泡体を湿気のある雰囲気下で3日間貯蔵して、適切に硬化させた。その後、これを型から取り出して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0115】
得られたジオポリマー発泡体部分は、300mm×300mm×40mmの寸法を示した。その乾燥密度は144kg/m3であり、その熱伝導率は42.1mW/m.Kであった。圧縮強度は49kPaであり、曲げ強度は28kPaであった。この試料は、4.2kPa s/m2の気流抵抗を特徴とした。この発泡体は、主に連続気孔を示した。
【0116】
実施例1
炭酸カルシウム(Socal 31)79.8質量%、没食子酸ブチル15.1質量%、及び酸化マンガン(IV)5.1質量%を含む混合物を、「発泡体形成粉末」として予備混合した。
【0117】
ジオポリマー発泡体を、質量パーセントでの原材料の以下の組成から製造した:
19.2質量% メタカオリン(ArgicalTMM 1200S、Imerys)
19.2質量% フライアッシュ(Microsit(登録商標)M10、BauMineral)
7.3質量% アルミン酸カルシウムセメント(Ciment Fondu(登録商標)、Kerneos)
2.3質量% 発泡体形成粉末
0.2質量% PAN繊維(6mm、6.7dtex)
23.4質量% 水
26.3質量% 水ガラス(“Kaliwasserglass K58”、BASF)
2.8質量% 過酸化水素(50質量%溶液)。
【0118】
発泡体形成粉末を最初に水に分散させた。そして、その懸濁液を水ガラスに添加した。メタカオリンとフライアッシュの混合物を添加し、そしてその懸濁液を10分間撹拌した。続いて、アルミン酸カルシウムセメントを混和した。15分撹拌した後に、過酸化水素を添加することにより懸濁液の発泡を開始した。このようにして得られたスラリーを型に注ぎ、ここで過酸化水素の分解が完了するまで発泡体を膨張させた。製造された湿潤発泡体は、約30分後に硬化反応が起こり発泡体が凝固し始めるまで安定であった。ジオポリマー発泡体を湿気のある雰囲気下で3日間貯蔵して、適切に硬化させた。その後、これを型から取り出して、一定の質量になるまで70℃で乾燥させた。
【0119】
得られたジオポリマー発泡体部分は、200mm×200mm×50mmの寸法を示した。その乾燥密度は127kg/m3であり、その熱伝導率は39.6mW/mKであった。圧縮強度は117kPaであり、曲げ強度は82kPaであった。この試料は、233kPa s/m2の気流抵抗を特徴とした。この発泡体は、主に独立気孔を示した。