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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】空調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20220510BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 108
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020000445
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110047
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】天野 玲子
(72)【発明者】
【氏名】河村 篤
(72)【発明者】
【氏名】大津 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】西田 光治
(72)【発明者】
【氏名】外処 一記
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3220232(JP,U)
【文献】特開2019-119939(JP,A)
【文献】特開2019-157300(JP,A)
【文献】特開2018-165426(JP,A)
【文献】特開2014-005560(JP,A)
【文献】特開2019-031768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも胴体を覆う衣服本体と、前記衣服本体と一体化された頭部を覆うフードを含む衣服において、
前記衣服本体の後身頃の下部に配置されている一つ又は複数の空気取入れ口と、前記空気取入れ口と着脱可能に連結され、外部から衣服内に空気を取り込む風発生装置とを備え、
前記衣服の身体側には背面中央上部から頭頂部に至るように第1流風路が形成されており、
第1流風路は、衣服本体に設けられた頸部流風路と、フードに設けられる頭部流風路を含み、前記頸部流風路と前記頭部流風路は連続的に形成されており、衣服内に取り込んだ空気を頭頂部に移送し、額側から排出することを特徴とする空調衣服。
【請求項2】
第1流風路は、衣服内に空気が流れる際に衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部が身体側とは反対側に突出することで形成される、或いは、静止立位で衣服を着用した時に背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部における身体と衣服間に形成された隙間で構成されている請求項1に記載の空調衣服。
【請求項3】
前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域に形成されている請求項又はに記載の空調衣服。
【請求項4】
第1流風路は、表地と裏地で構成されており、前記表地のフラジール法による通気度は100cc/cm2/sec以下であり、前記裏地のフラジール法による通気度は150cc/cm2/sec以上である請求項1~のいずれかに記載の空調衣服。
【請求項5】
頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域において、第1流風路を構成する裏地の幅が第1流風路を構成する表地の幅より狭い請求項に記載の空調衣服。
【請求項6】
頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域において、第1流風路を構成する表地が側部にマチを有する請求項又はに記載の空調衣服。
【請求項7】
背面上部を覆う領域及び/又は首を覆う領域の身体側には冷却材を収容するためのポケットが形成されている請求項1~のいずれかに記載の空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服内に取り込んだ外部からの空気を効果的に頭頂部に移送することができる空調衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温下で作業する場合や生活する場合に、衣服内に外気を流通させて身体を冷却するように設計された空調衣服が提案されている。例えば、特許文献1には、風発生手段が装着される取付孔が胴部の背面に形成され、頭部を覆い、冷却風排出部が設けられたフード部を備えた冷却衣服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-119939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷却衣服では、冷却風は冷却風排出部を介して、フード部の内側から外側に排出されている。一方、株式会社建泉社発刊の「衣環境の科学」(編著田村照子、16頁)に記載の人体の皮膚表面温度分布に示されているように、高温の環境下において、表面温度が最も高いのは頭頂部である。特に、頭頂部は生理制御をつかさどる機能を有し、温度が高くなった際、生体活動を抑制し、運動パフォーマンスの低下などの影響があるため、暑熱状態において、冷却する事が非常に重要である。特許文献1に記載の冷却衣服の場合、頭頂部とフードの間に隙間がなく空気が流れないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、頭頂部に外部から取り込んだ空気を送る性能が高い空調衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも胴体を覆う衣服本体と、前記衣服本体と一体化された頭部を覆うフードを含む衣服において、前記衣服本体の後身頃の下部に配置されている一つ又は複数の空気取入れ口と、前記空気取入れ口と着脱可能に連結され、外部から衣服内に空気を取り込む風発生装置とを備え、前記衣服の身体側には背面中央上部から頭頂部に至るように第1流風路が形成されていることを特徴とする空調衣服に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、頭頂部に外部から取り込んだ空気を送る性能が高い空調衣服を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の一例の空調衣服の模式的正面図である。
図2図2は同模式的背面図である。
図3図3は同模式的裏面図である。
図4図4Aは本発明の一例の空調衣服のフードにおいて第1流風路を構成する裏地のパターン図であり、図4Bは同第1流風路を構成する表地のパターン図である。
図5図5Aは本発明の一例の空調衣服において第1流風路を構成する裏地のパターン図であり、図5Bは同第1流風路を構成する表地のパターン図である。
図6図6は外部から空気を取り込んだ際の衣服内における空気の流れを説明する模式図である。
図7図7は外部から空気を取り込んだ際の頭部における空気の排出を説明する模式図である。
図8図8は本発明の他の一例の空調衣服の模式的裏面図である。
図9図9は風速計の取り付け位置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、空調衣服において、頭頂部を冷却する性能を高めることについて鋭意検討した。その結果、少なくとも胴体を覆う衣服本体と、前記衣服本体と一体化された頭部を覆うフードを含む衣服において、前記衣服本体の後身頃の下部に一つ又は複数の空気取入れ口を配置し、前記空気取入れ口と着脱可能に連結され、外部から衣服内に空気を取り込む風発生装置とを設けるとともに、前記衣服の身体側に背面中央上部から頭頂部に至るように第1流風路を形成することで、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が第1流風路を介して頭頂部に効果的に移送され、額側から排出され得ることを見出した。
【0010】
本発明において、第1流風路は、衣服内に空気が流れる際に衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部が身体側とは反対側に突出することで形成されてもよい。これにより空気が流れる流路が確保されやすく、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が第1流風路を介して頭頂部に移送されやすい。
【0011】
本発明において、第1流風路は表地と裏地で構成され、前記表地のフラジール法による通気度は100cc/cm/sec以下であり、前記裏地のフラジール法による通気度は150cc/cm/sec以上であることが好ましい。これにより、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が第1流風路を介して頭頂部に効果的に移送されやすい。前記表地のフラジール法による通気度は80cc/cm/sec以下であることがより好ましく、50cc/cm/sec以下であることがさらに好ましく、30cc/cm/sec以下であることが特に好ましい。前記裏地のフラジール法による通気度は180cc/cm/sec以上であることがより好ましく、200cc/cm/sec以上であることがさらに好ましく、250cc/cm/sec以上であることが特に好ましい。また、衣服本体も上述した表地と裏地で構成してもよい。裏地としては、メッシュ生地を好適に用いることができる。
【0012】
本発明の衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部において、第1流風路を構成する裏地の幅が第1流風路を構成する表地の幅より狭いことが好ましい。これにより、衣服内に空気が流れる際に衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部が身体側とは反対側に突出しやすくなる。より好ましくは、衣服の頭頂部及び後頭部の少なくとも一部において、第1流風路を構成する裏地の幅が第1流風路を構成する表地の幅より狭い。これにより、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が高い効率で頭頂部に移送されやすい。フードにおける第1流風路において、額側及び/又は首側の裏地の幅は、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部における最も狭い裏地の幅より大きいことが好ましい。これにより、より多くの空気をフードにおける第1流風路に取り込み、頭頂部に移送した後、額側から排出しやすい。
【0013】
本発明の衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部において、表地が側部にマチ、ギャザー又はいせ込みを有することが好ましい。これにより、衣服内に空気が流れる際に衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部が身体側とは反対側に突出しやすくなる。より好ましくは、衣服の頭頂部及び後頭部の少なくとも一部において、表地が側部にマチ、ギャザー又はいせ込みを有することが好ましい。これにより、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が高い効率で頭頂部に移送されやすい。
【0014】
本発明において、第1流風路は、衣服本体の背面中央上部の少なくとも一部に設けられた頸部流風路と、フードの頭頂部の少なくとも一部に設けられた頭部流風路を含んでもよい。前記頸部流風路と前記頭部流風路は分断されてもよく、連続的に形成されてもよい。前記頸部流風路と前記頭部流風路が分断されている場合は、頭部流風路には空気を送り込むための開口部が設けることが好ましい。該開口部は、頭部流風路の裏地にスリットを形成することで設けてもよく、頭部流風路の裏地の首側の先端を自由端にすることで設けてもよい。なお、該開口部は、例えば、額側のフード口から10cm以上60cm以下離れた箇所に設けることができる。前記頸部流風路と前記頭部流風路が連続的に形成されている場合は、前記頸部流風路の裏地には空気を排出する開口部、例えばスリット等が形成されてもよい。頭頂部に空気を効果的に移送するとともに、頸部を効果的に冷却することができる。
【0015】
前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域に形成されていることが好ましい。前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域において、裏地の幅を表地の幅より狭くすることで形成してもよく、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域において、表地の側部にマチ又はギャザーを設けることで形成してもよい。前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎及び第7頸椎を覆う領域に形成されていることがより好ましい。前記頸部流風路は、連続的に形成されてもよく、二つ以上の部分に分断されてもよい。衣服内に空気が流れる際に頸部流風路の表地が身体側とは反対側に突出することで、衣服と頸椎の間に隙間ができ、空気がスムーズに頭部に流れる。
【0016】
前記頭部流風路は、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域に形成されていることが好ましい。前記頭部流風路は、上述したように、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域において、裏地の幅を表地の幅より狭くすることで形成してもよく、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域において、表地の側部にマチ又はギャザーを設けることで形成してもよい。前記頭部流風路は、頭頂部及び後頭部を覆う領域に形成されていることが好ましい。前記頭部流風路は、連続的に形成されてもよく、二つ以上の部分に分断されてもよい。衣服内に空気が流れる際に頭頂部風路の表地が身体側とは反対側に突出することで、衣服と頭頂部の間に隙間ができ、空気がスムーズに頭頂部に流れ、額側から排出される。
【0017】
本発明において、第1流風路は、静止立位で衣服を着用した時に背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部における身体と衣服間に形成された隙間で構成されてもよい。これにより空気が流れる流路が確保されやすく、風発生装置にて衣服内に取り込んだ空気が第1流風路を介して頭頂部に移送されやすい。
【0018】
本発明の衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部において、縫製線の周囲に芯地を配置することで、縫製線を頂点とする鋭角構造の隙間を形成して第1流風路を構成してもよい。或いは、本発明の衣服の背面中央上部の少なくとも一部及び頭頂部の少なくとも一部において、留め具を配置することで、身体側とは反対側に突出する凸部を形成して第1流風路を構成してもよい。
【0019】
本発明において、前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域において、縫製線の周囲に芯地を配置して、縫製線を頂点とする鋭角構造の隙間を形成することで設けてもよい。或いは、本発明において、前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎、第7頸椎、第1胸椎、第2胸椎、第3胸椎、第4胸椎及び第5胸椎の少なくとも一部を覆う領域において、留め具を配置して、身体側とは反対側に突出する凸部を形成することで設けてもよい。前記頸部流風路は、第3頸椎、第4頸椎、第5頸椎、第6頸椎及び第7頸椎を覆う領域に形成されていることがより好ましい。前記頸部流風路は、連続的に形成されてもよく、二つ以上の部分に分断されてもよい。
【0020】
本発明において、前記頭部流風路は、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域に、縫製線の周囲に芯地を配置して、縫製線を頂点とする鋭角構造の隙間を形成することで設けてもよい。或いは、本発明において、前記頭部流風路は、頭頂部及び後頭部の少なくとも一部を覆う領域に、留め具を配置して、身体側とは反対側に突出する凸部を形成することで設けてもよい。
【0021】
本発明において、背面上部を覆う領域及び/又は首を覆う領域の身体側には冷却材を収容するためのポケットが形成されていることが好ましい。該ポケットに冷却材を収容することにより、衣服内の空気を冷却することができ、頭頂部の温度がより速く低下させることができる。ポケットは衣服の裏地の裏側に配置されていてもよく、衣服の裏地と表地の間に配置されてもよい。
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の1以上の実施形態に係る空調衣服を説明する。しかし、本発明は、これらの図面に示されるものに限定されない。
【0023】
図1は本発明の一例の空調衣服(ノースリーブ型)の模式的正面図である。図2は同模式的背面図である。図3は同模式的裏面図である。該実施形態の空調衣服1は、少なくとも胴体を覆う衣服本体2と、頭部を覆うフード3を含み、表地31と裏地32を有する。衣服本体2の後身頃の下部の側部には左右対称に一対の空気取入れ口4が配置されており、それぞれの空気取入れ口4と着脱可能に連結され、外部から衣服内に空気を強制的に取り込む風発生装置5とを備える。また、風発生装置5に電力を供給する電源装置6と、風発生装置5と電源装置6を接続するための電力供給ケーブル7を備える。該実施形態の空調衣服1は、美観及び衣服内の空気の流れを良好にする観点から、一対の空気取入れ口4を有するが、空気取入れ口は1つであってもよく、三つ以上であってもよい。空気取入れ口4の周縁部には、樹脂製の固定リングが設けられ、固定リングを介して、後述するファン等の風発生装置5が空気取入れ口4に固定される。固定リングは、シリコン樹脂(シリコーン)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の樹脂で構成することができる。
【0024】
風発生装置5は、外部から空気を衣服内に取り込んで、身体(或いは下着)と衣服の間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるものである。風発生装置5としては、特に限定されず、例えば、ファンを用いることができる。前記ファンとしては、特に限定されず、例えば、従来の空調衣服に用いられるものと同じものを用いることができる。例えば、ファンは、ファン本体と、ファンを衣服本体に取り付けるための取付けリングを備えており、ファン本体を、衣服本体に設けられた空気取入れ口に差込み、空気取入れ口のリング部にファン本体に設けた上側フックとコネクタ部でファン取付け部を固定することで、ファンを衣服本体に取り付けることができる。
【0025】
電源装置6は、特に限定されないが、携帯できる電源であればよく、特に限定されない。例えば、充電式電池や乾電池などを用いることができ、繰り返し使用可能である観点から、充電式電池を用いることが好ましい。充電式電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池などを用いることができる。空調衣服1を着用する際には、電源装置6は衣服本体2の後身頃の下部の中央部分に設けられた収納ポケット8に収納されてもよい。
【0026】
衣服本体2は、左右の前身頃21、後身頃22、襟23、裾24を有する。裾24は、空気の漏れを防止する観点から、ゴム紐等の伸縮性素材で構成されてもよい。襟23の上端において、衣服本体2とフード3が一体化されている。また、左右の前身頃は結合部材9によって開閉可能に連結されている。結合部材9としては、衣服内の空気の圧力を高める観点から、例えば、チャックやファスナー等を用いることが好ましい。また、必要に応じて、袖を有してもよい。
【0027】
空調衣服1の身体側には、背面中央上部から頭頂部に至るように第1流風路10が形成されている。第1流風路10は、衣服本体2の身体側に設けられた頸部流風路11と、フード3の身体側に設けられた頭部流風路12を含む。頸部流風路11と頭部流風路12は連続的形成されている。
【0028】
頸部流風路11は、表地31及び裏地32で構成されており、図2に示されているように、第3頸椎から第7頸椎までを覆う領域において、表地31の側部にマチを設けることで形成されている。
【0029】
頭部流風路12は、頭頂部及び後頭部を覆う領域において、図4A及び4Bに示すように、裏地32の幅が表地31の幅より狭い部分を設けることで形成されている。図4A及び4Bにおいて、Iは額側、IIは首側を示す。1例として、空調衣服1がJASPO規格のLサイズの場合、裏地において、L1は10.0cm、L2は14.5cm、L3は10.5cm、L4は9.5cm、L5は10.5cm、L6は11.5cmであり、表地において、L7及びL8はいずれも12.5cmである。裏地32の幅が表地31の幅より狭い部分は、額側のフード口から3cm以上40cm以下離れた箇所に配置することが好ましい。フードと頭部が接する箇所において、空気の流路を確保しやすくなる。
【0030】
或いは、図5A及び5Bに示されているように、第1流風路10は、第3頸椎から第7頸椎までを覆う領域、及び、頭頂部及び/又は後頭部を覆う領域において、表地31の側部にマチを設けることで形成してもよい。図5A及び5Bにおいて、頭部流風路を基準に、Iは額側、IIは首側を示す。1例として、空調衣服1がJASPO規格のLサイズの場合、裏地において、L9は19.0cm、L10は38.0cm、L11は27.0cm、L12は6.0cm、L13は8.0cmであり、表地において、L14は6.0cm、L15は10.0cmである。頭頂部及び/又は後頭部を覆う領域における額側のフード口から3cm以上40cm以下離れた箇所において、表地31の側部にマチを設けることが好ましい。フードと頭部が接する箇所において、空気の流路を確保しやすくなる。
【0031】
図6は外部から衣服内に空気を取り込んだ際の本発明の一例の空調衣服の模式的裏面図である。図7は外部から空気を取り込んだ際の頭部における空気の排出を説明する模式図である。図6及び7に示されているように、外部から衣服内に空気を取り込み、衣服内に空気が流れる際、頸部流風路11では表地31の側部のマチが膨らむことにより表地31が身体側との反対側に突出することで、空気が頸部流風路11を通過し、頭部流風路12では裏地32の幅が表地31の幅より狭い部分において、表地31が身体側との反対側に突出することで、頸部流風路11を通過した空気が頭部流風路12を通過し、額から排出される。
【0032】
図8は本発明の他の一例の空調衣服(ノースリーブ型)の模式的裏面図である。該実施形態の空調衣服41は、衣服の身体側に冷却材を収容するポケットを有する以外は、上述した空調衣服1と同様の構成にすることができる。
【0033】
空調衣服41において、裏地32の裏側には、冷却材を収容するためのポケット51~59が形成されている。具体的には、胸部を覆う領域には、左右対称的に二つのポケット51、52が、それぞれ、左右の前身頃21に配置されている。また、背面上部を覆う領域には、背面中心部を覆うポケット53と、その両隣の肩甲骨を覆うポケット54、55が配置されている。首を覆う領域には、左右対称的に二つのポケット56、57が、襟23に配置されている。両脇部の頂部には、ポケット58、59が形成されている。ポケット53、56及び57は伸縮性生地で構成してもよく、その他のポケットは非伸縮性のネット生地で構成してもよい。
【0034】
ポケット51~59の少なくとも一部に冷却材を収容することで、衣服内の空気を冷却することができ、第1流風路との相乗効果により、頭頂部の温度を速やかに下げることができる。特に、ポケット53~57の少なくとも一部に冷却材を収容することが好ましく、ポケット53、56及び57に冷却材を収容することがより好ましい。前記冷却材(保冷剤とも称される。)としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、水や水に水溶性高分子材等を溶解した水系ゲル蓄熱体を密閉容器、例えば樹脂製の収納袋で封入した冷却材を用いることができる。
【0035】
衣服本体、フード及びポケットに用いる素材としては、特に限定されず、織物や編物などを用いることができる。生地の断面方向の通風抑制の観点から、織物の方が好ましい。上記織物としては、特に限定されず、一重織り組織でもよく、二重織り組織でもよい。例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。前記生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。前記素材は、特に限定されないが、例えば、目付けが20~300g/mの範囲が好ましく、50~250g/mの範囲であることがより好ましい。目付が上記の範囲であれば、耐久性も良く、軽くて動きやすい利点がある。
【0036】
本発明の空調衣服は、高温下の各種作業やスポーツ観戦等の日常生活の際に着用することで、身体、特に頭頂部を含む身体全体を効果的に冷却することができる。
【実施例
【0037】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
前身頃、後身頃、襟及びフードにおいて、表地として織物(平織り、ポリエステル繊維77質量%、綿23質量%、目付け156g/m、通気度50cc/cm/sec)を用い、裏地としてメッシュ生地(トリコット編み、目付80g/m、通気度200cc/cm/sec)を用い、空気取入れ口4は直径が10cmの円形とし、空気取入れ口の固定リングをシリコン樹脂で形成し、風発生手段5として直径が10cmのファン(サンエス社製、品名「ファンセット薄型RD9710A」、羽の直径80mm、羽の枚数5枚、供給電力7V、2A)を用い、電源装置6としてリチウムイオン電池(サンエス社製、品名「リチウムイオンバッテリーRD9870AJ」)を用い、電力供給ケーブル7としてケーブル(サンエス社製、品名「ファンセット薄型RD9710A」)を用い、図1~3に示すようなノースリーブ型の空調衣服1(JASPO規格Lサイズ)を作製した。なお、ポケット8が配置されている箇所には裏地を用いておらず、フード3における第1流風路以外の箇所には、裏地として織物(平織、目付70g/m、通気度40cc/cm/sec)を用いた。裾は、編地(フライス編、目付230g/m、通気度70cc/cm/sec)で構成した。
【0039】
頸部流風路11は、裏地32及び表地31で構成されており、図2に示されているように、第3頸椎から第7頸椎までを覆う領域において、表地31の側部にマチを設けることで形成されている。マチの長さは約21.5cmであり、幅は約2.5cmであった。
【0040】
頭部流風路12は、頭頂部及び後頭部を覆う領域において、図4A及び4Bに示すように、裏地32の幅が表地31の幅より狭い部分を設けることで形成した。図4A及び4Bにおいて、Iは額側、IIは首側を示す。裏地において、L1は10.0cm、L2は14.5cm、L3は10.5cm、L4は9.5cm、L5は10.5cm、L6は11.5cmであり、表地において、L7及びL8はいずれも12.5cmであった。
【0041】
(比較例1)
頸部流風路11、すなわち、第3頸椎から第7頸椎までを覆う領域において、表地の側部にマチを設けていない以外は、実施例1と同様にして空調衣服を作製した。
【0042】
(比較例2)
頭部流風路12を設けていない、すなわち、頭頂部及び後頭部を覆う領域において、裏地の幅を表地の幅と同様の幅にした以外は、実施例1と同様にして空調衣服を作製した。
【0043】
(比較例3)
頸部流風路11及び頭部流風路12を設けていない以外は、実施例1と同様にして空調衣服を作製した。
【0044】
実施例1及び比較例1~3の空調衣服を、風速計(日本カノマックス株式会社製「ANEMOMASTER MODEL6004」を取り付けた人体型マネキン(七彩社製、品名「日本人の平均的人体寸法ダミー」)に着用させて、ファンを作動させた後、風速計で風速を測定した。具体的には、図9に示されているように、風速計をセンサーが額部101、頬部102及びが顎部103に位置するように配置し、風速を計測した。その結果を下記表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から分かるように、実施例1の場合は、比較例1~3の場合に比べて、額部から排出される空気の風速が格段に向上しており、頭頂部に空気を効果的に移送することができ、高温下において表面温度が最も高い頭頂部を効果的に冷却することができた。
【符号の説明】
【0047】
1、41 空調衣服
2 衣服本体
3 フード
4 空気取入れ口
5 風発生装置
6 電源装置
7 電力供給ケーブル
8 収納ポケット
9 結合部材
10 第1流風路
11 頸部流風路
12 頭部流風路
21 前身頃
22 後身頃
23 襟
24 裾
31 表地
32 裏地
51~59 ポケット
101、102、103 センサー配置箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9