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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】無効電力補償装置が備える制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20220510BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20220510BHJP
   G05F 1/70 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02J3/18 135
H02J3/16
G05F1/70 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020123916
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020431
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 恭平
(72)【発明者】
【氏名】柳樂 和宏
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175821(JP,A)
【文献】特開2019-149849(JP,A)
【文献】特開2012-200111(JP,A)
【文献】特開平10-320063(JP,A)
【文献】特開2019-122144(JP,A)
【文献】特開2011-055705(JP,A)
【文献】特開昭63-052639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
G05F1/12-7/00
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路の出力電圧を制御して配電系統に無効電力を供給することにより前記配電系統の系統電圧を一定に制御する無効電力補償装置が備える制御回路であって、
前記配電系統の系統電圧指令値と前記配電系統の系統電圧検出値の偏差である系統電圧偏差を算出するように構成されている第1減算器と、
前記系統電圧偏差が小さくなるための無効電流指令値を算出するように構成されている無効電流指令値算出部と、
前記無効電流指令値と前記インバータ回路のインバータ電流検出値の偏差である無効電流偏差を算出するように構成されている第2減算器と、
前記無効電流偏差が小さくなるための前記インバータ回路の出力電圧指令値を算出するように構成されている出力電圧指令値算出部と、
前記出力電圧指令値に基づいて前記インバータ回路を駆動するように構成されている駆動部と、を備えており、
前記無効電流指令値算出部は、
前記配電系統の系統インピーダンスを算出する系統インピーダンス算出部と、
積分器を有する第1制御器であって、前記系統電圧偏差に基づいて第1無効電流指令値を算出するように構成されている第1制御器と、
前記配電系統の前記系統インピーダンスに基づいて第2無効電流指令値を算出するように構成されている第2制御器と、
前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第1制御モードと、前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第2制御モードと、を切り換えるように構成されている切換部と、を有しており、
前記切換部は、前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が閾値を超えたときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換えるように構成されている、制御回路。
【請求項2】
前記第2制御器は、前記系統電圧偏差と前記配電系統の前記系統インピーダンスの逆数の積に基づいて前記第2無効電流指令値を算出するように構成されている、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記切換部は、
前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が第1上限閾値を上回ったときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換え、
前記第2制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が前記第1上限閾値よりも低い第2上限閾値を下回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換える、ように構成されている、請求項1又は2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記切換部は、前記系統電圧偏差が前記第1上限閾値を上回った後の前記第2制御モードにおいて、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値が前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を上回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるように構成されている、請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記切換部は、
前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が第1下限閾値を下回ったときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換え、
前記第2制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が前記第1下限閾値よりも高い第2下限閾値を上回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換える、ように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項6】
前記切換部は、前記系統電圧偏差が前記第1下限閾値を下回った後の前記第2制御モードにおいて、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値が前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を下回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるように構成されている、請求項5に記載の制御回路。
【請求項7】
前記切換部は、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるときに、切換時の前記第1制御モードの前記第1無効電流指令値が切換直前の前記第2制御モードの前記第2無効電流指令値に近い値となるように、切換直前の前記第2制御モードの前記第2無効電流指令値に基づいて前記第1制御器の積分項を調整するように構成されている、請求項3~6のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項8】
前記系統インピーダンス算出部は、前記系統電圧指令値に系統インピーダンス計測用指令値を加算したときの前記インバータ電流検出値の変化量と、前記系統インピーダンス計測用指令値又は前記系統電圧検出値のいずれか一方の変化量と、に基づいて前記系統インピーダンスを算出するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、無効電力補償装置が備える制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統の系統電圧は、負荷の変動により常に変化している。このような系統電圧の変動を抑制するために、無効電力補償装置が配電系統に設置されている。無効電力補償装置は、系統電圧が低下しているときに進み無効電力を配電系統に供給し、系統電圧が上昇しているときに遅れ無効電力を配電系統に供給することにより、系統電圧の変動を調整する。特許文献1~3は、このような無効電力補償装置の一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5634150号
【文献】特許第5862955号
【文献】特許第5963250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配電系統の系統電圧が短時間で大きく変動することがある。このような系統電圧の急変動が生じたときに、系統電圧を定常状態へと高速で復帰させる技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する無効電力補償装置は、インバータ回路の出力電圧を制御して配電系統に無効電力を供給することにより前記配電系統の系統電圧を一定に制御するように構成されている。このような無効電力補償装置が備える制御回路は、第1減算器と、無効電流指令値算出部と、第2減算器と、出力電圧指令値算出部と、駆動部と、を備えることができる。前記第1減算器は、前記配電系統の系統電圧指令値と前記配電系統の系統電圧検出値の偏差である系統電圧偏差を算出するように構成されている。前記無効電流指令値算出部は、前記系統電圧偏差が小さくなるための無効電流指令値を算出するように構成されている。前記第2減算器は、前記無効電流指令値と前記インバータ回路のインバータ電流検出値の偏差である無効電流偏差を算出するように構成されている。前記出力電圧指令値算出部は、前記無効電流偏差が小さくなるための前記インバータ回路の出力電圧指令値を算出するように構成されている。前記駆動部は、前記出力電圧指令値に基づいて前記インバータ回路を駆動するように構成されている。前記無効電流指令値算出部は、系統インピーダンス算出部と、第1制御器と、第2制御器と、切換部と、を有することができる。前記系統インピーダンス算出部は、前記配電系統の系統インピーダンスを算出するように構成されている。前記第1制御器は、積分器を有しており、前記系統電圧偏差に基づいて第1無効電流指令値を算出するように構成されている。前記第2制御器は、前記配電系統の系統インピーダンスに基づいて第2無効電流指令値を算出するように構成されている。前記切換部は、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第1制御モードと、前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第2制御モードと、を切り換えるように構成されている。前記切換部は、前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が閾値を超えたときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換えるように構成されている。ここで、「閾値を超える」とは、上限閾値を上回るように超える場合であってもよく、下限閾値を下回るように超える場合であってもよく、それら双方の場合が含まれていてもよい。また、「上限閾値を上回る」とは、「上限閾値以上」の意味であってもよく、「上限閾値よりも大きい」の意味であってもよい。同様に、「下限閾値を下回る」とは、「下限閾値以下」の意味であってもよく、「下限閾値よりも小さい」の意味であってもよい。
【0006】
前記系統電圧の急変動が生じた場合、前記第1制御モードが実行する制御では、前記第1制御器が有する前記積分器の影響によりそのような急変動に高速で対応することができない。また、前記系統電圧の急変動が生じた場合、前記系統電圧を定常状態へと復帰させるためには、大きな操作量が必要となる。例えば、このような操作量として固定値を利用することが考えられる。しかしながら、操作量として固定値を利用する場合、前記配電系統に接続される負荷特性によっては前記系統電圧を過剰に変動させてしまう虞がある。このため、操作量に固定値を利用する場合、安全性を考慮して小さい操作量としなければならず、高速な制御が難しい。本明細書が開示する前記制御回路は、前記系統電圧の急変動が生じたときに、前記第2制御モードを実行する。前記第2制御モードでは、前記第2制御器が前記配電系統の前記系統インピーダンスに基づいて前記第2無効電流指令値を算出し、その第2無効電流指令値が前記第2減算器に入力される。このように、前記第2制御モードが実行する制御では、前記配電系統に接続される負荷特性に依存した制御が可能となる。これにより、前記第2制御モードでは、前記系統電圧を定常状態へと高速で復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】配電系統の構成を説明するための配電系統の概念図を示す。
図2】無効電力補償装置が備える制御回路の制御ブロック図を示す。
図3】進み無効電力を供給するために無効電流指令値算出部が実行する制御フローを示す。
図4】遅れ無効電力を供給するために無効電流指令値算出部が実行する制御フローを示す。
図5】低圧配電線の系統電圧の変動と無効電流指令値算出部が実行する制御モードの関係を示す。
図6】進み無効電力を供給するために無効電流指令値算出部が実行する制御フローの変形例を示す。
図7】遅れ無効電力を供給するために無効電流指令値算出部が実行する制御フローの変形例を示す。
図8】系統インピーダンスを計測する方法を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(配電系統の構成)
図1に、配電系統の構成を説明するための配電系統の概念図を示す。配電用変電所1の2次側に高圧配電線2が接続されている。その高圧配電線2の系統電圧の変動を抑えるために、高圧配電線2の線路途中に例えばSVR(Step Voltage Regulator)3が設置されている。高圧配電線2には、例えば柱上変圧器4を介して低圧配電線5が接続されている。低圧配電線5には複数の負荷6が接続されている。これら負荷6の各々は、例えば一般家庭の負荷、自然エネルギーを利用して発電された余剰電力を低圧配電線5に供給する負荷(例えば太陽電池等)である。なお、高圧配電線2の系統電圧は例えば6600Vであり、低圧配電線5の系統電圧は例えば200Vである。
【0009】
(無効電力補償装置の構成)
低圧配電線5の系統電圧の変動を抑えるために、低圧配電線5に無効電力補償装置10が設置されている。無効電力補償装置10は、連係リアクトル12と、連係リアクトル12を介して低圧配電線5の連係点P1に並列接続されているインバータ回路14と、インバータ回路14の電位を確立するためにインバータ回路14に接続されているコンデンサ16と、インバータ回路14に含まれる複数の半導体スイッチング素子の駆動を制御する制御回路18と、を備えている。
【0010】
無効電力補償装置10は、インバータ回路14の出力電圧を低圧配電線5の系統電圧の位相と同期させるとともにその大きさを変化させることにより、低圧配電線5の系統電圧を調整するように構成されている。例えば、負荷6の変動により低圧配電線5の系統電圧が低下した場合、無効電力補償装置10は、インバータ回路14の出力電圧が低圧配電線5の系統電圧よりも大きくなるように制御する。これにより、連係リアクトル12が進相コンデンサとして動作し、進み無効電力が低圧配電線5に供給され、低圧配電線5の系統電圧が上昇する。一方、負荷6の変動により低圧配電線5の系統電圧が上昇した場合、無効電力補償装置10は、インバータ回路14の出力電圧が低圧配電線5の系統電圧よりも小さくなるように制御する。これにより、連係リアクトル12が分路リアクトルとして動作し、遅れ無効電力が低圧配電線5に供給され、低圧配電線5の系統電圧が低下する。このように、無効電力補償装置10は、低圧配電線5の系統電圧の変動に応じてインバータ回路14の出力電圧を制御することにより、低圧配電線5の系統電圧が一定となるように調整することができる。
【0011】
(無効電力補償装置の制御回路の構成)
図2に、無効電力補償装置10の制御回路18の制御ブロック図を示す。制御回路18は、第1減算器102と、無効電流指令値算出部104と、第2減算器106と、出力電圧指令値算出部108と、駆動部110と、を備えている。
【0012】
第1減算器102は、系統電圧指令値Vrefと系統電圧検出値Vdetの偏差である系統電圧偏差Vdevを算出するように構成されている。系統電圧指令値Vrefは、低圧配電線5の系統電圧に定められた許容電圧範囲(例えば202±20V)内に設定された電圧であり、例えば200Vである。系統電圧検出値Vdetは、低圧配電線5の連係点P1で検出された系統電圧である。第1減算器102には、系統インピーダンス計測用指令値Vmesも入力している。この系統インピーダンス計測用指令値Vmesは、低圧配電線5の系統インピーダンスを計測するために第1減算器102に加算される電圧である。なお、系統インピーダンスを計測する方法については後述する。
【0013】
無効電流指令値算出部104は、系統電圧偏差Vdevが無くなるように、系統電圧偏差Vdevに基づいて無効電流指令値Icomを算出するように構成されている。無効電流指令値算出部104は、PI制御器112と、高速制御器114と、系統インピーダンス算出部115と、切換部116と、を有している。なお、PI制御器112が第1制御器の一例であり、高速制御器114が第2制御器の一例である。
【0014】
PI制御器112は、PI制御を実行するものであり、系統電圧偏差Vdevに基づいて第1無効電流指令値Icom1を算出するように構成されている。高速制御器114は、低圧配電線5の系統インピーダンスに基づいて第2無効電流指令値Icom2を算出するように構成されている。この例では、高速制御器114は、系統電圧偏差Vdevと低圧配電線5の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積から第2無効電流指令値Icom2を算出するように構成されている。系統インピーダンス算出部115は、低圧配電線5の系統インピーダンスを算出するように構成されている。この例では、系統インピーダンス算出部115は、系統インピーダンスの逆数を算出し、高速制御器114に出力するように構成されている。また、系統インピーダンス算出部115には、系統インピーダンスを計測するために、インバータ回路14(図1参照)の出力電流であるインバータ電流検出値Iinvと系統インピーダンス計測用指令値Vmesとが入力している。後述するように、系統インピーダンス算出部115には、系統インピーダンス計測用指令値Vmesに代えて系統電圧検出値Vdetが入力してもよい。
【0015】
切換部116は、第2減算器106との接続先をPI制御器112と高速制御器114の間で切り換えるように構成されている。切換部116がPI制御器112と第2減算器106を接続すると、PI制御器112が出力する第1無効電流指令値Icom1が無効電流指令値Icomとして第2減算器106に入力する。切換部116が高速制御器114と第2減算器106を接続すると、高速制御器114が出力する第2無効電流指令値Icom2が無効電流指令値Icomとして第2減算器106に入力する。このように、無効電流指令値算出部104は、切換部116を利用することにより、PI制御器112が算出した第1無効電流指令値Icom1を第2減算器106に入力する第1制御モードと、高速制御器114が算出した第2無効電流指令値Icom2を第2減算器106に入力する第2制御モードと、を切り換えるように構成されている。
【0016】
第2減算器106は、無効電流指令値Icomとインバータ電流検出値Iinvの偏差である無効電流偏差Idevを算出するように構成されている。
【0017】
出力電圧指令値算出部108は、無効電流偏差Idevが無くなるように、無効電流偏差Idevに基づいてインバータ回路14(図1参照)の出力電圧指令値Vinvを算出するように構成されている。出力電圧指令値算出部108は、例えばPI制御を実行するPI制御器によって構成されている。
【0018】
駆動部110は、出力電圧指令値Vinvに基づいて駆動パルスを生成するように構成されている。駆動パルスは、例えばPWM制御方式に基づいて生成されるPWM信号である。駆動部110は、この駆動パルスを用いてインバータ回路14(図1参照)に含まれる複数の半導体スイッチング素子のオン・オフを切り換えることにより、インバータ回路14(図1参照)の出力電圧を制御する。
【0019】
このように、無効電力補償装置10の制御回路18は、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが系統電圧指令値Vrefと一致するように、系統電圧指令値Vrefと系統電圧検出値Vdetの偏差である系統電圧偏差Vdevに基づいてインバータ回路14(図1参照)の出力電圧をフィードバック制御するように構成されている。
【0020】
(無効電力補償装置の制御回路が実行する制御フロー)
上記したように、無効電流指令値算出部104は、PI制御器112が算出した第1無効電流指令値Icom1を第2減算器106に入力する第1制御モードと、高速制御器114が算出した第2無効電流指令値Icom2を第2減算器106に入力する第2制御モードと、を切り換えるように構成されている。無効電流指令値算出部104は、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが安定している場合に第1制御モードを実行し、例えば重負荷の解列又は接続によって低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが短時間で大きく変動する場合に第2制御モードを実行するように構成されている。なお、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが短時間で大きく変動するケースには様々な要因があり、重負荷の解列又は接続に限られない。例えば、電源の解列又は接続によっても低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetは短時間で大きく変動することがある。第2制御モードは、様々な要因で低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが短時間で大きく変動した場合に実行される。
【0021】
図3及び図4に、無効電流指令値算出部104が実行する制御フローを示す。図3の制御フローは、低圧配電線5に進み無効電力を供給するためのロジックを構成しており、図4の制御フローは、遅れ無効電力を供給するためのロジックを構成している。この例に代えて、低圧配電線5に進み無効電力を供給するためのロジックと遅れ無効電力を供給するためのロジックが組み合わされるように構成されてもよい。これらの制御フローは、系統電圧検出値Vdetとインバータ電流検出値Iinvの周期的なサンプリングポイント毎に実行される。図5に、系統電圧偏差Vdevの変動と無効電流指令値算出部104が実行する制御モードの関係を示す。なお、図5に示す閾値Vth1、Vth4は、無効電流指令値算出部104が第1制御モードから第2制御モードに切り換えるときの条件となる閾値電圧である。系統電圧指令値VrefからVth4だけ低い電圧を第1下限閾値とし、系統電圧指令値VrefからVth1だけ高い電圧を第1上限閾値とする。図5に示す閾値Vth2、Vth3は、無効電流指令値算出部104が第2制御モードから第1制御モードに切り換えるときの条件となる閾値電圧である。系統電圧指令値VrefからVth3だけ低い電圧を第2下限閾値とし、系統電圧指令値VrefからVth2だけ高い電圧を第2上限閾値とする。第1上限閾値(Vth1)に対し第2上限閾値(Vth2)が復帰閾値として設定されており、第1下限閾値(Vth4)に対し第2下限閾値(Vth3)が復帰閾値として設定されている。なお、第1上限閾値(Vth1)と第2上限閾値(Vth2)の符号が一致していなくてもよく、第1下限閾値(Vth4)と第2下限閾値(Vth3)の符号が一致していなくてもよい。
【0022】
以下、進み無効電力を供給するためのロジックを記述する図3を参照し、無効電流指令値算出部104が実行する制御フローを説明する。遅れ無効電力を供給するためのロジックを記述する図4の説明を省略するが、図3の説明に基づいて図4についても同様に説明される。
【0023】
まず、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが安定している場合の制御フローを説明する。この制御は、図5のT1よりも前の期間、T2とT3の間の期間、T4よりも後の期間に対応する。なお、初期状態は第1制御モードに設定されている。図3に示すように、無効電流指令値算出部104は、ステップS11において、系統電圧偏差Vdevが第1上限閾値(Vth1)を上回っているか否かを判定する。低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetは安定しているので、系統電圧偏差Vdevは、第1上限閾値(Vth1)よりも低い。したがって、ステップS11の判定結果は「NO」となる。無効電流指令値算出部104は、ステップS13において、現在の制御モードが第2制御モードであるか否かを判定する。低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetは安定しているので、第1制御モードが継続されている。したがって、ステップS13の判定結果は「NO」となる。無効電流指令値算出部104は、ステップS17において、第1制御モードを実行(即ち、切換部116がPI制御器112と第2減算器106を接続)する。このように、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが安定している場合、第1制御モードが継続して実行される。
【0024】
この第1制御モードでは、PI制御器112が制御系に組み込まれているので、低圧配電線5の系統電圧は系統電圧指令値Vrefと良く一致するように、即ち、定常偏差がゼロとなるように制御される。このように、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが安定している場合、低圧配電線5の系統電圧は系統電圧指令値Vrefと良く一致するように制御される。
【0025】
次に、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが短時間で大きく変動する場合の制御フローを説明する。この制御は、図5のT1のタイミングに対応する(なお、図4の制御フローでは図5のT3のタイミングに対応する)。図3に示すように、無効電流指令値算出部104は、ステップS11において、系統電圧偏差Vdevが第1上限閾値(Vth1)を上回っているか否かを判定する。低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが急変動すると、系統電圧偏差Vdevは第1上限閾値(Vth1)を上回って変動する。したがって、ステップS11の結果は「YES」となる。無効電流指令値算出部104は、ステップS12において、第2制御モードを実行(即ち、切換部116が高速制御器114と第2減算器106を接続)する。このように、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが急変動する場合、第2制御モードが実行される。
【0026】
この第2制御モードでは、系統電圧偏差Vdevと低圧配電線5の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積である第2無効電流指令値Icom2が無効電流指令値Icomとして用いられる。したがって、第2制御モードが実行する制御には、PI制御器112の制御のような積分項が含まれていない。このため、第2制御モードでは、PI制御器112の積分項の影響による応答遅れといった事態が発生せず、高速な制御が可能となっている。また、この第2制御モードでは、低圧配電線5の系統インピーダンスに基づいて第2無効電流指令値Icom2が算出されているので、低圧配電線5に接続される負荷6(図1参照)の特性に依存した制御が可能となる。第2制御モードでは、この点においても、高速な制御が可能となっている。なお、この第2制御モードでは、系統電圧偏差Vdevと低圧配電線5の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積から第2無効電流指令値Icom2を算出しているが、低圧配電線5の系統インピーダンスを独立変数として含む関数を利用すれば、上記と同様な効果を発揮することができる。例えば、第2無効電流指令値Icom2は、進み無効電力を供給する場合には第1上限閾値Vth1と低圧配電線5の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積から算出されてもよく、遅れ無効電力を供給する場合には第1下限閾値Vth4と低圧配電線5の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積から算出されてもよい。
【0027】
このように、無効電流指令値算出部104は、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが安定している場合、PI制御器112を用いた第1制御モードを実行し、正確な制御を可能とする。一方、無効電流指令値算出部104は、低圧配電線5の系統電圧検出値Vdetが急変動する場合、高速制御器114を用いた第2制御モードを実行し、高速な制御を可能とする。無効電流指令値算出部104は、系統電圧偏差Vdevに基づいて制御モードを切り換えることにより、正確な制御と高速な制御を両立させることができる。
【0028】
次に、第2制御モードから第1制御モードに復帰する場合の制御フローを説明する。この制御は、図5のT2のタイミングに対応する(なお、図4の制御フローでは図5のT4のタイミングに対応する)。図3に示すように、無効電流指令値算出部104は、ステップS11において、系統電圧偏差Vdevが第1上限閾値(Vth1)を上回っているか否かを判定する。第2制御モードの実行により系統電圧偏差Vdevは小さくなっており、系統電圧偏差Vdevが第1上限閾値(Vth1)よりも低い。したがって、ステップS11の判定結果は「NO」となる。無効電流指令値算出部104は、ステップS13において、現在の制御モードが第2制御モードか否かを判定する。現在の制御モードは第2制御モードなので、判定結果は「YES」となる。無効電流指令値算出部104は、ステップS14において、系統電圧偏差Vdevが第2上限閾値(Vth2)を下回っているか否かを判定する。系統電圧偏差Vdevが第2上限閾値(Vth2)を下回っていなければステップS12に進み、第2制御モードが継続される。系統電圧偏差Vdevの値が十分に小さくなると、系統電圧偏差Vdevは第2上限閾値(Vth2)を下回って変動する。この場合、ステップS16に進む。
【0029】
無効電流指令値算出部104は、ステップS16において、第1無効電流指令値Icom1の積分項を調整した後に、ステップS17において、第1制御モードを実行(即ち、切換部116がPI制御器112と第2減算器106を接続)する。より具体的には、無効電流指令値算出部104は、ステップS16において、切換時の第1制御モードの第1無効電流指令値Icom1が切換直前の第2制御モードの前記第2無効電流指令値Icom2に近い値となるように、切換直前の第2制御モードの前記第2無効電流指令値Icom2に基づいて第1無効電流指令値Icom1の積分項を調整する。これにより、第2制御モードから第1制御モードに復帰するときに、第2無効電流指令値Icom2と第1無効電流指令値Icom1の差が小さくなり、切換前後の無効電流指令値Icomの変動が小さくなる。
【0030】
ここで、ステップS16で実行される第1無効電流指令値Icom1の積分項の調整についてさらに詳しく説明する。PI制御器112の第1無効電流指令値Icom1は、比例項(比例ゲイン出力であり、以下の数式で「MVp」とする)と積分項(積分ゲイン出力であり、以下の数式で「MVi」とする)の合計であり、以下の数式で表すことができる。
【数1】
【0031】
第2制御モードから第1制御モードへの切換時のサンプリングポイントを[n]回目のサンプリングポイントとすると、切換直前のサンプリングポイントは[n-1]回目である。切換直前の[n-1]回目のサンプリングポイントでは第2制御モードが実行されており、そのときの高速制御器114が算出する第2無効電流指令値はIcom2[n-1]である。切換直前の[n-1]回目のサンプリングポイントで第1制御モードが実行されていたと仮定すると、そのときの第1無効電流指令値Icom1[n-1]は、以下の数式となる。
【数2】
【0032】
ステップS16では、Icom1[n-1]をIcom2[n-1]に置き換えることで、PI制御器112の積分項に含まれる前回のサンプリングポイントの積分項を以下の数式に設定する。
【数3】
【0033】
このような積分項の調整により、調整をしない場合に比して積分項が大きく調整される。これにより、切換時の第1制御モードでは、第1無効電流指令値Icom1が切換直前の第2無効電流指令値Icom2に近い値に調整される。この結果、切換前後の無効電流指令値Icomの変動が小さくなり、インバータ回路14の操作量の急激な変動が抑えられる。
【0034】
(無効電力補償装置の制御回路が実行する制御フローの変形例)
図6及び図7に、無効電流指令値算出部104が実行する制御フローの変形例を示す。図6が進み無効電力を供給するためのロジックの変形例であり、図7が遅れ無効電力を供給するためのロジックの変形例である。配電系統の系統インピーダンスの検出値に誤差があると、第2制御モードから第1制御モードに復帰させることが困難になる場合がある。例えば、配電系統の系統インピーダンスの検出値が真の値よりも大きい値として検出された場合、高速制御器114が算出する第2無効電流指令値Icom2(系統電圧偏差Vdevと配電系統の系統インピーダンスの逆数(1/Z)の積)の値は小さい値となり、系統電圧偏差Vdevが第2上限閾値(Vth2)よりも低い値、又は、第2下限閾値(Vth3)よりも高い値に復帰できない事態が生じ得る。この場合、配電系統の系統インピーダンスの検出値の誤差が解消されない限り、系統電圧偏差Vdevが第2上限閾値(Vth2)を上回った状態、又は、第2下限閾値(Vth3)を下回った状態が維持されてしまう。図3及び図4の制御フローでは、ステップS14からステップS12への流れが継続し、系統電圧偏差Vdevのオフセットが維持されることが起こり得る。
【0035】
図6及び図7に示すように、この変形例の制御フローでは、新たにステップS15が追加されている。図6の場合、無効電流指令値算出部104は、このステップS15において、PI制御器112の第1無効電流指令値Icom1が高速制御器114の第2無効電流指令値Icom2を上回ったか否かを判定する。図7の場合、無効電流指令値算出部104は、このステップS15において、PI制御器112の第1無効電流指令値Icom1が高速制御器114の第2無効電流指令値Icom2を下回ったか否かを判定する。図6及び図7のステップ15の判定結果が「YES」の場合、系統インピーダンスの検出値の誤差によって系統電圧偏差Vdevのオフセットが維持される可能性があることから、ステップS16へと進み、第2制御モードから第1制御モードに復帰させる。第1制御モードの実行により系統インピーダンスの検出値の誤差の影響は無視されるので、低圧配電線5の系統電圧は系統電圧指令値Vrefと良く一致するように制御される。なお、ステップS15が「YES」の場合、ステップS16をスキップしてステップS17に進んでもよい。
【0036】
(系統インピーダンスの計測方法)
以下、図8を参照し、系統インピーダンス算出部115(図2参照)が系統インピーダンスを計測する1つの方法について説明する。このような系統インピーダンスの計測は、上記した第1制御モードのときに実施される。なお、系統インピーダンスを計測する手法は、以下で説明する方法に限定されるものではなく、他の方法が用いられてもよい。
【0037】
図2を参照して説明したように、第1減算器102には、系統インピーダンス計測用指令値Vmesが入力しており、その系統インピーダンス計測用指令値Vmesは系統電圧指令値Vrefに加算されている。その様子を図6に示す。正負の系統インピーダンス計測用指令値Vmesが系統電圧指令値Vrefに周期的に加算されている。時間T11,T13,T15のタイミングで正の系統インピーダンス計測用指令値Vmesが系統電圧指令値Vrefに加算され、時間T12,T14のタイミングで負の系統インピーダンス計測用指令値Vmesが系統電圧指令値Vrefに加算される。正の系統インピーダンス計測用指令値Vmesが加算されると、それに追随して系統電圧及びインバータ出力電流が上昇する。負の系統インピーダンス計測用指令値Vmesが加算されると、それに追随して系統電圧及びインバータ出力電流が低下する。なお、系統インピーダンス計測用指令値Vmesの周波数は、任意の周波数でよい。
【0038】
系統電圧及びインバータ出力電流が安定するタイミング(上向き矢印で示されるタイミング)がサンプリングポイントである。このサンプリングポイントにおいて、インバータ回路14のインバータ出力電流の検出値であるインバータ電流検出値Iinvがサンプリングされる。
【0039】
配電系統の系統インピーダンスの逆数(1/Z)は、以下の数式によって算出される。ここで、「n」は、時系列データのデータ番号である。
【数4】
【0040】
このように、無効電力補償装置10は、系統インピーダンス計測用指令値Vmesを系統電圧指令値Vrefに周期的に加算させることで、低圧配電線5の系統インピーダンスを系統インピーダンス計測用指令値Vmesの変化量(数式4の分母に相当)とインバータ電流検出値Iinvの変化量(数式4の分子に相当)から周期的に計測することができる。なお、数式4のVmes[n]-Vmes[n-1]については、系統電圧検出値Vdetを用いてVdet[n]-Vdet[n-1]から算出することもできる。
【0041】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0042】
本明細書が開示する無効電力補償装置の一実施形態は、インバータ回路の出力電圧を制御して配電系統に無効電力を供給することにより前記配電系統の系統電圧を一定に制御するように構成されている。このような無効電力補償装置が備える制御回路は、第1減算器と、無効電流指令値算出部と、第2減算器と、出力電圧指令値算出部と、駆動部と、を備えることができる。前記第1減算器は、前記配電系統の系統電圧指令値と前記配電系統の系統電圧検出値の偏差である系統電圧偏差を算出するように構成されている。前記無効電流指令値算出部は、前記系統電圧偏差が小さくなるための無効電流指令値を算出するように構成されている。前記第2減算器は、前記無効電流指令値と前記インバータ回路のインバータ電流検出値の偏差である無効電流偏差を算出するように構成されている。前記出力電圧指令値算出部は、前記無効電流偏差が小さくなるための前記インバータ回路の出力電圧指令値を算出するように構成されている。前記駆動部は、前記出力電圧指令値に基づいて前記インバータ回路を駆動するように構成されている。前記無効電流指令値算出部は、系統インピーダンス算出部と、第1制御器と、第2制御器と、切換部と、を有することができる。前記系統インピーダンス算出部は、前記配電系統の系統インピーダンスを算出するように構成されている。前記第1制御器は、積分器を有しており、前記系統電圧偏差に基づいて第1無効電流指令値を算出するように構成されている。前記第1制御器は、前記積分器を含む限りどのような制御器であってよく、例えばPI制御器又はPID制御器であってもよい。前記第2制御器は、前記配電系統の系統インピーダンスに基づいて第2無効電流指令値を算出するように構成されている。前記切換部は、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第1制御モードと、前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を前記無効電流指令値として前記第2減算器に入力する第2制御モードと、を切り換えるように構成されている。前記切換部は、前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が閾値を超えたときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換えるように構成されている。
【0043】
上記制御回路の前記第2制御器は、前記系統電圧偏差と前記配電系統の前記系統インピーダンスの逆数の積から前記第2無効電流指令値を算出するように構成されていてもよい。
【0044】
前記切換部は、前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が第1上限閾値を上回ったときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換え、前記第2制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が前記第1上限閾値よりも低い第2上限閾値を下回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換える、ように構成されていてもよい。上記制御回路は、進み無効電力を供給することで前記系統電圧偏差が急上昇した場合に対処することができる。さらに、前記切換部は、前記系統電圧偏差が前記第1上限閾値を上回った後の前記第2制御モードにおいて、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値が前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を上回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるように構成されていてもよい。
【0045】
前記切換部は、前記第1制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が第1下限閾値を下回ったときに、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り換え、前記第2制御モードにおいて、前記系統電圧偏差が前記第1下限閾値よりも高い第2下限閾値を上回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換える、ように構成されていてもよい。上記制御回路は、遅れ無効電力を供給することで前記系統電圧偏差が急降下した場合に対処することができる。さらに、前記切換部は、前記系統電圧偏差が前記第1下限閾値を下回った後の前記第2制御モードにおいて、前記第1制御器が算出した前記第1無効電流指令値が前記第2制御器が算出した前記第2無効電流指令値を下回ったときに、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるように構成されていてもよい。
【0046】
上記制御回路の前記切換部は、前記第2制御モードから前記第1制御モードに切り換えるときに、切換時の前記第1制御モードの前記第1無効電流指令値が切換直前の前記第2制御モードの前記第2無効電流指令値に近い値となるように、切換直前の前記第2制御モードの前記第2無効電流指令値に基づいて前記第1制御器の積分項を調整するように構成されていてもよい。
【0047】
前記系統インピーダンス算出部は、前記系統電圧指令値に系統インピーダンス計測用指令値を加算したときの前記インバータ電流検出値の変化量と、前記系統インピーダンス計測用指令値又は前記系統電圧検出値のいずれか一方の変化量と、に基づいて前記系統インピーダンスを算出するように構成されていてもよい。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
10 :無効電力補償装置
14 :インバータ回路
18 :制御回路
102 :第1減算器
104 :無効電流指令値算出部
106 :第2減算器
108 :出力電圧指令値算出部
110 :駆動部
112 :PI制御器
114 :高速制御器
115 :系統インピーダンス算出部
116 :切換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8