(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】創傷治療における複合フォーム
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20220510BHJP
A61L 15/18 20060101ALI20220510BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20220510BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220510BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61F13/00 301J
A61F13/00 T
A61L15/18 100
A61L15/20 100
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61L15/42 310
(21)【出願番号】P 2019561180
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2018061872
(87)【国際公開番号】W WO2018206578
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】ガーディナー,エリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】パレズキ,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジェイソン レイモンド
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/019868(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014106518(DE,A1)
【文献】英国特許出願公開第2467554(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/02
A61L15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第1のフォーム層と、
第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第2のフォーム層と、
を含
む複合材料であって、
前記第2のフォーム層の流体保持能力が、前記第1のフォーム層の流体保持能力よりも20%以上大きく、
前記流体保持能力が、EN13726-1:2002に従って40mmHgの圧力へ2分間曝露した場合に最大量の溶液Aを最初に吸収させて、溶液Aを保持する能力として定義され
、
界面結合ボリュームが、前記第1のフォーム層と前記第2のフォーム層との間に存在し、
前記界面結合ボリュームが、前記第1のフォーム層および前記第2のフォーム層を構成する材料の混合物を含み、
前記界面結合ボリュームの厚さが、200μm未満であり、
前記第1のフォーム層の厚さが前記複合材料の全厚の40%未満である、複合材料。
【請求項2】
前記界面結合ボリュームの厚さが、100μm未満である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記界面結合ボリュームの厚さが、50μm以下である、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む
前記第1のフォーム層であって、使用時に適用領域に面するように適合される第1の側を有する、前記第1のフォーム層と、
第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、
前記第2のフォーム層と、
を含み、
複数のチャネルが、前記第1のフォーム層の前記第1の側から前記第1のフォーム層全体を介して少なくとも前記第2のフォーム層の一部の中へ伸長し、前記チャネルが、0.1mm~4.0mmの平均直径を有する、
請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記第1のフォーム層が、創傷領域に面するように適合される第1の側を有する、請求項
4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記界面結合ボリューム中に含まれる材料のうちの少なくとも1つの物理的特性が、前記第1のフォーム層および前記第2のフォーム層を構成する材料と比較してそれぞれ異なる、請求項
1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第2のフォーム層が800kg/m
3以上の流体保持能力を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1のフォーム層が、試験溶液として30μLのEN13726-1:2002に従う溶液Aを使用して、TAPPIスタンダードT558 OM-97に従って測定される場合に、10μL/秒以上の吸収速度を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第1のフォーム層および/または前記第2のフォーム層のうちの少なくとも1つが、プレポリマー(親水性ウレタンフォーム層を導く)を含む水性混合物が40%未満の水を含むプロセスによって得られるかまたは得られていた、請求項1~
8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記第1の親水性ポリウレタンフォーム材料が、イソシアネートキャッピングポリオールもしくはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかもしくはそれである第1のプレポリマーから得られるか、もしくは得られた、ならびに/または、前記第2の親水性ポリウレタンフォーム材料が、イソシアネートキャッピングポリオールもしくはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかもしくはそれである第2のプレポリマーから得られる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
前記第1のプレポリマーおよび前記第2のプレポリマーが異なる、請求項
10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記
イソシアネートキャッピングポリオールを構成するポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオール
、並びに、ジオール、トリオール、テトラオール、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びラクトンからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーの重縮合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
10または11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーが、ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、または任意のその混合物からなる群から選択されるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する、請求項
10~12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の複合材料を含
み、
前記第1のフォーム層が使用時に適用領域に面するように適合される第1の側を有する、医療用ドレッシング。
【請求項15】
前記医療用ドレッシングが、少なくとも1つの裏打ち層および/または粘着層もしくはコーティングをさらに含む、請求項
14に記載の医療用ドレッシング。
【請求項16】
(i)ポリウレタンプレポリマーを含む水性混合物を調製し、前記水性混合物の水分含有量が、前記水性混合物の全重量と比べて40%w/w未満であるステップと、
(ii)ステップ(i)からの前記水性混合物をキャリア材料の上へ適用するステップと、
(iii)前記水性混合物が本質的に完全に硬化される前に、既に硬化された親水性ポリウレタンフォーム層を、ステップ(ii)において前記キャリア材料の上へキャストされた前記水性混合物の上部に、適用するステップと、
(iv)前記水性混合物を実質的に完全に硬化させることを可能にし、それによって、第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む第1のフォーム層および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む第2のフォーム層を含む複合材料を産生するステップと、
を含む、複合材料を産生する方法。
【請求項17】
前記水性混合物の硬化度が、ステップ(iii)における既に硬化された親水性ポリウレタンフォーム
層を適用するステージで、50~90%の間である、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療において特に使用される複合フォーム材料、および複合材料を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷ドレッシングは、創傷を治癒および保護するために使用される。創傷からの滲出液を吸収および保持する創傷ドレッシングの能力は、治癒プロセスのために非常に重要である。ドレッシングの液体ハンドリング能力は、ドレッシング交換(それは創傷治癒を促進するように最小限にされるべきである)の頻度にも影響を与える。様々な適用において、親水性材料は、創傷液を吸収および保持するために創傷ドレッシング、さらに特に親水性フォーム(親水性連続気泡(open-cell)ウレタンフォーム等)中で使用される。
【0003】
この液体ハンドリング能力を至適化するために、創傷ドレッシング中の創傷パッドは好ましくは多層デザインを含むことができ、各々の層は好ましくは異なる材料(特に異なるフォーム材料)であり、したがって異なる能力および機能性を有する。かかる多層デザインが当該技術分野で知られている程度で、層は、粘着剤の手段によっておよび/または機械的積層によって積層される。この積層は複数の欠点と関連する。特に、吸収材(例えば親水性フォーム)は使用の間に膨潤し、したがって液体を吸収する場合に膨脹し、したがって層間の結合に圧力を加えるおよび/または厚みを増加させ、それはドレッシングの変形(例えばカーリングまたはカッピング)および層の脱積層をもたらし得る。
【0004】
特許文献1は、とりわけ創傷接触層および吸収コア層を含む多層創傷ドレッシングを開示し、ポリアミドウェブの「キーイング層」(それは熱溶融粘着剤である)は、吸収コア層を創傷接触層へ結合するように吸収コア層の上で提供される。同様に、特許文献2は、とりわけ2つのフォーム層の間に挟まれた不織層を含む多層創傷ドレッシングに関連し、すべての層は熱活性化結合ウェブを使用して一緒に結合される。
【0005】
複合材料をもたらすように(原理上は例えばバイカラーのフォームから)、または異なる物理的特性(例えば異なる圧縮強度)を有する部分を備えた複合材料を生成するように、2つのウレタンフォームを組み合わせることは、公知である。典型的には、2つのフォームは、異なるプロセシング方法を使用して、分離して調製される。
【0006】
特許文献3は、第1のフォームおよび第2のフォームを含む複合フォームを開示し、そのフォームは、少なくとも部分的に直接接続される。特許文献3の複合フォームは、前作製された第1のフォーム上に水性エマルションをキャストすること(第2のフォームを得るように)によって調製され、そのまま硬化される。しかしながら、キャスト基材として第1のフォームを使用する場合に、典型的には、第2のフォームの最終的な厚みを制御することは実際難しい。特許文献3中で教示されるように、重量で40%を超える水を含有するエマルションをフォーム基材の上へキャストすることは、エマルションからの水の急速な吸収、またはフォーム層基材の表面気泡の中への全エマルションの吸収(とりわけ重力に起因する)のいずれかをもたらす。硬化した場合に、両方の現象は、フォームの間の流体移行を妨害する幅広い(500μmを超える)界面領域をもたらす。加えて、このラミネートは、フォーム層基材の中への吸水から起こるパッカリングからの深刻な歪みを示す。
【0007】
したがって、使用の間に(特に医療用ドレッシングとして使用の間に)それらの機能性を維持する、機能性の異なる領域(特に層)を備えたフォーム複合材料であって、特に異なる機能性の2つのフォーム層の間の界面を横切った不良な流体移行に関して上述した短所のうち少なくとも1つを回避または最小限にするフォーム複合材料を当該技術分野において提供するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US7,759,537
【文献】EP2659865
【文献】WO2013/000910
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、これらおよび他の目的は、
第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第1のフォーム層、
第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第2のフォーム層、
を含む複合材料によって達成され、
前記第2のフォーム層の流体保持能力は、前記第1のフォーム層の流体保持能力よりも20%以上大きく、好ましくは25%以上大きく、前記流体保持能力は、EN13726-1:2002に従って、最大量の溶液Aを最初に吸収させて40mmHgの圧力へ2分間曝露した場合に、溶液Aを保持する能力として定義される。
【0010】
部分的に、本発明は、少なくとも2つの異なる親水性ポリウレタンフォーム材料(それらは層として実現され、それらは異なる流体吸収性および/または保持能力を有する)を含む複合材料が、全体的な流体管理に関連して、柔軟性の増加を可能にするという実現に基づく。
【0011】
本発明によれば、「親水性」という用語は、A.D.McNaughtおよびA.Wilkinsonによって編纂されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN 0-9678550-9-8中で定義されるように理解され、極性溶媒(特に水または他の極性基)と相互作用する、分子的実体または置換基の能力を一般的に指す。
【0012】
材料に関して、一般的に「親水性」という用語は、材料の水透過特性または材料の水を誘引する特性を指す。孔を有する材料(例えば連続気泡フォーム等)または貫通孔を有する材料の文脈において、典型的には、材料が水を吸い上げるならば、かかる材料は、「親水性である」と判断される。
【0013】
請求項中で、「含むこと(comprising)」および「含む(comprise(s))」という用語は他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は複数の要素またはステップを除外しない。例えば、フォーム層を構成し、第1の親水性ポリマーを含む親水性ポリウレタンフォーム材料は、追加のポリマー(複数可)、特に別のポリウレタンポリマーおよび/またはポリウレタンポリマーではない別の(追加の)ポリマーを含み得る。同様にさらなる例として、2を超える層(特に2つ以上のフォーム層)は、複合材料中に存在し得る。
【0014】
特定の手段が相互に異なる従属請求項中で列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【0015】
本発明によれば、「複合材料」という用語は、A.D.McNaughtおよびA.Wilkinsonによって編纂されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN 0-9678550-9-8中で定義されるように理解され、複数の異なる(非気体)相ドメイン(少なくとも1つのタイプの相ドメインは連続相であり、好ましくは両方の相ドメインは連続相である)を含む多成分系材料を一般的に指す。
【0016】
本発明に従って使用されるような「層」は、1つの平面における連続拡張(x方向およびy方向)および前記平面に垂直な厚み(z方向)を有することが理解されるべきである。
【0017】
本発明によれば、「流体保持能力」は、EN13726-1:2002に従って最大量の溶液Aを最初に吸収させて40mmHgの圧力へ2分間曝露した場合に、溶液Aを保持する能力として定義される。流体保持能力は、本明細書においてフォーム材料の体積(m3)あたりの保持された溶液Aの質量(kg)の単位で表現される。
【0018】
溶液A(EN13726-1において定義されるように)は、塩化物塩としての142mmolのナトリウムイオンおよび2.5mmolのカルシウムイオンを含有する、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの溶液からなる。この溶液はヒト血清または創傷滲出液に相当するイオン組成を有する。前記溶液は、メスフラスコ中の「1L」のマーキングまでの脱イオン水中で8.298gの塩化ナトリウムおよび0.368gの塩化カルシウム二水和物を溶解することによって調製される。
【0019】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層の厚みは第2のフォーム層の厚みよりも小さく、好ましくは第1の層の厚みは複合材料の全厚の40%未満である。それによって、第1のフォーム層を介する第2のフォーム層への急速な輸送が促進される。
【0020】
好ましくは、複合材料は医療用ドレッシング(例えば創傷ドレッシング)中に含まれ、第1のフォーム層は創傷接触層および/または創傷流体捕捉層として機能するように適合され、第2のフォーム層は創傷流体保持層として機能するように適合され得る。かかるドレッシングの立体配置において、流体が第1のフォーム層の中へ迅速に吸収され、後続して第2のフォーム層の中へ輸送されることは有利である。第1のフォーム層の厚さを第2の層の厚さよりも少ないように適合させるによって、第1のフォーム層を介する第2のフォーム層への創傷流体の輸送が至適化され得る。
【0021】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層は、0.5mm~2.5mm、好ましくは1.0mm~2.0mm(1.5mm等)の厚さを有する。
【0022】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、1.5mm~7.0mm、好ましくは2.0mm~5.0mm(3.5mm等)の厚さを有する。
【0023】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層および第2のフォーム層の組み合わせた厚さは、3~8mm、好ましくは3~6mm(5mm等)である。
【0024】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層は、EN13726-1:2002によって測定されるような、500~1200kg/m3、好ましくは600~1000kg/m3の自由膨潤吸収能力(最大吸収能力に対応する)によって特徴づけられる。
【0025】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、EN13726-1:2002によって測定されるような、800~2500kg/m3の自由膨潤吸収能力(最大吸収能力に対応する)によって特徴づけられる。
【0026】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、800kg/m3以上、好ましくは900kg/m3以上、より好ましくは1000kg/m3以上の流体保持能力を有する。
【0027】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、その自由膨潤吸収能力の80%以上、好ましくは85%以上に対応する流体保持能力を有する。
【0028】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層の流体保持能力は、第1のフォーム層の流体保持能力よりも30%以上大きく、好ましくは40%以上大きい。本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層の流体保持能力は、第1のフォーム層の流体保持能力よりも50%以上大きく、好ましくは100%以上大きく、より好ましくは150%以上大きい。
【0029】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層は、その自由膨潤吸収能力の80%未満に対応する流体保持能力を有する。
【0030】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層は、10μL/秒以上、好ましくは20μL/秒以上または30μL/秒以上の吸収速度を有する。例えば、第1のフォーム層は、10~40μL/秒の吸収速度を有する。
【0031】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、1μL/秒以上、好ましくは3μL/秒以上または5μL/秒以上の吸収速度を有する。例えば、第2のフォーム層は、1~20μL/秒(2~15μL/秒等)の吸収速度を有する。
【0032】
本発明によれば、「吸収速度」という用語は、試験溶液として30μLのEN13726-1:2002に従う溶液Aを使用して、TAPPIスタンダードT558 OM-97に従って測定されるような、流体の所与の体積を吸収する速度(体積/時間)として定義される。
【0033】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層は、第2のフォーム層の吸収速度よりも100%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上高い吸収速度を有する。例えば、本発明の複数の実施形態において、吸収速度は、第2のフォーム層の吸収速度よりも400%以上、好ましくは500%以上または600%以上高い。
【0034】
本発明の複数の実施形態において、第1および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料をそれぞれ含む、第1および第2のフォーム層のうちの少なくとも1つは、プレポリマー(親水性ウレタンフォーム層を導く)を含む水性混合物が40%未満の水、好ましくは30%未満の水を含むプロセスによって得られるかまたは得られていた。
【0035】
例えば、本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は、10~30%w/w(10~25%w/w等)である。
【0036】
本発明の複数の実施形態において、第1および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料は、スタンダード方法ISO845:2006に従って測定されるような、60~180kg/m3の密度を有する連続気泡多孔性親水性フォームから選択される。
【0037】
本明細書において使用される時、「連続気泡」という用語はフォームの孔構造を指し、孔構造中の孔は互いに接続され、フォーム材料を介する流体フローのための経路を備えた相互に接続されたネットワークを形成する。
【0038】
本発明の複数の実施形態において、第1の親水性ポリウレタンフォーム材料および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料は70%以上、好ましくは80%以上の多孔率を有し、孔は本質的に連続気泡孔構造を提示する。
【0039】
本発明に従う複合物は、創傷部位からの流体(例えば創傷滲出液)を吸収および保持するように、創傷治療において特に有利に使用され得る。第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む第1のフォーム層(それは典型的には創傷部位に接するように配置される)は、複合材料の中への創傷滲出液の比較的急速な吸収または吸液を支援する吸収特性を有するように有利に適合され、第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む(および典型的には創傷からさらに離れるように配置される)第2のフォーム層は、比較的高い流体(例えば創傷滲出液)保持能力を有し、その結果、創傷滲出液がその中に保持されるように有利に適合され得る。
【0040】
本発明によれば、「創傷部位」または「創傷」という用語は、任意の開放創または閉鎖創、例えばとりわけ慣性創傷、急性創傷および術後創傷(例えば閉鎖された切開および瘢痕治療等)を含む(がこれらに限定されない)として理解される。
【0041】
したがって、一実施形態において、複合材料が創傷治療において使用される場合に、第1のフォーム層は、創傷部位から第2のフォーム層への創傷滲出液のかかる吸収および/または移行を促進するために創傷部位に接するように有利に適合され得る。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、複合材料は、
第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含み、第1のフォーム層が使用時に適用領域に面するように適合され、好ましくは創傷領域に面するように適合される第1の側を有する、第1のフォーム層と、
第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第2のフォーム層と、
を含み、
複数のチャネルは、第1のフォーム層の第1の側から第1のフォーム層全体を介して少なくとも第2のフォーム層の一部の中へ伸長し、チャネルは、0.1mm~4.0mm、好ましくは0.5mm~3.0mm、さらに好ましくは1.5mm~2.5mmの平均直径を有する。
【0043】
第1のフォーム層中で提供され、少なくとも第2のフォーム層の一部の中へ伸長する複数のチャネルが、流体(例えば創傷滲出液等)の最初の吸収に加えて、第1のフォーム層を介して第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の界面を横切った流体の輸送の両方を促進し、その結果、フォーム層の第1の側から第2のフォーム層の中への流体の全体的な輸送が改善される。
【0044】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層の第1の側は、粘着剤(例えばシリコーンベースの粘着剤等)により少なくとも部分的にコーティングされ、複数のチャネルは、第1のフォーム層全体を介して伸長し、少なくとも第2のフォーム層の一部の中へさらに伸長する。粘着性コーティング(それは第1のフォーム層の第1の側を創傷部位へ粘着するように機能し得る)は、第1のフォーム層の第1の側に存在する連続フォーム孔のうちの少なくともいくつかを閉塞し、それは第1のフォーム層における流体の吸収能力を低減し得る。しかしながら、第1のフォーム層中の複数のチャネルの提供によって、吸収能力は、粘着性コーティングの存在下において維持されるか、または場合によっては改善される。第1の側が粘着剤によりコーティングされる前または後に、好ましくは第1の側が粘着剤によりコーティングされる前に、複数のチャネルが提供され得る。複数のチャネルは、濃厚な創傷滲出液の吸収を改善するのに特に有用であり得る。
【0045】
第2の態様によれば、「チャネル」という用語は、一般的に、連続した構造(すなわち流体(液体または気体)の直通のフローを可能にし、意図される使用の間に流体により充填されない限り、層を構成する材料(特に親水性ポリウレタンフォーム材料)によって閉塞されない構造)を指すと理解される。複数の実施形態において、これらのチャネルは、上記の意味において本質的にそれらの全体の長さにわたって「連続する」。
【0046】
特に、これらのチャネルは、意図される使用の間に流体により充填され得る一方で、使用の間に(例えば膨潤に起因して使用の間に密度が増加し得る材料の存在下における使用の間、を包含する)、液体フローに対して恒久的に閉鎖されていないという意味で、これらのチャネルは連続した構造を保持する。
【0047】
これらのチャネルの(平均)直径は、使用の間に、増加し得るか、または(より典型的には)本質的にすべてのチャネルが本質的にすべての流体フローに対して閉鎖されない程度まで減少し得ることが理解される。本発明の複数の実施形態において、チャネルは、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも5:1のアスペクト比、すなわち(平均の)連続した長さ対(平均の)連続した直径の比によって特徴づけられる。
【0048】
本発明の複数の実施形態において、前記チャネルは第1のフォーム層および第2のフォーム層へ本質的に垂直に配置され、したがって、それらの2つの層の間の界面へも本質的に垂直である。
【0049】
本発明の複数の実施形態において、チャネルは、第1のフォーム層の第1の側の全体の領域のうちの20%以上において、好ましくは30%以上において存在しない。例えば、本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層の第1の側の全体の領域は、第1の中心部分および第1の部分を囲む第2の部分を含み、チャネルは第1の中心部分においてのみ存在し、第2の部分の領域は、第1のフォーム層の第1の側の全体の領域のうちの20%以上である。
【0050】
本発明の複数の実施形態において、チャネルは、パターンで配置される。
【0051】
本発明の複数の実施形態において、チャネルは、第1のフォーム層の第1の側の領域上での正方形(複数可)の連続的なパターン、または第1のフォーム層の第1の側の領域の中心から増殖する円(複数可)の連続的なパターンを形成する。
【0052】
本発明の複数の実施形態において、チャネルは、装飾的なパターンまたは情報を与えるパターン、例えば、メッセージを伝えるウェーブまたはテキスト等を形成する。
【0053】
本発明の複数の実施形態において、少なくとも複数のチャネルのうちの一部は、その長さに沿って変動する直径を有する、および/または、チャネルのうちの少なくとも1つのサブセットは、チャネルの別のサブセットの直径とは異なる直径を有する。
【0054】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層の第1の側の全体の領域あたりのチャネルの領域密度は、1平方センチメートルあたり0.5チャネル~1平方センチメートルあたり200チャネル、好ましくは1平方センチメートルあたり1チャネル~1平方センチメートルあたり100チャネル、より好ましくは1平方センチメートルあたり1チャネル~1平方センチメートルあたり50チャネルである。
【0055】
チャネルの上記実施形態は、単独または組み合わせで、特異的な状況(例えば特異的な流体粘度、特異的なフロー率、特異的な意図された使用など)に対する、流体を導く特性を近くで調整することを可能にする。
【0056】
本発明の複数の実施形態において、例えば複数のチャネルは、パンチング(例えば回転ダイ切断または針を使用して)、加熱ピン、および/またはレーザー光線適用によって形成される。
【0057】
本発明の第1の態様(上記)および第3の態様(下記)に従う複合材料と関連して記載された実施形態、特色および効果は、本発明の第2の態様に従う上記の複合材料について、必要な変更を加えて適用可能である。
【0058】
本発明の第3の態様によれば、上で検討された目的および他の目的は、
第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第1のフォーム層、
第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む、第2のフォーム層、
を含む複合材料によって達成され、
界面結合ボリュームが、前記第1のフォーム層と前記第2のフォーム層との間に存在し、
前記界面結合ボリュームが、前記第1のフォーム層および前記第2のフォーム層を構成する材料の混合物を含み、
前記界面結合ボリュームの厚さが、200μm未満、好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm以下である。
【0059】
これらの実施形態によれば、第2のフォーム層へ直接結合され(例えば物理的な「粘着性」の相互作用によって)、したがって直に接触して、第1のフォーム層を含む複合材料が提供される。
【0060】
これらの実施形態によれば、第1の層および第2の層を共に保持する「外付け」結合手段(例えばフォーム層の間の粘着層を提供する手段による)を提供する必要性が回避される。追加の結合手段(粘着層等)の存在が、結合された層の間の流体移行を低減または抑制し得るので、(分離した)粘着層を省くことは、フォーム層の間の流体輸送に関してとりわけ有利である。
【0061】
本発明の複数の実施形態において、界面結合ボリューム中に含まれる材料のうちの少なくとも1つの物理的特性は、第1のフォーム層および第2のフォーム層を構成する材料と比較してそれぞれ異なる。例えば、界面結合ボリューム内の材料は、第1のフォーム層および第2のフォーム層と比較してより高い密度または異なるフォーム構造(例えば異なる孔のサイズ)をそれぞれ有し得る。
【0062】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の界面結合ボリュームの「厚さ」(すなわち第1のフォーム層および第2のフォーム層によって画成されるようなxy平面に対して垂直な界面結合ボリュームの伸長)は、25~200μm、好ましくは25~100μmの範囲内である。
【0063】
材料の吸収能力および/または保持能力が界面結合ボリュームにおいて低減し得るので、界面結合ボリュームを最小限にすることは有利である。したがって、界面結合ボリューム(すなわちその厚さ)を最小限にすることによって、層の間の流体の移行が促進および改善されることが予想される。
【0064】
本発明に従って使用される時、「界面結合ボリューム」という用語は、第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の界面領域での体積に関連すると理解され、その体積は第1の親水性ポリウレタンフォーム材料および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料の両方(例えばその混合物)を含み、その材料は前記界面体積中で一緒に結合される。界面体積の厚さは、フォーム層の厚さの方向における厚さ(または界面浸透深さ)を指す。
【0065】
界面結合ボリュームは、例えば光学顕微鏡法によって、それぞれ「純粋な」第1のフォーム層および第2のフォーム層とは識別され得る全体の複合材料内の別個の相である。異なる相(界面結合ボリューム、「純粋な」第1のフォーム層、および第2のフォーム層)は、物理的特性における差に基づいて、例えば密度における差ならびに/または孔のサイズおよび分布における差に基づいても識別することができる。
【0066】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層の流体保持能力は、前記第1のフォーム層の流体保持能力よりも20%以上、好ましくは25%以上大きく、前記流体保持能力が、EN13726-1:2002に従って40mmHgの圧力へ2分間曝露した場合に最大量の溶液Aを最初に吸収させて、溶液Aを保持する能力として定義される。
【0067】
本発明の複数の実施形態において、第2のフォーム層は、800kg/m3以上、好ましくは900kg/m3以上の流体保持能力を有する。
【0068】
本発明の第1の態様および第2の態様に従う複合材料と関連して上で記載された実施形態、特色および効果は、本発明の第3の態様に従う上記の複合材料について、必要な変更を加えて適用可能である。
【0069】
本発明の第4の態様によれば、上で検討された目的および他の目的は、複合材料を作製する方法であって、
(i)ポリウレタンプレポリマーを含む水性混合物を調製し、前記水性混合物の水分含有量が、前記水性混合物の全重量と比べて40%w/w未満、好ましくは30%w/w未満、好ましくは25%w/w未満であるステップと、
(ii)ステップ(i)からの前記水性混合物をキャリア材料の上へ適用するステップと、
(iii)前記水性混合物が実質的に完全に硬化される前に、既に硬化された親水性ポリウレタンフォーム層を、ステップ(ii)において前記キャリア材料の上へキャストされたような前記水性混合物の上部に、適用するステップと、
(iv)前記水性混合物を実質的に完全に硬化させることを可能にし、それによって、第1の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む第1のフォーム層および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料を含む第2のフォーム層を含む複合材料を産生するステップと、
を含む、方法によって達成される。
【0070】
本発明の複数の実施形態において、上で記載される方法は、複合材料を乾燥するステップ(v)をさらに有利に含む。
【0071】
「硬化」という用語は、本発明に従って使用される時、水性混合物中のプレポリマーのポリマー間の結合の(架橋)形成を意味し、特に、(架橋)結合は、第1のポリマー上のヒドロキシル基と第2のポリマー上のイソシアネート(NCO)基との間の反応を介して形成されるウレタン結合、または第1のポリマー上のアミン基と第2のポリマー上のイソシアネート(NCO)基との間の反応を介して形成される尿素結合であるかまたはそれを含む。
【0072】
本発明の複数の実施形態において、水性混合物の硬化度は、ステップ(iii)における既に硬化された親水性ポリウレタンフォーム層の前記層を適用するステージで、50~90%、好ましくは70~90%の間である。水性混合物の硬化度を適合させることによって、第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の十分な結合は、界面結合ボリューム(すなわちその厚さ)を同時かつ有利に最小限にしながら達成することができる。第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の剥離強度は、したがってそれが最も弱いフォーム層の(引張)強度を超過するように適合させることができ、剥離強度試験は、界面結合ボリューム内ではなく層のうちの1つの中での破壊を導くだろう。
【0073】
ステップ(i)~(iii)は迅速な連続的工程として有利に遂行されて、既に硬化されたフォーム層が適用される場合に、水性混合物中の所望される硬化度を確実にし、それによって、フォーム層間の(したがって生成された界面結合ボリューム中の)十分な結合を確実にする。
【0074】
「硬化度」という用語は、本明細書において使用される時、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定されるような、反応したイソシアネート基のパーセンテージに関連する。この文脈において、100%の硬化度は、本質的にすべてのイソシアネート(NCO)基が反応したことを意味するが、0%の硬化度は、本質的にイソシアネート(NCO)基が反応していないことを意味する。複合材料を産生する方法の異なるステージでの、NCO基の量およびこれに対応する硬化度は、FTIRによってモニターされ得る。プレポリマー組成物が水と混合される前に(すなわちステップステップ(i)の前に)、0%の硬化度に対応するNCO基数が測定される。「完全に硬化した」および「完全に硬化する」という用語は、本発明に従って使用される時、90~100%の硬化度を意味する。
【0075】
本発明者は、(既に硬化された)フォーム層を、他のフォーム層の硬化する水性プレポリマー混合物の上部に適用することによって、親水性フォーム材料を含む(既に硬化された)フォーム層を、親水性フォーム材料を含む別のフォーム層へ都合よく直接貼り付けできることに驚くべきことに思い至った。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に従う水性プレポリマー混合物中の比較的低い水分含有量は、他の(既に硬化された)フォームの中への水性プレポリマー混合物の急速な吸収を回避または最小限にすると考えられ、その吸収は、そうでなければ、層の間に望まれない界面結合ボリューム(すなわちその大きな厚さ)を生成する、および/または、2つのフォーム材料が完全に一体化された複合材料をもたらす。
【0076】
本発明の複数の実施形態において、プレポリマーを含む水性混合物を調製するステップ(i)は、前記プレポリマーを水と混合するステップを含む。
【0077】
本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は、30%w/w未満(水性混合物の全重量と比べて)、好ましくは25%w/w未満である。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は5~40%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は5~30%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は5~25%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は5~20%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は10~40%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は10~30%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は10~25%w/wである。本発明の複数の実施形態において、前記水性混合物の水分含有量は15~20%w/wである。
【0078】
水性混合物中の水分含有量は、フォームを産生するのに要求される最少量の水が使用されるように、有利に適合され得る。複合材料中の低量の水は、乾燥ステップの間の複合物中の層の低収縮、したがって層間の結合についてのストレスの低減を意味するので、水性混合物中の水の使用を最小限にすることは、方法の乾燥ステップ(v)においてとりわけ有利である。水性混合物中の水の量を最小限にすることは、既に硬化されたフォームのフォーム層の中への水性混合物の透過を最小限にするために有利である、より高い粘度を備えた水性混合物を提供する。
【0079】
複数の実施形態において、ステップ(ii)中で適用されるような水性混合物の厚さは、0.5mm~5mmである。
【0080】
本発明の複数の実施形態において、水性混合物は、少なくとも1つの界面活性物質、好ましくは非イオン性界面活性物質をさらに含む。
【0081】
本発明の複数の実施形態において、好ましくは適用(キャスティング)ステップ(ii)は、水性混合物の上部表面を第2のフォーム層の結合が無いままにしておくために、「コートハンガーダイ」法によって遂行される。
【0082】
既に(完全に)硬化された親水性ウレタンフォームは、適用ステップ(iii)において水性混合物の上部に結合される。「適用」ステップ(iii)は当業者に公知のすべての方法によって実装され得る(例えばキャリアの間の厚さへキャストするか、または厚くキャストし、寸法まで削る)。
【0083】
本発明の複数の実施形態において、既に硬化された親水性フォームは、本発明に従う第1のフォーム層であり、第2のフォーム層は前記水性混合物から産生される。したがって、より少ない保持能力を備えたフォーム層(それは本発明の第1の態様に従う第1のフォーム層である)は、第2のフォーム層の硬化する水性混合物へ適用される(ステップ(iii)において)。この特異的な順序の実装は、より少ない保持能力を有する第1のフォーム層の硬化する水性混合物の上部に高い保持能力を備えた前作製された第2のフォーム層を適用することとは対照的に、第1のフォーム層の中への水性混合物の吸収およびそれと関連した界面体積の厚さの増加を最小限にすることができるので、有利である。
【0084】
本発明の複数の実施形態において、上で記載される方法は、第1のフォーム層の第1の側から、第1のフォーム層と第2のフォーム層との間の界面を横切って、および少なくとも第2のフォーム層の一部の中へ伸長する、複数のチャネルを提供するステップを、さらに含み得る。例えば複数のチャネルは、パンチング(例えば回転ダイ(rotating dye)切断または針を使用して)、加熱ピン、および/またはレーザー光線適用によって形成され得る。
【0085】
本発明のこの第4の態様の特色および効果は、本発明の第1の態様、第2の態様および第3の態様と関連して上で記載されるものに大部分は相似である。第1の態様、第2の態様および第3の態様に関して本明細書において開示される実施形態は、第4の態様へ必要な変更を加えて適用される。
【0086】
本発明の第5の態様によれば、上記および他の目的は、本発明に従う複合材料を含む医療用ドレッシング(特に創傷ドレッシング)を提供することによって達成される。
【0087】
本発明の複数の実施形態において、医療用ドレッシングは、少なくとも1つのさらなる層、好ましくは裏打ち層および/または粘着層もしくはコーティング、好ましくはこれらのさらなる層のうちの2つ以上をさらに含む。
【0088】
当業者に明らかなとおり、本発明は本明細書において記載される例示的な実施形態に決して限定されない。例えば、発明に従う医療用ドレッシングは、複合材料と流体的に連通される追加の構造層(複数可)を含んで、所望される特性をさらに至適化する、および/または、追加機能性を達成することができる。
【0089】
本発明の複数の実施形態において、上で記載される本発明のすべての実施形態において使用されるような第1の親水性ポリウレタンフォーム材料は、イソシアネートキャッピングポリオールまたはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかまたはそれである、第1のプレポリマーから得られる、および/または、上で記載される本発明のすべての実施形態において使用されるような第2の親水性ポリウレタンフォーム材料は、イソシアネートキャッピングポリオールまたはイソシアネートキャッピングポリウレタンを含むかまたはそれらである、第2のプレポリマーから得られる。本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび第2のプレポリマーは異なる。
【0090】
本発明によれば、「プレポリマー」という用語は、A.D.McNaughtおよびA.Wilkinsonによって編纂されたIUPAC:Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」)、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1997)、ISBN 0-9678550-9-8中で定義されるように理解され、その分子が反応基を介してさらなる重合へと入り、それによって、最終的なポリマーのうちの少なくとも1つのタイプの鎖へ2つ以上の構造単位を与えることができる、ポリマーまたはオリゴマーを一般的に指す。
【0091】
本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、または任意のその混合物からなる群から選択されるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。
【0092】
本発明の複数の実施形態において、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリカーボネートポリオール、特にとりわけ、ジオールもしくは随意にトリオールおよびテトラオールの重縮合体に加えて、ジカルボン酸もしくは随意にトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンからなる群から選択される。
【0093】
例示的な好適なジオールは、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ならびにさらに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールまたはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。加えて、ポリオール(トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)も、本発明の範囲内である。
【0094】
本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、ポリオールと脂肪族ジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の複数の実施形態において、ジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であるかまたはそれを含む。したがって、本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/またはプレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリオールまたはヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリウレタンであるかまたはそれらを含む。
【0095】
本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであるかまたはそれらを含む。
【0096】
本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、前記ポリオールと芳香族ジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の複数の実施形態において、ジイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であるかまたはそれらを含む。したがって、本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、トルエンイソシアネートキャッピングポリオールもしくはメチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリオール、またはトルエンイソシアネートキャッピングポリウレタンもしくはメチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリウレタンであるかまたはそれらを含む。
【0097】
本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、トルエンイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであるかまたはそれを含む。本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーおよび/または第2のプレポリマーは、メチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであるかまたはそれを含む。
【0098】
本発明の複数の実施形態において、第1の親水性フォーム材料は、第1のポリオールと第1のジイソシアネート化合物との間の反応に由来する第1のプレポリマーから得られ、第2の親水性フォーム材料は、第2のポリオールと第2のジイソシアネート化合物との間の反応に由来する第2のプレポリマーから得られる。本発明の複数の実施形態において、第1のジイソシアネート化合物および第2のジイソシアネート化合物は同じであり、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)等のうちの1つである。本発明の複数の実施形態において、第1のジイソシアネート化合物および第2のジイソシアネート化合物は異なり、例えば第1のジイソシアンテ(diisocyante)化合物はトルエンジイソシアネート(TDI)であり得、第2のジイソシアネート化合物はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であり得る。本発明の複数の実施形態において、第1のポリオールおよび第2のポリオールは同じであり得、例えば第1のポリオールおよび第2のポリオールはポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)であり得る。本発明の複数の実施形態において、第1のポリオールおよび第2のポリオールは異なる。第1のプレポリマーおよび第2のプレポリマーが異なる本発明の複数の実施形態において、第1のプレポリマーはトルエンイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであり得、第2のプレポリマーはヘキサメチレンイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールまたはメチレンジフェニルイソシアネートキャッピングポリエチレングリコールであり得る。
【0099】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層および/または第2のフォーム層は抗微生物剤を含む。本発明の複数の実施形態において、抗微生物剤は銀を含む。本発明の複数の実施形態において、銀は金属銀である。本発明の複数の実施形態において、銀は銀塩である。本発明の複数の実施形態において、銀塩は、硫酸銀、塩化銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、炭酸銀、リン酸銀、乳酸銀、臭化銀、酢酸銀、クエン酸銀、銀CMC、酸化銀である。本発明の複数の実施形態において、銀塩は硫酸銀である。本発明の複数の実施形態において、抗微生物剤はモノグアニドまたはビグアニドを含む。本発明の複数の実施形態において、モノグアニドまたはビグアニドは、ジグルコン酸クロルヘキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、二塩酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)もしくはその塩、またはポリヘキサメチレンモノグアニド(PHMG)もしくはその塩である。本発明の複数の実施形態において、ビグアニドはPHMBまたはその塩である。本発明の複数の実施形態において、抗微生物剤は第四級アンモニウム化合物を含む。本発明の複数の実施形態において、第四級アンモニウム化合物は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムまたはポリ-DADMACである。本発明の複数の実施形態において、抗微生物剤は、トリクロサン、次亜塩素酸ナトリウム、銅、過酸化水素、キシリトールまたは蜂蜜を含む。
【0100】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の例示的な実施形態を示す図を参照して、ここでより詳細に示されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】本発明に従う複合材料の実施形態の横断面図である。
【
図2a】本発明の第5の態様に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2b】本発明の第5の態様に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2c】本発明の第5の態様に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2d】本発明の第5の態様に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図2e】本発明の第5の態様に従う医療用ドレッシングの実施形態の横断面図である。
【
図3】本発明の第2の態様に従う複合材料の実施形態の図式の描写である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
以下において、本発明の詳細な実施形態は、添付の図(それは本発明の実施形態の例示的なイラストである)を参照して記載される。
【0103】
図1は、本発明に従う複合材料1の実施形態を図示する。複合材料1は、親水性ポリウレタンフォーム材料7の第1の親水性フォーム材料を含む第1のフォーム層2、および第2の親水性フォーム材料8を含む第2のフォーム層3を含む。
【0104】
図1中で図示されるように、界面結合ボリューム4は、第1のフォーム層2と第2のフォーム層3との間に存在し、本明細書において開示されるすべての実施形態へ一般的に適用可能であるので、界面結合ボリューム4は、それぞれ第1のフォーム層2および第2のフォーム層3を構成する材料以外の材料を含まない。
【0105】
第1のフォーム層2および第2のフォーム層3は、例えば物理的相互作用の手段によって、界面結合ボリューム4で互いに直接結合され、それによって、追加の結合手段(例えばフォーム層2と3との間の追加の粘着層等)の必要性を回避する。このことは、かかる追加の粘着層が、複合材料1を介する水蒸気透過率(MVTR)を低減し、実際、フォーム層のうちの1つ中で流体(例えば複合材料が医療用ドレッシングとしてまたはその中で使用されるならば、創傷滲出液)をトラップし得るので有利である。例えば、複合材料1が医療用ドレッシングとしてまたはその中で使用され、第1のフォーム層2が創傷と接するおよび/または面するように適合されるならば、第1のフォーム層2によって吸収された任意の滲出液は、追加の粘着層を介して通過する必要なしに、第2のフォーム層3へ移行し得る。
【0106】
本発明の複数の実施形態において、界面結合ボリューム4の厚さdは、200μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満である。例えば、本発明の複数の実施形態において、界面結合ボリューム4の厚さdは、10~200μm(50~200μmまたは50~150μmまたは50~100μm等)の範囲である。本発明の複数の実施形態において、界面結合ボリューム4の厚さdは、10~100μm(10~60μm等)の範囲である。材料の吸収能力および/または保持能力は界面結合ボリューム4中で損なわれ、界面結合ボリューム4の小さな厚さdはフォーム層の2と3との間の流体移行を促進するので、界面結合ボリューム4の最小の厚さdは有利である。
【0107】
本発明の実施形態に従う複合フォーム材料1は、2つの親水性フォーム層を(より)強く一緒に結合することを可能にする。2つの層を構成する材料(複数可)とは異なるであろう、粘着性材料または他の材料が、2つの層の間の界面で存在しないので、1つの層から他の層への流体移行が至適化される。2つの層における異なる機能性を調整する可能性と共に、このことは特に、1つの全体のフォーム材料中で吸収および保持を至適化することを可能にする。このことはまた、多層(特に二層)のフォーム複合物を提供し、それはただ1つの層中で活性成分(例えば抗微生物剤)を有し、したがって費用を節約することも可能にする。
【0108】
例えば、本発明の複数の実施形態において複合フォーム1が提供され、創傷接触層(例えば第1のフォーム層2)は迅速な吸収について至適化され、後続する層(例えば第2のフォーム層3)は高い流体保持能力を有するように至適化され得る。同様に、本発明は、活性物質(抗微生物性化合物等)を創傷接触層中に取り込む一方で、そうでないところでは良好な吸収および良好な全体のフォーム保持を備えたフォームを依然として保つことを可能にする。
【0109】
図2a~2eは、本発明に従う層の順序の形態で実現されるような、複合材料1を含む医療用ドレッシング40、50、60、80、90の例示的な実施形態を図示する。したがって、
図2a~2e中で示される医療用ドレッシング40、50、60、80、90は、第1の親水性ポリウレタンフォーム材料7を含む第1のフォーム層2および第2の親水性ポリウレタンフォーム材料8を含む第2のフォーム層3を含む。
【0110】
本発明の複数の実施形態において、
図2a~2e中で示されるように、医療用ドレッシング40、50、60、80、90は、第2のフォーム層3の上部側31を重層する裏打ち層21および23をさらに含み、上部側31は第1のフォーム層2へ結合する側と反対側である。それによって、第1のフォーム層2は、直接的または間接的な創傷接触層として機能することができる創傷に面する側35を有して、創傷滲出液を吸収および保持する、ならびに/または、創傷から上方の第2のフォーム層3へ創傷滲出液を輸送する。第1のフォーム層2が創傷に面するこの立体配置において、第1のフォーム層2は、創傷滲出液の急速な吸収を提供するように有利に適合され得る。例えば、本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層2は、10μL/秒以上、好ましくは30μL/秒以上の吸収速度を有する。
【0111】
本発明の複数の実施形態において、
図2a~b中で示されるように、裏打ち層21は複合材料1の層の周辺部の外側に伸長して、したがって複合材料の層の周辺部を囲む裏打ち層の境界部分10を画成し、それによって、いわゆるアイランドドレッシングを提供する。
【0112】
好適な裏打ち層21、23は、例えばフィルム、箔、フォームまたは膜である。さらに、裏打ち層が5μm~80μm、特に好ましくは5μm~60μm、および特に好ましくは10μm~30μmの領域中での厚さを有し、ならびに/または、裏打ち層が450%を超える破断時の伸びを有するならば、有利である。
【0113】
裏打ち層21、23は、DIN 53333またはDIN 54101に従って水蒸気を通すように実現され得る。
【0114】
好ましくは、裏打ち層21、23は、熱可塑性ポリマー(例えばコーティングとして)を含み得るか、またはそれらからなり得る。熱可塑性ポリマーは、最初は、それがそれぞれのプロセシング条件または適用条件についての典型的な温度内で反復して加熱および冷却されたならば、熱可塑性のままであるポリマーとして理解される。熱可塑性であることは、それぞれの材料についての典型的な温度範囲内で、加熱の適用に際して反復して軟化し、冷却された場合に反復して固化する重合体材料の特性であり、材料は、軟化したステージにおいて、および反復して、流展(例えば造形品として)、押出し、または他の方法よって形成可能なままである、と理解される。
【0115】
好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルポリアミドコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、および/またはポリマレートである。好ましくは、熱可塑性ポリマーはエラストマー性である。キャリア箔が熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を含むかまたはそれからなることは、特に好ましい。脂肪族ポリエステルポリウレタン、芳香族ポリエステルポリウレタン、脂肪族ポリエーテルポリウレタン、および/または芳香族ポリエーテルポリウレタンを含む群から選択される、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、特に好適である。これらのポリマーの使用によって、通気性の弾性膜フィルムとして裏打ち層を得ることが可能である。これらは、広範囲の温度にわたる高い柔軟性および弾性によって特徴づけられ、(液体の)水について有利に密閉する特性も有する一方で、高い水蒸気透過性を有する。これらの材料は、低騒音、有利なテキスタイル感触、洗浄およびクリーニングに対する耐性、非常に良好な化学的および機械的耐性、ならびにそれらが可塑剤不含という事実によって、さらに特徴づけられる。
【0116】
病原体についてのバリアとして作用し、創傷から出る滲出液に対する高い密閉能力を有する一方で、同時に水蒸気について透過性である、裏打ち層も特に好ましい。これを達成するために、裏打ち層は、例えば半透膜として実現され得る。
【0117】
本発明の複数の実施形態において、裏打ち層21、23は、蒸気透過性であることが好ましい。裏打ち層21、23は、例えばポリウレタン、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含むかまたはそれらからなるプラスチックフィルムであり得る。本発明の複数の実施形態において、裏打ち層21、23は、10~100μm、例えば10~80μm(10~50μm等)、好ましくは10μm~30μmの範囲内の厚さを有するポリウレタンフィルムである。
【0118】
図2a~2e中で概略的に図示されるように、医療用ドレッシング40、50、60、80、90は粘着層またはコーティング41、42、43を含んで、創傷および/または周囲の皮膚表面へ医療用ドレッシングを粘着することができる。本発明の複数の実施形態において、この創傷に面する粘着層またはコーティング41、42、43はシリコーンベースの粘着剤またはアクリルベースの粘着剤であり得、好ましくは粘着層またはコーティングは、シリコーンベースの粘着剤である。本発明に従う「コーティング」という用語は、表面上の本質的に1つの連続層または表面上の不連続カバーとして理解されるべきである。
【0119】
医療用ドレッシング40、50、60、80、90は、粘着層またはコーティング41、42、43へ放出可能に接続され、適用の前に除去され得る、放出層(図示せず)をさらに含み得る。好適な放出層は、粘着層の粘着剤と接触するようにされるならば、それへの限定された接着を有する材料を含むかまたはそれからなる。かかる放出層についての例は、非粘着性シリコーンまたはポリオレフィン層を含む剥離紙である。
【0120】
図2bおよび
図2d中で示されるように、医療用ドレッシング50、90は有孔層44を含み、例えばポリウレタンフィルムから作製され、粘着性コーティング42は有孔層44の非有孔部分上に提供される。有孔層44は、任意の所望されるサイズおよび形状の複数の開口45(または貫通孔)を含む。開口45の形状およびサイズは、創傷から複合材料1の上方の層への所望される液輸送を達成するように適合され得る。
【0121】
本発明の複数の実施形態において、
図2b中で図示されるように、粘着性コーティング42を備えた有孔層44は、第1のフォーム層2の創傷に面する表面35上に提供され得、有孔層44は、複合材料1のフォーム層2、3の周辺部の外側に伸長し、裏打ち層21の境界部分10へ貼り付けられる。
【0122】
代替の実施形態において、
図2d中で示されるように、有孔層44の設置面積は複合材料1の設置面積に対応する。本発明の複数の実施形態において、
図2c中で示されるように、粘着性コーティング43は、第1のフォーム層2の創傷に面する表面35上に直接提供される。本発明の複数の実施形態において、
図2a中で示されるように、粘着性コーティング41は、連続的なプラスチックフィルム46(例えば上で論じられるようなポリウレタンフィルム)上に提供され、その連続的なプラスチックフィルム46は、複合材料1の層の周辺部へ隣接して配置され、連続的なフィルム46は、前記周辺部から離れて伸長し、裏打ち層21の境界部分10へ貼り付けられている。さらなる実施形態において(図示せず)、粘着性コーティングは、裏打ち層21の境界部分10の創傷に面する表面上に直接提供され得る。
【0123】
本発明の複数の実施形態において、
図2e中で示されるような医療用ドレッシング60は、複合材料1の下にある中心部分12および複合材料1の周辺部の外側に伸長する境界部分11を含む有孔層46を含み、流体が穿孔45を介しておよび複合材料1の中へ移行され得るように、穿孔45は中心部分12中でのみ存在し、有孔層46は、粘着性コーティング41により上記のようにコーティングされる。有孔層46の(非有孔性)境界部分11上の粘着性コーティングは、
図2b中で示される医療用ドレッシング50(穿孔は境界部分中にも存在する)と比較して、より高い粘着能力(より大きな粘着性接触領域に起因する)を有する医療用ドレッシング60を提供する。
【0124】
図3は、特に本発明の第2の態様に従う複合材料70の例示的な実施形態の斜視図であり、複合材料70は、第1の親水性ポリウレタンフォーム材料7を含む第1のフォーム層2を含む。第1のフォーム層2は、使用時に適用の領域に面するように適合された、好ましくは創傷領域に面するように適合された第1の側35を有する。複合材料は、第2の親水性ポリウレタンフォーム材料8を含む第2のフォーム層3をさらに含む。第2のフォーム層3は第1のフォーム層2の第2の側へ結合され、第2の側は第1の側35と反対側であり、界面結合ボリューム4は、第1のフォーム層2と第2のフォーム層3との間に存在する。複数のチャネル71は、その全体を介しておよび少なくとも第2のフォーム層3の一部の中へ、第1のフォーム層2の第1の側35から伸長する。
【0125】
チャネル71は、典型的には、0.1mm~4.0mm、好ましくは0.5mm~3.0mm、さらに好ましくは1.5mm~2.5mmの平均直径(D)を有し得る。
【0126】
概略的に
図3中で図示されるように、複数のチャネル71は、第1のフォーム層2の第1の側35から、第1のフォーム層2の厚さを介して、および第1のフォーム層2と第2のフォーム層3との間の界面体積4を横切って、第2のフォーム層3のコアの中への液体輸送を促進する。
図3中で示されるように、複数のチャネル71は、垂直方向(すなわちz方向または層2の平面に垂直な厚さの方向)において伸長する。
【0127】
本発明者は、第1のフォーム層2を介して、界面体積4を横切っておよび隣接する第2のフォーム層3の中へ伸長する複数のチャネル71を提供することによって、第1のフォーム層2の中へおよびさらにそれを介してならびに後続して第2のフォーム層3の中への流体輸送を改善できることに気付いた。それによって、複合材料の完全な吸収能力はさらに至適化され得る。
【0128】
特に、第1のフォーム層2と第2のフォーム層3との間の界面(例えば界面体積4)を横切る流体輸送は、少なくとも第2のフォーム層3の一部を介して、さらにフォーム層2と3との間の界面を介しても伸長する複数のチャネル71によって改善され得る。
【0129】
本発明の複数の実施形態において、複数のチャネル71は第2のフォーム層3の中へ少なくとも距離を延長し、その距離は、第2のフォーム層の全厚のうちの5%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上に対応する。
【0130】
本発明は、以下の実施例においてさらに例証される。
【実施例】
【0131】
第1のフォーム層を調製する方法
第1のフォーム層(複合材料の調製における後続の使用のための)を、以下のステップ(1~3)を使用して調製した。1)水性混合物を調製した(化学物質および濃度についての表1を参照)。2)水性混合物を選択されたプレポリマー(表1を参照)と重量で規定の比で混合して(表1を参照)、エマルション混合物を得た。3)エマルション混合物をキャスティング紙(20×30cm)の上へ注ぎ、紙上で広げ、スタンダードの条件(室温で)で硬化させて約3mmのフォーム厚を得た(ステップ3におけるエマルション混合物の広がりの厚さを適合させることによって、フォーム厚を制御する)。以下において例示されるように、使用する化学物質は市販品として入手可能である。Baymedix(登録商標)FP-505(HDIベースのプレポリマー組成物)はCovestroから市販品として入手可能であり、Trepol(登録商標)B1(TDIベースのプレポリマー)はRynel Inc.から市販品として入手可能であり、Polycat 77はAir Products and Chemicals Inc.から市販品として入手可能であり、Pluronic(登録商標)L62、重炭酸ナトリウムおよびクエン酸のすべては、Sigma-Aldrich、Fisher Scientific、および/またはBASFから市販品として入手可能である。
【0132】
【0133】
複合材料を調製する方法
本発明の実施形態に従う複合材料を、以下の連続的なステップ(1~6)によってスタンダードの実験室条件で(特別に述べられない限り室温で)調製した。1)水性混合物を調製した(表2を参照)。2)水性混合物を選択されたプレポリマー(表2を参照)と重量で規定の比で混合して(表2を参照)、エマルション混合物を得た。3)エマルション混合物をキャスティング紙(20×30cm)の上へ注ぎ、紙上で広げた。4)単一フォーム層(フォームA、フォームBまたはフォームCのうちの1つ)(20×30cm)を、エマルションの上部に適用した。5)エマルション混合物を、スタンダードの条件(室温で)で硬化させて約3mmのフォーム厚を得た(ステップ3におけるエマルション混合物の広がりの厚さを適合させることによって、フォーム厚を制御する)。そして6)もたらされた複合物産物を1つの側あたり40℃で10分間オーブン中で乾燥した。
【0134】
ステップ1~4を迅速な連続的なステップで遂行し、ステップ1~4を好ましくは4分未満内に完了して、それによって、ステップ4が開始される場合にエマルション混合物において所望される硬化度(典型的には50~90%、好ましくは70~80%)を確保するべきである。乾燥された複合物産物を近似的に10×10cmのサイズにダイカットすることによって、試験片を調製した。
【0135】
【0136】
特別の指示のない限り、パーセンテージに関する表示はすべて、重量パーセントを指すように意図される。硬化度をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定した。23℃でおよびDIN 53019に従って、粘度を決定した。
【0137】
界面結合ボリュームの厚さを測定する方法および結果
界面結合ボリュームの厚さ(または浸透深さ)を、マイクロメータースケールを備えた立体顕微鏡を使用して測定し、すなわち、2つのフォーム層の間の界面結合ボリュームを顕微鏡を使用して同定し、厚さ(層/複合材料の厚さの方向における界面結合ボリュームの深さに対応する)をマイクロメータースケールを使用して測定した。それに応じて測定された複合物A、BおよびC中の界面結合ボリュームの厚さはすべて、20~50μmの範囲内であることが決定された。
【0138】
エマルション中の比較的低い水分含有量に起因して、ウレタンフォームが硬化するにつれて、本質的に水のすべてまたは大部分は溶媒/可塑剤として気泡壁内に含有され、したがって、2つのフォーム層を一緒に結合することに際して前作製されたフォーム層の中へ自由に移動することができない。したがって、2つのフォームの間の界面結合ボリュームの厚さは、比較的小さい(特に200μm未満)。
【0139】
自由膨潤吸収(流体吸収)能力の決定
自由膨潤吸収(または最大吸収)能力を、以下の小さな修飾によりEN13726-1:2002に従って決定した。10×10cm(厚さ約3mm)のサイズによる試験片を使用し、試験片の体積単位あたりの自由膨潤吸収能力を計算した(すなわち体積(m3)あたりの保持された溶液Aの質量(kg))。異なる密度を備えた親水性フォームを比較する場合に、体積あたりの重量は、より妥当な測定値を提供する(例えばEN13726-1:2002中で示唆されるような重量比と比較して)。体積あたりの重量値は、体積あたりの重量値を、サンプルのそれぞれの密度値により割ることによって、重量あたりの重量へ容易に変換することができる。フォーム層A、BおよびCの自由膨潤吸収能力の値を、表3中で以下に提示する。
【0140】
流体保持能力の決定
本発明によれば、EN13726-1:2002に従って自由膨潤吸収(または最大吸収)能力を最初に測定することによって、流体保持能力を決定する。後続して剛性のテンプレート(40mmHgに等価な質量を備えた、サンプル(10×10cm)と近似的に同じサイズ)を、サンプル(ここでEN13726-1:2002に従って溶液Aに浸漬されている)へ適用する。2分後に、剛性のテンプレートを除去し、サンプル重量を再び測定し、残留水分(保持された溶液A)の量を計算する。保持された溶液A(kg)の量をサンプルの体積(m3)により割ることによって、流体保持能力を計算する。フォーム層A、BおよびCの保持値を、表3中で以下に提示する。
【0141】
【0142】
表3中で示されるように、フォームAおよびフォームCの両方はフォームBよりも高い流体保持能力を有し、例えばフォームAはフォームBと比較して263%高い保持能力を有し、したがって複合材料中の流体保持層として好適に機能することができる。特にフォームBはフォームAおよびフォームCよりも高い吸収速度を有するので、フォームBは、創傷流体捕捉層として好適に機能することができる。
【0143】
本発明の複数の実施形態において、第1のフォーム層はフォーム層Bによって実施され、第2のフォーム層はフォーム層Aまたはフォーム層Cによって実施され得る。
【0144】
吸収速度の決定
本発明によれば、吸収速度をTAPPIスタンダードT558 OM-97に従って決定し、その方法は、とりわけ、時間の関数として測定される試料表面の上部に残存する液体体積として、表面の吸収特性を評価するものであり、本明細書において使用される試験溶液はEN13726-1からの溶液Aであり、液滴の体積は30μlである。複合材料A、BおよびC中のフォームBの吸収速度(すなわち複合物A、BおよびCの各々のフォームBへ試験溶液を添加した)は、約30μl/秒であると測定された。フォームAおよびフォームCの吸収速度は、それぞれ約3μl/秒および約10μl/秒であった。
【符号の説明】
【0145】
1 複合材料
2 第1のフォーム層
3 第2のフォーム層
4 界面結合ボリューム
7 第1の親水性ポリウレタンフォーム材料
8 第2の親水性ポリウレタンフォーム材料