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特許7069215腹膜透析濃縮液、腹膜透析バッグ、および連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析用のセット
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  • 特許-腹膜透析濃縮液、腹膜透析バッグ、および連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析用のセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】腹膜透析濃縮液、腹膜透析バッグ、および連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析用のセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20220510BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61M1/28 110
A61J1/10 333C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019560206
(86)(22)【出願日】2017-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2017083196
(87)【国際公開番号】W WO2018201443
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-05-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ル、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、タオ
(72)【発明者】
【氏名】マ、ジェンシン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン、ミンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャー、リチャード・アレン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ハイジュン
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/055283(WO,A1)
【文献】特開2006-000482(JP,A)
【文献】特表2014-514075(JP,A)
【文献】特表平4-505119(JP,A)
【文献】特表平05-502614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206802(US,A1)
【文献】登録実用新案第3160045(JP,U)
【文献】特開2007-260253(JP,A)
【文献】特表2010-531677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オールインワン濃縮液を備える腹膜透析濃縮液であって、腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、希釈液によって、前記オールインワン濃縮液は希釈または溶解されることができ、
前記オールインワン濃縮液のpHは、希釈される前にpH調整剤を添加することによって、4.0~8.0の範囲になるように調整され、
前記オールインワン濃縮液の前記pHは、希釈された後に4.0~8.0の範囲にあ
前記オールインワン濃縮液は、少なくとも1つの電解質塩、少なくとも1つの緩衝剤、および少なくとも1つの浸透剤を含み、
前記希釈液は、注射用水、または純水もしくは逆浸透水から直接生成された注射用水である、
腹膜透析濃縮液。
【請求項2】
前記pH調整剤は塩酸である、請求項1に記載の腹膜透析濃縮液。
【請求項3】
前記電解質塩は、ナトリウムの塩、カルシウムの塩、マグネシウムの塩、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含み、および/または
前記緩衝剤は、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含むアルカリ性緩衝剤であり、および/または
前記浸透剤は、デキストロース、イコデキストリン、グルコースポリマー、アミノ酸、小分子結晶グリセリン、ソルビトール、フルクトース、高分子ゲル、カチオン性ポリマー、ポリペプチド、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含む、
請求項に記載の腹膜透析濃縮液。
【請求項4】
前記腹膜透析濃縮液は、前記腹膜透析液を得るために2~20倍に希釈されることができる、
請求項1~のいずれかの腹膜透析濃縮液。
【請求項5】
前記腹膜透析濃縮液は8~12倍に希釈されることができる、請求項に記載の腹膜透析濃縮液。
【請求項6】
前記腹膜透析液は、連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析治療のために使用されることができ、および/または
前記希釈液は、注射用水、または純水もしくは逆浸透水から直接生成された注射用水である、
請求項1~のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を収容するためのシングルチャンバと、
希釈液供給源から希釈液を受け取るための、前記チャンバと流体接続された希釈液チューブと、
前記チャンバと流体接続された接続チューブと、
を備え、
前記希釈液は、前記腹膜透析濃縮液を希釈または溶解し、前記接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、前記希釈液チューブを介して前記チャンバに充填されことができる、シングルチャンバ腹膜透析バッグ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を収容するための第1のチャンバと、
剥離可能な溶着線によって前記第1のチャンバから分離された第2のチャンバと、
希釈液供給源から希釈液を受け取るための、空である前記第2のチャンバと流体接続された希釈液チューブと、
前記第2のチャンバと流体接続された接続チューブと、
を備え、
前記接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るために、前記腹膜透析濃縮液が希釈または溶解されるように、前記希釈液は、前記剥離可能な溶着線を破るように前記希釈液チューブを介して前記第2のチャンバに充填されることができる、デュアルチャンバ腹膜透析バッグ。
【請求項9】
連続携行式腹膜透析用のセットであって、前記セットは、請求項1~のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を含む、請求項に記載のシングルチャンバ腹膜透析バッグ、または請求項に記載のデュアルチャンバ腹膜透析バッグを備える、連続携行式腹膜透析用のセット。
【請求項10】
自動腹膜透析用のセットであって、前記セットは、請求項1~のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を含む、請求項に記載のシングルチャンバ腹膜透析バッグ、または請求項に記載のデュアルチャンバ腹膜透析バッグを備える、自動腹膜透析用のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析濃縮液、シングルチャンバ腹膜透析バッグ、デュアルチャンバ腹膜透析バッグ、マルチチャンバ腹膜透析バッグ、連続携行式腹膜透析用のセット、および自動腹膜透析用のセットに関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析(PD)は、通常腎臓によって除去される毒性物質および代謝産物を除去し、体液および電解質バランスの調節を支援するための処置である。本処置は、PD液を、導管を通じて腹膜腔に注入することによって果たされる。腹膜を介して患者の血漿および溶液間で浸透および拡散が生じる。プロセス全体を実現するために、PD製品は、滅菌されたPD液およびパッケージングを用いて開発される。
【0003】
連続携行式腹膜透析は、患者が1日に3~4回PD液を交換することを可能にするPDの1つの形態である。さらに、腹膜透析処置を自動的に果たすことができる自動腹膜透析もある。
【0004】
CAPDおよびAPDを実行するために、PD液を溶液バッグから腹膜腔に注入するために使用されるCAPDおよびAPD用のいくつかのセットが開発されている。
【0005】
PD液は、通常、溶液バッグに濃縮されていない状態で収容されている。換言すれば、PD液は、追加の希釈プロセスなく腹膜腔に注入されることができる。
【0006】
しかしながら、溶液の濃縮されていない状態により、PD液が充填された溶液バッグは比較的大きい容積を有し、これはより大きい保管スペースを必要とし、高コストにつながる。さらに、かかる溶液バッグを輸送することは容易ではない。
【発明の概要】
【0007】
先行技術に存在する課題の観点から、本発明の目的は、腹膜透析濃縮液、シングルチャンバ腹膜透析バッグ、デュアルチャンバ腹膜透析バッグ、マルチチャンバ腹膜透析バッグ、連続携行式腹膜透析用のセット、および自動腹膜透析用のセットを提供することである。
【0008】
この目的を達成するために、1つの態様では、オールインワン濃縮液または使用前に別個に貯蔵される少なくとも2つの濃縮液部分を備える腹膜透析濃縮液が提供され、ここにおいて、腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、希釈液によって、オールインワン濃縮液は希釈または溶解されることができる、もしくは少なくとも2つの濃縮液部分は希釈または溶解され、互いに混合されることができる。
【0009】
任意選択の実施形態によれば、オールインワン濃縮液は、少なくとも1つの電解質塩、少なくとも1つの緩衝剤、および少なくとも1つの浸透剤を含む。
【0010】
任意選択の実施形態によれば、少なくとも2つの濃縮液部分は、第1の濃縮液部分および第2の濃縮液部分を備え、第1の濃縮液部分は、少なくとも1つの電解質塩および少なくとも1つの浸透剤を少なくとも含み、第2の濃縮液部分は、少なくとも1つの緩衝剤を含む。
【0011】
任意選択の実施形態によれば、オールインワン濃縮液のpHは、希釈される前にpH調整剤を添加することによって4.0~8.0の範囲になるように調整され、オールインワン濃縮液のpHは、希釈された後に4.0~8.0の範囲にある。
【0012】
任意選択の実施形態によれば、第1の濃縮液部分のpHは、pH調整剤を添加することによって1.0~4.0の範囲になるように調整され、および/または第2の濃縮液部分は、6.5~8.0のpHを有する緩衝液として設計され、および/または第1の濃縮液部分ならびに/もしくは第2の濃縮液部分は、液体または急速溶解性顆粒の形態である。
【0013】
任意選択の実施形態によれば、pH調整剤は、塩酸である。
【0014】
任意選択の実施形態によれば、電解質塩は、ナトリウムの塩、カルシウムの塩、マグネシウムの塩、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含み、および/または緩衝剤は、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含むアルカリ性緩衝剤であり、および/または浸透剤は、デキストロース(dextrose)、イコデキストリン(Icodextrin)、グルコースポリマー(glucose polymer)、アミノ酸、小分子結晶グリセリン(small molecule crystal glycerin)、ソルビトール(sorbitol)、フルクトース(fructose)、高分子ゲル、カチオン性ポリマー(cationic polymer)、ポリペプチド(polypeptide)、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0015】
任意選択の実施形態によれば、腹膜透析濃縮液は、腹膜透析液を得るために2~20倍に希釈されることができる。
【0016】
任意選択の実施形態によれば、腹膜透析濃縮液は、8~12倍に希釈されることができる。
【0017】
任意選択の実施形態によれば、腹膜透析液は、連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析治療のために使用されることができ、および/または希釈液は、注射用水、もしくは純水または逆浸透水から直接生成された注射用水である。
【0018】
別の態様では、シングルチャンバ腹膜透析バッグが提供され、当該バッグは、腹膜透析濃縮液を収容するためのシングルチャンバと、希釈液供給源から希釈液を受け取るための、チャンバと流体接続された希釈液チューブと、チャンバと流体接続された接続チューブと、を備え、希釈液は、腹膜透析濃縮液を希釈または溶解し、接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、希釈液チューブを介してチャンバに充填されことができる。
【0019】
さらなる態様では、デュアルチャンバ腹膜透析バッグが提供され、当該バッグは、腹膜透析濃縮液を収容するための第1のチャンバと、剥離可能な溶着線によって第1のチャンバから分離された第2のチャンバと、希釈液供給源から希釈液を受け取るための、空である第2のチャンバと流体接続された希釈液チューブと、第2のチャンバと流体接続された接続チューブと、を備え、接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るために、腹膜透析濃縮液が希釈または溶解されるように、希釈液は、剥離可能な溶着線を破るように希釈液チューブを介して第2のチャンバに充填されることができる。
【0020】
別の態様では、マルチチャンバ腹膜透析バッグが提供され、当該バッグは、それぞれの剥離可能な溶着線によって互いに分離されている少なくとも4つのチャンバと、ここにおいて、少なくとも4つのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバは、濃縮液部分を個別に収容するためのものであり、希釈液供給源から希釈液を受け取るための、少なくとも4つのチャンバのうちの第1の空のチャンバと流体接続された希釈液チューブと、少なくとも4つのチャンバのうちの第2の空のチャンバと流体接続された接続チューブと、を備え、接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るために、希釈液が濃縮液部分を希釈または溶解させ互いに混合させるように、希釈液は、剥離可能な溶着線を破るように第1の空のチャンバに充填されることができる。
【0021】
さらなる態様では、連続携行式腹膜透析用のセットが提供され、当該セットは、腹膜透析濃縮液を含む、シングルチャンバ腹膜透析バッグ、またはデュアルチャンバ腹膜透析バッグ、またはマルチチャンバ腹膜透析バッグを備える。
【0022】
さらなる態様において、自動腹膜透析用のセットが提供され、当該セットは、腹膜透析濃縮液を含む、シングルチャンバ腹膜透析バッグ、またはデュアルチャンバ腹膜透析バッグ、またはマルチチャンバ腹膜透析バッグを備える。
【0023】
本発明によれば、腹膜透析濃縮液およびCAPD/APD用の対応するセットは、物流コストを節約し、容易に輸送し、最小限の保管スペースのみを必要とすることを可能にすることができる。
【0024】
本発明およびその利点は、以下の図面を参照していくつかの好ましい例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むことによってさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】PD濃縮液が充填された例示的なシングルチャンババッグを示す。
【0026】
図2】2つのチャンバのうちの1つにPD濃縮液が充填された例示的なデュアルチャンババッグを示す。
【0027】
図3】第1の濃縮液部分および第2の濃縮液部分が別個の様式で充填された例示的なマルチチャンババッグを示す。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0028】
本発明のいくつかの例示的な実施形態は、本発明の基本概念をよりよく理解するために、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【0029】
まず、濃縮されたPD液を保持するための例示的なシングルチャンババッグが、図1を参照して説明される。
【0030】
図1に示されるように、シングルチャンババッグは、主に、混合された濃縮液2が充填されるチャンバ1と、希釈液充填機(図示せず)に接続される希釈液チューブ3と、薬剤等の所望の物質をチャンバ1に注入することを可能にする注入ポート4と、CAPD/APD用のセットの対応する構成要素(図示せず)に接続される接続チューブ5とを備える。
【0031】
これも図1から分かるように、希釈液チューブ3は、チャンバ1と流体連通され、壊れやすいプラグ6、希釈液移送チューブ7、および希釈液コネクタ8を介して希釈液充填機に接続される。具体的には、希釈液チューブ3は、初期状態で濃縮液2がチャンバ1から流出することを防止することができる壊れやすいプラグ6と接続され、希釈液移送チューブ7は、壊れやすいプラグ6と、希釈液充填機と接続される希釈液コネクタ8との間に接続される。希釈液コネクタ7は、汚染を回避するためにカバー9によって覆われることができる。
【0032】
本発明の例示的な実施形態によれば、シングルチャンババッグ内の濃縮液2は、電解質塩、緩衝剤、および浸透剤を含む、3つの構成成分を含み得る。
【0033】
本発明の例示的な実施形態によれば、電解質塩は、ナトリウムの塩、カルシウムの塩、およびマグネシウムの塩のうちの少なくとも1つであり得る。
【0034】
本発明の例示的な実施形態によれば、緩衝剤は、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および他のアルカリ性緩衝液のうちの少なくとも1つであり得る。
【0035】
本発明の例示的な実施形態によれば、浸透剤は、デキストロース、イコデキストリン、グルコースポリマー、アミノ酸、小分子結晶グリセリン、ソルビトール、フルクトース、高分子ゲル、カチオン性ポリマー、およびポリペプチドのうちの少なくとも1つであり得る。
【0036】
濃縮液2が、所望に応じて他の追加の物質も含み得、電解質塩、緩衝剤、および浸透剤が、上記の例示的な物質に限定されないことが、当業者によって理解されるべきである。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によれば、濃縮液2のpHは、4.0~8.0の範囲になるように調整され得る。例えば、濃縮液2のpHは、塩酸等のpH調整剤を添加することによって調整され得る。4.0~8.0というpHは、より低いレベルのブドウ糖変性産物(GDP:glucose degradation product)が生成され、希釈液を使用して濃縮液2を希釈することによって得られる最終PD液が所望のpH値を有することを確実にすることになる。
【0038】
希釈液は、純水、逆浸透水、注射用水(WFI)、注射用滅菌水等のうちの少なくとも1つであり得る。
【0039】
使用時に、カバー9が希釈液コネクタ8から取り外され、次いで希釈液コネクタ8が希釈液充填機に接続される。壊れやすいプラグ6が壊され、希釈液は、希釈液充填機から、希釈液移送チューブ7、壊れた壊れやすいプラグ6、および希釈液チューブ3を介してチャンバ1に充填され、濃縮液2と混合される。希釈液の充填後、希釈液移送チューブ7はシールされ、希釈液コネクタ8は、希釈液充填機から切り離される。
【0040】
濃縮液2は、希釈液を使用して、2~20倍、例えば16倍に希釈され得、最終PD液は、CAPDまたはAPDのために使用され得る。例えば、濃縮液2は、CAPDに好適な1~3Lの最終PD液となるように希釈され得るか、またはAPDに好適な4~15Lの最終PD液となるように希釈され得る。
【0041】
表1は、シングルチャンババッグ用の濃縮液2の例示的な配合設計を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示される濃縮液2は、表2に示されるような最終PD液を得るように希釈され得る。
【0044】
【表2】
【0045】
表3は、それぞれ4.7、5.0、および5.3というpHを有する3つの濃縮液の6か月(6M)の促進安定性試験結果を示す。表3では、3つの濃縮液は、F1、F2、およびF3として示され、0M、1M、2M、3M、および6Mは、それぞれ、初期検出値と、1か月、2か月、3か月、および6か月の促進後の検出値とを示す。例えば、F1-1Mは、1か月の促進後にF1濃縮液に対して検出が実施されることを示す。
【0046】
【表3】
【0047】
試験結果は、濃縮液2が良好な特性、特により低いレベルのGDPを有することを示す。明らかに、最終PD液は良好な特性を有することになる。
【0048】
濃縮液2は、図2に示されるデュアルチャンババッグにも充填され得る。図2に示されるように、デュアルチャンババッグは、第1のチャンバ10および第2のチャンバ11を備える。第1のチャンバ10および第2のチャンバ11は、好ましくは剥離可能な溶着線12によって互いに分離されている。濃縮液2は、第1のチャンバ10に充填され、注入ポート13は、薬剤等の所望の物質を第1のチャンバ10に注入することを可能にする。接続チューブ14は、CAPD/APD用のセットの対応する構成要素に接続される。第2のチャンバ11は、使用前は空である。
【0049】
これも図2から分かるように、希釈液チューブ15は、第2のチャンバ11と流体連通され、壊れやすいプラグ16、希釈液移送チューブ17、および希釈液コネクタ18を介して希釈液充填機と接続される。具体的には、希釈液チューブ15は、初期状態で第2のチャンバ11をシールする壊れやすいプラグ16と接続され、希釈液移送チューブ17は、壊れやすいプラグ16と、希釈液充填機と接続される希釈液コネクタ18との間に接続される。希釈液コネクタ18は、汚染を回避するためにカバー19によって覆われることができる。
【0050】
使用時に、希釈液は、希釈液充填機から第2のチャンバ11に充填され、次いで、希釈液移送チューブ17はシールされ、希釈液コネクタ18は、希釈液充填機から切り離される。剥離可能な溶着線12は、希釈液の充填中の希釈液の圧力によって、および/または希釈液移送チューブ17のシール後にデュアルチャンババッグを押すことによって、開かれ得る。剥離可能な溶着線12を開くと、濃縮液2は希釈液と混合され、その結果、濃縮液2は、最終PD液を得るように、2~20倍、例えば16倍に希釈され得る。
【0051】
濃縮液2は、比較的小さい空間に貯蔵され、よって、濃縮液2は、第1のチャンバ10内の気体(空気等)と最小限の程度で接触することになり、これは有益である。
【0052】
ここで、例示的なマルチチャンババッグが、図3を参照して説明される。
【0053】
図3に示されるように、マルチチャンババッグは、主に、第1の濃縮液部分21が充填される第1のチャンバ20と、第2の濃縮液部分23が充填される第2のチャンバ22と、使用前は空である第3のチャンバ24と、希釈液充填機に接続される希釈液チューブ25と、薬剤等の第1の所望の物質を第1のチャンバ20に注入することを可能にする第1の注入ポート26と、薬剤等の第2の所望の物質を第2のチャンバ22に注入することを可能にする第2の注入ポート27と、CAPD/APD用のセットの対応する構成要素に接続される接続チューブ28と、を備える。
【0054】
これも図3から分かるように、希釈液チューブ25は、図1に示されるシングルチャンババッグと同様に、第3のチャンバ24と流体連通され、壊れやすいプラグ29、希釈液移送チューブ30、および希釈液コネクタ31を介して希釈液充填機と接続される。希釈液コネクタ31は、汚染を回避するためにカバー32によって覆われることができる。
【0055】
第1のチャンバ20、第2のチャンバ22、および第3のチャンバ24は、好ましくはそれぞれの剥離可能な溶着線33、34、および35によって互いに分離されている。
【0056】
図3に示される実施形態では、マルチチャンババッグは、好ましくは、使用前は空である第4のチャンバ36をさらに備える。接続チューブ28は、第4のチャンバ36と流体連通される。第4のチャンバ36は、好ましくはそれぞれの剥離可能な溶着線によって、第1、第2、および第3のチャンバから分離されている。
【0057】
代替的な実施形態として、第4のチャンバ36は省略されてもよく、接続チューブ28は、第3のチャンバ24と流体連通される。
【0058】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1の濃縮液部分21は、電解質塩および浸透剤を含み得、第2の濃縮液部分23は、緩衝剤を含み得るが電解質塩と浸透剤を含まなくてもよい。好ましくは、第1の濃縮液部分21はさらに、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および他のアルカリ性緩衝液のうちの1つのような緩衝剤を含み得る。
【0059】
第1の濃縮液部分21および/または第2の濃縮液部分23は、液体または粉末の形態であり得る。
【0060】
シングルチャンババッグで使用される電解質塩、緩衝剤、および浸透剤は、マルチチャンババッグにも好適である。
【0061】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1の濃縮液部分21のpHは、好ましくは、塩酸等のpH調整剤を添加することによって、1.0~4.0の最適のpH範囲になるように調整され得る。1.0~4.0というpHは、より低いレベルのGDPが生成されることを確実にすることになる。
【0062】
本発明の例示的な実施形態によれば、第2の濃縮液部分23は、最終PD液が6.5~8.0という好適なpH範囲を有することを確実にするために、緩衝剤を含み、かつ6.5~8.0のpHを有する緩衝液として設計され得る。例えば、第2の濃縮液部分23は、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および他のアルカリ性緩衝液のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0063】
使用時に、希釈液が、希釈液充填機から第3のチャンバ24に充填され、次いで、希釈液移送チューブ30はシールされ、希釈液コネクタ31は、希釈液充填機から切り離される。まず、剥離可能な溶着線33および34は、希釈液の充填中の希釈液の圧力によって、および/または希釈液移送チューブ30のシール後にマルチチャンババッグを押すことによって、開かれ得る。剥離可能溶着線33および34が開くと、第1の濃縮液部分21および第2の濃縮液部分23は、各々希釈液と混合され、次いで互いに混合されて、最終PD液を得る。剥離可能な溶着線35は、マルチチャンババッグをさらに押すことによって開かれ得、その結果、最終PD液は、第4のチャンバ36に流れ込み、次いで接続チューブ28を介して患者に流れる。
【0064】
マルチチャンババッグの場合、希釈液は、純水、逆浸透水、WFI、注射用滅菌水等のうちの少なくとも1つであり得る。
【0065】
図3に示されるように、剥離可能な溶着線35は、剥離可能な溶着線33および34が剥離可能な溶着線35の前に開かれるように、剥離可能な溶着線33および34よりも幅が広い。当業者が、剥離可能な溶着線の形状および溶着強度を設計することによって、剥離可能な溶着線を開く順序、ひいては混合の順序を制御することも可能である。
【0066】
表4は、マルチチャンババッグ用の第1の濃縮液部分21および第2の濃縮液部分23の例示的な配合設計を示す。
【0067】
【表4】
【0068】
第1の濃縮液部分21および第2の濃縮液部分23は、表5に示すような最終PD液を得るように、混合および希釈され得る。
【0069】
【表5】
【0070】
表6は、それぞれ3.0、2.5、および2.5のpHを有する第1の濃縮液部分と、それぞれ8.0、8.0、および8.1のpHを有する第2の濃縮液部分の3つのそれぞれの混合物の6か月の促進安定性試験結果を示す。表6で使用される同じ表示は、表3のものと同じ意味を有する。
【0071】
【表6】
【0072】
試験結果は、第1の濃縮液部分21と第2の濃縮液部分23の混合物が良好な特性、特により低いレベルのGDPを有することを示す。明らかに、最終PD液は良好な特性を有することになる。
【0073】
第1の濃縮液部分21および第2の濃縮液部分23は、希釈液を使用して、2~20倍、例えば12.5倍に希釈され得、最終PD液は、CAPDまたはAPDのために使用され得る。
【0074】
異なる治療にしたがって濃縮液の希釈時間または濃縮時間が決定され得ることが当業者によって理解されるべきである。
【0075】
さらに、マルチチャンババッグは、より多くのチャンバも備え得、その結果、PD濃縮液は、マルチチャンババッグのそれぞれのチャンバに含まれるより多くの部分に分割されることができる。
【0076】
本発明の基本概念は、PD濃縮液と、PD濃縮液を使用するCAPD/APD用のセットとを提供することである。PD濃縮液およびCAPD/APD用の対応するセットは、物流コストを節約し、容易に輸送し、最小限の保管スペースのみを必要とすることを可能にすることができる。
【0077】
ある特定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は例として提示されているだけであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物は、本発明の趣旨および範囲内に入るように修正、置換、および変更をすべて網羅することを意図している。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
〔1〕
オールインワン濃縮液または使用前に別個に貯蔵される少なくとも2つの濃縮液部分を備える腹膜透析濃縮液であって、腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、希釈液によって、前記オールインワン濃縮液は希釈または溶解されることができる、もしくは前記少なくとも2つの濃縮液部分は希釈または溶解され、互いに混合されることができる、腹膜透析濃縮液。
〔2〕
前記オールインワン濃縮液は、少なくとも1つの電解質塩、少なくとも1つの緩衝剤、および少なくとも1つの浸透剤を含む、〔1〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔3〕
前記少なくとも2つの濃縮液部分は、第1の濃縮液部分および第2の濃縮液部分を備え、前記第1の濃縮液部分は、少なくとも1つの電解質塩および少なくとも1つの浸透剤を少なくとも含み、前記第2の濃縮液部分は、少なくとも1つの緩衝剤を含む、〔1〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔4〕
前記オールインワン濃縮液のpHは、希釈される前にpH調整剤を添加することによって、4.0~8.0の範囲になるように調整され、
前記オールインワン濃縮液の前記pHは、希釈された後に4.0~8.0の範囲にある、
〔2〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔5〕
前記第1の濃縮液部分のpHは、pH調整剤を添加することによって、1.0~4.0の範囲になるように調整され、および/または
前記第2の濃縮液部分は、6.5~8.0の前記pHを有する緩衝液として設計され、および/または
前記第1の濃縮液部分および/または前記第2の濃縮液部分は、液体または急速溶解性顆粒の形態である、
〔3〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔6〕
前記pH調整剤は塩酸である、〔4〕または〔5〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔7〕
前記電解質塩は、ナトリウムの塩、カルシウムの塩、マグネシウムの塩、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含み、および/または
前記緩衝剤は、乳酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含むアルカリ性緩衝剤であり、および/または
前記浸透剤は、デキストロース、イコデキストリン、グルコースポリマー、アミノ酸、小分子結晶グリセリン、ソルビトール、フルクトース、高分子ゲル、カチオン性ポリマー、ポリペプチド、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択されるものを含む、 〔2〕または〔3〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔8〕
前記腹膜透析濃縮液は、前記腹膜透析液を得るために2~20倍に希釈されることができる、
〔1〕~〔7〕のいずれかの腹膜透析濃縮液。
〔9〕
前記腹膜透析濃縮液は8~12倍に希釈されることができる、〔8〕に記載の腹膜透析濃縮液。
〔10〕
前記腹膜透析液は、連続携行式腹膜透析または自動腹膜透析治療のために使用されることができ、および/または
前記希釈液は、注射用水、または純水もしくは逆浸透水から直接生成された注射用水である、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液。
〔11〕
腹膜透析濃縮液を収容するためのシングルチャンバと、
希釈液供給源から希釈液を受け取るための、前記チャンバと流体接続された希釈液チューブと、
前記チャンバと流体接続された接続チューブと、
を備え、
前記希釈液は、前記腹膜透析濃縮液を希釈または溶解し、前記接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るように、前記希釈液チューブを介して前記チャンバに充填されことができる、シングルチャンバ腹膜透析バッグ。
〔12〕
腹膜透析濃縮液を収容するための第1のチャンバと、
剥離可能な溶着線によって前記第1のチャンバから分離された第2のチャンバと、
希釈液供給源から希釈液を受け取るための、空である前記第2のチャンバと流体接続された希釈液チューブと、
前記第2のチャンバと流体接続された接続チューブと、
を備え、
前記接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るために、前記腹膜透析濃縮液が希釈または溶解されるように、前記希釈液は、前記剥離可能な溶着線を破るように前記希釈液チューブを介して前記第2のチャンバに充填されることができる、デュアルチャンバ腹膜透析バッグ。
〔13〕
それぞれの剥離可能な溶着線によって互いに分離されている少なくとも4つのチャンバと、ここにおいて、前記少なくとも4つのチャンバのうちの少なくとも2つのチャンバは、濃縮液部分を個別に収容するためのものであり、
希釈液供給源から希釈液を受け取るための、前記少なくとも4つのチャンバのうちの第1の空のチャンバと流体接続された希釈液チューブと、
前記少なくとも4つのチャンバのうちの第2の空のチャンバと流体接続された接続チューブと、
を備え、
前記接続チューブを介して腹膜透析治療に好適な腹膜透析液を得るために、前記希釈液が前記濃縮液部分を希釈または溶解させ互いに混合させるように、前記希釈液は、前記剥離可能な溶着線を破るように前記第1の空のチャンバに充填されることができる、マルチチャンバ腹膜透析バッグ。
〔14〕
連続携行式腹膜透析用のセットであって、前記セットは、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を含む、〔11〕に記載のシングルチャンバ腹膜透析バッグ、または〔12〕に記載のデュアルチャンバ腹膜透析バッグ、または〔13〕に記載のマルチチャンバ腹膜透析バッグを備える、連続携行式腹膜透析用のセット。
〔15〕
自動腹膜透析用のセットであって、前記セットは、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の腹膜透析濃縮液を含む、〔11〕に記載のシングルチャンバ腹膜透析バッグ、または〔12〕に記載のデュアルチャンバ腹膜透析バッグ、または〔13〕に記載のマルチチャンバ腹膜透析バッグを備える、自動腹膜透析用のセット。
図1
図2
図3