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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】複合材料のための転写システム
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20220510BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B32B5/26
B29C70/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019560470
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018051337
(87)【国際公開番号】W WO2018138015
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】102017101301.6
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519267934
【氏名又は名称】ディメンション-ポリアント ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Dimension-Polyant GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルコフ,ヘイル
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-289723(JP,A)
【文献】特開2012-077411(JP,A)
【文献】特開2003-236962(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029453(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/148696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キャリア材料としての不織布、および
(b)強化繊維の織物層
を含む複合材料のための転写システムであって、
前記強化繊維が、モノフィラメントまたはマルチフィラメントまたはテープからなり、前記キャリア材料が、前記強化繊維の層に接着結合され
前記転写システムが、解放特性を有する1つまたは2つのカバーホイルを備えている、
ことを特徴とする、転写システム。
【請求項2】
前記織物層が、互いに交差する強化繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の転写システム。
【請求項3】
前記不織布が、0.020~0.070mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の転写システム。
【請求項4】
前記キャリア材料および前記強化繊維が、結合剤を用いて互いに結合されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項5】
前記キャリア材料が、熱可塑性材料の繊維を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項6】
前記強化繊維の織物層が、2つ以上の個々の層に配置される、互いに平行に伸長する強化繊維の交差する群の格子を構成することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項7】
ある群の前記強化繊維が、互いに0.3~11.5cmの間隔で伸長することを特徴とする、請求項に記載の転写システム。
【請求項8】
前記強化繊維が、オフ・アングルで互いに交差することを特徴とする、請求項またはに記載の転写システム。
【請求項9】
前記強化繊維が、アラミド、炭素、ポリオレフィン、ポリアミドおよび/またはポリエステル繊維の束またはテープからなることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項10】
前記強化繊維のマルチフィラメントが、ねじれていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項11】
ロール材料の形態であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の転写システム。
【請求項12】
不織布および強化繊維の織物層の複合材料を表面に適用するための、請求項1から11のいずれか1項に記載の転写システムの使用。
【請求項13】
帆布および帆を製造するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
表面の粗さおよび/または横滑り抵抗/グリップを増加するための、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
梱包フィルム/ホイルおよび保護カバーを製造するための、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーホイル、不織布からなるキャリア材料、および強化繊維、特にマルチフィラメントの織物層を含む、複合材料のための転写システムに関する。複合材料は、サーフボード、スキー等のような硬い複合材料、並びに、帆布ラミネートおよび膜のような柔軟な複合材料において使用するために特に適切である。
【背景技術】
【0002】
不織布は、面積測定(area-measured)/シート材料の特性を改良するためにしばしば用いられる。これらは例えば、破壊および引裂抵抗を改良し、亀裂の伝搬を防止し、衝撃強さを増加し、かつ外観を向上させる。不織布の開放多孔性は、複合材料に含まれる結合剤の浸透にプラス効果を有する。
【0003】
梱包材料および工業用製品に強化繊維が用いられ、引張強さ、衝撃強さ、剛性および加工適合性が増加される。不織布と組み合わせて、両方の材料の特性の組合せによって改良が達成される。ポリエステルフィルムおよび強化繊維の複合材料は、スポーツセーリングに適合することが示されている。
【0004】
いわゆるスクリム(scrims)もまた、表面の粗さおよびグリップを増強するために用いられる。例えば、スクリムは、グリップ/横滑り(skid)抵抗を改良する目的でサーフボードの表面に適用される。
【0005】
概して、それぞれの繊維を接着ベッド(bed)に機械的に挿入することにより、製造中に直接、繊維強化材が面積測定/シート材料に適用される。接着ベッド中への繊維強化材の組込みは、例えば帆に生じる張力を吸収するための用途を果たさないという誤りと通常関連する。この場合、正確な配置でかつタイトな形態で繊維強化材を面積測定/シート材料中に導入することが所望であろう。
【0006】
複数の接着結合された繊維層から作製される格子が、特許文献1から知られており、この格子は、表面の変更のために利用できる。製品はより洗練され、異なる繊維層の互いの接着は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/148696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、強化繊維の格子を、適用につながる形態で簡単に製造し表面に転写することができるシステムが必要とされる。そのようなシステムは、特に、強化繊維の適用を正確に、すなわち、歪みなくタイトな形態で行うことができることを確実にし、この繊維の永久的な固着を生じる。このシステムは、複数の異なる種類の表面に適用および適合できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、上記で最初に述べた種類の複合材料のための転写システムを用いて達成され、この複合材料は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントまたはテープからなる強化繊維を有し、不織材料は、強化繊維の層に接着結合されるキャリアとして機能する。取扱いを容易にするために、剥ぎ取ることができるカバーホイルを複合材料に提供してもよい。
【0010】
好ましくは、織物層は、互いに交差する強化繊維を含む。
【0011】
転写システムはまた、好ましくは流れ方向で、平行に伸長する強化繊維の層、並びに、平行に進みかつ互いに交差する強化繊維の組合せを含む。この場合、例えば、繊維は流れ方向に対して0°、+45°および-45°の角度で伸長する。0°~90°から外れる角度は、オフ・アングルと称される。
【0012】
本発明により提案されるように、カバーホイルは、不織材料および織物強化繊維の複合材料の保護に役立ち、かつ、適用の前、最中または後に複合材料から容易に除去できるホイルである。したがって、カバーホイルは、複合材料の不可分の一部を形成しない。本発明の転写システムは、1つまたは2つのカバーホイルを備えてもよく、後者の場合、それぞれの側に1つである。複合材料が十分な寸法安定性を有する場合、カバーホイルはなくてもよい。
【0013】
本発明により提案される複合材料の場合、キャリア材料(不織布)および強化繊維の適用された織物層は、互いに接着結合される。不織布が、加熱されると十分な接着特性を生じる、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性プラスチック材料からなる場合、この接着特性は、固定目的で用いることができる。別の場合では、例えば炭素繊維または鉱物繊維(ガラスファイバ、ストーンファイバ)が用いられる場合、キャリア材料に、適用の前または最中に適切な結合剤を与えなければならない。結合剤を含まない強化繊維からなる織物層の適用は、高温で行われる。キャリア材料は、冷却後に必須特性を回復し、強化繊維は、接着結合工程中に悪影響を与えられない。このようにして、魅力的かつ滑らかな表面が、適用後にキャリア材料側に作製される。
【0014】
本発明により請求されるように、強化繊維は、マルチフィラメント、すなわち、実質的に平行に伸長する複数の個々の繊維からなる。繊維は、ねじれた構成でもよいが、そうである必要はない。複数の個々の繊維から作製されるマルチフィラメントは、交差の点が平らに保たれ複合材料の厚さが低くなるという利点を提供する。モノフィラメントおよびテープ状材料の使用もまた可能である。
【0015】
基本的に、解放特性を有し複合材料から容易に除去できるという条件で、任意の所望の材料をカバーホイルに用いることができる。例えば、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレンを、この目的のために使用できる。そのようなカバーホイルは、例えば、0.1~0.4mmの範囲の厚さを有する。カバーホイルは、不織布および織物層からなる複合材料の片側のみまたは両側に配置されてもよく、巻き取ることができるウェブの形態で複合材料を製造することを可能とする。強化繊維の層の両側に不織材料を提供することも可能である。この場合、カバーホイルは、片側または両側に配置されてもよい。
【0016】
例えば、カバーホイルは、不織材料および強化繊維を含む複合材料がその上で作製される製造工程における土台として用いられてもよい。しかしながら、別の可能性は、製造工程中にカバーホイルおよび複合材料を一緒にすることである。
【0017】
好ましくは、キャリア材料(不織布)は、0.020~0.070mm、特に0.030~0.060mmの厚さを有する。これは、80~180℃の範囲の温度で、特に約100℃で接着特性を発揮する。キャリア材料は、好ましくは、加熱されると接着結合を形成する熱可塑性繊維材料、特にポリアミドを含む。
【0018】
互いに交差する織物層の強化繊維は、好ましくは、平行に伸長するフィラメントの群を含む個々の層に配置される。フィラメント間の距離は、0.3~11.5cm、特に約2cmである。格子構造を得るために、好ましくはオフ・アングルで(直角ではない)群が互いに交差する態様で異なる層が配置される。好ましくは、交差角度は40~140°であり、85°~95°の範囲は除く。上記の間隔および交差角度は、満たされるべき強度要求並びに糸厚さに依存する、すなわち、高い番手の糸が用いられる場合、個々のストランド間の間隔は高くなり得、逆もまた同様である。例えば、ストランドデニール密度は、18000dpi(デニール・パー・インチ)でもよく、これは、例えば、それぞれ1000デニールのインチ幅ごとに18ストランドに分割されうる。概して、各糸層において500~7500dpiの範囲のストランドデニール密度、特に1000~6000dpiの密度が十分である。
【0019】
強化繊維には、通常の材料、特に、アラミド、炭素、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドのような、スポーツセーリングにおける複合材料の製造のため、または梱包目的で用いられるものが使用される。UHMWPE(例えばDyneema(登録商標))およびアラミド(例えばTechnora Black(登録商標)、Twaron(登録商標))から作製されるマルチフィラメント糸は、特に有用であることが示された。UHMWPE(例えばEnduMAx(登録商標))に基づくテープ状材料の使用も可能である。フィラメント群の数に依存して、織物層は、対応する数の個々の層からなる。
【0020】
本発明により提案される転写システムにおいて、織物層における強化繊維は、格子構造を形成する。本明細書において、格子構造とは、フィラメントの少なくとも2つの群が互いに交差することを意味する。しかしながら、他の群が存在してもよく、例えば、流れ方向に伸長する1つの群および2つの他の群が60°および120°の角度で交差する。
【0021】
製造される本発明の転写システムは、小さい厚さでもよく、例えば0.3mm未満の厚さを有する。この場合の不織布および強化繊維の複合材料の厚さは、0.2mm未満でもよい。しかしながら、それぞれの厚さは、関連する用途のために満たされるべき要求に依存する。
【0022】
通常、本発明に従った転写システムの複合材料の厚さは、1つまたは2つのカバーホイルとの交差の点で測定して、0.2~0.4mmの範囲である。複合材料自体について、同様に交差の点において、0.15~0.25mmの範囲の厚さである。
【0023】
帆の製造のために、引張強さと共に、単位面積あたり非常に低い質量を達成する必要がある。例えば、本発明に従って製造された複合材料-カバーホイルなし-は、21g/mの単位面積当たりの質量を有しうる。強化繊維について単位面積当たりのそのように低い質量は、接着ベッドに存在する強化繊維で達成するのは困難である。概して、複合材料の単位面積あたりの質量は、10~30g/mである。
【0024】
本発明に従った転写材料は、容易に大量に製造でき、例えば、最大2.0mmの幅および最大1000mの長さを有するロール材料として製造されてもよい。ロール材料は、必要に応じて切断でき、複合材料が非常に柔軟であるという事実により曲面に適用され得る。特に、帆布および帆の製造のために、および、例えばサーフボードの表面の粗さを増加するために、使用されてもよい。
【0025】
適用の別の分野は、引裂抵抗および粘着力の点で高い要求を満たす必要がある、梱包材料の製造である。強化テープの製造および適切な大きさへの切断も可能である。
【0026】
適用中、本発明の複合材料は、接着側に配置される場合には予め除去されるカバーホイルと共に、および、存在する場合には接着ベッドへの適用後に除去される第2のカバーホイルと共に、既知の方法で接着ベッド中に配置される。
【0027】
本発明により提案される転写システムの不織布は、複合材料中でも、その多孔性、したがって、空気、接着剤または樹脂に対する浸透性を保持する。これによって、真空によるラミネートの製造中に空気を複合材料から吸い出すことができ、これは従来用いられていた工程でありより均質なラミネートが得られる。同時に、接着剤または樹脂を、ラミネート中に吸引(注入)してもよい。
【0028】
繊維複合材用構造の製造において、注入工程は重要な役割を果たす。本発明の転写システムは、樹脂注入を用いた繊維複合材料構造の製造によく適合することが示された。
【実施例
【0029】
本発明に従った転写システムは、剥ぎ取り(strip-off)ホイルとして作用する1つおよび2つのポリプロピレンカバーホイル、並びに、キャリア材料としてのポリアミドに基づく不織布および強化繊維を用いて製造される。強化の目的で、750デニールを有するTechnora Black繊維を、流れ方向に+22°および-22°の角度で1.9cmの間隔で配置して用いた。交差の点で、繊維層と共に、およびキャリア材料のみで測定された厚さ、並びに、カバーホイル有りおよび無しの単位面積当たりの質量が、以下の表に示される。サンプルは、21g/mの複合材料の単位面積当たりの質量を有した。示される数値は、3つの測定値からの平均値である。
他の実施形態
1. (a)キャリア材料としての不織布、および
(b)強化繊維の織物層
を含む複合材料のための転写システムであって、
前記強化繊維が、モノフィラメントまたはマルチフィラメントまたはテープからなり、前記キャリア材料が、前記強化繊維の層に接着結合されていることを特徴とする、転写システム。
2. 前記織物層が、互いに交差する強化繊維を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の転写システム。
3. 前記不織布が、0.020~0.070mm、好ましくは0.030~0.060mmの厚さを有することを特徴とする、実施形態1または2に記載の転写システム。
4. 前記不織布および前記強化繊維の織物層の複合材料が、180℃未満の温度で熱的に製造されることを特徴とする、実施形態1から3のいずれかに記載の転写システム。
5. 前記キャリア材料および前記強化繊維が、結合剤を用いて互いに結合されることを特徴とする、実施形態1から3のいずれかに記載の転写システム。
6. 前記キャリア材料が、熱可塑性材料、好ましくはポリアミドの繊維を含むことを特徴とする、実施形態1から5のいずれかに記載の転写システム。
7. 前記強化繊維の織物層が、2つ以上の個々の層に配置される、互いに平行に伸長する強化繊維の交差する群の格子を構成することを特徴とする、実施形態1から6のいずれかに記載の転写システム。
8. ある群の前記強化繊維が、互いに0.3~11.5cmの間隔で伸長することを特徴とする、実施形態7に記載の転写システム。
9. 前記強化繊維が、オフ・アングルで互いに交差することを特徴とする、実施形態7または8に記載の転写システム。
10. 前記強化繊維が、アラミド、炭素、ポリオレフィン、ポリアミドおよび/またはポリエステル繊維の束またはテープからなることを特徴とする、実施形態1から9のいずれかに記載の転写システム。
11. 前記強化繊維のマルチフィラメントが、ねじれていることを特徴とする、実施形態1から10のいずれかに記載の転写システム。
12. 前記1つまたは2つのカバーホイルが、解放特性を有することを特徴とする、実施形態1から11のいずれかに記載の転写システム。
13. ロール材料の形態であることを特徴とする、実施形態1から12のいずれかに記載の転写システム。
14. 不織布および強化繊維の織物層の複合材料を表面に適用するための、実施形態1から13のいずれかに記載の転写システムの使用。
15. 帆布および帆を製造するための、実施形態14に記載の使用。
16. 表面の粗さおよび/または横滑り抵抗/グリップを増加するための、実施形態14または15に記載の使用。
17. 梱包フィルム/ホイルおよび保護カバーを製造するための、実施形態14に記載の使用。
【0030】
【表1】