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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】毛髪成形材料
(51)【国際特許分類】
   C07C 381/00 20060101AFI20220510BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220510BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20220510BHJP
   C12P 13/12 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C07C381/00 CSP
A61K8/64
A61Q5/00
A61Q5/04
C12P13/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019553032
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057735
(87)【国際公開番号】W WO2018178056
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】1704905.7
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1718602.4
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506352278
【氏名又は名称】クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジェイムズ コルバー
(72)【発明者】
【氏名】ニール ハワード ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マイケル カー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マルコム ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェフリー ブロードベント
(72)【発明者】
【氏名】ミュリエル ローレ オード リグ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0044664(US,A1)
【文献】米国特許第04948876(US,A)
【文献】特開平05-125037(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103664709(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスチンをアミノ酸鎖の部分として含むブンテ塩であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が170~800ダルトンの範囲である、ブンテ塩。
【請求項2】
前記シスチンが、タンパク質加水分解物から形成されたアミノ酸鎖の部分である、請求項1に記載のブンテ塩。
【請求項3】
前記タンパク質加水分解物が、平均して2~10の範囲のアミノ酸を含む、請求項2に記載のブンテ塩。
【請求項4】
前記タンパク質が1~15重量%のシステイン又はシスチン系のアミノ酸を含む、請求項2又は3に記載のブンテ塩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩を含む材料であって、材料中に存在する前記ブンテ塩のパーセンテージが1重量%~6重量%である材料
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩を調製する方法であって、前記方法が、タンパク質を加水分解して170~800ダルトンの分子量(重量平均)をもたらすこと、及び、前記タンパク質加水分解物とブンテ塩を形成すること、を含む方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩を含む、ヘアケア製剤、縮毛矯正製剤、及び/又は毛髪処理製剤。
【請求項8】
縮毛矯正に際して使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩の使用。
【請求項9】
毛髪強化するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩の使用。
【請求項10】
毛髪を処理する方法であって、前記方法が、
請求項1~4のいずれか一項に記載のブンテ塩を含む製剤と、pH2~6の酸とを合体させるステップと、
前記合体物を毛髪に適用するステップと、
前記処理された毛髪に、加熱されたエレメントを適用するステップと、
処理された毛髪を洗浄するステップと、
任意選択的に上記ステップのうちのいずれかを繰り返すステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の毛髪処理材料、具体的には毛髪を成形し、且つ/又は縮毛矯正する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を処理し成形する現行のシステムは多くの場合、ホルムアルデヒドとグリオキシル酸との組み合わせに基づいている。両材料は有害であり、消費者にとって使い心地が悪い。
【0003】
動物起源又はヒト起源のケラチン繊維の機械的強度又はタンパク質構造は、数多くの異なる技術を用いて測定することができる。これらの技術は、全て最終的には繊維の強度に関連し得るケラチン繊維の種々異なるエレメントに関する情報を与えることができる。基本的には、1つの繊維又は複数の繊維を破断するのに必要な力はその強度として分類されることになる。この力は、タンパク質材料中に存在する化学結合の結果である。ほとんどの有機材料と同様に、そして特に種々異なるアミノ酸構成から生じた多様な側鎖を有するタンパク質と同様に、数多くの異なるタイプの結合、例えば共有結合(例えばペプチド結合、ジスルフィド結合など)、酸性アミノ酸側鎖と塩基性アミノ酸側鎖との間に形成されたイオン結合、及び水素結合が存在し得る。これらのタイプの結合のそれぞれは、これらの相対的な結合エネルギー及び結合存在度に基づき異なる力を発揮するが、しかし総合的に見れば、これらの結合は、測定「強度(strength)」全体を構成する。
【0004】
所望の末端ニーズに適するように物理的特性を変化させる仕方で繊維材料を処理することが、布地ケア分野及びパーソナルケア分野の両方において共通している。例えばパーソナルケアでは、毛髪繊維、又はより正確には繊維内部のメラニン色素は、繊維の色を変化させるために過酸化水素含有システムを使用して酸化させることができる。或いは、180℃を超える高い温度、又は水酸化ナトリウムのような化学薬品、又は同様の高pH処理を用いて、タンパク質の内部結合及び構造を変化させることによって毛髪繊維のカールパターンを変えることもできる。高い温度の場合、最初に水素結合が分断され、その結果、一時的に毛髪に変化がもたらされる。それというのもこのようなタイプの結合は容易に破断され再形成されるからである。しかしながら、毛髪中のより強力な結合のうちのいくつかは、複数回の熱サイクルを介してやはり破断されるものの、これらは時間経過とともに再形成することはない。その結果、毛髪中により深刻な損傷が蓄積される。高pH処理はさらにより深刻である。それというのも、この場合のメカニズムは、毛髪中の強いジスルフィド結合を破断する一方で、形状を機械的に再配列することであるからである。中和処理は結果として共有結合のほとんど(モノスルフィド結合であってジスルフィド結合ではない)を再形成するものの、結合の全てが再形成されるわけではない。
【0005】
これらの処理の全ては、毛髪繊維全体にわたって施され、ひいては毛髪内部のある特定の結合タイプ又は構造的構成部分に対して非特異的である。このようなものとして、意図的でない副反応が生じ、そしてさらなる意図的でない結合破断がもたらされるおそれがあり、結果として毛髪が損傷され、強度が損なわれる。
【0006】
改善されたヘアケア活性物質、及びこのような活性物質を含有する最終用途製品が継続的に必要とされている。1つのこのような製品カテゴリは、縮毛矯正作用を改善するものである。別の製品カテゴリは、毛髪強度を改善するもの、そして損傷を与える処理の実施後に毛髪を修復すると主張するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヘアケア製品を使用することから縮毛矯正効果が得られることが必要とされ、そしてより安全で害が少ない状態で使用するできる縮毛矯正材料を開発することが必要とされる。また、より安全で害が少ない状態で使用できる、毛髪強化特性を有する製品も必要である。
【0008】
本発明は、縮毛矯正及び/又は毛髪強化化合物の提供、ヘアケア製剤におけるこれらの化合物の使用、そして縮毛矯正及び/又は毛髪強化のための化合物の使用を模索する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、シスチンのブンテ塩であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、シスチンのブンテ塩が提供される。
【0010】
本発明の第2態様によれば、シスチンのブンテ塩であって、材料全体中に存在するシスチンブンテ塩のパーセンテージが1重量%~6重量%の範囲である、シスチンのブンテ塩が提供される。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記第1態様に基づくシスチンのブンテ塩を調製する方法であって、前記方法が、タンパク質を加水分解して100~1,600ダルトンの分子量(重量平均)をもたらすこと、及び、前記タンパク質加水分解物とブンテ塩を形成すること、を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の第4態様によれば、シスチンのブンテ塩を含むヘアケア製剤、縮毛矯正製剤、毛髪強化製剤及び/又は毛髪処理製剤であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、シスチンのブンテ塩を含む、ヘアケア製剤、縮毛矯正製剤、毛髪強化製剤及び/又は毛髪処理製剤が提供される。
【0013】
本発明の第5態様によれば、縮毛矯正に際して使用するためのシスチンのブンテ塩の使用であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、使用が提供される。
【0014】
本発明の第6態様によれば、毛髪強化するためのシスチンのブンテ塩の使用であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、使用が提供される。
【0015】
本発明の第7態様によれば、毛髪を処理する方法であって、前記方法が、
シスチンのブンテ塩を含む製剤と、pH2~6の酸とを合体させるステップと、
前記合体物を毛髪に適用するステップと、
前記処理された毛髪に、加熱されたエレメントを適用するステップと、
処理された毛髪を洗浄するステップと、
上記ステップのうちのいずれかを任意選択的に繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
シスチンのブンテ塩はヘアケア製剤中で使用されると、所望の縮毛矯正特性及び毛髪強化特性を提供し、そして上述の問題点を克服することが見いだされた。
【0017】
本明細書中で使用される「例えば(for example)、(for instance)、(such as)」又は「含む(including)」という用語は、より一般的な対象をさらに明確にする例を紹介するために意図される。特に断りのない限り、これらの例は、本開示において例証される適用を理解するための補助として提供されるものであり、制限的であることを意図するものでは決してない。
【0018】
「ブンテ塩(Bunte salt)」という用語は当業者によく知られており、シスチンの酸化的亜硫酸分解から誘導された、官能基RSSO を有する化合物を意味することが、理解されるであろう。
【0019】
シスチンのブンテ塩は、個々のアミノ酸から形成することができ、或いはタンパク質加水分解物から誘導されたより長いペプチド鎖内部に含まれるアミノ酸から形成することもできる。
【0020】
好ましくは、シスチンはタンパク質加水分解物から形成されたアミノ酸鎖の部分であってよい。
【0021】
ブンテ塩を形成するために使用し得る個々のアミノ酸は少なくとも1つのシスチンを含む。アミノ酸ブレンドは他の非シスチンアミノ酸を含んでよく、そしてこれらの非シスチンアミノ酸は任意の適宜のアミノ酸から選択されてよい。
【0022】
アミノ酸は単一のアミノ酸であることが好ましい。別の実施態様では、アミノ酸は2つ又は3つ以上のアミノ酸から成る鎖を含んでよい。アミノ酸鎖長は2~5であることが好ましい。
【0023】
別の実施態様では、ブンテ塩を形成するために使用されるシスチンは、より短いペプチド鎖及びアミノ酸を形成するために加水分解されたタンパク質から誘導されてよい。
【0024】
本発明のブンテ塩を形成するために使用されるタンパク質成分出発材料は、動物源又は植物源から誘導されてよく、或いは発酵によって誘導されてもよい。使用し得るタンパク質の例は、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、カゼイン、小麦タンパク質、ジャガイモタンパク質、大豆タンパク質、及び/又は絹タンパク質を含む。ケラチンタンパク質が特に好ましい。
【0025】
「タンパク質」という用語は、天然(又は化学的に改質されていない)タンパク質及びタンパク質加水分解物の両方を含むように本明細書中で使用され、ひいては適正にタンパク質と呼ばれているもの、及びポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、及び/又はペプトンを含む。それというのも、これらは全てタンパク質加水分解物の範疇に入れることができるからである。タンパク質加水分解物、具体的にはポリペプチド及びペプチドが好ましい。これらは例えば天然タンパク質の酸、アルカリ、及び/又は酵素加水分解によって製造することができる。タンパク質酸加水分解物が好ましい。1実施態様の場合、具体的には酸加水分解によって製造されたケラチンタンパク質加水分解物が好ましい。
【0026】
例えばタンパク質が官能基、例えばシラン、第四級アンモニウム化合物、及び/又は酸塩化物と共有結合反応されている場合には、化学的に改質されたタンパク質及び/又はタンパク質加水分解物が採用されてもよい。
【0027】
別の実施態様では、タンパク質が酸加水分解前に前処理されず、且つ前加水分解又は可溶化されない場合には、粉砕された羊毛から成るタンパク質を使用してもよい。
【0028】
タンパク質成分はアミノ酸、及び短タンパク質鎖、小ペプチドの混合物であることが理解されるであろう。
【0029】
タンパク質成分出発材料(加水分解前)の分子量(重量平均)は、広範囲にわたって変化してよく、例えば100~500,000ダルトンの範囲であってよい。分子量平均は、ブンテ塩中のアミノ酸を含む化合物の全範囲にわたる測定値であると理解され、そして反応済タンパク質及び未反応タンパク質の両方を含むことになる。
【0030】
ひとたび加水分解されると、タンパク質又はポリペプチドは平均して2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~5の範囲のアミノ酸を含む。
【0031】
タンパク質成分中のアミノ酸の組成も重要なパラメータであり得る。そして1実施態様では、タンパク質は少なくとも0.5%、好ましくは1~15%、より好ましくは2~8%、具体的には2~6%、そして特に3~5重量%の範囲のシステイン又はシスチン系のアミノ酸を含む。これは、存在する任意のcys種、例えば-S-SO(ブンテ塩)、シスチン、システイン、及びシステイン酸などを含むことになる。
【0032】
タンパク質のアミノ酸プロファイルは、タンパク質を完全にアミノ酸に加水分解し、次いで分析することにより、容易に割り出すことができることが理解されるであろう。
【0033】
タンパク質のアミノ酸プロファイルは、タンパク質出発材料から、タンパク質加水分解物へ、ブンテ塩を含む材料へ至るまで同じままであるか、又はほぼ同じままであると理解される。
【0034】
好ましくは、タンパク質加水分解物中の遊離アミノ酸の量は60重量%未満である。より好ましくは55重量%未満である。遊離アミノ酸の溶解度は低いので、量が低いレベルにあることが望ましいことが理解されるであろう。
【0035】
ブンテ塩を含む総材料の分子量(重量平均)は100~1,600ダルトンの範囲であると好適であり、好ましくは120~1,200ダルトン、より好ましくは140~1,000ダルトン、具体的には170~800ダルトン、そして特に200~500ダルトンの範囲である。
【0036】
分子量(重量平均)は、加水分解された状態とブンテ塩を含む総材料との間でほとんど変化しないことが好ましい。好ましくは分子量(重量平均)は15%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内である。
【0037】
分子量(重量平均)は、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)を使用して測定される。その条件について以下に詳述する。
カラム - TSK-GEL G2000SWxl(300mm×7.8mm内径)
ガードカラム - TSK SWxl(40mm×6mm内径)
ポンプ - Agilent 1260クオターナリポンプVL (G1311C)
インジェクタ - HP1100シリーズ・オートサンプラ(G1313A)
サーモスタット - HP1100シリーズ・サーモスタット付きカラムコンパートメント(G1316A)
検出器 - HP1100シリーズ可変波長検出器 (G1314A)
制御 - Agilent Chemstationソフトウェア
積分 - Agilent Cirrus GPCソフトウェア
溶離液 - 0.05M KHPO、0.06M KHPO.3HO、及び0.1M NaCl、pH 7.0に調節
流量 - 0.6ml/分
注入体積 - 5μl
温度 - 25℃
波長 - 220nm
標準 - ウシ・アルブミン(67kDa)、卵アルブミン(45kDa)、キモトリプシン(25kDa)、及びグリシン(75Da)
較正フィットタイプ - 三次スプライン
【0038】
ブンテ塩を形成するために反応することになるcys系タンパク質/アミノ酸の量は約50%であり、ひいてはブンテ塩の量は約2重量%である。
【0039】
ブンテ塩は先ず所望のタンパク質を加水分解することによって形成することができる。加水分解は好ましくは酸加水分解であってよい。
【0040】
加水分解は、タンパク質加水分解物の所望の分子量及び鎖長に達するために必要とされる程度まで行われる。加水分解度は、使用される酸の温度、量、及び/又は強度、及び費やされる時間を変えることにより変化させることができる。
【0041】
タンパク質加水分解物を濾過し、処理することにより、不所望の材料を除去することができる。具体的には、タンパク質加水分解物は、存在するいかなる塩化物イオンをも除去するように処理することができる。
【0042】
タンパク質加水分解物は、亜硫酸塩を含む化合物と反応させることにより、ブンテ塩を形成することができる。具体的には、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩を使用することができ、最も好ましくは、メタ重亜硫酸ナトリウムを使用してブンテ塩を形成する。
【0043】
ブンテ塩のpHは所望の範囲に調節することができる。ブンテ塩材料の1つの利点は、多くの従来の材料と比較して高いpH値でこれを使用し得ることである。ブンテ塩は3.0~6.0、そして好ましくは4.0~5.0のpH値で使用することができる。
【0044】
タンパク質加水分解物混合物のアミノ酸プロファイルは、ブンテ塩反応後にほぼ同じであり続けることが好ましい。
【0045】
使用されるタンパク質中には、互いに結合された2つのシステイン分子から形成された、自然発生型のシスチンがあることが理解されるであろう。システインはブンテ塩を形成するために重亜硫酸塩と反応することがないのに対して、シスチンは反応する。シスチンは反応することにより1つのブンテ塩分子と1つのシステイン分子とを形成するので、理論上は50%しかブンテ塩に変換しない。しかしながら、システインは他のシステイン分子と架橋して元に戻ることによって、シスチンを形成することができる。シスチンは次いで重亜硫酸塩とさらに反応することができる。
【0046】
ブンテ塩を含む材料は、ヘアケア、縮毛矯正、毛髪強化、及び/又は毛髪処理に際して使用するための製剤に添加することができる。
【0047】
製剤はヘアケア製品、例えばシャンプー、コンディショナー、一体型(2-in-1)シャンプー/コンディショナー、ヘアスプレー、ヘアスプリッツ(hair spritz)、ヘアカラー製品、洗い流さないタイプの(leave-on)ヘアトニック、毛髪日焼け止め製品、スタイリングムース又はジェル、ヘアスタイリングクリーム、スタイリングトリートメント剤、又は他の毛髪処理組成物の形態を成していてよい。
【0048】
或いは、製剤は、現場で作成される毛髪処理剤の形態を成していてもよく、これは2ポット形態、すなわち第1ポットがブンテ塩材料、尿素、亜硫酸ナトリウム、及び下記の他の成分を含み、そして第2ポットが酸、好ましくはクエン酸を含む2ポット形態で、ブンテ塩材料を用意することによって実現することができる。第1ポットのpHは約7であることが好ましい。酸性の第2ポットは、使用直前に第1ポットに添加され、pHを約4~5まで低下させ、これにより塗布されたときの第1ポット内容物とケラチン/毛髪との反応を可能にする。
【0049】
本発明による製剤は、組成物の総重量を基準として、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~8重量%、そして特に2重量%~6重量%の範囲のブンテ塩を含むことが好適であり得る。5.0重量%が最も好ましい。
【0050】
製剤は1種又は2種以上の界面活性剤を含んでよい。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性及び/又はカチオン性界面活性剤から選択されてよい。好ましくは、界面活性剤は非イオン性及び/又はアニオン性界面活性剤であってよい。
【0051】
好適なアニオン性界面活性剤はアルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルファオレフィンスルホネート、スルホスクシネート、イセチオネート、アシルアミド、アシルグルタメート、アルキルエーテルカルボキシレート、及びアルキルホスフェートを含む。アルキル基の炭素原子数は好ましくは6~30、より好ましくは8~20、具体的には10~14の範囲であり、そして特に12である。アルキルエーテルスルフェート及び/又はアルキルスルフェート、具体的にはそのアルカリ金属、例えばナトリウム、及び/又はアンモニウム塩が好ましい。ホスフェート系アニオン性界面活性剤が特に好ましいアニオン性界面活性剤である。
【0052】
好適な非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコール酸又はアミドエトキシレート、アルカノールアミド、及びアルコキシル化アルカノールアミド、モノグリセリドエトキシレート、ソルビタンエステルエトキシレート、アルキルポリグリコシド、エチレングリコールモノエステル、エチレングリコールジエステル、及びこれらの混合物を含む。
【0053】
好適な両性界面活性剤は、アルキルイミノ-ジプロピオネート、アルキルアンホグリシネート、アルキルアンホプロピオネート、アルキルアンホアセテート(モノ-及びジ-)、N-アルキルベータ-アミノプロピオン酸、アルキルポリアミノカルボキシレート、リン酸化イミダゾリン、及びこれらの混合物を含む。
【0054】
好適なカチオン性界面活性剤はアルキル第四級物(quaternaries)、ベンジル第四級物、エステル第四級物、エトキシル化第四級物、アルキルアミン、及びこれらの混合物を含む。アルキル基の炭素原子数は好ましくは6~30、より好ましくは8~22、そして具体的には10~20である。
【0055】
界面活性剤は存在する場合には、総製剤の0.1重量%~50重量%、好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~25重量%の量で含まれていてよい。
【0056】
製剤は他の許容し得る成分、例えば毛髪への局所的塗布に適した成分を含むこともできる。
【0057】
製剤は賦形剤と混合するか、又は賦形剤によって希釈することができる。賦形剤は希釈剤として役立つことができ、これは固形、半固形、又は液体材料であり得る。この材料は活性成分のためのビヒクル、キャリア、又は媒質として作用する。好適な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースを含む。
【0058】
製剤はこれに加えて、潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油、湿潤剤、乳化・懸濁剤、保存剤、例えばメチル-及びプロピルヒドロキシベンゾエート、甘味剤、及び香味剤を含む。
【0059】
製剤は透明又は不透明なエマルジョン、ローション、クリーム、ペースト、又はジェルとして製剤されてよい。
【0060】
製剤は水を含んでよい。製剤中の水の量は、製剤の総重量を基準として好適には10重量%~97重量%、好ましくは30重量%~95重量%、より好ましくは50重量%~90重量%、具体的には65重量%~85重量%、そして特に72重量%~78重量%の範囲であってよい。
【0061】
本発明の製剤は、光沢エンハンサー、モイスチャライザー、ハーブ添加剤、毛髪強化剤、ビタミン添加剤、着色剤、増毛剤、セッティング・スタイリング剤、紫外線吸収剤、シリコーン油、精油及び香料、増粘剤又は粘度増強剤、洗剤、安定化剤、エモリエント、キレート剤、金属イオン封鎖剤、保存剤、殺菌剤、抗酸化剤/ラジカルスカベンジャー、静電気防止剤、コンディショニング剤、デタングリング(detangling)成分、乳化又は分散剤、刺激剤、スーザー(soother)、溶剤、キャリア及びこれに類するものを含む、ヘアケア製品中に使用される他の標準的な成分又はキャリアのうちの1種又は2種以上と一緒に使用されてよい。
【0062】
具体的には、製剤はシリコーン流体又は油、例えばジメチルポリシロキサン、ジメチルシリコーン、高重合型メチルポリシロキサン、及び総称的にジメチコンとして知られているメチルポリシロキサン、環状オリゴマージアルキルシロキサン、例えば総称的にシクロメチコンとして知られている、ジメチルシロキサンの環状オリゴマーを含んでよい。製剤中のシリコーン油の濃度は、製剤の総重量を基準として好ましくは0.1重量%~40重量%、より好ましくは0.3重量%~20重量%、具体的には0.5重量%~5重量%、そして特に1重量%~1.5重量%の範囲であってよい。
【0063】
製剤は水性の洗い流さないタイプ(leave on)又は水性の洗い流すタイプ(rinse off)の末端使用製品である。このような製剤の場合、希薄溶液を使用することができる。好ましくは、緩衝溶液が使用される。この溶液のpHは弱酸性に、つまりpH4~6に調節される。洗い流すタイプの製剤の場合、希釈された製剤を塗布後に洗い落とすことが指示される。必要とされる処理のレベルに応じて、このような指示は、製品がある程度の時間、例えば1~30分間にわたって毛髪上に残ることを必要とすることもある。洗い流さないタイプの製剤の場合、洗い落としステップは省かれる。
【0064】
製剤が毛髪強化剤を形成するように機能するヘアシャンプー又はコンディショナーである場合、シャンプー又はコンディショナーは分散体、エマルジョン、又は溶液の形態を成していてよい。1つの好ましいシステムは液晶を形成するシステムである。液晶は好ましくはリオトロピック液晶(すなわち濃度及び温度の両方に依存する)であり、より好ましくはラメラ相液晶であり、そして具体的にはLアルファ相(ニート)液晶である。
【0065】
製剤は数多くの異なるタイプの機能性成分、例えば
(i) カチオン性ヘアコンディショニング剤、例えばエトキシル化ホスフェート脂肪第四級物(quats)、例えばArlasilk(登録商標)としてCrodaによって販売されているもの、脂肪アミドアミン、例えばIncromine(登録商標)としてCrodaによって販売されているもの、脂肪四級物(fatty quats)、例えばIncroquat(登録商標)、Crodazosoft(登録商標)、Rejuvasoft(登録商標)、又はVibraRiche(登録商標)としてCrodaによって販売されているものであって、典型的には組成物の総重量を基準として1重量%~5重量%の濃度で使用されるもの。これらは典型的には、ポリマーヘアコンディショニングカチオン性材料、例えば、Crodacel(登録商標)としてCrodaによって販売されている四級化セルロース、四級化タンパク質、例えばCroquat(登録商標)、Crolactin(登録商標)、Crosilkquat(登録商標)、Keramimic(登録商標)及びHydrotriticum(登録商標)としてCrodaによって販売されているものと組み合わされる。
(ii) 脂肪アルコール、例えばステアリル、セテアリル、セチル、オレイルアルコールであって、典型的には組成物の総重量を基準として2重量%~5重量%の濃度で使用されるもの。
(iii) 保湿剤又は溶剤、例えばアルコール及びポリオール、例えばグリセロール及びポリエチレングリコールであって、典型的には組成物の総重量を基準として1重量%~10重量%の濃度で使用されるもの、
(iv) 再形成剤(reconstructor)、例えばタンパク質加水分解物、例えば小麦タンパク質であって、毛髪に浸透し、ポリマー架橋を介して毛髪構造を強化するように機能するもの、
(v) 毛髪に結合して光を反射する艶出し材料又はデタングリング材料、例えばシリコーン、例えばジメチコン、フェニルトリメチコン、ジメチコノール、及び/又はトリメチルシリルアモジメチコンであって、通常は組成物の総重量を基準として0.2重量%~10重量%の濃度で使用されるもの、
(vi) 酸性度調節剤、例えばクエン酸、乳酸であって、一般にコンディショナのpHを約4~6に維持するもの、
(vii) ブロー乾燥又はヘアアイロン又はホットカーラーに起因する過剰な熱から毛髪を保護する熱保護剤、通常は熱吸収ポリマー、例えばMirustyle(登録商標)MFP(四級化デンプン)としてCrodaによって販売されているもの、及び
(viii) UV光による劣化から毛髪又は製剤成分を保護するためのUV保護剤、例えばCrodasorb(登録商標)UV-HPPとしてCrodaによって販売されているもの
を含有してよい。
【0066】
1実施態様では、本発明の製剤はエマルジョン(又は分散体)、例えば水中油型又は油中水型エマルジョン、具体的には水中油エマルジョンの形態を成している。
【0067】
エマルジョンの油相は好ましくは、パーソナルケア製品又は化粧品において使用されるタイプのエモリエント油となる。エモリエントは、好ましくは周囲温度で液体である油性材料であってよく、そして通常はこのような油性材料となる。或いは、エモリエントは周囲温度では固体であってもよい。この場合、エモリエントは全体として通常はワックス状固形物となるが、ただしこのエモリエントは高い温度、すなわち、組成物中に含むことができ組成物中で乳化することができる高い温度では液体となることを条件とする。
【0068】
好適な通常は液体のエモリエント油は非極性油、例えば鉱物油、パラフィン油、特にイソパラフィン油、例えばArlamol(登録商標)HDとしてCrodaによって販売されているもの、又は中度極性油、例えば植物性エステル油、例えばホホバ油、植物性グリセリド油、動物性グリセリド油、例えばCrodamol(登録商標)GTCC(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)としてCrodaによって販売されているもの、合成油、例えば合成エステル油、例えばイソプロピルパルミテート及びEstol(登録商標)1512としてCrodaによって販売されているもの、具体的には、例えばC8~C18の、2つの脂肪アルキル残基のエーテル油、例えばCetiol OE(ジカプリルエーテル)としてCognisによって販売されているもの、ゲルベアルコール、例えばEutanol G(オクチルドデカノール)としてCognisによって販売されているもの、又はシリコーン油、例えばジメチコン油、例えばDC200としてDow Corningによって販売されているもの、シクロメチコン油、又は親水性を改善するためにポリオキシアルキレン側鎖を有するシリコーン、又はアルコキシレートエモリエント、例えば脂肪アルコールプロポキシレートを含む高極性油、例えばArlamol(登録商標)E(プロポキシレート化ステアリルアルコール)としてCrodaによって販売されているものを含む。
【0069】
油相の濃度は幅広く変化してよい。エマルジョン中の油相の量は、エマルジョンの総重量を基準として、好ましくは0.5重量%~80重量%、より好ましくは1重量%~30重量%、具体的には1.5重量%~15重量%、そして特に2重量%~10重量%である。
【0070】
エマルジョン中の油相の量は、エマルジョンの総重量を基準として、好ましくは20重量%~99.5重量%、より好ましくは70重量%~99重量%、具体的には85重量%~98.5重量%、そして特に90重量%~98重量%の範囲である。
【0071】
広い範囲の乳化剤、具体的には1種又は2種以上の非イオン性乳化剤を採用することができる。任意の具体例において使用される乳化剤界面活性剤の特異的な性質は、形成されるエマルジョンのタイプ、具体的には乳化される油の量及び性質、及び乳化剤の所望の総レベルに依存する。
【0072】
エマルジョン中の乳化剤の濃度はエマルジョンの総重量を基準として、好ましくは0.1重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~15重量%、具体的には1重量%~10重量%、そして特に2重量%~7重量%である。
【0073】
エマルジョンはエマルジョンの総重量を基準として、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~4重量%、具体的には0.2重量%~2重量%、そして特に0.3重量%~1重量%の範囲でヘアケア製剤を含むことが好適である。
【0074】
本発明による製剤中には数多くの他の成分を使用することができる。これらの成分は油溶性、水溶性、又は非溶解性であってよい。このような材料の例は、
(i) 保存剤、例えばパラベン(4-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル)、フェノキシエタノール、置換型尿素、及びヒダントイン誘導体を基剤とするもの、例えばGermaben II、Nipaguard BPX及びNipaguard DMDMHという商品名で市販されているものであって、通常は組成物の総重量を基準として0.5重量%~2重量%の濃度で使用されるもの、
(ii) 香料であって、典型的には組成物の総重量を基準として0.1重量%~10重量%、より典型的には最大約5重量%、そして具体的には最大約2重量%の濃度で使用されるもの、
(iii) 保湿剤又は溶剤、例えばアルコール、ポリオール、例えばグリセロール及びポリエチレングリコールであって、典型的には組成物の総重量を基準として1重量%~10重量%の濃度で使用されるもの、
(iv) アルファヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、及びこれらのエステル、セルフタンニング剤、例えばジヒドロキシアセトン、
(v) (a) 例えばレチニルパルミテート及び他のトレチノイン前駆体分子としてのビタミンA、(b)例えばパンテノール及びその誘導体としてのビタミンB、(c)例えばアスコルビン酸及びその誘導体としてのビタミンC、(d)例えばトコフェリルアセテートとしてのビタミンE、(e)ポリ不飽和脂肪酸エステル、例えばガンマ-リノレン酸エステルとしてのビタミンF、を含むビタミン及びこれらの前駆体、
(vi) スキンケア剤、例えば天然材料としてのセラミド、又は天然セラミドの機能模倣体としてのセラミド、
(vii) 天然リン脂質、例えばレシチン
(viii) ベシクル含有製剤
(ix) 有益なスキンケア特性を有する植物抽出物
(x) 皮膚ホワイトニング剤、例えばコウジ酸、アルブチン、及び類似の材料、
(xi) 皮膚修復化合物活性物質、例えばアラントイン及び類似のシリーズ
(xii) カフェイン及び類似の化合物
(xiii) 清涼添加剤、例えばメントール又は樟脳、
(xiv) 虫除け剤、例えばN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、及び柑橘油、又はユーカリ油、
(xv) 精油、
(xvi) 微細顔料、具体的には酸化物及びケイ酸塩、例えば酸化鉄、具体的には被覆された酸化鉄、及び/又は二酸化チタン、及びセラミック材料、例えば窒化ホウ素、又はサスポエマルジョンをもたらすためにメイクアップ品及び化粧品において使用されるような他の固形成分を含む顔料であって、典型的には製剤の総重量を基準として、1重量%~15重量%であるが、しかし通常は少なくとも5重量%、そして具体的には約10重量%の量で使用されるもの
を含む。
【0075】
製剤は、心地よい香りを提供するために芳香付与材料を含んでよい。1つの態様では、天然源、例えばアルファルファ、アーモンド、アンバー、アンジェリカルート、アニス、リンゴ、アンズ、バナナ、バジル、月桂樹(bay)、月桂樹(bay laurel)、ベンゾイン、ベルガモット、ビターオレンジ、ブラックペッパー、ボアドローズ(ローズウッド)、カユプテ、カルダモン、キャロットシード、シダーウッド、シナモン、シトロネラ、シトラス、クラリーセイジ、クローブ、ココア、ココナッツ、コーヒー、コリアンダー、クランベリー、サイプレス、エレミ、ユーカリ・グロブルス、ユーカリ、フェンネル、フランキンセンス、ガルバナム、ゼラニウム、ジャーマンカモミール、ジンジャー、グレープフルーツ、ヘリクリサム、ヒソップ、ジャスミン、ジュニパーベリー、ラベンダー、レモン、レモングラス、ユリ、リンデンブロッサム、マンゴー、マジョラム、メリッサ、ミント、ミルラ、ギンバイカ、ネロリ、ニアウリ、ナツメグ、オレンジ、オレガノ、ヤシ、パセリ、パチョリ、モモ、ペパーミント、プチグレン、マツ、パイナップル、ラズベリー、ローマンカモミール、バラ、ローズマリー、ビャクダン、スペアミント、トウヒ、イチゴ、茶、タイム、バニラ、ベチバー、スミレ、ヤロウ、イランイラン、及びこれに類するものから香りが提供される。香料はミント又はバニラから選択されることが好ましい。
【0076】
毛髪を処理する1つの好ましい方法は、
ブンテ塩を含む製剤と、pH2~6の酸とを合体させるステップと、
前記合体物を毛髪に適用するステップと、
前記処理された毛髪に、加熱されたエレメントを適用するステップと、
処理された毛髪を洗浄するステップと、
上記ステップのうちのいずれかを任意選択的に繰り返すステップと
を含む。
【0077】
これらのステップは、所望の縮毛矯正効果を得るために繰り返すことができる。
【0078】
本明細書中に記載された特徴の全ては上記態様のいずれかと任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0079】
本発明をより容易に理解できるようにするために、例を用いて以下に説明する。
【0080】
ここに挙げた全ての試験及び物理特性は、本明細書に特に断りのない限り、又は言及される試験法及び手順において特に断りのない限り、周囲圧力及び室温(すなわち25℃)で測定されていることが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0081】

例1-ブンテ塩の合成
水(793g)及び塩酸(28%、342g)をガラス反応容器内で混合させ、そして60℃まで加熱した。粉砕した羊毛繊維(600g)を、全ての繊維が酸によって湿潤されるまで高温の酸にゆっくりと添加した。羊毛を添加した後、反応混合物を120℃まで加熱することにより、羊毛を加水分解した。
【0082】
容器の内容物を次いで加熱することにより7時間にわたって還流させた。この時間後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。濾過ケーキを、洗浄水の屈折率が0%を示すまで水で洗浄した。洗浄水及び濾液を収集し、アニオン交換カラムに通すことにより塩化物イオンを除去した。
【0083】
次いで低灰分溶液を活性炭(90g)と混合し、そして4時間にわたって攪拌した。次いで炭素を濾過して除去し、溶液を再度炭素処理した。タンパク質溶液を次いで屈折率がほぼ35%になるまで蒸発させ保存した。
【0084】
メタ重亜硫酸ナトリウムをタンパク質溶液に添加し、24時間にわたって強力に混合する前にpHを5.0~5.5に調節した。次いで最終的なpH調節及び濾過の前に過酸化水素(35%)を生成物に添加した。
【0085】
例2-試験製剤
以下の一般的な製剤に基づいて一連の試験製剤を形成した。
【0086】
【表1】
【0087】
本明細書中で規定されるようなSE-HPLC法を用いた場合、使用されるブンテ活性物質のMwは173Daであった。
【0088】
【表2】
【0089】
部分B成分を予混合し、そして溶解するまで攪拌しながら部分C成分を合体させることによって、試験製剤Bを調製した。次いで、部分Bを攪拌しながら部分Cに添加した。部分A成分を次いで混合し、65~70℃まで加熱した。部分BC混合物も部分Aと同じ温度に加熱し、次いで攪拌しながら部分Aに添加した。熱を除去し、そして混合物が40℃に達したら、部分Dを攪拌しながら添加した。結果としての製剤を攪拌することにより冷却した。
【0090】
また以下の比較製剤を、試験製剤A及びBとのベンチマークとして作用するように形成した。
・ 比較製剤(C1)(負のベンチマーク)-水(pH4.5)
【0091】
例3-縮毛矯正試験プロトコル
製剤に以下の試験プロトコルを施すことにより、縮毛矯正剤としての有効性を評価した。
材料
- 縮毛見本(Brazilian, IHIP, 長さ250mm,幅5mm)
- ラウンドブラシ
- フラットアイロン(GHDモデル4.2 B)
- ヘアドライヤー
【0092】
毛髪処理
使用される毛髪は、目立ったカールを有するように選択した。使用されるべき毛髪をベーシック(basic)なシャンプー剤(0.5mL)で一度洗浄し、濯ぎ(30秒)、そして自然乾燥させておいた。毛髪見本の写真を「処理前」記録として撮影した。
【0093】
次いで毛髪見本を100mLの試験溶液中に平らに置き、食品包装用ラップで覆った。毛髪を30分間にわたって溶液中に放置し、次いで見本を10分毎に1回、全部で30分間梳いた。余剰の溶液を見本から圧搾(2回)を介して除去し、ペーパータオル上で拭き取った。毛髪をほぼ80~90%乾燥するまで、ヘアドライヤー及びラウンドバレルブラシで乾燥させた。これには約30秒かかった。
【0094】
処理済みの毛髪見本を5パスにわたって、最大限の引張力を加えながらフラットアイロンで真直ぐにした。それぞれのパスは7秒かかり、アイロンを当てるときには広幅歯列の櫛を使用して毛髪を方向付けした。
【0095】
メンテナンスステップ
見本をベーシックなシャンプー剤(0.5mL)で洗浄し、濯いだ(30秒)。毛髪をほぼ80~90%乾燥するまで、ヘアドライヤー及びラウンドバレルブラシで乾燥させた。これには約30秒かかった。処理済みの毛髪見本を5パスにわたって、それぞれ最大限の引張力を加えながらフラットアイロンで真直ぐにした。それぞれのパスは7秒かかり、アイロンを当てるときには広幅歯列の櫛を使用して毛髪を方向付けした。この毛髪見本を「処理後」の記録として写真撮影した。
【0096】
真直性維持ステップ
見本をベーシックなシャンプー剤で洗浄し、濯いだ。見本を一度梳き、次いで自然乾燥させておいた。次いで見本を写真撮影し、これに「1回洗浄」の標識を付けた。
【0097】
真直性維持プロセスをさらに29回繰り返すことにより、全部で30回の洗浄を行った。1回、5回、10回、15回、20回、25回、及び30回の洗浄時に写真を撮影した。
【0098】
結果
処理後に、毛髪見本を長さ及び幅の両方に関して測定した。毛髪見本が短ければ短いほど、且つ広幅になればなるほど、毛髪のカールは強くなり、ひいてはこのことは、縮毛矯正が限定的であることを示した。従って、より長く、且つより狭幅となる毛髪見本は、毛髪が効果的な縮毛矯正剤で処理されたことを示す。毛髪真直性は視覚的に評価することもできる。
【0099】
【表3】
【0100】
結果から判るように、処理済みの毛髪は、比較材料で洗浄された毛髪よりも長く、且つ狭幅である。このことは、本発明の材料で処理されると、毛髪がより真直ぐのままであり、且つカールがより少ないままであることを明示している。この効果は、処理後の幾度かの洗浄回数にわたって継続すると見ることもでき、すなわち反復処理間の時間を従来技術の材料で見られるよりも長くすることができる。
【0101】
例4-毛髪強化試験プロトコル
A-引張強度
引張試験はおそらくは毛髪強度を評価する最も一般的な方法である。それというのも、引張試験は毛髪繊維を物理的に引張り、そして繊維が破断するまでの抵抗力を測定することを伴うからである。破断点を測定することができるものの、毛髪が引張応力を受けるのに伴って他の引張パラメータを測定することもできる。
【0102】
材料及び設備
・ 自動クリンパー(Dia-StronによるAAS1600、又は同様の試料調製設備)
・ レーザーマイクロメーター(Dia-Stron LSM-5000又は同等のもの)
・ 引張試験機(Dia-Stron MTT690又は同等のもの)
・ 湿度制御チャンバ/ルーム、相対湿度(RH)50%に設定(乾燥毛髪特性の評価のため)
・ 黄銅タブ(Brass tabs)
・ 3回漂白することによって調製された毛髪の房(カールタイプIIIのBrazilianヘア)
【0103】
処理
上記表に詳細に示した試験製剤B、及び比較製剤C1を、3回漂白したカールタイプIIIの別々のBrazilianヘア試料に塗布し、毛髪1グラム当たり製剤2.5g相当を塗布することにより毛髪の房を浸した。浸した毛髪の房を次いで30分間にわたって周囲温度及び周囲湿度で静止させておくことにより、毛髪内部の最大数のジスルフィド結合の断裂を保証し、活性物質が毛髪繊維に浸透する最適な時間を置いた。この静止時間に続いて、製剤を除去する前に、毛髪の房を完全に乾くまでブロー乾燥させた。次いで10パスの熱縮毛矯正アイロンを用いて、房の長さ全体にわたって毛髪の房を真直ぐにした(Babyliss, 210℃)。次いでシンプルなシャンプー剤で洗浄する前に毛髪の房を15分間にわたって静止させておき、完全に乾燥するまでブロー乾燥し、次いで10パスの熱縮毛矯正アイロンを用いて、もう一度真直ぐにした。最後に毛髪の房を評価する前に5日間にわたって静止させておいた。
【0104】
手順
乾燥毛髪測定
1. 自動クリンパーを使用して黄銅タブ間で繊維を個別にクリンプすることにより、処置1回当たり30~50の毛髪繊維を調製した。
2. 繊維を2時間にわたって50%RHで平衡化した。
3. レーザーマイクロメーターを使用して繊維直径を測定した。これは、繊維全体を代表する平均値を得るために、毛髪繊維の長さに沿って3回測定することによって実施した。
4. 繊維を再び2時間にわたって50%RHで平衡化した。
5. 引張試験機内の歪み速度を20mm/minに設定した。
6. 次いで引張試験機を使用して破断点まで各繊維を歪ませ、引張試験機からの測定値を記録した。各繊維からの結果を用いて、平均(mean)結果を計算した。
【0105】
湿潤毛髪測定
1. 自動クリンパーを使用して黄銅タブ間で繊維を個別にクリンプすることにより、処置1回当たり30~50の毛髪繊維を調製した。
2. 調製した繊維を少なくとも30分間にわたってDI水中に浸した。
3. レーザーマイクロメーターを使用して繊維直径を測定した。これは、繊維全体を代表する平均値を得るために、毛髪繊維の長さに沿って3回測定することによって実施した。
4. 繊維を引張試験のカセット内に個別に入れ、ポケットをDI水で満たすことにより繊維を浸し、オーバーフローがないことを確認した。
5. 引張試験機内の歪み速度を20mm/minに設定した。
6. 次いで引張試験機を使用して破断点まで各繊維を歪ませ、引張試験機からの測定値を記録した。各繊維からの結果を用いて、平均(mean)結果を計算した。
【0106】
結果
引張強度測定において、より高い結果は高い引張強度を反映している。下記表4の結果から判るように、漂白毛髪繊維の試験製剤Aによる処理は、処理されていない漂白毛髪よりも引張強度を改善し/増大させている。
【0107】
【表4】
【0108】
B-示差走査熱量測定
示差走査熱量測定は、温度の上昇の結果としての構造変化を測定するために熱流量の測定を用いる。毛髪強度の直接の評価ではないが、毛髪繊維内部のタンパク質が変性する温度が高ければ高いほど、タンパク質構造がより無傷であることを示す。上述のような損傷を与える処理は、変性温度の低下を招く。このことは引張試験測定値、並びにより多くの破断を伴うより質の悪い弱い毛髪に関連する消費者のフィードバックと良好に相関する。
【0109】
材料及び設備
・ 示差走査熱量計(DSC)
・ 毛髪の房(カールタイプIIIのBrazilianヘア)
・ 高圧力、高容積アルミニウムパン
・ 被験製品/製剤
【0110】
動作パラメータ
温度範囲:50℃~190℃(脱水/水蒸発ステップは必要とされない)
加熱速度:10℃/分
【0111】
処理
引張強度試験に関して上述したのと同じように、DSC測定のために毛髪の房を調製した。3回漂白した試料を試験製剤B及び比較製剤C1で処理するのに加えて、この試験はバージンヘア試料、すなわち漂白されたことがなく、或いは他の処理ステップを施されたことのない試料の使用を伴った。
【0112】
試料の調製
1. 評価されるべき各処理のために、約100mgの毛髪を切断してほぼ2mmの部分にした(この粒度の粉末に似た毛髪)。
2. 毛髪「粉末」を一定の相対湿度(45%)で一晩貯蔵した。
3. 5~7mgの毛髪粉末を大容積・耐圧ステンレス鋼カプセル内へ計量供給した。平均値(mean)を計算するために、評価されるべき各処理のために3つのカプセルを準備した。
4. 50マイクロリットルの脱イオン水を、マイクロピペットを使用して各カプセルに添加した。
5. カプセルをシールして、平衡化のために一晩貯蔵した。
6. 次いで、DSCを使用して、それぞれのカプセル試料毎に変性エンタルピーを測定した。
【0113】
結果
DSC結果に関して、変性温度(Td)値は高ければ高いほど、毛髪内部により多くの構造があることを意味する。これらの結果は下記表5に示されている。毛髪構造は漂白により損傷されているので、構造の増大を示すより高い値の結果は、毛髪構造が強化されたことの指標である。
【0114】
【表5】
【0115】
例5-製剤例
強化・縮毛矯正シャンプー
【0116】
【表6】
【0117】
手順
部分A及びBの成分を、静かに攪拌しながら別々に混合した。部分Aを部分Bに、静かに攪拌しながら添加した。次いで相Cの成分を記載の順序で添加した。必要ならば部分Dを使用して、pHを調節した。
【0118】
毛髪強化クリームコンディショナー
【0119】
【表7】
【0120】
手順
部分A及び部分Bの成分を別々に合体し、そして75~80℃に加熱した。次いで油相を水相に攪拌しながらゆっくりと添加し、そして添加したら、攪拌を約10分間にわたって維持した。次いで混合物をゆっくりと攪拌することにより冷却した。部分Cを添加し、必要ならばpHを調節した。
【0121】
本発明は、上記実施態様の詳細に限定されるものではないことが理解されるべきであり、これらは例示のためのみに記載されたものである。数多くの変更形が可能である。
本開示では、以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
シスチンのブンテ塩であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、シスチンのブンテ塩。
[実施形態2]
前記シスチンが、タンパク質加水分解物から形成されたアミノ酸鎖の部分である、実施形態1に記載のブンテ塩。
[実施形態3]
前記タンパク質加水分解物が、平均して2~10の範囲のアミノ酸を含む、実施形態2に記載のブンテ塩。
[実施形態4]
前記タンパク質が1~15重量%のシステイン又はシスチン系のアミノ酸を含む、実施形態2又は3に記載のブンテ塩。
[実施形態5]
シスチンのブンテ塩であって、材料全体中に存在するシスチンブンテ塩のパーセンテージが1重量%~6重量%である、シスチンのブンテ塩。
[実施形態6]
前記第1態様に基づくシスチンのブンテ塩を調製する方法であって、前記方法が、タンパク質を加水分解して100~1,600ダルトンの分子量(重量平均)をもたらすこと、及び、前記タンパク質加水分解物とブンテ塩を形成すること、を含む方法。
[実施形態7]
シスチンのブンテ塩を含むヘアケア製剤、縮毛矯正製剤、及び/又は毛髪処理製剤であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、シスチンのブンテ塩を含む、ヘアケア製剤、縮毛矯正製剤、及び/又は毛髪処理製剤。
[実施形態8]
縮毛矯正に際して使用するためのシスチンのブンテ塩の使用であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、使用。
[実施形態9]
毛髪強化するためのシスチンのブンテ塩の使用であって、前記ブンテ塩の分子量(重量平均)が100~1,600ダルトンの範囲である、使用。
[実施形態10]
毛髪を処理する方法であって、前記方法が、
シスチンのブンテ塩を含む製剤と、pH2~6の酸とを合体させるステップと、
前記合体物を毛髪に適用するステップと、
前記処理された毛髪に、加熱されたエレメントを適用するステップと、
処理された毛髪を洗浄するステップと、
任意選択的に上記ステップのうちのいずれかを繰り返すステップと
を含む、方法。