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特許7069276水性バインダー用フェノール樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】水性バインダー用フェノール樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/06 20060101AFI20220510BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20220510BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20220510BHJP
   C08G 8/10 20060101ALI20220510BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C08L61/06
C08K5/31
C08K5/21
C08G8/10
C08K3/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020185631
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2021075718
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142988
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507310879
【氏名又は名称】ケーシーシー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム, テウク
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スンミン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チョンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョンユン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ナムス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ソンウク
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0096922(US,A1)
【文献】特表2005-510599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール及びホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で含み、
前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャーから10重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー20から35重量部を含み、
前記第1ホルムアルデヒドスカベンジャーは、グアニジン系化合物又はその塩を含み、
前記第2ホルムアルデヒドスカベンジャーは、尿素(Urea)を含む
フェノール樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール100重量部を基準に、1から15重量部の含量で触媒をさらに含むものである、請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフェノール樹脂組成物を用いて形成されるフェノール樹脂を含む、水性バインダー組成物。
【請求項4】
触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で付加反応させてフェノール樹脂中間体を形成する段階と、
前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャーから10重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー20から35重量部を混合し、前記フェノール樹脂中間体を反応させてフェノール樹脂を形成する段階と、を含み、
前記第1ホルムアルデヒドスカベンジャーは、グアニジン系化合物又はその塩を含み、
前記第2ホルムアルデヒドスカベンジャーは、尿素(Urea)を含む
フェノール樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂及びその製造方法に関する。具体的に、本発明は、水性バインダー用フェノール樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にアルカリ触媒の存在下でフェノールをアルデヒドと縮合して形成させるレゾール樹脂は、多数の商業的に重要な用途を有する。このようなレゾール樹脂は熱によって硬化する特性があるため、これらは基材に適用された後に圧力下で熱を印加することで硬化するバインダーとして主に用いられる。
【0003】
特に、前記アルデヒドとしてホルムアルデヒドを用いて製造されるフェノール樹脂は、前記のようなレゾール樹脂の重要な部類であって、主に人造ボード、合板木材製品、繊維製品、積層製品等のためのバインダーに用いられる。一例として、積層製品のためのバインダー用樹脂は、他の樹脂が示す必要がなかった良好な基材浸透等の特性を示さなければならず、寸法安定性が良好であり、パネルのねじれが少なくて水分の吸収が少なく、熱的気泡(blister)抵抗が高い積層物を製造できなければならない。
【0004】
しかし、ホルムアルデヒドを用いて製造される公知のフェノール樹脂は、処理された基材の加工、保存及び硬化時に周囲の環境にホルムアルデヒドを放出するホルムアルデヒドの濃度を有する。このとき、ホルムアルデヒドの放出は、作業者が吸入して目、口及び身体の他の部分と接触するようになると、悪臭だけでなく、病気の要因になるものと知られているので、樹脂を利用した作業時だけでなく、保存、流通中にもホルムアルデヒドの周囲環境への放出は好ましくない。
【0005】
そのため、フェノール樹脂からのホルムアルデヒドの放出量を減らすために、フェノールとホルムアルデヒドから製造されるフェノール樹脂が一般的に塩基性を有することに基づいて、酸触媒を利用してフェノール樹脂のpHを5.5以下に調節することで、フェノール樹脂の加工、硬化時にホルムアルデヒドの放出量を低減する方法が考案されたことがあるが、これは、依然としてホルムアルデヒドの放出量の制御に限界があり、フェノール樹脂溶液が酸性化する場合、これを用いるバインダー組成物の安定性が下がって保存性が不良になるという問題が報告されている。
【0006】
また、フェノール及びホルムアルデヒドからフェノール樹脂を製造する時、ホルムアルデヒドのスカベンジャーを噴射してホルムアルデヒドの放出量を最小化する方法も考案されたことがあるが、これは、樹脂の硬化の工程で縮合反応により放出されるホルムアルデヒドがホルムアルデヒドスカベンジャーと反応するため、最終製品から放出されるホルムアルデヒドの吸着には殆ど効用のないことが明らかになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、繊維を結合するための水性バインダーに用いることができるフェノール樹脂及びこれを含む水性バインダー組成物の提供を図る。
【0008】
具体的に、本発明は、ホルムアルデヒドの放出量を低減しつつも機械的特性に優れたフェノール樹脂及びその製造方法の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明は、フェノール及びホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で含み、前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー0.1から20重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー15から40重量部を含むフェノール樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で付加反応させてフェノール樹脂中間体を形成する段階と、前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー0.1から20重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー15から40重量部を混合し、前記フェノール樹脂中間体を反応させてフェノール樹脂を形成する段階と、を含むフェノール樹脂の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記方法により製造されるフェノール樹脂及びこれを含む水性バインダー組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフェノール樹脂の製造方法を利用すれば、ホルムアルデヒドの放出量が非常に低い水準を示すフェノール樹脂を製造できる。
【0013】
また、このようなフェノール樹脂を含む水性バインダー組成物を用いて繊維状材料(特に、無機系繊維状材料)を結束させた時、例えば40から200kg/mの高密度材料を結束させた時にも優れた機械的物性を具現できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明は、フェノール樹脂組成物を提供する。
【0016】
前記フェノール樹脂組成物は、フェノール及びホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で含み、前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー0.1から20重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー15から40重量部を含む。
【0017】
前記フェノール樹脂組成物は、前記フェノールとホルムアルデヒドの付加反応のための触媒をさらに含んでよい。
【0018】
前記触媒はこれに制限されるものではないが、例えば、フェノール100重量部を基準に触媒1から15重量部、例えば、2から12重量部の含量で含まれてよい。
【0019】
前記フェノール樹脂組成物において、フェノールとホルムアルデヒドの反応、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー、第2ホルムアルデヒドスカベンジャー及び触媒等の構成に対しては、フェノール樹脂の製造方法に関して後述する通りである。
【0020】
本発明は、フェノール樹脂の製造方法を提供する。
【0021】
前記フェノール樹脂の製造方法は、触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドを1:1から1:2のモル比で付加反応させてフェノール樹脂中間体を形成する段階と、前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー0.1から20重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー15から40重量部を混合し、前記フェノール樹脂中間体を反応させてフェノール樹脂を形成する段階と、を含む。
【0022】
前記触媒は、フェノールとホルムアルデヒドの付加反応のためのアルカリ条件を造成するためのものであって、塩基性触媒を用いるのが好ましく、塩基性触媒の種類は特に制限されないが、例えば、アルカリ土類金属類の水酸化物及びアミン基含有化合物のうち少なくとも一つ以上を用いることができる。前記アルカリ土類金属類の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム又はこれらの混合物を用いることができ、前記アミン基含有化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン又はこれらの混合物を用いることができる。
【0023】
前記触媒の使用量は、前記フェノールとホルムアルデヒドの付加反応に関与できるほどの量を使用すればよいものであり、これに特に制限されるのではないが、前記触媒の使用量が少な過ぎる場合、前記付加反応の反応速度が低下し反応物内のホルムアルデヒドの放出をもたらし得るため、例えば、フェノール100重量部を基準に触媒1から15重量部、例えば3から13重量部の含量で用いるのが好ましい。本発明においては、前記のような触媒の存在下でフェノールとホルムアルデヒドを付加反応させてフェノール樹脂中間体を形成することを含む。
【0024】
具体的に、付加反応後の残余ホルムアルデヒドの含量及び製造される樹脂からのホルムアルデヒドの放出量を考慮し、前記ホルムアルデヒドは、前記フェノールとのモル比が1:2(フェノール:ホルムアルデヒド)以下になる量で付加反応されるのが好ましい。例えば、前記フェノールとホルムアルデヒドは1:1から1:2のモル比(フェノール:ホルムアルデヒド)で用いて反応させてよく、又は1:1.3から1:1.8のモル比で用いてよい。
【0025】
前記付加反応は、反応の順序や温度がこれに制限されるのではないが、例えば、前記ホルムアルデヒドが溶解された水溶液にフェノールを溶解してから前記触媒を添加し、溶液の安定性を考慮して、40~95℃、例えば、40~80℃の温度で行うことができる。
【0026】
前記付加反応により、フェノールにヒドロキシ基(-OH)を基準に2個のオルト(-ortho)及び1個のパラ(-para)位置のうち少なくとも一つの位置にホルムアルデヒドが付加され、メチロール(-CHOH)が置換された形態のフェノール樹脂中間体が形成され得る。
【0027】
前記付加反応の生成物には、前記フェノール樹脂中間体だけでなく、未反応フェノール、ホルムアルデヒド、水等が含まれてよいが、残留フェノールがないように付加反応を進めるのが好ましい。
【0028】
このとき、前記未反応ホルムアルデヒドを除去するために、前記付加反応の生成物にホルムアルデヒドスカベンジャーを混合する段階を含む。
【0029】
具体的に、前記ホルムアルデヒドスカベンジャーは、前記フェノール100重量部を基準に、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー0.1から20重量部及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャー15から40重量部を含んでよく、これを混合して用いるものであってよい。
【0030】
本発明の発明者達は、フェノールとホルムアルデヒドからフェノール樹脂を製造する場合、フェノール樹脂中間体を形成してからホルムアルデヒドスカベンジャーを投入することで残留ホルムアルデヒドを除去し、最終的に製造されるフェノール樹脂からホルムアルデヒドの放出量を画期的に減らし得ることを確認した。それだけでなく、前記ホルムアルデヒドスカベンジャーとしてはグアニジン系化合物と尿素を共に用いてこそ、ホルムアルデヒドの放出量が低減され、ホルムアルデヒド以外の残留反応物、例えばフェノールも、その放出量が画期的に低減されることを確認し、このとき製造されるフェノール樹脂の機械的物性もまた優秀であることを確認した。
【0031】
前記ホルムアルデヒドスカベンジャーとして尿素だけを用いる場合、これから製造されるフェノール樹脂を含むバインダー組成物は、その熱硬化物の強度と耐水性等の物性が不良になるという問題が発生し得る。これにより、前記第1ホルムアルデヒドスカベンジャーは、グアニジン系化合物又はその塩を含むのが好ましく、前記グアニジン系化合物は、2-シアノグアニジン、グアニルウレア、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン及びトリメチルグアニジン、シアノグアニジンからなる群から選択される少なくとも一つを含んでよい。より具体的に、前記第1ホルムアルデヒドスカベンジャーはシアノグアニジンを含んでよい。
【0032】
前記第1ホルムアルデヒドスカベンジャーは、前記フェノール100重量部を基準に0.1から20重量部、例えば、3から10重量部を用いてよい。
【0033】
前記第2ホルムアルデヒドスカベンジャーは、尿素を含むのが好ましく、前記尿素は、例えば、第1ホルムアルデヒドスカベンジャーとともにフェノールとホルムアルデヒドの付加反応の過程で残留する未反応ホルムアルデヒドを除去してホルムアルデヒドの放出を著しく減らし、製品の機械的強度を向上させることができるようにする。また、原料の単価が低いため、尿素の適用時に最終のフェノール樹脂バインダーの原価競争力を強化できる。
【0034】
前記第2ホルムアルデヒドスカベンジャーは、前記フェノール100重量部を基準に15から40重量部、例えば、15から35重量部、20から35重量部を用いてよい。
【0035】
前記フェノール樹脂中間体を含む付加反応の生成物に前記第1及び第2ホルムアルデヒドスカベンジャーを混合し、次に前記フェノール樹脂中間体を縮合反応させてフェノール樹脂を形成する段階を含む。
【0036】
前記フェノール樹脂中間体の縮合反応は、製造されるフェノール樹脂の硬化温度より低い温度で行うのが好ましく、例えば、40から95℃、具体的には、40から80℃で行うのが好ましい。前記温度の範囲を外れて反応温度が低すぎる場合、反応速度があまりにも遅くなるという問題があり、温度が高すぎる場合、縮合反応速度が速すぎるため、フェノール樹脂の分子量があまりにも大きくなることで、溶媒との相溶性が下がるかゲル化されるという問題があり得る。これにより、本発明のフェノール樹脂の製造方法は、未反応残留物、例えば、フェノール、ホルムアルデヒドのような未反応反応物の除去が容易であり、触媒や溶媒等を別に除去するか回収する段階を行わないため、フェノール樹脂を製造する時間を短縮することによりエネルギー節減の効果も奏し得る。
【0037】
前記縮合反応の完了は、これに制限されるのではないが、例えば、最終フェノール樹脂内の未反応ホルムアルデヒドの含量を測定によって確認することができる。具体的に、最終フェノール樹脂内の未反応ホルムアルデヒドの含量が、例えば1%未満、好ましくは0.5%未満の場合、反応が終了したものと確認できる。
【0038】
本発明の前記フェノール樹脂の製造時にpHを調節するためのpH調節剤をさらに含んでよく、例えば、pH調節剤はホウ酸等であってよい。
【0039】
本発明は、前記製造方法により製造されるフェノール樹脂を提供する。
【0040】
前記フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドが1:1から1:2のモル比(フェノール:ホルムアルデヒド)で混合された混合物の付加反応により生成されるフェノール樹脂中間体が縮合重合され製造されるものであってよい。具体的には、1:1.3から1:1.8のモル比で混合され製造されるものであってよい。前記ホルムアルデヒドが前記モル比を超過して混合される場合には、フェノール樹脂から放出されるホルムアルデヒドの放出量が高くなるという問題が発生し得る。
【0041】
前記フェノール樹脂は、耐熱性、難燃性、電気絶縁性、機械的強度等に優れた特性を示す。これに制限されるのではないが、例えば、前記フェノール樹脂の粘度は25℃でブルックフィールド粘度計(Brookfield Viscometer)で測定した時、10から200cps、具体的に10から100cpsを示し得る。
【0042】
本発明は、前記のように製造されたフェノール樹脂を含む水性バインダー組成物を提供する。
【0043】
前記フェノール樹脂は、前記水性バインダー組成物の主樹脂として含まれてよく、その含量は、これに制限されるのではないが、例えば、前記水性バインダー組成物の全重量を基準にフェノール樹脂固形分が5から40重量%、具体的に、5から20重量%又は5から15重量%の含量で含まれてよい。
【0044】
前記水性バインダー組成物は、結合剤としてケイ素含有化合物を共に含むことで、繊維状材料との結束力を増加させるという効果を示し得る。
【0045】
前記ケイ素含有化合物は、シラン系化合物、シロキサン化合物又はこれらの混合物を用いてよい。
【0046】
前記シラン系化合物としては、これに制限されるものではないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルベンゾ酸、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はこれらの混合物を用いてよく、より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン又はこれらの混合物を用いてよい。
【0047】
前記シロキサン化合物は、シロキサン結合を含む円形又は鎖状のオリゴマー又は高分子形態の有機シリコン化合物を総称する。前記シロキサン化合物は、これに制限されるものではないが、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ジメチルテトラメトキシジシロキサン、トリメチルトリメトキシジシロキサン、テトラメチルテトラメトキシトリシロキサン、ヘキサメチルテトラメトキシテトラシロキサン又はこれらの混合物を用いてよい。
【0048】
前記ケイ素含有化合物として、最も好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(A-1100)を含んで用いてよい。
【0049】
前記ケイ素含有化合物は、前記水性バインダー組成物中のフェノール樹脂固形分の重量を基準に0.001から10重量%の含量で含まれてよく、例えば、0.01から5重量%、0.01から2重量%、又は0.01から0.5重量%の含量で含まれてよい。前記範囲内で含まれる場合、繊維状材料との結束強度を優秀に改善できる。
【0050】
また、前記水性バインダー組成物は、添加剤として硬化促進剤をさらに含んでよい。
【0051】
前記硬化促進剤は、これに制限されるものではないが、例えば、硫酸アンモニウム(硫安)、テトラオキソ硫酸アンモニウム(VI)(Cas No.7783-20-2)、パラトルエン硫酸アンモニウム、クエン酸塩(Citric acid salt)及びカルボン酸を含むアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも何れか一つを含んでよい。
【0052】
前記硬化促進剤は、前記水性バインダー組成物中のフェノール樹脂固形分の重量を基準に0.01から20重量%の含量で含まれてよく、例えば、1から20重量%、1から17重量%又は3から15重量%の含量で含まれてよい。前記範囲内で含まれる場合、水性バインダー組成物の繊維状材料との結束速度を高めて作業時間を短縮する効果を奏することができ、不純物が混合される問題を改善できる。
【0053】
それ以外にも、前記水性バインダー組成物は、前記成分の他に本発明の目的を達成できる範囲内で必要によって選択的に一つ以上の添加剤をさらに含んでよい。そのような添加剤としては、繊維状材料の耐水性を高めるための撥水剤、設備の腐食を防止するための防錆剤、製品の粉塵発生率を下げるための防塵油、pHを調節するための緩衝剤等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、本技術分野で通常用いられる添加剤を含んでよい。前記添加剤の使用量には特別な制限がなく、例えば、前記水性バインダー樹脂の全重量を基準に0.1から10重量%の範囲で用いられてよいが、これに制限されるのではない。
【0054】
また、前記水性バインダー組成物は、前記成分を繊維状材料に均一に塗布するための希釈剤(又は溶媒)として、工業用水、地下水、工程水、精製水等の水を用いてよく、前記希釈剤の含量は、水性バインダー組成物中で前記成分以外の残量であってよい。また、必要によって希釈剤の含量を調節することで組成物中の固形分の含量を調節できる。例えば、組成物中の固形分の総量が5から40重量%、具体的に5から30重量%、好ましくは5から20重量%、より好ましくは5から15重量%となるように希釈剤を含んでよい。
【0055】
また、本発明は、前記水性バインダー組成物を用いて繊維状材料を結束する方法を提供する。
【0056】
このとき、結束される繊維状材料は、無機質繊維(例えば、岩綿、ガラス綿、セラミックス繊維等)、又は天然及び合成樹脂から得られた繊維等の有機質繊維が挙げられるが、これに限定されない。本発明において、前記「繊維状材料」は、好ましくはガラス繊維、岩綿等を用いてよい。
【0057】
本発明の繊維状材料を結束する方法は、本発明による水性バインダー組成物を繊維状材料に噴霧した後、熱硬化する段階を含んでよい。
【0058】
前記水性バインダー組成物は、硬化されていない水溶液又は水分散液の形態で繊維状材料に噴霧されるのが好ましい。
【0059】
前記熱硬化のための熱処理は、140℃以上、例えば、140から300℃の温度で、好ましくは150から250℃の温度で行われるのが好ましい。前記熱処理温度が前記範囲未満の場合、未硬化の問題が発生することがあり、前記熱処理温度が前記範囲を超過する場合、過硬化が発生して粉塵及びバインダー分解の原因になり得る。
【0060】
本発明の繊維状材料の結束方法により結束された繊維状材料中に含有される水性バインダーの含量は、結束された繊維状材料の全重量に対し1.5から15重量%であってよく、より好ましくは1.5から10重量%であってよい。
【0061】
前記繊維状材料は、ホルムアルデヒドの放出量が0.008mg/m・hr以下、又は0.006mg/m・hr以下であってよい。本発明による水性バインダーを用いて繊維を結束する場合、結束物は、ホルムアルデヒドの放出量、引張強度、粉塵率、復元率、防カビ優秀性、屋外保管時の色相変化、不燃性等において優れた物性を示し得る。
【実施例
【0062】
以下、実施例を介して本発明をより具体的に説明する。
【0063】
<実施例及び比較例の製造.水性バインダー組成物の製造>
下記表1及び表2の組成を用いてフェノール樹脂を製造した。具体的に、フェノール(固形分100%)にホルムアルデヒド(純度37%)を投入した後、水酸化ナトリウム溶液(33wt%)を40℃で2時間滴下した。その後、60℃で4時間撹拌し、フェノール樹脂中間体を含む混合物を収得した。前記収得した混合物にシアノグアニジン(Cas No.461-58-5)、尿素及びホウ酸を投入してから35℃で2時間撹拌し、フェノール樹脂を収得した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
製造されたフェノール樹脂(固形分45%)を用いて下記表3及び表4の組成で水性バインダー組成物を製造した。具体的に、フェノール樹脂、蒸溜水、シランA-1100、硫安((NHSO)を混合し、撹拌機で30分間撹拌して水性バインダー組成物を製造した。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
<実験例.水性バインダーを用いた繊維状材料の結束>
高温の水ガラスをスピンナーに通過させて1時間当たり2100kgの速度で繊維化しつつ、集綿室に降りてくるガラス繊維に前記実施例及び比較例の接着剤組成物を16L/分の量で噴射した後、乾燥工程を経てガラス綿断熱材を得た。製造されたガラス綿断熱材を対象に下記のような方法で物性を測定し、その結果を表5に示した。
【0070】
(1)樹脂付着率
結束された繊維状材料中のバインダーの含量を測定するために、100mm(横)×100mm(縦)×50mm(厚さ)のガラス綿サンプルを準備した後、オーブンで500℃で1時間熱処理して前後の重さの減量を測定した。
【0071】
(2)圧縮率
前述した通りに製造したガラス綿断熱材において、それぞれからサンプルとして3個の試料(250mm×250mm×100mm、横×縦×厚さ)を採取した。試料の寸法は、均一な集綿を考慮し、厚さ方向と垂直方向に二等分切断して採取した。圧縮率測定用ジグに試料を結束した後、万能試験機の中央に位置させた。その後、40kgfの荷重時の圧縮された変位を測定し、3回測定して算術平均値を取った。このとき圧縮率は下記数式1で計算した。
[数式1]
圧縮率(%)=[(初期厚さ-圧縮変位)/初期厚さ]×100
【0072】
(3)吸収率
ガラス綿断熱材を254mm×254mm×100mm(製品厚さ)(長さ×幅×厚さ)の大きさに切った3個のサンプルを準備し、0.01gまで正確に重さ(W1)を測定した。その後、水槽(Water bath)内に常温の水を底から10Step段階(1step当たり30mm)まで満たし、サンプルを入れてからScreen(四角メッシュ鉄網)を底から7Stepにくるように固定した。(サンプルの浮力で四角メッシュ鉄網が固定されない場合は、2kg以上の重さを与えて四角メッシュ鉄網を固定させた。)
【0073】
水に浮かないようにScreenを固定して15分間水を吸収させた。15分後サンプルを取り出し、一角を指先で掴み、150±5秒間垂直に立てて水玉が落ちるようにした。その後、予め秤量した銀箔の皿(W2)にサンプルを置き、0.01gまで正確に重さ(W3)を測定して平均値を取った。このとき吸収率は下記数式2で計算した。
[数式2]
吸収率(%)=[(W3-W2)/W1]×100
【0074】
(4)ホルムアルデヒドの放出量
KS M ISO 16000及びKS M 1998に規定された小型チャンバ法により、ガラス綿断熱材を小型チャンバに放置して7日目のチャンバ空気を捕集し、捕集した空気をHPLC(液体クロマトグラフィー)で分析した。具体的な試験方法は空気清浄協会で設定した方法に従っており、7日目に結果判定を行った。
【0075】
(5)粉塵率
ガラス綿断熱材を切断し、幅1.5cm、幅10cmの大きさのサンプルを4個ずつ製作した。測定前の重さを計量した後、サンプルを粉塵率測定器に位置させ、1m/分の速度で前後左右に振った。全体の測定時間は試料当たり10分間行っており、試験機器が自動に止まった後に試料の重さを計量した。このとき、粉塵率は下記数式3で計算した。
[数式3]
粉塵率=[(測定後の計量重さ/測定前の計量重さ)-1]×100
【0076】
【表5】
【0077】
前記表5で確認できるように、フェノール:ホルムアルデヒドのモル比が1:1未満に製造されたフェノール樹脂を用いた比較例1は、ホルムアルデヒドの放出量は0.008以下を示すが、樹脂付着率、圧縮率、粉塵率の物性において不良であることを確認した。また、フェノール:ホルムアルデヒドのモル比が1:2超過に製造されたフェノール樹脂を用いた比較例2や、フェノール樹脂の製造時に第1ホルムアルデヒドスカベンジャー又は第2ホルムアルデヒドスカベンジャーを製造していない比較例3、4の場合は、ホルムアルデヒドの放出量が過多なため不適合であることを確認した。
【0078】
それだけでなく、第1ホルムアルデヒドスカベンジャー及び/又は第2ホルムアルデヒドスカベンジャーの含量が本発明を外れて製造されたフェノール樹脂を用いた比較例5~7の場合は、粉塵率、圧縮率(強度)及び吸収率(耐水性)の側面でその効果が不良であることを確認した。