(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】シリカ膜形成用組成物、シリカ膜の製造方法およびシリカ膜
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01L21/316 U
H01L21/316 G
(21)【出願番号】P 2020519446
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(86)【国際出願番号】 KR2018001880
(87)【国際公開番号】W WO2019074167
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0133531
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ノ,クンベ
(72)【発明者】
【氏名】カク,テクソ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ク,ユンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンググ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンギョ
(72)【発明者】
【氏名】べ,ジン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】サコン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】シム,ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ケン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ビョン ギュ
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-308090(JP,A)
【文献】特開平08-064679(JP,A)
【文献】特開2012-039115(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029834(WO,A1)
【文献】特表2014-509081(JP,A)
【文献】特開2012-134302(JP,A)
【文献】特開2007-088369(JP,A)
【文献】特開2011-114163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0337168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ膜形成用組成物であって、
ケイ素含有重合体および溶媒を含み、前記ケイ素含有重合体は
、有機-無機ポリシロキサザン(organic-inorganic polysiloxazane
)であり、
前記シリカ膜形成用組成物から形成されたシリカ膜が下記関係式1を満足するシリカ膜形成用組成物:
【数1】
前記関係式1中、
a
(Å/s)はパターン上部でのエッチング率であり、
b
(Å/s)はパターン内部でのエッチング率であり、
h
(Å)はパターン上部での膜厚であり、
tはパターン長さ
で、30,000Åであり、
(t/2)/hの値は3以上であり、
ただし、前記関係式1中、「パターン」は、前記シリカ膜形成用組成物が塗布される基板上に形成されたパターンを意味
し、アスペクト比(パターン深さ(nm)/パターン間隔(nm))が、1,000/40である。
【請求項2】
前記関係式1中、aおよびbは、湿式エッチング(wet etch)方式により得られたエッチング率である、請求項1に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ケイ素含有重合体は、下記化学式1で表される部分(moiety)および下記化学式2で表される部分(moiety)のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のシリカ膜形成用組成物:
【化1】
前記化学式1中、
R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【化2】
前記化学式2中、
R
4乃至R
7は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【請求項4】
前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1乃至30重量%で含まれている、請求項1に記載のシリカ膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のシリカ膜形成用組成物が硬化されて得られるシリカ成分を含むシリカ膜。
【請求項6】
請求項
5に記載のシリカ膜を含む電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、シリカ膜形成用組成物、シリカ膜の製造方法、そしてこれにより製造されたシリカ膜に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置では、スイッチング素子としてゲート電極、ソース電極、ドレイン電極および半導体を含む薄膜トランジスター(thin film transistor、TFT)を用い、この薄膜トランジスターを制御するための走査信号を伝達するゲート線(gate line)と、画素電極に印加される信号を伝達するデータ線(data line)が平板表示装置に備えられる。また、半導体と様々な電極との間にはこれらを区分するための絶縁膜が形成されている。前記絶縁膜は、ケイ素成分を含むシリカ膜であってもよい。
【0003】
一般に、シリカ膜は、パターンが形成された基板上にポリシラザン、ポリシロキサザン、またはこれらの混合物を用いてコーティング膜を形成した後、これを酸化膜質で転換させて製造されるが、パターン内部で優れた機械的、化学的強度を示すことができるシリカ膜形成用組成物に関する研究が行われたことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、パターン内部およびパターン上部を覆うシリカ膜において、パターン内部でのエッチング率とパターン上部でのエッチング率が所定の関係式を満足するようにすることによって、後続工程でパターン内部にあるシリカ膜を選択的に除去可能にする。このようなシリカ膜は、半導体およびディスプレイ工程で多様なアプリケーションで活用され得る。
【0005】
本発明の一実施形態は、パターン内部でのエッチング率とパターン上部でのエッチング率が所定の関係式を満足するシリカ膜形成用組成物を提供する。
【0006】
本発明の他の実施形態は、前記シリカ膜形成用組成物が硬化して形成されるシリカ成分を含むシリカ膜を提供する。
【0007】
本発明のその他の実施形態は、前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、シリカ膜形成用組成物であって、ケイ素含有重合体および溶媒を含み、前記シリカ膜形成用組成物から形成されたシリカ膜が下記関係式1を満足するシリカ膜形成用組成物を提供する。
【0009】
【0010】
前記関係式1中、
aはパターン上部でのエッチング率であり、
bはパターン内部でのエッチング率であり、
hはパターン上部での膜厚であり、
tはパターン長さであり、
nはパターン間隔である。
【0011】
ただし、前記関係式1中、「パターン」は前記シリカ膜形成用組成物が塗布される基板上に形成されたパターンを意味する。
【0012】
前記ケイ素含有重合体は、有機-無機ポリシラザン(organic-inorganic polysilazane)、有機-無機ポリシロキサザン(organic-inorganic polysiloxazane)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0013】
前記関係式1中、aおよびbは、湿式エッチング(wet etch)方式により得られたエッチング率であってもよい。
【0014】
前記シリカ膜形成用組成物から形成されたシリカ膜は下記関係式2を満足することができる。
【0015】
【0016】
前記関係式2中、
aおよびbは、前記関係式1で定義したとおりである。
【0017】
前記ケイ素含有重合体は、下記化学式1で表される部分(moiety)および下記化学式2で表される部分(moiety)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0018】
【0019】
前記化学式1中、
R1乃至R3は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【0020】
【0021】
前記化学式2中、
R4乃至R7は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【0022】
前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物の総量に対して0.1乃至30重量%で含まれてもよい。
【0023】
他の実施形態によれば、前述したシリカ膜形成用組成物が硬化されて得られるシリカ成分を含むシリカ膜を提供する。
【0024】
その他の実施形態によれば、前述したシリカ膜を含む電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0025】
一実施形態によるシリカ膜形成用組成物は、パターン内部でのエッチング率とパターン上部でのエッチング率が所定の関係式を満足することによって、後続工程で基板のパターン内部に形成されているシリカ膜を選択的に除去することができるようになり、基板のパターン内部にエアギャップ(air gap)を形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】比較例1によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真である。
【
図3】実施例1によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真である。
【
図4】実施例2によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0028】
本明細書で別途の定義がない限り、「置換」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1乃至C20アルキル基、C2乃至C20アルケニル基、C2乃至C20アルキニル基、C6乃至C30アリール基、C7乃至C30アリールアルキル基、C1乃至C30アルコキシ基、C1乃至C20ヘテロアルキル基、C2乃至C20ヘテロアリール基、C3乃至C20ヘテロアリールアルキル基、C3乃至C30シクロアルキル基、C3乃至C15シクロアルケニル基、C6乃至C15シクロアルキニル基、C2乃至C30ヘテロシクロアルキル基およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されたことを意味する。
【0029】
また、本明細書で別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、SおよびPから選択されたヘテロ原子を1乃至3個含有したものを意味する。
【0030】
また、本明細書で「*」は、同一であるか異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0031】
以下、本発明の一実施形態によるシリカ膜形成用組成物について説明する。
【0032】
一実施形態によるシリカ膜形成用組成物は、ケイ素含有重合体および溶媒を含み、前記シリカ膜形成用組成物から形成されたシリカ膜が下記関係式1を満足する。
【0033】
【0034】
前記関係式1中、
aはパターン上部でのエッチング率であり、
bはパターン内部でのエッチング率であり、
hはパターン上部での膜厚であり、
tはパターン長さであり、
nはパターン間隔である。
【0035】
ただし、前記関係式1中、「パターン」は、前記シリカ膜形成用組成物が塗布される基板上に形成されたパターンを意味する。
【0036】
【0037】
【0038】
図1の(a)は、パターンPが形成された基板10の上にシリカ膜形成用組成
物が塗布されてシリカ膜が形成される過程を示す。
【0039】
図1の(a)に示された積層体をX-X’面で切断した断面を
図1の(b)に示す。
図1の(b)を参照すると、パターンPとパターンPの間、そしてパターンPの上部にシリカ膜形成用組成物が満たされてシリカ膜30が形成されている。シリカ膜30は、シリカ膜形成用組成
物が硬化されて形成されたものであり、例えば熱処理によりシリカ膜質に硬化されてもよく、熱処理温度や時間は特に限定されない。例えば、熱処理温度は、例えば300℃乃至1,000℃であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0040】
図1の(b)で、パターンP上部でのシリカ膜30エッチング率、そしてパターンP内部でのシリカ膜30エッチング率は、前記関係式1でそれぞれaおよびbで表される。前記エッチング率aおよびbが互いに同一のエッチング条件下で算出されるものであれば具体的なエッチング条件は限定されない。例えば、前記エッチング率aおよびbは、乾式エッチングにより得られてもよく、湿式エッチングにより得られてもよい。例えば、前記エッチングは、湿式エッチング液(wet etchant)を利用して行われてもよく、例えばフッ素元素を含む湿式エッチング液を利用して行われてもよいが、これに限定されるのではない。
【0041】
図1の(b)および(c)で、hはパターン上部で測定したシリカ膜厚を意味し、tはパターンPの長さを意味し、nはパターンPとパターンPの間の間隔を意味する。前記基板で複数のパターンは同一の形状および間隔で形成されている。
【0042】
図1でパターンPは六面体形状を有するものに示されているが、これに限定されるのではなく、複数のパターンが同一の形状および間隔で形成されていれば個別パターンの具体的な形状が限定されるのではない。
【0043】
例えば、パターンがライン/スペース(line/space)形状を有する場合、パターン上部および内部にあるシリカ膜は等方性(isotrophic)でエッチングされてもよい。ここで「等方性でエッチング」されるということは、パターン上部と内部で正面、背面、上面の3面で共にエッチングが行われることを意味する。
【0044】
一実施形態によるシリカ膜形成用組成物は、前記関係式1を満足することによって基板のパターン内部を覆うシリカ膜にエアギャップ(air gap)を形成することができる。これによって、後続工程でパターン内部にあるシリカ膜を選択的に除去することができるようになる。このようなシリカ膜は、半導体およびディスプレイ工程で多様なアプリケーションで活用される可能性がある。一例として、半導体のSTI(shallow trench isolation)層に必要な微細絶縁膜の用途でパターン間の漏洩電流を防止するためにパターン間にエアギャップ(air gap)を形成することができる。また、周期的な反復パターンを有する多様なナノ構造を形成することに活用され得る。一例として、パターン内部をエッチングしてエアギャップ(air gap)を形成した後、化学的真空蒸着法や原子層真空蒸着法を利用してパターン内部およびパターン基板とは異なる第3の物質を充填することができる。
【0045】
例えば、前記エッチング率aおよびbは、下記関係式2を満足することができる。
【0046】
【0047】
前記関係式2中、aおよびbは前記関係式1で定義したとおりである。
【0048】
この場合、パターン内部をエッチングする間にパターン上部が露出されることを防ぐことができ、より薄い厚さの膜でもパターン内部が完全にエッチングされた形態のパターンを作ることができるようになり、実現しようとするパターンの工程範囲が広くなって工程調節が容易になる。一方、前記関係式2を満足しない場合、パターン内部に存在するシリカ膜を完璧に除去するために過度なエッチング時に、パターン上部が露出されるなど工程調節が容易にならないことがある。
【0049】
前記シリカ膜形成用組成物に含有されているケイ素含有重合体は、例えば有機-無機ポリシラザン(organic-inorganic polysilazane)、有機-無機ポリシロキサザン(organic-inorganic polysiloxazane)、またはこれらの組み合わせであってもよい。ここで「有機-無機(organic-inorganic)」とは、有機基で置換された無機物を意味し、例えば有機-無機ポリシラザンとは、有機基で置換されたポリシラザンを意味する。
【0050】
前記ケイ素含有重合体は、例えば下記化学式1で表される部分(moiety)を含むことができる。
【0051】
【0052】
前記化学式1中、R1乃至R3は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【0053】
一例として、前記ケイ素含有重合体は、ハロシランとアンモニアが反応して生成されるポリシラザンであってもよい。
【0054】
例えば、前記シリカ膜形成用組成物に含まれているケイ素含有重合体は、下記化学式2で表される部分(moiety)を含むことができる。
【0055】
【0056】
前記化学式2のR4乃至R7は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1乃至C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3乃至C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6乃至C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7乃至C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1乃至C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2乃至C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は連結地点を意味する。
【0057】
例えば、前記ケイ素含有重合体は、前記化学式1で表される部分および/または前記化学式2で表される部分を含み、ひいては下記化学式3で表される部分をさらに含むことができる。
【0058】
【0059】
前記化学式3で表される部分は、末端部が水素でキャッピングされている構造であり、これは前記ポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中のSi-H結合の総含有量に対して15乃至35重量%で含まれてもよい。前記化学式3の部分がポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中に前記範囲で含まれる場合、熱処理時に酸化反応が十分に起こりながらも、熱処理時にSiH3部分がSiH4になって飛散されることを防止して収縮を防止し、これからクラックが発生することを防止することができる。
【0060】
例えば、前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物に対して0.1重量%乃至30重量%の含有量で含まれてもよい。
【0061】
前記シリカ膜形成用組成物に含まれる溶媒は、前記ケイ素含有重合体を溶かすことができる溶媒であれば特に制限されず、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p-メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも一つを含むことができる。
【0062】
一方、前記シリカ膜形成用組成物は、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)をさらに含むことができる。
【0063】
熱酸発生剤は、前記シリカ膜形成用組成物の現像性を改善するための添加剤であり、前記組成物に含まれている重合体が比較的低い温度で現像され得るようにする。
【0064】
前記熱酸発生剤は、熱により酸(H+)を発生することができる化合物であれば特に限定されないが、90℃以上で活性化されて十分な酸を発生し、揮発性が低いものを選択することができる。
【0065】
前記熱酸発生剤は、例えばニトロベンジルトシレート、ニトロベンジルベンゼンスルホネート、フェノールスルホネートおよびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0066】
前記熱酸発生剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して0.01乃至25重量%で含まれてもよく、前記範囲で含まれる場合、比較的低い温度で前記重合体が現像され得ると同時に、コーティング性を改善することができる。
【0067】
前記シリカ膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0068】
界面活性剤は、特に限定されず、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、エフトップEF301、同EF303、同EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)などのフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)などその他シリコン系界面活性剤が挙げられる。
【0069】
界面活性剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して0.001乃至10重量%で含まれてもよく、前記範囲で含まれる場合、溶液の分散性を改善すると同時に膜形成時に膜厚の均一性を高めることができる。
【0070】
他の一実施形態によれば、前述した前記シリカ膜形成用組成物を塗布する段階、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階および前記シリカ膜形成用組成物を硬化する段階を含むことができる。
【0071】
前記シリカ膜形成用組成物は、溶液工程で塗布することができ、例えばスピンオンコーティング、スリットコーティング、インクジェット印刷などのような方法で塗布することができる。
【0072】
前記基板は、例えば半導体、液晶などのデバイス基板であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0073】
前記シリカ膜形成用組成物の塗布が完了すると、次いで基板を乾燥して硬化する段階を経る。前記乾燥および硬化する段階は、例えば約100℃以上の温度で行われてもよく、例えば熱、紫外線、マイクロウエーブ、音波、または超音波などのエネルギーを加えて行われてもよい。
【0074】
例えば、前記乾燥は、約100℃乃至約200℃で行われてもよく、当該乾燥段階を経ることによってシリカ膜形成用組成物内の溶媒を除去することができる。また、前記硬化は、約250℃乃至1,000℃で行われてもよく、当該硬化段階を経ることによってシリカ膜形成用組成物を酸化膜質の薄膜に転換させることができる。前記硬化段階は、例えば250℃乃至1,000℃の水蒸気雰囲気で1次硬化を施した後、600℃乃至1,000℃の窒素雰囲気で2次硬化を行うことができる。
【0075】
本発明の他の実施形態によれば、前述したシリカ膜形成用組成物が硬化されて得られるシリカ成分を含むシリカ膜を提供する。
【0076】
前記シリカ膜は、例えば絶縁膜、分離膜、ハードコーティング膜などであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0077】
本発明の前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。前記電子素子は、例えばLCDやLEDなどのようなディスプレイ素子、または半導体素子であってもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を通して前述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0079】
<シリカ膜形成用組成物の製造>
(比較例1)
容量2Lの攪拌機および温度制御装置付き反応器の内部を乾燥窒素に置換した。そして乾燥ピリジン1,500gを反応器に投入した後、これを0℃に維持した。次いで、ジクロロシラン100gを1時間にかけて徐々に注入した。そして攪拌しながらここにアンモニア70gを3時間にかけて徐々に注入した。次に、乾燥窒素を30分間注入して反応器内に残存するアンモニアを除去した。得られた白色のスラリー相の生成物を乾燥窒素雰囲気中で1μmのテフロン材質の濾過器を用いて濾過して濾液1,000gを得た。ここに乾燥キシレン1,000gを添加した後、回転蒸発器(Rotary evaporator)を用いて溶媒をピリジンからキシレンに置換する操作を総3回繰り返しながら固形分濃度を30重量%に調整し、ポアサイズ0.03umのテフロン材質の濾過器で濾過した。濾過された溶液に乾燥ピリジン300gを投入して重量平均分子量が5,000になる時まで100℃で加熱した。ここに、乾燥ジブチルエーテル1000gを添加した後、回転蒸発器(Rotary evaporator)を用いて溶媒をジブチルエーテルに置換する操作を3回繰り返しながら固形分を20重量%に調整された水素化ポリシラザン溶液を得た。前記過程を経て重量平均分子量3,000である水素化ポリシロキサザンを得た。
【0080】
(実施例1)
比較例1で水素化ポリシロキサザン溶液を100℃の反応器に入れて2重量%のHMDSを徐々に投入しながら攪拌して重量平均分子量3,500である有機-無機ポリシロキサザンを得た。
【0081】
(実施例2)
比較例1で水素化ポリシロキサザン溶液を100℃の反応器に入れて10重量%のHMDSを徐々に投入しながら攪拌して重量平均分子量5,000である有機-無機ポリシロキサザンを得た。
【0082】
<シリカ膜の形成>
40nmの線幅を有するパターンが反復されているシリコンウエハーを準備する。
【0083】
前記ウエハーの上に比較例1、そして実施例1および2によるシリカ膜形成用組成物をコーティングした後、150℃で2分間プリベークを行う。その後、水蒸気が含まれているファーネスで600℃で60分間硬化してシリカ系膜を形成する。
【0084】
40nmの線幅を有するパターン化されたシリコンウエハーの代わりに300nm、500nmおよび700nmの線幅を有するパターン化されたウエハーをそれぞれ用いてシリカ膜を形成する。
【0085】
<評価>
シリカ膜の試片の断面を切断して微細パターンが露出するようにした後、F元素が含まれている水溶液に数分間浸漬した後、DI waterで完全に洗浄する。次いで、N2で完全に乾燥した試片の断面を走査電子顕微鏡(FE-SEM)を利用してパターン内部を観察する。
【0086】
その結果を下記表1に示す。
【0087】
【0088】
表1を参照すると、実施例1および2によるシリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜は、前述した関係式1を満足するが、比較例1によるシリカ膜形成用組成物から製造されたシリカ膜は、前述した関係式1を満足しないことが分かる。
【0089】
一方、形成されたシリカ膜の走査顕微鏡断面を
図2乃至4に示す。
【0090】
図2は比較例1によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真であり、
図3は実施例1によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真であり、
図4は実施例2によるシリカ膜断面の走査顕微鏡写真である。
【0091】
図2乃至4を参照すると、関係式1を満足する実施例1、2による薄膜のパターン内部は、エアギャップが形成されている反面、関係式1を満足しない比較例1による薄膜のパターン内部は、実施例1、2と比較して相対的にシリカ膜質でより多く満たされていることが分かる。
【0092】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。