(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】化合物および組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 229/16 20060101AFI20220510BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20220510BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220510BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220510BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220510BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220510BHJP
C07C 227/08 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C07C229/16
A61K31/14
A61P31/10
A61P31/04
A61P31/22
A61P31/20
C07C227/08 CSP
(21)【出願番号】P 2019558328
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(86)【国際出願番号】 SG2018050012
(87)【国際公開番号】W WO2018132066
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-25
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519250109
【氏名又は名称】レア ジェネティクス ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ガイク バビキャン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジアラヴァノン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1683317(CN,A)
【文献】国際公開第2016/007821(WO,A2)
【文献】特開2005-162769(JP,A)
【文献】特開平03-246263(JP,A)
【文献】特開昭50-125724(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105503631(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式を有し:
【化1】
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;
またはRは、次の式を有する第四級アミンであり:
【化2】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである、化合物。
【請求項2】
Rが、8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項1に従う化合物。
【請求項3】
Rが、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項2に従う化合物。
【請求項4】
一以上のアニオンは塩化物アニオンおよび臭化物アニオンから選ばれる、請求項1~3のいずれか一項に従う化合物。
【請求項5】
次の式:
【化3】
または
【化4】
を有する、請求項1~4のいずれか一項に従う化合物。
【請求項6】
次の式を有し:
【化5】
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化6】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;および式中、Xは2、4、6、8または10である、化合物。
【請求項7】
Rが、8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項6に従う化合物。
【請求項8】
Rが、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項7に従う化合物。
【請求項9】
一以上のアニオンは塩化物アニオンおよび臭化物アニオンから選ばれる、請求項6~8のいずれか一項に従う化合物。
【請求項10】
次の式を有し:
【化7】
または
【化8】
式中、Xは4、8または10である、請求項6~9のいずれか一項に従う化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項の化合物を含む薬剤組成物。
【請求項12】
薬として使用するための、請求項1~10のいずれか一項に従う化合物。
【請求項13】
真菌感染および/または細菌感染の処置において使用するための、請求項1~10のいずれか一項に従う化合物。
【請求項14】
ヘルペスウイルスおよび/またはヒトパピローマウイルスの処置において使用するための、請求項1~10のいずれか一項に従う化合物。
【請求項15】
単純ヘルペスウイルスまたはサイトメガロウイルスの処置において使用するための、請求項14に従う化合物。
【請求項16】
単純ヘルペスウイルス1または単純ヘルペスウイルス2の処置において使用するための、請求項15に従う化合物。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか一項の化合物を生産するにあたり、以下を含み:
i)カルバクロールを、式:
【化9】
を有する化合物を形成するために、R
2CH
2COClと反応させることであり、式中、R
2はハロゲンであり;
ii)式
【化10】
を有する化合物を、式
【化11】
を有する化合物を形成するために、式
【化12】
を有する化合物と反応させることであり、
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり;またはRは、次の式を有する四級アミンであり:
【化13】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり;
iii)チモールを、式
【化14】
を有する化合物を形成するために、R
2CH
2COClと反応させることであり、式中、R
2はハロゲンであり;
iv)式
【化15】
を有する化合物を、式
【化16】
を有する最終生成物を形成するために、式
【化17】
を有する化合物と反応させることであり、
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化18】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである、プロセス。
【請求項18】
カルバクロールと反応させるR
2CH
2COCl中のR
2及び式(VII)中のR
2が、塩素または臭素である、請求項17に従うプロセス。
【請求項19】
チモールと反応させるR
2CH
2COCl中のR
2及び式(X)中のR
2が、塩素または臭素である、請求項17又は18に従うプロセス。
【請求項20】
Rが、8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、各々8
個以上且つ16個
以下の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項17~19のいずれか一項に従うプロセス。
【請求項21】
Rが、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であるか;R
aおよびR
bが、各々10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である、請求項20に従うプロセス。
【請求項22】
請求項6~10のいずれか一項に従う化合物を生産するにあたり、式
【化19】
を有する化合物を、式
【化20】
を有する化合物を形成するために、臭素と反応させることを含み、
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化21】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;および式中、Xは2、4、6、8または10である、プロセス。
【請求項23】
随意に臭素と錯体を形成する、次の式を有する化合物であり:
【化22】
式中、Rは8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化23】
式中、R
aおよびR
bは各々8
個以上且つ20個
以下の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、細菌感染および真菌感染を処置するために使用され得る化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)は、ヒトおよび動物の双方において多くの疾患の原因であるDNAウイルスの大きなファミリーである。ヒトの間で疾患を引き起こす最も普通のヘルペスウイルス(Herpesviradae)は、水痘帯状ヘルペスウイルス(Varicella Zoster virus、水痘帯状疱疹ウイルスなどとも言う)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス1および単純ヘルペスウイルス2である。
【0003】
水痘帯状ヘルペスウイルスは、子に水痘および成体に帯状疱疹(シングルズ)を引き起こす普通のウイルスである。
【0004】
エプスタイン-バーウイルスは、普通に伝染性単核球症(腺熱)を引き起こすウイルスであり、その一方でまた、ガン、例えば、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫および胃ガンなどのようなものとも関連している。
【0005】
サイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルス科のウイルスファミリーのさらなるメンバーである。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV、またはCMVまたはヒトヘルペスウイルス5(HHV-5))は、唾液腺に関連するウイルスであり、および典型的に健康な個体には気付かれないが、免疫システムが損なわれた、例えば、HIVを有する患者などのようなもの、臓器移植のレシピエントおよび新生仔(new born infants)にとって生命を脅かすことができる。
【0006】
単純ヘルペスウイルス1および単純ヘルペスウイルス2は双方ともにウイルス性疾患の単純ヘルペスの原因となるウイルスである。双方のウイルスは口腔感染および生殖器感染を引き起こし得るが、HSV-1はより一層普通に口腔感染(例えば、口腔ヘルペス)に関連し、その一方で、HSV-2はより一層普通に生殖器感染(例えば、性器ヘルペス)に関連する。単純ヘルペスウイルスは、世界中の成体のおよそ60%および95%間で影響を及ぼす感染を引き起こす(Chayavichitsilp(チャヤビックイットシルプ)P、Buckwalter(バックウォルター)JV、Krakowski(クラコフスキ)AC、Friedlander(フリードレンデル)SF(2009年4月)。「Herpes simplex(単純ヘルペス)」。Pediatr Rev.(ペディアトリックス・イン・レビュー)30(4))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
口腔ヘルペスは、典型的に、顔および/または口に関連し、および口唇ヘルペス(Herpes labialis)(コールド・ソア(単純疱疹))を形成する小さな水疱を生じさせ得る。口腔ヘルペスにはまた、他の症状、例えば、特に、患者が感染した後の最初のエピソードにおいて、のどの痛み、発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れ、頭痛および倦怠感などのようなものも含むことができる。
【0008】
性器ヘルペスは典型的に、性器に関連し、および性器領域、内股(大腿内側)、臀部および/または肛門に小さな病変をもたらし得る。このウイルスに関連する他の典型的な症状には、痛み(疼痛)、かゆみ(そう痒)、バーニング(灼熱感)、ディスチャージ(排出、分泌)、発熱、頭痛、筋肉痛、リンパ節の腫れ、および倦怠感が含まれる。
【0009】
口腔ヘルペスは、抗ウイルス薬により処置し得、それは症状の持続時間を減らすことができるが、原因であるウイルスを完全に除去することはできない。口腔ヘルペス感染の症状が治癒した後、ヘルペスウイルス(例:HSV-1またはHSV-2)は大抵、顔面神経分枝(facial nerve branches)で休止状態を続け、およびウイルスは、元の感染の部位と同じ口または顔の領域に口唇ヘルペスを引き起こすために周期的に再活性化し得る。いくらかのヒトでは、症状が存在しなくても伝染は可能であり得るが、ウイルスは症状を示さないままである。
【0010】
性器ヘルペスもまた、抗ウイルス薬により処置することができ、それは症状の持続時間を短かくし得る。しかしながら、口腔ヘルペスに関して、原因であるウイルスを完全に人体から根絶する認可された薬物は存在しない。
【0011】
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ヒトパピローマウイルス感染の原因であり、それは大抵が症状を引き起こさず、および自然に消散する。しかしながら、場合によっては、感染が持続し、およびいぼ(疣贅)または前ガン状態の病変をもたらす。前ガン状態の病変は、複数のガンの種類のリスクを増大させ得、およびこれらには、頸部(子宮頸部)、膣、陰茎、肛門、口および咽喉(咽頭)のガンが含まれる(Ljubojevic(リュボイエビック)、Suzana(シュザナ);Skerlev(スケルレフ)、Mihael(ミハイル)(2014)。「HPV-associated diseases(HPV関連疾患)」、Clinics in Dermatology(クリニックス・イン・ダーマトロジー)。32(2):227-234。)。HPVは世界的に最も普通な性感染であり、およびほとんどの人がそれらの生涯のある時点で感染する(Milner(ミルナー)、Danny(ダニー)A.(2015)。Diagnostic Pathology: Infectious Diseases(ダイアグノスティック・パソロジー.インフェクシャス・ディジージズ)。Elsevier Health Sciences(エルゼビア・ヘルス・サイエンシーズ)。p. 40)。
【0012】
細菌および真菌感染は世界中で共通する。そのような感染を処置するために様々な薬剤が開発されてきており、およびこれらは特定の、または広範なタイプの細菌および真菌の種および株を標的とし得る。抗生物質耐性、およびより一層最近では、耐抗真菌性がますます広まり、および世界規模で問題化がさらに高まってきている。このことを念頭に置いて、細菌および真菌感染を処置することができる新しい薬剤に対する世界的な必要性がある。
【0013】
ヘルペスウイルス(特に単純ヘルペスウイルス)およびヒトパピローマウイルスの流行、ならびにこれらのウイルスに関連する疾患の範囲を踏まえ、これらのウイルスを標的とし、およびこれらのウイルスに関連する疾患を治療することができる処置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の態様において、下記式を有する化合物が提供され:
【化1】
(式I)
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは、次の式を有する第四級アミンであり:
【化2】
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
Rは、例えば、8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。なるべくなら、Rは、8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖である。
【0016】
Rは、例えば、式(Ia)に従う第四級アミンであってよく、そこで、RaおよびRbは各々8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。RaおよびRbは各々異なる数の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。
【0017】
なるべくなら、RaおよびRbは各々、8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖である。
【0018】
飽和線状アルカン鎖は、次の式によって代表され得る:
【化3】
式中、nは繰返し単位の数であり、それは線状アルカン鎖において炭素原子の数である。そのように、Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、Rは、
【化4】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。Rが上で示すように式(Ia)を有する第四級アミンである場合、R
aおよびR
bは
【化5】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。
【0019】
Aには、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば、塩化物(Cl-)イオン、臭化物(Br-)イオン、ヨウ化物イオン(I-)および/またはフッ化物イオン(F-)などのようなものが含まれ得る。Aは、例えば、他の有機および非有機酸のイオン、例えば、硫酸(SO4
2-)、炭酸(CO3
2-)、炭酸水素(HCO3
-)、硫酸水素(HSO4
-)、酢酸イオン(CH3COO-)、および/またはギ酸イオン(HCOO-)などのようなものを含み得る。Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、なるべくなら、Aは二つのハロゲン化物イオン、例えば、二つの塩化物イオンを含み、そのようにして、-2の合計電荷をもつ。Rが上記の式(Ia)を有する第四級アミンである場合、なるべくなら、Aは二つの塩化物イオンおよび臭化物イオンを含み、かくして-3の合計電荷を有する。
【0020】
なるべくなら、上記の式Iの化合物は次の式を有し、すなわち:
【化6】
式II
または
【化7】
式III
である。
【0021】
式IIを参照し、Rは10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖であり;およびAは二つの塩化物イオンである。式IIIを参照し、Rは第四級アミンであり、そこでは、RaおよびRbは各々10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であり、およびAは二つの塩化物イオンおよび一つの臭化物イオンである。
【0022】
本発明の別の実施態様において、次の式を有する化合物を提供する:
【化8】
式IV
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一またはそれよりも多く(一以上とも言う)のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化9】
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンであり、および式中、Xは2、4、6、8または10である。
【0023】
Rは、例えば、8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であり得る。なるべくなら、Rは、8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖である。
【0024】
Rは、例えば、式(Ia)に従う第四級アミンであってよく、そこで、RaおよびRbは各々8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であり得る。RaおよびRbは各々異なる数の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。
【0025】
なるべくなら、RaおよびRbは各々8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖である。
【0026】
飽和線状アルカン鎖は、次の式によって代表され得:
【化10】
式中、nは繰返し単位の数であり、それは線状アルカン鎖において炭素原子の数である。そのように、Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、Rは、
【化11】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。Rが上で示すように式(Ia)を有する第四級アミンである場合、R
aおよびR
bは
【化12】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。
【0027】
Aには、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば、塩化物(Cl-)イオン、臭化物(Br-)イオンヨウ化物イオン(I-)および/またはフッ化物イオン(F-)などのようなものが含まれ得る。Aは、例えば、他の有機および非有機酸のイオン、例えば、硫酸(SO4
2-)、炭酸(CO3
2-)、炭酸水素(HCO3
-)、硫酸水素(HSO4
-)、酢酸(CH3COO-)、および/またはギ酸イオン(HCOO-)などのようなものを含み得る。Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、なるべくなら、Aは二つのハロゲン化物イオン、例えば、二つの塩化物イオンを含み、そのようにして、-2の合計電荷をもつ。Rが上記の式(Ia)を有する第四級アミンである場合、なるべくなら、Aは二つの塩化物イオンおよび臭化物イオンを含み、かくして-3の合計電荷を有する。
【0028】
なるべくなら、上記の式IVの化合物は次の式を有し:
【化13】
式V
または
【化14】
式(VI)
式中、Xは4、8または10である。
【0029】
式Vを参照し、Rは10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖であり;およびAは二つの塩化物イオンである。
【0030】
式VIを参照し、Rは第四級アミンであり、そこでは、RaおよびRbは各々10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖であり、およびAは二つの塩化物イオンおよび一つの臭化物イオンである。
【0031】
本出願人は、式I-VIによって代表される上記化合物が驚くべき抗菌および抗真菌活性を実証することを見出した。何ら特定の理論によって縛られることなく、この抗菌および抗真菌活性は、芳香族チモールおよびカルバクロール基、第四級アンモニア基ならびに長鎖アルキル基の組合せから生じ得ると仮定される。加えて、式I-IIIによる化合物を臭素と錯化することは、それらの抗菌性および抗真菌性をさらに高め得る。
【0032】
追加的に、本出願人は、コンピュータモデリングに基づいて、式I-VIによる化合物がチモール、カルバクロール、第四級アンモニアおよび長鎖アルカン基の組合せを含み、抗ウイルス活性を有し得、例えば、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルスおよびヒトパピローマウイルスに対して効果的であることを見出した。
【0033】
何ら特定の理論に縛られることなく、式I-VIの化合物は、ウイルス-標的細胞の相互作用に先立ち、主な生体高分子、例えば、タンパク質、脂質および核タンパク質などのようなものとの化学的相互作用のためにウイルス粒子に対して直接的な抗ウイルス活性を有することができるはずであると予測される。式I-VIの化合物は、ウイルスおよび標的細胞相互作用の初期段階で、ウイルス接着、細胞受容体相互作用および細胞へのウイルス侵入を含むものを破壊することができなければならない。式I-VIによる化合物は、ウイルスによって細胞内感染した細胞との相互作用中にアポトーシス細胞死誘導剤として強力であるはずである。
【0034】
本発明の別の態様では、上記式IないしVIによる化合物を含む、薬剤組成物(例えば、ヒト薬剤組成物および/または獣医学薬剤組成物)を提供する。
【0035】
薬剤組成物は、経口、直腸、非経口、経皮、静脈内、動脈内、骨内注入、脳内、脳室内、髄腔内、筋肉内、皮下、膣内、腹腔内、硬膜外、脳内(大脳内)、硝子体内、経粘膜、口腔内(頬側)、または鼻腔施与の一以上について適した形態であり得る。
【0036】
薬剤組成物は、式IないしVIによる化合物、薬学的に許容可能な担体、例えば、水溶液などのようなもの、非毒性賦形剤、塩および保存剤を含めて、緩衝剤およびその他同種類のものなどを含み得る。
【0037】
適切な水性および非水性薬学的担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその他同種類のものなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油などのようなもの)、および注入可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルなどのようなものが含まれる。
【0038】
薬学的に許容可能な賦形剤の例には、粘着防止剤(antiadherents)、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、香味剤、流動促進剤、滑剤、保存剤、吸着剤および甘味剤が含まれる。
【0039】
本発明の薬剤組成物はまた、添加剤、例えば、制限されないが、保存剤、湿潤剤、乳化剤、界面活性剤および分散剤などのようなものを含んでもよい。抗菌および抗真菌剤は、微生物の増殖を防ぐために含むことができ、および例えば、m-クレゾール、ベンジルアルコール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびその他同種類のものなどを含む。保存剤が含まれる場合、ベンジルアルコール、フェノールおよび/またはm-クレゾールが好ましく;しかしながら、保存剤は決してこれらの例に制限されない。さらに、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、およびその他同種類のものなどを含めることが望ましい場合がある。
【0040】
経口投与に適した薬剤組成物は、例えば、錠剤、丸剤、糖衣剤、散剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁物、カシェ剤およびその他同種類のものなどの形態であり得る。組成物は薬学的に許容可能な担体、例えば、リポソーム、ラクトース、トレハロース、スクロース、マンニトール、キシリトール、結晶セルロース、キトサン、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、シリカおよびその他同種類のものなどを含み得る。
【0041】
薬剤組成物は、例えば、本発明の化合物を固形賦形剤と組み合わせ、混合物を(必要ならば)粉砕し、そしてカプセル、例えば、ゼラチンカプセル、ゼラチンおよびコーティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)または菜食主義者に適したカプセル組成からなるソフトシールカプセルに挿入することによって得ることができる。ソフトカプセルにおいて、組成物は安定剤を用いてか、または用いずに、適切な液体、例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどのようなものにおいて溶解または懸濁させてよい。
【0042】
本発明のさらなる態様では、薬として使用するための上記の化合物または薬剤組成物を提供する。
【0043】
本発明のさらなる態様において、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、細菌感染および/または真菌感染の処置に使用するための上記の化合物または薬剤組成物を提供する。
【0044】
ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、動物ヘルペスウイルスで、例えば、仮性(偽)狂犬病ウイルス、およびウシヘルペスウイルス1などのようなものの一以上であり得る。
【0045】
なるべくなら、ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1または単純ヘルペスウイルス2)またはサイトメガロウイルスである。
【0046】
細菌感染には、グラム陽性および/またはグラム陰性菌によって引き起こされるものが含まれ得る。
【0047】
細菌感染は、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)および/またはサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)細菌によって引き起こされ得る。
【0048】
真菌感染は、表在性真菌症(superficial mycoses)、皮膚真菌症、皮下真菌症、および/または全身性真菌症であり得る。
【0049】
真菌感染は、例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされ得る。
【0050】
本発明のさらなる態様において、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、細菌感染および/または真菌感染を処置するための薬の製造における上記の化合物または薬剤組成物の使用を提供する。
【0051】
ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、動物ヘルペスウイルスで、例えば、仮性狂犬病ウイルス、およびウシヘルペスウイルス1などのようなものの一以上であり得る。
【0052】
なるべくなら、ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1または単純ヘルペスウイルス2)またはサイトメガロウイルスである。
【0053】
細菌感染には、グラム陽性および/またはグラム陰性菌によって引き起こされるものが含まれ得る。
【0054】
細菌感染は、例えば、スタフィロコッカス・アウレウスおよび/またはサルモネラ・エンテリカ細菌によって引き起こされ得る。
【0055】
真菌感染は、表在性真菌症、皮膚真菌症、皮下真菌症、および/または全身性真菌症であり得る。
【0056】
真菌感染は、例えば、カンジダ・アルビカンスによって引き起こされ得る。
【0057】
本発明のさらなる態様では、上記のような化合物または薬剤組成物を対象に施与するステップを含む、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、細菌感染および/または真菌感染の処置の方法を提供する。
【0058】
ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、動物ヘルペスウイルスで、例えば、仮性狂犬病ウイルス、およびウシヘルペスウイルス1などのようなものの一以上であり得る。
【0059】
なるべくなら、ヘルペスウイルスは単純ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1または単純ヘルペスウイルス2)またはサイトメガロウイルスである。
【0060】
細菌感染には、グラム陽性および/またはグラム陰性菌によって引き起こされるものが含まれ得る。
【0061】
細菌感染は、例えば、スタフィロコッカス・アウレウスおよび/またはサルモネラ・エンテリカ細菌によって引き起こされ得る。
【0062】
真菌感染は、表在性真菌症、皮膚真菌症、皮下真菌症、および/または全身性真菌症であり得る。
【0063】
真菌感染症は、例えば、カンジダ・アルビカンスによって引き起こされ得る。
【0064】
本発明のさらなる態様において、以下のステップを含む、式I-IIIにおいて上に示された化合物の生産のためのプロセスが提供され:
i)カルバクロールを、式:
【化15】
(式VII)
を有する化合物を形成するために、R
2CH
2COClと反応させることであり、式中、R
2はハロゲン、例えば、塩素または臭素であり;
ii)式
【化16】
(式VIII)
を有する化合物を、式
【化17】
(式IX)
を有する化合物を形成するために、式
【化18】
(式VII)
を有する化合物と反応させることであり、
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり;またはRは、次の式を有する四級アミンであり:
【化19】
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり;
iii)チモールを、式
【化20】
(式X)
を有する化合物を形成するために、R
2CH
2COClと反応させることであり、式中、R
2はハロゲン、例えば、塩素または臭素であり;
iv)式
【化21】
(式IX)
を有する化合物を、式
【化22】
(式I)
を有する最終生成物を形成するために、式
【化23】
(式X)
を有する化合物と反応させることであり、
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり;およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式を有する第四級アミンであり:
【化24】
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである。
【0065】
Rは、例えば、8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。なるべくなら、Rは、8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する飽和線状アルカン鎖である。
【0066】
Rは、例えば、式(Ia)に従う第四級アミンであってよく、そこで、RaおよびRbは8および18個の間の炭素原子、例えば、8および16個の炭素原子、例えば、8および14個の炭素原子、例えば、9および15個の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖である。RaおよびRbは各々異なる数の炭素原子を有する線状または分枝状飽和アルカン鎖であってよい。なるべくなら、RaおよびRbは各々8および16個の間の炭素原子、例えば、10個の炭素原子を有する線状飽和アルカン鎖である。
【0067】
飽和線状アルカン鎖は、次の式によって代表され得:
【化25】
式中、nは繰返し単位の数であり、それは線状アルカン鎖において炭素原子の数である。そのように、Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、Rは、
【化26】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。Rが上で示すように式(Ia)を有する第四級アミンである場合、R
aおよびR
bは
【化27】
であり、式中、nは8および16の間、例えば、10であるのが好ましい。
【0068】
Rが8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、プロセスには、式
【化28】
(式XI)
を有する化合物を、次の式
【化29】
(式VI)
を有するジ第三級アミンを形成するために、ジメチルアミンの四モル当量と反応させるステップをさらに含み得、式中、Rcは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり;およびR
1は、ハロゲン、例えば、塩素または臭素であり;およびRは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である。
【0069】
Rが次の式:
【化30】
を有する第四級アミンであり、式中、R
aおよびR
bは各々、8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である場合、プロセスには、式
【化31】
(式XI)
を有する化合物を、次の式
【化32】
(式Ib)
を有する第四級アミンを形成するために、ジメチルアミンの三モル当量と反応させるステップをさらに含み得、式中、Rcは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびR
1はハロゲン、例えば、臭素または塩素であり;および式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖である。
【0070】
ステップIIおよびIVにおいて反応は双方とも-10℃の温度で行い得る。
【0071】
本プロセスは、さらに分離およびまたは抽出の一以上のステップを含み得、例えば、分離ステップには、カラムクロマトグラフィー、低圧液体クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーおよびその他同種類のものなどが含まれ得る。精製ステップには、本技術において既知の標準的な精製プロセス、例えば、ろ過、蒸発、液-液抽出、結晶化、吸着、再結晶、クロマトグラフィー、蒸留およびその他同種類のものなどが含まれ得る。
【0072】
本発明のさらなる態様において、上記の式IV-VIを有する化合物の生産のためのプロセスが提供され、本プロセスは、式
【化33】
(式I)
を有する化合物を、式
【化34】
(式IV)
を有し、
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式:
【化35】
を有する第四級アミンであり、
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンである
化合物を形成するために、臭素と反応させる(例、錯化する)ことを含む。
【0073】
本発明のさらなる態様において、
図1、
図2または
図3を参照してここに実質記載される化合物の生産のためのプロセスが提供される。
【0074】
本発明のさらなる態様において、次の式を有する化合物が提供され:
【化36】
(式I)
式中、Rは8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり;およびAは-2の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;またはRは次の式:
【化37】
(Ia)
を有する第四級アミンであり、
式中、R
aおよびR
bは各々8および20個の間の炭素原子を有するアルカン鎖であり、およびAは-3の合計電荷を有する一以上のアニオンであり;
および化合物は随意に臭素と錯化される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明を次に、添付の図面、
図1ないし7を参照してより一層詳細に説明する。
【
図1】本発明の化合物を合成するための例のプロセスを明らかにする。
【
図2】本発明のさらなる化合物を合成するための例のプロセスを明らかにする。
【
図3】本発明のさらなる化合物を合成するための例のプロセスを明らかにする。
【
図4】Vero(ベロ)細胞に対する0μg/mLおよび50μg/mL間の濃度での本発明の化合物の細胞傷害性(細胞毒性)テストの結果、およびVero細胞における単純ヘルペスウイルス1の拡がりおよびプラーク形成に対する本発明の化合物の効果を明らかにする。
【
図5】Vero細胞に対する0μg/mLおよび100μg/mL間の濃度での本発明のさらなる化合物の細胞傷害性テストの結果、および単純ヘルペスウイルス1の拡がりおよびプラーク形成に対する本発明のさらなる化合物の効果を明らかにする。
【
図6】Vero細胞に対する0μg/mLおよび100μg/mL間の濃度での本発明のさらなる化合物の細胞傷害性テストの結果を明らかにする。
【
図7】BSC40細胞におけるワクシニアウイルスプラーク形成に対する本発明の化合物の効果の結果を例示する。
【0076】
本発明の化合物の生産のためのプロセス
【0077】
化合物2
N1-{2-[2-メチル-5-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-2-オキソエチル}-N1,N1,N10,N10-テトラメチル--N10-{2-[5-メチル-2-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-2オキソエチル}デカン-1,10-ビス(アミニウム)ジクロリド
【0078】
図1は、化合物2を合成するために、例のプロセスを示し、それは上記式IIによって規定される本発明の化合物である。
【0079】
第一のステップにおいて、1,10-ジブロモデカン(化合物5)を、1,10-ビス(ジメチルアミノ)デカン(化合物6)を形成するために、4モル当量のジメチルアミンと反応させる。反応はベンゼンにおいて4-5℃で起こし、および続いて酸抽出、それに続くアルカリ処理およびジエチルエーテルでの抽出のステップが続く。抽出したフラクションを硫酸マグネシウムにて乾燥し、および次いで真空蒸留により精製する。
【0080】
第二ステップにおいて、カルバクロール(2-メチル-5-(1-メチルエチル)-フェノール)(化合物7)を、化合物8を形成するために、塩化クロロアセチルと反応させる。反応を-10℃で1時間行い、および次いで室温で5時間撹拌する。次いで反応混合物を酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム、および次いで水により処理する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、および溶媒を真空下で除去する。
【0081】
第三ステップにおいて、化合物8を、化合物9を形成するために、1,10-ビス(ジメチルアミノ)デカン(化合物6)と反応させる。反応はベンゼンにおいて15分間化合物6および化合物8を沸騰させることによって行い、および次いで反応混合物を室温で24時間放置する。次いで酢酸エチルを反応混合物に加え、上層を除去し、および下層を残留物として分離する。次いで、残留物(化合物9を含む)を第五ステップにおいて用いる。
【0082】
第四ステップにおいて、チモール(2-イソプロピル-5-メチルフェノール)(化合物10)を、化合物11を形成するためにクロロアセチルクロリドと反応させる。反応を-10℃で1時間行い、および次いで室温で5時間撹拌する。次いで反応混合物を酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム、および次いで水で処理する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、および溶媒を真空下で除去する。
【0083】
第五ステップにおいて、第三ステップの残留物(化合物9を含む)を、最終生成物:化合物2を形成するために化合物11と反応させる。反応はベンゼンにおいて化合物9および11を15分間沸騰させ、および次いで反応混合物を室温で24時間放置することによって行う。次いで酢酸エチルを反応混合物に加え、および上層を除去し、および下層を残留物として分離する。
【0084】
得られる残留物を次いでアセトンにおいて溶解し、およびジエチルエーテルの添加によって化合物2を沈殿させる。
【0085】
さらなる精製および分離ステップもまた、例えば、上記のステップのそれぞれの間および最終化合物(化合物2)を精製するためにプロセスが完了した後に、そのプロセスにおいて含まれてもよいことが理解されるであろう。
【0086】
分離ステップは、カラムクロマトグラフィー、低圧液体クロマトグラフィー、高性能(高速)液体クロマトグラフィーおよびその他同種類のものなどを実行するステップを含み得る。精製ステップは、本技術で既知の標準的な精製プロセス、例えば、ろ過、蒸発、液-液抽出、結晶化、吸着、再結晶、クロマトグラフィー、蒸留およびその他同種類のものなどを含んでよい。
【0087】
化合物2は褐色の吸湿性粉体として分離され、以下の性質をもつ。
【0088】
外観:褐色吸湿性粉体
分子式:C38H62N2O4Cl2
分子量:681.81gmol-1
融点:92-96℃
水溶液pH=6
溶解度:水、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)において可溶性;ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびヘキサンにおいて不溶性
【0089】
1H NMR(DMSO/CCl4-1/3)δ1.18(d,6H,-CH3)、1.22(d,6H,-CH3)、1.37-1.40(m,12H,-CH2-)、1.81-1.85(m,4H,-CH2-)、2.17(s,3H,Ar-CH3)、2.32(s,3H,Ar-CH3)、2.87(q,1H,-CH)、3.04(q,1H,-CH)、3.47(s,12H,+N(CH3)2)、3.80-3.85(m,4H,+N-CH2-)、5.33(s,4H,-(C=O)-CH2-N+)、6.96-7.02(m,4H,Ar-H)、7.16-7.20(m,2H,Ar-H)。
【0090】
化合物4
二臭素錯体
N1-{2-[2-メチル-5-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-2-オキソエチル}-N1,N1,N10,N10-テトラメチル--N10-{2-[5-メチル-2-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-2オキソエチル}デカン-1,10-ビス(アミニウム)ジクロリド
【0091】
図2は、化合物4を合成するために、例のプロセスを示し、それは本発明のさらなる化合物であり、および上記の式Vによって規定される。
【0092】
化合物2は化合物2について上に述べたプロセスに従って合成した。
【0093】
化合物2の形成後、化合物4を形成するために化合物2を臭素と反応させた。
【0094】
化合物2について上述したように、さらなる精製および分離ステップもまた、そのプロセスにおいて例えば、上記の各ステップ間および最終化合物(化合物4)を精製するためにプロセスが完了した後に含まれてもよいことが理解されるであろう。
【0095】
分離ステップは、カラムクロマトグラフィー、低圧液体クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーおよびその他同種類のものなどを実行するステップを含み得る。精製ステップは、本技術において既知の標準的な精製プロセス、例えば、ろ過、蒸発、液-液抽出、結晶化、吸着、再結晶、クロマトグラフィー、蒸留およびその他同種類のものなどを含んでよい。
【0096】
化合物4は、オレンジ色のガムとして分離され、以下の特性を有した。
外観:オレンジガム
分子式:C38H62N2O4Cl2Br4
分子量:1001.41gmol-1
溶解度:ジメチルスルホキシド(DMSO)において可溶性;水において不溶性。
【0097】
1H NMR(DMSO/CCl4-1/3)δ1.18-1.22(m,12H,-CH3)、1.37-1.40(m,12H,-CH2-)、1.81-1.85(m,4H,-CH2-)、2.17(s,3H,Ar-CH3)、2.32(s,3H,Ar-CH3)、2.87(q,1H,-CH)、3.04(q,1H,-CH)、3,47(s,12H,+N(CH3) 2)、3.80-3.85(m,4H,+N-CH2-)、5.33(s,4H,-(C=O)-CH2-N+)、6.96-7.02(m,4H,Ar-H)、7.16-7.20(m,2H,Ar-H)。
【0098】
化合物3
系統名:N1-{{2-[2-メチル-5-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-(2-オキソエチル)(ジメチル)アザニウミルブロマイド}デシル}-N10-{2-[5-メチル-2-(プロパン-2-イル)フェノキシ]-2オキソエチル}-N1,N1,N10,N10-テトラメチルデカン-1,10-ビス(アミニウム)ジクロリド
【0099】
図3は化合物3を合成するために、例のプロセスを示し、それは上記の式IIIによって規定される本発明の化合物である。
【0100】
第一ステップにおいて、1,10-ジブロモデカン5を、化合物12を形成するために、3モル当量のジメチルアミンと反応させる。反応はベンゼンにおいて4-5℃で起こし、および続いて酸抽出のステップが続き、アルカリ処理およびジエチルエーテルでの抽出が続く。抽出したフラクションを硫酸マグネシウムで乾燥し、および次いで真空蒸留により精製する。
【0101】
第二ステップにおいて、チモール(2-イソプロピル-5-メチルフェノール)(化合物10)を、化合物11を形成するために、塩化クロロアセチルと反応させる。反応を-10℃で1時間行い、および次いで室温で5時間撹拌する。次いで反応混合物を酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム、次いで水で処理する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、および溶媒を真空下で除去する。
【0102】
第三ステップでは、化合物11を、化合物13を形成するために、化合物12と反応させる。反応は、化合物11および12をベンゼンにおいて15分間沸騰させ、および次いで反応混合物を室温で24時間放置することによって行われる。次いで酢酸エチルを反応混合物に加え、および上層を除去し、および下層を残留物として分離する。次いで残留物(化合物13を含む)を第五ステップにおいて使用する。
【0103】
第四ステップにおいて、カルバクロール(2-メチル-5-(1-メチルエチル)-フェノール)(化合物7)を、化合物8を形成するために、クロロアセチルクロリドと反応させる。反応を-10℃で1時間行い、および次いで室温で5時間撹拌した。次いで反応混合物を酸で洗浄し、続いて重炭酸ナトリウム、および次に水で処理する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、および溶媒を真空下で除去する。
【0104】
第五ステップでは、第三ステップの残留物(化合物13を含む)を、最終生成物:化合物3を形成するために、化合物8と反応させる。反応は化合物8および13をベンゼンにおいて15分間煮沸すること、および次いで反応混合物を室温で24時間放置するによって行う。次いで酢酸エチルを反応混合物に加え、および上層を除去し、および下層を残留物として分離する。
【0105】
次いで残留物をアセトンに溶解し、および化合物3をジエチルエーテルの添加によって沈殿させる。
【0106】
さらなる精製および分離ステップもまた、そのプロセスにおいて、例えば、上記の各ステップ間およびまた最終化合物(化合物3)を精製するためにステップが完了した後にも含まれてもよいことが理解されるであろう。
【0107】
分離ステップには、カラムクロマトグラフィー、低圧液体クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーおよびその他同種類のものなどを行うステップを含み得る。精製ステップには、本技術において既知の標準的な精製プロセス、例えば、ろ過、蒸発、液-液抽出、結晶化、吸着、再結晶、クロマトグラフィー、蒸留およびその他同種類のものなどを含んでよい。
【0108】
化合物3は、褐色の吸湿性粉体として分離され、以下の特性をもつ。
外観:褐色の吸湿性粉体
分子式:C50H88N3O42ClBr
分子量:946.06gmol-1
融点:75-78℃
水溶液pH=7.2
溶解度:水、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)において可溶性;ジエチルエーテルおよび酢酸エチルにおいて不溶性。
界面活性剤の活性を表示する
【0109】
1H NMR(DMSO/CCl4-1/3)δ1.l8-1.23(m,12H,-CH3)、1.38-1.42(m,24H,-CH2-)、1.80-1.84(rn,8H,-CH2-)、2.18(s,3H,Ar-CH3)、2.34(s,3H,Ar-CH3)、2.90-3.10(m,2H,-CH)、3.45-3.50(m,18H,+N(CH3)2)、3.75-3.80(m,8H,+N-CH2-)、5.22(s,4H,-(C=O)-CH2-N+)、6.96-7.02(m,4H,Ar-H)、7.16-7.20(m,2H,Ar-H)。
【実施例】
【0110】
例1
【0111】
化合物2、3および4を抗細菌および抗真菌活性について試験した。
【0112】
各化合物の最小発育阻止濃度(Minimal inhibitory concentration)(MIC)をブロス希釈アッセイ(broth dilution assay)によって試験した。
【0113】
機器
マクファーランド標準0.5(McFarland standard 0.5)
ファルコン丸底(Falcon round-bottom)5mlチューブ
処分可能なループ(Disposable loops)(1μlおよび10μl)
目盛り付きピペット(Graduated pipettes)(20μl-1000μl)
処分可能なペトリ皿(Disposable Petri dishes)
【0114】
メディア
滅菌正常塩類溶液(Sterile normal saline)
TSB(Tryptic Soy Broth、トリプティックソイブロス)
TSA(Tryptic Soy Agar、トリプティックソイ寒天)
【0115】
細菌および真菌株
Salmonella enterica serovar Typhimurium(サルモネラ・エンテリカ・セロバー・ティフィムリウム、サルモネラ・エンテリカ・血清型ネズミチフス菌などとも言う)ATCC 14028
Staphylococcus aureus(スタフィロコッカス・アウレウス、黄色ブドウ球菌などとも言う)ATCC 6538
Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)ATCC 10231
【0116】
化合物2、3および4をジメチルスルホキシド(DMSO)で10mg/mlに希釈し、およびTSBにおいて試験するために後に2倍に希釈した。
【0117】
方法
【0118】
1日目
【0119】
接種物の標準化
【0120】
純粋なo/n(オーバーナイト、夜通し)培養物から、少なくとも3-4個のコロニーの材料を選び、およびチューブにおいて4mlの塩類溶液に全体的に懸濁した。懸濁物を混合した。
【0121】
接種物の濁度は、背景として黒色の線を有する白色の紙を用いて、マクファーランド0.5標準と視覚的に比較することによって標準のものと一致するように調整した。
【0122】
このコースで試験した種について、マクファーランド0.5懸濁物を以下のように希釈した。
Gr-neg.:10μl McFarl. 0.5から10mlのブロス
Gr-pos.:50μl McFarl. 0.5から10mlのブロス
【0123】
懸濁物を15分以内で接種のために使用した。
【0124】
接種およびインキュベーション
【0125】
目盛り付きピペットを使用して、ファルコン丸底5mlチューブに、500μlの2倍希釈の抗微生物剤を含む500μlの接種材料の懸濁物を接種した。
【0126】
チューブを密封し、および37℃で18-22時間インキュベートした。これは増殖培地を失うことを避けるため、および交差汚染を避けるために行った。
【0127】
マクファーランド0.5はおよそ108CFU/mlである。接種材料の標準化は不可欠であり、それは結果の解釈が一定の接種材料に基づくからである。
【0128】
各チューブは、細菌接種後、およそ5×105-1×106CFU/mlおよび5×103-1×104CFU/mlの酵母を含有した。
【0129】
2日目
【0130】
接種材料の懸濁物の純度を調べた。
【0131】
3つの陽性コントロールチューブでの増殖を調べた。
【0132】
最小発育阻止濃度(MIC)を、目に見える増殖を伴わない抗菌剤の最低濃度として記録した。
【0133】
結果を以下の表1に説明する。
【0134】
要約すると、試験したすべての化合物は、カンジダ・アルビカンスに対する強力な抗真菌活性、ならびにスタフィロコッカス・アウレウスおよびサルモネラ・エンテリカ・セロバー・ティフィムリウムに対する抗細菌活性を実証した。
【0135】
【0136】
例2
本発明の化合物の抗ウイルス効果および細胞傷害性は、異なる哺乳動物細胞系において化合物2、3および4を試験することによって研究した。
【0137】
材料および方法
【0138】
細胞およびウイルス
【0139】
単純ヘルペスウイルス-1(HSV1)およびワクシニアウイルス(VV)の両方を試験し、および使用した細胞系には、HeLa(ヒーラ)、BSC40およびVero細胞が含まれた。
【0140】
HeLa、VeroおよびBSC40細胞を、5%CO2インキュベーターにおいて、37℃で、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium)(DMEM)で培養した。
【0141】
ワクシニアウイルスのウエスタンリザーブ株(Western Reserve strain)(WR-VV)をBSC40細胞中で増幅し、滴定し、および-80℃で貯蔵した。
【0142】
単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)をVero細胞において増幅し、滴定し、および-80℃で貯蔵した。
【0143】
化合物および試薬
化合物2、3および4(粉体形態において)を、1mlでの0.2gの濃度のストック溶液を得るために、無水エタノールに溶解した。アリコートを-20℃で貯蔵した。実験に先立ち、新鮮な段階希釈を無血清増殖培地(DMEM)において行った。
【0144】
細胞傷害性
化学物質の細胞傷害性効果は、HeLa、BSC40およびVero細胞にてテストした。翌日にプレートが80%稠密(コンフルエント)になるように、細胞を12ウェルプレートに播種した。化合物2、3および4を様々な濃度で細胞に適用した。30分の前処理の後、同じ濃度の化合物2、3および4の存在下で増殖培地を細胞に添加した。細胞を毎日モニターし、処理後48時間または72時間で固定し、および染色し、および次いで撮影した。すべてのサンプルを室温で20分間H2Oにおいて4%ホルムアルデヒドで固定し、および続いて室温にて30分間クリスタルバイオレットにより染色した。
【0145】
ウイルス感染およびプラークアッセイ
【0146】
新鮮で稠密な細胞を、37℃で1時間、WR-VVおよびHSV-1(6-ウェルプレートまたは12ウェルプレートにおいてウェルあたりおよそ200から300PFU)に感染させた。細胞を洗浄し、および1%アガロースを含有する増殖培地において培養し、および感染後の2日目に固定した。
【0147】
あるいはまた、感染に先立ち、細胞を無血清ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)または異なる濃度の化合物を含有するDMEMにより前処理し、および細胞が上記のように固定されるまで、実験を通して化合物2および3を培養物において残した。いくらかの実験において、寒天なしで液体プラークアッセイを実行した。
【0148】
結果
【0149】
異なる哺乳動物細胞系における化合物の細胞傷害性
【0150】
化合物2、3および4の抗ウイルス効果を試験するために、化合物の適切な希釈を、化合物が細胞に対して毒性でないように、および細胞生存率が影響を受けないように選定した。異なる哺乳動物細胞系、例えば、HeLa、BSC40およびVero細胞などのようなものにおいて種々の化合物濃度を試験した。
【0151】
夜通し培養した細胞を、無血清培地において高ないし低用量の化合物2、3および4により30分間前処理した。次いで、実験を通して、培地を、化合物2、3および4を含有する通常の増殖培地と交換した。細胞を72時間まで毎日モニターし、次いで固定し、染色し、および写真撮影した。
図4、5および6に示すように、この実験は、3つの化合物すべてについて、細胞が25から100μg/mlまでの濃度にて化合物2、3および4を許容することを明らかにした。
図4および5のそれぞれにおいてCのしるしのある行(Rows、横列)、および
図6は、HSV 1に感染させず、化合物2、3および4で処理したVero細胞の処理の結果を例示する。
【0152】
HSV 1の拡がりおよびウイルスプラーク形成。
化合物2および3の抑制効果をVero細胞に対してモニターした。細胞を異なる濃度の化合物2および3により前処理し、続いて緩衝剤またはHSV 1を含む緩衝剤で処理した。感染の二日後、細胞を固定し染色して、および写真撮影した。化合物がHSV 1ウイルスの拡がりまたはプラーク形成を抑制することができるかどうかを定めるために、プラークアッセイを、拡がりを定めるために液体において(
図4および5の行A)ならびにプラーク数を定めるために寒天において(
図4および5の行B)実行した。
図4および5においてそれぞれ示すように、強い抑制効果が化合物2および3によって観察された。双方の化合物は、用量依存様式において、Vero細胞におけるHSV 1の拡がりならびにプラーク数を効果的に減少させる。
【0153】
化合物2および3は、ワクシニアウイルスプラーク形成に対して抑制効果をもたなかった。
【0154】
HSV 1ウイルスに対する化合物2および3の特異性を試験するために、化合物を、さらなるDNAウイルスであるワクシニアウイルスについても試験した。BSC40細胞を未処理のままにするか、または50mg/mlの濃度の化合物で前処理し、および次いで細胞をワクシニアウイルスに感染させ、および実験を通して並べてモニターした。
図7に示すように、化合物2または3のいずれもワクシニアウイルス(VV)プラーク形成を抑制せず、それは化合物2および3のHSV 1感染に対する抑制効果が高度に特異的であることを指し示す。
【0155】
上に述べた実験から、試験したすべての細胞が0から100μg/mlまでの濃度において化合物2、3および4に耐えることができると結論付けることができる。化合物2および3は双方とも、ウイルスの拡がりおよびプラーク形成の両方に関して、HSV-1感染Vero細胞に対して強力な抗ウイルス効果を実証する。50μg/mlの化合物の存在下、感染力は50%だけ減少した。100μg/mlの化合物の存在下、感染力は80%だけ減少した。試験化合物のいずれもワクシニアウイルスに対して活性がない。